顔表面の運動機能の測定装置及び測定方法並びに測定用補助具
【課題】簡易な方法で精度よく、顔表面の運動(運動距離、運動速度等)を測定可能な装置を提供する。
【解決手段】測定用補助具(1)は、レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにはマーカが取り付けられている。測定装置(100)は、マーカを有し、被験者の顔に装着される測定用補助具(1)を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段(5)と、撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位(例えば、上眼瞼)の運動(運動距離、運動速度等)を解析する画像解析装置(10)とを備える。
【解決手段】測定用補助具(1)は、レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにはマーカが取り付けられている。測定装置(100)は、マーカを有し、被験者の顔に装着される測定用補助具(1)を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段(5)と、撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位(例えば、上眼瞼)の運動(運動距離、運動速度等)を解析する画像解析装置(10)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔表面の運動機能(例えば、運動距離や運動速度)を測定する測定装置及びその測定に用いる補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な眼瞼下垂症の挙筋機能診断は、1966年にBeard Cらが報告した用手的瞼縁位置測定法である(非特許文献1)。この方法は、眼瞼縁中央で下方視と上方視の位置差を測定するもので、現在まで眼瞼挙筋機能診断法のスタンダードとして世界中で用いられている。しかしながら、この測定法は、定規を被験者の頬に当て、眉毛を指で動かなくした状態で上方視・下方視させるため、定規や指の不安定さにより測定精度に問題があり、また測定結果の再現性に乏しいという課題があった。
【0003】
他方、1999年にFrey Mらが、2枚の鏡を用いた画像撮影による顔面運動の三次元解析について報告した(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The surgical treatment of blepharoptosis: A quantitative approach, Crowell Beard, Trans. Am. Ophthal. Soc 64: 401-487, 1966.
【非特許文献2】The three-dimensional video analysis of facial movements: A new method to assess the quantity and quality of the smile., Frey M, et al., Plast. Reconstr. Surg. 104: 2032-2039, 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Frey Mらによる装置は、顔面の正面と両側面を、正面から同時に撮影することができ、両側顔面に基準点をおいて顔面の動きを解析することができる。しかし、この装置は非常に大がかりとなり、汎用性が低い。臨床現場では簡易な検査装置が望ましく、このような装置は普及しにくい。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、簡易な方法で精度よく、顔表面の部位(例えば、上眼瞼)の運動機能(運動距離、運動速度)を測定可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、顔表面の運動機能の測定等において、被験者の顔表面の基準点を与えるために使用される測定用補助具を提供する。
【0008】
第1の測定用補助具は、レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにマーカが取り付けられる。また、第1の測定用補助具は、被験者の両耳の外耳道に挿入され得るイアチップと、イアチップをメガネフレームに連結する連結部とをさらに備えてもよい。また、イアチップにポールが取り付けられても良い。
【0009】
第2の測定用補助具は、レンズ上方部は支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにメジャーが取り付けられる。
【0010】
第3の測定用補助具は、ヘッドギアと、基準点を与えるマーカと、マーカを支持する支持部とを備える。
【0011】
第4の測定用補助具は、被験者の頭部を後方より支持する支持部分と、支持部分から延びた連結部に取り付けられた、基準点を与えるマーカとを備えた椅子である。
【0012】
第5の測定用補助具は、台座と、台座に固定され、被験者の顎部及び額部の少なくとも一方を支持する支持部と、基準点を与えるマーカとを備える。
【0013】
本発明の第2の態様において、顔表面の運動機能を測定する測定装置を提供する。その測定装置は、上記のいずれかの測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、前記画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔の部位の動きを解析する画像解析装置とを備える。
【0014】
本発明の第3の態様において、被験者の顔表面の運動機能を測定する方法を提供する。その方法は、上記の測定用補助具のいずれかを装着した被験者の顔の画像を撮像するステップと、撮像した画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを含む。
【0015】
本発明の第4の態様において、情報処理装置を用いて被験者の顔表面の運動機能を測定するプログラムを提供する。そのプログラムは、上記の測定用補助具のいずれかを装着した被験者の顔の画像を取り込むステップと、画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを、情報処理装置に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、測定用補助具により顔表面上に基準点を容易かつ精度よく提供することができる。よって、測定用補助具を装着した状態で被験者の顔の画像を撮像し、その画像において測定用補助具のマーカを基準点とし、その基準点に基づき被験者の顔の部位の動きを解析することで、顔表面部位(例えば、上眼瞼)の運動(運動距離、運動速度)の測定を簡易な方法でかつ精度よく実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の顔表面部位の運動距離及び運動速度の測定装置の構成を示した図
【図2】画像解析装置のブロック構成図
【図3】メガネ型測定用補助具を示した図
【図4】被験者がメガネ型測定用補助具を装着した状態を示した図((a)下方視したときの様子、(b)上方視したときの様子)
【図5】静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置の処理を示すフローチャート
【図6】被験者の左右の眼の上眼瞼縁にマークをプロットした様子を示した図((a)下方視したときの様子、(b)上方視したときの様子)
【図7】上方視の画像と下方視の画像を用いた上眼瞼の運動距離の測定を説明するための図
【図8】動画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置の処理を示すフローチャート
【図9】画像において設定されるX軸(水平線)、Y軸を説明するための図
【図10】上眼瞼運動の解析結果の表示例を示した図
【図11】本発明の実施形態の顔表面の運動解析システムによる運動速度と運動距離の測定結果をレーダーチャートで示した例を示す図
【図12】本発明の実施形態の測定装置による健常者に対して行なった運動速度と運動距離の測定の結果の例を示した図
