説明

音響再生装置およびこれを含む立体映像再生装置

【課題】 スピーカーの指向性を制御するための指向性制御部を備える音響再生装置であって、より簡易な構成によって、左右チャンネルに共通なモノラル成分についても良好に、スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる音響再生装置およびこれを含む立体映像再生装置を提供する。
【解決手段】 音響再生装置は、左スピーカーと、右スピーカーと、スピーカー取付面の延長面に開口部を規定する音道をその振動板前面側に有する中央手前スピーカーと、BTL接続可能なステレオアンプ回路と、左信号または右信号の一方を反転させてステレオアンプ回路に入力する位相反転回路と、を有し、かつ左スピーカーおよび右スピーカーの一方が位相反転してステレオアンプ回路に接続され、中央手前スピーカーがステレオアンプ回路に位相反転してBTL接続されて単一指向放射特性を得る指向性制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーの指向性を制御するための指向性制御部を備える音響再生装置であって、スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる音響再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可聴音域の音波を再生するスピーカーを用いて方向による音響放射特性の変化(以下、「指向性」という)を制御する方法として、無指向性の2個のスピーカーを逆相で接続して双指向性にする場合、または、3個以上のスピーカーアレイにより単一指向性や指向性のビームをある方向に与える等の方法が提案されている。例えば、出願人は、2個のスピーカーを用いるだけで、明確な単一指向放射特性を得ることができる指向性制御装置およびこれを用いる遊技機を提案している(特許文献1)。
【0003】
従来の方法では、スピーカーの構造や信号処理によって基本的には時間的な遅延を各スピーカーに与えて、音波の空間的な位相干渉を利用することで所望の指向性を実現している。特に単一指向性を実現した場合には、音量が高いレベルで再生される方向(「ビーム方向」という)と低いレベルで再生される方向(「ゼロ点方向」という)とが生じるため、これらを利用した音響再生システムが提案されている。この場合、通常、ビーム方向におけるエリアは、リスナーが位置するエリアとして利用され、ゼロ点方向におけるエリアは、主に音量を下げる目的で利用される。
【0004】
一方、出願人は、可聴音域の音波を再生する2個1組のスピーカーを駆動して単一指向特性を得て、音像がスピーカーの実際の配置位置よりも遠方に感じられるスピーカー装置の配置方法、およびそのスピーカー装置を用いた音響再生装置を提案している(特許文献2)。通常のステレオ再生装置において、モノラル音声を再生する場合、一つのスピーカーで再生すれば、知覚される音像は、そのスピーカーの設置位置となる。一方、リスナーから等距離にある二つのスピーカーに等分してステレオ音声を再生すれば、つまり、モノラル音声を左チャンネルと右チャンネルとに与えて再生すれば、その両チャンネルのスピーカーの中央にファントム音像としてそのモノラル音声が定位して知覚される。しかし、特許文献2の場合には、上記のようなモノラル音声を左右チャンネルで再生すれば、スピーカーの実際の配置位置よりも遠方にファントム音像が定位する。
【0005】
しかしながら、特許文献2の従来技術では、標準的な左右2チャンネルのステレオ信号を再生する場合に、合計4本のスピーカーおよび4チャンネル分のアンプを要することになり、通常の場合に比較して合計2本のスピーカーおよび2チャンネル分のアンプがコスト増加要因になるという問題がある。また、特許文献2の従来技術を合計2本のスピーカーおよび2チャンネル分のアンプでステレオ信号を再生する場合に適用することも想定できるが、左右チャンネルに共通なモノラル成分については、単にクシ状フィルタを通過させただけの効果になり、音声情報が信号レベル段階で失われるという問題がある。また、スピーカーの配置位置の関係から、特許文献2のようにリスナーに音像の奥行き方向の定位感を与えることもできない。
【0006】
また従来には、ステレオスピーカーとは別にセンタースピーカーを設け、2つのアンプをBTL増幅させてセンタースピーカーを(L+R)信号で駆動する出力回路がある(特許文献3、4、5)。「BTL増幅を用いる3D方式」と言われるもので、BTL接続可能なステレオアンプにおいて、一方のチャンネルに位相反転回路を入れ、一方又は他方の何れかのチャンネルのスピーカーを逆相接続し、ステレオパワーアンプのホット間にセンタースピーカーをBTL接続してL+R成分を再生する、という回路である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−87888号公報 (第1図〜第7図)
【特許文献2】特開2003−87893号公報 (第1図〜第12図)
【特許文献3】実開昭61−134200号公報 (第1図〜第2図)
【特許文献4】実開昭62−129900号公報 (第1図)
