説明

音声マスキングシステム

【課題】十分な省エネルギーを図ることができる音声マスキングシステムの提供。
【解決手段】当事者領域Pと聴開禁止領域Qとが設定され、聴開禁止領域にマスキング音を出力するマスキング音出力手段Lと、マスキング音出力手段の作動を制御する制御手段と、当事者領域に当事者Yが存在するか否かを検出する当事者検出手段と、聴開禁止領域に第三者Zが存在するか否かを検出する第三者検出手段とが設けられ、制御手段が、当事者検出手段にて当事者が検出されかつ第三者検出手段にて第三者が検出されている場合には、マスキング音出力手段にてマスキング音を出力させ、且つ、当事者検出手段にて当事者が検出されていない場合及び第三者検出手段にて第三者が検出されていない場合には、マスキング音の出力を停止するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当事者が音声を発して会話又は通話をする当事者領域と、前記当事者領域で発生する当事者の音声を第三者に対して聞き取り難くする聴開禁止領域とが設定され、前記聴開禁止領域に対してマスキング音を出力するマスキング音出力手段と、前記マスキング音出力手段の作動を制御する制御手段とが設けられた音声マスキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記音声マスキングシステムでは、当事者が音声を発して会話又は通話をする当事者領域と、当事者領域で発生する当事者の会話又は通話を第三者に対して聞き取り難くする聴開禁止領域と、聴開禁止領域に位置する第三者に対してマスキング音を出力するマスキング音出力手段と、このマスキング音出力手段の作動を制御する制御手段とが備えられ、制御手段が、マスキング音出力手段の作動を制御して、第三者にマスキング音を聞かせることで当事者の会話が第三者に聞き取られないようにするものである。これにより会話する当事者のプライバシーの保護を図っている。なお、マスキング音としては、小鳥のさえずりや川のせせらぎ等の環境音、チャイム音や音楽等の他、当事者の会話の音声と逆位相の音が用いられる。
【0003】
このような、音声マスキングシステムに関する従来技術として、第三者が聞くことになるマスキング音を極力減らすべく、会話する当事者が存在しないときにはマスキング音出力手段からマスキング音を出力しないようにしたものがある(例えば、特許文献1の段落「0012」〜「0014」参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−19935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の音声マスキングシステムであると、会話をする当事者が当事者領域に存在しない場合はマスキング音が出力されないため、第三者はマスキング音を聞かずに済むが、会話する当事者が当事者領域に存在すると、聴開禁止領域に第三者が存在していなくてもマスキング音が出力される。したがって、従来の音声マスキングシステムは、第三者に聞かれる心配のないときまで無駄なマスキング音が出力されるものであるため、省エネルギーの点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、十分な省エネルギーを図ることができる音声マスキングシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る音声マスキングシステムの第1特徴構成は、当事者が音声を発して会話又は通話をする当事者領域と、前記当事者領域で発生する当事者の音声を第三者に対して聞き取り難くする聴開禁止領域とが設定され、前記聴開禁止領域に対してマスキング音を出力するマスキング音出力手段と、前記マスキング音出力手段の作動を制御する制御手段とが設けられた音声マスキングシステムにおいて、
前記当事者領域に当事者が存在するか否かを検出する当事者検出手段と、前記聴開禁止領域に第三者が存在するか否かを検出する第三者検出手段とが設けられ、前記制御手段が、前記当事者検出手段にて当事者が検出されかつ前記第三者検出手段にて第三者が検出されている場合には、前記マスキング音出力手段にてマスキング音を出力させ、且つ、前記当事者検出手段にて当事者が検出されていない場合及び前記第三者検出手段にて第三者が検出されていない場合には、前記マスキング音出力手段によるマスキング音の出力を停止するように構成されている点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、当事者領域に当事者が存在することに加えて、聴開禁止領域に第三者が存在しているときに、聴開禁止領域に対してマスキング音が出力される。また、当事者領域に当事者が存在しないときや聴開禁止領域に第三者が存在しないときは、聴開禁止領域に対してマスキング音は出力されない。つまり、当事者領域に当事者が存在していても、聴開禁止領域に第三者が存在していなければ、聴開禁止領域に対してマスキング音は出力されないので、聴開禁止領域に第三者が存在しておらず当事者領域で当事者が会話又は通話しても当事者の会話又は通話が第三者に聞かれる心配のないときにまで、マスキング音を出力することはない。このように、本特徴構成によると、無駄なマスキング音の出力をしなので、十分な省エネルギーを図ることができる音声マスキングシステムを得るに至った。
【0009】
本発明に係る音声マスキングシステムの第2特徴構成は、前記聴開禁止領域が、複数の検出対象区域からなり、前記第三者検出手段が、前記複数の検出対象区域の夫々について第三者が存在するか否かを検出するように構成され、前記マスキング音出力手段が、前記複数の検出対象区域の夫々に対応させた状態で複数設けられ、前記制御手段が、前記第三者検出手段の検出情報に基づいて、前記複数のマスキング音出力手段のうち第三者が存在する前記検出対象区域についての前記マスキング音出力手段からのみマスキング音が出力されるように、前記複数のマスキング音出力手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、マスキング音が出力される場合は、複数のマスキング音出力手段のうち第三者が存在する検出対象区域についてのマスキング音出力手段からのみマスキング音が出力されるので、第三者が存在しない検出対象領域に対して不要なマスキング音が出力されることがなく、より一層の省エネルギーを図ることができる。
