説明

音声認識システム入力用マイクロフォン

【課題】電子カルテにおける音声認識システム等の使用に適した音声入力手段を提供する。
【解決手段】従来の電話機の受話器に近似した機能が付与された音声認識システム入力用マイクロフォン40、すなわち、耳あて部41、音声入力部42及びハンドル部43により構成され、耳あて部及び音声入力部が、ハンドル部によって連結されており、かつ、耳あて部を人間の耳に当てると同時に、音声入力部が人間の口の近傍に位置するように、耳あて部及び音声入力部がハンドル部において設けられている、音声認識システム入力用マイクロフォン。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、コンピュータの音声認識システムにおいて用いるべき、音声認識システム入力用マイクロフォンに関する考案である。より具体的には、本考案に関わる音声認識システム入力用マイクロフォンは、医師が診療時に使用する電子カルテシステム(診療録を電子的に記録するシステム)に患者の主訴や病歴、所見などを入力時に、音声認識システムを利用する場合に使用するのに好適な音声認識システム入力用マイクロフォンに関する考案である。
【0002】
【従来の技術】
従来、音声認識システムに使用するマイクロフォン(マイク)は、ヘアバンド11により、頭部12に固定するヘッドセット型マイクロフォン10(第1図)
がほとんどで、ごく一部で固定式マイク20(第2図)やハンドマイク30(第3図)などが使われている程度である。これは、一般に音声認識システムが雑音や音の大きさ(レベル)の変化に弱く、話者の口とマイクの位置関係(距離や角度)が一定でないと音声の認識率が著しく低下してしまうためである。
【0003】
すなわち、周囲の雑音を極力排除するために、マイクはかなり強度の単一指向性のものが用いられ、マイクが正確に音源(話者の口元)に向いていないと、音声の認識レベルが極端に低下してしまうこととなるが、ヘッドセット型マイクロフォン10であれば、マイク13は、ヘアバンド11とビーム14によって、話者の口元に固定されるため、話者が動いたり、どのような姿勢をとっても、話者の口とマイクの位置関係が変わらず、常に安定したレベルでマイクに音声を入力できる。これに対し、固定式マイク20(第2図)では、話者が少し動いたり顔を傾けたりするだけでマイクと音源の位置関係が変わりレベルが大きく変動してしまう。ハンドマイク30(第3図)では、話者の動きにはある程度追随できるが、マイクを一定位置に保持し続けることは困難で腕の筋肉の疲労などで気づかぬうちにマイクの位置が下がっていることなどがよくある。
【0004】
このような理由で、音声認識システムにはヘッドセット型マイクロフォンを使用することが、ほぼ常識化し定着しつつある。
【0005】
【考案が解決する課題】
自宅やオフィスなどで音声認識システムを使用する場合には、ヘッドセット型マイクロフォンを用いることに全く問題ないのだが、電子カルテにおいて、音声認識システムを用いる場合には、電子カルテ独自の問題が認められる。
【0006】
まず、電子カルテの一般的な使用者である医師が、診療中にヘッドセット型マイクロフォンを装着していることに対し、患者が違和感を感じることが想定されるため、少なくともヘッドセット型マイクロフォンを付けたまま問診や触診を行うことは困難である。
【0007】
さらに、医師は、診察中に検査や処置などで診察室や処置室などを歩き回ることがしばしばあり、さらに、聴診器などもしばしば使用し、この場合、マイクのケーブルをコンピュータから抜くか、ヘッドセット型マイクロフォンをはずす必要が生じ、非常に煩雑である。また、ヘッドセット型マイクロフォンをはずして再装着するときは、マイクのポジションなどについて、注意深く再調整しなければならないために時間もかかり、患者一人あたり3分の診療時間と言われる日本の医療においてはこのような運用は現実的でない。
【0008】
また、だれもいない空間やコンピュータに向かって話すことに医師は慣れていないことが多く、電子カルテにおけるヘッドセット型マイクロフォンの使用に関しては、話者側にも違和感があって、発声が不自然になったり声がどうしても小さくなってしまったりしていた。
【0009】
ヘッドセット型マイクロフォンに比べ、固定式マイクやハンドマイクの方が患者に与える違和感は少ないが、先に述べたように音量(レベル)が不安定になる問題があり、認識精度が低下するという大きな欠点がある。また、ヘッドセット型マイクロフォンほどではないが、やはり医師が診療中にマイクに向かって話かけるというのは、患者側から見て奇異に映るのは否定できない。
