説明

顔料複合重合体粒子及びその製造方法と該粒子より得られる電子写真トナー及びその製造方法と該粒子を用いる生理活性物質固定用担体

【目的】 小粒径で粒度分布が狭く分散性に優れた、従って透明性の高い顔料複合重合体粒子とそれから得られる電子写真トナーや診断試薬担体としての生理活性物質固定用担体を提供し、電子写真のカラー画像の鮮鋭性を確立させると共に、抗原抗体の感作を安定させ、長期保存に堪える診断試薬担体を提供し、かつその製造方法を安定させる。
【構成】 界面活性剤の存在下に顔料を水相中に分散し少なくとも一種の疎水性単量体を含む単量体成分を水溶性ラジカル重合開始剤により水系析出重合して得られる顔料複合重合体粒子であって、該顔料にはロジン塩のカルシウムが0〜0.1%しか存在しないようにしてある顔料複合重合体である。そして更には上記単量体は疎水性のものと親水性のものが一定範囲の割合になっているものであり、該顔料体粒子から透明度が高く色鮮やかな電子写真トナーや耐久性、保存性の高い診断試薬担体が得られるようにした構成であり、更にそれ等の製造方法も構築してある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、改良された顔料複合重合体粒子及びその製造方法、電子写真用トナー及び免疫学的診断材料に関する。更に詳しくは、改良されたマゼンタ顔料複合重合体粒子及びその製造方法、マゼンタ用電子写真用トナー及び免疫学的診断試薬用担体に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真用トナーを構成する着色重合体粒子や免疫学的診断試薬用担体に利用される着色重合体粒子はその粒径が出来る限り小さい物が望まれる。例えば電子写真用トナーの分野においては、小粒径の着色重合体粒子を複数個会合させ、それを加熱融着させることでトナー粒子を合成することにより、従来からの混練粉砕法では得られにくかった、小粒径で且つ粒度分布の狭いトナーを得ることが期待されるだけでなく顔料の分散性の高い従って画像の透明性の高いものが得られ、更にトナー形状の制御が容易になることが期待される。しかし、上述のように従来の混練粉砕法では望むべくもなかった。
【0003】また免疫学的診断試薬用担体においては、凝集像の鮮明さ、免疫凝集反応の速度の観点から着色重合体粒子であって且つ小粒径であることが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら顔料によっては、上記方法で顔料複合重合体粒子を調製すると、分散安定性に乏しく不望の凝集を惹起しやすく、その結果粒径の制御性の乏しいという欠点があることを見いだした。またこの粒子は免疫学的活性種を粒子表面に固定化する際に、各種pH緩衝剤と混合すると同様に分散安定性が著しく劣化するという欠点を有することを見いだした。
【0005】本発明の課題は上記欠点を解消し、十分な分散安定性を有する顔料複合重合体粒子を得、更にこれを用いた制御された粒径、粒度分布を有する電子写真用トナーを得る方法を確立することである。
【0006】即ち、具体的には第1に安定した顔料複合重合体粒子を提供することにある。
【0007】第2に優れた分光特性を有し、耐光性、耐退色性に優れ微小粒径の顔料を含む顔料複合重合体粒子を提供することにある。
【0008】第3に優れた分光特性を有し、耐光性、耐退色性に優れ顔料の分散性が向上された電子写真用トナーを提供することにある。
【0009】本発明のその他の目的として、凝集像の観察が容易で安定性に優れた免疫学的診断試薬用担体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は次の(1)〜(15)の技術手段によって達成される。
【0011】(1) 界面活性剤の存在下に顔料を水相中に分散し少なくとも一種の疎水性単量体を含む単量体成分を水溶性ラジカル重合開始剤により水系析出重合し得られる顔料複合重合体粒子において、該重合開始剤の濃度をa(mol/l)、該単量体の濃度をb(mol/l)としたとき次の2つの条件を満足し、該顔料はカルシウム塩を0〜0.1%有することを特徴とする顔料複合重合体粒子。
【0012】0.001≦a≦0.030.004≦a/b≦0.10ここでいうカルシウム塩とはロジンカルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等のものをいう。
【0013】(2) 上記カルシウム塩を0〜0.1%有する顔料が水相中で、該顔料の一次粒子径の10倍以下の粒径を有する分散凝集粒子であることを特徴とする(1)項に記載の顔料複合重合体粒子。
【0014】(3) 上記カルシウム塩がロジンカルシウム塩であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の顔料複合重合体粒子。
【0015】(4) 上記顔料がキナクリドン誘導体であることを特徴とする(1),(2)又は(3)項に記載の顔料複合重合体粒子。
【0016】(5) 上記カルシウム塩のカチオンを0〜0.1%有する顔料が界面活性剤の存在下に分散された水系内において、少なくとも一種の疎水性単量体と少なくとも一種の親水性単量体を含み、該疎水性単量体が約99.9乃至約85重量パーセントで且つ親水性単量体が約0.1乃至約15重量パーセントである単量体成分を水系析出重合することにより得られ、上記界面活性剤が臨界ミセル形成濃度(CMC)からその3倍濃度以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の顔料複合重合体粒子。
【0017】(6) 上記親水性単量体が該顔料複合重合体粒子の粒子表面にイオン性解離基を導入し得る単量体であることを特徴とする(1)項に記載の顔料複合重合体粒子。
【0018】(7) 上記イオン性解離基を含む親水性単量体が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基を含む単量体から選択される少なくとも一種の親水性単量体単位であることを特徴とする(6)項に記載の顔料複合重合体粒子。
【0019】(8) 請求項1〜7記載の顔料複合重合体粒子の製造方法であって、カルシウム塩を0〜0.1%有する顔料を、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度で水系分散する顔料分散工程と、前記顔料分散液を臨界ミセル形成濃度の0.8倍から、その3倍濃度以下まで希釈し希釈分散液を調整する希釈工程と、前記希釈顔料分散液に単量体と重合開始剤を添加し水系析出重合を行う重合工程とを含むことを特徴とする顔料複合重合体粒子の製造方法。
【0020】(9) 上記カルシウム塩がロジンカルシウム塩であることを特徴とする(8)項に記載の顔料複合重合体粒子製造方法。
【0021】(10) (1)〜(7)項のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を複数個会合、融着させて得られることを特徴とする電子写真用トナー。
【0022】(11)前記顔料複合重合体粒子のイオン解離性基を含む単量体単位の一部又は全部が解離されたことを特徴とする(10)項に記載の電子写真用トナー。
【0023】(12) (10)〜(11)項のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法において、顔料複合重合体粒子分散液に該分散液に対し臨界凝集濃度以上の電解質を添加する凝集工程と、更に水に無限溶解する有機溶媒を添加する工程と、該分散液を重合体粒子のガラス転移温度の−5℃から+50℃の温度で加熱融着する工程とからなる電子写真用トナーの製造方法。
【0024】(13) (1)〜(7)項のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を用いることを特徴とする生理活性物質固定用担体。
