鞍乗型車両
【課題】クルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更できる鞍乗型車両を提供することを課題とする。
【解決手段】図(a)に示すスポーツモードでは、乗員79は前傾姿勢で乗車する。第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。第1線分82と第2線分83とのなす屈曲角θ1は、180°弱になる。この状態から、第1・第2リンクプレート64、65をV字状に折り畳むと、後部構造体40が図面反時計方向へ回転する。また、前部構造体20は図面時計方向へ回転する。すると、図(b)での屈曲角θ2は小さくなる。図(a)に比較して、図(b)は駆動源支持ケース44の地上高さH2が小さくなり(H2<H1)、重心位置が下がる。同時に、シート26のポジションが低くなる。結果、図(b)は、クルージングモードとなる。
【効果】一台の車両でありながら、重心位置が変更でき、車体形状が変更できる。
【解決手段】図(a)に示すスポーツモードでは、乗員79は前傾姿勢で乗車する。第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。第1線分82と第2線分83とのなす屈曲角θ1は、180°弱になる。この状態から、第1・第2リンクプレート64、65をV字状に折り畳むと、後部構造体40が図面反時計方向へ回転する。また、前部構造体20は図面時計方向へ回転する。すると、図(b)での屈曲角θ2は小さくなる。図(a)に比較して、図(b)は駆動源支持ケース44の地上高さH2が小さくなり(H2<H1)、重心位置が下がる。同時に、シート26のポジションが低くなる。結果、図(b)は、クルージングモードとなる。
【効果】一台の車両でありながら、重心位置が変更でき、車体形状が変更できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員がシートを跨いで座る車両は、鞍乗型車両と呼ばれる。鞍乗型車両の代表例である自動二輪車は用途に応じて、スポーツモード、クルーザモード、その他のモードに対応する形態のものが実用化されている。
スポーツモードは、高速走行可能なモードであって、車両の重心位置(車両全体の重心位置もしくは、駆動源の重心位置、以下同意味とする。)やシート位置が高く、乗員は前屈みになることができ、風の抵抗を下げ俊敏な運動性を持つモードである。
一方、クルーザモードは、中速走行を得意とするモードであって、車両の重心位置やシート位置も低く、乗員は上半身を比較的起こしリラックスした乗車姿勢での安定した運動性能を持つモードである。
【0003】
スポーツモードとクルーザモードとは車体フレーム等の形態が異なるため、原則として兼用することはできないが、一台の自動二輪車で、利用者の好みに応じて乗車姿勢を変えることができる車両は提案されている(例えば、特許文献1(図1、図2)参照。)。
【0004】
特許文献1の図2に示されるシート(15)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)は、同文献の図1に示されるように、(15)、(15’)、(15”)のように高さが任意に変更できる。そのため、乗車姿勢を容易に変更することができる。
【0005】
特許文献1の図2おいて、シート(15)は上下するものの、車体フレーム(4)の形態は変化しない。重いエンジン(25)や変速機(26)の位置も変わらない。したがって、乗員の姿勢は変わるものの、重心位置が変化しないため、モードをクルーザモードからスポーツモード、又はその逆に変化させることはできない。
【0006】
しかし、一台の自動二輪車(鞍乗型車両)で、クルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更できれば、車両の用途が拡大して使い勝手がよくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−81083公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更できる鞍乗型車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前部構造体と後部構造体を主要素とする鞍乗型車両であって、
前記前部構造体は、前部にヘッドパイプを備え車両前後方向に延びる車体フレームと、この車体フレームの後部から延びるシートフレームと、このシートフレームに支えられるシートと、前記ヘッドパイプに操向可能に取付けられるフロントフォークと、このフロントフォークの上端に取付けられる操向ハンドルと、前記フロントフォークの下端に取付けられる前輪と、からなり、
前記後部構造体は、前記前輪の後方に配置される後輪と、この後輪より車両前方に配置され前記後輪を駆動する駆動源と、この駆動源及び前記後輪を支える支持体と、からなり、
前記前部構造体と前記後部構造体は、ヒンジ部を介して車両側面視で屈曲可能に連結され、
前記ヒンジ部を軸に前記前部構造体と前記後部構造体を車両側面視で任意の角度で屈曲設定することで車体形状を調節する車体形状調節機構を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、車体形状調節機構は、車両側面視で、ヒンジ部の中心を通りステアリング軸に直交する第1線分と、ヒンジ部の中心を通り後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更するように、ヒンジ部を軸に前部構造体と前記後部構造体を屈曲させるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、支持体は、駆動源を支える駆動源支持ケースと、この駆動源支持ケースにピボット軸を介して上下揺動可能に取付けられ後輪を支えるスイングアームと、このスイングアームと駆動源支持ケースに渡されるリヤクッションと、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、車体形状調節機構は、駆動源を支える駆動源支持ケース又は車体フレームに取付けられるアクチュエータと、このアクチュエータから延ばされアクチュエータにより回されるねじ軸と、このねじ軸にねじ込まれるナットと、このナットに揺動可能に連結され先端が駆動源支持ケースに連結される第1リンクプレート及び先端が車体フレームに連結される第2リンクプレートと、からなるトグル機構であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