説明

音発生装置

【課題】不快な騒音を低減しなくても、耳障りの良い音を提供すること。
【解決手段】音入力手段4が周囲の環境にて生じている環境音を入力する。信号発生手段6は、その環境音の波形を表す環境音信号を異なる特定態様に変換するための発生音信号を生じさせる。信号演算手段8は、その発生音信号に基づいてその環境音信号を変換した変換信号を生成する。音出力手段3は、その変換信号に基づく変換音を出力する。音出力手段3は、出力した変換音を環境音に混合させて混合音を生じさせる。この混合音を聞いた者は、不快だった環境音とは異なる特定態様の混合音に対して不快感を与えにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の環境にて生じている環境音の存在にかかわらず変換音を出力する音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業の発達に伴って、人間が騒音に曝されることが多く、不快に感じることが多くなっている。このため近年、疲れた人間を癒すための様々な装置が開発されている。このような装置としては、騒音を打ち消すための変換音を出力させる変換音発生システムを例示することができる(特許文献1参照)。
【0003】
この変換音発生システムは、主としてアンチ・ノイズ信号発生部、擬音再生処理部、ミキシング部及びパワーアンプを有する。このアンチ・ノイズ信号発生部には、マイクから入力される合成音、いわゆる騒音源からの騒音、キャンセル音、そして擬音などの合成音に相当する帰還信号が入力される。このアンチ・ノイズ信号発生部は、その帰還信号が最小になるように負の騒音キャンセル信号を作成し、擬音とキャンセル信号がスピーカから放射する。
【0004】
擬音再生処理部は、アンチ・ノイズ信号発生部から出力されるキャンセル信号のうち、帰還信号に含まれる擬音成分に対応する負の信号に対して、擬音信号発生源から別途分岐して得た擬音信号を取り入れ、これを大きさや位相などを調整し、擬音信号の正の信号を生成させる。このミキシング部は、この正の出力信号と、上記アンチ・ノイズ信号発生部の出力側から得られる擬音成分の負の信号とを加算処理する。これにより、このミキシング部は、この正の出力信号及び負の信号を加算処理することにより、パワーアンプに入る前に、これら正の出力信号及ぶ負の出力信号を相殺する構成としている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−356989号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような公知技術では、変換音を出力させることにより騒音をある程度打ち消すことができる点で有効であるが、このような騒音を完全に打ち消すことは演算処理能力の関係上困難である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、周囲の環境にて生じている環境音を入力する音入力手段と、前記環境音の波形を表す環境音信号を異なる特定態様に変換するための発生音信号を生じさせる信号発生手段と、前記発生音信号に基づいて前記環境音信号を変換した変換信号を生成する信号演算手段と、前記変換信号に基づく変換音を出力する音出力手段とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態としての音発生装置1の構成例を示すブロック図である。
音発生装置1は、マイクロフォン4、A/D変換部5、トリガー信号発生部10、信号発生部6、ミキシング部8、D/A変換部9、アンプ2及びスピーカ3を有する。
【0010】
マイクロフォン4は音入力手段に相当し、A/D変換部5に接続されている。このマイクロフォン4は、周囲の環境にて発生している音(以下「環境音」と呼ぶ)を入力する機能を有する。このマイクロフォン4は、このような環境音として、例えば車両の運転に伴う騒音などを採取し、採取した環境音を表す環境音信号4aをA/D変換部5に出力する。この環境音信号4aはアナログ信号である。
【0011】
A/D変換部5は、マイクロフォン4、トリガー信号10a、信号発生部6及びミキシング部8に接続されている。このA/D変換部5は、マイクロフォン4から入力された環境音信号4aをディジタル信号に変換し、このディジタル信号とした環境音信号5aをトリガー信号発生部10、信号発生部6及びミキシング部8に出力する。
【0012】
トリガー信号発生部10は信号発生部6に接続されており、トリガー信号10aをこの信号発生部6に出力する。このトリガー信号発生部10は、例えばA/D変換部5からの環境音信号5aの振幅が規定の閾値以上である場合、このトリガー信号10aを発生する。このトリガー信号10aは、環境音と変換音を混合させるべきタイミングで出力される信号である。本実施形態では、このように環境音と変換音とを混合させて聞こえる音を「混合音」とも表現している。