【0025】(14) (1)〜(7)項のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を複数個会合、融着させた非球形粒子を用いることを特徴とする生理活性物質固定用担体。
【0026】(15)生理活性物質が抗原、抗体、レセプター、デオキシリボ核酸、リボ核酸から選択される少なくとも一種であることを特徴とする(13)項又は(14)項のいずれかに記載の生理活性物質固定用担体。
【0027】本発明の非球形トナー粒子の形成プロセスは、図1に模式的に示される。
【0028】(1)先ず顔料は界面活性剤の存在下の水相中に分散される。
【0029】(2)そして重合する単量体は上記顔料分散液中に小さな液滴の形で乳化される。
【0030】(3)そして親水性ラジカル重合開始剤が水系析出重合の化学変化を起こすように添加される。その化学変化の結果として、各々顔料粒子を含む顔料複合重合体粒子が形成される。
【0031】(4)このようにして得られた顔料複合重合他粒子は電解溶液や溶媒の添加によって幾つかの顔料分有粒子で構成される凝集体粒子を形成する。
【0032】(5)凝集された顔料含有複合重合体粒子はガラス転位温度Tg近傍で溶融されることにより、非球形粒子が形成される。
【0033】上記本発明の目的を達成する為に以下の方法によることができる。
【0034】この為には、重合体粒子自体十分な分散安定性を有しており、且つ着色剤である顔料を複合化させる工程で安定であること、また電子写真用トナーとしては粒子の会合工程で不必要な凝集を誘発しないことが必要であり、免疫学的診断試薬用担体としては免疫学的活性種例えば抗原、抗体等の感作時に安定である必要があり、また長期保存していても分散状態が変化しない貯蔵安定性が十分ある必要がある。
【0035】これらの目的を達成する為に、本発明者らは顔料を臨界ミセル形成濃度(以下CMCと略記する。)以上の界面活性剤の存在下に、水相中で一定粒径以下に分散を行った後これをCMC以下に希釈を行い単量体を添加し、水系析出重合を行い得られる顔料複合重合体粒子を用いることを見いだした。またこれらを電子写真用トナーとして用いる際には、顔料複合重合体粒子分散液を臨界凝集濃度以上の電解質を添加し該粒子を会合させ、更に水に無限溶解する有機溶媒を添加し重合体粒子のガラス転移温度の−10℃以下から+50℃以上の温度範囲で加熱融着することで、任意の粒径を有し且つ粒度分布が狭く、更に粒子形状の制御が容易な方法を見いだした。
【0036】即ち、界面活性剤の存在下に顔料を水相中に分散し少なくとも一種の疎水性単量体を含む単量体成分を水溶性ラジカル重合開始剤により水系析出重合し得られる顔料複合重合体粒子において、該顔料にはカルシウム塩を0〜0.1%有することを特徴とする。特に本発明においてはロジン塩を使用するため、カルシウム塩はロジンのカルシウム塩に由来する。
【0037】一般に市販の顔料には、分散安定性、着色性を付与する為に各種添加剤が添加される場合がある。特にマゼンタ顔料として一般に用いられるキナクリドン誘導体顔料は、上記目的の為に添加剤としてロジン塩が添加されることが多々あることが知られている。これは塗料、印刷インキ等の着色剤として用いる場合、バインダーや溶剤中での分散性を向上し、その結果として着色性の向上する目的で顔料に対し数パーセントから十数パーセント添加されている。特に無色のロジンカルシウムがこの目的に用いられており、顔料合成時にロジンの溶液で顔料中に添加され、更にこのロジンをカルシウム塩に転化し顔料表面に存在させる処理を行っていることが知られている((社)色材協会編色材光学ハンドブック(朝倉書店1989.11.25発行)に所載)。
【0038】ロジン塩処理された顔料は、塗料、印刷インク等にする場合、バインダー溶液又は溶剤中での分散性が向上することは、当該分野では公知の事実であるが、本発明においては水系での分散性を著しく悪化させる傾向にあり、顔料を所望の粒径にする為に多大のエネルギーを必要とする。
【0039】ロジンカルシウム塩は、水難溶性塩ではあるがアルカリ状態では易溶であり溶解すると、当然、系内に遊離カルシウムイオンが存在することになる。特に本発明に係る顔料を粒子内に複合化させる水系析出重合は、基本的に乳化重合に近似した重合機構を取ると推察されている。粒子がアニオン性の場合、何らかの原因で重合中に遊離のカルシウムイオンが生成すると、特に重合転化率が低い重合初期過程では粒子の分散安定性が悪いため凝集を起こし易いことが知られている。またカルシウムイオンの様に2価のカチオンは、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の1価の電解質に対し重合体粒子の分散安定性の阻害性は数十倍大きいことが知られており凝集粒子を生成しやすい。
【0040】また電子写真用トナーとして利用する際、複数個の顔料複合重合体粒子を会合、融着する必要があるが、この反応を安定にし且つ生成する粒子の粒度分布を狭くする為に、顔料複合重合体粒子表面のイオン解離性基を必要に応じて一部又は全部解離状態にすることが望ましいが、例えば解離性基がカルボン酸、スルホン酸、リン酸等の場合、アルカリを添加することで解離状態とすることができる。この工程でアルカリ添加により、顔料に添加されたロジン塩、例えばロジンカルシウムからカルシウムイオンが遊離し、凝集粒子を生成しやすくなる。
【0041】当然のことながら、免疫学的診断試薬用担体として用いる場合にも、必要に応じて顔料複合重合体粒子を各種pHの緩衝液で緩衝する必要がある。この際、生成した遊離のカルシウムイオンは顔料複合重合体粒子分散液の分散安定性を阻害する結果となる。
【0042】上記欠点を回避する為に顔料中に添加されたロジンの2価のカチオン、特にカルシウムイオンを極力除去する必要がある。本発明でロジンの2価のカチオンを0〜0.1%有するとは、前記記載の如く顔料複合重合体粒子分散液の分散安定性を実質的に阻害しないということである。これらの量はロジン塩(ロジンカルシウム)から生成されるイオンが顔料複合粒子分散液を凝集させる限界の量、所謂臨界凝集濃度以下であれば問題は無い。但し、会合の反応制御性からはロジン塩の存在は少ないほど好ましいことは言うまでもない。
【0043】顔料中からのロジン塩の除去方法は、ロジン塩を溶解する溶媒中に顔料を分散し、十分ロジン塩を溶解させた後、濾過洗浄を繰り返し乾燥させることにより得ることが可能である。また市販のロジン塩を含まない顔料を用いることも可能である。具体的には、ロジン塩がロジンカルシウムの場合、アルカリ水溶液又は熱トルエン中に該顔料を分散し、濾過を行った後同一の液で洗浄濾過を繰り返し、熱トルエンの場合はそのまま乾燥することで、アルカリの場合は洗浄後必要に応じて水洗、透析、限外濾過等の処理によりアルカリを除去した後乾燥することでロジンカルシウムを実質的に除去した顔料が得られる。
【0044】本発明で用いられる顔料は、特にマゼンタ顔料であり、更にキナクリドン誘導体顔料が挙げられる。キナクリドン誘導体顔料としては、次のようなカラーインデックスCIのピグメントが挙げられる。
【0045】
CI ピグメント バイオレット 19CI 〃 レッド 202CI 〃 〃 206CI 〃 〃 207CI 〃 〃 〃CI 〃 〃 209CI 〃 〃 122これらの顔料は常法に従い、CMC以上の界面活性剤存在下水相中で分散される。分散方法は特に限定されないが、例えば超音波分散法、サンドスターラー分散法、加圧分散法等が挙げられる。これらは必要に応じて適宜選択される。
【0046】ここに、CMC(臨界ミセル形成濃度)について説明すると、一般に界面活性剤は水溶液中で極めて濃度が低い場合イオン分散或いは分子分散しているが、濃度が増してある飽和濃度に達すると数分子(イオン)から百数十分子(イオン)が急激に会合し水溶液中で安定なミセルを形成する。この飽和濃度を臨界ミセル形成濃度(critical micelle concentration:CMC)と呼ぶ。この測定は異なる界面活性剤の水溶液を用意し、この表面張力を測定し表面張力の低下が無くなった濃度をCMCとする方法で容易に決定することが可能である。
