説明

音響システム設定装置及びプログラム

【課題】音響システムの構成画面上で構成要素を表す要素オブジェクトのポートとポートとを結線する際に、ポートと結線の両方が見えやすくなるようにすることを目的とする。
【解決手段】音響システムの構成要素となる音響信号処理機能を表す要素オブジェクトを表示する際、その要素オブジェクト上に表示される信号の入出力端子を表すポートオブジェクトの色を、予めポートの種類毎に設定されている色(色相、彩度、及び明度)で表示するとともに、ポートオブジェクト間を接続する結線については、接続対象のポートオブジェクトの色に対して、同じ色相で、かつ、接続対象のポートオブジェクトの彩度および/または明度を所定の変更量だけ変更した彩度および/または明度で当該ポートオブジェクトの色より濃く見えるように表示する。変更量は予めシステムで決めておいてもよいし、ユーザに設定させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響システムの構成を表す構成画面上で各構成要素の接続関係を見やすく表示できる音響システム設定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の音響機器を接続し全体として例えばミキサシステムのような音響システムを構成するものが知られている。そのような音響システムでは、全体の構成を表すような構成画面を表示し、ユーザが該構成画面上で各種の機器同士を結線し、全体の構成を表すような画面を作成できる機能を持つものがある。また、1つのミキサエンジンに関して、やはり同様のミキサ構成画面上で各種のコンポーネントを結線し、ミキサの全体としての構成を定義できるものが知られている。
【0003】
このような構成画面では、構成要素を表す要素オブジェクトを呼び出して画面上に配置し、それらの構成要素間で結線を引いて全体構成を示す図を作成する。結線は、構成要素に設けられている端子(ポート)を選択しそれらのポート間を線で結んで結線するものである。ポートは、そのポートで入出力する信号の形式に応じたインターフェースを持つものであるので、そのインターフェースで種類分けされている。例えば、イーサネット(登録商標)用のポート、ディジタル音響信号用のポート、アナログ信号用のポート、MIDI信号用のポートなどである。結線は、基本的に同じ種類のポート同士を結ぶものである。
【0004】
音響システムによっては、上述した構成画面上で構成要素(要素オブジェクト)のポートの種類毎に任意に色を設定できるものがあり、そのポートを設定された色で表示するものがある(例えば、下記非特許文献1)。結線された線の色は、その結線が繋がれているポートと同じ色にされ、これにより、どのような種類のポート間で結線が行われているかが分りやすく表示される。
【非特許文献1】「DME Designer Version 1.1 取扱説明書」、ヤマハ株式会社、2004年、第4章(特にp175-176)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した構成画面では、各構成要素のポートはその構成要素を表す画面上の要素オブジェクトの上に表示されるため、その色は薄い方が見やすい。一方、結線を表す線は色が濃い方が見やすい。従って、同じ濃さの同じ色で要素オブジェクト上のポートと結線を表示すると、ポートまたは結線の何れかが見えづらくなるという不都合があった。ポートと結線とで色を変えれば両者を区別して見えやすくすることは可能であるが、ポートと結線との対応関係を視覚的に簡単に認識させるためにできるだけ同じ色を使いたいという要求がある。
【0006】
この発明は、音響システムの構成画面上で構成要素を表す要素オブジェクトのポートとポートとを結線する際に、ポートと結線の両方が見えやすくなるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、各種の音響信号処理機能を実現する要素を任意に結線することにより音響システムを構成する場合の当該音響システムの構成を作成編集する音響システム設定装置において、前記要素を表す要素オブジェクトを表示し、当該要素が備えている入出力端子を表すポートオブジェクトを当該要素オブジェクト上に表示し、そのポートオブジェクトの色を任意に設定して、該ポートオブジェクトが表示されるように制御するとともに、ポートオブジェクト間に、結線を表すワイヤオブジェクトを表示し、そのワイヤオブジェクトの色を、当該ワイヤオブジェクトにより結線されているポートオブジェクトの色の、一部の特性を変更することにより設定し、そのワイヤオブジェクトが、該設定された色で表示されるように制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、そのような音響システム設定装置を実現するプログラムを含む。