【0013】
信号発生部6は、A/D変換部5、トリガー信号発生部10及びミキシング部8に接続されている。この信号発生部6は、環境音信号5aに応じて発生音信号6aを生成する。この環境音信号5aは、上述した環境音の波形を表している。
【0014】
具体的には、この信号発生部6は、トリガー信号発生部10からのトリガー信号10aの受け取りを契機として、次のような動作を行う。すなわちこの信号発生部6は信号発生手段に相当し、上述した環境音信号5aを、異なる特定態様に変換するための発生音信号6aを生じさせる。これとともに、この信号発生部6は、生じさせた発生音信号6aをミキシング部8に出力する。なお、この信号発生部6は、トリガー信号10aの受け取りを契機としなくても、恒常的にこのような動作を実行し続けている形態であっても良い。
【0015】
ここで、この発生音信号6aは、騒音などの波形を表す環境音信号5aをより耳障りのより波形の信号に変換するための信号である。なお、上述した混合音を恒常的に聞こえさせる場合には、トリガー信号発生部10を省略できるとともに、信号発生部6がこのようなトリガー信号10aの受け取りの有無にかかわらず処理を行うようにしてもよい。
【0016】
ここで、この信号発生部6は、その一部の機能がマスキング手段に相当し、上記音入力手段3によって入力された上記環境音の周波数成分のうち、規定の振幅以下である一部の成分をマスクするマスク機能を有する。具体的には、この信号発生部6は、このようなマスク機能として、例えばいわゆるFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)をかけて周波数軸上で演算を行う。
【0017】
ミキシング部8は、A/D変換部5、信号発生部6及びD/A変換部9に接続されている。このミキシング部8は、この信号発生部6からの発生音信号6aに基づいて、A/D変換部5からの環境音信号5aを変換した変換信号8aを生成する。
【0018】
具体的には、このミキシング部8は、その一部の機能が周波数成分演算手段に相当し、発生音信号6aの周波数成分及び環境音信号5aの周波数成分を用いて、この変換信号8aを生成している。より具体的には、このミキシング部8は、例えば信号発生部6からの発生音信号6aの周波数成分から、A/D変換部5からの環境音信号5aの周波数成分を減算して変換信号8aを生成している。
【0019】
D/A変換部9は、ミキシング部8及びアンプ2に接続されている。このD/A変換部9は、ミキシング部8からのディジタル信号である変換信号8aをアナログ信号に変換し、アナログ信号とした変換信号9aをアンプ2に出力する。アンプ1は、D/A変換部9及びスピーカ23に接続されている。このアンプ2は、D/A変換部9から入力された変換信号9aを増幅し、その増幅信号9bをスピーカ2に出力する。
【0020】
スピーカ23は音出力手段に相当し、増幅信号9b(変換信号に相当)に基づく変換音を出力する。このスピーカ23は、この増幅信号9bに基づいて、例えば、このような変換音と環境音を混合させて聞こえる音として自然界に存在する音を出力する。このような自然環境で生じうる音としては、例えば滝の音を挙げることができる。
【0021】
図2は、図1に示す信号発生部6の構成例を示すブロック図である。
信号発生部6は、音源部7及び信号選択部6bを有する。音源部7は信号保有手段に相当し、上記環境音の種類に各々対応させて複数の音源信号7a,7bを保有する。これら音源信号7a,7bは、それぞれ後述のように所望の基準で選択された場合、後ほど発生音信号6aとして出力される。
【0022】
これら音源信号7a,7bは、それぞれ、上述したマイクロフォン4から取得される環境音と混合することで、異なる特定態様の混合音を聞こえさせるための音源信号の一例である。具体的には、これら音源信号7a,7bは、それぞれ、この環境音と混合することで、その環境音に接した場合に感じていた不快感を与えないようにすることができる音源信号であればどのような音の音源を表してもよい。本実施形態では、音源信号7aに基づく変換音と環境音を混合した場合に聞こえる音として、例えば滝の音を生じさせるものとする。一方、音源信号7bに基づく変換音と環境音とを混合した場合に聞こえる音として、例えば雨の音を生じさせるものとする。
【0023】
一方、信号選択部6bは信号選択手段に相当し、上記環境音の種類に応じて上記複数の音源信号7a,7bのうちから所望の音源信号を選択する。なお、この環境音の種類に応じて用意しておく複数の音源信号としては、これら音源信号7a,7bに限られず、様々な音源信号群を準備しておいても良い。具体的には、この信号選択部6bは、環境音信号5aの周波数成分から、この環境音信号5aの元となる環境音の種類を判別し、この環境音の種類に応じて複数の音源信号7a,7bからいずれか所望の音源信号を選択する。
