説明

音像定位制御装置

【課題】 音質や臨場感を保持したまま、車室内の反射波や遮蔽の影響を受けることなくセンター成分の音像定位位置の制御を行うことが可能な音像定位制御装置を提供すること。
【解決手段】 帯域分割手段2において中域周波数成分のオーディオ信号を抽出し、モノラル成分抽出手段において中域周波数成分のうちモノラル成分のオーディオ信号だけを抽出し、左右重み付け付加手段による左右のバランス量に対応する重み付けや、前後重み付け付加手段による前後のフェダー量に対応する重み付けを行う。このため、ボーカル音が多く含まれる中域周波数帯域のオーディオ信号であって、さらに音質や臨場感に対する影響の少ないモノラル成分のみに対して前後方向あるいは左右方向に対応する重み付け処理を施すことが可能となり、効果的に音像の定位位置の制御を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音像定位制御装置に関し、より詳細には、中域周波数成分のオーディオ信号におけるセンター成分(モノラル成分)のバランスおよびフェダーの調節を行うことによって、ボーカル成分を多く含む中域周波数帯域の音像に対する定位制御を行うことが可能な音像定位制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車載用オーディオでは、スピーカより出力される音像の定位を行う方法として、例えば、左右のスピーカの音量を調節するバランス機能や、前後のスピーカの音量を調節するフェダー機能を用いることが多い(例えば、特許文献1参照)。また、スピーカより出力された音が所定位置に到達するまでの時間差を調節することにより音像の定位制御を行うシートポジション機能(タイムアライメント調節機能)などが搭載される車両も存在する。
【0003】
このように、左右スピーカに対するバランス機能や、前後スピーカに対するフェダー機能等を用いることにより、音像の定位位置を調節することが可能となっている。
【特許文献1】特開2000―197182号公報 (第6頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バランス機能やフェダー機能を用いて音像の定位位置の調節を行うと、スピーカ毎の音量のレベルバランスが変わってしまうため、音質や臨場感が大きく変化してしまうという問題があった。
【0005】
また、シートポジション機能を用いて調節を行う場合であっても、車室内では反射波のレベルが大きくなりやすいため、さらには、シートの背もたれ部等による遮蔽の影響も多く存在するため、オーディオ信号の全帯域に渡って音の到達時間を調節することが困難であり、十分な音像定位位置の調節を行うことが容易ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、音質や臨場感を保持したまま、車室内の反射波や遮蔽の影響を受けることなく、音像の定位位置の制御を行うことが可能な音像定位制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る音像定位制御装置は、少なくとも右側スピーカと左側スピーカとを備えた車室内において、前記右側スピーカおよび前記左側スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、前記オーディオ信号における左右方向の定位設定を行うためのバランス設定手段と、前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記バランス設定手段により設定された左右のバランス量に対応する重み付けを付加することにより、左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とを生成する左右重み付け付加手段と、前記左右重み付け付加手段により前記重み付けが付加された前記左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とのそれぞれに対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、該中域周波数成分合成手段により生成された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける低高域周波数成分のオーディオ信号とを合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により生成された右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネルにおける低高域周波数成分のオーディオ信号とを合成する帯域合成手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る音像定位制御装置によれば、帯域分割手段において中域周波数成分のオーディオ信号を抽出し、モノラル成分抽出手段において中域周波数成分のうちモノラル成分のオーディオ信号だけを抽出し、左右重み付け付加手段によりバランス設定手段において設定された左右のバランス量に対応する重み付けを行う。このため、ボーカル音が多く含まれる中域周波数帯域のオーディオ信号であって、さらに音質や臨場感に対する影響の少ないモノラル成分のみに対して左右方向に対応する重み付け処理を施すことが可能となる。
【0009】
従って、重み付け処理を行ったモノラル成分のオーディオ信号に対して中域周波数成分合成手段を用いて中域周波数におけるステレオ成分を合成し、帯域合成手段を用いて左右チャンネル用の低高域周波数のオーディオ信号を合成することにより生成されるステレオ音源のオーディオ信号は、音質や臨場感に対して影響を及ぼすステレオ成分に対して制御を行うことなく、ボーカル音を多く含む中域周波数成分の調整を行うことができる。このため、本発明に係る音像定位制御装置を用いることにより、音質や臨場感を損なうことなく音像の左右方向の定位位置制御を効果的に行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る音像定位制御装置は、少なくとも前側スピーカと後側スピーカとを備えた車室内において、前記前側スピーカおよび前記後側スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、前記オーディオ信号における前後方向の定位設定を行うためのフェダー設定手段と、前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成する前後重み付け付加手段と、前記前後重み付け付加手段により前記重み付けが付加された前記前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号を、右側チャンネルおよび左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用のオーディオ信号に分割すると共に、さらに、前記後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号を、右側チャンネルおよび左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用のオーディオ信号に分割し、分割された全てのオーディオ信号に対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、該中域周波数成分合成手段により合成された前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により合成された前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成する帯域合成手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る音像定位制御装置によれば、帯域分割手段において中域周波数成分のオーディオ信号を抽出し、モノラル成分抽出手段において中域周波数成分のうちモノラル成分のオーディオ信号だけを抽出し、前後重み付け付加手段によりフェダー設定手段において設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを行う。