【特許文献5】特開平6−311599号公報 (第1図〜第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スピーカーの指向性を制御するための指向性制御部を備える音響再生装置であって、より簡易な構成によって、左右チャンネルに共通なモノラル成分についても良好に、スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる音響再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の音響再生装置は、スピーカー取付面と、スピーカー取付面に取り付けて左信号を再生する左スピーカーと、スピーカー取付面に取り付けて右信号を再生する右スピーカーと、スピーカー取付面の延長面に開口部を規定する音道をその振動板前面側に有し、かつ、左スピーカーおよび右スピーカーの中間位置上であって左スピーカーおよび右スピーカーと略二等辺三角形を形成する位置に開口部が配置される中央手前スピーカーと、BTL接続可能なステレオアンプ回路と、左信号または右信号の一方を反転させてステレオアンプ回路に入力する位相反転回路と、を有し、かつ左スピーカーおよび右スピーカーの一方が位相反転してステレオアンプ回路に接続され、中央手前スピーカーがステレオアンプ回路に位相反転してBTL接続されて単一指向放射特性を得る指向性制御部と、を備え、中央手前スピーカーの音道が、左スピーカーおよび右スピーカーと中央手前スピーカーとのスピーカー取付面の延長面上での離間距離にほぼ等しい音道長を有し、スピーカー取付面における左スピーカーおよび右スピーカーは、リスナーに向かって左右対称に配置され、中央手前スピーカーは、リスナーに向かって左スピーカーおよび右スピーカーよりも手前側に配置されている。
【0010】
好ましくは、本発明の音響再生装置は、左スピーカーと、右スピーカーと、中央手前スピーカーとが、長径方向長に比べて短径方向長が短い細長形の動電型スピーカーであり、左スピーカーおよび右スピーカーが、それぞれの長径方向が一致するように配置され、かつ、中央手前スピーカーの開口部との離隔距離と短径方向長とが略一致するように、スピーカー取付面の延長面上で中央手前スピーカーと近接配置されている。
【0011】
また、好ましくは、本発明の音響再生装置は、指向性制御部が、逆位相で駆動される左スピーカーおよび右スピーカーと中央手前スピーカーとの離間距離に起因してキャンセルされる左信号または右信号の低周波領域のレベルを相対的に増大させる補償手段をさらに含む。
請求項1から4のいずれかに記載の音響再生装置。
【0012】
また、本発明の音響再生装置は、指向性制御部が、左スピーカーへの出力信号または右スピーカーへの出力信号に対する中央手前スピーカーへの出力信号の相対的なレベルを調整して出力するレベル調整回路をさらに含む。
【0013】
また、本発明の音響再生装置は、スピーカー取付面が、水平方向に沿って配置され、その延長面上にリスナーの頭部が位置するように配置されている。
【0014】
また、本発明の立体映像再生装置は、上記の音響再生装置と、3Dディスプレイと、を少なくとも含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明の音響再生装置は、スピーカー取付面と、スピーカー取付面に取り付けられる左スピーカー、右スピーカー、および、スピーカー取付面の延長面に開口部を規定する音道を有する中央手前スピーカーと、左スピーカーおよび右スピーカーおよび中央手前スピーカーを駆動して単一指向放射特性を得る指向性制御部と、を備え、リスナーに対してスピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を与えることができる音響再生装置である。
【0017】
指向性制御部は、左信号および右信号を再生してBTL接続可能なステレオアンプ回路と、左信号または右信号の一方を反転させてステレオアンプ回路に入力する位相反転回路と、を有する。指向性制御部では、左スピーカーおよび右スピーカーの一方が位相反転してステレオアンプ回路に接続され、中央手前スピーカーがステレオアンプ回路に位相反転してBTL接続される。つまり、単一指向放射特性を得る指向性制御部は、左スピーカーへ左信号を出力し、右スピーカーへ右信号を出力するとともに、BTL接続により左信号および右信号を加算した和信号を中央手前スピーカーへ出力する。その結果、指向性制御部は、左スピーカーから左信号を音波に変換して再生するように出力し、右スピーカーから右信号を左信号と同相の音波で再生するように出力するとともに、左信号および右信号を加算した和信号を、中央手前スピーカーから逆位相の音波で再生するようにして出力する。
【0018】
ステレオ信号の左信号と右信号とをそれぞれ再生する左スピーカーおよび右スピーカーは、スピーカー取付面に取り付けられて、リスナーに向かって左右対称に配置される。また、中央手前スピーカーは、スピーカー取付面の延長面に開口部を規定する音道をその振動板前面側に有し、かつ、左スピーカーおよび右スピーカーの中間位置上であって左スピーカーおよび右スピーカーと略二等辺三角形を形成する位置に開口部が配置されている。中央手前スピーカーの音道は、左スピーカーおよび右スピーカーと中央手前スピーカーとのスピーカー取付面の延長面上での離間距離にほぼ等しい音道長を有する。中央手前スピーカーの開口部は、リスナーに向かって左スピーカーおよび右スピーカーよりも手前側に配置されている。つまり、中央手前スピーカーの振動板は、開口部から音道の奥まった位置に配置されているので、振動板前面側から再生される音波は、音道長を音波が伝達する時間だけ遅延して開口部から放射される。
【0019】