、駆動源は電動モータであり、駆動源支持ケースは電動モータへ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、駆動源は内燃機関であり、駆動源支持ケースは内燃機関へ供給する燃料を蓄える燃料タンクを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、アクチュエータは、電動機を主要素とし、駆動源支持ケースに取付けられることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、電動機を制御する制御部へ、正逆転命令を送る操作子が、操作ハンドルに付設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、車両を前部構造体と後部構造体とに区分され、前部構造体と後部構造体がヒンジ部を介して車両側面視で屈曲可能に連結されている。屈曲角は、車体形状調節機構で変更される。
【0018】
すなわち、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することができる。
本発明によれば、一台の車両でありながら、車両を前部構造体と後部構造体とにそれぞれモジュール化し、ヒンジ部を中心に車両側面視で前部構造体と後部構造体が屈曲することで、シート高さだけでなく、最低地上高、車両の重心位置及び、キャスター角を同時に変更でき、車体形状が変更できるため、乗員の好みに合わせて多様の形態を造り出すことができる鞍乗型車両が提供される。
【0019】
加えて、屈曲角を大きくするとシート位置が下がると共に重心が下がり、さらにホイールベースが長くなり良好なクルーザモードが得られ、屈曲角を小さくするとシート位置が上がると共に重心が上がり、さらにホイールベースが短くなり良好なスポーツモードが得られる。
【0020】
請求項2に係る発明では、車体形状調節機構は、車両側面視で、ヒンジ部の中心を通りステアリング軸に直交する第1線分と、ヒンジ部の中心を通り後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更するように、ヒンジ部を軸に前部構造体と前記後部構造体を屈曲させるものである。
ステアリング軸に直交する第1線分と後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更することができるため、前輪のキャスター角を確実に変更することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、後部構造体に、駆動源支持ケースとスイングアームとリヤクッションとを一括して備えており、支持体により後部構造体をモジュール化されることで前部構造体と後部構造体のヒンジ部を介した車両側面視での屈曲角を容易に変更することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、車体形状調節機構はトグル機構とした。トグル機構はねじ軸とナットとリンクプレートとを要素とする単純な構造物であって、安価で軽量である。
【0023】
請求項5に係る発明では、駆動源は電動モータであり、駆動源支持ケースは走行用バッテリを備える。同一の駆動源支持ケースに、電動モータと走行用バッテリが取付けられているため、給電ハーネスが短くなると共に給電ハーネスに捻れや曲げが発生する心配がない。
【0024】
請求項6に係る発明では、駆動源は内燃機関であり、駆動源支持ケースは燃料タンクを備える。同一の駆動源支持ケースに、内燃機関と燃料タンクが取付けられているため、給油ホースが短くなると共に給油ホースに捻れや曲げが発生する心配がない。
【0025】
請求項7に係る発明では、アクチュエータは電動機を主要素とし、駆動源支持ケースに取付けられる。アクチュエータは油圧モータや空圧モータであってもよいが、電動機の方が安価で小型で軽量である。
【0026】
請求項8に係る発明では、電動機を制御する操作子が、操作ハンドルに付設されている。シートに跨ったままで、モード変更をおこなうことができるため、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鞍乗型車両の分解図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】鞍乗型車両の左側面図である。
【図4】本発明に係る車体形状調節機構の断面図である。
【図5】図4の5線断面図である。
【図6】操作子の配置図である。
【図7】車体形状調節機構の斜視図である。
【図8】車体形状調節機構の作用図である。
【図9】図4の作用図である。
【図10】鞍乗型車両の作用図である。
【図11】図2の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鞍乗型車両10は、前輪21を含む前部構造体20と、後輪41を含む後部構造体40とを主要素とし、前部構造体20と後部構造体40はヒンジ部52を介して、車両側面視で屈曲可能に連結される。屈曲調節は、後部構造体40と前部構造体20に掛け渡す車体形状調節機構60で実施される。
【0030】
前部構造体20は、前輪21を支えるフロントフォーク22と、このフロントフォーク22を支えるヘッドパイプ23を前部に備え車両前後方向に延びる車体フレーム24と、この車体フレーム24の後部から斜め上へ延びるシートフレーム25と、このシートフレーム25に支えられるシート26と、このシート26の前部から車両前方へ延びて車体フレーム24を覆う車体カバー27と、車体フレーム24の後部に設けられるリヤプレート28と、このリヤプレート28の後部に取付けられる後部ステップ29と、車体フレーム24の後部下部に設けられるスタンド31と、フロントフォーク22の上部に取付けられる前照灯32及びメータ類33と、フロントフォーク22の上端に取付けられる操向ハンドル34と、フロントフォーク22の下端に取付けられる前輪21とからなる。
【0031】
後部構造体40は、後輪41と、この後輪41より車両前方に配置され後輪41を駆動する駆動源42と、この駆動源42及び後輪41を支える支持体43とからなる。駆動源42は、電動モータが好適であるが、ガソリンエンジンなどの内燃機関であってもよい。
【0032】
支持体43は、例えば、駆動源42を支える駆動源支持ケース44と、この駆動源支持ケース44にピボット軸45を介して上下揺動可能に取付けられ後輪41を支えるスイングアーム46と、このスイングアーム46と駆動源支持ケース44に渡されるリヤクッション47とからなる。