【0024】
本実施形態では、この信号選択部6bが、上述した環境音信号5aから音源信号7aを選択し、この音源信号7aと発生音信号6aとして上述したミキシング部8に出力していると例示する。
【0025】
音発生装置1は以上のような構成であり、次に図1及び図2を参照しつつ音変換方法の一例について説明する。
図3は、図1に示す音発生装置1による音変換方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す音変換方法は、例えば所定期間ごとに実行されている。
【0026】
マイクロフォン4は、恒常的に、例えば騒音を含む環境音を採取しており、この環境音を表すアナログ信号である環境音信号4aをA/D変換部5に出力している。このA/D変換部5は、マイクロフォン4からの環境音信号4aをディジタル信号に変換し、ディジタル信号である環境音信号5aをトリガー信号発生部10、信号発生部6及びミキシング部8に出力している。
【0027】
トリガー信号発生部10は、A/D変換部5からの環境音信号5aの振幅が規定の閾値以上となったか否かを判断する。このトリガー信号発生部10は、この環境音信号5aの振幅が規定の閾値以上となった場合、トリガー信号10aを信号発生部6に出力する。
【0028】
まずステップS1では、信号発生部6が、トリガー信号発生部10からトリガー信号10aが入力されたか否かを判断する。この信号発生部6は、トリガー信号10aの入力がない場合にはこの音変換処理を終了する一方、トリガー信号10aの入力があった場合には次のようなステップS2を実行する。
【0029】
すなわちステップS2では、この信号発生部6が、A/D変換部5からの環境音信号5aを取得する。次にステップS3では、この信号発生部6が、次のような発生音信号6aを発生させる。この発生音信号6aは、上述した環境音信号5aを異なる特定態様に変換するための信号である。これとともに、この信号発生部6は、このように生じさせた発生音信号6aをミキシング部8に出力する。
【0030】
次にステップS4では、ミキシング部8が信号変換処理を実行する。この信号変換処理では、ミキシング部8が、その発生音信号6aに基づいて、その環境音信号5aを変換した変換信号8aを生成する。このミキシング部8は、発生音信号6aの周波数成分及び環境音信号5aの周波数成分を用いて、この変換信号8aを生成している。より具体的には、このミキシング部8は、例えば信号発生部6からの発生音信号6aの周波数成分から、A/D変換部5からの環境音信号5aの周波数成分を減算して変換信号8aを生成している。
【0031】
次にステップS5では、変換音出力処理が実行される。この変換音出力処理では、D/A変換部9が、このミキシング部8からのディジタル信号である変換信号8aをアナログ信号に変換し、アナログ信号とした変換信号9aをアンプ2に出力する。
【0032】
また、この変換音出力処理では、アンプ1が、D/A変換部9から入力された変換信号9aを増幅し、その増幅信号9bをスピーカ2に出力する。さらに、この変換音出力処理では、スピーカ23が、増幅信号9b(変換信号に相当)に基づく変換音を出力する。
【0033】
具体的には、この変換音出力処理では、このスピーカ23が、この増幅信号9bに基づいて、例えば、このような変換音と環境音とを混合させて聞こえる音として自然界に存在する音を生じさせる。このような自然界に存在する音としては、例えば滝の音、雨の音を挙げることができる。
【0034】
図4は、図3に示す変換信号発生処理の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。なお、この変換信号発生処理は、図3に示すステップS3をより具体的に表した内容であり、主として図2を参照しつつ説明する。
【0035】
まずステップS31では、信号発生部6の信号選択部6bは、入力された環境音信号5aの周波数成分を解析する。次にステップS32では、この信号選択部6bが、この解析結果から、この環境音信号5aの元となる環境音の種類を特定する。
【0036】
次にステップS33では、信号選択部6bが、音源部7の音源信号7a,7bにおいて、この特定した環境音に対応する音源信号が存在しているか否かを確認する。この信号選択部6bは、対応する音源信号が存在しない場合、この変換信号発生処理を終了する。一方、この信号選択部6bは、対応する音源信号が存在する場合、この音源信号を選択する(ステップS34)。次にステップS35では、この信号選択部6bが、このように選択した音源信号を発生音信号6aとして上述したミキシング部8に出力する。このようにすると、信号選択部6bが、環境音信号5aの元となる環境音の種類に応じた発生音信号6aを発生することができる。