その結果、左信号に関しては、左スピーカーと中央手前スピーカーとによってリスナー側をゼロ点方向とし、二等辺三角形の一辺に沿った左スピーカーの奥側をビーム方向とする単一指向性の音響放射特性が実現され、右信号に関しては、右スピーカーと中央手前スピーカーとによってリスナー側をゼロ点方向とし、二等辺三角形の一辺に沿った右スピーカーの奥側をビーム方向とする単一指向性の音響放射特性が実現される。したがって、リスナーは、左信号に関して左スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができ、右信号に関して右スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる。左信号と右信号が略同振幅同位相の関係にあるモノラル音声を再生する場合にも、スピーカーの実際の配置位置よりも遠方にファントム音像が定位する。標準的な左右2チャンネルのステレオ信号を再生する場合に、合計2本のスピーカーおよび2チャンネル分のBTL接続可能なアンプを要するだけになり、遅延回路が不要になる。すなわち、遅延回路を設けるに必要なデジタル回路が不要になり、アナログ回路だけでの設計が可能になるので、特許文献2の従来技術に比較して、コスト増加を抑えてステレオ音場が遠方に広がるという同様の効果を得ることができる。また、左信号および右信号は、左スピーカーおよび右スピーカーによりそれぞれ再生されるので、クシ状フィルタによって主要な音声情報が失われるような問題が無いという利点がある。
【0020】
特に好ましくは、左スピーカーと、右スピーカーと、中央手前スピーカーとが、長径方向長に比べて短径方向長が短い細長形の動電型スピーカーであればよい。短い細長形の動電型スピーカーは、矩形の平面振動板を含むスピーカーであるのが好ましく、本発明の音響再生装置では、左スピーカーおよび右スピーカーが、それぞれの長径方向が一致するように配置され、かつ、中央手前スピーカーとの離隔距離と短径方向長とが略一致するように、中央手前スピーカーと近接配置されている。短径方向が短くて長径方向に長い平面振動板のスピーカーで実現する場合には、丸型の通常のスピーカーに比較して、スピーカー同士の間隔を狭くすることができる。手前側に配置する中央手前スピーカーと、左スピーカーおよび右スピーカーと、の実質的な離間距離は短径方向長で近似できる。実質的な離間距離が短くなると音道での遅延時間を短くできて、高い周波数まで単一指向性制御が可能になる。さらに単一指向性における零点方向に幅が出来るので、音像が遠方に感じられる効果を高めることができる。
【0021】
また、指向性制御部が、逆位相で駆動される左スピーカーならびに右スピーカーと中央手前スピーカーとの離間距離に起因してキャンセルされる左信号または右信号の低周波領域のレベルを相対的に増大させる補償手段をさらに含むものであれば、単一指向性制御により失われる低音成分を補うことができる。左スピーカーおよび右スピーカーに対して近接配置された中央手前スピーカーとの間で低音成分がキャンセルされる低音成分を相対的に強調して、リスナーにとって遠方に感じられる音像のバランスを良くすることができる。また、ステレオ信号のうちで逆相成分(例えば(左信号−右信号))についても、近接配置された左スピーカーと右スピーカーとの間で低音成分がキャンセルされやすくなるものの、低域を相対的に強調する補償回路を設けるので、ステレオ音場の広がり感を保つことが出来る。
【0022】
なお、スピーカー取付面は、水平方向に沿って配置されていればよく、その延長面上にリスナーの頭部が位置するように配置されていれば、リスナー側をゼロ点方向とする単一指向性の音響放射特性が実現され、リスナーはスピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得やすくなる。
【0023】
また、音響再生装置は、指向性制御部が、左スピーカーへの出力信号または右スピーカーへの出力信号に対する中央手前スピーカーへの出力信号の相対的なレベルを調整して出力するレベル調整回路をさらに含んでいれば、音像の奥行き方向の定位感を変えることができる。指向性制御回路からの中央手前スピーカーへの出力信号の出力レベルを小さくすれば手前側に音像定位させることができ、出力レベルを大きくすれば、奥側に音像定位させることができる。特に、この音響再生装置と、3Dディスプレイと、を含む立体映像再生装置では、より臨場感の高い映像音声再生を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の音響再生装置は、スピーカーの指向性を制御するための指向性制御部を備え、より簡易な構成によって、左右チャンネルに共通なモノラル成分についても良好に、スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい実施形態による音響再生装置1について説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による音響再生装置1を構成するスピーカー部3について説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による音響再生装置1により再生される単一指向性の放射特性および再生音場を概念的に説明する図である。(実施例1)
【図4】比較例の音響再生装置のスピーカー部30により再生される全指向性の放射特性および再生音場を概念的に説明する図である。(比較例1)