【0009】
前記色の特性とは、例えば、後述する実施形態の色相、彩度、明度などの、色を決定するための各パラメータに相当するものである。変更する特性は、どのパラメータでもよい。ポートの色とワイヤの色が、それら2つが関連していることが認識できる程度で異なる色となるように、ポートの色の一部の特性を変更するものであればよい。例えば、音響システムの構成要素となる音響信号処理機能を表す要素オブジェクトを表示する際、その要素オブジェクト上に表示される信号の入出力端子を表すポートの色を、予めポートの種類毎に設定されている色(色相、彩度、及び明度)で表示するとともに、ポート間を接続する結線については、接続対象のポートの色に対して、同じ色相で、かつ、接続対象のポートの彩度および/または明度を所定の変更量だけ変更した彩度および/または明度で当該ポートの色より濃く見えるように表示するものなどである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポートオブジェクトと線(ワイヤオブジェクト)との対応関係を視覚的に簡単に認識することができるとともに、ポートオブジェクトおよびワイヤオブジェクトの両方をみやすい色で表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いてこの発明を実施するための一形態例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である音響システムの構成例を示す。この音響システムは、パーソナルコンピュータ(PC)101、電子楽器102、CDプレーヤ103、マイク104、ワードクロックマスター105、ミキサエンジン106,107,108、パワーアンプ109,110、及びスピーカ群111,112を備える。
【0013】
PC101は、本発明に係る管理ソフトウエアをインストールしているPCである。この管理ソフトウエアを動作させることにより、PC101のディスプレイ上でこの音響システムの全体構成を示す画面(図3で詳述する)を表示して作成編集したり、PC101からミキサエンジンその他の機器を制御することができる。電子楽器102、CDプレーヤ103、及びマイク104は、音響信号の入力源となる機器である。ワードクロックマスター105は、各音響機器にワードクロック(各機器を同期させるためのクロック信号)を供給する機器である。ミキサエンジン106〜108は、主としてDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)から構成され、所定のマイクロプログラムを動作させることにより複数チャンネルのミキシング処理、効果付与処理、及び各種の波形加工処理などを行うことができる。パワーアンプ109,110は、ミキサエンジン107,108から出力されるアナログ音響信号を増幅するアンプである。スピーカ群111,112は、パワーアンプ109,110から出力されるアナログ音響信号を放音する複数のスピーカユニットである。
【0014】
これら各部101〜112は、121〜131に示すように物理的に結線されている。結線121〜131は、それぞれ、所定の形式の信号をやり取りするための結線であり、各部101〜112はその結線を行うための所定種類のインターフェースのポートを備えている。例えば、121はネットワーク接続(ここではイーサネット(登録商標))の結線であり、PC101とミキサエンジン106は結線121で接続するためのイーサネットのポートを備えている。同様に、122はMIDI信号を、123はディジタル音響信号を、124はアナログ音響信号を、125はワードクロック信号を、126,127は複数チャンネルのディジタル音響信号を、128,129は複数チャンネルのアナログ音響信号を、130,131は複数のスピーカユニットから放音するためのアナログ音響信号を、それぞれやり取りする結線である。
【0015】