【図13】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図14】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図15】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図16】測定用補助具の別の構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
以下に説明する実施形態では、基準点を提供するマーカを有する測定用補助具を被験者の顔に装着し、被験者の顔の画像を撮像し、撮像画像のマーカを基準として用いて撮像画像を解析することで顔表面の運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行なう。このように、撮像画像を解析するときの基準点を測定用補助具のマーカにより提供することにより、簡易な構成で精度よく顔表面部位の運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行なうことが可能となる。以下に、その詳細を説明する。
【0020】
1.構成
図1に、本発明の実施形態に係る顔表面の運動機能(運動距離及び運動速度)の測定装置の構成を示す。測定装置100は、デジタルカメラ5と、画像解析装置10とを用いて構成される。
【0021】
デジタルカメラ5は、動画及び静止画の撮像が可能なカメラであり、撮像した画像データを出力可能である。デジタルカメラ5はハイスピード撮影が可能なカメラであってもよく、これにより、より詳細なデータ解析が可能となる。特に、本実施形態では、デジタルカメラ5は、測定用補助具1を装着した被験者の顔の画像(動画又は静止画)を撮像し、撮像した画像データを画像解析装置10に出力する。測定用補助具1の詳細は後述する。
【0022】
画像解析装置10は、パーソナルコンピュータのような情報処理装置で構成され、情報処理装置を制御する所定のソフトウェアにより種々の機能が実現される。図2は、画像解析装置10の詳細な構成を示した図である。画像解析装置10は、その全体動作を制御する制御部11と、画面表示を行う表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ格納部21とを備える。表示部17は例えば、液晶ディスプレイで構成され、操作部19はキーボードやマウス等である。さらに、画像解析装置10は、外部機器やネットワークに接続するためのインタフェース25を含む。
【0023】
制御部11は画像解析装置10全体の動作を制御する。特に、制御部11は、取り込んだ画像を解析して、顔表面部位の運動を解析する運動解析部15を有する。制御部11はCPUやMPUからなり、所定のプログラムを実行することで後述する機能を実現する。制御部11で実行されるプログラムは、通信回線を通じて、またはDVD−ROM、CD−ROM等の記録媒体や半導体集積回路で提供される。
【0024】
データ格納部21はデータやプログラムを記憶する手段であり、例えばハードディスクや半導体メモリ、光ディスクで構成することができる。データ格納部21は、運動解析を実行するためのプログラム、その解析に必要なパラメータ等の情報を格納する。
【0025】
図3に測定用補助具1の一例を示す。測定用補助具1は、レンズが取り付けられていないアンダーブロー型眼鏡フレームで構成され、フレームの左右の蝶番外側にマーカ31が装着されている。なお、アンダーブロー型眼鏡フレームとは、レンズ下方部を支持する支持枠を有するが、レンズ上方部を支持する支持枠を有さないフレームである。マーカ31の中央位置には追尾しやすいようにドットがマーキングされている。このドットが顔面位置測定のための左右の基準点になる。図3の例では、2個のマーカ31が設けられているが、マーカ31の数は3個以上であってもよい。マーカ31の位置は図3に示す位置に限定されない。
【0026】
測定用補助具1は被験者の顔に装着されて使用される。図4は、メガネ型の測定用補助具1が被験者に装着された状態を示した図である。図4(a)は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で、被験者が下方視したときの様子を示した図であり、図4(b)は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で、被験者が上方視したときの様子を示した図である。
【0027】
2.動作
以下、本実施形態の測定装置100の動作を、眼瞼挙筋機能の解析動作を例として説明する。
【0028】
本実施形態の測定装置100では、デジタルカメラ5により測定用補助具1を装着した被験者の顔の画像(動画、静止画)を撮像し、その撮像画像が画像解析装置10に送信される。画像解析装置10は、受信した撮像画像に基づき眼瞼挙筋機能の解析を行う。
【0029】
2.1 静止画像を用いた解析動作
まず、デジタルカメラ5により撮像された静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置100の動作について説明する。図5は、静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0030】
まず、被験者の顔にメガネ型の測定用補助具1を装着し、その状態で、デジタルカメラ5により、被験者の顔の静止画を撮像する。具体的には、デジタルカメラ5は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で下方視したときの被験者の顔(図4(a)参照)と、上方視したときの被験者の顔(図4(b)参照)との静止画をそれぞれ撮像する。
【0031】
画像解析装置10の制御部11は、デジタルカメラ5で撮像された、下方視したときの被験者の顔の画像と、上方視したときの被験者の顔の画像とをそれぞれ取り込む(S11)。
【0032】
制御部11は、下方視の画像に含まれる顔と上方視の画像に含まれる顔のサイズが一致するように両画像のサイズを調整する(S12)。
【0033】
この状態で、画像解析装置10の表示部17において、下方視の画像及び上方視の画像が表示される。使用者は、表示部17に表示された下方視の画像を参照して、マウスやタッチペン等のポインティングデバイスを用いて、両眼の上眼瞼縁にマーク(測定点)及びマーカ31をプロットする。例えば、図6(a)に示すように、下方視の画像において、右眼の上眼瞼縁にマークMrdを,左眼の上眼瞼縁にマークMldをプロットする。同様に、図6(b)に示すように、上方視の画像において、右眼の上眼瞼縁にマークMruを,左眼の上眼瞼縁にマークMluをプロットする。制御部11は、プロットされたそれぞれのマークMrd、Mld、Mru、Mlu及びマーカ31の位置を認識する(S13)。
【0034】
制御部11は、上方視の画像と下方視の画像を、測定用補助具1のマーカ31の位置を基準にして合成する(S14)。すなわち、制御部11は、上方視の画像と下方視の画像を、両画像の対応するマーカ31の位置が一致するように合成する。図7に合成画像の例を示す。
【0035】
そして、制御部11は、上方視の画像におけるマークMru、Mluと、下方視の画像におけるマークMrd、Mld間の距離(上眼瞼の移動距離)を測定する。すなわち、右眼について、上方視のマークMruと下方視のマークMrdの間の距離drを測定し、左眼について、上方視のマークMluと下方視のマークMldの間の距離dlを測定する(図7参照)。なお、測定用補助具1の実際のサイズは分かっている。例えば、図7に示す測定用補助具1では、レンズ枠の端から端までの長さは107mmであるため、このレンズ枠の端から端までの長さについての実際の長さと画像中の長さとの関係に基づき、マーク間の距離dr、dlの実際の長さを求めることができる。
【0036】
以上のようにして、本実施形態の画像解析装置10は、メガネ型測定用補助具1を装着した顔の画像から上眼瞼の運動距離を測定することができる。特に、測定用補助具1はメガネ型をしており、被験者の顔にフィットさせることができるため、測定用補助具1のマーカ31と被験者の顔との相対的な位置関係が変化しにくい。よって、このようなメガネ型の測定用補助具1を使用することで、顔の基準点を簡易かつ精度よく提供でき、結果として簡易かつ高精度で運動距離を測定することができる。
【0037】
2.2 動画を用いた解析動作
次に、デジタルカメラ5により撮像された動画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の動作について説明する。図8は、動画を用いて眼瞼挙筋機能の測定を行う際の測定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0038】