【0011】
本発明に係る音声マスキングシステムの第3特徴構成は、前記複数の検出対象区域の全て又は一部に対応して、その検出対象区域に存在する第三者と会話するための予定当事者領域が設定され、前記当事者検出手段が、当事者が前記予定当事者領域に存在するか否かを判別自在に構成され、前記制御手段が、前記当事者検出手段の判別情報に基づいて、当事者が存在する前記予定当事者領域を前記当事者領域として設定するように構成され、かつ、当事者が存在する前記予定当事者領域に対応する前記検出対象区域については、前記第三者検出手段にて第三者の存在が検出されていても、前記マスキング音出力手段によるマスキング音の出力を停止するように構成されている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、複数の検出対象区域のうち、第三者検出手段により第三者が存在することが検出されていても、その検出対象区域が、当事者検出手段により当事者が存在していると判別された予定当事者領域に対応する検出対象区域であれば、当該検出対象区域に対しては、マスキング音出力手段のマスキング音は出力されない。したがって、当事者が当事者領域に存在しかつ第三者が聴開禁止領域に存在しているためにマスキング音が出力される場合でも、当事者領域として選択設定された予定当事者領域に対応する検出対象区域についてのマスキング音出力手段からマスキング音は出力されない。したがって、例えば、聴開禁止領域に位置する者と会話をするために当事者が聴開禁止領域に近接する位置に存在している場合などは、当事者の位置に応じて選択設定された当事者領域と、聴解禁止領域が重なることが考えられるが、そのような場合であっても、聴開禁止領域に位置する者との会話がマスキング音に邪魔されることを回避しながら、聴開禁止領域に位置する第三者にその会話が聞こえることを防止できる。
【0013】
本発明に係る音声マスキングシステムの第4特徴構成は、当事者存在予定位置と第三者存在予定位置とを会話可能に近付ける状態で設定した会話可能領域が複数設定され、前記当事者検出手段が、前記複数の会話可能領域の夫々について、前記当事者存在予定位置に存在する当事者を検出自在な状態で設けられ、前記制御手段が、前記複数の会話可能領域のうち前記当事者検出手段にて当事者の存在が検出されかつ前記第三者検出手段にて第三者の存在が検出されているものを前記当事者領域として判別し、且つ、前記複数の会話可能領域のうち前記当事者検出手段にて当事者の存在が検出されていないものを前記聴開禁止領域として判別するように構成されている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、複数の会話可能領域の何れかにおいて第三者と会話をする場合に、他の会話可能領域に存在する第三者に会話を聞かれないようにすることができる。
すなわち、複数の会話可能領域のうちいずれかで第三者と会話を行う場合は、会話を行う会話可能領域においては、当事者検出手段にて当事者の存在が検出され、かつ第三者検出手段にて第三者の存在が検出されるので、制御手段は、その会話が行われる会話可能領域を当事者領域として、マスキング音の出力制御を行うことになる。
それにより、当該会話可能領域とは異なる会話可能領域に第三者が存在すれば、その会話可能領域は聴開禁止領域であるからマスキング音出力手段からマスキング音が出力され、会話が行われる会話可能領域は当事者領域であるから、マスキング音は出力されない。
このように、複数の会話可能領域の何れかにおいて第三者と会話をする場合に、他の会話可能領域に存在する第三者に会話を聞かれないようにすることができる。
【0015】
本発明に係る音声マスキングシステムの第5特徴構成は、前記制御手段が、前記マスキング音よりも優先して出力すべき優先通知情報を受信自在でかつ受信した優先通知情報を前記マスキング音出力手段にて出力自在に構成され、且つ、前記マスキング音を出力しているときに前記優先通知情報を受信した場合は、前記マスキング音に代えて前記優先通知情報を出力するべく、前記マスキング音出力手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、複数のマスキング音出力手段を、マスキング音の出力と優先通知情報の出力との双方に兼用できるため、優先通知情報を出力するためのスピーカ等を別途設ける必要がなく、設備構成の簡素化を図ることができる。さらに、制御手段は、マスキング音を出力しているときに優先通知情報を受信した場合は、マスキング音に代えて優先通知情報を全てのマスキング音出力手段から出力するべく、複数のマスキング音出力手段の作動を制御するので、聴開禁止領域の第三者がマスキング音を聞いていたがために優先通知情報を聴き損ねるといった不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の全体構成平面図
【図2】第1実施形態の全体構成側面図
【図3】第1実施形態において予定当事者領域が当事者領域となる場合の平面図
【図4】第1実施形態において予定当事者領域が当事者領域となる場合の側面図
【図5】第1実施形態の制御ブロック図
【図6】第1実施形態のマスキング音出力制御のフローチャート
【図7】第1実施形態の緊急放送出力制御のフローチャート
【図8】第2実施形態の全体構成斜視図
【図9】第2実施形態の全体構成平面図
【図10】第2実施形態の制御ブロック図
【図11】第2実施形態のマスキング音出力制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る音声マスキングシステムの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