図2は、管理ソフトウェアをインストールしているPC101の概略構成を示す。PC101は、中央処理装置(CPU)201、リードオンリメモリ(ROM)202、ランダムアクセスメモリ(RAM)203、表示回路204、表示部205、検出回路206、操作部207、通信インターフェース(I/F)208、及び通信バス209を備える。
【0016】
CPU201は、管理ソフトウェアを実行する処理装置である。ROM202は、電源投入時のスタートアップルーチンや低レベルI/O処理を司るBIOSなどを格納する不揮発性メモリである。RAM203は、CPU201が実行するプログラムをロードしたり各種ワーク領域を確保する揮発性メモリである。表示部205は、各種の情報を表示するディスプレイである。表示回路204は、CPU201からの指示に基づいて、与えられたデータを表示部205に表示する。操作部207は、通常のパソコンが有するキーボードやマウスなどの操作子を示す。操作部207の操作は、検出回路206により検出され、検出結果がCPU201に送られる。通信I/F208は、ネットワーク121と接続するためのインターフェースである。
【0017】
図3は、PC101で所定の管理ソフトウェアを動作させ、該PC101のディスプレイ上で図1で説明した音響システムの全体構成を作成編集する構成画面の例を示す。このような音響システムの全体構成を示す画面を作成編集し保存しておけば、後で該画面を表示することで現状の音響システムの全体構成を一目で把握することができる。
【0018】
図3の画面300において、ブロック301〜312は、それぞれ、図1の101〜112で示す各部に対応する要素オブジェクトである(番号の下2桁が同じもの同士が対応する)。ただし、図1のスピーカ群111,112は、それぞれ複数のスピーカユニットからなるものであるので、図3の画面300ではスピーカ311−1〜4及び312−1〜4に分けて表示してある(これらのスピーカをまとめて番号311,312で代表させるものとする)。これらの要素オブジェクト301〜312は、それぞれ、所定の操作で機器の種類を指定して画面上に呼び出し、図に示す位置に配置したものである。例えば、301はPCを表す要素オブジェクトを呼び出してこの位置に配置したものであり、302は電子楽器を示す要素オブジェクトを呼び出してこの位置に配置したものである。
【0019】
各要素オブジェクト301〜312は、その種類に応じて接続端子を表すポートオブジェクトを備えている。各要素オブジェクトがどのような種類のポートオブジェクトを幾つ備えるかは、その要素オブジェクトの属性情報(プロパティ)で決定されるものであり、ユーザはその属性情報を任意に設定できる。各要素オブジェクトの矩形の線上に付された小さな四角形321〜346が、それぞれ、その構成要素の機器の接続端子を示すポートオブジェクトである。各ポートオブジェクト321〜346は、図1で説明したように、当該ポートオブジェクトに対応するポートでやり取りする信号の形式に応じた種類を持つ。具体的には、ポートオブジェクト321,322はイーサネット用、323,324はMIDI信号用、325,326はディジタル音響信号用、327,328はアナログ音響信号用、329,330,335,336,337,338はワードクロック信号用のポートを表すポートオブジェクトである。また、331〜334(及びそれらのポートオブジェクトの下側に並べた無番号のポートオブジェクト)は、それぞれ、1チャンネル分のディジタル音響信号用のポートを表すポートオブジェクトである。339〜342(及びそれらのポートオブジェクトの下側に並べた無番号のポートオブジェクト)は、それぞれ、1チャンネル分のアナログ音響信号用のポートを表すポートオブジェクトである。343,345及び各スピーカ311−1〜4,312−1〜4のポートオブジェクト(344,346など)はスピーカ駆動用のアナログ音響信号を流すポートを表すポートオブジェクトである。
【0020】
ユーザは、図3の構成画面300上で、これらのポートオブジェクトのうち種類の同じポート間を任意に結線することができる。351〜363はそれぞれ結線(ワイヤオブジェクト)を示す。結線は、その結線により接続されるポートの種類に応じた信号を流す接続線を示すものである。例えば、結線351はイーサネットの信号を、結線352はMIDI信号を、353,356,357はそれぞれディジタル音響信号を、354,360〜363はアナログ音響信号を、それぞれ流す接続線を示している。また、ミキサエンジン306〜308の動作を同期させるため、ワードクロックマスター305から出力されたワードクロックを、ポート329,330間を繋ぐ結線355によりミキサエンジン306に供給し、ミキサエンジン306からポート335,336間を繋ぐ結線358によりミキサエンジン308に供給し、ミキサエンジン308からポート337,338間を繋ぐ結線359によりミキサエンジン307に供給している。