【0033】
図2に示すように、駆動源支持ケース44は、中空ケースであって、軽量化を考慮するとアルミニウムダイカスト品が好適である。駆動源42は電動モータであり、駆動源支持ケース44には、電動モータ42と共にこの電動モータ42へ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリ53が収納される。
【0034】
同一の駆動源支持ケース44に、電動モータ42と走行用バッテリ53が取付けられているため、給電ハーネスが短くなると共に給電ハーネスに捻れや曲げが発生する心配がない。
さらに、駆動源支持ケース44の前壁48がくり抜かれそこに、電動モータ42を冷却するラジエータ49が配置される。
【0035】
図1に示すように、前部構造体20側のリヤプレート28に後部ステップ29が取付けられているが、後部構造体40側の駆動源支持ケース44に、前部ステップ51が取付けられている。
前部構造体20と後部構造体40はヒンジ部52で連結するとともに、後部構造体40に設けた車体形状調節機構60を前部構造体20に渡すことで、鞍乗型車両が完成する。
【0036】
図3が鞍乗型車両の完成図であり、外観は、通常の自動二輪車と変わるところはない。図1に記載の符号を流用し、符号の詳細な説明は省略する。
【0037】
車体カバー27で隠されている車体形状調節機構60の詳細を次に述べる。
図4に示すように、車体形状調節機構60は、駆動源支持ケース44に取付けられるアクチュエータ61と、このアクチュエータ61から延ばされアクチュエータ61により回されるねじ軸62と、このねじ軸62にねじ込まれるナット63と、このナット63に揺動可能に連結され先端が駆動源支持ケース44に連結される第1リンクプレート64及び先端が車体フレーム24に連結される第2リンクプレート65とからなるトグル機構である。
【0038】
本実施例では、アクチュエータ61は、駆動源支持ケース44に取付けたが、車体フレーム24側に取付けることもできる。
アクチュエータ61は、電動機66と、この電動機66の回転速度を減速する減速機67とからなる。アクチュエータ61は、減速機を電動機ケースに内蔵した減速機付き電動機であっても良い。また、油圧モータを主要素とする油圧アクチュエータであってもよい。
【0039】
図5に示すように、減速機67から左右の支軸68、68が延びる。これらの支軸68、68が、駆動源支持ケース44の内面から延ばすブラケット69、69に揺動可能に支持される。結果、アクチュエータ61は駆動源支持ケース44に内蔵され、且つ揺動自在に支持される。
【0040】
図6に示すように、操作ハンドル34に、シーソー型スイッチのような操作子71を設け、例えば運転者の左手親指で操作子71をC(クルーザモード)又はS(スポーツモード)に切り替える。すると、制御部72は電動機66を正転又は逆転制御する。結果、ねじ軸62が回転し、ナット63が上又は下へ移動する。操作子71はシーソー型スイッチに限るものではなく、ON/OFF型スイッチであれば種類は問わない。
【0041】
図7に示すように、第2リンクプレート65は、車体フレーム24に揺動可能に連結される。すなわち、ねじ軸62で移動されるナット63から、ピン73を介して第1リンクプレート64が上方に延びると共に第2リンクプレート65が下方へ延びる。第1リンクプレート64の先端は、ピン74を介して駆動源支持ケース44側のブラケット75に揺動可能に止められ、第2リンクプレート65の先端は、ピン76を介して車体フレーム24側のパイプ77に揺動可能に止められる。
【0042】
車体形状調節機構60の作用を、図8に基づいて説明する。
図8(a)にスポーツモードに対応したナット63の位置が示される。第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。
アクチュエータによりナット63を上へ移動すると、広がっていた第1・第2リンクプレート64、65は、図8(b)に示すように、V字形に折り畳まれ、結果、車体フレーム24にブラケット75が接近する。
【0043】
なお、(a)、(b)に示すようにねじ軸62の傾きが変化する。この変化を図4及び図9で説明する。
図4に示す減速機67が支軸68を中心に図時計方向に回転する。減速機67の近傍にて駆動源支持ケース44にポケット部78が設けられている。このポケット部78は、駆動源支持ケース44を局部的に外側へ膨出させることで形成される。
【0044】
図9に示すように、支軸68を中心に回転した減速機67がポケット部78に収納される。
駆動源支持ケース44を全体的に拡げることなく、局部的に膨出することで、揺動するアクチュエータ61を収納することができ、駆動源支持ケース44のコンパクト化が達成される。
【0045】
図10(a)に示すように、スポーツモードでは、乗員79は前傾姿勢で乗車する。駆動源支持ケース44の地上高さをH1とする。
第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。ヒンジ部52の中心を通りステアリング軸81に直交する第1線分82と、ヒンジ部52の中心を通り後輪41の中心を通る第2線分83とのなす屈曲角θ1は、180°弱になる。
【0046】
この状態から、第1・第2リンクプレート64、65をV字状に折り畳むと、後部構造体40がヒンジ部52の軸回りに図面反時計方向へ回転する。また、前部構造体20は同じくヒンジ部52の軸回りに図面時計方向へ回転する。
【0047】
すると、図10(b)に示すように、第1線分82と第2線分83とがなす屈曲角θ2は小さくなる。連動して、(a)のキャスタ角α1に対して、(b)のキャスタ角度α2は大きくなる。キャスタ角α1は例えばクルーザモードに好適な26°で、キャスタ角α2はスポーツモードに好適な30°である。
結果、(a)のホイールベースW1に対して、(b)のホイールベースW2は大きくなる。
【0048】
(a)に比較して、(b)は駆動源支持ケース44の地上高さH2が小さくなり(H2<H1)、重心位置が下がる。同時に、シート26のポジションが低くなる。結果、図10(b)は、クルージングモードとなり、乗員79は上半身が起きた姿で乗車する。
すなわち、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することができる。
【0049】