【0047】本発明における界面活性剤はアニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性活性剤を問わずCMCを有する低分子界面活性剤であり、高分子界面活性剤は含まない。高分子界面活性剤はミセルを形成せず、高分子界面活性剤を乳化重合に用いた場合、非球形化反応後も粒子表面に吸着し、洗浄が非常に困難であり又高分子の構造によりグラフト重合を起し易くこの場合には、高分子界面活性剤を除去する事はできない。粒子表面に残存した高分子界面活性剤はトナーの帯電特性に影響を与え、特に湿度の影響により高湿度下でトナー帯電量の低下をもたらす。
【0048】界面活性剤の臨界ミセル形成濃度以下では顔料の水相への微分散は困難である。又乳化重合においてはCMC以下ではその反応速度は極端に低下し重合が完結しない。一方CMCの3倍濃度以上の界面活性剤濃度で重合を行った場合、顔料と重合体粒子の相分離が起こり安定して顔料複合重合体粒子が生成しない。
【0049】界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の中から適宜選択される。例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。好ましくはドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0050】本発明に用いられる界面活性剤の量はCMCに対し0.8乃至3倍濃度で用いられる。この界面活性剤は顔料分散時に全てを添加してもよいし、また分散時の発泡による操作性の低下を防止する意味からその一部を重合時に添加してもよい。
【0051】この様にして分散された顔料分散粒子は、顔料粒子の一次粒子径の10倍以下であることが好ましい。顔料粒子の分散粒径が一次粒子の10倍以上の大きさになると、本発明に係る重合が進み難くなり、凝集塊の生成等の不望の現象を起こし安定して顔料複合重合体粒子の生成が困難となる。好ましくは顔料の分散粒径としては、平均粒度で一次粒子径の5倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
【0052】本発明に係る単量体は疎水性単量体が約99.9乃至約85重量パーセント及び親水性単量体が約0.1乃至約15重量パーセントの範囲で適宜選択される。
【0053】本発明でいう疎水性単量体とは水に対する溶解度が室温において2.5%以下のものを指す。
【0054】更に本発明の顔料複合重合体粒子の製造に当たっては、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度で顔料を分散する分散工程、顔料分散液中の顔料を重合時の濃度に調整し且つ界面活性剤を重合時の所望の濃度に調整する調整工程、更にこの濃度調整した分散液に所定量の単量体及び重合開始剤を添加し水系析出重合を行う重合工程を経て得られる。
【0055】該重合系における重合開始剤は、水溶性ラジカル開始剤が用いられる。水溶性ラジカル重合開始剤の一例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4-アゾビス-4-シアノ吉草酸及びその塩、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩等の水溶性アゾ系化合物、過酸化水素、1-パーオキシマレイン酸等の水溶性過酸化物が挙げられる。これらは単独又は還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として用いられる。還元剤としては、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット等が挙げられる。レドックス系重合開始剤は、重合活性が高く低温での重合が可能であり重合時間を短縮することができる。一般的には、過硫酸塩を用いることが好ましい。
【0056】上記重合開始剤は、添加量として0.001mol/lから0.03mol/lの範囲で選択される。更に好ましくは0.003mol/lから0.025mol/lの範囲で用いられる。重合開始剤の添加濃度をa(mol/l)とし単量体の添加量をb(mol/l)としたとき『a/b』の値が0.004から0.10の範囲にあることが好ましい。重合開始剤の添加濃度が過少の場合、ラジカル生成量が少なくなる為重合反応が完了しにくく、また過大である場合には重合反応を制御することが困難となり、低分子量のオリゴマー生成比が大きくなり場合によっては顔料と重合体の相分離を起こすので好ましくない。
【0057】これら重合体の分子量及び分子量分布は目的に応じて種々の範囲で用いることが可能であるが、電子写真用トナーとして用いる場合には、重量平均分子量(Mwと略記する)は0.5万乃至50万、好ましくは1万乃至30万が用いられる。分子量分布の指標としては、一般に重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mnと略記する)が1.5乃至20、好ましくは1.8乃至15である。
【0058】分子量及び分子量分布の制御には、重合開始剤添加量及び重合反応系への連鎖移動剤の添加により任意に達成される。連鎖移動剤としては、一般的にチオール化合物、例えばドデカンチオール等が用いられるが、用いる単量体に対する連鎖移動定数により適宜選択することが可能である。
【0059】本発明で用いる疎水性単量体の具体例としては、スチレン誘導体、例えばスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、o-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、o-エトキシスチレン、p-ブトキシスチレン、o-ブトキシスチレン、p-クロルスチレン、o-クロルスチレン、m-クロルスチレン、2,4-ジクロルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-クロルメチルスチレン、m-クロルメチルスチレン、o-クロルメチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。
【0060】(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-ter-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-n-ドデシル等が挙げられる。アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル系単量体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体、ジエン類例えばブタジエン、イソブレン、クロロブレン、ジメチルブタジエン、ハロゲン化ビニル類例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン、トリフルオロエチレン等、ビニルエステル類例えば酢酸ビニル等、オレフィン類例えばエチレン、プロピレン等が挙げられる。更に架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0061】本発明の重合体はイオン解離性基を含む親水性単量体を含むことが好ましい。これらはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム塩基を含むものが挙げられる。これらは重合体に対し、0.1乃至15重量パーセント含有されることが好ましい。