【0021】
本実施形態の画面300では、ポート及びポート間を接続する結線は、その種類に応じた色で表示する。例えば、ポート321,322とそれらの間の結線351はイーサネット用であるので、当該種類に割当てられている色で表示される。ただし、結線の色は、その結線で結ぶポートの色に対して、色相及び彩度は同じだが明度を下げた色(見た目では濃くなった色)に変更する。これにより、同じ種類のポートとその結線が同じ色合いになるのでポート間の接続関係が見易くなるとともに、相対的に見てポートの色は薄めで結線の色は濃いめとなるように変更するので、要素オブジェクト上のポートの表示も見易く、かつ結線の表示も見易くなる。ポートや結線のどの種類にどの色を割当てるかは、ユーザが任意に設定できる。また、結線の色を、同じ種類のポートの色からどの程度濃く変更するかを示す変更量(全く同じ明度にする場合も含む)も、ユーザが任意に設定できる。
【0022】
図4は、ポート及び結線の種類毎の色を設定する設定画面400の例を示す。この画面400は、プレファレンス設定を指示する所定の操作が為されたときに表示される。401〜405は設定項目を示す見出しである。「Ports & Wires;」401の下に、「Ethernet」、「Digital Audio」、…のようにポートと結線の種類を示す表示がなされている。「Color」402の下側には、各種類に割り当てられている色を設定するための設定ボタンが表示されている。「Width」403の下側には、各種類の結線の太さを指定する太さ値入力領域が表示されている。「Type」404の下側には、各種類の結線の実線または点線の別を示すタイプ設定領域が表示されている。「変更量」405の下側には、各種類の結線の濃さの変更量を設定するための変更量設定領域が表示されている。
【0023】
例えば、411はポートと結線の種類の1つであるイーサネットに割当てられる色などを設定するための行である。ユーザは、ボタン412をオンすることにより、後述する図5の画面でイーサネットのポートの色を設定できる。なお、ボタン412の中には、現在割当てられている色が表示される。領域413で結線の太さを、領域414で結線の種類を、領域415で結線の濃さの変更量を、それぞれ設定できる。結線の濃さの変更量の設定は、領域415のリストボックスで、「そのまま」、「やや濃く」、「濃く」、または「非常に濃く」の4つの選択肢の中から1つを選択することで設定する。これらの選択肢は、結線の色を、ボタン412をオンして設定したポートの色に対して、「そのまま」、「やや濃く」、「濃く」、または「非常に濃く」することを指示するものである。このような結線の濃さの変更量については後に詳述する。
【0024】
以上のようにして各種類のポート及び結線の色などを設定した後、OKボタン421をオンすると、その設定がプレファレンスデータとして上書きされて画面400が閉じる。プレファレンスデータは、ポート及び結線の種類毎の色の設定を保存しておくデータである。プレファレンスデータが書き替えられると、その色の設定に基づいて図3の構成画面300のポートと結線が再表示される。Cancelボタン422をオンすると、設定が無効とされて(プレファレンスデータは書き替えられることなく)画面400が閉じる。
【0025】
図5は、図4の「Color」402の下側に表示されている各種類毎の色の設定ボタン(例えば412)をオンしたときに表示される色選択用画面500の例を示す。この画面500により、図4の画面でオンした設定ボタンに対応する種類のポートの色を設定できる。
【0026】
501は基本となる色見本であり、6行8列で48個の基本的な色見本(予めプリセットされたもの)を表示している。ユーザは、マウスカーソルを合わせてクリックすることにより48個の色見本501の中から1つを選択することができる。503は色見本502が選択状態にあることを示す枠である。何れかの色見本501が選択された状態でOKボタン524をクリックすると、選択された色見本の色が当該種類のポートの色として設定される。キャンセルボタン525は、画面500による色の設定をキャンセルするボタンである。
