説明

顔料分散剤

【課題】本発明は、種々の欠点を改良し、良好に顔料を分散することができる顔料分散剤、およびそれを用いた顔料分散剤、ならびにその製造方法を提供するものである。
【解決手段】一末端にのみ実質的に無色の芳香環および/または複素環を有するラジカル重合体である顔料分散剤。残りの一末端が、ハロゲンである上記顔料分散剤。上記顔料分散剤の、実質的に無色の芳香環および/または複素環が有機色素の前駆体であって、前記前駆体を有機色素に変換することを特徴とする顔料分散剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料粒子の分散剤に関するものであり、更に詳しくは、印刷インキや塗料の使用適正の向上を図る顔料分散剤、およびそれを含有する顔料組成物、ならびに顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に各種コーティングまたはインキ組成物中において、鮮明な色調と高い着色力を発揮する実用上有用な顔料は微細な粒子からなっている。しかしながら顔料の微細な粒子は、オフセットインキ、グラビアインキおよび塗料のような非水系ビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得るのは難しく、製造作業上および得られる製品の価値に重大な影響を及ぼす種々の問題引き起こす事が知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、分散機からの分散体の取り出し、輸送したりする際に困難を生じる。また、分散体が貯蔵中にゲル化を起こし使用できなくなる場合もある。あるいは、異種の顔料を混合して使用する場合、顔料の凝集による色分かれや沈降などの現象などの現象により、展色物において、色むらや著しい着色力の低下を引き起こすことがある。さらに、このような不安定な分散体の場合、展色物の塗膜表面状態が損なわれやすく、例えば光沢の低下、レべリング不良等が発生する事がある。
【0003】
一方、特開昭63-175080号公報および特開平4-139262号公報には、有機色素とポリマーを結合させたポリマー分散剤が提示されている。ポリマー分散剤に含まれる有機色素と顔料粒子の相互作用が強くなるためポリマー分散剤の顔料粒子への吸着が促進され分散性が向上するものと考えられる。しかしながら、公報記載のポリマー分散剤は、ポリマー中にランダムに存在する官能基を用いて、有機色素とポリマーを結合している。この方法によると、ポリマー中にランダムに有機色素が導入されるために、ポリマー部分と分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に充分な吸着層を確保しにくくなったり、また、ポリマー中への有機色素あるいは複素環の導入量が増加すると分散媒への溶解性が減少するため、分散安定化に充分な吸着層を確保できなくなったりするという問題がある。
【0004】
さらに特開平9-77992号報にはアミノ基を有する開始剤で開始する、またはアミノ基を有する連鎖移動剤で停止した後にアクリル樹脂の末端に導入されたアミノ基にアミノ基と反応しうる有機顔料誘導体を反応させて樹脂の片末端に色素骨格を導入する方法が提案されている。しかし本方法は一般的なラジカル重合を使用するために、カップリングなどの重合の副反応が生じ、樹脂の両末端に色素骨格が導入されたものや、樹脂中に色素骨格が導入されないものが生じる。このようなものを顔料分散剤として使用した場合、顔料の橋かけ凝集を引き起す事や、良好な分散に必要となる顔料分散剤の量が多くなる欠点があった。
【0005】
また、一般的な熱重合を使用する為、ポリマー鎖の分子量の制御が困難であり、ポリマー鎖が長すぎる場合、顔料分散剤自体の樹脂部分が末端の色素骨格を覆い、顔料との吸着を阻害するだけでなく、分散剤中の顔料への吸着部位が少なくなり、逆に吸着が阻害され、分散安定化に必要な吸着層を十分に確保する事が困難である。また樹脂部分が短すぎると、分散樹脂への十分な相溶性が得られない、分散安定化に寄与する立体反発が得られない等の欠点があった。
【0006】
一方、原子移動ラジカル重合法はこれらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(すなわちMw/Mn値が1.1〜1.5程度である)重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比および重合時間によって自由にコントロールすることができる(非特許文献1〜4)。また、有機ハロゲン化物を開始剤とする原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合に見られる副反応を抑える事ができる為、開始剤に官能基を導入すれば、片末端にのみ官能基が導入され、残りの片末端がハロゲンであるポリマーが合成され、さらにポリマー鎖の成長が均一に起こる為にポリマー鎖の分子量を精密にコントロールできる事が報告されている。(非特許文献1〜4)
【0007】
