説明

音声心肺蘇生指示装置

【課題】心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が普段から身辺に携帯しておくことによって、心肺蘇生術の実施の必要がある緊急事態が生じたときに、その場で助けに用いて、容易に要救護者に適確な心肺蘇生術を実施可能とした音声心肺蘇生指示装置。
【解決手段】身辺の携帯品として、名刺入れまたは定期券入れに収容して持ち運び可能な名刺サイズの専用のハードカード2を作成し、ハードカード内に音声指示手段を内蔵させて音声心肺蘇生指示装置1を構成する。指示装置1を普段から身辺に携帯しておくことによって、災害現場等で要救護者に出くわしたときに、何時でも取り出して使用することができる。装置1のスイッチボタン4を押して音声指示手段を作動させ、心肺蘇生術の手順を音声で案内してもらい、音声の案内を助けにして要救護者に心肺蘇生術を行うことにより、心肺蘇生術の訓練を受けた非専門家の一般市民であっても、適確な実施が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が普段から身辺に携帯しておくことによって、心肺蘇生術を実施する緊急事態が生じたときに使用して、容易に適確な心肺蘇生術を実施することを可能とした音声心肺蘇生指示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故や通り魔事件等の無差別殺人が多発する現代社会では、心肺が停止した被害者(要救護者)を心肺蘇生術(CPR)によって助ける必要がある場面に、一般市民が出くわすことがありうる。また自然災害によっても、一般市民が同様な場面に遭遇することが起こりうる。近年、このような状況に対し、災害や事故、犯罪に対する防災意識の高まりから、日本赤十字社や消防署が実施する救命法講習会を受講して、心肺蘇生術を積極的に習得する一般市民が増加している。
【0003】
しかしながら、講習会で心肺蘇生術の訓練を受けても、非専門家の一般市民が実際に習得した技術をいきなり要救護者に施すことは非常に困難である。また消防署、病院等へ連絡して必要とされる指示を受けることができればよいが、災害発生時には電話が不通になり、指示を受けることができないことが多いのが普通である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなことから、心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が普段から身辺に携帯しておくことによって、心肺蘇生術を実施する必要がある緊急事態が生じたときに助けに用いて、適確な心肺蘇生術を容易に実施することを可能とした心肺蘇生指示装置が求められていた。
【0005】
本発明の課題は、上記の現状に鑑み、心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が普段から身辺に携帯しておくことによって、心肺蘇生術を実施する必要がある緊急事態が生じたときに、その場で助けに用いて要救護者に適確な心肺蘇生術を容易に実施することを可能とした、心肺蘇生術の手順を音声で案内する音声心肺蘇生指示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、身辺の携帯品に設けられる音声心肺蘇生指示装置であって、心肺蘇生術の手順を音声で指示する音声データを記録したメモリと、該メモリから出力された音声データから音声を合成する音声ICと、該音声ICから出力された音声を拡大して外部に放出するスピーカとからなる音声指示手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明の音声心肺蘇生指示装置は、身辺の携帯品に設けるので、心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が容易に普段から身辺に携帯しておくことができる。そして災害現場等に出くわして要救護者に心肺蘇生術の実施をする必要が生じたときに、指示装置のスイッチを入れて音声指示手段を作動させれば、心肺蘇生術の手順が音声で案内されるので、非専門家の一般市民であっても、音声の案内を助けにして容易に要救護者に心肺蘇生術を適確に行うことができる。
【0008】
本発明によれば、身辺の携帯品として、名刺入れまたは定期券入れに収容して持ち運び可能な名刺サイズの専用のハードカードを作成して、該ハードカードに前記音声指示手段を内蔵させるようにすることができる。
【0009】