【0027】
色見本501を用いる代りにユーザ自らが任意の色を定義できる。「Custom colors」と見出しが付けられた2行8列の矩形522は、16個のカスタム色が定義できる領域である。これらの矩形522のうちの1つをマウスでクリックして選択状態とし、カスタム色定義(Define Custom Colors)ボタン523をクリックすることにより、任意の色を定義できる。定義したカスタム色の矩形522から1つを選択状態として、OKボタン524をクリックすると、選択されたカスタム色が当該種類のポートの色として設定される。
【0028】
カスタム色定義ボタン523をクリックしたときのカスタム色の定義の仕方について説明する。504は、横方向の位置で色相(Hue:色合い)を示し、縦方向の位置で彩度(Saturation:鮮やかさ)を示す領域である。この領域504の中の何れかの位置をマウスでクリックすると、十字ポインタ505がその位置にセットされ、その位置に応じた色相と彩度が設定される。506は、縦方向の位置で明度(Value of Brightness:明るさ)を設定するための領域である。この領域506内の何れかの位置をマウスでクリックすると、三角印507がその位置にセットされ、その位置に応じた明度が設定される。領域504及び領域506で設定された色相、彩度、及び明度は数値化され、順にその設定値が数値表示領域509,510,511に表示される。なお、この実施形態では、色相は0〜239、彩度は0〜240、明度は0〜240の範囲の設定値で表現する。数値表示領域512,513,514は、RGB(赤緑青)の輝度値を表示する領域である。RGBの輝度値は0〜255の範囲の設定値で表現する。
【0029】
領域504及び506で色相、彩度、及び明度が設定されると、それに基づいて算出された色相、彩度、及び明度の設定値が数値表示領域509,510,511に表示され、さらにその色相、彩度、及び明度の設定値から算出したRGBの輝度値が数値表示領域512,513,514に表示される。数値表示領域509,510,511に色相、彩度、及び明度の設定値を直接入力すると、その色相、彩度、及び明度の設定値から算出したRGBの輝度値が数値表示領域512,513,514に表示され、さらにその色相、彩度、及び明度の設定値に基づく位置に領域504の十字ポインタ505と領域506の三角印507がセットされる。同様に、数値表示領域512,513,514にRGBの輝度値を直接入力すると、その輝度値から算出した色相、彩度、及び明度の設定値が数値表示領域509,510,511に表示され、さらにその色相、彩度、及び明度の設定値に基づく位置に領域504の十字ポインタ505と領域506の三角印507がセットされる。508は、上述したように定義した色自体を表示する領域である。以上のようにカスタム色を定義し、Add to Custom Colorsボタン521をクリックすると、16個の矩形522の中の選択状態にある矩形に、その定義したカスタム色が割り当てられる。
【0030】
ここで結線の色の濃さの変更量について説明する。上記図5の画面500で、各種類のポートの色を定義できる。そのポートに対応する結線の色の濃さは、上述したように、図4の「変更量」405の下側のリストボックス(415など)の設定に基づいて決定される。具体的には、まず結線の色の色相と彩度は、ポートの色の色相と彩度と同じとする。明度は、ポートの色の明度をVとしたとき、「変更量」405の下側のリストボックスの各選択肢に応じて以下のように算出する。
・「そのまま」のときは、結線の明度=V
・「やや濃く」のときは、結線の明度=0.9×V
・「濃く」のときは、結線の明度=0.8×V
・「非常に濃く」のときは、結線の明度=0.7×V
これにより、「そのまま」「やや濃く」「濃く」「非常に濃く」の順にポートの明度より徐々に暗くした明度で結線が表示されることになる。なお、ここでは濃さを4段階に分けたが、何段階に分けるかは任意である。ポートの明度Vに乗算する係数も任意であり、その係数そのものを数値入力させてもよい。ポートの明度Vから所定値を減算して結線の明度を決める方式でもよい。要するに、見た目でポートよりも結線が濃く見えるように設定すればよい。
【0031】
