説明

音声再生制御装置及び音声再生制御方法

【課題】再生対象の音声を切り替える際、ポップノイズの発生による不快感をユーザに与えず、再生音声の切り替え処理時間を短縮することが可能な「音声再生制御装置および音声再生制御方法」を提供する。
【解決手段】第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなる操作が行われた場合、自車両の走行状態に応じて定められる規定レベルまで第1音声の音量レベルを段階的に下げた後、第1音声の再生を停止し、第2音声の再生を開始することにより、第1音声の音量が規定レベルに達した後で第1音声の再生が停止される段階において、ポップノイズが発生してもそのレベルが車室内の推定騒音レベルよりも小さくなるようにして、車室内の騒音によるマスキング効果によってポップノイズが聞こえないようにするとともに、規定レベルから0(ゼロ)まで音量レベルを下げるのに要していた時間だけ早く第2音声の再生処理を開始できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生制御装置及び音声再生制御方法に関し、特に、ある音声の再生途中で次の音声の再生に切り替える際の制御を行う音声再生制御装置及び音声再生制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置における音声再生処理は、ルート案内機能、画面上の操作キーにフォーカスした時における当該操作キーに対応する音声フィードバック機能、音声認識におけるトークバック機能、メール読み上げ機能など、各種機能を実行する場面で行われている。ところで、上述した各機能の音声再生処理では、音声再生中に状況の変化が生じたことに伴い新しい音声を優先して再生する必要が生じた場合には、現在再生している音声を停止させ、新しい音声の再生を開始する。
【0003】
例えば、音声フィードバック機能における音声再生処理では、画面上に表示されている複数の操作キーのうち任意の操作キーにフォーカスすると、その操作キーの名称を予め用意された音声で読み上げる。その読み上げ中に別の操作キーをフォーカスすると、読み上げ中の音声の再生を停止し、新たにフォーカスした操作キーの名称を予め用意された音声で読み上げる。この場合、停止対象の音声の音量が大きいときには、その音声の再生を停止する瞬間に音声の出力信号に急激な変動(すなわち、大きい音量がいきなり0(ゼロ)になる変化)が生じて、「ボツッ」、「ブツッ」というノイズ、いわゆるポップノイズが生じるという問題があった。このようなポップノイズは、ユーザに不快感をもたらすことになる。
【0004】
図9は、再生音声の切り替えを説明するための説明図である。図9では、画面上に表示されている任意の操作キーがフォーカスされることによって、その操作キーの名称を予め用意された音声(図面上では、前音声)で再生する処理が行われる。そして、前音声の再生中に別の操作キーがフォーカスされると、前音声の再生を停止し、新たにフォーカスされた操作キーの名称を予め用意された音声(図面上では、次音声)で再生する処理が行われる。この場合、停止対象の前音声の音量が大きいときには、その前音声の再生を停止する瞬間に前音声の出力信号に急激な変動(すなわち、0[dB]から−83[dB]への変化)が生じて、ポップノイズが生じる。
【0005】
このため、ポップノイズの発生を防止する技術として、停止対象の音声の再生を瞬間的に停止するのではなく、音量を次第に低減するフェードアウト処理を行う手法が提案されている。
【0006】
なお、オーディオミュートスイッチが操作された際、電子ボリューム回路にて設定される音量レベルを所定レベルまで降下させる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、音声信号切り替え時などに発生する衝撃音を防止するため、その音声信号切り替え時に信号を段階的に減衰させるソフトミュート回路が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。また、ミュートゲインが急激に発生するときのショックノイズの発生を抑制するため、音声入力信号に対するミュートゲインを徐々に減少させてミュートをかける際、ボリュームのゲイン設定値に応じてミュートゲインの減少速度を調整する技術が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−131119号公報
【特許文献2】特開平5−122094号公報
【特許文献3】特開2007−28329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポップノイズの発生を防止する従来の技術では、停止対象の音声の音量が0(ゼロ)になるまで徐々に音量を下げることになるため、新しい音声に切り替えるまでの時間が長くなってしまうという問題があった。図10は、停止対象の音声にミュートをかけて新しい音声に切り替える動作を示す図である。図10では、ポップノイズの発生を防止するために、停止対象の前音声の再生を瞬間的に停止するのではなく、その前音声の音量を例えば、0[dB]から4[dB]ずつ20[ms]間隔で−83[dB]まで下げていく処理を行っている。