【0062】これらのモノマーの例として例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基を含むビニル単量体、スチレンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を含むビニル単量体、アミノスチレン、(メタ)アクリル酸アミノアルキル、(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル等のアミノ基を含むビニル単量体、更にビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩基が挙げられる。またアミノ基、アンモニウム塩基を含むビニル単量体は、その前駆体である活性ハロゲン基をもつビニル単量体例えばビニルベンジルクロリドの様な、クロルメチル基を有するビニル単量体を予め重合し、これにアミノ化合物を反応させて得ることも可能である。
【0063】電子写真用トナーとして用いる場合、本発明の顔料複合重合体粒子を複数個会合し更にこの会合粒子を重合体のTgの−10℃から+50℃の範囲の温度で粒子間を加熱融着させることが必要である。この様な方法は、例えば特開昭60-220358号に開示された様に、乳化重合で生成した重合体粒子及び顔料(着色剤)混合分散液を塩析剤より塩析し、トナーとする方法がある。しかしながらこの方法は、所謂急速凝集と称せられる方法で粒径の制御が困難で且つ粒度分布が非常に広くなり易いことが知られている。この為、凝集粒子生成後何らかの方法を用い粒度分布を狭くする工程が必須であり、この為作業性に著しく欠けるという欠点を有している。
【0064】一方本発明の方法は、粒径、粒度分布の制御性に優れ粒子生成後は濾過工程、洗浄工程、乾燥工程を経るだけで電子写真用トナーとして十分使用に耐えるものとして利用できるという優れた方法である。本発明の顔料複合重合体粒子を用いて複数個会合し、更にこの会合粒子を重合体のTg近傍で加熱することにより、会合粒子の一次粒子間融着を行い電子写真用トナーとする方法である。この方法は、特願平5-115572号に細述されている。
【0065】この方法は顔料複合重合体粒子分散液に対し■ 水溶性金属塩又はその水溶液を添加する工程■ 水に対して無限溶解する有機溶媒を添加する工程■ 重合体のTgに対し−10℃から+50℃の範囲の温度で粒子間を加熱融着する工程からなる。
【0066】水溶性金属塩又はその水溶液として用いられる金属塩の具体例としては1価の金属塩として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等、2価の金属塩としては塩化カルシウム、塩化亜鉛等、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム等を用いることが可能である。但し本発明はこれに限定されるものでは無い。この金属塩は顔料複合重合体粒子分散液に対し、顔料複合重合体粒子が凝集を起こし始める最低濃度である臨界凝集濃度以上が添加される。臨界凝集濃度の決定は当該業者においては容易であるが、例えば目的とする顔料複合重合体粒子分散液に対し、使用する金属塩を各種濃度で添加し凝集粒子の生成する最低濃度を求める方法がある。
【0067】また同様に目的とする顔料複合重合体粒子分散液に対し、使用する金属塩を各種濃度で添加しこのゼータ電位を測定し、ゼータ電位が低下しだす塩濃度を臨界凝集濃度とする方法もある。
【0068】更に、より粒径及び粒度分布の制御性を向上させる為に、顔料複合重合体粒子のイオン性解離基の一部又は全部を解離状態にし、同様の操作を行うことで達成できる。
【0069】この金属塩を混合した凝集状態の顔料複合重合体粒子分散液に対し、水に無限溶解する有機溶媒が添加される。その作用機序は明らかではないが、上記有機溶媒を添加することで安定した粒度分布の狭い会合粒子が生成する。この水に無限溶解する有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。好ましくはiso-プロピルアルコールが用いられる。また本発明に係る水に無限溶解する有機溶媒の添加量は、顔料複合重合体粒子分散液に対し5容量パーセントから300容量パーセントの範囲から選択される。この状態で、撹拌下顔料複合重合体粒子の重合体のガラス転移温度(Tg)に対し−10℃乃至+50℃の温度条件で一定時間加熱することでトナー粒子を合成することが可能である。
【0070】この方法は、金属塩、水に溶解する有機溶媒の添加量、加熱温度、加熱時間等を適宜変化させることで平均粒径、粒度分布、粒子形状を変化させることが可能である。
【0071】加熱温度は重合体のTgに対し−10℃乃至+50℃の範囲、好ましくはTgに対し−5℃乃至+40℃の範囲で適宜選択される。また一般的に金属塩の添加量を増加させると平均粒径は大きくなる傾向にあり、有機溶媒の添加量を増加した場合も大きくなる傾向にあり、更に粒子形状は真球に近い形になる傾向にある。また加熱温度を上昇させると、粒径の成長速度が早くなると共に粒子形状は真球に近い形になる傾向にある。また加熱温度の上昇は、粒子間の融着を進行させ機械的強度が増す傾向にある。これら条件を適宜選択することで所望の平均粒径、粒度分布、粒子形状の粒子を得ることが可能である。
【0072】この粒子を電子写真用トナーとして用いる場合、その粒子形状は問題となる。特に真球粒子はクリーニング性に問題があると言われている。粒子の形状は、非球形化度として表すことができる非球形化度は以下の式により定義される。即ち非球形化度=(粒子のBET比表面積)/(粒子の平均粒径を真球として換算した時の表面積)で示される。非球形化度が1の場合真球を表し、この数値が大きい程非球形粒子となる。電子写真用トナーとしては、非球形化度が1.1〜15まで用いることが可能である。更に好ましくは1.1〜10である。あまり球形化度が小さく真球の場合、電子写真プロセスにおけるクリーニング工程に対する適性が少なく用いにくい。一方あまり非球形化度が大きくなると現像器で撹拌されることで粒子の破砕、微粉の生成、更に選択現像による画質低下が懸念される。
【0073】本発明の非球形粒子には必要に応じて、定着性改良剤、帯電制御剤等を組み込むことが可能である。これらは予め水相へ微粒子として分散した水性分散液とし、必要に応じて非球形反応時に本発明の顔料複合重合体粒子分散液に混和し、特願平5-115572号に記載の方法に従い合成することが可能である。
【0074】定着性改良剤としては、公知のものが用いられる。一般的にはポリオレフィン系ワックスが用いられる。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、酸化処理されたポリエチレン及びポリプロピレン、等が挙げられる。
【0075】これらは常法に従い、溶融した後分散剤存在下水中に分散され、必要に応じてアルカリ変性されたエマルジョンの形で用いられる。これらは商品名『HITEC』(東邦化学工業株式会社)の名称で市販されているポリエチレン又はポリプロピレンワックスエマルジョンを用いることも可能である。
【0076】更に定着性改良剤の本発明の非球形粒子への導入は、■ キナクリドン誘導体と同時に水相中に分散を行い、重合を行うことで複合粒子を作成しこの複合粒子を非球形化反応で非球形粒子とする方法。
【0077】■ キナクリドン誘導体を含む重合体粒子に対し、定着性改良剤を有機溶媒に溶解した溶液を、シード重合と同様に、粒子内に膨潤吸収させ、この粒子を会合反応に用いる方法。
【0078】■ キナクリドン誘導体を含む重合体粒子を非球形化反応を用い非球形粒子を調整する際に、ワックスエマルジョンとして同時に会合させる方法。
【0079】が挙げられる。これらの方法は、定着性改良剤を非球形粒子に組み込む方法として好ましいが、より好ましくは■及び■の方法が、容易に且つ必要量の定着性改良剤を非球形粒子内に導入可能なものとして挙げられる。定着性改良剤はバインダーである重合体に対し約0.1乃至20重量パーセント、好ましくは約0.5乃至15重量パーセント含有することが可能である。