被験者はメガネ型の測定用補助具1を顔に装着し、この状態でデジタルカメラ5により、被験者の顔の動画を撮像する。このとき、デジタルカメラ5は、被験者がメガネ型の測定用補助具1を装着した状態で上眼瞼を運動させたときの動画、すなわち、下方視したときの被験者の顔と上方視したときの被験者の顔とを含む動画を撮像する。
【0039】
画像解析装置10の制御部11は、デジタルカメラ5で撮像された、被験者がメガネ型の測定用補助具1を装着した状態で上眼瞼を運動させたときの動画(下方視したときの被験者の顔の画像と、上方視したときの被験者の顔の画像を含む動画)を取り込む(S21)。
【0040】
この状態で、画像解析装置10の表示部17において、下方視のときの画像及び上方視のときの画像が表示される。使用者は、表示部17に表示された下方視のときの画像及び上方視のときの画像を参照して、測定用補助具1のマーカ31と、両眼の上眼瞼縁にマーク(測定点)Mr、Mlをプロットする。これにより、制御部11は、マーカ31とプロットされたそれぞれのマーク(測定点)Mr、Mlを認識する(S22)(図9参照)。制御部11は、このようにして認識したマーク(測定点)Mr、Mlの位置を動画のフレーム毎に追跡する。
【0041】
さらに制御部11は、左右のマーカ31を結んだ水平線をX軸に設定し、その垂線をY軸に設定し座標系を設定する(S23)。なお水平線上をY=0とする。このようにして設定した座標系に基づいて、動画のフレーム画像毎に上眼瞼縁のマークMr、Mlの位置が測定される。
【0042】
制御部11(運動解析部15)は上眼瞼運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行う(S24)。つまり、制御部11は、動画の各フレーム画像において、プロットされた上眼瞼縁のマークMr、Mlの位置を追跡し、上眼瞼(瞼縁)の運動距離、運動速度を測定する。上眼瞼(瞼縁)の運動距離、運動速度は下記式で求められる。
上眼瞼(瞼縁)の運動距離 = Y軸最大座標値 − Y軸最小座標値 (1)
上眼瞼(瞼縁)の上方視最大運動速度 = Y軸正方向の最大速度 (2)
上眼瞼(瞼縁)の下方視最大運動速度 = Y軸負方向の最大速度 (3)
【0043】
画像解析装置10により解析された結果は、解析データとしてデータ格納部21に保存される。また、解析結果を視覚的に容易に認識できるように表示部17に表示してもよい。図10に、上眼瞼運動の解析結果の表示例を示す。図10(a)は、上方視と下方視それぞれの場合の上眼瞼の運動距離の測定結果を示した図であり、横軸が時間、縦軸は距離を示している。図10(b)は、上方視と下方視それぞれの場合の上眼瞼の運動速度の測定結果を示した図であり、横軸が時間、縦軸が速度を示している。なお、上述のような、画像に基づく上眼瞼運動の解析(すなわち、運動解析部15の動作)は公知の動画解析ソフト(例えば、DIPP-Motion Pro 2D Ver2.24、株式会社ディテクト)を利用することで実現できる。
【0044】
また、得られたデータをレーダーチャートにし、眼瞼運動機能をわかりやすく表現することができる。図11に、レーダーチャートの一例を示す。横軸を運動速度(cm/秒)、縦軸を運動距離(mm)、両軸の交点は、正面視の水平線(Y=0)の位置とする。このようなレーダーチャートは、眼瞼運動機能をビジュアル表現でき、レーダーチャートの四角形の形状に基づき使用者(例えば医師)は眼瞼運動機能を容易に把握できる。よって、このようなレーダーチャートは運動機能低下の診断や評価に有用である。なお、図11において、上段のチャートすなわち(a)、(b)は眉毛圧迫していない状態での測定結果であり、下段のチャートすなわち(c)、(d)は眉毛圧迫した状態での測定結果である。また、図11において、左側のチャートすなわち(a)、(c)は右眼の測定結果であり、右側のチャートすなわち(b)、(d)は左眼の測定結果である。
【0045】
3.眼瞼機能の測定結果
本実施形態の測定装置100を用いて、20〜35歳の健常者15名を対象に眼瞼挙筋運動を測定した。Beard Cらの方法に従い眉毛圧迫して測定したものと、眉毛圧迫せずに測定したものとを比較した。図12に、その測定結果を示す。平均値は12〜13mmで、挙筋機能の正常値(12〜15mm)の範囲内であった。また眉毛圧迫(+)と眉毛圧迫(−)の値に差は少ない一方、運動速度は、眉毛圧迫(−)では11〜12cm/秒で、眉毛圧迫することにより2cm/秒低下することが分かった。眉毛圧迫を行う理由は、上方視の時、前頭筋収縮による眼瞼挙上運動距離を消去することが目的であった。しかし、本データから眉毛圧迫は、眼瞼挙上運動距離より、運動速度に対する影響が大きいことがわかった。
【0046】
従って眉毛圧迫を行った場合と眉毛圧迫なしのデータを比較することで、純粋な眼瞼挙筋の運動速度と眼瞼挙上時の前頭筋収縮力を別々に測定できるという新しい知見を得た。
【0047】
以上のように、本実施形態の測定装置100によれば、測定用補助具1のマーカを基準点として動画像の解析を行うことで、画像に基づく顔表面部位の運動解析を精度よく行うことができる。なお、運動解析専用の解析装置がない遠隔地で得られた動画データをネットワーク経由でセンターの解析装置に送信し、センターの解析装置で解析し、解析結果を遠隔地にフィードバックするようにしてもよい。これにより、設備のない遠隔地においても、精度よく顔表面部位の解析を実行することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、運動機能の測定部位として上眼瞼を例として挙げたが、測定部位は上眼瞼に限定されない。測定したい顔の部位(測定点)を画像上でプロットして制御部11に認識させることにより、顔の任意の部位の運動を解析することができる。また、運動距離や運度速度に限らず、測定点の位置の変化も解析することができる。
【0049】
4.測定用補助具のバリエーション
測定用補助具の例として図3に示すようなメガネ型測定用補助具1を説明したが、測定用補助具の構成はこれに限定されるものではない。測定用補助具のいくつかのバリエーションを以下に説明する。
【0050】
(1)イアチップ付き測定用補助具(図13)
図13に示す測定用補助具は、図3に示すメガネ型測定用補助具1のフレームに、さらに左右外耳道に挿入できるイアチップ33を連結部35を介して接続したものである。外耳道は骨から構成されており、動きにくい。そこで、図13に示すように、左右外耳道に挿入できるイアチップ33をメガネ型測定用補助具1にさらに連結し、メガネ型測定用補助具1が顔の動きに応じて変動しないようにする。これにより、マーカ31と顔のずれがより低減され、得られる測定結果の精度を向上できる。
【0051】
(2)メジャーマーカー付き測定用補助具(図14)
図14に示す補助具は、図3に示すメガネ型測定用補助具1において、左右のマーカ31の代わりに(又は左右のマーカ31に加えて)左右のメジャー34を備えたものである。健常者の多くは、眼鏡のツルがかかる耳介側頭溝の高さはほぼ水平であるが、耳介の手術後や顔面神経麻痺、顔面の先天異常があると、耳介の位置が下方偏位していることが多い。このような場合、マーカだけでは水平基準線を引くことが困難になる。そこで、本例では、水平な基準点を求めるため、左右蝶番の外側に幅2cm、1mmの目盛りを付したメジャー34を付加する。水平線は上方視時の左眼角膜下縁と右眼角膜下縁とを結んだ線とし、この水平線と左右メジャー34の交点を、補正した基準点とする。
【0052】
(3)その他の測定用補助具のバリエーション
a)その他のバリエーション1(図15(a))
図15(a)に示す測定用補助具は、図13に示すメガネ型測定用補助具1において、さらに、外耳道に差し込んだ両側のイアチップ33にポール37を立てたものである。これにより、被験者の外耳道が絶対的な座標値として扱えるようになる。この外耳道の座標値は、異なる日時の検査でも比較することができる。
b)その他のバリエーション2(図15(b))
図15(b)に示すように、ヘッドギア40を用いて、基準点を提供する測定用補助具を構成してもよい。ヘッドギア40には、連結部43を介してイアチップ45が接続される。さらに連結部43に支持部47が接続され、被験者の顔の側面前方でマーカ41を支持するようになっている。イアチップ45及び連結部43は必須ではなく、ヘッドギアに直接マーカ41を支持する支持部47が接続されてもよい。
c)その他のバリエーション3(図16(c))