また、身辺の携帯品を身に着ける装着品とし、該装着品に音声指示手段を組み込んだ筐体またはシートを取付けるようにすることができる。身に着ける装着品としては、ベルトのバックル、帽子、腕時計、ペンダントやリストバンド、イヤリング等の装飾品、眼鏡やサングラス、サンバイザー等の眼鏡類等、各種のものが挙げられる。
【0010】
また、身辺の携帯品を音声再生機能を有する携帯機器とし、該携帯機器のメモリまたは携帯機器に装着する外部メモリに、心肺蘇生術の手順を音声で指示する音声データを記録して、該音声データを記録したメモリと携帯機器の音声ICおよびスピーカとを利用して、携帯機器に音声指示手段を構成することができる。音声再生機能を有する携帯機器としては、携帯電話やPHSの携帯通信機器、iPODやCDプレーヤー、MDプレーヤー等の音楽再生器が挙げられ、ビデオカメラ等も可能である。
【0011】
更には、身辺の携帯品を広く一般に、手や肩に下げて持ち運ぶ運搬用所持品または該運搬用所持品を介して持ち運ぶ被運搬用所持品とし、音声指示手段を内蔵したシートを形成して、該シートを該運搬用または被運搬用所持品に取付けるようにすることができる。運搬用所持品としては、手提げカバンやハンドバック等のカバン類、リュックやナップサック等の袋類が挙げられる。被運搬用所持品としては、これらに入れて運ぶ鉛筆、万年筆、ボールペン、手帳、ノート等の文房具や化粧品等の身の回り品が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の音声心肺蘇生指示装置によれば、心肺蘇生術の訓練を受けた一般市民が普段から身辺に携帯しておくことができ、災害現場等に出くわして心肺蘇生術の実施をする必要が生じたときに、その場で指示装置のスイッチを入れて、心肺蘇生術の手順を音声で案内してもらうことにより、非専門家の一般市民であっても音声の案内を助けにして、容易に要救護者に心肺蘇生術を適確に実施することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明の音声心肺蘇生指示装置の一実施形態を示す斜視図、図2は、該指示装置に内蔵された音声指示手段を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の音声心肺蘇生指示装置1は、身辺の携帯品として専用のハードカード2を作成し、ハードカード2内に音声指示手段5を内蔵させて構成した。ハードカード2は樹脂製の2つ割りの筐体からなり、筐体内に音声指示手段5を組付けてある。このハードカード2は、取り扱いやすいように比較的大きくして名刺サイズに形成し、名刺入れまたは定期券入れに収容して持ち運びできるようにしてある。具体的には、縦横を標準的な名刺サイズの90mm×55mm程度とし、厚さはできるだけ薄く、例えば10mm程度を上限とした。ハードカード2の外面には、スピーカ9からの音声を外部に放出する音声放出口3と、電源スイッチ11をオン/オフするスイッチボタン4とが設けられている。
【0015】
音声指示手段5は、心肺蘇生術(CPR)の手順を音声で指示する音声データを記録したメモリ6と、該メモリ6から出力された音声データから音声を合成する音声IC7と、該音声IC7から出力された合成音声の音声電流を増幅する増幅器8と、増幅された音声電流で駆動されて音声を拡大して外部に放出するスピーカ9と、ボタン電池からなる電源10と、電源10をオン/オフするスイッチ11とを備えてなっている。メモリ6には、予めマイクから心肺蘇生術の手順を音声で音声IC7を介して吹き込んで音声データとして記録しておく。メモリ6としては、コンパクトフラッシュ(登録商標)等のメモリカードを使用することができる。これらメモリ6や音声IC7、増幅器8は回路基板に実装した形態で使用することができる。
【0016】
指示装置1は、メモリ6に記録した音声データを基に、心肺蘇生術の手順としてつぎのような音声ガイドを提供する。
(1)肩を軽くたたきながら耳元で呼びかけ、意識があるかを確認してください。
(2)気道の確保を行ってください。
(3)口の中に異物があれば取り除いてください。
(4)頬を口と鼻に近づけ、吐く息を確認してください。
(5)指で鼻をつまみ、息を静かに1回吹き込み、胸の動きと呼気を確認してください。
(6)もう一度息を静かに吹き込み、再度呼気を確認してください。
(7)呼気の確認ができれば、次ぎの音にしたがって人工呼吸を続けてください。音が鳴っている間は、息を吹き込んでください。
(8)ピー、ピー、ピー・・・・・・・。
(9)次ぎのリズムにしたがって心臓マッサージを開始してください。
(10)プー、プー、プー・・・・・・・。
