説明

額縁被覆部材

【課題】 マルチディスプレイ装置における額縁を可及的に目立たなくさせるとともに、保護パネルを保持する機能を有する額縁被覆部材を提供する。
【解決手段】 画像を表示可能な表示パネル20と表示パネル20における表示領域V1を外囲するベゼル21とを備える複数の画像表示装置10を平面的に並べて構築されるマルチディスプレイ装置1のベゼル21上に設置される額縁被覆部材30は、ベゼル21に臨んで配置される設置面33と、設置面33に対して傾斜し、ベゼル21に隣接する表示領域V1からの出射光を反射する光反射面が形成された傾斜面34とを有する棒状部31と、傾斜面34に沿って延び、表示パネル20を保護するための板状の保護パネル40の端部を挿し込み可能な凹溝部35とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイ装置において画像を表示することができない額縁を目立たなくさせるための額縁被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイとして、画像を表示可能な表示パネルを備える画像表示装置を複数台、平面的に隙間なく並べて配置することによって構築されるマルチディスプレイ装置が用いられるようになっている。
【0003】
マルチディスプレイ装置は、大型の画面を容易に構築することができる反面、各画像表示装置間の継目部分に、ベゼルとも称される額縁が配置されるため、画像を表示することができない領域(以下、「非表示領域」と称する)が形成されることになる。これにより、マルチディスプレイ装置で表示される大型の画面は、格子状の線が入ったように見えてしまい、表示される画像の品位が低下してしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するための従来技術が、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1に記載される従来技術では、映像表示部と映像表示部の外周に設けられた非表示部とを有する平面型ディスプレイを複数並べて構成されるマルチディスプレイ装置において、シリンドリカルレンズをその上面に対して垂直な方向に略均等に4分割した形状を成した光学要素を、映像表示部の周縁部と該周縁部に隣接する非表示部の両部分を跨ぐように、非表示部上に設置することが提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載される従来技術は、映像表示部の周縁部から発せられる光を、その周縁部を覆う前記光学要素によって屈折させることで非表示部側へ導き、非表示部が目立たなくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−162999号公報
【特許文献2】特開2010−60908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来から、画像表示装置において、表示パネルへの接触による汚れおよび衝撃による割れなどを防止することを目的として、表示パネルの前面に保護パネルが設けられる場合がある(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
このような保護パネルをマルチディスプレイ装置において設置する場合、すべての表示パネルを覆うような一枚の大きな保護パネルを用いると、装置全体として製造コストが増大してしまう。そこで、このような問題を回避するために、各画像表示装置に対してそれぞれ、既存のサイズの保護パネルを設置するのが好ましい。
【0009】
しかしながら、マルチディスプレイ装置において、既存の保護パネルを画像表示装置ごとに設置するためには、非表示領域に配置される額縁上に、保護パネルを保持させるための保持機構を設置する必要が生じる。最近では、狭額縁の画像表示装置で構築されたマルチディスプレイ装置が普及しており、保護パネルを保持する保持機構を額縁上に設置してしまうと、特許文献1に開示されるような、額縁を目立たなくさせるための部材を、額縁上に設置することができなくなってしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、マルチディスプレイ装置における額縁を可及的に目立たなくさせるとともに、保護パネルを保持する機能を有する額縁被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像を表示可能な表示パネルと該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁とを備える複数の画像表示装置を平面的に並べて構築されるマルチディスプレイ装置の前記額縁上に設置される額縁被覆部材であって、