図16(c)に示す補助具50はいす型の測定用補助具である。被験者の腰部から頭部付近まで延在する背もたれ部57により被験者を後方から支持でき、被験者の後屈、体幹のぶれを防ぐことができる。背もたれ部57に支持部51が接続され、被験者の顔の側面前方でマーカ55を支持する。
d)その他のバリエーション4(図16(d))
図16(d)に示す測定用補助具60は、台座61と、台座61から上方に延びる2つの支柱62と、2つの支柱62間に設けられた下顎部の保持部63及び前額部の保持部64とを備える。さらに支柱62には、被験者の顔の側面前方でマーカ66を支持する支持部65が接続される。本例の構成では、頭部がしっかりと固定されるため、頭部のずれを防ぎ、安定した基準点を提供することができる。下顎部の保持部63及び前額部の保持部64は少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0053】
5.応用分野
本実施形態の測定装置100の応用分野について以下にいくつか例を挙げて説明する。
【0054】
(1)腱膜性眼瞼下垂症の診断
眼瞼下垂症とは、まぶたの開きが低下する疾患で、先天的なものから加齢性変化として後天的にまぶたが開きにくくなる場合がある。加齢性変化によって生じた眼瞼下垂症は、腱膜性眼瞼下垂症と呼ばれる。眼瞼挙筋は、上眼瞼の瞼板軟骨に挙筋腱膜を介して付着している。腱膜性眼瞼下垂症は、挙筋腱膜が加齢性変化や、コンタクトレンズ、目を強くこするなどにより腱膜が延長あるいは瞼板軟骨から外れることによって発症する。腱膜性眼瞼下垂症の程度は、前頭筋の力で一見正常に見える代償期とまぶたが明らかに下がってしまう非代償期に分類される。しかし、この分類は明確な診断基準はない。本実施形態の測定装置100によれば、眼瞼運動距離と運動速度を容易に測定できる。よって、腱膜性眼瞼下垂症の重症度を、本実施形態の測定装置100による測定結果を用いて分類、診断することができる。
【0055】
例えば、測定結果を以下の三群に分類する。
A;眼瞼運動距離が正常(12mm以上)で、かつ眉毛圧迫によって運動速度が低下しない群
B;眼瞼運動距離が正常(12mm以上)だが、眉毛圧迫によって運動速度が低下する群
C;眼瞼運動距離が異常(12mm未満)の群
A群は、眼瞼運動距離は正常で、開瞼に前頭筋の力は必要ないもの、正常と診断できる。B群は、眼瞼運動距離は正常だが、開瞼に前頭筋の力が必要なもの、代償期と診断できる。C群は、眼瞼運動距離はすでに低下している非代償期と診断できる。
【0056】
また、本実施形態の測定装置100は、眼瞼手術の効果の判定に応用できる。また、顔面神経麻痺の診断にも応用できる。顔面神経麻痺の運動異常は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛など顔面全体に及ぶ。本実施形態の測定装置100は、各種の顔面測定点の位置情報を数値化し評価することができる。
【0057】
(2)顔面神経麻痺への応用
顔面神経麻痺の運動異常は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛など顔面全体に及ぶため、本測定装置100を用いて各種の顔面測定点の位置情報を数値化し評価できる。例えば、本本測定装置100を用いて顔面神経麻痺に対する手術効果を判定することもできる。例えば、右側頭部皮下の悪性腫瘍切除後で、右眉毛下垂の症状が出た症例を例として説明する。眉毛挙上に関わる神経は顔面神経側頭枝であり、この側頭枝は腫瘍に近接しており、術中ぎりぎりで剥離・温存した。右眉毛下垂の症状は、この剥離操作に伴う麻痺と考えられる。術後6ヶ月、右の眉毛上にマーク(測定点)をプロットし、右眉毛挙上運動(マークの動き)を本測定装置100で調べた。右の眉毛上にプロットしたマークが1.0〜1.3mmY軸方向に動いたことが確認でき、これにより神経の回復が確認できた。
【0058】
(3)各種顔面形態異常の手術シミュレーションへの応用
眉毛下垂が永久的に生じ回復の見込みがない場合、眉毛挙上術を静的に行う。手術は寝た状態で行うが、日常生活は座位あるいは立位で、体位によって眉毛位置は異なる。従って術者は、術中に座位あるいは立位の眉毛位置を予測して眉毛の位置を移動させる。この時、基準となる位置が顔表面に存在しないため、固定位置は術者の経験と予測による。本実施形態の測定用補助具を術前・術中に用いれば、基準が存在し、理想的な固定位置が得られる。
【0059】
右小耳症(先天的な耳介欠損症)の治療において、術前シミュレーションとして利用した一例を示す。形成外科では、外科手術により右耳介を形成するが、この時、大切なポイントは、形成する耳介の位置と長軸の傾きである。この両者あるいは一方がずれると形態不全となる。右耳介の位置・形態は、健側の形態と位置を参考に決める。形態は健側耳介形態から作成できるが、位置の基準点が必要となる。また左右のミラーイメージ画像合成も、顔の輪郭が左右で一致しないため、合わせる基準が必要となる。
【0060】
そこで、上述の測定用補助具を患者に装着させ、顔の左側面と右側面の画像をデジタルカメラ5で撮影した。この二枚のデジタル画像を実寸大にサイズ変換し、さらに、左右ミラーイメージ画像合成を行う。このとき、測定用補助具のマーカ位置を基準として画像合成を行う。この合成画像から、耳介を形成する基準点を患者側に求めることができ、良好な形態の耳介再建を行うことができた。
【0061】
6.測定用補助具の有用性
上述した種々の測定用補助具は、上眼瞼以外の顔の部位の運動機能の測定に対しても広く適用でき、運動距離や運動速度の測定のための使用においても、顔表面上の基準点を与えるために使用できる。
【0062】
すなわち、上述した測定用補助具は、マーカにより、すべての被験者に二つ(もしくはそれ以上)の不動点(基準点)を顔面上に提供することができる。顔面の左右目尻、目頭、耳介頂点、鼻翼基部などにマーキングすることにより、顔面基準点が得られると思われるが、顔表面のマーキングは、顔面の運動により容易に動き、また被験者によって移動距離も異なる。外耳道は顔面にある唯一の不動点として認知されているが、顔正面から見ることはできない。従って、大がかりな装置、たとえば三面鏡を用い複雑な画像解析を行う必要があり、実際の臨床現場では、汎用性に乏しく、普及していない。
【0063】
この問題に対して、本測定用補助具は、顔面に装着するだけの簡便なもので、持ち運びが可能で特別な収納スペースもいらない。また、前述のように本測定用補助具によりさまざまな疾患の診断、評価が容易になる。眼瞼下垂症に対する従来の測定法は、下方視から上方視の運動距離を挙筋機能として評価したものであるが、本測定用補助具を用いれば、この運動距離を高精度でかつ再現性のあるデータにすることができる。
【0064】
(1)運動距離について
眼瞼下垂症患者は、まぶたが開きにくいあるいは肩がこるという症状で受診することが多い。これらの症状は、眼瞼下垂症だけではなく、加齢性変化による上眼瞼弛緩症、まぶたの皮膚が伸びる、ひとみにかぶることによっても生じる。皮膚弛緩症は単に皮膚がかぶっているだけで、眼瞼運動距離は正常である。治療は余った皮膚は切除するだけで良いことになる。眼瞼下垂症であれば、眼瞼挙筋という筋肉の手術を行う必要がある。本測定用補助具を用いれば、眼瞼下垂症と皮膚弛緩症、これらの合併症例を区別して診断することができる。
【0065】
また、顔面神経麻痺患者は、目が閉じないことが主な主訴で、目が閉じない症状は、顔面神経の支配筋である眼輪筋麻痺によって生じるものである。本測定用補助具を用いた検査結果から、顔面神経麻痺患者は、眼輪筋に拮抗する眼瞼挙筋(まぶたを開ける筋肉)の機能低下を伴うことが分かった。顔面神経麻痺が自然に治癒した場合、閉じることはできるが、目が開きにくいといった症状を呈することの裏付けとなり、顔面神経麻痺発症時から経過を追えば、早期に眼瞼下垂症の出現を早期診断することができ、リハビリテーションなどの機能温存治療に結びつけることができる(まぶたに重りを付けて開瞼運動をすれば、眼瞼挙筋の筋肉トレーニングになり、眼瞼下垂症の発症を予防できる)。
【0066】
(2)運動速度について
運動距離に加えて眼瞼運動速度を算出することができる。眼瞼下垂症は先天性眼瞼下垂症と後天性眼瞼下垂症に大きく二分される。外傷や顔面神経麻痺を除いて大半の後天性眼瞼下垂症は腱膜性眼瞼下垂症である。眼瞼挙筋は、上眼瞼の瞼板軟骨に挙筋腱膜を介して付着している。腱膜性眼瞼下垂症は、挙筋腱膜が加齢性変化や、コンタクトレンズ、目を強くこするなどにより発症する。症状の出現は、始めは無症状、肩こり、眉のしわ寄せから最後にまぶたが開きにくくなり、この最終段階で眼瞼運動距離の低下となる。運動速度の低下は、眼瞼運動距離の異常の前に出現しており、早期に腱膜性眼瞼下垂症を診断し、治療につなげる必要がある。腱膜性眼瞼下垂症は20歳台からすでにかなりの割合で発症していると言われており、病院にかかる前の検診レベルで眼瞼機能の検査が必要であると考える。本測定用補助具は、腱膜性眼瞼下垂症を正常から代償期、非代償期に分類・診断するツールとして有用性が高いと考える。