この実施形態では、音声マスキングシステムが薬局に設けられている。薬局では、薬剤師により、医師の作成した患者毎の処方箋に基づいて薬が調剤され、各患者に投薬される。投薬の際には、薬剤師は、薬の効能などを患者に説明するが、説明の内容は患者にとってのプライベートな内容を含むため、音声マスキングシステムにより、周囲に存在する第三者に薬剤師と患者との会話内容が聞こえないようにしている。
【0020】
図1及び図2に示すように、薬局には薬剤士Yが患者Xへの投薬作業を行う投薬カウンタ1が設けられ、投薬の順番待ちをする待合人Zが着座する待合椅子2が複数配置されている。そのため、薬局の室内空間には、当事者としての薬剤師Y及び患者Xが音声を発して会話をする当事者領域Pが、投薬カウンタ1が位置する箇所に形成され、当事者領域Pで発生する薬剤師Y及び患者Xの音声を第三者に対して聞き取り難くする聴解禁止領域としての待合領域Qが、待合椅子2の位置する箇所に形成される。図1では、当事者空間Pに位置する投薬カウンタ1にて一人の患者Xが薬剤師Yからの説明を受け、その間、待合領域Qに位置する待合椅子2にて二人の待合人Z1・Z2が順番待ちをしている様子を例示している。
【0021】
投薬カウンタ1には、薬剤師Yから投薬を受ける患者Xを検出するためカウンタ側当事者センサScが設けられている。本実施形態では、カウンタ側当事者センサScは、検出光を投光する投光部とこの投光部から投射されて被検出体(この場合、患者X)により反射される光を検出する受光部を備えた拡散反射式の光センサを採用している。カウンタ側当事者センサScは、投薬カウンタ1の待合領域Q側の側面部に、検出光の光軸が水平向きとなる姿勢で取り付けられており、その検出最大距離が1m程度になるように検出感度が調節されている。
【0022】
投薬カウンタ1の側面におけるカウンタ側当事者センサScの周辺部にはカウンタセンサ光遮蔽用カード8を挿入するためのカードホルダ3が設けられている。このカードホルダ3は、後述するように、患者Xが老人である場合等に薬剤師Yが待合椅子2で着座している患者Xの正面まで出向いて行って当該患者Xに投薬を行う場合に、薬剤師Yが携帯するカウンタセンサ光遮蔽用カード8を挿入するためのものである。
【0023】
カウンタ側当事者センサScの検出信号は、制御手段としてのシステムコントローラHに送信される(図5参照)。システムコントローラHは、壁面に設けられた制御ボックス4に内装されており、カウンタ側当事者センサScの検出信号に基づいて投薬カウンタ1に会話の当時者である患者Xが存在するか否かを判別する当事者位置判別部M1をプリグラム形式で備えている。つまり、システムコントローラHが備える当事者位置判別部M1及びカウンタ側当事者センサScが、当事者を検出する当事者検出手段D1として機能する。
【0024】
待合椅子2は、複数の着座予定位置に仕切られている。具体的には、待合椅子2に長椅子を用いる場合、肘掛や座面の凹凸により仕切ればよく、また、一脚ずつ独立した椅子を並べて構成してもよい。このように待合椅子2を複数の着座予定位置に仕切っておくことで、各待合人が複数の着座予定位置の何れかに適正に着座させることができる。
【0025】
着座予定位置の上方には、待合領域Qに存在する第三者としての待合人を検出するための複数の待合人検出センサSmが設けられている。複数の待合人検出センサSmの夫々は、複数の着座予定位置に対応させて天井側に設置されている。各待合人検出センサSmは、カウンタ側当事者センサScと同様に拡散反射式の光センサであり、対応する着座予定位置に着座している待合人Zを検出できるように検出感度が調節されている。なお、図1及び図3では各センサの取り付け位置に対応する位置を黒点にて示している。
【0026】
待合人検出センサSmの検出信号は、システムコントローラHに送信される(図5参照)。システムコントローラHは、待合人検出センサSmの検出信号に基づいて投薬カウンタ1に第三者である待合人Zが存在するか否かを判別する待合人位置判別部M2をプログラム形式で備えている。つまり、システムコントローラHが備える待合人位置判別部M2及び待合人検出センサSmが、待合領域Qに存在する待合人Zを検出する第三者検出手段D2として機能する。
【0027】
このように、待合領域Qは、複数の検出対象区域q1〜q5からなっており、待合領域Qに第三者としての待合人Zが存在するか否かを検出する第三者検出手段D2が、複数の検出対象区域q1〜q5の夫々について待合人Zが存在するか否かを検出するように構成されている。
【0028】
天井における待合人検出センサSmの取り付け位置に近接する箇所に、待合領域Qに対してマスキング音を出力するマスキング音出力手段としての指向性スピーカLが複数設けられている。指向性スピーカLは、待合椅子2の各着座予定位置について設定されている検出対象区域に相当する広さの指向性音場を形成する。つまり、複数の指向性スピーカLの夫々は、その指向性音場が検出対象区域q1〜q5に対応する状態で配置されている。
【0029】
複数の指向性スピーカLは、システムコントローラHに接続されており(図5参照)、システムコントローラHにより、各別に制御される。システムコントローラHは、マイコン及びそれが実行するプログラムが実装されて指向性スピーカLへの出力信号を制御する出力演算部や、指向性スピーカLへの出力信号を増幅するアンプ部などを備えて構成されているが図示は省略する。
【0030】
図3及び図4に示すように、待合椅子2の前方側(投薬カウンタ1側)の空間の上方には、待合椅子2に着座している患者Xに投薬及び説明をする薬剤師Yを検出するための複数の待合側当事者センサStが、待合領域Qの検出対象区域q1〜q5の並び方向に沿って並ぶ状態で、検出光の光軸が上下方向に沿う姿勢で取り付けられている。各待合側当事者センサStは、カウンタ側当事者センサScと同様に拡散反射式の光センサであり、対応する着座予定位置に着座している待合人Zに投薬する薬剤師Yを検出できるように検出感度が調節されている。なお、図1及び図3では各センサの取り付け位置に対応する位置を黒点にて示している。