一方、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される原子移動ラジカル重合法はリビング重合である事が報告されている(例えば、非特許文献2〜4,特許文献1〜4参照。)。これらの重合法を利用することにより、末端にハロゲンを有する分子量分布の狭いビニル系重合体が得られるようになった。本発明者は、この新原子移動ラジカル重合法を用いれば、分子量がコントロールされ、分子の片末端にのみ顔料との吸着能を有し、片末端にハロゲン原子を有する樹脂が得られる事を見出し本発明に到達した。
【非特許文献1】Fukudaら、Prog. Polym. Sci. 2004, 29, 329。
【非特許文献2】Matyjaszewskiら、Chem.R e v.2001,10 1,2921。
【非特許文献3】Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614。
【非特許文献4】Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866
【特許文献1】国際公開第96/30421号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/18247号パンフレット
【特許文献3】特開平9−208616号公報
【特許文献4】特開平8−41117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の種々の欠点を改良し、良好に顔料を分散することができる顔料分散剤、およびそれを用いた顔料分散剤、ならびにその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は片末端にのみ実質的に無色の芳香環および/または複素環を有するラジカル重合体からなる事を特徴とする顔料分散剤を提供する事で上記課題を解決したものである。
【0010】
すなわち本発明は、一末端にのみ実質的に無色の芳香環および/または複素環を有するラジカル重合体である顔料分散剤に関する。
【0011】
また、本発明は、残りの一末端が、ハロゲンである上記顔料分散剤に関する。
【0012】
また、本発明は、ラジカル重合体が、ブロック重合体である上記顔料分散剤に関する。
【0013】
また、本発明は、原子移動ラジカル重合の開始基を有する、実質的に無色の芳香環および/または複素環を重合開始剤として、ラジカル重合性モノマーを原子移動ラジカル重合させてなる顔料分散剤に関する。
【0014】
また、本発明は、実質的に無色の芳香環および/または複素環が、縮合芳香環である上記顔料分散剤に関する。
【0015】
また、本発明は、顔料分散剤の数平均分子量が、300〜30000である上記顔料分散剤に関する。
【0016】
また、本発明は、縮合芳香環が、ベンズイミダゾロン、キナルジン、キノフタロン、アントラキノン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、カルバゾール、フタルイミドまたはこれらの誘導体から選択されるものである上記顔料分散剤に関する。
【0017】
また、本発明は、上記顔料分散剤の、実質的に無色の芳香環および/または複素環が有機色素の前駆体であって、前記前駆体を、有機色素に変換してなる顔料分散剤に関する。
【0018】
また、本発明は、原子移動ラジカル重合の開始基を有する実質的に無色の芳香環および/または複素環を重合開始剤として、ラジカル重合性モノマーを原子移動ラジカル重合させることを特徴とする顔料分散剤の製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、上記顔料分散剤の、実質的に無色の芳香環および/または複素環が有機色素の前駆体であって、前記前駆体を有機色素に変換することを特徴とする顔料分散剤の製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、顔料と、上記顔料分散剤と、樹脂と溶剤と含んでなる顔料分散組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、顔料と、上記顔料分散剤と、樹脂とを、有機溶剤または水中に分散してなる顔料分散体に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、インキおよび塗料などの顔料分散液において、非集合性、流動性などの使用適性および、塗布物の色調の鮮明性、光沢などを著しく向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明において実質的に無色の芳香環および/または複素環の構造は、水素結合またはπ電子雲との重なり合いにより顔料との吸着が予想されるような構造が好ましく、より好ましい一例として縮合芳香環がある。縮合芳香環は、芳香環(ヘテロ原子を含んでよい)が、環(ヘテロ原子含んでよい芳香環、あるいは、脂肪族環)と縮合している構造である。
具体的に言うとベンズイミダゾロン、キナルジン、キノフタロン、アントラキノン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、カルバゾール、フタルイミドまたはこれらの誘導体さらにはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系から選ばれる少なくとも1種の縮合芳香環であり、実質的に無色なものが好ましい。