【0009】
この場合、前音声の再生を完全に停止するためには、420[ms]の処理時間がかかってしまう。さらに、前音声の再生を完全に停止した後に、次音声の再生を開始するまでに、音声信号切り替えのため複数の音声処理プロセスが行われるため、820[ms]の処理時間がかかってしまう。つまり、前音声の再生中に別の操作キーがフォーカスされてから、新たにフォーカスされた操作キーに対応する次音声の再生が開始されるまでに合計1240[ms]も処理時間がかかってしまう。
【0010】
人間工学的見地から、前音声の再生中に別の操作キーがフォーカスされてから、次音声の再生が開始されるまでにユーザが許容可能な時間は約0.5〜1.0[s]と考えられており、1240[ms](=1.24[s])の処理時間はユーザが許容可能な時間を越えてしまっている。そのためユーザが、音声切り替え処理が行われているかどうかといった不安感を覚えたり、音声切り替え時間が長くていらだちを感じたりするという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、再生対象の音声を切り替える際、ポップノイズの発生による不快感をユーザに与えないようにするとともに、再生音声の切り替え処理時間を短縮することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなる操作が行われた場合、自車両の走行状態を取得し、その走行状態に応じて定められる規定レベルまで第1音声の音量レベルを段階的に下げる。そして、第1音声の音量レベルを規定レベルまで下げた後、第1音声の再生を停止して、その後第2音声の再生を開始するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、第1音声の音量レベルが段階的に規定レベルまで下げられる段階においては、当該第1音声の出力信号に急激な変動が生じないため、ポップノイズは発生しない。また、第1音声の音量が規定レベルに達した後で第1音声の再生が停止される段階においては、ポップノイズがたとえ発生しても、自車両の走行状態に応じた車室内の推定騒音レベルよりも小さいレベルのノイズになるので、車室内の騒音によるマスキング効果によってポップノイズはかき消される。さらに、第1音声の音量レベルが規定レベルに達した時点で第1音声の再生が直ちに停止されるため、従来の手法と比べて、規定レベルから0(ゼロ)まで音量レベルを段階的に下げるのに要していた時間だけ早く第2音声の再生処理を開始することができ、ひいては、再生音声の切り替え処理時間を全体的に短縮することができる。以上により、再生対象の音声を切り替える際、ポップノイズの発生による不快感をユーザに与えないようにするとともに、再生音声の切り替え処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による音声再生制御装置を備えた音声再生システムの全体構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による規定レベル情報の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態による音声再生制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態による音声再生制御装置の動作の例を示す図である。
【図5】第2の実施形態による音声再生制御装置を備えた音声再生システムの全体構成例を示すブロック図である。
【図6】推定騒音レベルと規定レベルとの関係を示す図である。
【図7】第2の実施形態による規定レベル情報の例を示す図である。
【図8】第2の実施形態による音声再生制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【図9】再生音声を切り替える動作を示す図である。
【図10】停止対象の音声にミュートをかけて新しい音声に切り替える動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態による音声再生制御装置100を備えた音声再生システム120の構成例を示すブロック図である。音声再生システム120は、自動車等の車両に搭載されるものである。音声再生制御装置100は、ある音声の再生途中で次の音声の再生に切り替える際の制御を行う。図1に示すように、音声再生システム120は、音声再生制御装置100の他に、操作入力部140、音声情報記憶部160、再生部180およびスピーカ200を備えて構成されている。
【0016】
操作入力部140は、音声再生システム120に対するユーザの指示を入力する。本実施形態では、操作入力部140は、例えば、タッチパネルやリモコン等の入力装置を含んで構成される。音声情報記憶部160は、画面上に表示されている任意の操作キーがフォーカスされる(カーソルを合わせて選択可能な状態になる)ことによって、その操作キーの名称や機能のガイダンス等を再生するために予め用意された音声の各々に関する音声情報を記憶する。音声情報は、各々の操作キーを識別するためのキー識別情報および当該キー識別情報に対応した音声データを情報として含む。
【0017】