本発明によれば、一台の車両でありながら、車両を前部構造体と後部構造体とにそれぞれモジュール化し、ヒンジ部を中心に車両側面視で前部構造体と後部構造体が屈曲することで、シート高さだけでなく、最低地上高、車両の重心位置及び、キャスター角を同時に変更でき、車体形状が変更できるため、乗員の好みに合わせて多様の形態を造り出すことができる鞍乗型車両が提供される。
【0050】
図11は図2の変更実施例図であり、駆動源支持ケース44は、中空ケースであって、軽量化を考慮するとアルミニウムダイカスト品が好適である。駆動源42は内燃機関であり、駆動源支持ケース44には、内燃機関42と共にこの内燃機関42へ供給する燃料を蓄える燃料タンク84が収納される。
【0051】
同一の駆動源支持ケース44に、内燃機関42と燃料タンク84が取付けられているため、給油ホースが短くなると共に給油ホースに捻れや曲げが発生する心配がない。
さらに、駆動源支持ケース44の前壁48がくり抜かれそこに、内燃機関42を冷却するラジエータ49が配置される。
【0052】
尚、本発明は、自動二輪車の他、電動自転車にも適用できる。自転車では、スイングアームやリヤクッションを省くことができる。
また、車体形状調節機構は、液圧シリンダを駆動ケースと車体フレームの間に直接掛け渡すようにしてもよく、トグル機構に限定するものではない。ただし、トグル機構は、ねじ軸とナットが減速作用を発揮するため、電動機の容量(キャパシティ)を小さくすることができる。結果、安価で小型の電動機が採用できる。
【0053】
実施例では電動機は駆動源支持ケースに設けたが、電動機を車体フレーム側に設けることは差し支えない。
電動機を操作する操作子は、操作ハンドルに付設する他、メータ類近傍に設けてもよく設置位置は任意である。ただし、操作子を操作ハンドルに付設した場合は、より迅速に且つ容易に操作ができ、モード変更を容易に行うことができる。
【0054】
また、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することの他、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの中間のモードに変更することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の車体形状調節機構は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10…鞍乗型車両、20…前部構造体、21…前輪、22…フロントフォーク、23…ヘッドパイプ、24…車体フレーム、25…シートフレーム、26…シート、34…操向ハンドル、40…後部構造体、41…後輪、42…駆動源、43…支持体、44…駆動源支持ケース、45…ピボット軸、46…スイングアーム、47…リヤクッション、52…ヒンジ部、53…走行用バッテリ、60…車体形状調節機構、61…アクチュエータ、62…ねじ軸、63…ナット、64…第1リンクプレート、65…第2リンクプレート、66…アクチュエータの主要素である電動機、71…操作子、72…制御部、81…ステアリング軸、82…第1線分、83…第2線分、84…燃料タンク、θ1、θ2…屈曲角、α1、α2…キャスタ角、W1、W2…ホイールベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員がシートを跨いで座る車両は、鞍乗型車両と呼ばれる。鞍乗型車両の代表例である自動二輪車は用途に応じて、スポーツモード、クルーザモード、その他のモードに対応する形態のものが実用化されている。
スポーツモードは、高速走行可能なモードであって、車両の重心位置(車両全体の重心位置もしくは、駆動源の重心位置、以下同意味とする。)やシート位置が高く、乗員は前屈みになることができ、風の抵抗を下げ俊敏な運動性を持つモードである。
一方、クルーザモードは、中速走行を得意とするモードであって、車両の重心位置やシート位置も低く、乗員は上半身を比較的起こしリラックスした乗車姿勢での安定した運動性能を持つモードである。
【0003】
スポーツモードとクルーザモードとは車体フレーム等の形態が異なるため、原則として兼用することはできないが、一台の自動二輪車で、利用者の好みに応じて乗車姿勢を変えることができる車両は提案されている(例えば、特許文献1(図1、図2)参照。)。
【0004】
特許文献1の図2に示されるシート(15)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)は、同文献の図1に示されるように、(15)、(15’)、(15”)のように高さが任意に変更できる。そのため、乗車姿勢を容易に変更することができる。
【0005】
特許文献1の図2おいて、シート(15)は上下するものの、車体フレーム(4)の形態は変化しない。重いエンジン(25)や変速機(26)の位置も変わらない。したがって、乗員の姿勢は変わるものの、重心位置が変化しないため、モードをクルーザモードからスポーツモード、又はその逆に変化させることはできない。
【0006】
しかし、一台の自動二輪車(鞍乗型車両)で、クルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更できれば、車両の用途が拡大して使い勝手がよくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−81083公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更できる鞍乗型車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前部構造体と後部構造体を主要素とする鞍乗型車両であって、
前記前部構造体は、前部にヘッドパイプを備え車両前後方向に延びる車体フレームと、この車体フレームの後部から延びるシートフレームと、このシートフレームに支えられるシートと、前記ヘッドパイプに操向可能に取付けられるフロントフォークと、このフロントフォークの上端に取付けられる操向ハンドルと、前記フロントフォークの下端に取付けられる前輪と、からなり、
前記後部構造体は、前記前輪の後方に配置される後輪と、この後輪より車両前方に配置され前記後輪を駆動する駆動源と、この駆動源及び前記後輪を支える支持体と、からなり、
前記前部構造体と前記後部構造体は、ヒンジ部を介して車両側面視で屈曲可能に連結され、