(11)人工呼吸と心臓マッサージのリズム音が交互に鳴りますので、それに従って心肺蘇生を行ってください。
(12)ピー、ピー、ピー・・・、プー、プー、プー・・・、ピー、ピー、ピー・・・、プー、プー、プー・・・。
【0017】
救助者が心肺蘇生術の技術を十分に習得し、人工呼吸および心臓マッサージのリズムで足りる場合、或いは緊急を要する場合は、以下のように、呼気の確認を終了した以降の音声案内を提供する。
(1)次ぎの音にしたがって人工呼吸を続けてください。音が鳴っている間は、息を吹き込んでください。
(2)ピー、ピー、ピー・・・・・・・。
(3)次ぎのリズムにしたがって心臓マッサージを開始してください。
(4)プー、プー、プー・・・・・・・。
(5)人工呼吸と心臓マッサージのリズム音が交互に鳴りますので、それに従って心肺蘇生を行ってください。
(6)ピー、ピー、ピー・・・、プー、プー、プー・・・、ピー、ピー、ピー・・・、プー、プー、プー・・・。
【0018】
本実施形態では、音声心肺蘇生指示装置1を名刺大のハードカードタイプに形成しているので、名刺入れや定期券入れなどに収容して、普段から身辺に携帯しておくことができる。したがって、災害現場等で要救護者が倒れているのに出くわしたら、何時でも指示装置1を取り出して、心肺蘇生術の実施の助けに使用することができる。
【0019】
心肺蘇生術をするにあたっては、先ず、大声を出して他の人の助けを求めると共に救急車を呼んでもらう。そして要救護者のところに駆け寄ったら指示装置1を取り出し、指示装置1のスイッチボタン4を押して音声指示手段5を作動させ、上記の心肺蘇生術の手順を音声で案内してもらい、心肺蘇生術を開始する。これによって、音声の案内を助けにして要救護者に心肺蘇生術を行うことができ、心肺蘇生術の訓練を受けた非専門家の一般市民であっても、容易に心肺蘇生術の適確な実施をすることができる。
【0020】
図3は、本発明の他の実施形態を示す平面図である。本実施形態では、身辺の携帯品として身に着ける装着品である腕時計12に適用した場合を示す。腕時計12のリューズの側とは反対側の側面に、図2に示す音声指示手段5を組み込んで樹脂封止した筐体13を図示しないねじで取付けて、腕時計12に音声心肺蘇生指示装置1Aを設けた。筐体13の外面には、図2のスピーカ9からの音声を外部に放出する音声放出口14と、電源スイッチ11をオン/オフするスイッチボタン15とが設けられている。
【0021】
本実施形態の音声心肺蘇生指示装置1Aによっても、災害現場等で要救護者に心肺蘇生術を施す場面に遭遇したら、何時でも腕時計12に設けた指示装置1Aのスイッチボタン15を押して、音声指示手段5を作動させることにより、音声の案内を助けにして心肺蘇生術を適確に実施することができる。
【0022】
図4は、本発明のさらに他の実施形態を示す平面図である。本実施形態は、身に着ける装着品としてベルトのバックルに設けた例を示す。ベルトのバックル16の金具の基部の表側に、図2に示す音声指示手段5を組み込んで樹脂封止した筐体17をねじで取付けて、バックル16に音声心肺蘇生指示装置1Bを設けた。同様に、筐体17の外面には、スピーカからの音声を外部に放出する音声放出口18と、スイッチボタン19とが設けられている。本実施形態の音声心肺蘇生指示装置1Bによっても、先の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0023】
以上では、身に着ける装着品として、腕時計とベルトのバックルの2例を説明したが、本発明は、その他に、帽子、ペンダントやリストバンド、イヤリング等の装飾品、眼鏡やサングラス、サンバイザー等の眼鏡類等、各種のものに適用できる。この場合、筐体に音声指示手段を内蔵させた形態の音声心肺蘇生指示装置は、装着品にねじや接着剤で取付ける他、紐で取付けるようにしてもよい。また音声指示手段5のスピーカ9および電源10を除いた全体を樹脂シートに埋め込んだシート形態に形成して、接着剤で装着品に貼り付けるようにすることができる。
【0024】
図5は、本発明のさらに他の実施形態を示す平面図である。本実施形態は、身辺の携帯品として音声再生機能を有する携帯機器である携帯電話に適用した例を示す。携帯電話20内のメモリには、心肺蘇生術の手順を音声で指示する音声データが記録されており、該音声データを記録したメモリと携帯電話20の音声ICおよびスピーカとを利用して、携帯電話20に図2の音声指示手段15と同様な音声指示手段を構成して、携帯電話20に音声心肺蘇生指示装置1Cを構築した。携帯電話20には、機能選択ボタンによる音声心肺蘇生指示装置の選択で音声指示手段が作動するように、音声心肺蘇生指示装置の立ち上げ機能を設定しておく。なお、音声データは、携帯電話20に内臓のメモリではなく、携帯電話20に装着する外部メモリ(メモリスティック)に記録してもよい。