【0024】
重合の際、重合の制御を容易にする為、上記芳香環、複素環、縮合芳香環を含む、重合に用いる化合物は重合に使用する溶剤への溶解性を持つものが好ましい。
【0025】
また、上記芳香環、複素環、縮合芳香環は使用する顔料分散体に使用する顔料に類似の骨格を有する化学構造のものを選定する方が有利である。すなわち、非集合性、非結晶性、流動性等に効果が大きいばかりでなく、顔料単独の場合と比較して色相の変化が少なく好ましい。
【0026】
また、本発明の顔料分散剤を使用する場合、無色または着色が僅かであるものが各種顔料に添加しても色相の変化は少なく、汎用性に優れる点で有利である事から上記芳香環、複素環、縮合芳香環は無色あるいは着色が僅かであるものが望ましい。
本発明の顔料分散剤は、2つ以上ある末端の一つの末端にのみ実質的に無色の芳香環、複素環、縮合芳香環を有するラジカル重合体であり、好ましくは、残る末端の1つが、ハロゲン原子である。
ラジカル重合体が、直鎖の場合は、2つあるうちの一方の末端が上記芳香環、複素環、縮合芳香環であり、好ましくは、もう一方の末端がハロゲン原子である。
【0027】
本発明の顔料分散剤は原子移動ラジカル重合により合成されることが好ましく、その開始剤は上記芳香環、複素環、縮合芳香環を有するものである。
【0028】
原子移動ラジカル重合の開始基は原子移動ラジカル重合の開始基となるものであれば良く、主にハロゲン化アルキル基またはハロゲン化スルホニル基であり、具体的に言うとクロロスルホニル基、2-ブロモイソブチレート基、ブロモメチルフェニル基、ブロモエチルフェニル基などが挙げられる。
【0029】
重合開始基の芳香環、複素環、縮合芳香環への導入方法は、重合の開始基が残存する形であれば限定はされないが、芳香環、複素環、縮合芳香環に水酸基に導入されている場合、イソブチリルブロマイドなどの重合の開始基を有する酸ハロゲン化物を反応し、エステル結合により導入する方法が好ましい。
【0030】
また、まず、原子移動ラジカル重合の開始基を導入した後、芳香環、複素環、縮合芳香環を形成させる事で重合開始基を持つ芳香環、複素環、縮合芳香環を得る事ができる。
【0031】
本発明で用いられるラジカル重合性モノマーは、重合後は、本発明の顔料分散剤の樹脂部として、分散樹脂との相溶性の向上、立体反発による分散安定化などの効果に寄与する。
本発明で用いられるラジカル重合性モノマーとしては、原子移動ラジカル重合可能な付加重合性単量体であれば良く、例えば、エチレン;ブタ−1,3−ジエン、2−メチルブタ−1,3−ジエン、2−クロロブタ−1,3−ジエンのようなジエン類;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸メチル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル類;
2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルのようなビニルエステル類;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなどのN-ビニル化合物;アリルアルコール、塩化アリル、酢酸アリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなアリル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。
【0032】
ラジカル重合において特に好ましいのは、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルである。
【0033】
本発明の顔料分散剤の樹脂部に使用するラジカル重合性モノマーは、顔料分散組成物に使用する分散樹脂との相溶性の良好な物を適宜選択するのが望ましい。
【0034】
また本発明の顔料分散剤の樹脂部にはエポキシ基、イソシアネート基などの反応性の置換基を持たせても良く、当該反応性の置換基を利用して様々な反応を行う事ができる。
【0035】
例えば分散剤の樹脂部に熱・光硬化性の置換基等を導入し熱硬化または光硬化させる事で、顔料組成物塗膜からの有機顔料からのブリードを低減する効果などが期待できる。
【0036】
また原子移動ラジカル重合の特性を生かし、本発明の分散剤の樹脂部はブロック共重合体としても良く、例えば極性の異なるブロックを持たせても良い。ブロックポリマーは相溶化剤や高分子量乳化剤等として好適に使用できる事が知られており、顔料分散剤に特性を付与できる事が期待できる。また樹脂のハロゲン末端近傍に酸性または塩基性などの分散樹脂と相互作用するような置換基を持ったブロックを持たせる事で、より良好な分散が期待できる。
【0037】
本発明の顔料分散剤の樹脂部は、原子移動ラジカル重合の特性上、理論上一分子当たり1個の芳香環、複素環、縮合芳香環と、1個の重合開始可能なハロゲン化末端を持つ。従って、重合後回収精製した顔料分散剤に再び重合触媒とモノマーを添加し、重合を開始すれば樹脂部の分子量を延長する事や、ブロック共重合を行う事ができる。
【0038】