このため、ボーカル音が多く含まれる中域周波数帯域のオーディオ信号であって、さらに音質や臨場感に対する影響の少ないモノラル成分のみに対して前後方向に対応する重み付け処理を施すことが可能となる。
【0012】
従って、重み付け処理を行ったモノラル成分のオーディオ信号に対して中域周波数成分合成手段を用いて中域周波数におけるステレオ成分を合成し、帯域合成手段を用いて左右チャンネル用の低高域周波数のオーディオ信号を合成することにより生成されるステレオ音源のオーディオ信号は、音質や臨場感に対して影響を及ぼすステレオ成分に対して制御を行うことなく、ボーカル音を多く含む中域周波数成分の調整を行うことができる。このため、本発明に係る音像定位制御装置を用いることにより、音質や臨場感を損なうことなく音像の前後方向の定位位置制御を効果的に行うことが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係る音像定位制御装置は、少なくとも前後左右に4個のスピーカを備えた車室内において、各スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、前記オーディオ信号における左右方向の定位設定を行うためのバランス設定手段と、前記オーディオ信号における前後方向の定位設定を行うためのフェダー設定手段と、前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記バランス設定手段により設定された左右のバランス量に対応する重み付けを付加することにより、左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とを生成する左右重み付け付加手段と、該左右重み付け付加手段により生成された左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記左側チャンネルにおける前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成すると共に、前記左右重み付け付加手段により生成された右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記右側チャンネルにおける前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成する前後重み付け付加手段と、前記左右重み付け付加手段および前記前後重み付け付加手段により左右のバランス量および前後のフェダー量に対応する重み付けが行われた全てのオーディオ信号に対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、該中域周波数成分合成手段により合成された前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により合成された前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成する帯域合成手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る音像定位制御装置によれば、帯域分割手段において中域周波数成分のオーディオ信号を抽出し、モノラル成分抽出手段において中域周波数成分のうちモノラル成分のオーディオ信号だけを抽出し、左右重み付け付加手段による左右のバランス量に対応する重み付けおよび、前後重み付け付加手段による前後のフェダー量に対応する重み付けを行う。このため、ボーカル音が多く含まれる中域周波数帯域のオーディオ信号であって、さらに音質や臨場感に対する影響の少ないモノラル成分のみに対して前後左右方向に対応する重み付け処理を施すことが可能となる。
【0015】
従って、重み付け処理を行ったモノラル成分のオーディオ信号に対して中域周波数成分合成手段を用いて中域周波数におけるステレオ成分を合成し、帯域合成手段を用いて左右チャンネル用の低高域周波数のオーディオ信号を合成することにより生成されるステレオ音源のオーディオ信号は、音質や臨場感に対して影響を及ぼすステレオ成分に対して制御を行うことなく、ボーカル音を多く含む中域周波数成分の調整を行うことができる。このため、本発明に係る音像定位制御装置を用いることにより、音質や臨場感を損なうことなく音像の前後左右方向の定位位置制御を効果的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る音像定位制御装置では、帯域分割手段において中域周波数成分のオーディオ信号を抽出し、モノラル成分抽出手段において中域周波数成分のうちモノラル成分のオーディオ信号だけを抽出し、左右重み付け付加手段による左右のバランス量に対応する重み付けや、前後重み付け付加手段による前後のフェダー量に対応する重み付けを行う。このため、ボーカル音が多く含まれる中域周波数帯域のオーディオ信号であって、さらに音質や臨場感に対する影響の少ないモノラル成分のみに対して前後方向あるいは左右方向に対応する重み付け処理を施すことが可能となる。
【0017】
従って、重み付け処理を行ったモノラル成分のオーディオ信号に対して中域周波数成分合成手段を用いて中域周波数におけるステレオ成分を合成し、帯域合成手段を用いて左右チャンネル用の低高域周波数のオーディオ信号を合成することにより生成されるステレオ音源のオーディオ信号は、音質や臨場感に対して影響を及ぼすステレオ成分に対して制御を行うことなく、ボーカル音を多く含む中域周波数成分の調整を行うことができる。このため、本発明に係る音像定位制御装置を用いることにより、音質や臨場感を損なうことなく音像の前後方向あるいは左右方向の定位位置制御を効果的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る音像定位制御装置を、図面を用いて詳細に説明する。音像定位制御装置は、車載用のオーディオ装置やカーナビゲーションシステムなどに内設されており、車内において、次述する音像定位用バランス設定部および音像定位用フェダー設定部を用いて聴取者が操作を行うことによって、音像の定位位置を調整することが可能となっている。
【0019】