再生部180は、画面上に表示されている任意の操作キーをフォーカスする操作が操作入力部140に入力された場合、フォーカスされた操作キーに対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出して再生する。スピーカ200は、再生部180により再生された音声データに基づく音声を外部に出力する。
【0018】
次に、音声再生制御装置100の内部構成について説明する。図1に示すように、音声再生制御装置100は、操作受付部300、走行状態取得部320、音量調整部340、第1音声停止部360および第2音声開始部380を備えて構成されている。
【0019】
操作受付部300は、操作入力部140を介して、画面上に表示されている任意の操作キーをフォーカスする操作を受け付ける。この場合、操作受付部300は、再生部180の再生状態を確認して、先にフォーカスされた操作キーに対応する音声(以下、第1音声)の音声データが再生部180により再生されているか否かを判定する。もし、第1音声の音声データが再生部180により再生されていると判定した場合、操作受付部300は、その旨を走行状態取得部320に通知するとともに、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を第2音声開始部380に出力する。
【0020】
一方、第1音声の音声データが再生部180により再生されていないと判定した場合、操作受付部300は、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を再生部180に出力する。再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報により示される音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データから音声を再生してスピーカ200に出力する。
【0021】
走行状態取得部320は、音声再生システム120が搭載された車両の走行速度を検出する走行速度検出部400を備えている。走行速度検出部400は、例えば、車両の各タイヤに取り付けられた回転速度センサの検出結果に基づいて車両の走行速度を検出する。走行状態取得部320は、第1音声の音声データが再生部180により再生されている旨の通知を操作受付部300から受けた場合、走行速度検出部400により検出された走行速度が所定速度(本実施形態では、0[km/h])より大きいか否かを判定することによって、自車両が走行中であるか停車中であるかを自車両の走行状態として取得する。自車両が走行中であることを自車両の走行状態として取得した場合、走行状態取得部320は、その旨を音量調整部340に通知する。その一方、自車両が停車中であることを自車両の走行状態として取得した場合、走行状態取得部320は、その旨を音量調整部340に通知する。
【0022】
音量調整部340は、走行状態に応じて定められる規定レベルを示す規定レベル情報が記憶された規定レベル情報記憶部420を備えている。規定レベルは、自車両が走行中であるときおよび停車中(アイドリング中)であるときにおける車室内の推定騒音レベル(例えば20[km/h]の走行中およびアイドリング中に実験的に求めた騒音レベル)よりも小さいレベルである。規定レベル情報は、図2に示すように、自車両が走行中であるか停車中であるかを示す走行状態、その走行状態に応じて定められる規定レベルを情報として含む。
【0023】
音量調整部340は、自車両が走行中である旨の通知を走行状態取得部320から受けた場合、規定レベル情報記憶部420に記憶されている規定レベル情報を参照して、自車両が走行中であるときにおける規定レベル(51[dB])を特定する。また、音量調整部340は、自車両が停車中である旨の通知を走行状態取得部320から受けた場合、規定レベル情報記憶部420に記憶されている規定レベル情報を参照して、自車両が停車中であるときにおける規定レベル(49[dB])を特定する。
【0024】
また、音量調整部340は、特定した規定レベルに達するまで、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを段階的に下げる。具体的には、音量調整部340は、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを所定時間(本実施形態では、20[ms])間隔で所定音量レベル(本実施形態では、4[dB])ずつ下げる。ここで、音量を下げる際に用いるパラメータである所定音量レベル(4[dB])は、第1音声の音量レベルを下げる際にポップノイズが生じることを回避することができるように決定された値である。音量調整部340は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた場合、その旨を第1音声停止部360に通知する。
【0025】
第1音声停止部360は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた旨の通知を音量調整部340から受けた場合、再生部180を制御して第1音声の再生を停止する。そして、第1音声停止部360は、第1音声の再生を停止した旨を第2音声開始部380に通知する。
