説明

音声蓄積装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、留守番電話システムなどの固体素子録音に利用し、デジタル符号化された入力音声データを蓄積する音声蓄積装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、留守番電話システムなどでは、留守番電話受け付け時に着信した通話を従来の磁気テープの録音に代えて、固体素子を用いて記録している。この固体素子での通話音声の録音は、その音声信号をデジタル符号化し、このデジタル符号化した音声信号の無音を検出して、無音部を除いた音声データの記録を行っている。これによって、記録媒体の記録容量を大きく必要とせずに、より多くの音声データを記録できるようにしている。
【0003】図3は従来の音声蓄積装置を示すブロック図である。図3において、この例は、入力音声信号Saから無音部分を検出して有音無音判定を行う無音検出部1と、有音無音判定後の音声信号Sbを記録する音声記録部2と、この音声記録部2で記録された音声信号Scから出力音声信号Sdを送出する音声再生部3が設けられている。さらに、無音検出部1からの有音無音判定情報Seから音声記録部2及び音声再生部3にそれぞれ音声記録制御信号Caと音声再生制御信号Cbを送出する制御部4が設けられている。
【0004】次に、この従来例の動作について説明する。まず、録音の場合は入力音声信号Saが無音検出部1でフレームごとのパワー計算を行う。このパワー計算でパワーが大きい場合は有音と判定し、また、パワーが小さい場合は無音と判定する。そして、無音検出部1から有音無音判定が付加された音声信号Sbが音声記録部2に出力される。同時にフレームの有音無音判定情報Seが制御部4に出力される。制御部4は無音フレーム数をカウントし、無音フレーム数と有音判定フレームの音声データの記録を行うための音声記録制御信号Caを音声記録部2に出力する。音声記録部2は入力される音声記録制御信号Caで、無音フレーム数と音声信号Sbの有音判定フレームを記録する。再生の場合は、制御部4から音声再生制御信号Cbを音声再生部3に出力し、音声再生部3は音声記録部2からの記録データである音声信号Scの無音フレーム数からフレーム時間分だけ無音データを出力し、有音フレームはそのまま再生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例の音声蓄積装置では、無音検出部1で入力音声信号Saから無音部分を検出して行う有音無音判定が、フレームのパワー情報だけであり、五十音のサ行のような摩擦音の話頭を無音と判定してしまい、話頭切れが発生して、高品質の音声蓄積が出来ないという問題があった。
【0006】本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、五十音のサ行のような話頭の音声パワーが単調増加の場合の音声パワーが小さく、無音と判定されてしまうフレームによる話頭切れを阻止でき、高品質の音声蓄積が可能になる優れた音声蓄積装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の音声蓄積装置は、デジタル符号化された音声データのパワーを検出して有音又は無音かを判定する有音無音判定手段と、前記デジタル符号化された音声データの最新の正の整数個のフレームを一時的に記憶するフレーム記憶手段と、前記フレーム記憶手段に記憶されている正の整数個のフレーム分の、それぞれの隣合うフレームとのパワーの増減を検出して記憶するパワー増減検出手段と、前記有音無音判定手段の判定よりフレームが無音フレームから有音フレームへと変化した場合、前記パワー増減検出手段に記憶されている正の整数個のフレーム分のパワー増減情報に基づいて、前記フレーム記憶手段に記憶されている正の整数個のフレームの内の有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加したフレームのみを前記有音フレームの先頭に付加して、前記音声蓄積手段に記録する音声記録手段とを備える構成としている。
【0008】請求項2記載の音声蓄積装置は、有音無音判定手段がパワーが有音無音判定値を超える場合の、音声データを有音フレームと判定し、超えない場合の音声データを無音フレームと判定し、かつ、フレーム記憶手段が無音フレームから有音フレームに変化した時の有音フレーム以前の無音フレーム内の正の整数個のフレーム中で有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加している単調増加フレームと、有音フレーム以降の有音フレームとを音声データとして記録する構成としている。
【0009】
【作用】この構成の請求項1及び2記載の音声蓄積装置は、最新の入力音声を正の整数個のフレームだけ一時的に記憶しておき、この記憶された正の整数個のフレームのそれぞれ隣合うパワーの増減を検出して記憶している。そして、有音無音の判定結果が無音から有音に変化した場合に、記憶されている正の整数個のフレーム分のパワー増減情報に基づいて、記憶されている正の整数フレームの内の有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加したフレームのみを、正の整数個の有音フレームの先頭に付加して音声データを記録している。したがって、五十音のサ行のような話頭の音声パワーが単調増加の場合の音声パワーが小さく、無音と判定されてしまうフレームによる話頭切れが阻止される。
【0010】
【実施例】以下、本発明の音声蓄積装置の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】なお、以降の文章及び図にあって、従前の図3に示す同一の構成要素には同一の符号を付した。
【0012】図1は本発明の音声蓄積装置の実施例の構成を示すブロック図である。図1において、この例は入力音声信号Saから無音部分を検出して有音無音判定を行う無音検出部1と、有音無音判定後の音声信号Sbを記録する音声記録部2と、この音声記録部2で記録された音声信号Scから出力音声信号Sdを送出する音声再生部3及び無音検出部1からの有音無音判定情報Seに基づいて音声記録部2及び音声再生部3にそれぞれ音声記録制御信号Caと音声再生制御信号Cbとを送出する制御部4とが設けられている。さらに、無音検出部1からの入力音声信号Saが入力され、一時的に記憶していたフレーム信号Sfを送出するフレーム記憶部5と、フレーム信号Sfからパワー増減情報Sgを制御部4に出力するパワー増減検出部6とが設けられている。