額縁に臨んで配置される設置面と、該設置面に対して傾斜し、該額縁に隣接する表示領域からの出射光を反射する光反射面が形成された傾斜面とを有する棒状部と、
前記傾斜面に沿って延び、前記表示パネルを保護するための板状の保護パネルの端部を挿し込み可能な凹溝部とを含むことを特徴とする額縁被覆部材である。
【0012】
また本発明は、前記棒状部は、互いに隣接する前記設置面と一対の前記傾斜面とを有し、三角柱形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記凹溝部は、前記一対の傾斜面により形成される稜線と前記設置面との間の中央の位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、画像表示装置に取り付けるための取付部であって、前記設置面に突設された挿込片と、該挿込片に対し、前記設置面から離反する方向への引張力を付与する引張部とを有する取付部をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、額縁上に設置される棒状部は、額縁に隣接する表示領域からの出射光を反射する光反射面が形成された傾斜面を有するので、マルチディスプレイ装置を稼動させたとき、該傾斜面に対し、表示画像に色調や輝度などの表示特性が類似した画像を映すことができ、これにより、ベゼルを可及的に目立たなくさせて、マルチディスプレイ装置に表示される画像の品位の低下を防止することができる。併せて、傾斜面には、保護パネルを保持するための凹溝部が設けられているので、保護パネルを画像表示装置ごとに装着して表示パネルを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る額縁被覆部材30が設置された状態のマルチディスプレイ装置1を示す正面図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見た断面図である。
【図3】額縁被覆部材30が設置されていない状態のマルチディスプレイ装置1を示す正面図である。
【図4】図2における第1非表示領域V21に配置される額縁被覆部材30付近を拡大して示す断面図である。
【図5】額縁被覆部材30による作用を説明するための図である。
【図6】図2における第1非表示領域V21に配置される額縁被覆部材30付近を拡大して示す断面図である。
【図7】図6における額縁被覆部材30付近を、マルチディスプレイ装置1の背面側から見た図である。
【図8】図6の切断面線VIII−VIIIから見た断面図である。
【図9】第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材30の取付方法の一例を説明するための断面図である。
【図10】第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材30の取付方法の他の例を説明するための側面図である。
【図11】マルチディスプレイ装置1を組み立てる手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る額縁被覆部材30が設置された状態のマルチディスプレイ装置1を示す正面図である。図2は、図1の切断面線II−IIから見た断面図である。図3は、額縁被覆部材30が設置されていない状態のマルチディスプレイ装置1を示す正面図である。なお、図1では、保護パネル40を省略して示している。
【0018】
マルチディスプレイ装置1は、画像情報に応じた画像を表示可能な表示パネル20をそれぞれ備える複数の画像表示装置10を、各表示パネル20がマトリクス状にまたは一方向に沿って、平面的に並ぶように互いに隣接させて配置することによって構築される。
【0019】
マルチディスプレイ装置1を構成する各画像表示装置10には、図2および図3に示すように、矩形平板状に構成される表示パネル20の厚み方向一方側の面であって、画像が表示される側の面(以下、「表示面」と称する)20aにおける矩形枠状の周縁領域を覆うように、額縁であるベゼル21が設けられる。
【0020】