【0010】
そこで、本考案が解決すべき課題は、電子カルテにおける音声認識システム等の使用に適した音声入力手段を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本考案者は、上記の課題の解決のために、音声認識システムの音声の入力態様について、検討を行った。その結果、音声認識システム入力用のマイクロフォンを、いわば、電話の受話器に類似した形状とすることにより、上記の課題の解決し得ることを見出し、本考案を完成した。
【0012】
すなわち、本考案は、耳あて部、音声入力部及びハンドル部により構成され、耳あて部及び音声入力部が、ハンドル部によって連結されており、かつ、耳あて部を人間の耳に当てると同時に、音声入力部が人間の口の近傍に位置するように、耳あて部及び音声入力部がハンドル部において設けられている、音声認識システム入力用マイクロフォン(以下、本マイクロフォンともいう)を提供する考案である。
【0013】
本考案における「耳あて部、音声入力部及びハンドル部により構成され、耳あて部及び音声入力部が、ハンドル部によって連結されており、かつ、耳あて部を人間の耳に当てると同時に、音声入力部が人間の口の近傍に位置するように、耳あて部及び音声入力部がハンドル部において設けられている」という、本考案の要件は、本マイクロフォンの外観形状が受話器に準じた形状であることを示している。すなわち、本マイクロフォンの使用者は、一般的に、本マイクロフォンのハンドル部を握って持ち上げて、耳あて部を、左右どちらかの耳にあてると同時に、音声入力部を口の近傍に近づけて、この音声入力部に向けて、音声認識システムに認識させるべき内容を口頭で喋ることにより入力することができる。
【0014】
また、本マイクロフォンに、回路構成の接続および切断機能を有するスイッチ機構が設けることにより、本マイクロフォンの使用者は、かかるスイッチ機構を駆使して、本マイクロフォンにおける回路構成の接続または切断を行うことにより、具体的な使用状況に応じて、音声入力行為の継続、中断、中止または再開を行うことができる。このスイッチ機構は、本マイクロフォンのハンドル部に設けることが、使用しやすく、好適である。
【0015】
本マイクロフォンを用い得る対象は、特に限定されず、音声認識システムに対して入力を行うあらゆる場合に、広く用いることができる。具体的には、電子カルテ、予約・受付システム、翻訳システム、ワードプロセッサー、その他のコンピュータへの一般的な音声入力等に用いることが可能であるが、本考案の特長を最も効果的に発揮することができる対象の一つが、電子カルテである。
【0016】
すなわち、本考案は医師が診療中であっても患者に違和感を与えず、かつ、音の大きさ(レベル)も安定させることのできる音声認識用マイクロフォンに関するものであり、例えば、以下に列挙するような意味がある。
【0017】
1.音の大きさ(レベル)の安定化 ほとんどの人は幼いころから電話に慣れ親しんでおり、受話器に該当する ハンドル部を手にしたとき、ほぼ反射的にその耳あて部を耳に押し当て、音 声入力部は、口元近くの適切な位置にポジショニングされる。これは電話で 相手の声を聞きながら自分の声をマイクに入れるために必然的にこのように するわけだが、結果的に耳が定点となって受話器が頭部に半固定されること になり、音源である話者の口元とマイクの位置関係はほぼ一定になる。この ため、マイクを手で保持しているという点ではハンドマイクと同じなのだが 、ハンドマイクのように位置が不安定になってしまうことがない。
【0018】
2.患者に違和感がない ヘッドセット型マイクロフォンと違い、受話器は極めて一般的な機器であ り、医師がこれに向かって適宜話しかけたとしても、見ている側にほとんど 違和感がない。
【0019】
3.医師に違和感がない 話者である医師にとっても、使いなれないヘッドセット型マイクロフォン や固定マイク、ハンドマイクと異なり、受話器に対して話しかけることには ほとんど違和感がなく、電話するときと同じような声量で自然な音声入力が できる。
【0020】