【0037】
図5は、音発生装置1によって音を変換する様子の一例を示すイメージ図である。なお、図示の例では、建築物13の側方を車両11が通行している様子を表している。建築物13は、例えば2階建ての一軒家であり、その一階部分の室内には、上述した音発生装置1が配置されている。
【0038】
このような建築物13においては、音が水平方向には伝わりやすいものの垂直方向には伝わりにくいことから、2階部分では、車両11の走行に伴う騒音はさほど大きく影響しない。一方、このような建築物13においては、1階部分においては、車両11の走行に伴い騒音が壁13aを通り抜けて室内に侵入しやすい。
【0039】
このような配置状況の音発生装置1は、上述したマイクロフォン4が恒常的にこのような騒音を含む環境音を採取している。この音発生装置1は、上述した音変換方法を実行しており、例えばこの環境音の大きさが規定の閾値以上となった場合、この採取した環境音に基づいて、スピーカ3から、上述のような音変換処理により発生させた変換音を出力する。
【0040】
すると、この建築物13の1階部分の室内においては、この出力された変換音によって、車両11の走行に伴う騒音がこの変換音に変換されてしまい、その室内の居住者が、聴覚上、元々の騒音を感じ取らなくなる。しかもこの変換音は、上述したように自然環境で生じうる音、例えば滝の音であり、この居住者からすると耳障りの良い音となっている。
【0041】
図6は、マイクロフォン4が採取した環境音に基づく環境音信号5aの波形の一例を示す波形図であり、図7は、信号発生部6が発生した発生音信号6aの波形の一例を示す波形図であり、図8は、ミキシング部8が出力する変換信号8aの波形の一例を示す波形図である。なお、これら図6〜図8において、縦軸は信号の振幅、つまり信号の強度を表しており、一方、横軸は時間を表している。
【0042】
図6に示す波形例では、環境音信号5aの振幅が大きく、しかも振幅の上下動が激しくなっている。このため、このような環境音信号5aの元となっていた環境音は、例えば居住者にとって耳障りな不快な音となっている。
【0043】
次に図7に示す波形例では、信号発生部6が環境音信号5aに基づいて生成した変換信号8aを表しており、この変換信号8aは、環境音信号5aの波形の上下動に合わせてやや大きな波形となっている。
【0044】
次に図8に示す波形例では、ミキシング部8が、上述した音変換処理によって図7に示す波形から図6に示す波形を減算し、例えばほぼ周期的に規則的な上下動を繰り返す変換信号8aを生成している。スピーカ3は、この変換信号8aから変換された増幅信号9bによって変換音を出力するため、この変換音は、例えばほぼ周期的であって規則的な上下動を繰り返すものとなる。
【0045】
すると、居住者は、例えばほぼ周期的であって規則的な上下動を繰り返す変換音に接し、聴覚上、上述した騒音を感じ取ることなくこの変換音から心地よさを感じ取るようになる。
【0046】
従って、この音発生装置1によれば、騒音に適合する変換音を発生し、例えば騒音とともに聞かせることにより、居住者に耳障りの良い音を聞かせることができる。つまり、この音発生装置1は、このような騒音を完全に打ち消すといった技術的に困難な消音処理を実行する必要がなく、このような騒音を小さくするということは考えず、このような騒音に別の音(上述した変換音)を付加することによって、耳障りの良い音に変換している。
【0047】
このような騒音及び聞こえ方の一例としては、次のような例を挙げることができる。例えば騒音としては高速道路から生じる騒音であり、聞こえ方としては滝の音に聞こえることを挙げることができる。具体的には、本実施形態では、音発生装置1が、例えばマイクロフォン4によって採取した高速道路の騒音のスペクトル(周波数分布に相当)と、滝の音のスペクトル(周波数成分に相当)とを比較し、差分として変換信号8aを発生させることにより、この変換信号8aから生じた増幅信号9bに基づくスピーカ3からの変換音と騒音との混合音により、居住者などの人間には滝の音のように聞かせることができる。
【0048】
このような混合音の一例としては、上述した滝の音の他にも、雨の音、波の音など自然界に存在する音がよい。また、混合音が騒音を聴覚的に認識させにくくするための音であることに鑑みれば、混合音はある程度大きな音が望ましい。このような混合音としては、例えば自然界に存在する音でなくても、特定の人間に心地よく感じさせる音であればどのような音を採用しても良い。例えば、このような混合音によって生じさせる音としては、例えば旅行を匂わせるジェット旅客機のエンジン音や、特定の高級自動車のエンジン音などの人工的なノイズを採用しても良い。