【図5】本発明の他の好ましい実施形態による音響再生装置1のスピーカー部3を構成する細長形の動電型スピーカー20について説明する図である。(実施例2)
【図6】本発明の他の好ましい実施形態による音響再生装置1を構成するスピーカー部3について説明する図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態による音響再生装置およびこれを含む立体映像再生装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0027】
図1および図2は、本発明の好ましい実施形態による音響再生装置1について説明する図である。具体的には、図1は、音響再生装置1の構成を示すブロック図である。また、図2は、音響再生装置1を構成するスピーカー部3について説明する図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は側面断面図である。さらに、図3は、音響再生装置1により再生される単一指向性の放射特性および再生音場を概念的に説明する図であり、図3(a)は平面図を、図3(b)は側面図(一部断面図)を示す。なお、説明に不要な一部の構造や、内部構造等は、図示ならびに説明を省略している。
【0028】
音響再生装置1は、指向性制御回路2と、スピーカーシステム3と、から構成される。音響再生装置1は、図3に示すように、リスナー4に対してスピーカーシステム3の実際の位置よりも遠方に音像定位を与えることができる音響再生装置である。指向性制御回路2は、左信号Lおよび右信号Rを入力する入力端子LinおよびRinと、3つの出力端子Lout、RoutおよびFoutと、を有する。指向性制御回路2は、ステレオ信号(左信号Lおよび右信号R)を入力してそれぞれの低周波領域のレベルを相対的に増大させる補償フィルタ5と、左信号Lおよび右信号Rの一方(本実施例の場合には右信号R)を位相反転させる位相反転器6と、BTL接続可能な2つのアンプ回路7Lおよびアンプ回路7Rと、を少なくとも含む。具体的には、指向性制御回路2は、ステレオ音声に対応したBTLアンプ回路を内蔵するステレオアンプ装置、あるいは、アンプデバイス等により構成し得る。
【0029】
スピーカーシステム3は、樹脂等で形成されるキャビネット31の天面側にスピーカー取付面32を形成し、このスピーカー取付面32に取り付けられる左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと、スピーカー取付面32の延長面に開口部33を規定する音道34をその振動板前面側に有し、かつ、左スピーカーLspおよび右スピーカーRspの中間位置上であって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと略二等辺三角形を形成する位置に開口部33の中央部分が配置されている中央手前スピーカーFspと、を備える。本実施例の左スピーカーLsp、および、右スピーカーRspは、丸型の外形寸法のコーン振動板を有する口径8cmの動電型スピーカーであり、それぞれのコーン振動板が同じ天面方向に揃うようにスピーカー取付面32に取り付けられている。
【0030】
また、中央手前スピーカーFspは、左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと同じ丸型の外形寸法のコーン振動板を有する口径8cmの動電型スピーカーであり、開口部33および音道34を備える点で異なる他は共通する動電型スピーカーである。これら3つのスピーカーは、ほぼ同じ音響放射特性を有するものが好ましく、同一のものが最も好ましい。3つのスピーカーは、少なくとも音声信号が同位相で放射されるように、磁気回路およびボイスコイルへ信号供給する端子の正負を揃えておく必要がある。
【0031】
中央手前スピーカーFspの音道34は、左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと中央手前スピーカーFspとのスピーカー取付面32の延長面上での離間距離dにほぼ等しい音道長dを有する。中央手前スピーカーFspのコーン振動板は、開口部33から音道34の奥まった位置に配置されているので、振動板前面側から再生される音波は、音道長dを音波が伝達する時間だけ遅延して開口部33から放射されることになる。中央手前スピーカーFspの開口部33は、リスナー4に向かって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspよりも手前側に配置されている。本実施例の場合には、音道34は、開口部33まで断面積が変化しない音道であるが、他の場合に音道34は、コーン振動板から開口部33に至るにつれてホーン状に断面積が拡大するものであってもよい。
【0032】
なお、キャビネット31は、それぞれのスピーカーの最低共振周波数付近および以下の低音域の増大を図るために、その内部に音響容量を規定する空間を有する。キャビネット31の内部は、それぞれのスピーカー毎に内部が区切られて、コーン振動板の背面側に放射される音波が相互に干渉しないようにするのが好ましい。キャビネット31は、密閉型、バスレフ形、ケルトン型、等の諸方式のキャビネットを採用することができる。なお、スピーカーシステム2のキャビネット3は、露出するスピーカー10を保護するように、(図示しない)前面グリル、パンチングネット、等を設けても良い。
【0033】