ベゼル21は、表示パネル20の表示面20aにおける矩形枠状の周縁領域の形状に対応して、矩形枠状に形成されている。以下、画像表示装置10を正面側(すなわち、表示面20aに対向する側)から見たとき、矩形枠状のベゼル21において、一辺を成している部分を、「ベゼル辺部」と称する場合がある。すなわち、ベゼル21は、長辺に対応する一対のベゼル辺部(図3において左右方向に延びるベゼル辺部)と、短辺に対応する一対のベゼル辺部(図3において上下方向に延びるベゼル辺部)とを含んでいる。
【0021】
マルチディスプレイ装置1は、1つの画像を画像表示装置10の配置に応じて分割した分割画像の画像情報を、各画像表示装置10に対して与えることにより、複数の表示パネル20で構成される大型の画面に、前記1つの画像を表示可能に構成されている。
【0022】
各画像表示装置10は、本実施形態では、表示パネル20としての液晶パネルと、バックライト22と、光学部材23とを備える液晶表示装置によって実現されている。他の実施形態では、表示パネル20としてプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel)を備えるプラズマディスプレイ装置などによって実現されてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、4台の画像表示装置10を縦横2×2のマトリクス状に並ぶように配置して構築されたマルチディスプレイ装置1を例に挙げて説明するが、他の配列のマルチディスプレイ装置1であってもよい。たとえば、16台の画像表示装置10を縦横4×4のマトリクス状に並ぶように配置して構築されたマルチディスプレイ装置、3台の画像表示装置10を一方向に沿って並ぶように配置して構築されたマルチディスプレイ装置などであってもよい。
【0024】
以下、図2および図3に示すように、表示パネル20の表示面20aにおいて、ベゼル21に覆われずに、外部に露出している領域を「表示領域」と称し、参照符V1を付して示す。すなわち、各画像表示装置10の表示領域V1に、前記の分割画像が表示される。
【0025】
また、マルチディスプレイ装置1を正面側から見たとき、ベゼル21の表面が露出している領域を「非表示領域」と称し、参照符V2を付して示す。非表示領域V2のうち、特に、各表示領域V1によって挟まれる格子状の領域を「第1非表示領域」と称し、参照符V21を付して示す。また、残余の領域、すなわち全ての表示領域V1および第1非表示領域V21を外囲する矩形枠状の領域を「第2非表示領域」と称し、参照符V22を付して示す。
【0026】
本実施形態に係るマルチディスプレイ装置1は、図2に示すように、非表示領域V2に配置されるベゼル21上に、額縁被覆部材30が設置される。さらに、画像表示装置10ごとに、保護パネル40が額縁被覆部材30によって保持されて設けられる。
【0027】
本実施形態では、図1に示すように、第1非表示領域V21に配置される、隣接する一対のベゼル辺部ごとに額縁被覆部材30がそれぞれ設置されるとともに、第2非表示領域V22に配置される各ベゼル辺部に額縁被覆部材30がそれぞれ設置されている。
【0028】
保護パネル40は、表示パネル20の接触による汚れおよび衝撃による割れなどを防止するために、表示パネル20の前面側に、表示面20aに離間して設けられる。保護パネル40は、矩形状に形成された無色透明、すなわち高い透光性を有する板状部材であり、本実施形態では強化ガラスによって実現されている。保護パネル40は、表示面20aに対向する主面の縦横寸法が、画像表示装置10における表示領域V1の縦横寸法よりも大きく、かつ画像表示装置10の正面視におけるベゼル21の外形の縦横寸法よりも小さくなるように形成されている。
【0029】
図4は、図2における第1非表示領域V21に配置される額縁被覆部材30付近を拡大して示す断面図であり、画像表示装置10については仮想線で示している。以下、額縁被覆部材30の構成について詳細に説明する。
【0030】
額縁被覆部材30は、大略的に三角柱状に形成され、非表示領域V2に配置されるベゼル21を覆うように該ベゼル21上に設置される棒状部31と、画像表示装置10に取付可能に構成される取付部32とを含んで構成される。
【0031】
以下、棒状部31の延びる方向(矢符Yで示す方向)を長手方向と称する。また、後述する設置面33に平行で、かつ長手方向Yに垂直な方向(矢符Xで示す方向)を幅方向と称し、長手方向Yおよび幅方向Xのいずれにも垂直な方向(矢符Zで示す方向)を高さ方向と称する。