【0031】
図5に示すように、システムコントローラHには、入力として、複数(5個)の待合人検出センサSm、単一のカウンタ側当事者センサSc、及び、複数(5個)の待合側当事者センサStが接続され、出力として、複数(5個)の指向性スピーカLが接続されている。
【0032】
システムコントローラHは、複数の待合人検出センサSmの検出状態から待合領域Qにおける複数の検出対象区域q1〜q5のいずれに待合人Zが存在するかを判別する待合人位置判別部M2をプログラム形式で備えている。このように、第三者検出手段D2としての複数の待合人検出センサSm及び待合人位置判別部M2が、複数の検出対象区域q1〜q5の夫々について待合人Zが存在するか否かを検出するように構成されている。
【0033】
また、システムコントローラHは、カウンタ側当事者センサSc及び複数の待合側当事者センサStの検出情報から、薬剤師Yが投薬カウンタ1側及び待合椅子2側のいずれに存在するかを判別する当事者位置判別部M1をプログラム形式で備えている。これより、投薬カウンタ1に位置する患者X及び待合椅子2に着座している患者Xのうち、いずれの患者Xに薬剤師Yが投薬しているかを把握できる。
【0034】
説明を加えると、システムコントローラHの記憶部には、投薬カウンタ1の位置を基準とする基本領域P0、及び、待合椅子2における5つの着座予定位置を基準とする第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5が予め記憶されている。第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5は、検出対象区域q1〜q5に存在する待合人Zを患者Xとして薬剤師Yが会話するための予定当事者領域である。
【0035】
そして、システムコントローラHは、カウンタ側当事者センサScが検出状態(オン状態)でありかつ複数の待合側当事者センサStのいずれもが非検出状態(オフ状態)であると、当事者位置判別部M1により、薬剤師Yが投薬カウンタ1にて患者Xに対して投薬を行っている、つまり、薬剤師Yが基本領域P0に存在していると判別され、当事者領域Pが基本領域P0に設定される。
【0036】
例えば、図1に示すような状況では、カウンタ側当事者センサScは投薬を受ける患者Xにより検出状態(オン状態)となっており、薬剤師Yが投薬カウンタ1で投薬を行っているため、待合領域Qにおける全ての検出対象区域q1〜p5に対応する全ての待合側当事者センサStは非検出状態(オフ状態)となっている。そのため、当事者位置判別部M1により、当事者領域Pが基本領域P0に設定される。
【0037】
一方、カウンタ側当事者センサScが検出状態(オン状態)でありかつ複数の待合側当事者センサStのいずれかが検出状態(オン状態)であると、当事者位置判別部M1により、薬剤師Yが待合椅子2に着座している患者Xまで出向いて当該患者Xに対して投薬を行っている、つまり、5つの予定当事者領域(第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5)のうち検出状態(オン状態)となっている待合側当事者センサStに対応する着座予定位置が属する予定当事者領域に薬剤師Yが存在していると判別され、その検出状態(オン状態)となっている待合側当事者センサStの位置に基づいて、当事者領域Pが第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5の何れかに設定される。
【0038】
例えば、図3に示すような状況では、図4に示すように、カウンタ側当事者センサScは薬剤師Yがカードホルダ3にセットしたカウンタセンサ光遮蔽用カード8により検出状態(オン状態)となっており、待合領域Qにおける第4検出対象区域q4に着座している待合人Zを投薬対象の患者として薬剤師Yが投薬を行うことにより、第4検出対象区域q4に対応する位置の待合側当事者センサStが検出状態(オン状態)となっている。そのため、当事者位置判別部M1により、当事者領域Pが、第4待合側領域P4に設定される。
【0039】
なお、本実施形態では、当事者位置判別部M1がカウンタ側当事者センサSc及び複数の待合側当事者センサStの検出情報に基づいて、何れの予定当事者領域に薬剤師Yが存在するかを判別するに当って、待合人位置判別部M2が判別した待合人Zの位置の中に、当事者位置判別部M1にて薬剤師Yが存在していると判別された予定当事者領域に対応する着座予定位置に位置している待合人Zが存在することを確認する処理を加えることで、当事者である薬剤師Yが存在している予定当事者領域の判別精度を向上させ、適切な当事者領域Pを設定できるようになっている。
【0040】
このように、当事者検出手段D1を構成するカウンタ側当事者センサSc及び複数の待合側当事者センサSt並びに当事者位置判別部M1は、薬剤師Yが複数の予定当事者領域の何れに存在するかを判別可能に構成され、システムコントローラHは、当事者検出手段D1にて判別される薬剤師Yが存在する予定当事者領域を当事者領域Pとして設定するように構成されている。
【0041】
図3において第4待合側領域P4にて例示すように、予定当事者領域の夫々は、平面視で薬剤師Yと患者Xの双方が囲まれる大きさの領域が設定される。第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5の夫々は、待合椅子2に着座している患者X及びそれに正対する薬剤師Yを囲むことから、待合領域Qと一部が重複する領域となっている。そのため、例えば、図3に示す状況では、第4待合側領域P4が当事者領域Pとなり、このとき当事者領域Pは待合領域Qにおける検出対象区域q4と重複することになる。
【0042】
