説明

音響改善ユニット

【課題】構造が極めて簡単で安価であり、自由に反射音を調節することのできる音響改善ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の音響改善ユニット1は、スピーカ5の前面から発せられた音の一部を利用して反射音9を生成し、聞く人7の耳に到達するまでの音の時間に差を生じさせることによって音響効果を改善するようにしている。また音響改善ユニット1にはスピーカ5前方の近傍に配置され、スピーカ5の前面から発せられた音に衝突し、当該音の進行方向を変えることのできる凹凸面25が形成された反射音生成部21が備えられている。また反射音生成部21は偏平ダイス状の多数の凹凸チップ23を組み合わせることによって構成されており、反射音生成部21を透過した音を利用する反射音増幅部31が別途設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自宅において音楽を聞く場合において音響機器等と組み合わせて使用できる音響効果改善用の補助ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカ前面から発せられる音には直接聞く人の耳に到達する直進音(+の音)と、部屋の壁等の構造物に衝突し、進行方向を変えて反射してから耳に到達する反射音(−の音)とがある。そして直進音の方が速く聞く人の耳に到達し反射音は幾分遅れて聞く人の耳に到達する。そして反射音は音の奥行き感と余韻をもたらし、臨場感を向上させる効果があるとされている。
【0003】
一般にコンサート会場等においては反射音が多く、一般家庭においては反射音が極めて少なくなっている。これは構造物の構造の違いに関係しており、コンサート会場等では意図的に反射音を多くするために壁や天井に凹凸面を形成したり、床面を階段状に形成したりして多数の座席を備えている等、反射音が多く生成される環境が整っている。これに対し一般家庭では平坦な天井、壁及び床面が存在するだけで反射音は極めて少ない部屋の構造となっている。
【0004】
この場合一般家庭でも部屋の天井や床面に凹凸面を形成して反射音を多くする等の試みが一部のユーザの間では行われているが、工事が大掛かりになって工費が増大するため一般的ではない。
そこで予てから少ない予算で簡単にコンサート会場に居るような臨場感を自宅に居ながら味わえることができる音響改善具の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術及び背景技術が抱えていた問題点の存在を踏まえてなされたものであって、構造が極めて簡単で安価であり、自由に凹凸面の構成を変えて反射音を調節することのできる音響改善ユニットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明は、スピーカの前面から発せられた音の一部を利用して反射音を生成し、聞く人の耳に到達するまでの音の時間に差を生じさせることによって音響効果を改善するようにした音響改善用のユニットにおいて、当該ユニットにはスピーカ前方の近傍に配置され、スピーカの前面から発せられた音に衝突し、当該音の進行方向を変えることのできる凹凸面が形成された反射音生成部が備えられていることを特徴とする音響改善ユニットである。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した音響改善ユニットにおいて、前記反射音生成部は幅寸法と高さ寸法に差を設けた偏平ダイス状の凹凸チップの配置を適宜変えて多数組み合わせることによって構成されていることを特徴とする音響改善ユニットである。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した音響改善ユニットにおいて、前記凹凸チップは永久磁石または永久磁石に吸着する磁性体との組み合わせによって構成されていることを特徴とする音響改善ユニットである。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した音響改善ユニットにおいて、前記音響改善ユニットには反射音生成部によって生成した反射音または反射音生成部を透過した透過音を利用して反射音を新たに生成し増幅させる反射音増幅部が設けられていることを特徴とする音響改善ユニットである。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した音響改善ユニットにおいて、前記反射音増幅部は前記反射音生成部の下方に配置され、反射音生成部を支える支持台としても機能する上面が開口する箱状の反射音増幅箱であることを特徴とする音響改善ユニットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の音響改善ユニットによれば、部屋の構造を変えるような大掛かりな工事を一切行うことなく、既存の音響装置をそのまま使用して反射音を増やすことができるので極めて簡単で安価にコンサート会場に居るような臨場感を自宅の部屋で擬似的に体感することが可能となる。
また凹凸チップによって反射音生成部を構成した場合には、凹凸面の構造を自由に変えることができるから反射音の調整が可能となる。
【0012】