また、ポートの色に対して結線の色を見た目で濃くする方式としては、上記の明度で調整する代りに彩度で調整してもよい。彩度は0〜240の範囲で、彩度=0で無色、0から数値が大きくなるほど鮮やかになっていき、彩度=240で原色となる。従って、ポートの彩度に対して結線の彩度が大きくなるように、所定割合だけ増加させたり、所定値を加算させたりすればよい。さらに、明度と彩度の両方を調整してもよい。また、図4では「変更量」405の下側のリストボックスで結線の濃さ変更量をユーザが指定できるようにしたが、ユーザに指定させずに、予め決められた方式で結線の濃さを決定してもよい。濃さの変更量を全体で1つのみ決めておき、ポートにどのような色が割当てられても、前記変更量で濃くした色を当該ポートの結線に適用するようにしてもよい。
【0032】
図6は、各機器の要素オブジェクトの表示処理の手順を示す。この処理は、図3の構成画面において、PCや電子楽器などの機器の要素オブジェクトを呼び出す指示が為されたときに実行される。ステップ601で、呼び出された機器の要素オブジェクトを表示する。ステップ602で、その要素オブジェクト上の各ポートをその種類の色で表示する。種類毎のポートの色は、プレファレンスデータから取得する。
【0033】
図7は、結線の表示処理の手順を示す。この処理は、図3の構成画面において、要素オブジェクトのポート間に結線を引く指示が為されたときに実行される。ステップ701で、結線する対象として選択されているポートの種類を検出する。ステップ702で、その種類の変更量が「そのまま」に設定されているか判別する。そうでないときは、ステップ703で、そのポートの種類に割当てられている色と変更量に基づいて結線の色を決定する。この決定方法は、変更量が「やや濃く」「濃く」「非常に濃く」のそれぞれの場合に、結線の明度をどのように求めるかについての上述の説明の通りに行う。ステップ704で、選択されているポート間に、決定された色の結線を表示する。ステップ702で変更量が「そのまま」に設定されているときは、ステップ705で、そのポートの種類に割当てられている色をそのまま結線の色として決定する。ステップ706で、選択されたポート間に、決定された色の結線を表示する。
【0034】
図8は、ポート及び結線の色の設定処理の流れを示す。この処理は、図5の画面500で色の設定を行い、さらに図4の画面400でOKボタン421をクリックして、その色の設定を有効にしたときに実行される。まずステップ801で、変更された色の設定をプリファレンスデータへ上書きする。ステップ802で、図3のような構成画面上から色の設定が変更されている種類のポートを検出する。ステップ803で、検出したポートの色を新たに設定された色へ変更する。ステップ804で、その種類のポートに結線されている線を検出する。ステップ805で、その種類の変更量が「そのまま」に設定されているか否か判別する。「そのまま」に設定されている場合のステップ808,809の処理は、図7のステップ705,706と同じである。「そのまま」でないとき、すなわち「やや濃く」「濃く」「非常に濃く」の場合のステップ806,807の処理は、図7のステップ703,704と同じである。
【0035】
図9は、変更量の設定処理の手順を示す。この処理は、図5の画面500で色の設定(特に変更量の設定)を行い、さらに図4の画面400でOKボタン421をクリックして、その色の設定を有効にしたときに実行される。まずステップ901で、変更された変更量の設定をプリファレンスデータへ上書きする。ステップ902で、図3のような構成画面上から変更量の設定が変更されている種類のポートを検出する。ステップ903で、その種類の変更量が「そのまま」に設定されているか否か判別する。「そのまま」に設定されている場合のステップ906,907の処理は、図7のステップ705,706と同じである。「そのまま」でないとき、すなわち「やや濃く」「濃く」「非常に濃く」の場合のステップ904,905の処理は、図7のステップ703,704と同じである。
【0036】
なお、上記実施形態では、各種の機器を組み合わせて構成する音響システムの構成画面を作成編集する場合に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明は、種々の音響信号処理機能を組み合わせる音響システムであればどのようなものにでも適用できる。例えば、構成画面上に種々のコンポーネント(ミキサシステムを構成する部品要素であり、例えばn入力m出力のミキサ、コンプレッサ、エフェクト、クロスオーバなどのオーディオプロセッサ、フェーダ、スイッチ、パン、メータなど)を配置して結線することによりミキサシステムを定義するものが知られているが、その場合の各コンポーネントのポートと結線の色に対して本発明を適用することもできる。