【0067】
特に近年、高齢者人口の増加、コンタクトレンズの長期装用やコンピューター操作の長時間化により、腱膜性眼瞼下垂症が急増し、形成外科・眼科を受診する頻度が高まった。眼瞼下垂症の手術方法は様々あり、症状・病態によって術式の適応が異なる。高精度で再現性のある本測定用補助具は、診断にとどまらず、術式の工夫・開発・術式の適応を決める点でも有用と考えられる。
【0068】
(3)顔面神経麻痺の評価法について
本測定用補助具は、眼瞼下垂症の診断・治療以外に、顔面神経麻痺の診断と経過の変化、治療結果の評価に応用することができる。顔面神経の支配筋である前頭筋は、眉毛を挙上させる唯一の筋肉で、本測定用補助具と眉毛のマーキングにより、運動距離と運動速度が得られ、治療効果の判定が数値として示すことができることは、先に述べた通りである。顔面神経麻痺は、眉、眼瞼、鼻、口の運動障害であり、各点のマーキングにより、総合的評価が可能で、新しい評価法の開発につながる。先天性両側顔面神経麻痺(メビウス症候群)は、両側対称性の顔面神経麻痺が生まれつき出現している疾患である。両側麻痺の場合、左右の運動を比べることが出来ないため、症状がわかりにくい。運動距離と運動速度のデータを算出し、標準値と比較することで診断することができる。
【0069】
この測定用補助具は、顔面運動・形態位置を算出することができる。また、この測定用補助具を用いることで、従来の検査では評価が難しい顔面運動機能低下や疾患の早期発見が可能になり、診断に役立てることができる。さらに、術前・術後の評価や簡便な手術シミュレーションとしての利用価値があり、形成外科、耳鼻咽喉科、眼科、美容外科など顔表面に関わる分野に広く利用価値がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の測定装置は、眼瞼挙筋機能診断のみならず、様々な眼瞼の運動障害や異常の診断および治療効果の判定に用いることができる。顔面神経麻痺は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛の運動異常を呈する疾患で、眼瞼運動に限らず、顔全体の運動異常の診断および治療効果判定が可能になる。さらに、この様な測定用補助具は、顔面形態異常の形成手術を行う際、位置決定に役立ち、術前・術中シミュレーションおよび術後効果判定に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 測定用補助具
5 デジタルカメラ
10 顔表面部位画像解析装置(情報処理装置)
11 制御部
15 運動解析部
17 表示部
19 操作部
21 データ格納部
25 インタフェース
31 マーカ(基準点)
100 顔表面部位の運動機能(運動距離及び運動速度)の測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔表面の運動機能(例えば、運動距離や運動速度)を測定する測定装置及びその測定に用いる補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な眼瞼下垂症の挙筋機能診断は、1966年にBeard Cらが報告した用手的瞼縁位置測定法である(非特許文献1)。この方法は、眼瞼縁中央で下方視と上方視の位置差を測定するもので、現在まで眼瞼挙筋機能診断法のスタンダードとして世界中で用いられている。しかしながら、この測定法は、定規を被験者の頬に当て、眉毛を指で動かなくした状態で上方視・下方視させるため、定規や指の不安定さにより測定精度に問題があり、また測定結果の再現性に乏しいという課題があった。
【0003】
他方、1999年にFrey Mらが、2枚の鏡を用いた画像撮影による顔面運動の三次元解析について報告した(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The surgical treatment of blepharoptosis: A quantitative approach, Crowell Beard, Trans. Am. Ophthal. Soc 64: 401-487, 1966.
【非特許文献2】The three-dimensional video analysis of facial movements: A new method to assess the quantity and quality of the smile., Frey M, et al., Plast. Reconstr. Surg. 104: 2032-2039, 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Frey Mらによる装置は、顔面の正面と両側面を、正面から同時に撮影することができ、両側顔面に基準点をおいて顔面の動きを解析することができる。しかし、この装置は非常に大がかりとなり、汎用性が低い。臨床現場では簡易な検査装置が望ましく、このような装置は普及しにくい。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、簡易な方法で精度よく、顔表面の部位(例えば、上眼瞼)の運動機能(運動距離、運動速度)を測定可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、顔表面の運動機能の測定等において、被験者の顔表面の基準点を与えるために使用される測定用補助具を提供する。
【0008】
第1の測定用補助具は、レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにマーカが取り付けられる。また、第1の測定用補助具は、被験者の両耳の外耳道に挿入され得るイアチップと、イアチップをメガネフレームに連結する連結部とをさらに備えてもよい。また、イアチップにポールが取り付けられても良い。
【0009】
第2の測定用補助具は、レンズ上方部は支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、メガネフレームにメジャーが取り付けられる。
【0010】
第3の測定用補助具は、ヘッドギアと、基準点を与えるマーカと、マーカを支持する支持部とを備える。
【0011】
第4の測定用補助具は、被験者の頭部を後方より支持する支持部分と、支持部分から延びた連結部に取り付けられた、基準点を与えるマーカとを備えた椅子である。
【0012】
第5の測定用補助具は、台座と、台座に固定され、被験者の顎部及び額部の少なくとも一方を支持する支持部と、基準点を与えるマーカとを備える。
【0013】
本発明の第2の態様において、顔表面の運動機能を測定する測定装置を提供する。その測定装置は、上記のいずれかの測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、前記画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔の部位の動きを解析する画像解析装置とを備える。
【0014】
本発明の第3の態様において、被験者の顔表面の運動機能を測定する方法を提供する。その方法は、上記の測定用補助具のいずれかを装着した被験者の顔の画像を撮像するステップと、撮像した画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを含む。
【0015】
本発明の第4の態様において、情報処理装置を用いて被験者の顔表面の運動機能を測定するプログラムを提供する。そのプログラムは、上記の測定用補助具のいずれかを装着した被験者の顔の画像を取り込むステップと、画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを、情報処理装置に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、測定用補助具により顔表面上に基準点を容易かつ精度よく提供することができる。よって、測定用補助具を装着した状態で被験者の顔の画像を撮像し、その画像において測定用補助具のマーカを基準点とし、その基準点に基づき被験者の顔の部位の動きを解析することで、顔表面部位(例えば、上眼瞼)の運動(運動距離、運動速度)の測定を簡易な方法でかつ精度よく実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の顔表面部位の運動距離及び運動速度の測定装置の構成を示した図
