説明

頚椎保護枕及び頚椎保護枕形成アダプター

【課題】 頭部の支持に加えて頚椎から胸椎に至る部分を支持する部位を有する枕において圧力分布を適切にし、側臥位で使用してもこの部位が邪魔にならないようにすることを課題とする。
【解決手段】 頭部を支持する頭部支持部と、想定される対象者が前記頭部支持部に仰臥位で頭部を乗せた際に、この対象者の胸椎の上端部から頚椎までを支持し、前記対象者の両肩甲骨に至る部分から先の部分は少なくともこの両肩甲骨の間に収まる幅を有する、頭部支持部の頚椎側に形成される頚椎支持部とを有する頚椎保護枕において、前記頚椎支持部には流体を封入する柔軟な袋である流体保持体を内蔵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は頭部に加えて頚椎を支持することにより頚椎を保護する枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕を使用して仰臥位で睡眠をする際には、枕は平面視長方形状であるので、肩の部分よりは下方に位置することができず、頚椎から胸椎に至るいずれかの部分で必ず隙間ができるために、頚椎に負担がかかってしまうという問題がある。これを解決するには、下記特許文献1に示すように、肩や肩甲骨によって邪魔されない幅の延長部分を枕に付加することで頚椎から胸椎先端部に至る部位を支持することが考えられる。
【特許文献1】特開2002−85230号 図6、図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に示すように、頚椎から胸椎先端部に至る部位を支持する部分をクッション材で形成すると、どうしても頚椎から胸椎にかけての形状が人によって様々であることから、支持部位に圧力差が生じてしまう。また、仰臥位から側臥位に転じる際にこの部分が邪魔になってしまうという問題も生じる。
本発明は上記の問題に鑑み、頭部の支持に加えて頚椎から胸椎に至る部分を支持する部位を有する枕において圧力分布を適切にし、側臥位で使用してもこの部位が邪魔にならないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、頭部を支持する頭部支持部と、想定される対象者が前記頭部支持部に仰臥位で頭部を乗せた際に、この対象者の胸椎の上端部から頚椎までを支持し、前記対象者の両肩甲骨に至る部分から先の部分は少なくともこの両肩甲骨の間に収まる幅を有する、頭部支持部の頚椎側に形成される頚椎支持部とを有する頚椎保護枕であり、前記頚椎支持部には流体を封入する柔軟な袋である流体保持体が内蔵されているものである。
請求項2に記載の発明は、前記頚椎保護枕において、前記流体保持体は、前記頭部支持部の内部にまで至るものである。
請求項3に記載の発明は、前記頚椎保護枕において、前記頚椎支持部は、先端に向って高さが低くなるように形成されるものである。
請求項4に記載の発明は、前記頚椎保護枕において、前記頚椎支持部は、頭部支持部に向って幅が広くなるように形成されるものである。
【0005】
請求項5に記載の発明は、想定される頭部用枕に装着することにより頚椎保護枕を形成する頚椎保護枕形成アダプターであり、前記頭部用枕に固定する固定手段と、前記頭部用枕に固定された際に、想定される対象者が前記頭部支持枕に仰臥位で頭部を乗せた際に、この対象者の胸椎の上端部から頚椎までを支持し、、前記対象者の両肩甲骨に至る部分から先の部分は少なくともこの両肩甲骨の間に収まる幅を有するとともに、流体を封入する柔軟な袋である流体保持体が内蔵される頚椎支持部とを有するものである。
請求項6に記載の発明は、前記頚椎保護枕形成アダプターにおいて、前記頚椎支持部は、固定される頭部用枕から先端に向って高さが低くなるように形成されるものである。
請求項7に記載の発明は、前記頚椎保護枕形成アダプターにおいて、前記頚椎支持部は、先端から固定される頭部用枕に向って幅が広くなるように形成されるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、胸椎の上端部から頚椎までを両肩甲骨に邪魔されることなく支持する頚椎支持部に流体を封入する柔軟な袋である流体保持体が内蔵されているので、支持される部分に圧力が均等にかかり、頚椎から胸椎に至る部分の負担を軽減することができる。そして、側臥位においても、頚椎支持部の先端側が肩により圧迫されることでこの部分はへこみ、頭部側が隆起するので側臥位においても、頚椎支持部が邪魔になることがない。