システムコントローラHは、当事者検出手段D1にて当事者が検出されておりかつ第三者検出手段D2にて待合人Zが検出されている場合には、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させ、且つ、当事者検出手段D1にて投薬する薬剤師が検出されていない場合(つまり投薬されている患者Xが検出されていない場合)及び第三者検出手段D2にて待合人が検出されていない場合には、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させないように構成されている。
【0043】
本実施形態では、指向性スピーカLから出力されるマスキング音として環境音(川のせせらぎや小鳥のさえずり等)を採用している。そして、薬剤師Yによる投薬が行われていておりかつ他の待合人Zが存在している場合にのみマスキング音を出力することにより、投薬を受けている患者Xについての薬剤師Yの説明が他の待合人Zに聞こえないようして患者Xのプライバシーの保護を図りつつ、無駄なマスキング音の出力を極力行わないようにして十分な省エネルギーを図っている。
【0044】
システムコントローラHは、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させる場合、第三者検出手段D2の検出情報に基づいて、複数の指向性スピーカLのうち待合人Zが存在する検出対象区域qについての指向性スピーカLからのみマスキング音が出力されるように、複数の指向性スピーカLの作動を制御する。
【0045】
このように、複数の指向性スピーカLを配列して待合人Zが存在する検出対象領域qについての指向性スピーカLだけからマスキング音を出力することで、待合人Zが存在する検出対象区域だけを対象としてマスキング音を限定的に出力することができる。したがって、一層の省エネルギーを図ることができる。
【0046】
さらに、システムコントローラHは、薬剤師Yが存在する予定当事者領域P1〜P5に対応する検出対象区域qについては、第三者検出手段D2にて待合人Zの存在が検出されていても、指向性スピーカLによるマスキング音の出力を停止するように構成されている。具体的には、システムコントローラHは、当事者検出手段D1にて設定された当事者領域Pと予め設定されている待合領域Qとが少なくとも一部において重複するか否かを判別し、重複する場合には、複数の検出対象区域q1〜q5のうち、待合領域Qにおける、当事者領域Pとの重複部分が属する検出対象区域については、第三者検出手段D2にて待合人Zの存在が検出されていても、その検出情報を無効とするように構成されている。
【0047】
これにより、薬剤師Yが待合椅子2に着座している患者Xの位置まで出向いて投薬を行う場合にも、患者Xのプライバシーの保護を図ることができる。すなわち、当該投薬を受ける患者Xが着座している位置に対応する待合人検出センサSmは検出状態(オン状態)となっているが、当該待合人検出センサSmの検出情報を無効とすることで、この患者Xの着座位置に対応する指向性スピーカLからはマスキング音は出力されないことになる。そして、他の着座予定位置に患者Xとは別の待合人Zが着座していれば、その待合人Zに対しては、対応する指向性スピーカLからマスキング音が出力されることになる。
【0048】
図5に示すように、システムコントローラHは、マスキング音よりも優先して出力すべき優先通知情報として緊急放送情報を配信する緊急放送用機器5と接続されている。これにより、システムコントローラHは、優先通知情報としての緊急放送情報を受信自在に構成され、システムコントローラHは、受信した緊急放送情報を全ての指向性スピーカLから出力するべく、複数の指向性スピーカLの作動を制御する。これにより、複数の指向性スピーカLを、マスキング音の出力と緊急放送情報の出力との双方に兼用できるため、緊急放送情報を放送するためのスピーカ等を別途設ける必要がなく、設備構成の簡素化を図ることができる。
【0049】
さらに、システムコントローラHは、マスキング音を出力しているときに緊急放送用機器5から緊急放送情報を受信した場合は、マスキング音に代えて緊急放送情報を全ての指向性スピーカLから出力するべく、複数の指向性スピーカLの作動を制御する。これにより、待合人Zがマスキング音を聞いていたがために緊急放送を聴き損ねるといった不都合を回避できる。
【0050】
次に、システムコントローラHによるマスキング音出力制御の制御動作について図6に示すフローチャートに基づいて説明する。図6に示すように、まず、ステップ#11において、投薬カウンタ1に患者Xが位置することで又は薬剤師Yによりカウンタのカードホルダ3にカウンタセンサ光遮蔽用カードが挿入されていることで、カウンタ側当事者センサScが検出状態(オン状態)となっているかチェックし、検出状態であるとステップ#12へ移行する。カウンタ側当事者センサScが非検出状態(オフ状態)であれば、マスキング音は出力されない。
【0051】
ステップ#12では、待合椅子2に待合人Zが存在するかチェックされる。つまり、待合人位置判別部M2が、待合人検出センサSmが検出状態(オン状態)であるか否かをチェックし、検出状態(オン状態)であれば、ステップ#13に移行する。待合人検出センサSmが非検出状態(オフ状態)であれば、マスキング音は出力されない。
【0052】
ステップ#13では、当事者位置判別部M1及び待合人位置判別部M2により、薬剤師Yが投薬カウンタ1で投薬を行っているのか、待合領域Qに位置する患者Xに前で投薬を行っているのかを判別して、当事者領域Pを設定するべく、薬剤師位置確認処理が実行される。この処理では、当事者位置判別部M1が、カウンタ側当事者センサSc及び複数の待合側当事者センサStの検出情報に基づいて、薬剤師Yの位置を判別し、基本領域P0、第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5のいずれかから適切な領域を選択して当事者領域Pを設定する。なお、先に説明した通り、待合人位置判別部M2の判別情報を当事者位置判別部M1の判別結果の検証に利用することで、薬剤師位置確認処理による薬剤師Yの位置判別精度を高くしている。