【図2】画像解析装置のブロック構成図
【図3】メガネ型測定用補助具を示した図
【図4】被験者がメガネ型測定用補助具を装着した状態を示した図((a)下方視したときの様子、(b)上方視したときの様子)
【図5】静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置の処理を示すフローチャート
【図6】被験者の左右の眼の上眼瞼縁にマークをプロットした様子を示した図((a)下方視したときの様子、(b)上方視したときの様子)
【図7】上方視の画像と下方視の画像を用いた上眼瞼の運動距離の測定を説明するための図
【図8】動画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置の処理を示すフローチャート
【図9】画像において設定されるX軸(水平線)、Y軸を説明するための図
【図10】上眼瞼運動の解析結果の表示例を示した図
【図11】本発明の実施形態の顔表面の運動解析システムによる運動速度と運動距離の測定結果をレーダーチャートで示した例を示す図
【図12】本発明の実施形態の測定装置による健常者に対して行なった運動速度と運動距離の測定の結果の例を示した図
【図13】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図14】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図15】測定用補助具の別の構成例を示した図
【図16】測定用補助具の別の構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
以下に説明する実施形態では、基準点を提供するマーカを有する測定用補助具を被験者の顔に装着し、被験者の顔の画像を撮像し、撮像画像のマーカを基準として用いて撮像画像を解析することで顔表面の運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行なう。このように、撮像画像を解析するときの基準点を測定用補助具のマーカにより提供することにより、簡易な構成で精度よく顔表面部位の運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行なうことが可能となる。以下に、その詳細を説明する。
【0020】
1.構成
図1に、本発明の実施形態に係る顔表面の運動機能(運動距離及び運動速度)の測定装置の構成を示す。測定装置100は、デジタルカメラ5と、画像解析装置10とを用いて構成される。
【0021】
デジタルカメラ5は、動画及び静止画の撮像が可能なカメラであり、撮像した画像データを出力可能である。デジタルカメラ5はハイスピード撮影が可能なカメラであってもよく、これにより、より詳細なデータ解析が可能となる。特に、本実施形態では、デジタルカメラ5は、測定用補助具1を装着した被験者の顔の画像(動画又は静止画)を撮像し、撮像した画像データを画像解析装置10に出力する。測定用補助具1の詳細は後述する。
【0022】
画像解析装置10は、パーソナルコンピュータのような情報処理装置で構成され、情報処理装置を制御する所定のソフトウェアにより種々の機能が実現される。図2は、画像解析装置10の詳細な構成を示した図である。画像解析装置10は、その全体動作を制御する制御部11と、画面表示を行う表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ格納部21とを備える。表示部17は例えば、液晶ディスプレイで構成され、操作部19はキーボードやマウス等である。さらに、画像解析装置10は、外部機器やネットワークに接続するためのインタフェース25を含む。
【0023】
制御部11は画像解析装置10全体の動作を制御する。特に、制御部11は、取り込んだ画像を解析して、顔表面部位の運動を解析する運動解析部15を有する。制御部11はCPUやMPUからなり、所定のプログラムを実行することで後述する機能を実現する。制御部11で実行されるプログラムは、通信回線を通じて、またはDVD−ROM、CD−ROM等の記録媒体や半導体集積回路で提供される。
【0024】
データ格納部21はデータやプログラムを記憶する手段であり、例えばハードディスクや半導体メモリ、光ディスクで構成することができる。データ格納部21は、運動解析を実行するためのプログラム、その解析に必要なパラメータ等の情報を格納する。
【0025】
図3に測定用補助具1の一例を示す。測定用補助具1は、レンズが取り付けられていないアンダーブロー型眼鏡フレームで構成され、フレームの左右の蝶番外側にマーカ31が装着されている。なお、アンダーブロー型眼鏡フレームとは、レンズ下方部を支持する支持枠を有するが、レンズ上方部を支持する支持枠を有さないフレームである。マーカ31の中央位置には追尾しやすいようにドットがマーキングされている。このドットが顔面位置測定のための左右の基準点になる。図3の例では、2個のマーカ31が設けられているが、マーカ31の数は3個以上であってもよい。マーカ31の位置は図3に示す位置に限定されない。
【0026】
測定用補助具1は被験者の顔に装着されて使用される。図4は、メガネ型の測定用補助具1が被験者に装着された状態を示した図である。図4(a)は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で、被験者が下方視したときの様子を示した図であり、図4(b)は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で、被験者が上方視したときの様子を示した図である。
【0027】
2.動作
以下、本実施形態の測定装置100の動作を、眼瞼挙筋機能の解析動作を例として説明する。
【0028】
本実施形態の測定装置100では、デジタルカメラ5により測定用補助具1を装着した被験者の顔の画像(動画、静止画)を撮像し、その撮像画像が画像解析装置10に送信される。画像解析装置10は、受信した撮像画像に基づき眼瞼挙筋機能の解析を行う。
【0029】
2.1 静止画像を用いた解析動作
まず、デジタルカメラ5により撮像された静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置100の動作について説明する。図5は、静止画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の測定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0030】
まず、被験者の顔にメガネ型の測定用補助具1を装着し、その状態で、デジタルカメラ5により、被験者の顔の静止画を撮像する。具体的には、デジタルカメラ5は、メガネ型の測定用補助具1を装着した状態で下方視したときの被験者の顔(図4(a)参照)と、上方視したときの被験者の顔(図4(b)参照)との静止画をそれぞれ撮像する。
【0031】
画像解析装置10の制御部11は、デジタルカメラ5で撮像された、下方視したときの被験者の顔の画像と、上方視したときの被験者の顔の画像とをそれぞれ取り込む(S11)。
【0032】
制御部11は、下方視の画像に含まれる顔と上方視の画像に含まれる顔のサイズが一致するように両画像のサイズを調整する(S12)。
【0033】
この状態で、画像解析装置10の表示部17において、下方視の画像及び上方視の画像が表示される。使用者は、表示部17に表示された下方視の画像を参照して、マウスやタッチペン等のポインティングデバイスを用いて、両眼の上眼瞼縁にマーク(測定点)及びマーカ31をプロットする。例えば、図6(a)に示すように、下方視の画像において、右眼の上眼瞼縁にマークMrdを,左眼の上眼瞼縁にマークMldをプロットする。同様に、図6(b)に示すように、上方視の画像において、右眼の上眼瞼縁にマークMruを,左眼の上眼瞼縁にマークMluをプロットする。制御部11は、プロットされたそれぞれのマークMrd、Mld、Mru、Mlu及びマーカ31の位置を認識する(S13)。
【0034】
制御部11は、上方視の画像と下方視の画像を、測定用補助具1のマーカ31の位置を基準にして合成する(S14)。すなわち、制御部11は、上方視の画像と下方視の画像を、両画像の対応するマーカ31の位置が一致するように合成する。図7に合成画像の例を示す。