【0032】
棒状部31は、大略的に三角柱状に形成され、詳細には、図4に示すように、長手方向Yに垂直な仮想一平面で切断したときの断面の形状が、二等辺三角形となるように形成されている。
【0033】
以下、棒状部31において、前記二等辺三角形状の断面における底辺に対応する平坦な外表面を「設置面」と称し、斜辺に対応する平坦な外表面を「傾斜面」と称する。すなわち、棒状部31は、長手方向Yに沿って延びる3つの外表面のうち、1つの外表面が設置面33を成し、設置面33以外の2つの外表面が傾斜面34を成している。設置面33は、棒状部31をベゼル21上に設置したときに、ベゼル21に臨んで配置される面である。
【0034】
棒状部31は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂およびABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂などの合成樹脂材料、またはステンレスなどの金属材料によって形成され、2つの傾斜面34には、高い反射率で光を反射する光反射面がそれぞれ設けられる。
【0035】
光反射面は、周知の方法によって形成される。たとえば棒状部31が合成樹脂材料から成る場合には、アルミニウムなどの金属薄膜を真空蒸着することによって、各傾斜面34に光反射面を形成することができる。また、棒状部31が金属材料から成る場合には、鏡面加工を施すことによって、各傾斜面34に光反射面を形成することができる。
【0036】
また、棒状部31には、前記の保護パネル40を保持するために、光反射面が形成された各傾斜面34に、長手方向Yの両端部間に亘って直線的に延びる凹溝部35がそれぞれ設けられている。各凹溝部35は、その溝の深さ方向が、棒状部31の幅方向Xに一致し、また、棒状部31の高さ方向Zにおいて、同一の高さ位置に設けられる。
【0037】
棒状部31において、各凹溝部35の溝幅wは、保持すべき保護パネル40の厚み寸法に応じて選択され、詳細には、保持すべき保護パネル40の厚み寸法よりも僅かに大きくなるように選択される。
【0038】
また、各凹溝部35の深さは、保持すべき保護パネル40の前記主面の縦寸法または横寸法に応じて選択され、詳細には、画像表示装置10において、長辺または短辺に対応する一対の前記ベゼル辺部に額縁被覆部材30をそれぞれ設置したときに、その2つの額縁被覆部材30における互いに対向する2つの凹溝部35に、保持すべき保護パネル40の両端部をそれぞれ保持させることができ、かつ、棒状部31に形成される2つの凹溝部35が、棒状部31の強度を十分に確保することができる程度の距離vだけX方向に互いに離間するように選択される。
【0039】
棒状部31において、2つの凹溝部35の深さは、それぞれ異なっていてもよいが、本実施形態では、同一となるように選択されている。すなわち、本実施形態では、2つの凹溝部35は、2つの傾斜面34により形成される稜線36を含み、かつ幅方向Xに垂直な仮想一平面に関して、面対称に設けられている。
【0040】
棒状部31に2つの凹溝部35を設ける場合、高さ方向Zにおいて、中央の位置(すなわち、設置面33と稜線36との中間位置)に設けるのが好ましい。なぜなら、稜線36に近接した位置に凹溝部35を設けると、保護パネル40を保持するのに十分な深さで凹溝部35を形成したとき、凹溝部35間の距離vが小さくなってしまい、棒状部31の強度を十分に確保することができなくなってしまうという不具合が生じ、また、設置面33に近接した位置に凹溝部35を設けると、保護パネル40よりも前方側に位置する光反射面の面積が増大し、保護パネル40の表面で反射した外部の光による映り込みの影響を大きく受けることになるという不具合が生じるためである。
【0041】
額縁被覆部材30の棒状部31は、本実施形態では、隣接する2つのベゼル辺部の幅(すなわち、ベゼル辺部の延びる方向に垂直な方向の寸法)を足し合わせた寸法が約7mmであるマルチディスプレイ装置1を設置対象として形成されており、設置面33の幅方向Xの寸法が、9mm〜11mm程度に選択されている。
【0042】
また、設置面33と傾斜面34とが成す角の角度である傾斜角θは、45°以上90°未満の範囲が好ましく、本実施形態では、60°に選択されている。したがって、本実施形態では、棒状部31の高さ方向Zの寸法は、8mm〜10mm程度であり、2つの凹溝部35は、設置面33から4mm〜5mm程度の高さ位置に設けられている。また、保護パネル40の厚み寸法は、たとえば0.5mm〜1mm程度である。