図1は、音像定位制御装置の概略構成を示したブロック図である。音像定位制御装置1は、帯域分割部(帯域分割手段)2と、定位制御部3と、加算部(帯域合成手段)4〜7と、音像定位用バランス設定部(バランス設定手段)8と、音像定位用フェダー設定部(フェダー設定手段)9とを有している。
【0020】
帯域分割部2は、入力された信号を低域部分と高域部分とが加算された低高域部分と、中域部分とに分割する役割を有している。なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置1では、2チャンネルのオーディオ信号(L側チャンネル用のオーディオ信号とR側チャンネル用のオーディオ信号)が入力されるものとして説明を行う。
【0021】
図2は、帯域分割部2の概略構成を示したブロック図である。帯域分割部2は、図2に示すように、第1ローパスフィルタ部10と、第2ローパスフィルタ部11と、第1ハイパスフィルタ部12と、第2ハイパスフィルタ部13と、加算部14と、位相反転部15とを有している。
【0022】
第1ローパスフィルタ部10および第2ローパスフィルタ部11は、低域通過型の3次のButterworthフィルタを2段カスケード接続することにより構成されている。また、第1ハイパスフィルタ部12および第2ハイパスフィルタ部13は、高域通過型の3次のButterworthフィルタを2段カスケード接続することにより構成される。
【0023】
図3は、第1ローパスフィルタ部10、第2ローパスフィルタ部11、第1ハイパスフィルタ部12および第2ハイパスフィルタ部13を用いることにより、帯域分割部2において帯域分割が行われる帯域別のフィルタ特性を示している。
【0024】
ここで、第1ローパスフィルタ部10のカットオフ周波数は300Hz、第2ローパスフィルタ部11のカットオフ周波数は、6,000Hz、第1ハイパスフィルタ部12のカットオフ周波数は300Hz、第2ハイパスフィルタ部13のカットオフ周波数は6,000Hzである。
【0025】
このようなカットオフ周波数の設定がなされたフィルタ部10〜13を用いて、図2に示すように、L側チャンネルのオーディオ信号に対して第1ローパスフィルタ部10を適用すると、第1ローパスフィルタ部10を通過したオーディオ信号は、300Hz以下の低域周波数帯域のオーディオ信号となり、低域周波数成分(図2及び図3に示す「Low」)のみが抽出されることになる。また、L側チャンネルのオーディオ信号に対して第1ハイパスフィルタ部12を適用すると、第1ハイパスフィルタ部12を通過したオーディオ信号は、6,000Hz以上の高域周波数帯域のオーディオ信号となり、高域周波数成分(図2及び図3に示す「High」)のみが抽出されることになる。
【0026】
さらに、L側チャンネルのオーディオ信号に対して第2ローパスフィルタ部11を適用すると、第2ローパスフィルタ部11を通過したオーディオ信号は、6,000Hz以下の中域周波数成分+低域周波数成分のオーディオ信号(図2に示す「Low+Mid」)となり、さらに、この中域周波数成分+低域周波数成分のオーディオ信号に対して、第2ハイパスフィルタ部13を適用すると、第2ハイパスフィルタ部13を通過したオーディオ信号は、300Hz以上の高域周波数帯域のオーディオ信号となる。つまり、第2ローパスフィルタ部11と第2ハイパスフィルタ部13とを通過したオーディオ信号は、300Hz以上かつ6,000Hz以下となる中域周波数帯域のオーディオ信号(図2及び図3に示す「Mid」)となる。この中域周波数帯域のオーディオ信号は、一般的に、オーディオ信号の音声帯域に相当する信号である。
【0027】
このように、それぞれのフィルタ部10〜13を組み合わせることによって、図3に示すように、入力されたL側チャンネルのステレオ信号の帯域を低域周波数成分(Low)、中域周波数成分(Mid)、高域周波数成分(High)に分割することが可能となる。なお、図2においては、L側チャンネルのオーディオ信号に対してのみフィルタ部10〜13を適用する場合の帯域分割部2の構成しか示されていないが、R側チャンネルのオーディオ信号に対しても同様にフィルタ部10〜13が適用されて、R側チャンネルのステレオ信号の帯域が低域周波数成分(Low)、中域周波数成分(Mid)、高域周波数成分(High)に分割される。
【0028】
帯域分割部2の加算部14では、帯域分割を行った低域周波数成分と高域周波数成分との合成を、L側チャンネルのオーディオ信号とR側チャンネルのオーディオ信号とにおいてそれぞれ実行し、合成された信号を帯域分割部2より出力する(図1に示す「Low+High L」がL側チャンネルの合成信号、「Low+High R」がR側チャンネルの合成信号を示す。)。
【0029】
一方で、第2ローパスフィルタ部11と第2ハイパスフィルタ部13とを通過した中域周波数帯域のオーディオ信号は、位相反転部15において−1の乗算が行われて、位相反転が行われる。このように位相反転部15において位相反転を行うことにより、図1に示す加算部4〜7における合成処理の際の信号間の干渉を低減することが可能となる。なお、この位相反転部15における処理は、常に必要とされる処理ではなく、本実施の形態においては、フィルタ部10〜13に用いられるButterworthフィルタの次数が3次であるために、位相反転を行っている。
【0030】
音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9は、車載用のカーオーディオの操作部あるいは、カーナビゲーションシステムの操作パネル等として設けられる操作手段である。
【0031】
音像定位用バランス設定部8は、音像の定位位置を左右方向に調整する際に操作される。音像定位用バランス設定部8では、基本位置(左右のバランスが等しい位置)が0に規定されており、左側寄りに音像定位用バランス設定部8が操作されると、その操作量に応じてバランス信号が0から−1まで変動して設定されることになる。一方で、音像定位用バランス設定部8が、右側寄りに操作されると、その操作量に応じてバランス信号が0から+1まで変動して設定されることになる。
【0032】
また、音像定位用フェダー設定部9は、音像の定位位置を前後方向に調整する際に操作される。音像定位用フェダー設定部9では、基本位置(前後のバランスが等しい位置)が0に規定されており、後ろ寄りに音像定位用フェダー設定部9が操作されると、その操作量に応じてフェダー信号が0から−1まで変動して設定されることになる。一方で、音像定位用フェダー設定部9が、前側寄りに操作されると、その操作量に応じてフェダー信号が0から+1まで変動して設定されることになる。
【0033】
図4は、定位制御部3の概略構成を示したブロック図である。定位制御部3は、音像定位用バランス設定部8の操作により設定されるバランス信号および音像定位用フェダー設定部9の操作により設定されるフェダー信号に基づいて、中域周波数成分のゲイン調整を行う役割を有している。
【0034】
定位制御部3は、図4に示すように、減算部(ステレオ成分抽出手段)20と、加算部(モノラル成分抽出手段)21、加算部(中域周波数成分合成手段)22〜25と、第1ゲイン部26と、第2ゲイン部27と、重み付け部(左右重み付け付加手段、前後重み付け付加手段)28とを有している。