【0049】
上記実施形態における音発生装置1は、周囲の環境にて生じている環境音を入力する音入力手段4(マイクロフォンに相当)と、上記環境音の波形を表す環境音信号5aを異なる特定態様に変換するための発生音信号6aを生じさせる信号発生手段6(信号発生部に相当)と、上記発生音信号6aに基づいて上記環境音信号5aを変換した変換信号8aを生成する信号演算手段8(ミキシング部に相当)と、上記変換信号8a,9a,9bに基づく変換音を出力する音出力手段3(スピーカに相当)とを有する。
【0050】
この音発生装置1は、仮に周囲の環境にて生じている環境音が不快であっても、この環境音の環境音信号5aとは異なる特定態様とした発生信号6aに基づいて環境音信号5aから変換信号8aを生成すれば、その変換信号8aに基づいて音出力手段3から変換音を出力する。すると、音出力手段3は、出力した変換音を環境音に混合させて混合音を生じさせる。この混合音を聞いた者は、不快だった環境音とは異なる特定態様の混合音に対して不快感を与えにくくなる。
【0051】
従ってこの音発生装置1は、仮に周囲で不快な環境音が生じている場合でも、この環境音を打ち消すなどといった複雑な処理を必要とせず、この混合音を聞いた者に対して、環境音によって感じる不快感を和らげ耳障りを良くすることができる。
【0052】
上記実施形態における音発生装置1は、上記構成に加えてさらに、上記音出力手段3は、上記変換音及び上記環境音を混合させて聞こえる音として自然環境で生じうる音を出力する。
【0053】
このようにすると、この混合音が自然環境で生じうる音であることから、この混合音を聞いた者は、不快感を和らげるだけでなくさらには心を和ませることができる。
【0054】
上記実施形態における音発生装置1は、上記構成に加えてさらに、上記信号演算手段8(ミキシング部に相当)は、上記発生音信号6aの周波数成分及び上記環境音信号5aの周波数成分を用いて、上記変換信号8aを生成する周波数成分演算手段を備える。
【0055】
このようにすると、信号演算手段8は、発生音信号6a及び環境音信号5aの周波数成分を用いているため、これらの周波数成分を適切に操作して所望の変換信号8aを生成することができる。このため音発生装置1は、この変換信号8aを利用して所望の態様で音出力手段3から変換音を出力し、この変換音及び環境音を混合して生じた混合音を正確に制御することができる。
【0056】
上記実施形態における音発生装置1は、上記構成に加えてさらに、上記信号演算手段8(ミキシング部に相当)は、上記発生音信号6aの周波数成分から上記環境音信号5aの周波数成分を減算して上記変換信号8aを生成する。
【0057】
このようにすると、環境音信号5aに発生音信号6aを加算すると、音出力手段3から出力される変換音が環境音よりも音量が大きくなってしまうが、この音出力手段3は、この発生音信号6aから環境音信号5aを減算して変換信号8aに基づく変換音を出力するため、変換音が環境音よりも小さくなる。このため、この変換音及び環境音を混合して生じた混合音を聞いた者は、仮に環境音を不快に感じていたとしても、音量の小さな変換音による混合音に対して不快に感じることが少なくなる。
【0058】
上記実施形態における音発生装置1は、上記構成に加えてさらに、上記信号発生手段6(信号発生部に相当)は、上記音入力手段3によって入力された上記環境音信号の周波数成分のうち、規定の振幅以下である一部の成分をマスクするマスキング手段を有する。
【0059】
このようにすると、信号発生部6は、全体として、演算すべき周波数成分を低減させることができるため、その分、実際に演算すべき周波数成分を高速に演算することができる。このため信号演算手段8は、さらに早く発生音信号6aを入手できるため、より早期に変換信号8aを生成することができる。
【0060】
すると、スピーカ3は、この変換信号8aを利用してさらにリアルタイムに変換音を出力することができる。従って、この音発生装置1の周囲においては、その出力された変換音及び環境音がリアルタイムで混合した音が生じ、確実に、不快な環境音を不快感の少ない混合音に置換して聞こえさせることができる。
【0061】
上記実施形態における音発生装置1は、上記構成に加えてさらに、上記信号発生手段6(信号発生部に相当)は、上記環境音の種類に各々対応させて複数の変換信号7a,7bを保有する信号保有手段7と、上記環境音の種類に応じて上記複数の変換信号7a,7bのうちから所望の変換信号を選択する信号選択手段6bとを備える。
【0062】