【0026】
第2音声開始部380は、第1音声の再生を停止した旨の通知を第1音声停止部360から受けた場合、操作受付部300から出力されたキー識別情報を再生部180に出力する。再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報に対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データから音声(以下、第2音声)を再生してスピーカ200に出力する。
【0027】
次に、第1の実施形態の音声再生制御装置100の動作について説明する。図3は、第1の実施形態による音声再生制御装置100の動作例を示すフローチャートである。まず、操作受付部300は、操作入力部140を介して、画面上に表示されている任意の操作キーをフォーカスする操作を受け付けたか否かについて判定する(ステップS100)。もし、フォーカス操作を受け付けていないと操作受付部300にて判定した場合(ステップS100にてNO)、処理はステップS100に遷移する。一方、フォーカス操作を受け付けたと操作受付部300にて判定した場合(ステップS100にてYES)、操作受付部300は、再生部180の再生状態を確認して、先にフォーカスされた操作キーに対応する第1音声の音声データが再生部180により再生されているか否かを判定する(ステップS120)。
【0028】
もし、第1音声の音声データが再生部180により再生されていないと操作受付部300にて判定した場合(ステップS120にてNO)、操作受付部300は、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を再生部180に出力する。そして、再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報に対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データを第1音声として再生してスピーカ200に出力する(ステップS260)。その後、音声再生制御装置100は図3における処理を終了する。
【0029】
一方、第1音声の音声データが再生部180により再生されていると操作受付部300にて判定した場合(ステップS120にてYES)、操作受付部300は、その旨を走行状態取得部320に通知するとともに、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を第2音声開始部380に出力する。次に、走行状態取得部320は、第1音声の音声データが再生部180により再生されている旨の通知を操作受付部300から受けて、自車両が走行中であるか停車中であるかを判定する(ステップS140)。
【0030】
もし、自車両が走行中であることを自車両の走行状態として取得した場合(ステップS140にてYES)、走行状態取得部320は、その旨を音量調整部340に通知する。音量調整部340は、自車両が走行中である旨の通知を走行状態取得部320から受けて、規定レベル情報記憶部420に記憶されている規定レベル情報を参照して、自車両が走行中であるときにおける規定レベル(51[dB])を特定する(ステップS160)。その後、処理はステップS200に遷移する。
【0031】
一方、自車両が停車中であることを自車両の走行状態として取得した場合(ステップS140にてNO)、走行状態取得部320は、その旨を音量調整部340に通知する。音量調整部340は、自車両が停車中である旨の通知を走行状態取得部320から受けて、規定レベル情報記憶部420に記憶されている規定レベル情報を参照して、自車両が停車中であるときにおける規定レベル(49[dB])を特定する(ステップS180)。その後、処理はステップS200に遷移する。
【0032】
ステップS200では、音量調整部340は、ステップS160またはステップS180にて特定した規定レベルに達するまで、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを段階的に下げる。音量調整部340は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた場合、その旨を第1音声停止部360に通知する。
【0033】
次に、第1音声停止部360は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた旨の通知を音量調整部340から受けて、第1音声の再生を停止する(ステップS220)。そして、第1音声停止部360は、第1音声の再生を停止した旨を第2音声開始部380に通知する。
【0034】
次に、第2音声開始部380は、第1音声の再生を停止した旨の通知を第1音声停止部360から受けて、操作受付部300から出力されたキー識別情報を再生部180に出力する(ステップS260)。そして、再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報に対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データを第2音声として再生してスピーカ200に出力する。その後、音声再生制御装置100は図3における処理を終了する。