【0053】
薬剤師Yが投薬カウンタ1において患者Xに投薬を行っていれば、ステップ#13で当事者位置Pが基本領域P0に設定され、これによりステップ#14では、ステップ#15へ移行する。ステップ#15では、ステップ#12で待合人位置判別部M2により待合人Zが存在している検出対象区域qであると判別された検出対象区域qに対応する指向性スピーカLからマスキング音を出力する。
【0054】
薬剤師Yが待合領域Qの患者Xに対して投薬を行っていれば、ステップ#13で当事者位置Pが、第1待合側領域P1〜第5待合側領域P5のうち当該患者Xの着座位置に対応した領域が設定される。そして、この場合は、ステップ#14では、ステップ#16に移行する。
【0055】
ステップ#16では、ステップ#12で待合人位置判別部M2が判別した待合人Zの着座している検出対象区域qに対応する指向性スピーカLのうち、当事者領域Pとの重複部分が属する検出対象区域qについての指向性スピーカL、つまり、当該患者Xの頭上に位置する指向性スピーカLからはマスキング音を出力せず、他の待合人Zの着座している検出対象区域に対応する指向性スピーカLからだけマスキング音を出力する。
【0056】
システムコントローラHが上述したマスキング音出力制御を実行している間に、マスキング音よりも優先して出力すべき優先通知情報として、例えば、火災発生情報や緊急地震速報などの緊急通知情報が、緊急放送用機器から送信されると、システムコントローラHは、割り込み処理として、緊急放送出力制御を行う。緊急放送出力制御では、図7に示すように、いずれかの指向性スピーカLからマスキング音を出力している最中であれば、その指向性スピーカLからのマスキング音の出力を中止した上で、全ての指向性スピーカLから緊急放送を出力するべく、複数の指向性スピーカLの作動を制御する。
【0057】
〔第2実施形態〕
この実施形態では、音声マスキングシステムが街頭や地下街、オフィスビルの共用スペースなどの公共スペースに設けられた例を説明する。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態における構成に対応する構成については、同じ符号を付して簡易な説明としている。
【0058】
公共スペースにおいて携帯電話による通話を行う場合、通話内容には通話人のプライベートな内容が含まれるため、音声マスキングシステムにより、周囲に存在する第三者である通行人等に通話内容が聞こえないようにしている。
【0059】
図8及び図9に示すように、公共スペースに支柱6が設置されており、この支柱6の高さ約2mの位置に、通話人検出センサS1と、複数の通行人検出センサS2と、複数の指向性スピーカLと、システムコントローラH(図10参照)を内装する制御ボックス4が取り付けられている。なお、支柱6は街灯など既存のものを利用することができる。
【0060】
支柱6を中心とする円錐状の空間が、当事者としての通話人Yが音声を発して通話をする当時者領域Pに設定され、その当事者領域Pの周囲を囲むように、当事者領域Pで発生する通話人Yの音声を第三者としての通行人Zに聞き取り難くする聴開禁止領域としてのサウンド領域Qが設定されている。
【0061】
通話人検出センサS1は、当事者領域Pに対応する円錐状の検出領域を有するエリアセンサを採用しており、検出領域が下向きとなる姿勢でセンサ支持棒にて支持されている。通話人Yが携帯電話で通話を行う場合に支柱6に近接した位置に立つことで、通話人検出センサS1の検出光が通話人Yに検出作用して、通話人検出センサS1は検出状態(オン状態)となる。
【0062】
通行人検出センサS2も、円錐状の検出領域を有するエリアセンサを採用しており、検出領域が斜め下方に向く姿勢で支柱6に支持されている。複数(12個)の通行人検出センサS2は、夫々の検出対象区域q1〜q12が平面視で支柱6を中心として放射状に並ぶように配置されている。このように、サウンド領域Qは、複数の検出対象区域q1〜q12に区分けされ、サウンド領域Qに存在する通行人Zを検出する第三者検出手段が設けられ、この第三者検出手段は、複数の検出対象区域q1〜q12の夫々について通行人Zが存在するか否かを検出する。
【0063】
指向性スピーカLは、放射状に広がるその出力音場が斜め下方に向く姿勢で取り付けられており、サウンド領域Qに対してマスキング音を出力する。さらに、複数の指向性スピーカLは、平面視での取り付け位置が通行人センサS2と一致し、かつ、夫々の音場が平面視で支柱6を中心として放射状に並ぶように配置されている。つまり、複数の指向性スピーカLの夫々は、その指向性音場が検出対象区域q1〜q12に対応する状態で配置されている。このように指向性スピーカLを配置することにより、通話人Yは、複数の指向性スピーカLにより形成される音場を仮想的に合体させると形成されるマスキング音場で囲まれる空間内に位置することになる。
【0064】
図10に示すように、システムコントローラHには、入力として、単一の通話人検出センサS1、及び、複数(12個)の通行人検出センサS2が接続され、出力として、複数(12個)の指向性スピーカL、及び、表示装置7が接続されている。表示装置7は、通話人Yが存在することを周囲の者が認識できるようにその旨を表示するためのものであり通話人Yが支柱6の近傍に存在しない場合は消灯され、通話人Yが支柱6の近傍に存在する場合に点灯される。
【0065】
そして、システムコントローラHがプログラム形式で備える通話人検出部M3が、通話人検出センサS1の検出情報に基づいて、通話人Yの有無を判別する。つまり、通話人検出センサS1及び通話人検出部M3が、当事者としての通話人Yを検出する当事者検出手段D1として機能する。
【0066】
また、システムコントローラHがプログラム形式で備える通行人位置判別部M4が、複数の通行人検出センサS2の検出情報に基づいて、サウンド領域Qにおける複数の検出対象区域q1〜q12の夫々について通行人Zの有無を判別する。つまり、複数の通行人検出センサS2及び通行人位置判別部M4が、複数の検出対象区域q1〜q12の夫々について第三者としての通行人Zが存在するか否かを検出する第三者検出手段D2として機能する。