このようにすると、信号保有手段7に複数の変換信号7a,7bを保有させておけば、信号選択手段7は、環境音の種類に応じて所望の変換信号を選択する。このため音出力手段3は、好適な変換信号7a,7b及び環境音信号5aに基づく発生音信号6aから、好適な変換信号9aを出力することができる。このため音発生装置1は、信号保有手段7に適切な変換信号7a,7bを用意しておけば、仮に環境音が不快であっても、音出力手段3から出力された変換音によって不快感を和らげることができる。
【0063】
なお、本実施形態は、上記に限られず、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
上記実施形態では、音発生装置1のスピーカ3が環境音に応じて出力する変換音及びこの環境音を混合して人間に聞こえる音(上述した混合音に相当)として、例えば滝の音、雨の音などを挙げているがこれに限られず、人間の耳に煩わしいと感じさせないその他の音を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態としての音発生装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号発生部の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す音発生装置による音変換方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す変換信号発生処理の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】音発生装置によって音を変換する様子の一例を示すイメージ図である。
【図6】マイクロフォンが採取した環境音に基づく環境音信号の波形の一例を示す波形図である。
【図7】信号発生部が発生した発生音信号の波形の一例を示す波形図である。
【図8】ミキシング部が出力する変換信号の波形の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0065】
1 音発生装置
3 スピーカ(音出力手段に相当)
4 マイクロフォン(音入力手段に相当)
4a 環境音信号
5a 環境音信号
6 信号発生部(信号発生手段、マスキング手段に相当)
6a 発生音信号
6b 信号選択部(信号選択手段に相当)
7 音源部(信号保有手段に相当)
8 ミキシング部(信号演算手段、周波数成分演算手段に相当)
8a 変換信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の環境にて生じている環境音を入力する音入力手段と、
前記環境音の波形を表す環境音信号を異なる特定態様に変換するための発生音信号を生じさせる信号発生手段と、
前記発生音信号に基づいて前記環境音信号を変換した変換信号を生成する信号演算手段と、
前記変換信号に基づく変換音を出力する音出力手段と
を有することを特徴とする音発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の音発生装置において、
前記音出力手段は、前記変換音と前記環境音を混合させて聞こえる音として自然環境で生じうる音を出力することを特徴とする音発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の音発生装置において、
前記信号演算手段は、
前記変換信号の周波数成分及び前記環境音信号の周波数成分を用いて、前記変換信号を生成する周波数成分演算手段
を備えることを特徴とする音発生装置。
【請求項4】
請求項3記載の音発生装置において、
前記信号演算手段は、
前記変換信号の周波数成分から前記環境音信号の周波数成分を減算して前記変換信号を生成することを特徴とする音発生装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれか記載の音発生装置において、
前記信号発生手段は、
前記音入力手段によって入力された前記環境音信号の周波数成分のうち、規定の振幅以下である一部の成分をマスキングするマスキング手段を有することを特徴とする音発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか記載の音発生装置において、
前記信号発生手段は、
前記環境音の種類に各々対応させて複数の変換信号を保有する信号保有手段と、
前記環境音の種類に応じて前記複数の変換信号のうちから所望の変換信号を選択する信号選択手段と
を備えることを特徴とする音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−118062(P2009−118062A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287466(P2007−287466)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】