【0035】
図4は、第1の実施形態による音声再生制御装置100の動作の例を模式的に示す図である。図4に示すように、第1の実施形態では、ある操作キーがフォーカスされたことに応答して第1音声が再生されているときに、第2音声の再生のトリガとなる別の操作キーのフォーカス操作が行われた場合、自車両の走行状態(走行中か停車中かの状態)を取得し、その走行状態に応じて定められる規定レベルまで第1音声の音量レベルを段階的に下げる。そして、第1音声の音量レベルを規定レベルまで下げた後、第1音声の再生を停止して、第2音声の再生を開始するようにしている。
【0036】
このように、第1の実施形態によれば、第1音声の音量レベルが段階的に規定レベルまで下げられる段階においては、当該第1音声の出力信号に急激な変動が生じないため、ポップノイズは発生しない。また、第1音声の音量が規定レベルに達した後で第1音声の再生が停止される段階においては、ポップノイズがたとえ発生しても、自車両の走行状態に応じた車室内の推定騒音レベルよりも小さいレベルのノイズになるので、車室内の騒音によるマスキング効果によってポップノイズはかき消されて聞こえなくなる。
【0037】
さらに、第1音声の音量レベルが規定レベルに達した時点で第1音声の再生が直ちに停止されるため、従来の手法と比べて、規定レベルから0(ゼロ)まで音量レベルを段階的に下げるのに要していた時間だけ早く第2音声の再生処理を開始することができ、ひいては、再生音声の切り替え処理時間を全体的に短縮することができる。以上により、再生対象の音声を切り替える際、ポップノイズの発生による不快感をユーザに与えないようにするとともに、再生音声の切り替え処理時間を短縮することができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図5は、第2の実施形態による音声再生制御装置100′を備えた音声再生システム120′の構成例を示すブロック図である。なお、この図6において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0039】
第2の実施形態において、音声再生制御装置100′は、図1の走行状態取得部320、音量調整部340および規定レベル情報記憶部420の代わりに、走行状態取得部320′、音量調整部340′および規定レベル情報記憶部420′をそれぞれ備えている。
【0040】
走行状態取得部320′は、第1音声の音声データが再生部180により再生されている旨の通知を操作受付部300から受けた場合、走行速度検出部400により検出された走行速度を自車両の走行状態として取得する。そして、走行状態取得部320′は、特定した自車両の走行状態である走行速度を示す走行速度情報を音量調整部340′に出力する。
【0041】
音量調整部340′は、走行状態取得部320から出力された走行速度情報により示される走行速度に応じて定められる規定レベルを示す規定レベル情報を記憶する規定レベル情報記憶部420′を備えている。規定レベルは、自車両が走行中であるときおよび停車中であるときにおける車室内の推定騒音レベルよりも小さいレベルである。
【0042】
図6は、推定騒音レベルと規定レベルとの関係を示す図である。図6に示すように、車室内の推定騒音レベルは、自車両の走行速度に比例する1次直線で表される。これに対して、規定レベルは、各走行速度において車室内の推定騒音レベルを幾分下回る値とする。第2の実施形態では、このような推定騒音レベルと規定レベルとの関係になるように、自車両が走行中であるときおよび停車中であるときにおける規定レベルを決めている。具体的には、図7に示すように、自車両の10[km/h]刻みの走行速度と、それらの走行速度に応じて定められる規定レベルとの組により規定レベル情報を構成している。
【0043】
また、音量調整部340′は、走行状態取得部320′から走行速度情報が出力された場合、規定レベル情報記憶部420′に記憶されている規定レベル情報を参照して、走行速度情報により示される走行速度が記憶されているか否かについて判定する。もし、走行速度情報により示される走行速度が記憶されていると判定した場合、音量調整部340′は、走行速度情報により示される走行速度(例えば、50[km/h])に対応する規定レベル(例えば、55[dB])を特定する。
【0044】
一方、走行速度情報により示される走行速度が規定レベル情報記憶部420′に記憶されていないと判定した場合、音量調整部340′は、走行速度情報により示される走行速度に対応する規定レベルを、規定レベル情報に基づく直線補間によって特定する。例えば、走行速度情報により示される走行速度が65[km/h]である場合、音量調整部340′は、走行速度(60[km/h])での規定レベル(57[dB])と走行速度(70[km/h])での規定レベル(59[dB])とを直線で結んだ線上に走行速度(65[km/h])での規定レベルが位置するものとして、走行速度(65[km/h])での規定レベル(58[dB])を特定する。
【0045】