【0035】
減算部20は、L側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号(図4に示す「Mid L」)から、R側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号(図4に示す「Mid R」)を減算することにより、中域周波数成分のオーディオ信号から、モノラル信号すなわちセンター成分の除去を行い、ステレオ成分の抽出を行う。
【0036】
第1ゲイン部26および第2ゲイン部27では、減算部20においてセンター成分が除去されたステレオ成分の信号に対して、所定の重み付けを行う役割を有している。この第1ゲイン部26および第2ゲイン部27における重み付け処理は、後述する重み付け部28の第3ゲイン部における重み付け処理と協働することにより、加算部4〜7において、低域周波数成分および高域周波数成分のオーディオ信号に対して加算される中域周波数成分のオーディオ信号の出力レベルが、低域周波数成分および高域周波数成分のオーディオ信号に比べて高すぎるレベルとなったり低すぎるレベルとなったりすることを回避するために行われる処理である。
【0037】
本実施の形態に示す第1ゲイン部26では、センター成分が除去された信号に対して0.7071(=1/√2)の重み付けが行われ、第2ゲイン部27では、センター成分が除去された信号に対して−0.7071(=−1/√2)の重み付けが行われる。この重み付け処理における重み付けの正負の値の違いは、加算部4〜7における信号の合成処理での位相の補正を目的としたものである。
【0038】
この重み付け処理により、2チャンネルのオーディオ信号(L側チャンネルのオーディオ信号とR側チャンネルのオーディオ信号)が、チャンネル間で相関のない信号すなわちステレオ信号である場合に、加算部4〜7における信号の合成処理における、信号の干渉を抑制することが可能となる。
【0039】
一方で、加算部21は、L側チャンネルの中域周波数成分のオーディオ信号(図4に示す「Mid L」)と、R側チャンネルの中域周波数成分のオーディオ信号(図4に示す「Mid R」)との加算を行う役割を有している。加算部21により加算されたL側チャンネルおよびR側チャンネルの中域周波数成分におけるオーディオ信号は、重み付け部28に出力される。
【0040】
図5は、重み付け部28の概略構成を示したブロック図である。重み付け部28は、図5に示すように、第3ゲイン部30と、乗算部31〜36と、第1ゲイン設定部37と、第2ゲイン設定部38とを有している。
【0041】
第3ゲイン部30は、定位制御部3の加算部21において加算されたL側チャンネルおよびR側チャンネルの中域周波数成分におけるオーディオ信号に対して、重み付けを行う役割を有している。この重み付けの割合は、上述した第1ゲイン部26および第2ゲイン部27における重み付けの割合に応じて調整される。本実施の形態に係る第3ゲイン部30においては、0.5の重み付けを行う。
【0042】
第1ゲイン設定部37は、音像定位用バランス設定部8より取得したバランス信号に基づいて、乗算部31および乗算部32より中域周波数成分のオーディオ信号に対して乗算するゲインの値を設定する役割を有している。
【0043】
第1ゲイン設定部37は、図6(a)に示すような関係に従って、バランス信号に対するゲインの設定を行う。図6(a)に示すように、バランス信号が0〜−1の間の値である場合には、音像定位用バランス設定部8が左側寄りに操作されたことになる。この場合、第1ゲイン設定部37は、L側チャンネルのオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部31のゲイン(図5および図6における制御信号G1Lに対応するゲイン出力)は低減させずに(0dBを保ったままにして)、R側チャンネルのオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部32のゲイン(図5および図6における制御信号G1Rに対応するゲイン出力)を、バランス信号の値の減少に比例させて低減させる。このようにして、音像定位用バランス設定部8が左寄りに操作された場合において、R側チャンネルのオーディオ信号におけるゲインを低減させることによって、中域周波数成分におけるR側チャンネルのゲインが低減されることになり、L側チャンネルとR側チャンネルとの中域周波数成分におけるゲインの相違により、音像の定位位置を左側に移動させることが可能となる。
【0044】
一方で、図6(a)に示すように、バランス信号が0〜+1の間の値である場合には、音像定位用バランス設定部8が右側寄りに操作されたことになる。この場合、第1ゲイン設定部37は、R側チャンネルのオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部32のゲイン(図5および図6における制御信号G1Rに対応するゲイン出力)は低減させずに(0dBを保ったままにして)、L側チャンネルのオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部31のゲイン(図5および図6における制御信号G1Lに対応するゲイン出力)を、バランス信号の値の増加に反比例させるようにして低減させる。このようにして、音像定位用バランス設定部8が右寄りに操作された場合において、L側チャンネルのオーディオ信号におけるゲインを低減させることによって、中域周波数成分におけるL側チャンネルのゲインが低減されることになり、L側チャンネルとR側チャンネルの中域周波数成分におけるゲインの相違により、音像の定位位置を右側に移動させることが可能となる。
【0045】
第2ゲイン設定部38は、音像定位用フェダー設定部9より取得したフェダー信号に基づいて、乗算部33〜乗算部36により中域周波数成分のオーディオ信号に対して乗算するゲインの値を設定する役割を有している。
【0046】
第2ゲイン設定部38は、図6(b)に示すような関係に従って、フェダー信号に対するゲインの設定を行う。図6(b)に示すように、フェダー信号が0〜−1の間の値である場合には、音像定位用フェダー設定部9が後側寄りに操作されたことになる。この場合、第2ゲイン設定部38は、後側のオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部34および乗算部36のゲイン(図5および図6における制御信号G2Rに対応するゲイン出力)は低減させずに(0dBを保ったままにして)、前側のオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部33および乗算部35のゲイン(図5および図6における制御信号G2Fに対応するゲイン出力)を、フェダー信号の値の減少に比例させて低減させる。このようにして、音像定位用フェダー設定部9が後寄りに操作された場合において、前側のオーディオ信号におけるゲインを低減させることによって、中域周波数成分における前側のゲインが低減されることになり、後側と前側の中域周波数成分におけるゲインの相違により、音像の定位位置を後側に移動させることが可能となる。
【0047】