凹凸チップを永久磁石ないし磁性体と永久磁石の組み合わせによって構成した場合には凹凸チップ間の接続構造が不要となるため更に構造が簡単になり、組立て及び凹凸面の変更が容易になる。
反射音生成部に反射音増幅部を組み合わせた場合には更に反射回数を増加させることによって聞く人の耳に到達するまでの時間を遅らせることができるから音の奥行き、余韻が更に高まって臨場感を向上させる。
反射音増幅部を上面が開口する箱状の反射音増幅箱によって構成した場合には、構造が簡単で安価であり、反射音生成部の支持構造としても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、下記に示す実施の形態1と実施の形態2を例に採って、本発明に係る音響改善ユニット1について具体的に説明する。
本明細書において使用する「直進音3」とは上述のようにスピーカ5の前面から発せられた音のうち、直接聞く人7の耳に到達する音(+の音とも言う)のことを意味する。また「反射音9」とはスピーカ5の前面から発せられた音のうち、何らかの障害物に衝突し進行方向を変化させて幾分遅れて聞く人7の耳に到達する音(−の音とも言う)のことを意味する。
【0014】
また「反射音9」を後述する反射音生成部21に衝突してから聞く人7の耳に到達する音を「一次反射音15」、更に後述する反射音増幅部31を経てから聞く人7の耳に到達する音を「二次反射音17」と定義する。
また直進音3のスピーカ5の前面から発せられて聞く人7の耳に到達するまでの時間を直接到達時間t0、一次反射音15の到達時間を一次反射到達時間t1、二次反射音17の到達時間を二次反射到達時間t2と定義する。
【0015】
実施の形態1に係る音響改善ユニット1はスピーカ5の前方の近傍に平置き状態で配置されている反射音生成部21のみを備えた音響効果の改善を目的としたユニットである。
具体的には図1に示すように構造物13の一例であるテーブル41が上面奥部寄りに音響装置43を配置し、音響装置43の前方にあるテーブル41の上面に反射音生成部21が設けられている。
【0016】
反射音生成部21は図1、2に示すように幅寸法Bと高さ寸法Hに差を設け、幅寸法Bの方が高さ寸法Hよりも大きめに形成された多数の偏平ダイス状の凹凸チップ23を組み合わせることによって構成されている。
図示の実施の形態では凹凸チップ23を縦、横交互に一列に配置したものを複数列設けることによって反射音生成部21が構成されている。
【0017】
そして反射音生成部21の上面には多数の凹凸チップ23によって凹凸面25が形成されており、この凹凸面25によってスピーカ5の前面から発せられた音の一部に衝突し、当該音の進行方向を変える反射音生成作用が実行される。
凹凸チップ23は永久磁石または永久磁石と、永久磁石に吸着する磁性体との組み合わせによって構成されている。そして凹凸チップ23の中心には連結する凹凸チップ23の位置合わせと、連結した複数の凹凸チップ23を同時に移動する場合に使用される穴部27が設けられている。
【0018】
またこのようにして構成される反射音生成部21は使用する音響装置43におけるスピーカ5の高さに応じて適宜設置高さが調節されるようになっていて、図示の実施の形態ではスペーサ29によって反射音生成部21の設置高さの調節を行っている。
【0019】
実施の形態2に係る音響改善ユニット1は、図3、4に示すようにテーブル41上に載置された音響装置43の前方に反射音増幅部31を設置し、反射音増幅部31の上に反射音生成部21を平置き状態で配置することによって構成される音響効果の更なる改善を目的としたユニットである。
反射音生成部21の構成は上述した実施の形態1と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0020】
反射音増幅部31は反射音生成部21によって生成した反射音9(一次反射音15となる)または反射音生成部21における凹凸チップ23間の隙間Gを透過した透過音を利用して反射音9(二次反射音17となる)を新たに生成し増幅させる役割を担っている。
具体的には上面が開放された角箱状の有底筒体によって構成される反射音増幅箱33によって反射音増幅部31は構成されている。
【0021】
反射音増幅箱33は一例として木製であり、例えば肉厚のベニヤ合板等を角箱状に組み立てることによって形成されている。そしてこのような反射音増幅箱33は反射音生成部21を支える支持台としても機能しており、容易に倒れないように適度な重量感と安定性を有するように構成されている。
【0022】
次に図4に基づいて、図3、4に示す実施の形態2に係る音響改善ユニット1を例にとって、本発明の音響改善ユニット1による音響改善の原理について説明する。
スピーカ5の前面から発せられた直進音3は直接聞く人7の耳に到達する。またこの場合の到達時間は最も速く直接到達時間t0となり、音量も最大となる。そして次に聞く人7の耳に到達するのが反射音生成部21衝突し、更に音響装置43のスピーカ5等に衝突して到達する一次反射音15であり、この場合の到達時間が一次反射到達時間t1となり、音量も直進音3の次に大きくなる。
【0023】