【0080】本発明の非球形粒子の帯電制御は、顔料複合重合体粒子表面に存在するイオン解離性基により付与される。しかしながら必要に応じて顔料複合重合体粒子或いは非球形粒子内に帯電制御を含有させることでもその目的を達成することが可能である。
【0081】帯電制御剤は例えばプラス帯電性としてニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシ化アミン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等、マイナス帯電性としては電子受容性の金属錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等が挙げられる。更にクロムイエロー、アニリンブルー及びアゾ系含金属染料等が挙げられる。これらは前記定着性改良剤と同様の方法で非球形粒子に組み込むことが可能である。
【0082】これら本発明の非球形粒子はそのまま単独でも電子写真用トナーとして用いられるが、トナーとしての特性を向上させる為に、種々の添加剤を添加することができる。例えば添加剤の具体例として流動性付与剤が挙げられる。流動性付与剤としてはシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム及びこれらの疎水化処理物の微粒子、高分子ラテックスから由来する疎水性単量体単位から構成される有機高分子微粒子が挙げられる。流動性付与剤はトナー100重量部に対し0.01乃至20重量部添加されることが好ましく、更に0.1乃至10重量部添加されることが好ましい。
【0083】別の添加剤としては、ひとつの具体例として滑剤も挙げられる。滑剤としては、ステアリン酸のカドミウム、バリウム、ニッケル、コバルト、ストロンチュウム、銅、マグネシウム、カルシウム等、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、銅、鉛、マグネシウム塩、パルミチン酸の亜鉛、マンガン、コバルト、銅、マグネシウム、ケイ素、カルシウム塩、リノール酸の亜鉛、コバルト、カルシウム塩、リシノール酸の亜鉛、カドミウム塩、カプリル酸の鉛塩、カプロン酸の鉛塩等の高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。これらも適宜添加することができる。
【0084】(生理活性物質固定用担体)本発明のキナクリドン誘導体顔料複合重合体粒子は、生理活性物質の担体とし用い免疫診断試薬として有用に用いることが可能である。生理活性物質としては、酸素、抗原、抗体、レセプター、デオキシリボ核酸、リボ核酸等が挙げられる。但しデオキシリボ核酸、リボ核酸の場合、1本鎖デオキシリボ核酸、1本鎖リボ核酸を固定しこの相補的に結合する1本鎖デオキシリボ核酸、1本鎖リボ核酸を検出することができる。これらは必要に応じて本発明のキナクリドン誘導体顔料複合重合体粒子表面に公知の方法で固定化することで用いられる。特に本発明のキナクリドン誘導体顔料複合重合体粒子はマゼンタに着色され、従来からのラテックス試薬の白色や一部の染料染色ラテックス試薬と比較し、該試薬を希釈した場合でもよりはっきりとした凝集像を観察することが可能であるという長所を有している。
【0085】生理活性物質の固定化は、物理吸着法、化学結合法が挙げられる。物理吸着法の場合、本発明のキナクリドン誘導体顔料複合重合体粒子は疎水性表面、特にスチレン単位を表面に有することにより安定した吸着能を有する。化学結合法を用いる場合、生理活性物質中のカルボキシル基、アミノ基、SH基等の官能基を用い、公知の2官能性試薬と反応する官能基、例えばアミノ基、カルボキシル基、SH基、エポキシ基等を導入することで達成できる。
【0086】一方本発明の非球形粒子にも同様に用いることが可能である。特に非球形粒子は、表面積を自由に変化させることが可能であり、真球に比較し大きな表面積を取ることが可能であり生理活性物質の固定化量を多くし、反応速度を挙げることができるという長所を有している。
【0087】本発明のキナクリドン誘導体顔料複合重合体粒子を用いる場合の平均粒径は0.1μm乃至1.5μmが用いられる。本発明の非球形粒子を用いる場合一次粒子の2倍乃至10倍、0.35μm乃至3μmが好ましい。
【0088】
【実施例】
(実施例1)マゼンタ顔料C.I.、ピグメントレッド122(商品名:KET RED 309 大日本インキ化学工業(株))を熱トルエンで洗浄を繰り返しロジン塩を除去した後に乾燥を行い蛍光X線分析によりカルシウムが検出されない事を確認した後、エタノール中に顔料を再分散しロジンを添加溶解した。ロジン添加量は顔料に対し10,8,6,4,2,1.5,1.25,1,0.75,0.5,0.25及び未添加とした。この分散液に水酸化カルシウム水溶液を添加し、ロジン-カルシウム塩として顔料表面を処理した後、濾過を行い更にエタノールで洗浄を行い、乾燥した。この顔料を解砕し、各々顔料(1)〜(11)とした。これらの顔料は蛍光X線分析でカルシウム量を測定した。
【0089】更に蒸留水250mlにドデシル硫酸ナトリウム3.6335gを溶解した界面活性剤水溶液を用意し、顔料(1)〜(11)を26.67g添加し、超音波ホモジナイザーModel UT-150T(株)日本精機製作所製)を用い顔料分散液を撹拌しつつ出力300μAで1時間分散を行った後、加圧型分散機MINI-LAB Type 8.30H(ラーニー(RANNIE)社製)を用い600Barの圧力で平均粒径(d50)0.28μmになるまで分散を行った。尚、顔料分散液の粒径測定にはレーザー回折粒度測定装置SALD-1100(島津製作所製)を用いた。
【0090】各顔料分散液15ml、ドデシル硫酸ナトリウム1.2g、脱気イオン交換蒸留水235ml、スチレン25.33g、アクリル酸-n-ブチル4.75g、メタクリル酸1.58g、tert-ドデシルメルカプタン0.2gを撹拌装置、冷却管、温度センサ、窒素導入管を装着した500mlセパラブルフラスコに入れ、窒素気流下撹拌速度500rpmで撹拌しつつフラスコ内温を70℃まで昇温した。内温を70℃に維持し、過硫酸カリウム0.76gを脱気イオン交換蒸留水50mlに溶解した重合開始剤水溶液を添加し、このまま7時間重合を行った。
【0091】その後、重合過程で生じた凝集物を分取し乾燥の後測定し凝集物生成率を出した。
【0092】次いで各顔料分散液を用いた乳剤重合液150mlを5N-水酸化ナトリウム水溶液を用い、pH=7に調節した後、撹拌装置、冷却管、温度センサを装着した500mlセパラブルフラスコに入れ、室温下250rpmで撹拌しつつ、塩化カリウム11.86gをイオン交換蒸留水40mlに溶解した塩化カリウム水溶液、イソプロパノール20mlを加え、内温を80℃に昇温し、6時間反応を行った後、レーザー回折粒度測定装置SALD-1100を用い粒径、粒度分布を測定した。
【0093】結果を次の表1に示す。
【0094】
【表1】


【0095】以上の結果から、顔料処理のロジン-カルシウムに由来するカルシウムが0.1%を越えると、乳化重合に対しては重合過程で大量の凝集物を生成し、又非球形化反応においては、粒子径の制御が全くできず、凝集塊が生成する。一方カルシウム量を0.1%以下に抑制する事で乳化重合、非球形化反応とも安定である事がわかる。
【0096】(実施例2)
(ロジン塩の除去)ロジン塩(ロジンカルシウム)を含むマゼンタ顔料(ジメチルキナクリドン:C.I.ピグメントレッド122,商品名:KET RED 309「大日本インキ化学工業(株)より入手」)100gを5N-水酸化ナトリウム水溶液中に分散し良く撹拌を行った後、減圧濾過により顔料を分取した。さらに同様の操作を2回繰り返し、最終的に純粋に分散し洗浄を行い減圧濾過を繰り返し濾過のpHが中性になるまで洗浄を行った後、減圧乾燥し、さらに蛍光X線分析装置を用い、カルシウムが0〜0.1%の極僅かしか検出されないことを確認した。