また、音量調整部340′は、特定した規定レベルに達するまで、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを段階的に下げる。具体的には、音量調整部340′は、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを所定時間(本実施形態では、20[ms])間隔で所定音量レベル(本実施形態では、4[dB])ずつ下げる。音量調整部340′は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた場合、その旨を第1音声停止部360に通知する。
【0046】
次に、第2の実施形態の音声再生制御装置100′の動作について説明する。図8は、第2の実施形態による音声再生制御装置100′の動作例を示すフローチャートである。まず、操作受付部300は、操作入力部140を介して、画面上に表示されている任意の操作キーをフォーカスする操作を受け付けたか否かについて判定する(ステップS400)。もし、フォーカス操作を受け付けていないと操作受付部300にて判定した場合(ステップS400にてNO)、処理はステップS400に遷移する。一方、フォーカス操作を受け付けたと操作受付部300にて判定した場合(ステップS400にてYES)、操作受付部300は、再生部180の再生状態を確認して、先にフォーカスされた操作キーに対応する第1音声の音声データが再生部180により再生されているか否かを判定する(ステップS420)。
【0047】
もし、第1音声の音声データが再生部180により再生されていないと操作受付部300にて判定した場合(ステップS420にてNO)、操作受付部300は、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を再生部180に出力する。そして、再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報に対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データを第1音声として再生してスピーカ200に出力する(ステップS580)。その後、音声再生制御装置100′は図8における処理を終了する。
【0048】
一方、第1音声の音声データが再生部180により再生されていると操作受付部300にて判定した場合(ステップS420にてYES)、操作受付部300は、その旨を走行状態取得部320に通知するとともに、今回フォーカスされた操作キーを示すキー識別情報を第2音声開始部380に出力する。次に、走行状態取得部320′は、第1音声の音声データが再生部180により再生されている旨の通知を操作受付部300から受けて、走行速度検出部400により検出された走行速度を自車両の走行状態として取得する(ステップS440)。そして、走行状態取得部320′は、走行速度情報を音量調整部340′に出力する。
【0049】
次に、音量調整部340′は、走行状態取得部320′から出力された走行速度情報により示される走行速度が規定レベル情報記憶部420′に記憶されているか否かについて判定する(ステップS460)。もし、対応する走行速度が規定レベル情報記憶部420′に記憶されていると音量調整部340′にて判定した場合(ステップS460にてYES)、その走行速度に対応する規定レベルを特定する(ステップS480)。その後、処理はステップS520に遷移する。
【0050】
一方、対応する走行速度が規定レベル情報記憶部420′に記憶されていないと音量調整部340′にて判定した場合(ステップS460にてNO)、音量調整部340′は、その走行速度に対応する規定レベルを、規定レベル情報に基づく直線補間によって特定する(ステップS500)。その後、処理はステップS520に遷移する。
【0051】
ステップS520では、音量調整部340′は、ステップS480またはステップS500にて特定した規定レベルに達するまで、再生部180により再生されている第1音声の音量レベルを段階的に下げる。音量調整部340′は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた場合、その旨を第1音声停止部360に通知する。
【0052】
次に、第1音声停止部360は、第1音声の音量レベルを規定レベルに達するまで下げた旨の通知を音量調整部340′から受けて、第1音声の再生を停止する(ステップS540)。そして、第1音声停止部360は、第1音声の再生を停止した旨を第2音声開始部380に通知する。
【0053】
次に、第2音声開始部380は、第1音声の再生を停止した旨の通知を第1音声停止部360から受けて、操作受付部300から出力されたキー識別情報を再生部180に出力する(ステップS560)。そして、再生部180は、操作受付部300から出力されたキー識別情報に対応する音声データを音声情報記憶部160から読み出し、その読み出した音声データを第2音声として再生してスピーカ200に出力する。その後、音声再生制御装置100′は図8における処理を終了する。