一方で、図6(b)に示すように、バランス信号が0〜+1の間の値である場合には、音像定位用フェダー設定部9が前側寄りに操作されたことになる。この場合、第2ゲイン設定部38は、前側のオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部33および乗算部35のゲイン(図5および図6における制御信号G2Fに対応するゲイン出力)は低減させずに(0dBを保ったままにして)、後側のオーディオ信号に乗算処理を行う乗算部34および乗算部36のゲイン(図5および図6における制御信号G2Rに対応するゲイン出力)を、フェダー信号の値の増加に反比例させるようにして低減させる。このようにして、音像定位用フェダー設定部9が前側寄りに操作された場合において、後側のオーディオ信号におけるゲインを低減させることによって、中域周波数成分における後側のゲインが低減されることになり、後側と前側の中域周波数成分におけるゲインの相違により、音像の定位位置を前側に移動させることが可能となる。
【0048】
乗算部31〜乗算部36は、第1ゲイン設定部37および第2ゲイン設定部38において設定されたゲインに基づく制御信号G1L、G1R、G2F、G2Rと、オーディオ信号とに基づいて乗算処理を行い、音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9により設定された音像の定位制御に対応する重み付けがなされた重み信号W1〜W4を、定位制御部3の加算部22〜加算部25に対して出力する。
【0049】
加算部22〜加算部25は、第1ゲイン部26および第2ゲイン部27において重み付け処理されたステレオ成分のオーディオ信号と、重み付け部28より出力されたモノラル成分(センター成分)に関する重み信号W1〜W4との加算を行う役割を有しており、この加算部22〜加算部25において加算処理が行われた信号は、センター成分の定位を制御するための定位制御信号C1〜C4として、音像定位制御装置1の加算部4〜加算部7にそれぞれ出力されることになる。
【0050】
音像定位制御装置1の加算部4〜加算部7では、帯域分割部2より出力される低域周波数成分と高域周波数成分とが合成されたオーディオ信号に対して、中域周波数成分における定位制御信号C1〜C4とを加算する。このように、加算部4〜加算部7で低高域周波数成分よりなるオーディオ信号に対して、モノラル成分に基づく音像の定位制御が行われた中域周波数成分のオーディオ信号を加算することにより、中域周波数成分のボーカル音部分のみを効果的に定位制御したオーディオ信号を生成することが可能となる。
【0051】
加算部4〜加算部7において加算処理された各オーディオ信号(Front R、Rear R、Front L、Rear L)は、図示を省略するパワーアンプにおいて増幅処理された後に、図7に示すように車室40内の右側前に設置されるスピーカ41(オーディオ信号Front Rが出力されるスピーカ)、右側後に設置されるスピーカ42(オーディオ信号Rear Rが出力されるスピーカ)、左側前に設置されるスピーカ43(オーディオ信号Front Lが出力されるスピーカ)、左側後に設置されるスピーカ44(オーディオ信号Rear Lが出力されるスピーカ)に対して、それぞれ対応するオーディオ信号が出力される。
【0052】
次に、本実施の形態に係る音像定位制御装置1を用いて、音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9の操作を行うことによって、車室40内の右側前に設置されるスピーカ41、右側後に設置されるスピーカ42、左側前に設置されるスピーカ43、左側後に設置されるスピーカ44より出力されるオーディオ信号の出力波形を示すことにより、音像の定位位置の制御効果について説明する。
【0053】
図8〜図14に示すグラフは、音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9を操作した状態において、右側前に設置されるスピーカ41、右側後に設置されるスピーカ42、左側前に設置されるスピーカ43、左側後に設置されるスピーカ44より出力される、モノラル音声あるいはステレオ音声におけるオーディオ信号の出力波形を示した図である。
【0054】
ここで、音像定位制御装置1に入力される音源は、サンプリング速度が48kHz、符号長32,767のM系列符号であって、モノラル音源は、L側チャンネルとR側チャンネルとの符号が同一の音源であり、ステレオ音源は、L側チャンネルとR側チャンネルとの符号が異なりほぼ無相関となっている音源である。また、図10に示すL側チャンネルのみの音源は、L側チャンネル側にのみM系列符号を入力したものである。
【0055】
なお、ステレオ音源は、いわゆる音質や臨場感を顕著に表すものであるため、音像定位用バランス設定部8や音像定位用フェダー設定部9の操作により、ステレオ音源の出力波形が大きく変化する場合には、音質や臨場感が音像の定位制御において大きく影響されていると判断することができる。
【0056】
一方で、モノラル音源は、音像定位制御装置1の重み付け部28においてバランス信号およびフェダー信号に基づいて定位制御が行われる中域周波数成分のセンター成分の音源(ボーカル音声に該当する音源)である。定位制御部3では、加算部21において加算されたL側チャンネルおよびR側チャンネルの中域周波数成分におけるセンター成分のオーディオ信号に対して、重み付け部28により定位制御処理が施される。この重み付け部28に入力されるオーディオ信号は、加算された中域周波数成分の信号であるため、L側チャンネルおよびR側チャンネルのオーディオ信号において共通する成分の信号、つまり、モノラル音源としての特性を強く有している。
【0057】
このため、音像定位用バランス設定部8や音像定位用フェダー設定部9の操作により、モノラル音源の出力波形が大きく変化する場合には、操作に応じて、音像の定位位置を効果的に制御することが可能であると判断することができる。
【0058】
図8は、モノラル音源における出力波形を示し、図9は、ステレオ音源における出力波形を示しており、図8および図9は共に、バランス信号の値が0、フェダー信号の値が0に設定されている。
【0059】
図8に示す出力波形と図9に示す出力波形とを比較すると、モノラル音源、ステレオ音源ともにほぼ同等の特性となっており、ほとんど処理を加えられずにそのまま出力されていることがわかる。
【0060】
図10は、図8および図9と同様に、バランス信号の値を0、フェダー信号の値を0に設定した状態で、音像定位制御装置1のL側チャンネルのみにモノラル音源のオーディオ信号を出力した場合に、4つのスピーカ41〜44から出力されるオーディオ信号の出力波形を示している。
【0061】
音像定位制御装置1のL側チャンネルのみにオーディオ信号を出力した場合、図10に示すように、右側前に設置されるスピーカ41より出力されるオーディオ信号(Front R)および右側後に設置されるスピーカ42より出力されるオーディオ信号(Rear R)の出力波形には、クロストーク成分が発生している。
【0062】