前記ヒンジ部を軸に前記前部構造体と前記後部構造体を車両側面視で任意の角度で屈曲設定することで車体形状を調節する車体形状調節機構を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、車体形状調節機構は、車両側面視で、ヒンジ部の中心を通りステアリング軸に直交する第1線分と、ヒンジ部の中心を通り後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更するように、ヒンジ部を軸に前部構造体と前記後部構造体を屈曲させるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、支持体は、駆動源を支える駆動源支持ケースと、この駆動源支持ケースにピボット軸を介して上下揺動可能に取付けられ後輪を支えるスイングアームと、このスイングアームと駆動源支持ケースに渡されるリヤクッションと、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、車体形状調節機構は、駆動源を支える駆動源支持ケース又は車体フレームに取付けられるアクチュエータと、このアクチュエータから延ばされアクチュエータにより回されるねじ軸と、このねじ軸にねじ込まれるナットと、このナットに揺動可能に連結され先端が駆動源支持ケースに連結される第1リンクプレート及び先端が車体フレームに連結される第2リンクプレートと、からなるトグル機構であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、駆動源は電動モータであり、駆動源支持ケースは電動モータへ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、駆動源は内燃機関であり、駆動源支持ケースは内燃機関へ供給する燃料を蓄える燃料タンクを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、アクチュエータは、電動機を主要素とし、駆動源支持ケースに取付けられることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、電動機を制御する制御部へ、正逆転命令を送る操作子が、操作ハンドルに付設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、車両を前部構造体と後部構造体とに区分され、前部構造体と後部構造体がヒンジ部を介して車両側面視で屈曲可能に連結されている。屈曲角は、車体形状調節機構で変更される。
【0018】
すなわち、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することができる。
本発明によれば、一台の車両でありながら、車両を前部構造体と後部構造体とにそれぞれモジュール化し、ヒンジ部を中心に車両側面視で前部構造体と後部構造体が屈曲することで、シート高さだけでなく、最低地上高、車両の重心位置及び、キャスター角を同時に変更でき、車体形状が変更できるため、乗員の好みに合わせて多様の形態を造り出すことができる鞍乗型車両が提供される。
【0019】
加えて、屈曲角を大きくするとシート位置が下がると共に重心が下がり、さらにホイールベースが長くなり良好なクルーザモードが得られ、屈曲角を小さくするとシート位置が上がると共に重心が上がり、さらにホイールベースが短くなり良好なスポーツモードが得られる。
【0020】
請求項2に係る発明では、車体形状調節機構は、車両側面視で、ヒンジ部の中心を通りステアリング軸に直交する第1線分と、ヒンジ部の中心を通り後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更するように、ヒンジ部を軸に前部構造体と前記後部構造体を屈曲させるものである。
ステアリング軸に直交する第1線分と後輪の中心を通る第2線分とのなす角を変更することができるため、前輪のキャスター角を確実に変更することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、後部構造体に、駆動源支持ケースとスイングアームとリヤクッションとを一括して備えており、支持体により後部構造体をモジュール化されることで前部構造体と後部構造体のヒンジ部を介した車両側面視での屈曲角を容易に変更することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、車体形状調節機構はトグル機構とした。トグル機構はねじ軸とナットとリンクプレートとを要素とする単純な構造物であって、安価で軽量である。
【0023】
請求項5に係る発明では、駆動源は電動モータであり、駆動源支持ケースは走行用バッテリを備える。同一の駆動源支持ケースに、電動モータと走行用バッテリが取付けられているため、給電ハーネスが短くなると共に給電ハーネスに捻れや曲げが発生する心配がない。
【0024】
請求項6に係る発明では、駆動源は内燃機関であり、駆動源支持ケースは燃料タンクを備える。同一の駆動源支持ケースに、内燃機関と燃料タンクが取付けられているため、給油ホースが短くなると共に給油ホースに捻れや曲げが発生する心配がない。
【0025】
請求項7に係る発明では、アクチュエータは電動機を主要素とし、駆動源支持ケースに取付けられる。アクチュエータは油圧モータや空圧モータであってもよいが、電動機の方が安価で小型で軽量である。
【0026】
請求項8に係る発明では、電動機を制御する操作子が、操作ハンドルに付設されている。シートに跨ったままで、モード変更をおこなうことができるため、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鞍乗型車両の分解図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】鞍乗型車両の左側面図である。
【図4】本発明に係る車体形状調節機構の断面図である。
【図5】図4の5線断面図である。
【図6】操作子の配置図である。
【図7】車体形状調節機構の斜視図である。
【図8】車体形状調節機構の作用図である。
【図9】図4の作用図である。
【図10】鞍乗型車両の作用図である。
【図11】図2の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、鞍乗型車両10は、前輪21を含む前部構造体20と、後輪41を含む後部構造体40とを主要素とし、前部構造体20と後部構造体40はヒンジ部52を介して、車両側面視で屈曲可能に連結される。屈曲調節は、後部構造体40と前部構造体20に掛け渡す車体形状調節機構60で実施される。
【0030】