【0097】同様に、洗浄媒体を熱トルエンとし、同様に数回洗浄を繰り返し減圧濾過液同様に蛍光X線分析装置を用い、カルシウムが0〜0.1%の極僅かしか検出されないことを確認した。
【0098】また顔料をKET RED 309からFuji Fast Red 9900RM(ジメチルキナクリドン:富士色素(株)より入手)を同様に5N-水酸化ナトリウム及び熱トルエンで処理し、カルシウムが0〜0.1%と極僅かしか存在しないことを確認した。
【0099】更にロジン塩が添加されていない市販の顔料として、KET RED 316(ジメチルキナクリドン:C.I.ピグメントレッド122,[大日本インキ化学工業(株)より入手])及びPINK E02 Toner Grade(ジメチルキナクリドン:C.I.ピグメントレッド122,[ヘキストジャパン(株)より入手])を用意した。これら本発明に係るロジン塩のカルシウムを極僅かしか含まないようにした顔料を各々M−1〜6とした。更に比較のロジン塩を含む顔料として市販のままのKET RED 309(ロジンカルシウムのカルシウム%は0.79%)及びFuji Fast Red 9900RM(ロジンカルシウムのカルシウム%は1.32%)をM−7,8とした。
【0100】(顔料の分散)蒸留水250mlにドデシル硫酸ナトリウム3.6335gを溶解し、更に上記本発明の顔料M−1〜6及び比較顔料M−7,8を26.67g添加し超音波ホモジナイザーModel US-150T((株)日本精機製作所製)を用い顔料分散液を撹拌しつつ出力300μAで1時間分散を行った後、分散液をレーザー回折粒度測定装置SALD-1100(島津製作所製)を用い粒径及び粒度分布を測定した。結果を表2に示す。
【0101】ここで測定した粒径の50%累積値の径をd50とし、これを分母にし、全体の標準偏差を割ったものが表1,表2のCV(変動係数)である。
【0102】
【表2】


【0103】上記結果より、ロジン塩を除去した顔料は水相中での分散性がロジン塩を含有するものに比較し良好であることが分かる。
【0104】更にM−7,8を加圧型分散機MINI-LAB Type 8, 30H(ラーニー(RANNIE)社製)を用い、600Barの圧力で1時間分散を行った。各々の分散液をM−7′,8′とし結果はM−7′が平均粒径0.28μm、標準偏差0.24μm、CV=0.86、M−8′が平均粒径0.26μm、標準偏差0.22μm、CV=0.85であった。
【0105】この様に、ロジンカルシウムを含む顔料の分散は殆ど含まない顔料に比較して多大のエネルギーを必要とすることが明らかである。
【0106】(顔料複合重合体粒子の合成)撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた500mlのセパラブルフラスコに脱気済みイオン交換蒸留水を235ml、ドデシル硫酸ナトリウム1.2g、分散液M−1〜8及びM−7′を15ml加え、更にスチレン25.33g、アクリル酸-n-ブチル4.75g、メタクリル酸1.58g、1-ドデシルメルカプタン0.2gを加え、窒素気流下500rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を70℃に昇温させた。内温が70℃になった時点で、過硫酸カリウム0.760gを脱気イオン交換蒸留水50mlに溶解した重合開始剤溶液を添加し、7時間重合させた後室温まで冷却した。この重合体粒子は、粒度分布測定装置ELS-800(大塚電子(株)製)を用い平均粒径、粒度分布を測定し更に乾燥後分子量及び分子量分布の測定を行った。また凝集物を濾過で分取し仕込みモノマー量から凝集物生成率を出した。ここでいう凝集物は乳化重合(広くは粒子を形成する重合法、例えば懸濁重合などを含む)の重合残渣を意味しており、重合過程で一個一個の粒子が形成されずに凝集体を生成してしまったものや重合装置の内壁や撹拌翼等に付着した重合体をいう。結果は表3に示す。
【0107】
【表3】


【0108】以上の結果より、本発明のロジン塩を実質的に除去した顔料を用いた重合は安定した分散性を示している。一方ロジン塩を含む比較顔料の内、分散条件を本発明の顔料と同一にしたものは凝集物の生成が多く全く実用に適さない。また分散条件を変化させて小粒径にしたものでも、本発明に比べて凝集物生成率が大きく重合安定性に欠けることが明らかである。
【0109】(非球形粒子の合成)
(非球形化反応)本発明の顔料複合重合体粒子分散液の分散安定性を低下する事で顔料重合体粒子は複数個会合した会合粒子を生成する。この時、重合体粒子表面の解離性基を一部または前部解離状態にする事で、粗大会合粒子の生成が抑制される。更にこの状態で水に無限溶化する溶媒を加えると、会合粒子の急速な凝集が抑制され、粒度分布の制御が可能となる。更に顔料複合重合体粒子のガラス転移温度以上で加熱する事で会合粒子内の顔料複合重合体粒子間が熱融着を起し、機械的強度が高く粒径、粒度分布が制御された非球形粒子を得る事ができる。
【0110】上記本発明の顔料複合重合体粒子分散液M−1〜7及び比較顔料複合重合体粒子分散液M−7′,8′を用いて非球形粒子を合成した。各々の分散液中の粒子表面にカルボン酸イオンを生成させる為に、5N-水酸化ナトリウム水溶液を用いpH=7に調節した。pH調節後粒度分布測定装置ELS-800(大塚電子(株)製)を用い平均粒径、粒度分布を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0111】
【表4】


【0112】但し、P−9及び10に関してはpH調節後の粒径が粒度分布測定装置ELS-800(大塚電子(株)製)の測定限界を超えていた為レーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100(島津製作所(株)製)を用い測定を行った。本発明の顔料複合重合体粒子分散液は当然pH調節前後で粒径の変化は無い。即ち十分分散安定性があることを示している。一方比較顔料複合重合体粒子分散液はpH調節により本来粒子表面にカルボン酸イオンが生成し、分散安定性が更に付与されるにも拘わらず、新たに約20μm付近に凝集粒子のピークが観察され結果として平均粒径が大きくなっている。
【0113】更にELS-800を用い電解質を塩化カリウムとし臨海凝集濃度を測定したところ、本発明の顔料複合重合体粒子分散液P−1〜6は、0.067mol/lであった。比較複合重合体粒子分散液P−9,10は0mol/lであった。この為P−1〜6及び9,10に対し電解質の最終濃度が0.6mol/lになるよう設定した。また比較顔料複合重合体粒子分散液P−9,10は併せて電解質を無添加のままの反応も行った。上記非球形粒子を本発明の非球形粒子NS-001〜006、比較非球形粒子001〜004とした。以下に非球形反応を記す。
【0114】500mlの撹拌装置、冷却管、温度センサー付き4頭セパラブルフラスコに上記pH調製済み顔料複合重合体粒子分散液150mlを入れ、室温下250rpmで撹拌する。ここに塩化カリウム11.86gを蒸留水に溶解した塩化カリウム水溶液を添加し、次いでイソプロパノール35mlを添加した。
【0115】この混合液を85℃まで昇温し、6時間反応を行い室温まで冷却した。この反応液をレーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100(島津製作所(株)製)を用い粒径、粒度分布の測定を行った。更に、非球形粒子を濾過後、蒸留水に懸濁分散後、1N-水酸化ナトリウム水溶液を用いpH=13まで調節しカルボン酸を完全解離状態にした後、洗浄を繰り返し電解質等の夾雑物を除去した後乾燥を行い粉体として取り出した。
【0116】この粉体のBET比表面積を測定しレーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100で測定した平均粒径から不定形化度を算出した。結果を以下の表5に示す。