【0035】
そして、制御部11は、上方視の画像におけるマークMru、Mluと、下方視の画像におけるマークMrd、Mld間の距離(上眼瞼の移動距離)を測定する。すなわち、右眼について、上方視のマークMruと下方視のマークMrdの間の距離drを測定し、左眼について、上方視のマークMluと下方視のマークMldの間の距離dlを測定する(図7参照)。なお、測定用補助具1の実際のサイズは分かっている。例えば、図7に示す測定用補助具1では、レンズ枠の端から端までの長さは107mmであるため、このレンズ枠の端から端までの長さについての実際の長さと画像中の長さとの関係に基づき、マーク間の距離dr、dlの実際の長さを求めることができる。
【0036】
以上のようにして、本実施形態の画像解析装置10は、メガネ型測定用補助具1を装着した顔の画像から上眼瞼の運動距離を測定することができる。特に、測定用補助具1はメガネ型をしており、被験者の顔にフィットさせることができるため、測定用補助具1のマーカ31と被験者の顔との相対的な位置関係が変化しにくい。よって、このようなメガネ型の測定用補助具1を使用することで、顔の基準点を簡易かつ精度よく提供でき、結果として簡易かつ高精度で運動距離を測定することができる。
【0037】
2.2 動画を用いた解析動作
次に、デジタルカメラ5により撮像された動画を用いて眼瞼挙筋機能の解析を行う際の動作について説明する。図8は、動画を用いて眼瞼挙筋機能の測定を行う際の測定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0038】
被験者はメガネ型の測定用補助具1を顔に装着し、この状態でデジタルカメラ5により、被験者の顔の動画を撮像する。このとき、デジタルカメラ5は、被験者がメガネ型の測定用補助具1を装着した状態で上眼瞼を運動させたときの動画、すなわち、下方視したときの被験者の顔と上方視したときの被験者の顔とを含む動画を撮像する。
【0039】
画像解析装置10の制御部11は、デジタルカメラ5で撮像された、被験者がメガネ型の測定用補助具1を装着した状態で上眼瞼を運動させたときの動画(下方視したときの被験者の顔の画像と、上方視したときの被験者の顔の画像を含む動画)を取り込む(S21)。
【0040】
この状態で、画像解析装置10の表示部17において、下方視のときの画像及び上方視のときの画像が表示される。使用者は、表示部17に表示された下方視のときの画像及び上方視のときの画像を参照して、測定用補助具1のマーカ31と、両眼の上眼瞼縁にマーク(測定点)Mr、Mlをプロットする。これにより、制御部11は、マーカ31とプロットされたそれぞれのマーク(測定点)Mr、Mlを認識する(S22)(図9参照)。制御部11は、このようにして認識したマーク(測定点)Mr、Mlの位置を動画のフレーム毎に追跡する。
【0041】
さらに制御部11は、左右のマーカ31を結んだ水平線をX軸に設定し、その垂線をY軸に設定し座標系を設定する(S23)。なお水平線上をY=0とする。このようにして設定した座標系に基づいて、動画のフレーム画像毎に上眼瞼縁のマークMr、Mlの位置が測定される。
【0042】
制御部11(運動解析部15)は上眼瞼運動の解析(運動距離、運動速度の測定)を行う(S24)。つまり、制御部11は、動画の各フレーム画像において、プロットされた上眼瞼縁のマークMr、Mlの位置を追跡し、上眼瞼(瞼縁)の運動距離、運動速度を測定する。上眼瞼(瞼縁)の運動距離、運動速度は下記式で求められる。
上眼瞼(瞼縁)の運動距離 = Y軸最大座標値 − Y軸最小座標値 (1)
上眼瞼(瞼縁)の上方視最大運動速度 = Y軸正方向の最大速度 (2)
上眼瞼(瞼縁)の下方視最大運動速度 = Y軸負方向の最大速度 (3)
【0043】
画像解析装置10により解析された結果は、解析データとしてデータ格納部21に保存される。また、解析結果を視覚的に容易に認識できるように表示部17に表示してもよい。図10に、上眼瞼運動の解析結果の表示例を示す。図10(a)は、上方視と下方視それぞれの場合の上眼瞼の運動距離の測定結果を示した図であり、横軸が時間、縦軸は距離を示している。図10(b)は、上方視と下方視それぞれの場合の上眼瞼の運動速度の測定結果を示した図であり、横軸が時間、縦軸が速度を示している。なお、上述のような、画像に基づく上眼瞼運動の解析(すなわち、運動解析部15の動作)は公知の動画解析ソフト(例えば、DIPP-Motion Pro 2D Ver2.24、株式会社ディテクト)を利用することで実現できる。
【0044】
また、得られたデータをレーダーチャートにし、眼瞼運動機能をわかりやすく表現することができる。図11に、レーダーチャートの一例を示す。横軸を運動速度(cm/秒)、縦軸を運動距離(mm)、両軸の交点は、正面視の水平線(Y=0)の位置とする。このようなレーダーチャートは、眼瞼運動機能をビジュアル表現でき、レーダーチャートの四角形の形状に基づき使用者(例えば医師)は眼瞼運動機能を容易に把握できる。よって、このようなレーダーチャートは運動機能低下の診断や評価に有用である。なお、図11において、上段のチャートすなわち(a)、(b)は眉毛圧迫していない状態での測定結果であり、下段のチャートすなわち(c)、(d)は眉毛圧迫した状態での測定結果である。また、図11において、左側のチャートすなわち(a)、(c)は右眼の測定結果であり、右側のチャートすなわち(b)、(d)は左眼の測定結果である。
【0045】
3.眼瞼機能の測定結果
本実施形態の測定装置100を用いて、20〜35歳の健常者15名を対象に眼瞼挙筋運動を測定した。Beard Cらの方法に従い眉毛圧迫して測定したものと、眉毛圧迫せずに測定したものとを比較した。図12に、その測定結果を示す。平均値は12〜13mmで、挙筋機能の正常値(12〜15mm)の範囲内であった。また眉毛圧迫(+)と眉毛圧迫(−)の値に差は少ない一方、運動速度は、眉毛圧迫(−)では11〜12cm/秒で、眉毛圧迫することにより2cm/秒低下することが分かった。眉毛圧迫を行う理由は、上方視の時、前頭筋収縮による眼瞼挙上運動距離を消去することが目的であった。しかし、本データから眉毛圧迫は、眼瞼挙上運動距離より、運動速度に対する影響が大きいことがわかった。
【0046】
従って眉毛圧迫を行った場合と眉毛圧迫なしのデータを比較することで、純粋な眼瞼挙筋の運動速度と眼瞼挙上時の前頭筋収縮力を別々に測定できるという新しい知見を得た。
【0047】
以上のように、本実施形態の測定装置100によれば、測定用補助具1のマーカを基準点として動画像の解析を行うことで、画像に基づく顔表面部位の運動解析を精度よく行うことができる。なお、運動解析専用の解析装置がない遠隔地で得られた動画データをネットワーク経由でセンターの解析装置に送信し、センターの解析装置で解析し、解析結果を遠隔地にフィードバックするようにしてもよい。これにより、設備のない遠隔地においても、精度よく顔表面部位の解析を実行することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、運動機能の測定部位として上眼瞼を例として挙げたが、測定部位は上眼瞼に限定されない。測定したい顔の部位(測定点)を画像上でプロットして制御部11に認識させることにより、顔の任意の部位の運動を解析することができる。また、運動距離や運度速度に限らず、測定点の位置の変化も解析することができる。
【0049】
4.測定用補助具のバリエーション
測定用補助具の例として図3に示すようなメガネ型測定用補助具1を説明したが、測定用補助具の構成はこれに限定されるものではない。測定用補助具のいくつかのバリエーションを以下に説明する。
【0050】
(1)イアチップ付き測定用補助具(図13)
図13に示す測定用補助具は、図3に示すメガネ型測定用補助具1のフレームに、さらに左右外耳道に挿入できるイアチップ33を連結部35を介して接続したものである。外耳道は骨から構成されており、動きにくい。そこで、図13に示すように、左右外耳道に挿入できるイアチップ33をメガネ型測定用補助具1にさらに連結し、メガネ型測定用補助具1が顔の動きに応じて変動しないようにする。これにより、マーカ31と顔のずれがより低減され、得られる測定結果の精度を向上できる。
【0051】
(2)メジャーマーカー付き測定用補助具(図14)