【0067】
システムコントローラHは、通話人検出センサS1にて通話人Yが検出されておりかつ通行人検出センサS2にて通行人Zが検出されている場合には、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させ、且つ、通話人検出センサS1にて通話人Yが検出されていない場合及び通行人検出センサS2にて通行人Zが検出されていない場合には、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させない。
【0068】
システムコントローラHは、指向性スピーカLにてマスキング音を出力させる場合、通行人位置判別部M4にて通行人検出センサS2の検出情報に基づいて複数の指向性スピーカLのうち通行人Zが存在する検出対象区域qを判別し、通行人Zが存在する検出対象区域qについての指向性スピーカLからのみマスキング音が出力されるように、複数の指向性スピーカLの作動を制御する。
【0069】
次に、システムコントローラHによるマスキング音出力制御の制御動作について図11に示すフローチャートに基づいて説明する。図11に示すように、まず、ステップ#21において、通話人検出部M3にて通話人検出センサS1の検出情報に基づいて当事者領域Pに通話人Yが存在するかがチェックされる。通話人Yが支柱6の近傍に位置していることで、通話人検出センサS1が検出状態(オン状態)であると、ステップ#22で表示装置7を点灯させた後、ステップ#23へ移行する。通話人検出センサS1が非検出状態(オフ状態)であれば、マスキング音は出力されない。
【0070】
ステップ#23では、サウンド領域Qに通行人Zが存在するかチェックされる。つまり、通行人位置判別部M4が、複数の検出対象区域q1〜q12の夫々について通行人検出センサS2が検出状態(オン状態)であるか否かをチェックし、いずれかの検出対象区域q1〜q12についての通行人検出センサS2が検出状態(オン状態)であれば、ステップ#24に移行する。通行人検出センサS2が非検出状態(オフ状態)であれば、マスキング音は出力されない。
【0071】
ステップ#24では、ステップ#23で通行人位置判別部M4により通行人Zが存在している検出対象区域qであると判別された検出対象区域qに対応する指向性スピーカLからマスキング音を出力する。
【0072】
このように、第2実施形態の音声マスキングシステムによれば、公共スペースにおいて携帯電話で通話する通話人Yのプライバシーを保護しつつ、マスキング音の無駄な出力を極力なくすことで十分な省エネルギーを図ることができる。
【0073】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態を例示する。
【0074】
(1)上記第1実施形態及び第2実施形態では、当事者検出手段D1及び第三者検出手段D2が、複数の拡散反射式の光センサとそれらの検出情報から当事者や第三者が存在するか否かを八別する制御手段が備える判別部にて構成されたものを例示したが、当事者検出手段D1及び第三者検出手段D2の具体構成は適宜可能である。
例えば、拡散反射式の光センサに代えて、人体から放射される赤外線を感知する赤外線感知式のセンサを用いてもよい。また、これらの電磁波検出式のものに代えて動画又は静止画を撮影するカメラを用いて、制御手段に画像処理部を備えさせて、当事者位置判別部や第三者位置判別部を構成してもよい。さらに、第1実施形態では、処方箋の受け取り時にRFIDタグを内装した受付カードを待合人に保持させ、そのRFIDタグと通信自在な複数の通信装置の受信電波強度などにより当事者や各待合人の位置を検出するように構成してもよい。
【0075】
(2)上記第1実施形態では、隣り合う検出対象区域同士が隣接するものを例示したが、検出対象区域の個数・大きさ及び配置は適宜変更可能である。例えば、隣り合う検出対象区域が平面視で重複する状態や、互いに離間する状態で複数の検出対象区域を設けてもよい。なお、複数のマスキング音出力手段及び複数の待合人検出センサの個数や配置は、検出対象区域に応じて適宜変更すればよい。
【0076】
(3)上記第1実施形態では、投薬カウンタ1が一つであるもの、つまり、当事者領域Pとしての基本領域P0が1つであるものを例示したが、投薬カウンタ1を複数設けて、当事者領域Pとしての基本領域P0が複数設定可能なものであってもよい。この場合、いずれかの投薬カウンタ1で薬剤師Yによる投薬が行われかつ待合領域Qに待合人Zが一人でもいる場合は、マスキング音が出力される。また、ある投薬カウンタ1における薬剤師Yの説明が聞こえないようにするためのマスキング音が出力されている状態では、別の投薬カウンタ1の薬剤師Yが待合人Zを呼び出しても、マスキング音のために当該呼び出しが聞こえない不都合が生じるが、この不都合の解決手段としては、処方箋の受け取り時に番号により識別自在なバイブレータを待合人に保持させ、各投薬カウンタ1の薬剤師Yは、待合人Zを呼び出す場合は、処方箋に対応する番号のバイブレータを無線指令により作動させる呼び出しシステムが考えられる。
【0077】
(4)上記第2実施形態では、当事者領域Pが公共スペースに設置された支柱6の周囲に形成されたものを例示したが、当事者領域Pを建物などの壁面の前面において壁面に沿う形状で設けてもよい。この場合は、壁面における高さ1m程度の位置に人感センサを設けて、複数の指向性スピーカを壁面の上部において壁面に沿って水平方向に並ぶように配置して構成することが考えられる。
【0078】
(5)上記第2実施形態では、当事者検出手段がエリアセンサS1を備えて構成されたものを例示したが、当事者検出手段が超音波センサを備えて構成されたものでもよい。
【0079】