【0117】
【表5】


【0118】以上表5により明らかな如く、本発明の非球形粒子は微粒子化が可能であり粒度分布も狭いものである。一方比較非球形粒子は粒径が大きく、また粒径を微粒化に限界があり更に微粒化使用とすると粒度分布が広くなり粒径、粒度分布の制御が困難であることが分かる。
【0119】(実施例3)本発明のマゼンタ顔料分散液M−6を用いて、界面活性剤の量及び重合開始剤の量を変化させて重合を行った。重合は撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた500mlのセパラブルフラスコに脱気済みイオン交換蒸留水を235ml、分散液M−1〜7′を15ml加え、ここにドデシル硫酸ナトリウムの添加量を変化させ添加溶解し、更にスチレン25.33g、アクリル酸-n-ブチル4.75g、メタクリル酸1.58g、t-ドデシルメルカプタン0.2gを加え、窒素気流下500rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を70℃に昇温させた。内温が70℃になった時点で、過硫酸カリウムを脱気イオン交換蒸留水50mlに溶解した重合開始剤溶液を添加し、7時間重合させた後室温まで冷却した。過硫酸カリウム添加量も変化させた。この重合体粒子は、粒度分布測定装置ELS-800(大塚電子(株)製)を用い平均粒径、粒度分布を測定し更に乾燥後分子量及び分子量分布の測定を行った。また凝集物を濾過で分取し仕込みモノマー量から凝集物生成率を出した。条件表及び結果は以下の表6に示す。
【0120】
【表6】


【0121】以上上記表6で明らかな如く、開始剤量、界面活性剤量、[開始剤濃度]/[モノマー濃度]比(=a/b)が本発明の範囲のP−11〜P−16は、安定した粒径、粒度を示し凝集物の生成も非常に少ない。更に生成重合体の分子量及び分子量分布も安定している。一方開始剤量、界面活性剤量、[開始剤濃度]/[モノマー濃度]比(=a/b)が本発明の範囲外であるP−17〜P−20はそれぞれ問題がある。a/bが本発明の範囲より小さいP−18は重合が完結しない。また界面活性剤の添加濃度の小さいP−19は凝集精製が大きく実用に耐えない。逆に界面活性剤の濃度が高いP−20は顔料と粒子が相分離している。更に重合開始剤濃度の高いP−17も顔料とポリマー粒子が相分離を起こしている。
【0122】(実施例4)比較の非球形粒子としてP−9のマゼンタ顔料複合重合体粒子をpH=6.5に調整した後、500mlの撹拌装置、冷却管、温度センサー付き4頭セパラブルフラスコに上記pH調製済み顔料複合重合体粒子分散液150mlを入れ、室温下250rpmで撹拌する。イソプロパノール35mlを添加した。この混合液を85℃まで昇温し、6時間反応を行い室温まで冷却した。この反応液をレーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100(島津製作所(株)製)を用い、粒径、粒度分布の測定を行った。更に、非球形粒子を濾過後、蒸留水に懸濁分散後、1N-水酸化ナトリウム水溶液を用いpH=13まで調節しカルボン酸を完全解離状態にした後、洗浄を繰り返し電解質等の夾雑物を除去した後乾燥を行い粉体として取り出した。
【0123】この粉体のBET比表面積を測定しレーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100で測定した平均粒径から不定形化度を算出した。この非球形粒子の平均粒径はd50=5.21μm、CV=0.91、非球形化度は4.51であった。ここに平均粒径d50とは等体積相当径として粒径を測定し、この50%累積値の径をd50とする。
【0124】前記実施例2の非球形粒子NS-001〜006を本発明のトナー(1)〜(6)とし上記非球形粒子を比較トナー(1)とし、平均粒径50μmのフェライト粒子にスチレン/メチルメタクリレート共重合体でコートしたキャリアとトナー濃度5%で混合し、異なる環境下で震盪を行い帯電量を測定した。
【0125】結果は以下の表7に示した。
【0126】
【表7】


【0127】以上の結果の如く、本発明のトナーの帯電量は環境により差が認められない安定したものであった。一方比較のトナーは環境による差が大きく不安定なものであることが分かる。
【0128】(実施例5)上記本発明のトナー(1)〜(6)及び比較トナー(1)にシリカ2重量パーセント、酸化チタン1重量パーセントの割合で添加混合し、このトナー5重量部にメタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MMA/St=7/3)により表面被覆した樹脂被覆フェライト粒子(平均粒径50ミクロン:キャリア)を95重量部とを混合し本発明の現像剤(1)〜(6)及び比較現像剤(1)を調整した。
【0129】上記現像剤を用い、熱ローラ定着器とクリーニングブレードを備えた電子写真複写機『U-Bix3032』(コニカ(株)製)によりコピー像を形成する実写テストを行い下記項目に関して評価を行った。
【0130】(1)解像度細線チャートのコピー画像を形成し、識別可能な細線の1mm当たりの本数で判定した。
【0131】(2)かぶり常温常湿環境下(温度20℃、相対湿度60%)で連続してコピー画像を形成し「サクラデンシトメータPDA-60」(コニカ(株)製)により白地部分の緑色光の反射濃度を測定し、当該反射濃度が0.02を越えた時点のコピー枚数でかぶりを判定した。
【0132】(3)オフセット発生温度定着ローラの設定温度を段階的に変化させコピー画像を形成し、ホットオフセットに起因するトナー汚れが発生した時点の定着ローラの設定温度を測定し、これを示した。
【0133】(4)トナーの着色度白色ラベルにトナーを単層に貼り付け、このトナー層を『サクラデンシトメータPDA-60』を用い緑色光の反射濃度を測定し、当該濃度が1.3以上を○、1.3以下を×とした。
【0134】(5)クリーニング性感光体表面を目視で観察し、クリーニング不良が発生した時点のコピー回数で評価した。
【0135】(6)粒径分布の変化体積平均粒径の1/3以下のトナーの個数%の推移により評価した。実写テストにおいて経時で粒度分布を測定し、スタート時、かぶり発生時、及び5万コピー時の体積平均粒径の1/3以下のトナーの個数%を示した。測定はレーザ回折粒度分布測定装置SALD-1100(島津製作所製)を用いた。
【0136】この粒径分布の変化によってキャリアとの混合によるトナーの破砕の度合いがわかる。
【0137】(7)透過率の測定膜厚50ミクロンの透明ポリエチレンテレフタレートシートに反射濃度で1.0になるよう本発明のトナーをのせホットプレートで溶融定着を行った後、分光光度計を用い透過率を測定した。
【0138】結果は以下の表8に示す。
【0139】
【表8】


【0140】以上の結果より本発明のマゼンタトナーは解像度、カブリ、反射濃度、クリーニング特性が良好であり、更にコピー時の粒径変化が非常に少ない安定した現像剤である。更に透明シート上に定着させた時の透過率も非常に高いことが分かる。一方の比較現像剤は本発明の現像剤に対しすべての面で劣り、更に透過率も低いことが分かる。