請求項2に記載の発明は、頚椎支持部内の前記流体保持体が、前記頭部支持部の内部にまで至ることで、側臥位において頚椎支持部の先端側が肩により圧迫されると頭部支持部が隆起することになる。即ち、側臥位において仰臥位の時よりも高くなる頭の位置に合わせて、頭部支持部を高くすることができる。
請求項3に記載の発明は、前記頚椎支持部が、先端に向って高さが低くなるように形成されているので、人の頚椎から胸椎に至る部分の傾斜に沿うことができるので、頚椎支持部の変形量を少なくし、内蔵される流体保持体への負担を軽減することができる。
請求項4に記載の発明は、前記頚椎支持部が、頭部支持部に向って幅が広くなるように形成されることで、寝ている際に頭が左右に振れても頚椎を支持することができる。
【0007】
請求項5に記載の発明は、想定される頭部用枕に装着することにより、やはり、頚椎支持部に内蔵される流体保持体により、支持される部分に圧力が均等にかかるので、頚椎から胸椎に至る部分の負担を軽減することができる。そして、側臥位においても、頚椎支持部の先端側が肩により圧迫されることでこの部分はへこみ、頭部側が隆起するので側臥位においても、頚椎支持部が邪魔になることがない。
請求項6に記載の発明は、前記頚椎支持部が、先端に向って高さが低くなるように形成されているので、人の頚椎から胸椎に至る部分の傾斜に沿うことができるので、やはり、頚椎支持部の変形量を少なくし、内蔵される流体保持体への負担を軽減することができる。
請求項7に記載の発明は、前記頚椎支持部が、頭部支持部に向って幅が広くなるように形成されることで、やはり、寝ている際に頭が左右に振れても頚椎を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る頚椎保護枕Xの斜視図を示し、図2に頚椎保護枕Xの平面図を示す。この頚椎保護枕Xは頭部を支持する頭部支持部10と、頭部支持部10の一縁に形成される頚椎支持部20とから構成される。頭部支持部10は長手方向に沿った角が丸くなった直方体状を有し、頚椎支持部20は、平面視二等辺三角形状で、底辺側が頭部支持部10と一体に形成され、先端に向って高さが低くなるような傾斜が設けられている。頚椎支持部20の大きさは、ここでは、想定される使用者Hである平均的な大人が、図2の想像線で示すように仰臥位で頭部支持部10に頭を乗せた状態で、頚椎支持部20の先端が胸椎Bbの上端部位にかかる程度の大きさであり、先端部分が使用者Hの両肩甲骨Sの間に収まる程度に先端の角度が定められる。なお、頚椎支持部20は、頚椎Bnが支持できればよいので、先端部分が少なくとも胸椎Bbの上端に接する位置に至っていればよく、幅も肩甲骨に至る先端部が両肩甲骨Sの間に収まっていれば足りるので、種々の大きさや形状を採用することができる。
【0009】
図3に頚椎保護枕Xの中央における縦断面図を示す。頚椎保護枕Xの内部は、3層に分かれており、最下層には、流体を封入するための厚手のポリエチレン製の袋体である流体保持体31が設けられている。流体保持体31の下面には、流体を出し入れするための外面にネジが形成された円筒形状の流通口31aが設けられ、この流通口31にはパッキンにより密閉できる流通口31aのネジに係合できる雌ネジを内周面に有する有底円筒状のキャップ31bが係合している。流体保持体31の上層には、ゴム製の板体32が設けられている。この板体32は、流体保持体31の変形量を使用者に不快にならない程度に緩和する機能を有する。板体32の上層には、低反発ウレタンフォームにより形成されたクッション体33が設けられる。そして、これらの内部構造がカバー34により収められ保持されている。なお、カバー34の前記流体保持体31の流通口31a部分は図3の頚椎保護枕Xの底面図に示すように穴が設けられ、キャップ31b部分が表出するようになっている。
【0010】