本発明に使用する原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合中に発生する副反応が抑制される為に、重合の際に添加する原子移動ラジカル重合の開始基を有する芳香環、複素環、縮合芳香環とラジカル重合性モノマーとの仕込み比によって、分散剤の分子量を自由にコントロールできる。
【0039】
本発明の顔料分散剤の数平均分子量(Mn)としては、通常300〜30000が好ましく、特に1000〜10000がさらに好ましい。上記数平均分子量の(Mn)が300未満であると、樹脂部による立体反発の効果、分散樹脂への相溶効果が少なく、顔料の凝集を防ぐ事が困難となり、粘度が上昇してしまうことがある。またMnが30000以上であると、分散剤中の芳香環、複素環、縮合芳香環の濃度が低下し分散に必要な添加量が多くなるばかりか、樹脂部が分散剤末端の芳香環、複素環、縮合芳香環を被覆してしまう為に、分散剤末端と顔料との吸着を阻害する事になる。
【0040】
本発明における顔料分散剤は原子移動ラジカル重合法において製造される為、その分子量分布(重量平均分子量:Mw/数平均分子量:Mn)は通常2.0以下、好ましくは1.5以下である。
【0041】
原子移動ラジカル重合法にはレドックス触媒として銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体を用いて行われ、使用される遷移金属錯体の具体的な例としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)などの低原子価のハロゲン化遷移金属が挙げられるが、重合速度をコントロールするために、周知の方法に従って塩化銅(II)や臭化銅(II)などの高原子価の遷移金属を重合系に添加してもよい。
【0042】
上記金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶性およびレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするために使用される。金属の配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、スパルテイン、2,2'-ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0043】
前記の遷移金属(M)と有機配位子とは、別々に添加して重合体中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系へ添加しても良い。特に、銅の場合前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルは後者の方法が好ましい。
【0044】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノニ塩化ルテニウム(RuCl2(PPh33)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化鉄(FeCl2(PPh32)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化ニッケル(NiCl2(PPh32)、ビストリブチルホスフィノニ臭化ニッケル(NiBr2(PBu3)2)等が挙げられる。
【0045】
上記原子移動ラジカル重合において、原子移動ラジカル重合の開始基を有する芳香環、複素環、縮合芳香環は、ラジカル重合性モノマー全体に対し、通常合わせて0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%の割合で用いられる。また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物などの形態として、上記芳香環、複素環、縮合芳香環合わせて1モルに対して、通常0.03〜3モル、好ましくは0.1〜1モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常0.01〜3モル、好ましくは0.1〜1モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常1〜5モル、好ましくは2〜3モルの割合で用いられる。上記原子移動ラジカル重合の開始基を有する芳香環、複素環、縮合芳香環と遷移金属および配位子とをこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成ポリマーの分子量などに好結果が得られる。
【0046】
このような原子移動ラジカル重合は無溶剤でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、MEKなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる少量の使用量とするのがよい。無溶剤または少量の溶剤量でも、重合熱の制御などに関する安全性の問題は特に無く、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などの面で好結果が得られる。
【0047】