図示するように、左スピーカーLspおよび右スピーカーRspは、リスナー4に向かって左右対称に配置される。また、中央手前スピーカーFspは、スピーカー取付面32上の左スピーカーLspおよび右スピーカーRspの中間位置上であって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと略二等辺三角形を形成する位置に、開口部33が配置されて、リスナー4に向かって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspよりも手前側に配置されている。つまり、3つのスピーカーから見ると、二等辺三角形の等しい長さの二辺により構成される頂点を通過する垂直二等分線を延長する方向にリスナー4が位置する関係になる。本実施例の場合には、3つのスピーカーは、略正三角形を形成する位置に配置されており、それぞれのスピーカー間の離隔距離dは、約10cmである。スピーカー間の離隔距離dは、それぞれの振動板の中央位置の間の距離により算定できる。また、スピーカー取付面32は、水平方向に沿って配置されており、その延長面上にリスナー4の頭部が位置する。
【0034】
指向性制御回路2は、アナログ音声信号である左信号Lおよび右信号Rを増幅して出力する。入力された左信号Lおよび右信号Rは、それぞれ補償フィルタ5に入力される。左信号Lが入力された補償フィルタ5の出力は、BTL接続可能なアンプ回路7Lに入力される。一方、右信号Rが入力された補償フィルタ5の出力は、位相反転器6を経てBTL接続可能なアンプ回路7Rに入力される。BTL接続可能なアンプ回路7Lおよび7Rは、ほぼ同一の出力特性を有している。
【0035】
加えて、指向性制御回路2の出力端子Loutの正極端子(+)にはアンプ回路7Lの正極出力(+)が接続され、出力端子Loutの負極端子(−)にはアンプ回路7Lの負極出力(−)が接続される。指向性制御回路2の出力端子Routの正極端子(+)にはアンプ回路7Rの負極出力(−)が接続され、出力端子Routの負極端子(−)にはアンプ回路7Rの正極出力(+)が接続される。さらに、指向性制御回路2の出力端子Foutの正極端子(+)にはアンプ回路7Lの正極出力(+)とアンプ回路7Rの正極出力(+)とがBTL接続され、出力端子Foutの負極端子(−)にはアンプ回路7Lの負極出力(−)とアンプ回路7Rの負極出力(−)とがBTL接続される。
【0036】
したがって、指向性制御回路2の出力端子Loutには、左信号Lが増幅されて出力され、入力信号に対して正相の出力になる。また、指向性制御回路2の出力端子Routには、右信号Rが増幅されて出力される。増幅されて出力される右信号Rは、位相反転器6およびアンプ回路7Rによりそれぞれ位相反転されるので、入力信号に対して正相の出力になり、左信号Lとの相対的な関係でも同位相になる。一方で、指向性制御回路2の出力端子Foutには、左信号Lおよび右信号Rの和信号(L+R)がBTL増幅されて出力される。増幅されて出力される和信号(L+R)は、右信号Rが位相反転器6およびアンプ回路7Rによりそれぞれ位相反転されるので、左信号Lとの相対的な関係でも同位相になるからである。したがって、出力端子Foutからは、入力信号に対して正相の和信号(L+R)出力が得られる。
【0037】
このように指向性制御回路2は、出力端子Loutへ低周波領域のレベルを相対的に増大させた左信号Lを出力し、出力端子Routへ低周波領域のレベルを相対的に増大させた右信号Rを出力するとともに、左信号Lおよび右信号Rを加算して低周波領域のレベルを相対的に増大させた和信号(L+R)を出力端子Foutへ出力する。なお、出力端子Foutには、後述する他の実施例で説明するように、和信号(L+R)の出力の出力レベルを調整するレベル調整回路をさらに含むように、(図示しない)アッテネータをさらに備えても良い。
【0038】
指向性制御回路2の出力端子Loutは、スピーカーシステム3の左スピーカーLspに正相で接続する。つまり、出力端子Loutの正極端子(+)と左スピーカーLspの正極端子(+)とを接続し、出力端子Loutの負極端子(−)と左スピーカーLspの負極端子(−)とを接続する。また、指向性制御回路2の出力端子Routは、スピーカーシステム3の右スピーカーRspに正相で接続する。つまり、出力端子Routの正極端子(+)と右スピーカーRspの正極端子(+)とを接続し、出力端子Routの負極端子(−)と右スピーカーRspの負極端子(−)とを接続する。したがって、左スピーカーLspからは左信号Lが音波として音響放射され、右スピーカーRspからは右信号Rが音波として音響放射される。
【0039】
指向性制御回路2の出力端子Foutは、スピーカーシステム3の中央手前スピーカーFspに逆相で接続する。つまり、出力端子Foutの正極端子(+)と中央手前スピーカーFspの負極端子(−)とを接続し、出力端子Foutの負極端子(−)と中央手前スピーカーFspの正極端子(+)とを接続する。中央手前スピーカーFspからは、逆位相にされた和信号(L+R)が音波として音響放射される。ただし、中央手前スピーカーFspは、上述の通りに、振動板前面側に開口部33へ至る音道長dを有する音道34を備えている。したがって、中央手前スピーカーFspの開口部33からは、音道長dの音道34を音波が伝達する時間だけ遅延して、左スピーカーLspまたは右スピーカーRspから音響放射される音波とは逆位相で和信号(L+R)が音響放射されることになる。
【0040】