しかしながら、このクロストーク成分は、中域周波数成分のみに限定されており、さらに、クロストークにより発生する出力波形の信号レベルは、L側チャンネルの信号レベルに比べて12dB程度低い値となっている。このため、音像定位制御装置1に対してステレオ音源が入力される場合であっても、L側チャンネルとR側チャンネルとの間の干渉は十分に小さいものであり、音質や臨場感には影響を及ぼさないと判断することができる。
【0063】
図11は、モノラル音源における出力波形を示し、図12は、ステレオ音源における出力波形を示しており、図11および図12は共に、バランス信号の値が−1、フェダー信号の値が0に設定されている。
【0064】
図11に示す出力波形と図12に示す出力波形とを比較すると、バランス信号の値が−1に設定されているにもかかわらず、ステレオ音源の出力波形を示す図12の信号の出力波形は、バランス信号の値が0に設定されている図8および図9とほぼ同等の波形特性を示している。このように、本実施の形態に係る音像定位制御装置1では、音像定位用バランス設定部8を操作してバランス信号の値を変更した場合であっても、音源の音質や臨場感を顕著に示すステレオ音源成分の出力波形を大きく変更させる可能性が低いといえる。
【0065】
一方で、モノラル音源の出力波形を示す図11の信号の出力波形は、右側前に設置されるスピーカ41より出力されるオーディオ信号(Front R)の出力波形における中域周波数帯域の信号レベルが20dB程度減衰しており、また、右側後に設置されるスピーカ42より出力されるオーディオ信号(Rear R)の出力波形における中域周波数帯域の信号レベルが20dB程度減衰している。このため、モノラル音源に対しては、左側前に設置されるスピーカ43より出力されるオーディオ信号(Front L)の中域周波数成分における信号レベルと、左側後に設置されるスピーカ44より出力されるオーディオ信号(Rear L)の中域周波数成分における信号レベルとが相対的に20dB程度大きくなるため、音像の定位は、左側寄りに移動することになり、音像定位用バランス設定部8の設定により、ステレオ感すなわち臨場感を保持した状態のまま、ボーカル音声などを含むセンター成分(モノラル成分を有する中域周波数帯域)のみの定位が制御されることになる。
【0066】
図13は、モノラル音源における出力波形を示し、図14は、ステレオ音源における出力波形を示しており、図13および図14は共に、バランス信号の値が−1、フェダー信号の値が1に設定されている。
【0067】
図13に示す出力波形と図14に示す出力波形とを比較すると、バランス信号の値が−1に設定され、フェダー信号の値が1に設定されているにもかかわらず、ステレオ音源の出力波形を示す図14の信号の出力波形は、バランス信号の値が0に設定され、フェダー信号が0に設定されている図8および図9とほぼ同等の波形特性を示している。このように、本実施の形態に係る音像定位制御装置1では、音像定位用バランス設定部8を操作してバランス信号の値を変更し、さらに、音像定位用フェダー設定部9を操作してフェダー信号の値を変更した場合であっても、音源の音質や臨場感を顕著に示すステレオ音源成分の出力波形を大きく変更させる可能性が低い。
【0068】
一方で、モノラル音源の出力波形を示す図13の信号の出力波形は、右側前に設置されるスピーカ41より出力されるオーディオ信号(Front R)の出力波形の中域周波数帯域における信号レベルが20dB程度減衰しており、また、右側後に設置されるスピーカ42より出力されるオーディオ信号(Rear R)の出力波形の中域周波数帯域における信号レベルが40dB程度減衰している。さらに、左側後に設置されるスピーカ44より出力されるオーディオ信号(Rear L)の出力波形の中域周波数帯域における信号レベルが20dB程度減衰している。
【0069】
このように、モノラル音源に対しては、音像定位用バランス設定部8を操作してバランス信号の値を−1に設定することにより、右側に設置されるスピーカ41、42より出力されるオーディオ信号の中域周波数成分における信号レベルよりも、左側に設置されるスピーカ43,44より出力されるオーディオ信号の中域周波数成分における信号レベルの方が相対的に20dB程度大きくなるため、音像の定位は、左側寄りに移動することになる。さらに、音像定位用フェダー設定部9を操作してフェダー信号の値を1に設定することにより、後側に設置されるスピーカ42、44より出力されるオーディオ信号の中域周波数成分における信号レベルよりも、前側に設置されるスピーカ41,43より出力されるオーディオ信号の中域周波数成分における信号レベルの方が相対的に20dB程度大きくなるため、音像の定位は、前側寄りに移動することになる。
【0070】
従って、音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9を操作することにより、ステレオ感すなわち臨場感を保持した状態のまま、ボーカル音声などを含むセンター成分(モノラル成分を有する中域周波数帯域)のみの定位を前後方向および左右方向に制御することが可能となる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態に係る音像定位制御装置1を用いることにより、音像定位用バランス設定部8および音像定位用フェダー設定部9により設定されるバランス信号およびフェダー信号の値に基づいて、中域周波数帯域におけるモノラル成分(センター成分)に対して音像の定位位置制御に対応するゲイン制御を行うことができ、定位位置制御が行われた中域周波数帯域におけるモノラル成分に、中域周波数帯域におけるステレオ成分および低高域周波数成分のオーディオ信号を加算して各スピーカ41〜44より出力させることができる。このため、ボーカル音を構成する中域周波数帯域におけるモノラル成分(センター成分)に対して効果的に定位制御を行うことが可能となり、音質や臨場感を損なうことなく音像の定位位置制御を行うことが可能となる。
【0072】
また、このように中域周波数成分におけるモノラル音源のゲイン調整を行うことによって、効果的に定位位置の制御を行うことができるので、出力される音源の音質や臨場感を損なうことなく維持したまま、車室内の反射波や遮蔽の影響などを受けることなく、センター成分における音像定位制御を行うことが可能となる。
【0073】
以上、本実施の形態に係る音像定位制御装置1について、図面を用いて詳細に説明を行ったが、本発明に係る音像定位制御装置は、本実施の形態に記載された内容に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、図8〜図14に示すオーディオ信号の出力波形は、図6(a)(b)に示すバランス信号およびフェダー信号に対するゲインの設定に応じて変更することが可能であり、音像定位用バランス設定部8や音像定位用フェダー設定部9の操作に応じて制御される出力波形の特性を変更することにより、音像の定位位置を任意に制御することが可能である。
【0075】