【0013】次に、この実施例の動作について説明する。まず、録音の場合は入力音声信号Saが無音検出部1においてフレームごとのパワーを計算し、この計算でパワーの大きい場合は有音と判定する。また、パワーの小さい場合は無音と判定する。同時に入力音声信号Saがフレーム記憶部5に常に最新の正の整数個のフレーム(必要に応じてαと記載する)だけが、順次記憶される。パワー増減検出部6はフレーム記憶部5に記憶されたフレーム信号Sfから正の整数個のフレームのそれぞれ隣合うフレームのパワー差を検出して記憶し、かつ、パワー増減情報Sgを制御部4に出力する。無音検出部1から有音無音判定が付加された音声信号Sbが音声記録部2に出力され、フレームの有音無音判定情報Seが制御部4に出力される。制御部4は有音無音判定情報Seが無音フレームで連続した場合は、無音フレーム数をカウントし続け、有音無音判定情報Seが無音から有音へ判定が変化した際に、パワー増減情報Sgからフレーム記憶部5に記憶されている正の整数個のフレームの内の有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加となっている単調増加フレームを有音フレームの先頭に付加するために「無音フレーム数−(マイナス)単調増加フレーム数」と、単調増加フレームを付加した有音フレームとの音声データの記録を行うための音声記録制御信号Caを、音声記録部2に出力する。音声記録部2は、音声記録制御信号Caが入力されて「無音フレーム数−単調増加フレーム数」とフレーム記憶部5に記憶されていた音声信号内の単調増加フレームとをフレーム信号Sfから生成して、有音フレーム判定となったフレームの先頭に付加して有音判定フレームの音声データを記録する。再生の場合は、制御部4から音声再生制御信号Cbを音声再生部3に出力し、音声再生部3は音声記録部2で記録した音声信号Scから音声記録部2に記録した無音フレーム数のフレーム時間分だけ、無音を出力し、記録されているフレームはそのまま音声として再生する。
【0014】図2は、実施例における音声パワーの遷移を示す図である。図2において、パワーが有音無音判定値Kを超える部分は有音フレームFbと判定される音声データである。パワーが有音無音判定値Kを超えない部分は無音フレームFaと判定される音声データである。無音フレームFaから有音フレームFbに変化した時の有音フレームFb以前の無音フレームFa内の正の整数個のフレーム中で有音フレームFb以前に連続してパワーが単調増加している単調増加フレームFcと、有音フレームFb以降の有音フレームが音声記録部2に音声データとして記録されるフレームである。
【0015】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1及び2記載の音声蓄積装置は、最新の入力音声データを正の整数個のフレームだけ一時的に記憶して、さらに、正の整数個のフレームのそれぞれ隣合うパワーの増減を検出して記憶している。そして、有音無音の判定結果が無音から有音に変化した場合に、記憶されている正の整数個のフレーム分のパワー増減情報に基づいて、記憶されている正の整数個のフレームの内の有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加したフレームのみを正の整数個の有音フレームの先頭に付加して音声データを記録しているため、五十音のサ行のような話頭の音声パワーが単調増加の場合の音声パワーが小さくて無音と判定されてしまうフレームによる話頭切れを阻止できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の音声蓄積装置の実施例の構成を示すブロック図
【図2】実施例における音声パワーの遷移を示す説明図
【図3】従来の音声蓄積装置を示すブロック図
【符号の説明】
1 無音検出部
2 音声記録部
3 音声再生部
4 制御部
5 フレーム記憶部
6 パワー増減検出部
Sa 入力音声信号
Sb,Sc 音声信号
Sd 出力音声信号
Se 有音無音判定情報
Ca 音声記録制御信号
Cb 音声再生制御信号
Sf フレーム信号
Sg パワー増減情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタル符号化された音声データのパワーを検出して有音又は無音かを判定する有音無音判定手段と、前記デジタル符号化された音声データの最新の正の整数個のフレームを一時的に記憶するフレーム記憶手段と、前記フレーム記憶手段に記憶されている正の整数個のフレーム分の、それぞれの隣合うフレームとのパワーの増減を検出して記憶するパワー増減検出手段と、前記有音無音判定手段の判定よりフレームが無音フレームから有音フレームへと変化した場合、前記パワー増減検出手段に記憶されている正の整数個のフレーム分のパワー増減情報に基づいて、前記フレーム記憶手段に記憶されている正の整数個のフレームの内の有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加したフレームのみを前記有音フレームの先頭に付加して、前記音声蓄積手段に記録する音声記録手段とを備える音声蓄積装置。
【請求項2】 有音無音判定手段は、パワーが有音無音判定値を超える場合の音声データを有音フレームと判定し、超えない場合の音声データを無音フレームと判定し、かつ、フレーム記憶手段が無音フレームから有音フレームに変化した時の有音フレーム以前の無音フレーム内の正の整数個のフレーム中で有音フレーム以前に連続してパワーが単調増加している単調増加フレームと、有音フレーム以降の有音フレームとを音声データとして記録することを特徴とする請求項1記載の音声蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3252591号(P3252591)
【登録日】平成13年11月22日(2001.11.22)
【発行日】平成14年2月4日(2002.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−44290
【出願日】平成6年3月15日(1994.3.15)
【公開番号】特開平7−254921
【公開日】平成7年10月3日(1995.10.3)
【審査請求日】平成10年10月9日(1998.10.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 昭64−76098(JP,A)
【文献】特開 平4−63047(JP,A)
【文献】特開 昭62−108645(JP,A)
【文献】実開 昭63−164899(JP,U)