その結果、図3の概念図に示すように、左信号Lに関しては、左スピーカーLspと中央手前スピーカーFspとによってリスナー4側をゼロ点方向とし、二等辺三角形の一辺に沿った左スピーカーLspの奥側をビーム方向とする単一指向性の音響放射特性が実現される。左信号Lによる放射音波と、遅延されて逆位相にされた和信号(L+R)のなかのL信号成分による放射音波と、が干渉して、左スピーカーLspと中央手前スピーカーFspにより定まる一方向に単一指向性のゼロ点を作るからである。同様に右信号Rに関しては、右スピーカーRspと中央手前スピーカーFspとによってリスナー4側をゼロ点方向とし、二等辺三角形の一辺に沿った右スピーカーRspの奥側をビーム方向とする単一指向性の音響放射特性が実現される。したがって、単一指向性の音響放射特性のゼロ点方向に位置するリスナー4は、左信号Lに関して左スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができ、右信号Rに関して右スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる。
【0041】
本実施例の音響再生装置1は、左信号Lと右信号Rが略同振幅同位相の関係にあるモノラル音声を再生する場合にも、左スピーカーLspならびに右スピーカーRspの実際の配置位置よりも遠方にファントム音像を定位させることができる。楽曲等または放送等の通常のステレオ音声信号では、左信号Lと右信号Rとには、共通なモノラル成分Mが含まれている比率が高い。したがって、単一指向性の音響放射特性のゼロ点方向に位置するリスナー4は、このモノラル成分Mに関しても左右スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる。
【0042】
また、本実施例の指向性制御回路2の補償フィルタ5は、逆位相で駆動される左スピーカーLspならびに右スピーカーRspと中央手前スピーカーFspとの離間距離dに起因してキャンセルされる左信号Lまたは右信号Rの低周波領域のレベルを予め相対的に増大させるものであればよい。補償フィルタ5は、近接配置された3つのスピーカー間で低音成分がキャンセルされる低音成分を相対的に強調して、リスナー4にとって遠方に感じられる音像のバランスを良くすることができる。補償フィルタ5は、近接配置された左スピーカーLspと右スピーカーRspとの間で低音成分がキャンセルされやすくなる逆相成分(例えば(L−R))についても補償するので、ステレオ音場の広がり感を保つことが出来る。
【0043】
本実施例の音響再生装置1は、標準的な左右2チャンネルのステレオ信号を再生する場合に、合計3本のスピーカーおよび2チャンネル分のBTLアンプを要するだけになり、DSPないしD/A変換器と言ったデジタル回路も不要になり、特許文献2のような従来技術に比較して、コスト増加を抑えて簡易にステレオ音場が遠方に広がるという同様の効果を得ることができる。また、音響再生装置1では、左信号Lおよび右信号Rは、左スピーカーLspおよび右スピーカーRspによりそれぞれ再生される。指向性制御回路2においては、左信号Lから和信号(L+R)を遅延させて除算する、または、右信号Rから和信号(L+R)を遅延させて除算する、等の信号処理を行なわないので、共通なモノラル成分Mがクシ状フィルタを通過したかのように失われるような問題が、発生しない。
【0044】
なお、本実施例の音響再生装置1では、指向性制御回路2に位相反転器6を設けてさらにアンプ回路7Lで位相反転しているが、他の手段及び方法によって中央手前スピーカーFspから逆位相にされた和信号(L+R)が音波として音響放射されればよい。
(比較例1)
【0045】
なお、図4は、比較例の音響再生装置のスピーカー部30により再生される全指向性の放射特性および再生音場を概念的に説明する図であり、図3と同様に、図4(a)は平面図を、図4(b)は側面図を示す。比較例の音響再生装置のスピーカー部30は、標準的な左右2チャンネルのステレオ信号を再生する場合に、左スピーカーLspならびに右スピーカーRspのみを用いて再生する場合の例である。図4の概念図に示すように、通常の音声再生装置において音声を再生する場合、一つのスピーカーで再生すれば全方向に音波は放射されるので、知覚される音像は、そのスピーカーの設置位置となる。左信号Lと右信号Rと共通なモノラル成分Mについても、同様である。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明の他の好ましい実施形態による音響再生装置1のスピーカー部3を構成する細長形の動電型スピーカー20について説明する図である。また、図6は、音響再生装置1を構成するこの動電型スピーカー20を用いるスピーカー部3について説明する図である。図2と同様に、図6(a)はスピーカー部3の平面図を、図6(b)は側面断面図を示す。本実施例のスピーカーシステム3と、先の実施例のスピーカーシステム3とは、左スピーカーLsp、右スピーカーRsp、および、中央手前スピーカーFsp、とその配置関係を含むキャビネット3の構成が異なる他は、共通である。したがって、先の実施例と同一部分には、同一の符号を付し、説明および図示を省略する。
【0047】