【0037】
また、上記実施形態では、ポート(ポートオブジェクト)の明度や彩度を変更して、ポートの色に対して結線(ワイヤオブジェクト)の色を見た目で濃くする例を説明したが、これに限らず、本発明は、ポートオブジェクトの色を任意に設定し、ワイヤオブジェクトの色を、当該ワイヤオブジェクトにより結線されているポートオブジェクトの色の一部の特性を変更することにより設定するものを含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態である音響システムの構成例を示す図
【図2】管理ソフトウェアをインストールしているPCの概略構成を示す図
【図3】音響システムの全体構成を作成編集する構成画面の例を示す図
【図4】ポート及び結線の種類毎の色を設定する設定画面の例を示す図
【図5】色選択用画面の例を示す図
【図6】要素オブジェクトの表示処理の手順を示すフローチャート
【図7】結線の表示処理の手順を示すフローチャート
【図8】ポート及び結線の色の設定処理の流れを示すフローチャート
【図9】変更量の設定処理の手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0039】
101…PC、102…電子楽器、103…CDプレーヤ、104…マイク、105…ワードクロックマスター、106,107,108…ミキサエンジン、109,110…パワーアンプ、111,112…スピーカ群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の音響信号処理機能を実現する要素を任意に結線することにより音響システムを構成する場合の当該音響システムの構成を作成編集する音響システム設定装置であって、
前記要素を表す要素オブジェクトを表示し、当該要素が備えている入出力端子を表すポートオブジェクトを当該要素オブジェクト上に表示する第1の表示手段と、
前記ポートオブジェクトの色を任意に設定する第1の設定手段と、
前記第1の表示手段により表示されるポートオブジェクトが、前記第1の設定手段により設定された色で表示されるように制御する第1の制御手段と、
前記第1の表示手段により表示されたポートオブジェクト間に、結線を表すワイヤオブジェクトを表示する第2の表示手段と、
前記ワイヤオブジェクトの色を、当該ワイヤオブジェクトにより結線されているポートオブジェクトの色の、一部の特性を変更することにより設定する第2の設定手段と、
前記第1の表示手段により表示されるワイヤオブジェクトが、前記第2の設定手段により設定された色で表示されるように制御する第2の制御手段と
を備えることを特徴とする音響システム設定装置。
【請求項2】
各種の音響信号処理機能を実現する要素を任意に結線することにより音響システムを構成する場合の当該音響システムの構成を作成編集する処理を行うための音響システム設定プログラムであって、
コンピュータを、
前記要素を表す要素オブジェクトを表示し、当該要素が備えている入出力端子を表すポートオブジェクトを当該要素オブジェクト上に表示する第1の表示手段と、
前記ポートオブジェクトの色を任意に設定する第1の設定手段と、
前記第1の表示手段により表示されるポートオブジェクトが、前記第1の設定手段により設定された色で表示されるように制御する第1の制御手段と、
前記第1の表示手段により表示されたポートオブジェクト間に、結線を表すワイヤオブジェクトを表示する第2の表示手段と、
前記ワイヤオブジェクトの色を、当該ワイヤオブジェクトにより結線されているポートオブジェクトの色の、一部の特性を変更することにより設定する第2の設定手段と、
前記第1の表示手段により表示されるワイヤオブジェクトが、前記第2の設定手段により設定された色で表示されるように制御する第2の制御手段と
を備えた音響システム設定装置として機能させるための音響システム設定プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−195078(P2007−195078A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13300(P2006−13300)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】