例えば、図15(a)(b)に示すグラフは、図6(a)(b)に示したバランス信号およびフェダー信号に対するゲインの設定関係とは異なる関係を示したグラフである。図15に示すような関係を用いてバランス信号およびフェダー信号に対するゲインの設定を行うことにより、音像定位用バランス設定部8や音像定位用フェダー設定部9の操作に応じて制御される出力波形の特性を、図8〜図14に示したような出力波形の特性とは異なる特性となるように調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施の形態に係る音像定位制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る帯域分割部の概略構成を示したブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る帯域分割部において帯域分割が行われる帯域別のフィルタ特性を示した図である。
【図4】本実施の形態に係る定位制御部の概略構成を示したブロック図である。
【図5】本実施の形態に係る重み付け部の概略構成を示したブロック図である。
【図6】(a)は、本実施の形態に係る第1ゲイン設定部においてバランス信号に応じて設定されるゲインの関係の一例を示した図であり、(b)は、本実施の形態に係る第2ゲイン設定部においてフェダー信号に応じて設定されるゲインの関係の一例を示した図である。
【図7】本実施の形態に係る音像定位制御装置が設けられた車両において設置されるスピーカの配置例を示した図である。
【図8】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、モノラル音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を0、フェダー信号を0に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図9】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、ステレオ音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を0、フェダー信号を0に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図10】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、L側のチャンネルに対してのみモノラル音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を0、フェダー信号を0に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図11】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、モノラル音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を−1、フェダー信号を0に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図12】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、ステレオ音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を−1、フェダー信号を0に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図13】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、モノラル音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を−1、フェダー信号を1に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図14】本実施の形態に係る音像定位制御装置に対して、ステレオ音源のオーディオ信号を入力させ、バランス信号を−1、フェダー信号を1に設定した場合における各スピーカの出力波形を示した図である。
【図15】(a)は、本実施の形態に係る第1ゲイン設定部においてバランス信号に応じて設定されるゲインの関係の他の例を示した図であり、(b)は、本実施の形態に係る第2ゲイン設定部においてフェダー信号に応じて設定されるゲインの関係の他の例を示した図である。
【符号の説明】
【0077】
1 …音像定位制御装置
2 …帯域分割部(帯域分割手段)
3 …定位制御部
4〜7 …(音像定位制御装置における)加算部(帯域合成手段)
8 …音像定位用バランス設定部(バランス設定手段)
9 …音像定位用フェダー設定部(フェダー設定手段)
10 …(帯域分割部における)第1ローパスフィルタ部
11 …(帯域分割部における)第2ローパスフィルタ部
12 …(帯域分割部における)第1ハイパスフィルタ部
13 …(帯域分割部における)第2ハイパスフィルタ部
14 …(帯域分割部における)加算部
15 …(帯域分割部における)位相反転部
20 …(定位制御部における)減算部(ステレオ成分抽出手段)
21 …(定位制御部における)加算部(モノラル成分抽出手段)
22〜25 …(定位制御部における)加算部(中域周波数成分合成手段)
26 …(定位制御部における)第1ゲイン部
27 …(定位制御部における)第2ゲイン部
28 …(定位制御部における)重み付け部(左右重み付け付加手段、前後重み付け付加手段)
30 …(重み付け部における)第3ゲイン部
31〜36 …(重み付け部における)乗算部
37 …(重み付け部における)第1ゲイン設定部
38 …(重み付け部における)第2ゲイン設定部
40 …車室
41 …スピーカ(右側スピーカ、前側スピーカ)
42 …スピーカ(右側スピーカ、後側スピーカ)
43 …スピーカ(左側スピーカ、前側スピーカ)
44 …スピーカ(左側スピーカ、後側スピーカ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも右側スピーカと左側スピーカとを備えた車室内において、前記右側スピーカおよび前記左側スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、
前記オーディオ信号における左右方向の定位設定を行うためのバランス設定手段と、
前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、
該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、
前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、
前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記バランス設定手段により設定された左右のバランス量に対応する重み付けを付加することにより、左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とを生成する左右重み付け付加手段と、
前記左右重み付け付加手段により前記重み付けが付加された前記左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とのそれぞれに対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、