本実施例の動電型スピーカー20は、図5に図示するように、細長方形の平面振動板25と、平面振動板25の周囲を振動可能に支持するエッジ26と、平面振動板25の背面側に固定されるボイスコイル組立体21と、ボイスコイル組立体21を振動可能に支持するダンパー24と、フレーム27と、マグネットを含む複数の磁気回路28と、を備える全面駆動の平面薄型スピーカーである。ボイスコイル組立体21は、3つのボイスコイル23をボビン22により格子状に連結しており、スピーカー20は、3つのボイスコイル23に対応する3つの磁気回路28を備える。細長方形のスピーカー20は、長径方向daの長さdaLが約12.5cm、短径方向dbの長さdbLが約4.8cmである。
【0048】
本実施例の場合には、動電型スピーカー20を用いる左スピーカーLspおよび右スピーカーRspは、図示するように、それぞれの平面振動板25が同じ天面方向に揃うようにスピーカー取付面32に取り付けられている。左スピーカーLspおよび右スピーカーRspは、リスナー4に向かって左右対称に配置される。また、中央手前スピーカーFspは、スピーカー取付面上の左スピーカーLspおよび右スピーカーRspの中間位置上であって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspと略二等辺三角形を形成する位置に音道34の開口部33の中央部分が配置されて、リスナー4に向かって左スピーカーLspおよび右スピーカーRspよりも手前側に配置されている。3つのスピーカーから見ると、二等辺三角形の頂点方向にリスナー4が位置する関係になる。
【0049】
本実施例の場合には、3つのスピーカーに長径方向長daLに比べて短径方向長dbLが短い細長形の動電型スピーカー20を用いているので、略二等辺三角形を形成する位置にこれらを配置する場合に、左スピーカーLspおよび右スピーカーRsが、それぞれの長径方向daが一致するように配置し、かつ、中央手前スピーカーFspをこれらの短径方向が一致する方向の中間位置に配置すれば、中央手前スピーカーFspとの離隔距離d(=5.0cm)を、実質的に短径方向長dbL(=4.8cm)とほぼ一致する程度まで短くできる。つまり、細長形の動電型スピーカー20のフレーム27同士が干渉しないように短径方向に隣り合わせて近接させれば、単一指向性の音響放射特性を実現するのに中央手前スピーカーFspとの離隔距離dを短くして左スピーカーLspおよび右スピーカーRsに近接配置できるので、先の実施例のような丸型の通常のスピーカーに比較して、スピーカー同士の間隔を狭くすることができる。
【0050】
本実施例のように、スピーカーシステム3でのスピーカー間の実質的な離間距離dを短くできる場合には、音道34の音道長も短くできて、高い周波数まで単一指向性制御が可能になる。先の実施例の場合に比較して、本実施例の場合には離隔距離dが約1/2なので、単一指向性制御が可能な周波数帯域も約2倍(ディップが生じる周波数:約1.7kHz→約3.4kHz)になる。また、動電型スピーカー20の細長形の平面振動板25が、リスナー4に向かう方向に短径方向dbを向けているので、長径方向daが横方向になって、相対的に横長の振動板になる。したがって、本実施例の音響再生装置1では、単一指向性におけるゼロ点方向に幅が出来るので、リスナー4にとっては、音像が遠方に感じられる効果を高めることができる。
【0051】
また、本実施例の音響再生装置1は、スピーカーシステム3に平面振動板25およびボイスコイル組立体21を備える動電型スピーカー20を3つ用いている。動電型スピーカー20のボイスコイル組立体21は、3つのボイスコイル23をボビン22により格子状に連結しており、平面振動板25での分割振動が抑制できるので、動電型スピーカー20は、極めてピストン振動再生領域が広い。その結果、特許文献2のような従来技術に比較して、より簡易な構成によって良好に、スピーカーの実際の位置よりも遠方に音像定位を得ることができる。
【実施例3】
【0052】
上記実施例の音響再生装置1は、画面の奥行き方向に立体視させる3Dディスプレイで表示させる映像と相関を持つように音像の奥行き方向の定位感を変えることで、より臨場感のある音響再生が可能になる。つまり、音響再生装置1は、3Dディスプレイと組み合わせることで、より臨場感の高い映像音声再生を実現できる。音響再生装置1は、3Dディスプレイと組み合わせて使用してもよく、また、(図示しない)立体映像再生装置に内蔵されていても良い。
【0053】
例えば、音響再生装置1と、3Dディスプレイと、を少なくとも含む(図示しない)立体映像再生装置では、3Dディスプレイで視る場合に、3D画面の手前側に位置する映像にリンクする音声は手前側に音像定位させ、3D画面の奥側に位置する映像にリンクする音声は奥側に音像定位させることができる。この場合、奥側に音像定位する音声信号は、左信号Lおよび右信号Rに共通するモノラル成分である。例えば、パララックスバリア方式等の(図示しない)裸眼液晶ディスプレイを用いる場合には、3Dディスプレイは、上記実施例でのスピーカーシステム3を構成するキャビネット31の前面側であって、リスナー4と中央手前スピーカーFspとの間の位置に取り付ければよい。また、高速で左右のシャッターが開閉するメガネをリスナーが装着するフレームシーケンシャル方式の(図示しない)液晶ディスプレイを用いる場合についても、3Dディスプレイの配置は、同様にすればよい。
【0054】