前部構造体20は、前輪21を支えるフロントフォーク22と、このフロントフォーク22を支えるヘッドパイプ23を前部に備え車両前後方向に延びる車体フレーム24と、この車体フレーム24の後部から斜め上へ延びるシートフレーム25と、このシートフレーム25に支えられるシート26と、このシート26の前部から車両前方へ延びて車体フレーム24を覆う車体カバー27と、車体フレーム24の後部に設けられるリヤプレート28と、このリヤプレート28の後部に取付けられる後部ステップ29と、車体フレーム24の後部下部に設けられるスタンド31と、フロントフォーク22の上部に取付けられる前照灯32及びメータ類33と、フロントフォーク22の上端に取付けられる操向ハンドル34と、フロントフォーク22の下端に取付けられる前輪21とからなる。
【0031】
後部構造体40は、後輪41と、この後輪41より車両前方に配置され後輪41を駆動する駆動源42と、この駆動源42及び後輪41を支える支持体43とからなる。駆動源42は、電動モータが好適であるが、ガソリンエンジンなどの内燃機関であってもよい。
【0032】
支持体43は、例えば、駆動源42を支える駆動源支持ケース44と、この駆動源支持ケース44にピボット軸45を介して上下揺動可能に取付けられ後輪41を支えるスイングアーム46と、このスイングアーム46と駆動源支持ケース44に渡されるリヤクッション47とからなる。
【0033】
図2に示すように、駆動源支持ケース44は、中空ケースであって、軽量化を考慮するとアルミニウムダイカスト品が好適である。駆動源42は電動モータであり、駆動源支持ケース44には、電動モータ42と共にこの電動モータ42へ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリ53が収納される。
【0034】
同一の駆動源支持ケース44に、電動モータ42と走行用バッテリ53が取付けられているため、給電ハーネスが短くなると共に給電ハーネスに捻れや曲げが発生する心配がない。
さらに、駆動源支持ケース44の前壁48がくり抜かれそこに、電動モータ42を冷却するラジエータ49が配置される。
【0035】
図1に示すように、前部構造体20側のリヤプレート28に後部ステップ29が取付けられているが、後部構造体40側の駆動源支持ケース44に、前部ステップ51が取付けられている。
前部構造体20と後部構造体40はヒンジ部52で連結するとともに、後部構造体40に設けた車体形状調節機構60を前部構造体20に渡すことで、鞍乗型車両が完成する。
【0036】
図3が鞍乗型車両の完成図であり、外観は、通常の自動二輪車と変わるところはない。図1に記載の符号を流用し、符号の詳細な説明は省略する。
【0037】
車体カバー27で隠されている車体形状調節機構60の詳細を次に述べる。
図4に示すように、車体形状調節機構60は、駆動源支持ケース44に取付けられるアクチュエータ61と、このアクチュエータ61から延ばされアクチュエータ61により回されるねじ軸62と、このねじ軸62にねじ込まれるナット63と、このナット63に揺動可能に連結され先端が駆動源支持ケース44に連結される第1リンクプレート64及び先端が車体フレーム24に連結される第2リンクプレート65とからなるトグル機構である。
【0038】
本実施例では、アクチュエータ61は、駆動源支持ケース44に取付けたが、車体フレーム24側に取付けることもできる。
アクチュエータ61は、電動機66と、この電動機66の回転速度を減速する減速機67とからなる。アクチュエータ61は、減速機を電動機ケースに内蔵した減速機付き電動機であっても良い。また、油圧モータを主要素とする油圧アクチュエータであってもよい。
【0039】
図5に示すように、減速機67から左右の支軸68、68が延びる。これらの支軸68、68が、駆動源支持ケース44の内面から延ばすブラケット69、69に揺動可能に支持される。結果、アクチュエータ61は駆動源支持ケース44に内蔵され、且つ揺動自在に支持される。
【0040】
図6に示すように、操作ハンドル34に、シーソー型スイッチのような操作子71を設け、例えば運転者の左手親指で操作子71をC(クルーザモード)又はS(スポーツモード)に切り替える。すると、制御部72は電動機66を正転又は逆転制御する。結果、ねじ軸62が回転し、ナット63が上又は下へ移動する。操作子71はシーソー型スイッチに限るものではなく、ON/OFF型スイッチであれば種類は問わない。
【0041】
図7に示すように、第2リンクプレート65は、車体フレーム24に揺動可能に連結される。すなわち、ねじ軸62で移動されるナット63から、ピン73を介して第1リンクプレート64が上方に延びると共に第2リンクプレート65が下方へ延びる。第1リンクプレート64の先端は、ピン74を介して駆動源支持ケース44側のブラケット75に揺動可能に止められ、第2リンクプレート65の先端は、ピン76を介して車体フレーム24側のパイプ77に揺動可能に止められる。
【0042】
車体形状調節機構60の作用を、図8に基づいて説明する。
図8(a)にスポーツモードに対応したナット63の位置が示される。第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。
アクチュエータによりナット63を上へ移動すると、広がっていた第1・第2リンクプレート64、65は、図8(b)に示すように、V字形に折り畳まれ、結果、車体フレーム24にブラケット75が接近する。
【0043】
なお、(a)、(b)に示すようにねじ軸62の傾きが変化する。この変化を図4及び図9で説明する。
図4に示す減速機67が支軸68を中心に図時計方向に回転する。減速機67の近傍にて駆動源支持ケース44にポケット部78が設けられている。このポケット部78は、駆動源支持ケース44を局部的に外側へ膨出させることで形成される。
【0044】
図9に示すように、支軸68を中心に回転した減速機67がポケット部78に収納される。
駆動源支持ケース44を全体的に拡げることなく、局部的に膨出することで、揺動するアクチュエータ61を収納することができ、駆動源支持ケース44のコンパクト化が達成される。
【0045】
図10(a)に示すように、スポーツモードでは、乗員79は前傾姿勢で乗車する。駆動源支持ケース44の地上高さをH1とする。
第1・第2リンクプレート64、65は広がっている。ヒンジ部52の中心を通りステアリング軸81に直交する第1線分82と、ヒンジ部52の中心を通り後輪41の中心を通る第2線分83とのなす屈曲角θ1は、180°弱になる。
【0046】
この状態から、第1・第2リンクプレート64、65をV字状に折り畳むと、後部構造体40がヒンジ部52の軸回りに図面反時計方向へ回転する。また、前部構造体20は同じくヒンジ部52の軸回りに図面時計方向へ回転する。
【0047】