4.着脱の手間がかからない ヘッドセット型マイクロフォンと違い着脱という行為が不要になる。ヘッ ドセット型マイクロフォンの場合、使用前には両手で頭部にバンドをかけビ ームを調整してマイクを適切な位置にセット型マイクロフォンするなどの手 間がかかり、また使用後も両手でバンドを頭からはずし、髪型を整えるなど の手間がかかる。これに対し、受話器型マイクの場合は、音声入力したい時 にすぐにこれを手にとって電話と全く同じ要領で話しかければよく、聴診器 を使用する時や音声入力を終了した場合も電話と同様に単に受話器を置けば よいだけである。手間も時間もかからず診療を妨げることがない。医師が診 察中に電話をすることはごく普通の行為であり、日常動作の延長で音声入力 が可能となる。
【0021】
本考案において、特に重要なのはマイクの形状であり、まず、耳あて部及び音声入力部が、ハンドル部によって連結されており、かつ、耳あて部を人間の耳に当てると同時に、音声入力部が人間の口の近傍に位置するように、耳あて部及び音声入力部がハンドル部において設けられていることが必要である。そして、従来からある受話器に類似していて周囲に違和感を感じさせにくくすることと、耳あて部を耳に当てたときに、音声入力部が話者の口元の適切な位置にくるように、ハンドル部の長さや、ハンドル部に対する耳あて部や音声入力部の角度や、これらの各々の構造等が、人間工学的に適切に設計されていることが好適である。
【0022】
【考案の実施の形態】
以下、図面を用いて、本考案の実施の形態を説明する。
第4図は、本マイクロフォンの一実施態様を示した概略図である。また、第5図は、第4図に示した本マイクロフォンの、I−I’から矢印の方向への断面図である。第4図と第5図において、耳あて部41、音声入力部42及びハンドル部43は、一体成型されて、本マイクロフォン40が構成されている。耳あて部41及び音声入力部42は、ハンドル部43から、ほぼ同方向に突出した形状であり、耳あて部41を人間の耳に当てると同時に、音声入力部42が人間の口の近傍に位置するようになっている。また、音声入力部42の背面からは、音声入力部42より入力された音声信号を、電子カルテ等の音声入力対象となるソフトウエアがインストールされたコンピュータシステムに入力するための入力用コード44が、音声入力部42の本体である音声入力装置422から、導電線4221と4222並びに4223を介して、連結されている。導電線4221と4222は、スイッチ45を介しており、スイッチ45の押しボタン451を押すことにより、押しボタン451を押さない状態では電気的に遮断されている導電線4221と4222を、電気的に接続して、本マイクロフォン40における回路構成を接続する機能を有している(あるいは、逆に、押しボタン451を押すことにより、押しボタン451を押さない状態で電気的に接続されている導電線4221と4222を、電気的に遮断して、本マイクロフォン40における回路構成を遮断する機能を付することもできる)。
【0023】
この形状は、従来の一般的な受話器に準じた形状であり、過度にファッション性を意識したような受話器でなければ、従来の一般的な受話器の形状として認識され得る形状である。
【0024】
本マイクロフォン40の使用者は、ハンドル部43を握って、本マイクロフォン40の耳あて部41を左右どちらかの耳にあて、音声入力部42を口の近傍に位置させるように、固定する。次いで、本マイクロフォン40における回路構成が接続している状態において、音声入力内容を、音声入力部42のマウスピース421から、音声入力部42の本体である音声入力装置422の音圧・駆動力変換機構に向けて入力し、振動板その他からなる機械系に振動を惹起させ、電気音響変換機構により、音声を音声信号に変換する。この音声信号は、入力用コード44を介して、電子カルテ等の音声入力対象となるソフトウエアがインストールされたコンピュータシステムに入力され得る。この音声信号は、コンピュータにおいてインストールされた音声認識ソフトウエアにより、例えば、音響分析→音素セグメンテーション→音素認識→文節認識→文認識等のプロセスを経て、音声認識信号として、電子カルテ等の所望するソフトウエアに入力され得る。音声認識ソフトウエアは、市販品を用いることも、独自にプログラミングしたものも用いることができる。また、音声認識信号の入力対象となるソフトウエアも、音声認識機能を有する既存のソフトウエアの中から自由に選択可能であり、また、独自にプログラミングしたものも用いることができる。
【0025】