該中域周波数成分合成手段により生成された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける低高域周波数成分のオーディオ信号とを合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により生成された右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネルにおける低高域周波数成分のオーディオ信号とを合成する帯域合成手段と
を備えることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項2】
少なくとも前側スピーカと後側スピーカとを備えた車室内において、前記前側スピーカおよび前記後側スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、
前記オーディオ信号における前後方向の定位設定を行うためのフェダー設定手段と、
前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、
該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、
前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、
前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成する前後重み付け付加手段と、
前記前後重み付け付加手段により前記重み付けが付加された前記前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号を、右側チャンネルおよび左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用のオーディオ信号に分割すると共に、さらに、前記後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号を、右側チャンネルおよび左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用のオーディオ信号に分割し、分割された全てのオーディオ信号に対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、
該中域周波数成分合成手段により合成された前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により合成された前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成する帯域合成手段と
を備えることを特徴とする音像定位制御装置。
【請求項3】
少なくとも前後左右に4個のスピーカを備えた車室内において、各スピーカに出力されるステレオ音源のオーディオ信号に対する音像の定位制御処理を行うための音像定位制御装置であって、
前記オーディオ信号における左右方向の定位設定を行うためのバランス設定手段と、
前記オーディオ信号における前後方向の定位設定を行うためのフェダー設定手段と、
前記ステレオ音源のオーディオ信号を左側チャンネルおよび右側チャンネルにおける低高域周波数成分と中域周波数成分とに帯域分割する帯域分割手段と、
該帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、共通する信号特性を備えるモノラル成分のオーディオ信号を抽出するモノラル成分抽出手段と、
前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号と右側チャンネルにおける中域周波数成分のオーディオ信号とに基づいて、相異なる信号特性を備えるステレオ成分のオーディオ信号を抽出するステレオ成分抽出手段と、
前記モノラル成分抽出手段により抽出されたモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記バランス設定手段により設定された左右のバランス量に対応する重み付けを付加することにより、左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号と、右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号とを生成する左右重み付け付加手段と、
該左右重み付け付加手段により生成された左側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記左側チャンネルにおける前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成すると共に、前記左右重み付け付加手段により生成された右側チャンネルにおけるモノラル成分のオーディオ信号に対して、前記フェダー設定手段により設定された前後のフェダー量に対応する重み付けを付加することにより、前記右側チャンネルにおける前側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける後側スピーカ用のモノラル成分のオーディオ信号とを生成する前後重み付け付加手段と、
前記左右重み付け付加手段および前記前後重み付け付加手段により左右のバランス量および前後のフェダー量に対応する重み付けが行われた全てのオーディオ信号に対して、前記ステレオ成分抽出手段により抽出されたステレオ成分のオーディオ信号を合成することにより、前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号と、前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号とを生成する中域周波数成分合成手段と、
該中域周波数成分合成手段により合成された前記右側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記右側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された右側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成すると共に、前記中域周波数成分合成手段により合成された前記左側チャンネルにおける前記前側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号および前記左側チャンネルにおける前記後側スピーカ用の中域周波数成分のオーディオ信号に対して、前記帯域分割手段により帯域分割された左側チャンネル用の低高域周波数成分のオーディオ信号を合成する帯域合成手段と
を備えることを特徴とする音像定位制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−124283(P2010−124283A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296503(P2008−296503)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】