音像の奥行き方向の定位感を変えるには、指向性制御回路2の出力端子Foutから中央手前スピーカーFspに出力される和信号(L+R)のレベルを調整する(図示しない)レベル調整回路を、さらに設ければよい。指向性制御回路2の出力端子Foutからの和信号(L+R)の出力レベルを小さくすれば手前側に音像定位させることができ、和信号(L+R)の出力レベルを大きくすれば、奥側に音像定位させることができる。レベル調整回路は、上記実施例で述べたように、左信号または右信号に対する和信号の相対的なレベルを調整して出力するものであればよい。
【0055】
また、左信号Lおよび右信号Rから奥側に音像定位させる信号成分を抽出する(図示しない)デコーダー回路をさらに設け、このデコーダー回路の出力を上記実施例における左信号Lおよび右信号Rに共通するモノラル成分として(図示しない)加算回路により加えて良い。指向性制御回路2の出力端子Foutから中央手前スピーカーFspに奥側に音像定位させる信号成分が出力されるので、左信号Lおよび右信号Rの内の一部の信号成分のみが奥側に音像定位することになる。デコーダー回路の出力レベルを小さくすれば手前側に音像定位させることができ、デコーダー回路の出力レベルを大きくすれば奥側に音像定位させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の音響再生装置は、単独でステレオ音声信号を再生するステレオ装置、あるいは、マルチチャンネルサラウンド音声再生装置のみならず、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカー、または、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 音響再生装置
2 指向性制御回路
3、30 スピーカーシステム
31 キャビネット
32 スピーカー取付面
4 リスナー
5 補償フィルタ
6 位相反転器
7L、7R BTLアンプ回路
20 スピーカー
21 ボイスコイル組立体
22 ボビン
23 ボイスコイル
24 ダンパー
25 平面振動板
26 エッジ
27 フレーム
28 磁気回路
Lsp 左スピーカー
Rsp 右スピーカー
Fsp 中央手前スピーカー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカー取付面と、該スピーカー取付面に取り付けて左信号を再生する左スピーカーと、該スピーカー取付面に取り付けて右信号を再生する右スピーカーと、該スピーカー取付面の延長面に開口部を規定する音道をその振動板前面側に有し、かつ、該左スピーカーおよび該右スピーカーの中間位置上であって該左スピーカーおよび該右スピーカーと略二等辺三角形を形成する位置に該開口部が配置される中央手前スピーカーと、
BTL接続可能なステレオアンプ回路と、該左信号または該右信号の一方を反転させて該ステレオアンプ回路に入力する位相反転回路と、を有し、かつ該左スピーカーおよび該右スピーカーの一方が位相反転して該ステレオアンプ回路に接続され、該中央手前スピーカーが該ステレオアンプ回路に位相反転してBTL接続されて単一指向放射特性を得る指向性制御部と、を備え、
該中央手前スピーカーの該音道が、該左スピーカーおよび該右スピーカーと該中央手前スピーカーとの該スピーカー取付面の延長面上での離間距離にほぼ等しい音道長を有し、
該スピーカー取付面における該左スピーカーおよび該右スピーカーは、リスナーに向かって左右対称に配置され、該中央手前スピーカーは、該リスナーに向かって該左スピーカーおよび該右スピーカーよりも手前側に配置されている、
音響再生装置。
【請求項2】
前記左スピーカーと、前記右スピーカーと、前記中央手前スピーカーとが、長径方向長に比べて短径方向長が短い細長形の動電型スピーカーであり、該左スピーカーおよび該右スピーカーが、それぞれの長径方向が一致するように配置され、かつ、該中央手前スピーカーの前記開口部との前記離隔距離と該短径方向長とが略一致するように、前記スピーカー取付面の延長面上で該中央手前スピーカーと近接配置されている、
請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
前記指向性制御部は、逆位相で駆動される前記左スピーカーおよび前記右スピーカーと前記中央手前スピーカーとの前記離間距離に起因してキャンセルされる前記左信号または前記右信号の低周波領域のレベルを相対的に増大させる補償手段をさらに含む、
請求項1または2に記載の音響再生装置。
【請求項4】
前記指向性制御部は、前記左スピーカーへの出力信号または前記右スピーカーへの出力信号に対する前記中央手前スピーカーへの出力信号の相対的なレベルを調整して出力するレベル調整回路をさらに含む、
請求項1から3のいずれかに記載の音響再生装置。
【請求項5】
前記スピーカー取付面は、水平方向に沿って配置され、その延長面上に前記リスナーの頭部が位置するように配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の音響再生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の音響再生装置と、3Dディスプレイと、を少なくとも含む立体映像再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62773(P2013−62773A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201655(P2011−201655)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】