(6)上記第1実施形態では、本願発明の第3特徴構成に対応する実施形態として、制御手段が、当事者が存在する予定当事者領域を当事者領域として設定するように構成され、かつ、当事者が存在する予定当事者領域に対応する検出対象区域については、第三者検出手段にて第三者の存在が検出されていても、マスキング音出力手段によるマスキング音の出力を停止するように構成されているものを例示した。
【0080】
第1実施形態におけるシステムコントローラHが実装するプログラムの構成を変更することで、本願発明の第4特徴構成についての実施形態とすることができる。
すなわち、図1に示すように、待合側当事者センサSt及び待合人検出センサSmの平面視での設置位置がそれぞれ、当事者存在予定位置と第三者存在予定位置とに相当し、これらを会話可能に近付ける状態で設定した会話可能領域として第1待合側領域P1〜第1待合側領域P5が複数設定されている。
【0081】
当事者検出手段D1は、複数の待合側当事者センサStにより、複数の会話可能領域である第1待合側領域P1〜第1待合側領域P5の夫々について、当事者存在予定位置に存在する当事者である薬剤師Yを検出自在な状態で設けられている。
【0082】
そして、制御手段としてのシステムコントローラHを、第1待合側領域P1〜第1待合側領域P5のうち待合側当事者センサStにて薬剤師Yの存在が検出されかつ待合人検出センサSmにて待合人Zの存在が検出されているものを当事者領域Pとして判別し、且つ、第1待合側領域P1〜第1待合側領域P5のうち待合側当事者センサStにて当事者の存在が検出されていないものを聴開禁止領域Qとして判別するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0083】
P 当事者領域
P1〜P5 予定当事者領域
Q 聴開禁止領域
Y 当事者
Z 第三者
q 検出対象区域
L マスキング音出力手段
H 制御手段
D1 当事者検出手段
D2 第三者検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当事者が音声を発して会話又は通話をする当事者領域と、前記当事者領域で発生する当事者の音声を第三者に対して聞き取り難くする聴開禁止領域とが設定され、
前記聴開禁止領域に対してマスキング音を出力するマスキング音出力手段と、
前記マスキング音出力手段の作動を制御する制御手段とが設けられた音声マスキングシステムであって、
前記当事者領域に当事者が存在するか否かを検出する当事者検出手段と、
前記聴開禁止領域に第三者が存在するか否かを検出する第三者検出手段とが設けられ、
前記制御手段が、前記当事者検出手段にて当事者が検出されかつ前記第三者検出手段にて第三者が検出されている場合には、前記マスキング音出力手段にてマスキング音を出力させ、且つ、前記当事者検出手段にて当事者が検出されていない場合及び前記第三者検出手段にて第三者が検出されていない場合には、前記マスキング音出力手段によるマスキング音の出力を停止するように構成されている音声マスキングシステム。
【請求項2】
前記聴開禁止領域が、複数の検出対象区域からなり、
前記第三者検出手段が、前記複数の検出対象区域の夫々について第三者が存在するか否かを検出するように構成され、
前記マスキング音出力手段が、前記複数の検出対象区域の夫々に対応させた状態で複数設けられ、
前記制御手段が、前記第三者検出手段の検出情報に基づいて、前記複数のマスキング音出力手段のうち第三者が存在する前記検出対象区域についての前記マスキング音出力手段からのみマスキング音が出力されるように、前記複数のマスキング音出力手段の作動を制御するように構成されている請求項1記載の音声マスキングシステム。
【請求項3】
前記複数の検出対象区域の全て又は一部に対応して、その検出対象区域に存在する第三者と会話するための予定当事者領域が設定され、
前記当事者検出手段が、当事者が前記予定当事者領域に存在するか否かを判別自在に構成され、
前記制御手段が、前記当事者検出手段の判別情報に基づいて、当事者が存在する前記予定当事者領域を前記当事者領域として設定するように構成され、かつ、当事者が存在する前記予定当事者領域に対応する前記検出対象区域については、前記第三者検出手段にて第三者の存在が検出されていても、前記マスキング音出力手段によるマスキング音の出力を停止するように構成されている請求項2記載の音声マスキングシステム。
【請求項4】
当事者存在予定位置と第三者存在予定位置とを会話可能に近付ける状態で設定した会話可能領域が複数設定され、
前記当事者検出手段が、前記複数の会話可能領域の夫々について、前記当事者存在予定位置に存在する当事者を検出自在な状態で設けられ、
前記制御手段が、前記複数の会話可能領域のうち前記当事者検出手段にて当事者の存在が検出されかつ前記第三者検出手段にて第三者の存在が検出されているものを前記当事者領域として判別し、且つ、前記複数の会話可能領域のうち前記当事者検出手段にて当事者の存在が検出されていないものを前記聴開禁止領域として判別するように構成されている請求項1記載の音声マスキングシステム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記マスキング音よりも優先して出力すべき優先通知情報を受信自在でかつ受信した優先通知情報を前記マスキング音出力手段にて出力自在に構成され、且つ、前記マスキング音を出力しているときに前記優先通知情報を受信した場合は、前記マスキング音に代えて前記優先通知情報を出力するべく、前記マスキング音出力手段の作動を制御するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項記載の音声マスキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7911(P2013−7911A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140900(P2011−140900)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】