また、本マイクロフォン40の使用者は、スイッチ45の押しボタン451を押すか放すかすることにより、自在に本マイクロフォンの回路構成の遮断または接続することにより、音声入力行為の継続、中断、中止または再開を行うことができる。
【0026】
なお、上記の音声入力部42の音声入力装置422としては、例えば、炭素送話器、動電形音圧マイクロフォン、静電形音圧マイクロフォン、単一指向性マイクロフォン等を用いることができるが、音声認識の感度を可能な限り向上させるために、単一指向性マイクロフォンを用いることが好適である。
【0027】
また、耳あて部41は、その形状が、本マイクロフォン40を受話器型とする機能を第一義とする構造であり、その形状要件のみを満たせば、他の機能を付加することなしに、本考案の要件を満たすものである。しかしながら、従来の受話器の耳あて部のように、耳あて部41の内部に、音声信号を音圧に変換可能なスピーカー機構(音声出力機構)を設けることが好適である。例えば、音声入力部42より入力されて変換された音声信号を、音声入力対象となるコンピュータシステムに向けて送ると同時に、ハンドル部43の内部に設けた導電コードを介して、耳あて部のスピーカー機構に送って音圧化することにより、音声入力者は、自らの入力音声をより明確に把握することが可能である。また、音声入力対象となるコンピュータシステムから、例えば、音声入力手順の指示等に関する音声信号を出力させて、これを出力用コード等を介して耳あて部のスピーカー機構に連結し、音声信号を音圧情報に変換して出力し、この出力内容を音声入力者に伝達することにより、電子カルテ等のソフトウエアの扱いを簡便にすることも可能である。
【0028】
なお、本実施態様に用いている入力用コード44や上記の出力用コードは、公知のコードレス手段、例えば、無線等を用いることにより、コードレス化することも可能である。また、本考案における、回路構成とは、導電線で接続されている部分のみならず、コードレス化された状態で電気的に接続可能な要素を含むものである。
【0029】
【考案の効果】
本考案により、電子カルテにおける音声認識システム等の使用に適した音声入力手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヘッドセット型マイクロフォンの概略図である。
【図2】固定式マイクの概略図である。
【図3】ハンドマイクの概略図である。
【図4】本考案の一実施態様の概略図である。
【図5】本考案の一実施態様の概略の断面図である。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】耳あて部、音声入力部及びハンドル部により構成され、耳あて部及び音声入力部が、ハンドル部によって連結されており、かつ、耳あて部を人間の耳に当てると同時に、音声入力部が人間の口の近傍に位置するように、耳あて部及び音声入力部がハンドル部において設けられている、音声認識システム入力用マイクロフォン。
【請求項2】耳あて部に、音声入力部において入力されている音声、又は、コンピュータシステムからの音声、を出力可能な音声出力機構が設けられている請求項1記載の音声認識システム入力用マイクロフォン。
【請求項3】回路構成の接続および切断機能を有するスイッチ機構が設けられている、請求項1または2記載の音声認識システム入力用マイクロフォン。
【請求項4】スイッチ機構がマイクロフォンのハンドル部において設けられている、請求項3記載の音声認識システム入力用マイクロフォン。
【請求項5】音声認識システム入力用マイクロフォンが、電子カルテの音声認識システム入力用マイクロフォンである、請求項1〜4のいずれかの請求項記載の音声認識システム入力用マイクロフォン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】実用新案登録第3084394号(U3084394)
【登録日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【発行日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【考案の名称】音声認識システム入力用マイクロフォン
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2001−5720(U2001−5720)
【出願日】平成13年8月30日(2001.8.30)
【出願人】(599094901)株式会社メリッツ (3)