重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点より、70〜130℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約1〜100時間の重合時間とすればよい。また、重合反応に際しては、酸素による重合触媒の失活を防ぐ為、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われるのが望ましく、特に反応溶液中に含まれる溶存酸素の影響を減らす為に反応溶液中に高純度の不活性ガスをバブリングさせ溶存酸素を除いた後、重合系を密閉し不活性ガス雰囲気下で行うのが良い。
【0048】
重合反応終了後、例えば重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、周知の方法に従って、残存モノマー及び/または溶剤の除去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿したポリマーの濾過または遠心分離、ポリマーの洗浄および乾燥を行う事ができる。必要に応じ、THF、トルエン等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、希塩酸やアミン水溶液などで洗浄、またはアルミナ・シリカまたはクレーのカラム若しくはパッドに通すなど周知の方法により重合系に含まれる遷移金属などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって本発明の顔料分散剤を得ることが出来る。
【0049】
再沈殿に使用する溶媒としては、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5〜8のアルカン;シクロヘキサン等の炭素数5〜8のシクロアルカン;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜6のアルコール等が挙げられる。これらの中では、水、ヘキサン、メタノールまたはこれらの混合物が好適である。
【0050】
本発明の顔料分散剤に含まれる芳香環、複素環、縮合複素環は、色素前駆体である場合、有機色素へ変換することができ、末端に有機色素を有する顔料分散剤となる。この末端に有機色素を有する顔料分散剤は、最終的な顔料分散組成物の色相を変える恐れがあるが、分散剤に有機色素の骨格そのものを有する為、より顔料との吸着力が向上し、良好な分散が期待できる。例えば、前駆体が、フタロニトリルやフタルイミドなどである場合、その後の反応において樹脂グラフトされた顔料分散剤であるフタロシアニン色素を得る事ができる。
【0051】
本発明の顔料分散剤は、さらに顔料と樹脂とを溶剤とを含んで顔料分散組成物とすることができる。また、顔料と本発明の顔料分散剤と樹脂とを、有機溶剤または水中に分散してなる顔料分散体とすることができる。
【0052】
本発明の顔料分散剤は、一般に市販されている顔料に優れた分散効果を発揮する。例えば、可溶性および不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、チオインジゴ系顔料等の有機顔料および、カーボンブラック、酸価チタン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、弁柄、鉄黒、亜鉛華、紺青、群青等の無機顔料に用いる事ができる。本発明の顔料分散剤の顔料に対する配合は、顔料100重量部に対して、0.5 〜 100重量部が好ましい。0.5重量部より少ないと顔料分散効果が小さく好ましくない。また、100重量部より多く用いても用いた分の効果が得られなく塗膜性能に悪影響を及ぼす。
本発明の非水系顔料分散体に使用される樹脂としては、非水系樹脂であって、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ライムロジンワニス、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、常温もしくは焼付け塗料に用いられるニトロセルロースラッカー、アミノアルキッド樹脂、アクリルラッカー、アミノアクリル樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられるが顔料分散剤との相溶性の良好なアクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0053】
また本発明の非水系顔料分散体は、着色感光性組成物として露光・現像によりカラーフィルターなどに使用することができる。この場合、使用される樹脂はアルカリ水溶液に可溶である事が要求される為に酸性基を有するものが望ましい。
【0054】
また、水系顔料分散体に使用される樹脂としては、アクリル共重合体系、スチレン-アクリル酸共重合体系、スチレン−マレイン酸共重合体系、アルキド系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ウレタン系等の水分散樹脂または水溶性樹脂が有るが、特に、アクリル共重合体系の水分散樹脂または水溶性樹脂が好ましい。
【0055】
また、非水系顔料分散体に使用される有機溶剤としては、本発明の顔料分散剤の樹脂部分が溶解するものであれば限定されないが、シクロヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸メトキシブチルなどのグリコールエステル類などが挙げられる。