【0043】
図5は、額縁被覆部材30による作用を説明するための図である。マルチディスプレイ装置1を稼動させると、各表示領域V1には画像情報に応じた画像が表示される。このとき、表示領域V1周縁の反射対象領域V11から表示画像に応じて出射される出射光のうち、一部の出射光が、その反射対象領域V11に臨む傾斜面34に入射する。傾斜面34に入射した出射光は、傾斜面34に設けられた光反射面で反射し、マルチディスプレイ装置1の正面側へ導かれる。
【0044】
これにより、マルチディスプレイ装置1の表示画面を正面側から視認したとき、第1非表示領域V21には、各反射対象領域V11に表示される表示画像の反転画像が表示される。前記のように、傾斜面34の傾斜角θが60°であるときには、ベゼル21の幅の約2倍の幅寸法の反射対象領域V11の表示画像が、約1/2サイズで傾斜面34に表示される。
【0045】
傾斜面34に設けられる光反射面に映った反転画像は、反射対象領域V11の表示画像に色調や輝度などの表示特性が類似しているので、ベゼル21の表面が露出している場合に比べて、マルチディスプレイ装置1を正面側から視認する看者に対し、第1非表示領域V21に配置されるベゼル21を可及的に目立たなくさせることができる。したがって、各表示領域V1に表示される画像の一体感が増し、マルチディスプレイ装置1に表示される画像の品位の低下を防止することができる。
【0046】
棒状部31の傾斜角θは、大きければ大きいほど、ベゼル21近辺の出射光を反射し易いが、あまり傾斜角θを大きくすると、棒状部31の高さ方向Zの寸法が大きくなりすぎてしまい、幅方向Xに作用する外力などによる曲げ荷重に対して構造上弱くなるため、傾斜角θは60°〜80°が好適である。
【0047】
なお、傾斜面34に保護パネル40の端部を保持するための凹溝部35が設けられていることにより、図5に示すように、直線状の非反射領域が存在してしまうが、大型画面化および狭額縁化された近年の画像表示装置10においては、かかる非反射領域は、非常に微細な線となり目立つことはない。
【0048】
以下、額縁被覆部材30における取付部32の構成、および額縁被覆部材30のマルチディスプレイ装置1への取付方法について説明する。図6は、図2における第1非表示領域V21に配置される額縁被覆部材30付近を拡大して示す断面図である。図7は、図6における額縁被覆部材30付近を、マルチディスプレイ装置1の背面側から見た図である。図8は、図6の切断面線VIII−VIIIから見た断面図である。
【0049】
本実施形態に係る額縁被覆部材30は、前述するように、画像表示装置10に取付可能に構成される取付部32を含んで構成される。取付部32は、画像表示装置10間の隙間dに挿し込まれる挿込片51と、挿込片51に対し、設置面33から離反する方向への引張力を付与する引張部とを備え、該引張部は、基材52と、引張片53と、ビスなどによって実現されるねじ部材54とを含む。
【0050】
本実施形態では、取付部32によって額縁被覆部材30をマルチディスプレイ装置1へ設置するために、隣接する画像表示装置10の間には、挿込片51を挿込可能な間隔の微小な隙間dが設けられている。
【0051】
挿込片51は、棒状部31の設置面33から垂直に立設する矩形板状の部分であり、長手方向Yに延設されている。挿込片51には、その厚み方向(すなわち、幅方向X)に貫通する貫通孔56が、先端部51a寄りの位置に形成されている。貫通孔56は、高さ方向Zに垂直な一対の内周面および長手方向Yに垂直な一対の内周面によって、矩形状に形成されている。挿込片51は、設置面33をベゼル21に当接させたとき、貫通孔56の一部が画像表示装置10の背面10aよりも背面側に配置されるように、その寸法が選択されている。
【0052】
挿込片51は、棒状部31と一体化しており、本実施形態では、棒状部31と挿込片51とは一体的に成形されている。他の実施形態では、棒状部31と挿込片51とを別部材とし、締結などの方法により挿込片51が棒状部31に固定されてもよい。また、挿込片51は、長手方向Yに沿って複数設けられてもよい。
【0053】
基材52は、矩形状に形成された板状部材であり、その厚み方向に貫通する矩形状の貫通孔57が中央部に形成される。貫通孔57は、挿込片51を挿通可能な大きさに形成されている。
【0054】