【0025】
本実施形態によれば、携帯電話20の電源ボタンを押し、機能選択ボタンによって音声心肺蘇生指示装置1Cを選択することにより、音声心肺蘇生指示装置1Cの音声指示手段を作動させることにより、音声の案内を助けにして心肺蘇生術を適確に実施することができる。
【0026】
本発明が適用可能な音声再生機能を有する携帯機器としては、上記の携帯電話の他に、PHS等の携帯通信機器、iPODやCDプレーヤー、MDプレーヤー等の音楽再生器が挙げられ、さらにはビデオカメラ等も可能である。
【0027】
本発明は、身辺の携帯品として身に直接着ける装着品ばかりでなく、手や肩に下げて持ち運ぶカバン等の運搬用所持品や、これらカバン等に入れて持ち運ぶ身の回り品(被運搬用所持品)にも音声心肺蘇生指示装置を設けることができる。
【0028】
図6は、手提げカバン21に入れて持ち歩くノート22に適用した場合を示し、ノート22の表紙に図2に示す音声指示手段5を組み込んだ樹脂製のシート23を貼り付けて、ノート22に音声心肺蘇生指示装置1Dを設けた。同様に、シート23の外面には、スピーカからの音声を外部に放出する音声放出口24と、スイッチボタン25とが設けられている。本実施形態によっても、これまでの実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0029】
なお、本発明が適用可能な運搬用所持品としては、手提げカバンやハンドバック等のカバン類、リュックやナップサック等の袋類が挙げられる。被運搬用所持品としては、これらに入れて運ぶ鉛筆、万年筆、ボールペン、手帳、ノート等の文房具や化粧品等の各種の身の回り品が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の音声心肺蘇生指示装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の指示装置に内蔵された音声指示手段を示すブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1、1A〜1D 音声心肺蘇生指示装置 2 ハードカード
3 音声放出口 4 スイッチボタン
5 音声指示手段 6 メモリ
7 音声IC 8 増幅器
9 スピーカ 10 電源
11 電源スイッチ 12 腕時計
16 バックル 20 携帯電話
21 カバン 22 ノート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身辺の携帯品に設けられる音声心肺蘇生指示装置であって、心肺蘇生術の手順を音声で指示する音声データを記録したメモリと、該メモリから出力された音声データから音声を合成する音声ICと、該音声ICから出力された音声を拡大して外部に放出するスピーカとからなる音声指示手段を設けたことを特徴とする音声心肺蘇生指示装置。
【請求項2】
身辺の携帯品として、名刺入れまたは定期券入れに収容して持ち運び可能な名刺サイズの専用のハードカードを作成して、該ハードカードに前記音声指示手段を内蔵させた請求項1記載の音声心肺蘇生指示装置。
【請求項3】
身辺の携帯品が身に着ける装着品であり、該装着品に前記音声指示手段を組み込んだ筐体またはシートを取付けた請求項1記載の音声心肺蘇生指示装置。
【請求項4】
身辺の携帯品が音声再生機能を有する携帯機器であり、該携帯機器のメモリまたは携帯機器に装着する外部メモリに、心肺蘇生術の手順を音声で指示する音声データを記録して、該音声データを記録したメモリと携帯機器の音声ICおよびスピーカとを利用して、携帯機器に前記音声指示手段を構成した請求項1記載の音声心肺蘇生指示装置。
【請求項5】
身辺の携帯品が手や肩に下げて持ち運ぶ運搬用所持品または該運搬用所持品を介して持ち運ぶ被運搬用所持品であり、該運搬用または被運搬用所持品に前記音声指示手段を組み込んだ筐体またはシートを取付けた請求項1記載の音声心肺蘇生指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−130120(P2007−130120A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324414(P2005−324414)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(504005585)株式会社ノルメカエイシア (3)
【Fターム(参考)】