すると、図10(b)に示すように、第1線分82と第2線分83とがなす屈曲角θ2は小さくなる。連動して、(a)のキャスタ角α1に対して、(b)のキャスタ角度α2は大きくなる。キャスタ角α1は例えばクルーザモードに好適な26°で、キャスタ角α2はスポーツモードに好適な30°である。
結果、(a)のホイールベースW1に対して、(b)のホイールベースW2は大きくなる。
【0048】
(a)に比較して、(b)は駆動源支持ケース44の地上高さH2が小さくなり(H2<H1)、重心位置が下がる。同時に、シート26のポジションが低くなる。結果、図10(b)は、クルージングモードとなり、乗員79は上半身が起きた姿で乗車する。
すなわち、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することができる。
【0049】
本発明によれば、一台の車両でありながら、車両を前部構造体と後部構造体とにそれぞれモジュール化し、ヒンジ部を中心に車両側面視で前部構造体と後部構造体が屈曲することで、シート高さだけでなく、最低地上高、車両の重心位置及び、キャスター角を同時に変更でき、車体形状が変更できるため、乗員の好みに合わせて多様の形態を造り出すことができる鞍乗型車両が提供される。
【0050】
図11は図2の変更実施例図であり、駆動源支持ケース44は、中空ケースであって、軽量化を考慮するとアルミニウムダイカスト品が好適である。駆動源42は内燃機関であり、駆動源支持ケース44には、内燃機関42と共にこの内燃機関42へ供給する燃料を蓄える燃料タンク84が収納される。
【0051】
同一の駆動源支持ケース44に、内燃機関42と燃料タンク84が取付けられているため、給油ホースが短くなると共に給油ホースに捻れや曲げが発生する心配がない。
さらに、駆動源支持ケース44の前壁48がくり抜かれそこに、内燃機関42を冷却するラジエータ49が配置される。
【0052】
尚、本発明は、自動二輪車の他、電動自転車にも適用できる。自転車では、スイングアームやリヤクッションを省くことができる。
また、車体形状調節機構は、液圧シリンダを駆動ケースと車体フレームの間に直接掛け渡すようにしてもよく、トグル機構に限定するものではない。ただし、トグル機構は、ねじ軸とナットが減速作用を発揮するため、電動機の容量(キャパシティ)を小さくすることができる。結果、安価で小型の電動機が採用できる。
【0053】
実施例では電動機は駆動源支持ケースに設けたが、電動機を車体フレーム側に設けることは差し支えない。
電動機を操作する操作子は、操作ハンドルに付設する他、メータ類近傍に設けてもよく設置位置は任意である。ただし、操作子を操作ハンドルに付設した場合は、より迅速に且つ容易に操作ができ、モード変更を容易に行うことができる。
【0054】
また、車体形状調節機構にて、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの一方から他方へ任意に変更することの他、車体形状をクルーザモードとスポーツモードの中間のモードに変更することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の車体形状調節機構は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10…鞍乗型車両、20…前部構造体、21…前輪、22…フロントフォーク、23…ヘッドパイプ、24…車体フレーム、25…シートフレーム、26…シート、34…操向ハンドル、40…後部構造体、41…後輪、42…駆動源、43…支持体、44…駆動源支持ケース、45…ピボット軸、46…スイングアーム、47…リヤクッション、52…ヒンジ部、53…走行用バッテリ、60…車体形状調節機構、61…アクチュエータ、62…ねじ軸、63…ナット、64…第1リンクプレート、65…第2リンクプレート、66…アクチュエータの主要素である電動機、71…操作子、72…制御部、81…ステアリング軸、82…第1線分、83…第2線分、84…燃料タンク、θ1、θ2…屈曲角、α1、α2…キャスタ角、W1、W2…ホイールベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部構造体(20)と後部構造体(40)を主要素とする鞍乗型車両であって、
前記前部構造体(20)は、前部にヘッドパイプ(23)を備え車両前後方向に延びる車体フレーム(24)と、この車体フレーム(24)の後部から延びるシートフレーム(25)と、このシートフレーム(25)に支えられるシート(26)と、前記ヘッドパイプ(23)に操向可能に取付けられるフロントフォーク(22)と、このフロントフォーク(22)の上端に取付けられる操向ハンドル(34)と、前記フロントフォーク(22)の下端に取付けられる前輪(21)と、からなり、
前記後部構造体(40)は、前記前輪(21)の後方に配置される後輪(41)と、この後輪(41)より車両前方に配置され前記後輪(41)を駆動する駆動源(42)と、この駆動源(42)及び前記後輪(41)を支える支持体(43)と、からなり、
前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)は、ヒンジ部(52)を介して車両側面視で屈曲可能に連結され、
前記ヒンジ部(52)を軸に前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)を車両側面視で任意の角度で屈曲設定することで車体形状を調節する車体形状調節機構(60)を設けることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記車体形状調節機構(60)は、車両側面視で、前記ヒンジ部(52)の中心を通りステアリング軸(81)に直交する第1線分(82)と、前記ヒンジ部(52)の中心を通り後輪(41)の中心を通る第2線分(83)とのなす角(θ1)を変更するように、前記ヒンジ部(52)を軸に前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)を屈曲させるものであることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記支持体(43)は、前記駆動源(42)を支える駆動源支持ケース(44)と、この駆動源支持ケース(44)にピボット軸(45)を介して上下揺動可能に取付けられ前記後輪(41)を支えるスイングアーム(46)と、このスイングアーム(46)と前記駆動源支持ケース(44)に渡されるリヤクッション(47)と、からなることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記車体形状調節機構(60)は、前記駆動源(42)を支える駆動源支持ケース(44)又は前記車体フレーム(24)に取付けられるアクチュエータ(61)と、このアクチュエータ(61)から延ばされ前記アクチュエータ(61)により回されるねじ軸(62)と、このねじ軸(62)にねじ込まれるナット(63)と、このナット(63)に揺動可能に連結され先端が前記駆動源支持ケース(44)に連結される第1リンクプレート(64)及び先端が前記車体フレーム(24)に連結される第2リンクプレート(65)と、からなるトグル機構であることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記駆動源(42)は電動モータであり、前記駆動源支持ケース(44)は前記電動モータへ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリ(53)を備えることを特徴とする請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記駆動源(42)は内燃機関であり、前記駆動源支持ケース(44)は前記内燃機関へ供給する燃料を蓄える燃料タンク(84)を備えることを特徴とする請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記アクチュエータ(61)は、電動機(66)を主要素とし、前記駆動源支持ケース(44)に取付けられることを特徴とする請求項4記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記電動機(66)を制御する制御部(72)へ、正逆転命令を送る操作子(71)が、前記操作ハンドル(34)に付設されていることを特徴とする請求項7記載の鞍乗型車両。
【請求項1】
前部構造体(20)と後部構造体(40)を主要素とする鞍乗型車両であって、
前記前部構造体(20)は、前部にヘッドパイプ(23)を備え車両前後方向に延びる車体フレーム(24)と、この車体フレーム(24)の後部から延びるシートフレーム(25)と、このシートフレーム(25)に支えられるシート(26)と、前記ヘッドパイプ(23)に操向可能に取付けられるフロントフォーク(22)と、このフロントフォーク(22)の上端に取付けられる操向ハンドル(34)と、前記フロントフォーク(22)の下端に取付けられる前輪(21)と、からなり、
前記後部構造体(40)は、前記前輪(21)の後方に配置される後輪(41)と、この後輪(41)より車両前方に配置され前記後輪(41)を駆動する駆動源(42)と、この駆動源(42)及び前記後輪(41)を支える支持体(43)と、からなり、
前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)は、ヒンジ部(52)を介して車両側面視で屈曲可能に連結され、
前記ヒンジ部(52)を軸に前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)を車両側面視で任意の角度で屈曲設定することで車体形状を調節する車体形状調節機構(60)を設けることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記車体形状調節機構(60)は、車両側面視で、前記ヒンジ部(52)の中心を通りステアリング軸(81)に直交する第1線分(82)と、前記ヒンジ部(52)の中心を通り後輪(41)の中心を通る第2線分(83)とのなす角(θ1)を変更するように、前記ヒンジ部(52)を軸に前記前部構造体(20)と前記後部構造体(40)を屈曲させるものであることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記支持体(43)は、前記駆動源(42)を支える駆動源支持ケース(44)と、この駆動源支持ケース(44)にピボット軸(45)を介して上下揺動可能に取付けられ前記後輪(41)を支えるスイングアーム(46)と、このスイングアーム(46)と前記駆動源支持ケース(44)に渡されるリヤクッション(47)と、からなることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記車体形状調節機構(60)は、前記駆動源(42)を支える駆動源支持ケース(44)又は前記車体フレーム(24)に取付けられるアクチュエータ(61)と、このアクチュエータ(61)から延ばされ前記アクチュエータ(61)により回されるねじ軸(62)と、このねじ軸(62)にねじ込まれるナット(63)と、このナット(63)に揺動可能に連結され先端が前記駆動源支持ケース(44)に連結される第1リンクプレート(64)及び先端が前記車体フレーム(24)に連結される第2リンクプレート(65)と、からなるトグル機構であることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記駆動源(42)は電動モータであり、前記駆動源支持ケース(44)は前記電動モータへ供給する電気エネルギーを蓄える走行用バッテリ(53)を備えることを特徴とする請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記駆動源(42)は内燃機関であり、前記駆動源支持ケース(44)は前記内燃機関へ供給する燃料を蓄える燃料タンク(84)を備えることを特徴とする請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記アクチュエータ(61)は、電動機(66)を主要素とし、前記駆動源支持ケース(44)に取付けられることを特徴とする請求項4記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記電動機(66)を制御する制御部(72)へ、正逆転命令を送る操作子(71)が、前記操作ハンドル(34)に付設されていることを特徴とする請求項7記載の鞍乗型車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−18366(P2013−18366A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153174(P2011−153174)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
[ Back to top ]