【0054】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなる操作が行われた場合、自車両の走行速度を走行状態として取得し、その走行状態に応じて定められる規定レベルまで第1音声の音量レベルを段階的に下げる。そして、第1音声の音量レベルを規定レベルまで下げた後、第1音声の再生を停止して、その後第2音声の再生を開始するようにしている。
【0055】
このように、第2の実施形態によれば、車両が走行中の場合に規定レベルを一律に51[dB]と特定する第1の実施形態と異なり、車速から推定される騒音レベルの大きさに応じて規定レベルの値を適切に設定することができる。例えば、走行速度が70[km/h]の場合、第1の実施形態では51[dB]に達するまで第1音声の音量レベルを段階的に下げた後、第1音声の再生を停止するのに対して、第2の実施形態では59[dB]に達するまで第1音声の音量レベルを段階的に下げた後、第1音声の再生を停止する。つまり、第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、59[dB]から51[dB]まで音量レベルを段階的に下げるのに要していた時間だけ早く第2音声の再生処理を開始することができ、ひいては、再生音声の切り替え処理時間を全体的に短縮することができる。
【0056】
なお、上記第1および第2の実施形態では、第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の下げ幅を固定の所定音量レベル(4[dB])とし、再生部180により現在再生されている第1音声の音量レベルを所定音量レベル(4[dB])ずつ下げる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1[dB]、2「dB」、3[dB]、・・・と所定時間毎に段階的に変動する変動値でもって音量レベルを下げるようにしても良い(ただし、所定音量レベルの最大値は4[dB]とする)。
【0057】
また、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなるフォーカス操作が行われたときの第1音声の音量レベルと走行状態に応じて定められる規定レベルとの差分の大きさに応じて所定音量レベルを設定しても良い。例えば、差分が大きくなるにつれて、所定音量レベルを大きく設定するようにしても良い。
【0058】
この場合、音量調整部340(340′)は、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなるフォーカス操作が行われたときの第1音声の音量レベルと走行状態に応じて定められる規定レベルとの差分を計算する計算部と、計算部により計算された差分に応じて、第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の下げ幅を設定する下げ幅設定部とを備える。このようにすれば、第1音声が停止されるまでの時間、つまり第2音声に切り替わるまでの時間を一定とすることができる。このため、ユーザが、音声切り替え処理が行われているかどうかといった不安感を覚えたりすることを回避することができる。
【0059】
また、上記第1および第2の実施形態では、再生部180により現在再生されている第1音声の音量レベルを固定値である所定時間(20[ms])間隔で下げる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1音声の音量レベルを下げる時間間隔は変動値でも良い。その一例として、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなるフォーカス操作が行われたときの第1音声の音量レベルと走行状態に応じて定められる規定レベルとの差分の大きさが大きくなるにつれて、第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の時間間隔を短く設定するようにしても良い。
【0060】
この場合、音量調整部340(340′)は、第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなるフォーカス操作が行われたときの第1音声の音量レベルと走行状態に応じて定められる規定レベルとの差分を計算する計算部と、計算部により計算された差分に応じて、第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の時間間隔を設定する時間間隔設定部とを備える。このようにすれば、第1音声が停止されるまでの時間、つまり第2音声に切り替わるまでの時間を一定とすることができる。このため、ユーザが、音声切り替え処理が行われているかどうかといった不安感を覚えたりすることを回避することができる。
【0061】
また、上記第2の実施形態では、実際の走行速度を自車両の走行状態として取得し、その走行速度に応じた規定レベルを特定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、走行速度に応じて3種類以上の走行状態(停車中、低速走行中、中速走行中、高速走行中など)の何れかを自車両の走行状態として取得するようにしても良い。
【0062】