引張片53は、一方向に沿って延びる短冊状に形成された板状部材であり、その長辺方向が幅方向Xに、かつその厚み方向が高さ方向Zに一致するような姿勢で、挿込片51に形成される貫通孔56に挿通できるような大きさに形成されている。また、引張片53には、その長辺方向の両端部の近傍に、ねじ部材54を螺合可能なねじ孔が、その厚み方向に貫通してそれぞれ形成されている。
【0055】
額縁被覆部材30をマルチディスプレイ装置1に取り付ける際には、先ず、隣接する2つの画像表示装置10間の隙間dに挿込片51を挿し込んで、額縁被覆部材30をベゼル21上に設置する。次に、画像表示装置10の背面10aから突出した挿込片51が貫通孔57を貫通するように、基材52を、画像表示装置10の各背面10aに当設させる。
【0056】
この状態で、引張片53を、挿込片51の貫通孔56に挿通させ、さらに、2つのねじ孔に対し、マルチディスプレイ装置1の背面側からねじ部材54を螺合させる。このとき、ねじ部材54を基材52に向かって螺進させると、引張片53は、ねじ部材54の頭部に向かって相対的に移動する。2つのねじ部材54をある程度螺進させると、ねじ部材54の軸部の先端と基材52とが当設するとともに、引張片53の厚み方向一方側の表面と、挿込片51における、高さ方向Zに垂直な前記内周面とが当接する。
【0057】
この状態から、さらに2つのねじ部材54を螺進させると、ねじ部材54の頭部に向かって相対的に移動する引張片53によって、挿込片51に対し、マルチディスプレイ装置1の背面側に向かう方向への引張力が付与される。この引張力により、ベゼル21には、設置面33を介して棒状部31から押圧力が付与される。これにより、棒状部31と基材52とによって画像表示装置10の周縁部を固く挟持した状態で、額縁被覆部材30がベゼル21上に固定して取り付けられる。
【0058】
本実施形態では、挿込片51、基材52および引張片53は樹脂材料によって形成されているが、他の実施形態では、金属材料によって形成されてもよい。
【0059】
図9は、第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材30の取付方法の一例を説明するための断面図である。図9に示す例では、マルチディスプレイ装置1を設置するための架台用の化粧カバー61を利用して、額縁被覆部材30が取り付けられる。具体的には、化粧カバー61の背面側に、画像表示装置10の背面10aと面一な取付面62aを有する取付支持具62を設置し、化粧カバー61および取付支持具62と画像表示装置10との間に設けられた隙間に、額縁被覆部材30の挿込片51を挿し込み、前記と同様の方法によって取り付けられる。
【0060】
図10は、第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材30の取付方法の他の例を説明するための側面図である。図10に示す例では、額縁被覆部材30における取付部32の挿込片51に、ねじ部材54を螺合可能なねじ孔を設けるとともに、ベゼル21にも同様に、ねじ部材54を螺合可能なねじ孔を設け、ねじ部材54によって直接、締結固定される。
【0061】
なお、図9に示されるように、第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材30における、一方の凹溝部35にしか保護パネル40が装着されない。すなわち、第2非表示領域V22に配置される額縁被覆部材としては、1つの傾斜面34にのみ凹溝部35が設けられているものであればよく、たとえば前述する棒状部31において凹溝部35を1つだけ設けたものであってもよく、前述する棒状部31を、稜線36を含み、かつ設置面33に垂直な仮想一平面で切断したような形状に形成されたものであってもよい。
【0062】
図11は、マルチディスプレイ装置1を組み立てる手順を示す図である。なお、理解を容易にするために、保護パネル40の表面を、破線のハッチングを付して示している。
【0063】
先ず、マルチディスプレイ装置1の最下段に配置されるべき画像表示装置10を隣接して設置し、各画像表示装置10に額縁被覆部材30を前述する方法で取り付ける。このとき、4つの前記ベゼル辺部のうち、上方に配置されるベゼル辺部を除く3つのベゼル辺部に対して、額縁被覆部材30をそれぞれ取り付ける(図11(a))。これにより、各画像表示装置10において、U字を形成するように3つの凹溝部35が連接される。
【0064】