【0141】(実施例6)実施例1の顔料分散液M−6を用い実施例1の合成例でモノマーをスチレン95.5重量%、アクリル酸0.5%とした以外は全く同一の条件で重合を行いマゼンタ粒子を得た。これを電気泳動光散乱光度計を用いた粒度分布測定装置ELS-800(大塚電子(株)製)を用い平均粒径(d50)及び変動係数(CV)を測定した。結果はd50=0.21μm、CV=0.56であった。またこの顔料複合重合体粒子の塩化カリウムによる臨界凝集濃度は、0.045mol/lであった。またこの顔料複合重合体粒子分散液を用い実施例2に従い、塩化カリウムの添加量を0.06mol/lに変え85℃、3時間反応させた。この平均粒径はレーザー回折粒度分布測定装置SALD-1100(島津製作所(株)製)を用い測定しd50=0.83μm、CV=0.46であった。またこの粒子の非球形化度は5.61であった。この粒子を分画分子量1万のセルロース透析バックを用い透析を行い夾雑物を除去した後、限外濾過を行い固形分濃度5%に調節を行い、0.3Mリン酸塩緩衝液(含0.9%塩化ナトリウム)で緩衝を行った後、抗α-フェトプロテイン抗体(1gG分画)を添加し表面に物理吸着を行った。一方比較として、平均粒径d50=0.3μm、CV=0.63及びd50=0.85μm、CV=0.51のポリスチレンラテックスを同様に抗α-フェトプロテイン抗体(1gG分画)を感作させた。更に牛血清アルブミンで未吸着部分を吸着させた。
【0142】これを固形分濃度0.2%に0.3Mリン酸塩緩衝液(含0.9%塩化ナトリウム)で希釈しα-フェトプロテイン(AFP)用免疫診断薬とした。精製したヒトα-フェトプロテイン(ダコ社より入手)を不活性化ヒト血清を用いAFPの希釈系列を作成した。各AFP標準血清を25μlとα-フェトプロテイン(AFP)用免疫診断薬を25μlを分取し、マイクロプレート上で混和し、室温下1時間静置しその凝集像を観察した。凝集が確認できた陽性を(+)、確認できないものを(−)、判定できないものを(±)として表した。結果を表9に示す。
【0143】
【表9】


【0144】以上の結果の如く本発明の試薬は、検出感度が7.8ng/mlと鋭敏であり、また抗体の高濃度領域においてもプロゾーン現象は認められない。また凝集像ははっきりとして判定がしやすく、凝集像判定が可能になるのはすべての領域で30分以内と非常に早い速度であり優れた診断試薬である。
【0145】一方比較試薬の検出感度は15.6ng/mlと低く、また比較試薬(2)においてはAFP1000ng/mlでプロゾーン現象が現れており診断試薬として問題がある。また凝集像判定までの時間はほぼ1時間、低濃度領域では1時間を越えるものもあり、反応速度はかなり遅い。
【0146】
【発明の効果】本発明により小粒径で粒度分布が充分狭く分散性が高く、従って画像の透明性の高い顔料複合重合体粒子が得られ、それを電子写真トナーの要素として構成さすことにより鮮鋭な色彩と耐久性の高い画像を得ることができるようになり、更に、該粒子を診断試薬担体としての生理活性物質固定用担体の構成要素とさせることにより抗原抗体の感作時に安定し長時間保存に堪える貯蔵安定性のあるものにすることができ、更に、製造に当たっては粒子形状の制御が容易で十分安定した方法が確立できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】非球形トナー粒子形成の模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 界面活性剤の存在下に顔料を水相中に分散し少なくとも一種の疎水性単量体を含む単量体成分を水溶性ラジカル重合開始剤により水系析出重合し得られる顔料複合重合体粒子において、該重合開始剤の濃度をa(mol/l)、該単量体の濃度をb(mol/l)としたとき次の2つの条件を満足し、該顔料はカルシウム塩を0〜0.1%有することを特徴とする顔料複合重合体粒子。
0.001≦a≦0.030.004≦a/b≦0.10
【請求項2】 上記カルシウム塩を0〜0.1%有する顔料が水相中で、該顔料の一次粒子径の10倍以下の粒径を有する分散凝集粒子であることを特徴とする請求項1に記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項3】 上記カルシウム塩がロジンカルシウム塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項4】 上記顔料がキナクリドン誘導体であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項5】 上記カルシウム塩のカチオンを0〜0.1%有する顔料が界面活性剤の存在下に分散された水系内において、少なくとも一種の疎水性単量体と少なくとも一種の親水性単量体を含み、該疎水性単量体が約99.9乃至約85重量パーセントで且つ親水性単量体が約0.1乃至約15重量パーセントである単量体成分を水系析出重合することにより得られ、上記界面活性剤が臨界ミセル形成濃度(CMC)からその3倍濃度以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項6】 上記親水性単量体が該顔料複合重合体粒子の粒子表面にイオン性解離基を導入し得る単量体であることを特徴とする請求項1に記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項7】 上記イオン性解離基を含む親水性単量体が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基を含む単量体から選択される少なくとも一種の親水性単量体単位であることを特徴とする請求項6に記載の顔料複合重合体粒子。
【請求項8】 請求項1〜7記載の顔料複合重合体粒子の製造方法であって、カルシウム塩を0〜0.1%有する顔料を、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度で水系分散する顔料分散工程と、前記顔料分散液を臨界ミセル形成濃度の0.8倍から、その3倍濃度以下まで希釈し希釈分散液を調整する希釈工程と、前記希釈顔料分散液に単量体と重合開始剤を添加し水系析出重合を行う重合工程とを含むことを特徴とする顔料複合重合体粒子の製造方法。
【請求項9】 上記カルシウム塩がロジンカルシウム塩であることを特徴とする請求項8に記載の顔料複合重合体粒子の製造方法。
【請求項10】 請求項1〜7のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を複数個会合、融着させて得られることを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項11】 前記顔料複合重合体粒子のイオン解離性基を含む単量体単位の一部又は全部が解離されたことを特徴とする請求項10に記載の電子写真用トナー。
【請求項12】 請求項10〜11のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法において、顔料複合重合体粒子分散液に該分散液に対し臨界凝集濃度以上の電解質を添加する凝集工程と、更に水に無限溶解する有機溶媒を添加する工程と、該分散液を重合体粒子のガラス転移温度の−5℃から+50℃の温度で加熱融着する工程とからなる電子写真用トナーの製造方法。
【請求項13】 請求項1〜7のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を用いることを特徴とする生理活性物質固定用担体。
【請求項14】 請求項1〜7のいずれかに記載の顔料複合重合体粒子を複数個会合、融着させた非球形粒子を用いることを特徴とする生理活性物質固定用担体。
【請求項15】 生理活性物質が抗原、抗体、レセプター、デオキシリボ核酸、リボ核酸から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項13,14のいずれかに記載の生理活性物質固定用担体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開平7−252430
【公開日】平成7年(1995)10月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−10773
【出願日】平成7年(1995)1月26日
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)