また、上記第1および第2の実施形態では、音声フィードバック機能を実行する場面において、音声再生制御装置100(100′)がある音声の再生途中で次の音声の再生に切り替える際の制御を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ルート案内機能、音声認識におけるトークバック機能、メール読み上げ機能などの各種機能を実行する場面において、音声再生制御装置100(100′)がある音声の再生途中で次の音声の再生に切り替える際の制御を行うようにしても良い。
【0063】
その他、上記第1および第2の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
100,100′ 音声再生制御装置
300 操作受付部
320,320′ 走行状態取得部
340,340′ 音量調整部
360 第1音声停止部
380 第2音声開始部
400 走行速度検出部
420,420′ 規定レベル情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなる操作が行われた場合、自車両の走行状態を取得する走行状態取得部と、
前記走行状態取得部により取得された走行状態に応じて定められる規定レベルまで前記第1音声の音量レベルを段階的に下げる音量調整部と、
前記音量調整部により前記第1音声の音量レベルが前記規定レベルまで下げられた後、前記第1音声の再生を停止する第1音声停止部と、
前記第1音声停止部により前記第1音声の再生が停止された後、前記第2音声の再生を開始する第2音声開始部とを備えたことを特徴とする音声再生制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声再生制御装置において、
前記走行状態取得部は、前記自車両の走行速度を検出する走行速度検出部を備え、前記走行速度検出部により検出された走行速度が所定速度より大きいか否かを判定することによって、前記自車両が走行中であるか停車中であるかを前記自車両の走行状態として取得し、
前記音量調整部は、前記自車両が走行中であるときおよび停車中であるときにおける車室内の推定騒音レベルよりも小さいレベルを前記規定レベルとして記憶する規定レベル情報記憶部を備え、前記走行状態取得部により取得された走行状態および前記規定レベル情報記憶部に記憶されている前記規定レベルに基づいて、前記走行状態に応じた規定レベルを特定することを特徴とする音声再生制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音声再生制御装置において、
前記走行状態取得部は、前記自車両の走行速度を検出する走行速度検出部を備え、前記走行速度検出部により検出された走行速度を前記自車両の走行状態として取得し、
前記騒音レベル特定部は、前記自車両の走行速度に応じた車室内の推定騒音レベルよりも小さいレベルを前記規定レベルとして記憶する規定レベル情報記憶部を備え、前記走行状態取得部により取得された走行状態および前記規定レベル情報記憶部に記憶されている前記規定レベルに基づいて、前記走行状態に応じた規定レベルを特定することを特徴とする音声再生制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音声再生制御装置において、
前記音量調整部は、前記操作が行われたときの前記第1音声の音量レベルと前記規定レベルとの差分を計算する計算部と、
前記計算部により計算された差分の大きさが大きくなるにつれて、前記第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の下げ幅を大きく設定する下げ幅設定部とを備え、
前記下げ幅設定部により設定された下げ幅で前記第1音声の音量レベルを段階的に下げることを特徴とする音声再生制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の音声再生制御装置において、
前記音量調整部は、前記操作が行われたときの前記第1音声の音量レベルと前記規定レベルとの差分を計算する計算部と、
前記計算部により計算された差分の大きさが大きくなるにつれて、前記第1音声の音量レベルを段階的に下げる際の時間間隔を短く設定する時間間隔設定部とを備え、
前記時間間隔設定部により設定された時間間隔が経過する毎に、前記第1音声の音量レベルを段階的に下げることを特徴とする音声再生制御装置。
【請求項6】
第1音声の再生中に、第2音声の再生のトリガとなる操作が行われた場合、自車両の走行状態を取得する第1のステップと、
前記第1のステップにより取得された走行状態に応じて定められる規定レベルまで前記第1音声の音量レベルを段階的に下げる第2のステップと、
前記第2のステップにより前記第1音声の音量レベルが前記規定レベルまで下げられた後、前記第1音声の再生を停止する第3のステップと、
前記第3のステップにより前記第1音声の再生が停止された後、前記第2音声の再生を開始する第4のステップとを有することを特徴とする音声再生制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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