次に、以上のような構成を有する頚椎保護枕Xの使用方法について説明する。使用者はまず、底面に表出している流体保持体31のキャップ31bを開けて、流通口31aを通じて流体保持体31の内部に流体として水を入れる。その後、キャップ31bを締めて水を流体保持体31内に封止する。なお、流体保持体31に入れる水の量は使用者が好む枕の高さに応じて適宜調整すればよい。そして、この状態で、使用者は頚椎保護枕Xをベッドや布団に置き、頭部が頭部支持部10で支持されるように仰向けに寝る。すると、図5(a)に示すように、頭部から背中の胸椎に至る部位の形状と荷重に応じて流体保持体31内の流体が移動して、頭部から背中の胸椎の先端部分に至る部位を負荷が集中しないように滑らかに支持する。また、この状態から図5(b)に示すように側臥位に移行すると、使用者の肩の部分が頚椎支持部20の先端部を圧迫することになり、流体保持体31内の流体は頭部支持部10側へと移動する。この結果、頭部支持部10の高さが高くなり、また、首の部分に隙間ができて荷重が最もかからなくなるので、流体保持部31内の流体はこの部分に集中することで、首の部分が最も高くなり、流体保持部31内の水の量を適切に調整することで側臥位においても首の部分を支持することが可能となる。
【0011】
(実施形態2)
図6に実施形態2に係る頚椎保護枕形成アダプターYの斜視図を示す。頚椎保護枕形成アダプターYは、既存の頭部用枕Pに装着することで頚椎保護枕を形成することができるアダプターである。頚椎保護枕形成アダプターYは、既存の頭部用枕Pに固定するための固定部60と、頚椎支持部70とから構成される。固定部60は、想定される頭部用枕Pとほぼ同じ幅を有する布により形成されるものであり、長さは、想定される頭部枕Pの長手方向に垂直な外周の長さよりもやや長く設定されている。そして、一端側の固定時に頭部固定枕Pに向う裏面側には端部の辺に沿って面ファスナーの一方の係合部61aが縫いつけられ、他端側の表面側には、長手方向に沿った3本の細長い、面ファスナーの他方の係合部61bが等間隔で縫い付けられている。
頚椎支持部70は、実施形態1に係る頚椎支持部20とほぼ同様の外径を有している。相違するのは、頭部支持部20に面する部分に相当する面が封止されている点である。この封止された面は固定部60に縫い付けられて固定されている。
【0012】
図7に頚椎支持部70部分の中央部分における縦断面図を示す。頚椎支持部70の内部は、やはり、3層に分かれており、最下層には、流体を封入するための厚手のポリエチレン製の袋体である流体保持体81が設けられている。流体保持体81の下面には、流体を出し入れするための外面にネジが形成された円筒形状の流通口81aが設けられ、この流通口81にはパッキンにより密閉できる流通口81aのネジに係合できる雌ネジを内周面に有する有底円筒状のキャップ81bが係合している。流体保持体81の上層には、ゴム製の板体82が設けられている。板体82の上層には、低反発ウレタンフォームにより形成されたクッション体83が設けられる。そして、これらの内部構造がカバー84により収められ保持されている。なお、カバー84の前記流体保持体81の流通口81a部分は穴が設けられ、キャップ81b部分が表出するようになっている。
【0013】
次に、以上のような構成を有する頚椎保護枕形成アダプターYの使用方法について説明する。使用者はまず、底面に表出している流体保持体81のキャップ81bを開けて、流通口81aを通じて流体保持体81の内部に流体として水を入れる。その後、キャップ81bを締めて水を流体保持体81内に封止する。なお、流体保持体81に入れる水の量は使用者の好みに応じて適宜調整すればよい。この状態で、固定部60の3本の面ファスナーの係合部61bが固定されている側の布を頭部用枕Pに巻きつけ、次に、他端側の布を頭部用枕Pに巻きつけ、先端部で相対する面ファスナーの係合部61a及び61bを係合させる。これにより、頚椎保護枕形成アダプターYが頭部用枕Pに固定されることになる。この状態で、使用者は頚椎保護枕形成アダプターYを装着した頭部用枕Pをベッドや布団に置き、頭部が頭部用枕Pで支持されるように仰向けに寝る。