【0056】
非水系樹脂の使用量は、顔料100重量部に対して固形分換算で5〜500重量部が好ましい。特に、濃縮分散体として使用する場合、顔料100重量部に対して非水系樹脂が固形分換算で5〜200重量部が好ましく、塗料または印刷インキとして使用する場合は、顔料100重量部に対して非水系樹脂が固形分換算で100〜500重量部が好ましい。顔料100重量部に対して非水系樹脂が5重量部より少ないと顔料が分散しにくくなり、500重量部より多いと着色が低いため塗料または印刷インキとして使用に適さない場合がある。なお、塗料または印刷インキとして使用する場合には、メラニン樹脂等の硬化剤樹脂や硬化触媒、界面活性剤等を添加しても良い。
【0057】
本発明の顔料分散剤の使用方法としては、例えば次のような方法がある。
1. 顔料と顔料分散剤を予め混合して得られる顔料組成物を、非水系または水系ビヒクル添加して分散する。
2. 非水系または水系ビヒクルに顔料と顔料分散剤を添加して分散する。
3. 非水系または水系ビヒクルに顔料と顔料分散剤を予め別々に分散し、得られた分散体を混合する。この場合、顔料分散剤を溶剤のみで分散しても良い。
4. 非水系または水系ビヒクルに顔料を分散した後、得られた顔料分散体に顔料分散剤を添加する。
等の方法があり、これらのいずれかによって目的とする効果が得られる。
【0058】
顔料組成物の調整法としては、顔料粉末と本発明の顔料分散剤とを単に混合しても十分な分散効果が得られるが、ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル、各種粉砕機、分散機等により機械的に混合するか、顔料の水または有機溶剤によるサスペンジョン系に本発明の顔料分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に顔料分散剤を沈着させるか、硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に有機顔料と顔料分散剤を共溶解して水等の貧溶媒により共沈させる等の賢密な混合法を行えば、更に良好な結果を得る事ができる。また、非水系または水系ビヒクル、あるいは溶剤中への顔料または顔料分散剤の分散、混合等に、分散機械としてディソルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、サンドミル、アトライター等を使用することにより顔料の良好な分散ができる。
【実施例】
【0059】
以下実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部、%は重量%を示す。
(有機色素の部分骨格および/または複素環を有する重合開始剤の合成)
【0060】
製造例1−アントラセン骨格含有開始剤の合成−
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ヒドロキシメチルアントラセン6.0部、MEK 83.3部、トリエチルアミン4.2部を仕込んだ後、反応液を0℃に冷却した後、ブロモプロピオニルブロマイド 6.3部を使って滴下した。反応液を0℃で3時間攪拌し、室温で2時間攪拌した。その後反応後に析出したアミン塩を遠心分離で除去し、上澄み液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、これを濃縮した。生成物のIRを測定し、水酸基に由来する吸収が消失した事と新たにエステル基の吸収が生成した事より目的の化合物が得られた事を確認した。
【0061】
製造例2−フルオレン骨格含有開始剤の合成−
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(BPFG 大阪ガスケミカル製)47.5部、シクロヘキサノン34.9部、2-ブロモプロピオン酸17.0部、ジメチルベンジルアミン 0.6部を仕込み、攪拌しながら90℃に加熱した。5時間反応後のエポキシ価から反応率は99%であった。反応後の溶液を濃縮し、目的の開始剤化合物を得た。
【0062】
製造例3−カルバゾール骨格含有開始剤の合成−
製造例2の仕込みを、ヒドロキシエチルカルバゾール6.2部、トルエン83.3部、トリエチルアミン 4.2部、ブロモプロピオニルブロマイド6.3部に代えて同様の合成を行った。
【0063】
製造例4−アントラキノン骨格含有開始剤の合成−
製造例2の仕込みを、ヒドロキシメチルアントラキノン 6.3部、トルエン83.3部、トリエチルアミン4.6部、ブロモプロピオニルブロマイド5.7部に代えて同様の合成を行った。
【0064】
製造例5−ベンズイミダゾール骨格含有開始剤の合成−
製造例2の仕込みを、2-ヒドロキシベンズイミダゾール4.3部、トルエン83.3部、トリエチルアミン5.5部、ブロモプロピオニルブロマイド 6.9部に代えて同様の合成を行った。
【0065】
製造例6−キナルジン骨格含有開始剤の合成−
製造例2の仕込みを、8-ヒドロキシキナルジン 4.9部、トルエン 83.3部、トリエチルアミン 5.2部、ブロモプロピオニルブロマイド 6.6部に代えて同様の合成を行った。
【0066】