また反射音生成部21に到達した音の一部は凹凸チップ23の隙間Gから反射音増幅ダクト33内に進入し、反射音増幅ダクト33の壁面35や底面37に衝突し、反射を繰り返した後、再び隙間Gから反射音増幅ダクト33外に出て最終的に聞く人7の耳に到達する。
この音が二次反射音17となる。そして二次反射音17の二次反射到達時間t2は一次反射音15の一次反射到達時間t1より更に遅くなり、音量も一次反射音15の音量よりも小さくなって最小になる。
【0024】
そして聞く人7の耳には音量と到達時間の異なる直進音3、一次反射音15、二次反射音17が次々と到達し、音響装置43による音響効果を高めて、音の奥行きと広がり、音量の強弱、そして余韻の形成と、あたかもコンサート会場に居るような臨場感が擬似的に体感できるのである。
【0025】
以上、本発明を実施するための最良の形態である実施の形態1と実施の形態2について詳述してきたが、具体的な構成は上述した構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば反射音生成部21は一体の部材によって構成することが可能である。また大きさの異なる凹凸チップ23を組み合わせて使用することも可能であり、その場合には凹凸面25の凹部の深さないし凸部の高さに変化を付けることが可能となる。
【0026】
凹凸チップ23は永久磁石や磁性体の他、木材やセラミックス、あるいはプラスチックや磁性を有しないその他の金属等種々の材料が適用できる。但しその場合には凹凸チップ23を連結する連結手段が別途必要になる。また反射音増幅箱33の材料も木材に限らず他の種々の材料が適用可能であり、形状や構造も有底角上面が開口する箱状のものに限らず底の無い円上面が開口する箱状のもの等、他の種々の形状や構造のものが適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る音響改善ユニットを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る音響改善ユニットにおける反射音生成部の一部を拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る音響改善ユニットを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る音響改善ユニットによる音響改善の原理を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 音響改善ユニット 3 直進音
5 スピーカ 7 聞く人
9 反射音 11 部屋
13 構造物 15 一次反射音
17 二次反射音
21 反射音生成部 23 凹凸チップ
25 凹凸面 27 穴部
29 スペーサ 31 反射音増幅部
33 反射音増幅箱 35 壁面
37 底面 41 テーブル
43 音響装置 t0 直接到達時間
t1 一次反射到達時間 t2 二次反射到達時間
B 幅寸法 H 高さ寸法
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカの前面から発せられた音の一部を利用して反射音を生成し、聞く人の耳に到達するまでの音の時間に差を生じさせることによって音響効果を改善するようにした音響改善用のユニットにおいて、当該ユニットにはスピーカ前方の近傍に配置され、スピーカの前面から発せられた音に衝突し、当該音の進行方向を変えることのできる凹凸面が形成された反射音生成部が備えられていることを特徴とする音響改善ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載した音響改善ユニットにおいて、前記反射音生成部は幅寸法と高さ寸法に差を設けた偏平ダイス状の凹凸チップの配置を適宜変えて多数組み合わせることによって構成されていることを特徴とする音響改善ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載した音響改善ユニットにおいて、前記凹凸チップは永久磁石または永久磁石に吸着する磁性体との組み合わせによって構成されていることを特徴とする音響改善ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した音響改善ユニットにおいて、前記音響改善ユニットには反射音生成部によって生成した反射音または反射音生成部を透過した透過音を利用して反射音を新たに生成し増幅させる反射音増幅部が設けられていることを特徴とする音響改善ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載した音響改善ユニットにおいて、前記反射音増幅部は前記反射音生成部の下方に配置され、反射音生成部を支える支持台としても機能する上面が開口する箱状の反射音増幅箱であることを特徴とする音響改善ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−215455(P2006−215455A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30425(P2005−30425)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000219060)嶋崎種苗株式会社 (4)