すると、図8(a)に示すように、頚椎の下端側の部位から背中の胸椎に至る部位を頚椎保護枕形成アダプターYが支持する。そして、支持される部分の形状と荷重に応じて流体保持体81内の流体が移動することで、頚椎保護枕形成アダプターYは支持部分を負荷が集中しないように滑らかに支持する。また、この状態から図8(b)に示すように側臥位に移行すると、使用者の肩の部分が頚椎支持部70の先端部を圧迫することになり、流体保持体81内の流体は頭用枕P方向へと移動する。この結果、首の部分に隙間ができ荷重が最もかからなくなるので、流体保持部81内の流体はこの部分に集中することで、首の部分が最も高くなり、流体保持体81内の水の量を適切に調整することで側臥位においても首の部分を支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係る頚椎保護枕を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係る頚椎保護枕をを示す平面図である。
【図3】実施形態1に係る頚椎保護枕の中央部における縦断面図である。
【図4】実施形態1に係る頚椎保護枕の底面図である。
【図5】(a)(b)とも頚椎保護枕の使用状態を示す側面図である。
【図6】実施形態2に係る頚椎保護枕形成アダプターを示す斜視図である。
【図7】実施形態2に係る頚椎保護枕形成アダプターの頚椎支持部の中央部における縦断面図である。
【図8】(a)(b)とも頚椎保護枕形成アダプターの使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0015】
X 頚椎保護枕
Y 頚椎保護枕形成アダプター
P 頭部用枕
10 頭部支持部
20、70 頚椎支持部
31、81 流体保持体
60 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を支持する頭部支持部と、
想定される対象者が前記頭部支持部に仰臥位で頭部を乗せた際に、この対象者の胸椎の上端部から頚椎の位置までを支持し、前記対象者の両肩甲骨に至る部分から先の部分は少なくともこの両肩甲骨の間に収まる幅を有する、前記頭部支持部の頚椎側に形成される頚椎支持部と
を有する枕であって、
前記頚椎支持部には流体を封入する柔軟な袋である流体保持体が内蔵されている
頚椎保護枕。
【請求項2】
前記流体保持体は、前記頭部支持部の内部にまで至る請求項1に記載の頚椎保護枕。
【請求項3】
前記頚椎支持部は、先端に向って高さが低くなるように形成される請求項1又は2に記載の頚椎保護枕。
【請求項4】
前記頚椎支持部は、先端から頭部支持部に向って幅が広くなるように形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の頚椎保護枕。
【請求項5】
想定される頭部用枕に装着することにより頚椎保護枕を形成するアダプターであって、
前記頭部用枕に固定する固定手段と、
前記頭部用枕に固定された状態で、想定される対象者が前記頭部支持枕に仰臥位で頭部を乗せた際に、この対象者の胸椎の上端部から頚椎の位置までを支持し、前記対象者の両肩甲骨に至る部分から先の部分は少なくともこの両肩甲骨の間に収まる幅を有するとともに、流体を封入する柔軟な袋である流体保持体が内蔵される頚椎支持部と
を有する頚椎保護枕形成アダプター。
【請求項6】
前記頚椎支持部は、固定される頭部用枕から先端に向って高さが低くなるように形成される請求項5に記載の頚椎保護枕形成アダプター。
【請求項7】
前記頚椎支持部は、先端から固定される頭部用枕に向って幅が広くなるように形成される請求項5又は6項に記載の頚椎保護枕形成アダプター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−288533(P2006−288533A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110974(P2005−110974)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(505128393)
【Fターム(参考)】