製造例7−片末端ナフタレン分散剤の合成−
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、MEK 42.6部、ブチルアクリレート42.6部、クロロメチルナフタレン3.5部、スパルテイン9.3部を仕込み、30分窒素を導入した。塩化銅(I)2.0部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。6時間重合後、反応溶液を0℃まで冷却し、重合を停止し化合物(a)を得た。GPC測定の結果化合物(a)の数平均分子量は2000, 分子量分布 はMw/Mn=1.2であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にナフタレン骨格が導入されたものである事を確認した。
【0067】
製造例8−片末端アントラセン分散剤の合成−
製造例7の重合の仕込みをMEK 42.5部、ブチルアクリレート42.5部、製造例1で合成した開始剤5.7部、スパルテイン7.7部、塩化銅(I) 1.6部に代えて同様の重合を行い化合物(b)を得た。化合物(b)の数平均分子量は1400, 分子量分布 はMw/Mn=1.2であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にアントラセン骨格が導入されたものである事を確認した。
【0068】
製造例9−片末端フルオレン分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK 39.1部、ブチルアクリレート39.1部、製造例2で合成した開始剤11.5部、スパルテイン8.6部、塩化銅(I) 1.8部に代えて同様の重合を行い化合物(c)を得た。ポリマーの数平均分子量2700は, 分子量分布 はMw/Mn=1.4であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にフルオレン骨格が導入されたものである事を確認した。
【0069】
製造例10−片末端カルバゾール分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK43.8部、ブチルアクリレート43.8部、製造例3で合成した開始剤4.7部、スパルテイン6.4部、塩化銅(I) 1.3部に代えて同様の重合を行い化合物(d)を得た。化合物(d)の数平均分子量は2100, 分子量分布 はMw/Mn=1.4であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にカルバゾール骨格が導入されたものである事を確認した。
【0070】
製造例11−片末端アントラキノン分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK42.2部、ブチルアクリレート42.2部、製造例4で合成した開始剤6.2部、スパルテイン7.7部、塩化銅(I) 1.6部に代えて同様の重合を行い化合物(e)を得た。化合物(e)の数平均分子量2500は, 分子量分布 はMw/Mn=1.5であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にアントラキノン骨格が導入されたものである事を確認した。
【0071】
製造例12−片末端ベンズイミダゾール分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK43.0部、ブチルアクリレート43.0部、製造例5で合成した開始剤4.5部、スパルテイン7.8部、塩化銅(I) 1.7部に代えて同様の重合を行い化合物(f)を得た。化合物(f)の数平均分子量2300は, 分子量分布 はMw/Mn=1.6であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にベンズイミダゾール骨格が導入されたものである事を確認した。
【0072】
製造例13−片末端キナルジン分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK42.8部、ブチルアクリレート42.8部、製造例6で合成した開始剤4.9部、スパルテイン7.8部、塩化銅(I) 1.7部に代えて同様の重合を行い化合物(g)を得た。化合物(g)の数平均分子量3200は, 分子量分布 はMw/Mn=1.5であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にキナルジン骨格が導入されたものである事を確認した。
【0073】
製造例14−片末端フタルイミド分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK43.5部、ブチルアクリレート43.5部、クロロメチルフタルイミド3.3部、スパルテイン7.9部、塩化銅(I) 1.7部に代えて同様の重合を行い化合物(h)を得た。化合物(h)の数平均分子量1800は, 分子量分布 はMw/Mn=1.3であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にフタルイミド骨格が導入されたものである事を確認した。
【0074】
製造例15−片末端フタルイミドブロック分散剤の合成−