次に、装着すべき保護パネル40を準備し(図11(b))、U字状に連なる凹溝部35に対して、上方から保護パネル40を挿し込んで装着する(図11(c))。これにより、3つの凹溝部35内には、保護パネル40における3つの端部が保持される。次に、保護パネル40が装着された各画像表示装置10の上段に配置されるべき画像表示装置10を設置し、前記と同様に、上方に配置されるベゼル辺部を除く3つのベゼル辺部に対して、額縁被覆部材30をそれぞれ取り付ける(図11(d))。
【0065】
そして、装着すべき保護パネル40を準備し(図11(e))、U字状に連なる凹溝部35に対して、上方から保護パネル40を挿し込んで装着するとともに、上方に配置されるベゼル辺部に対して、額縁被覆部材30をそれぞれ取り付ける(図11(f))。これにより、画像表示装置10ごとに保護パネル40が設けられたマルチディスプレイ装置1の組み立てが終了する。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る額縁被覆部材30をマルチディスプレイ装置1におけるベゼル21上に設置することにより、ベゼル21を可及的に目立たなくさせて、マルチディスプレイ装置1に表示される画像の品位の低下を防止することができるとともに、保護パネル40により各画像表示装置10の表示パネル20を保護することができる。
【0067】
また、額縁被覆部材30において、保護パネル40の端部を保持するための凹溝部35が、設置面33と稜線36との間の中央位置に設けられているので、棒状部31における強度を十分に確保することができるとともに、外部光による映り込みの影響を可及的に抑制することができる。
【0068】
また、額縁被覆部材30には、画像表示装置10へ取り付けるための取付部32が設けられ、該取付部32は、設置面33に突設された挿込片51を有し、画像表示装置10間の隙間dに挿し込まれた挿込片51に対し、マルチディスプレイ装置1の背面側に向かう方向への引張力を付与するように構成されている。したがって、額縁被覆部材30をベゼル21上に固定して設置することができ、保護パネル40を確実に支持することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 マルチディスプレイ装置
10 画像表示装置
20 表示パネル
20a 表示面
21 ベゼル
30 額縁被覆部材
31 棒状部
32 取付部
33 設置面
34 傾斜面
35 凹溝部
V1 表示領域
V11 反射対象領域
V2 非表示領域
V21 第1非表示領域
V22 第2非表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示パネルと該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁とを備える複数の画像表示装置を平面的に並べて構築されるマルチディスプレイ装置の前記額縁上に設置される額縁被覆部材であって、
額縁に臨んで配置される設置面と、該設置面に対して傾斜し、該額縁に隣接する表示領域からの出射光を反射する光反射面が形成された傾斜面とを有する棒状部と、
前記傾斜面に沿って延び、前記表示パネルを保護するための板状の保護パネルの端部を挿し込み可能な凹溝部とを含むことを特徴とする額縁被覆部材。
【請求項2】
前記棒状部は、互いに隣接する前記設置面と一対の前記傾斜面とを有し、三角柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の額縁被覆部材。
【請求項3】
前記凹溝部は、前記一対の傾斜面により形成される稜線と前記設置面との間の中央の位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の額縁被覆部材。
【請求項4】
画像表示装置に取り付けるための取付部であって、前記設置面に突設された挿込片と、該挿込片に対し、前記設置面から離反する方向への引張力を付与する引張部とを有する取付部をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の額縁被覆部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−252231(P2012−252231A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125840(P2011−125840)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】