製造例8の重合の仕込みをMEK43.0部、ブチルアクリレート34.4部、クロロメチルフタルイミド3.3部、スパルテイン7.9部、塩化銅(I) 1.7部に代えて同様の重合を4時間行った。固形分よりモノマーの消費率が90%であるのを確認し、ジメチルアミノエチルメタクリレート8.4部を滴下し3時間重合し化合物(i)を得た。重合後の収率は99%であった。GPC測定による数平均分子量1800は, 分子量分布 は単峰性を示しMw/Mn=1.5であった。GPC測定の際、樹脂に254nmの波長で観測したUVの吸収が観測され、樹脂末端にフタルイミド骨格が導入されたものである事を確認した。
【0075】
製造例16−アクリル樹脂グラフトフタロシアニン顔料の合成−
製造例14で合成した分散剤10.0部、フタルイミド2.7部、尿素7.3部、塩化第一銅0.6部をニトロベンゼン中で180℃で5時間加熱した。反応物をメタノール−水混合液に注入し、固形分をろ取した。固形分を塩酸水溶液、水の順に洗浄して、樹脂グラフトされた顔料前駆体から樹脂グラフトされたフタロシアニン色素を得た化合物(j)。
【0076】
製造例17−アクリルブロック樹脂グラフトフタロシアニン顔料の合成−
製造例15で合成した分散剤10.0部、フタルイミド2.7部、尿素7.3部、塩化第一銅0.6部をニトロベンゼン中で180℃で5時間加熱した。反応物をメタノール−水混合液に注入し、固形分をろ取した。固形分を塩酸水溶液、水の順に洗浄して、樹脂グラフトされた顔料前駆体から樹脂グラフトされたフタロシアニン色素を得た化合物(k)。
【0077】
実施例1〜9、比較例1〜3
表1のように、顔料、製造例8〜15にて合成した顔料分散剤、アクリル樹脂(アクリル酸/ブチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体 重量平均分子量25000)、およびシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ200部を加えペイントコンディショナーで3時間分散した。
【0078】
得られた顔料分散組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗工し、150℃で10分乾燥させた。光沢の測定はデジタル変角光沢計により60°グロスを測定した。測定結果は表1に記す。
【0079】
得られた顔料分散組成物について、E型粘度計を用いてその粘度を測定し、増粘の程度を調べた。測定結果を表1に記す。
【0080】
表1
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一末端にのみ実質的に無色の芳香環および/または複素環を有するラジカル重合体である顔料分散剤。
【請求項2】
残りの一末端が、ハロゲンである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項3】
ラジカル重合体が、ブロック重合体である請求項1または2記載の顔料分散剤。
【請求項4】
原子移動ラジカル重合の開始基を有する、実質的に無色の芳香環および/または複素環を重合開始剤として、ラジカル重合性モノマーを原子移動ラジカル重合させてなる顔料分散剤。
【請求項5】
実質的に無色の芳香環および/または複素環が、縮合芳香環である請求項1〜4いずれか記載の顔料分散剤。
【請求項6】
顔料分散剤の数平均分子量が、300〜30000である請求項1〜5いずれか記載の顔料分散剤。
【請求項7】
縮合芳香環が、ベンズイミダゾロン、キナルジン、キノフタロン、アントラキノン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、カルバゾール、フタルイミドまたはこれらの誘導体から選択されるものである請求項5記載の顔料分散剤。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の顔料分散剤の、実質的に無色の芳香環および/または複素環が有機色素の前駆体であって、前記前駆体を、有機色素に変換してなる顔料分散剤。
【請求項9】
原子移動ラジカル重合の開始基を有する実質的に無色の芳香環および/または複素環を重合開始剤として、ラジカル重合性モノマーを原子移動ラジカル重合させることを特徴とする顔料分散剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7いずれか記載の顔料分散剤の、実質的に無色の芳香環および/または複素環が有機色素の前駆体であって、前記前駆体を有機色素に変換することを特徴とする顔料分散剤の製造方法。
【請求項11】
顔料と、請求項1〜8いずれか記載の顔料分散剤と、樹脂と溶剤と含んでなる顔料分散組成物。
【請求項12】
顔料と、請求項1〜8いずれか記載の顔料分散剤と、樹脂とを、有機溶剤または水中に分散してなる顔料分散体。

【公開番号】特開2006−167674(P2006−167674A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367063(P2004−367063)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】