図14に示す補助具は、図3に示すメガネ型測定用補助具1において、左右のマーカ31の代わりに(又は左右のマーカ31に加えて)左右のメジャー34を備えたものである。健常者の多くは、眼鏡のツルがかかる耳介側頭溝の高さはほぼ水平であるが、耳介の手術後や顔面神経麻痺、顔面の先天異常があると、耳介の位置が下方偏位していることが多い。このような場合、マーカだけでは水平基準線を引くことが困難になる。そこで、本例では、水平な基準点を求めるため、左右蝶番の外側に幅2cm、1mmの目盛りを付したメジャー34を付加する。水平線は上方視時の左眼角膜下縁と右眼角膜下縁とを結んだ線とし、この水平線と左右メジャー34の交点を、補正した基準点とする。
【0052】
(3)その他の測定用補助具のバリエーション
a)その他のバリエーション1(図15(a))
図15(a)に示す測定用補助具は、図13に示すメガネ型測定用補助具1において、さらに、外耳道に差し込んだ両側のイアチップ33にポール37を立てたものである。これにより、被験者の外耳道が絶対的な座標値として扱えるようになる。この外耳道の座標値は、異なる日時の検査でも比較することができる。
b)その他のバリエーション2(図15(b))
図15(b)に示すように、ヘッドギア40を用いて、基準点を提供する測定用補助具を構成してもよい。ヘッドギア40には、連結部43を介してイアチップ45が接続される。さらに連結部43に支持部47が接続され、被験者の顔の側面前方でマーカ41を支持するようになっている。イアチップ45及び連結部43は必須ではなく、ヘッドギアに直接マーカ41を支持する支持部47が接続されてもよい。
c)その他のバリエーション3(図16(c))
図16(c)に示す補助具50はいす型の測定用補助具である。被験者の腰部から頭部付近まで延在する背もたれ部57により被験者を後方から支持でき、被験者の後屈、体幹のぶれを防ぐことができる。背もたれ部57に支持部51が接続され、被験者の顔の側面前方でマーカ55を支持する。
d)その他のバリエーション4(図16(d))
図16(d)に示す測定用補助具60は、台座61と、台座61から上方に延びる2つの支柱62と、2つの支柱62間に設けられた下顎部の保持部63及び前額部の保持部64とを備える。さらに支柱62には、被験者の顔の側面前方でマーカ66を支持する支持部65が接続される。本例の構成では、頭部がしっかりと固定されるため、頭部のずれを防ぎ、安定した基準点を提供することができる。下顎部の保持部63及び前額部の保持部64は少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0053】
5.応用分野
本実施形態の測定装置100の応用分野について以下にいくつか例を挙げて説明する。
【0054】
(1)腱膜性眼瞼下垂症の診断
眼瞼下垂症とは、まぶたの開きが低下する疾患で、先天的なものから加齢性変化として後天的にまぶたが開きにくくなる場合がある。加齢性変化によって生じた眼瞼下垂症は、腱膜性眼瞼下垂症と呼ばれる。眼瞼挙筋は、上眼瞼の瞼板軟骨に挙筋腱膜を介して付着している。腱膜性眼瞼下垂症は、挙筋腱膜が加齢性変化や、コンタクトレンズ、目を強くこするなどにより腱膜が延長あるいは瞼板軟骨から外れることによって発症する。腱膜性眼瞼下垂症の程度は、前頭筋の力で一見正常に見える代償期とまぶたが明らかに下がってしまう非代償期に分類される。しかし、この分類は明確な診断基準はない。本実施形態の測定装置100によれば、眼瞼運動距離と運動速度を容易に測定できる。よって、腱膜性眼瞼下垂症の重症度を、本実施形態の測定装置100による測定結果を用いて分類、診断することができる。
【0055】
例えば、測定結果を以下の三群に分類する。
A;眼瞼運動距離が正常(12mm以上)で、かつ眉毛圧迫によって運動速度が低下しない群
B;眼瞼運動距離が正常(12mm以上)だが、眉毛圧迫によって運動速度が低下する群
C;眼瞼運動距離が異常(12mm未満)の群
A群は、眼瞼運動距離は正常で、開瞼に前頭筋の力は必要ないもの、正常と診断できる。B群は、眼瞼運動距離は正常だが、開瞼に前頭筋の力が必要なもの、代償期と診断できる。C群は、眼瞼運動距離はすでに低下している非代償期と診断できる。
【0056】
また、本実施形態の測定装置100は、眼瞼手術の効果の判定に応用できる。また、顔面神経麻痺の診断にも応用できる。顔面神経麻痺の運動異常は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛など顔面全体に及ぶ。本実施形態の測定装置100は、各種の顔面測定点の位置情報を数値化し評価することができる。
【0057】
(2)顔面神経麻痺への応用
顔面神経麻痺の運動異常は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛など顔面全体に及ぶため、本測定装置100を用いて各種の顔面測定点の位置情報を数値化し評価できる。例えば、本本測定装置100を用いて顔面神経麻痺に対する手術効果を判定することもできる。例えば、右側頭部皮下の悪性腫瘍切除後で、右眉毛下垂の症状が出た症例を例として説明する。眉毛挙上に関わる神経は顔面神経側頭枝であり、この側頭枝は腫瘍に近接しており、術中ぎりぎりで剥離・温存した。右眉毛下垂の症状は、この剥離操作に伴う麻痺と考えられる。術後6ヶ月、右の眉毛上にマーク(測定点)をプロットし、右眉毛挙上運動(マークの動き)を本測定装置100で調べた。右の眉毛上にプロットしたマークが1.0〜1.3mmY軸方向に動いたことが確認でき、これにより神経の回復が確認できた。
【0058】
(3)各種顔面形態異常の手術シミュレーションへの応用
眉毛下垂が永久的に生じ回復の見込みがない場合、眉毛挙上術を静的に行う。手術は寝た状態で行うが、日常生活は座位あるいは立位で、体位によって眉毛位置は異なる。従って術者は、術中に座位あるいは立位の眉毛位置を予測して眉毛の位置を移動させる。この時、基準となる位置が顔表面に存在しないため、固定位置は術者の経験と予測による。本実施形態の測定用補助具を術前・術中に用いれば、基準が存在し、理想的な固定位置が得られる。
【0059】
右小耳症(先天的な耳介欠損症)の治療において、術前シミュレーションとして利用した一例を示す。形成外科では、外科手術により右耳介を形成するが、この時、大切なポイントは、形成する耳介の位置と長軸の傾きである。この両者あるいは一方がずれると形態不全となる。右耳介の位置・形態は、健側の形態と位置を参考に決める。形態は健側耳介形態から作成できるが、位置の基準点が必要となる。また左右のミラーイメージ画像合成も、顔の輪郭が左右で一致しないため、合わせる基準が必要となる。
【0060】
そこで、上述の測定用補助具を患者に装着させ、顔の左側面と右側面の画像をデジタルカメラ5で撮影した。この二枚のデジタル画像を実寸大にサイズ変換し、さらに、左右ミラーイメージ画像合成を行う。このとき、測定用補助具のマーカ位置を基準として画像合成を行う。この合成画像から、耳介を形成する基準点を患者側に求めることができ、良好な形態の耳介再建を行うことができた。
【0061】
6.測定用補助具の有用性
上述した種々の測定用補助具は、上眼瞼以外の顔の部位の運動機能の測定に対しても広く適用でき、運動距離や運動速度の測定のための使用においても、顔表面上の基準点を与えるために使用できる。
【0062】
すなわち、上述した測定用補助具は、マーカにより、すべての被験者に二つ(もしくはそれ以上)の不動点(基準点)を顔面上に提供することができる。顔面の左右目尻、目頭、耳介頂点、鼻翼基部などにマーキングすることにより、顔面基準点が得られると思われるが、顔表面のマーキングは、顔面の運動により容易に動き、また被験者によって移動距離も異なる。外耳道は顔面にある唯一の不動点として認知されているが、顔正面から見ることはできない。従って、大がかりな装置、たとえば三面鏡を用い複雑な画像解析を行う必要があり、実際の臨床現場では、汎用性に乏しく、普及していない。
【0063】
この問題に対して、本測定用補助具は、顔面に装着するだけの簡便なもので、持ち運びが可能で特別な収納スペースもいらない。また、前述のように本測定用補助具によりさまざまな疾患の診断、評価が容易になる。眼瞼下垂症に対する従来の測定法は、下方視から上方視の運動距離を挙筋機能として評価したものであるが、本測定用補助具を用いれば、この運動距離を高精度でかつ再現性のあるデータにすることができる。
【0064】
(1)運動距離について
眼瞼下垂症患者は、まぶたが開きにくいあるいは肩がこるという症状で受診することが多い。これらの症状は、眼瞼下垂症だけではなく、加齢性変化による上眼瞼弛緩症、まぶたの皮膚が伸びる、ひとみにかぶることによっても生じる。皮膚弛緩症は単に皮膚がかぶっているだけで、眼瞼運動距離は正常である。治療は余った皮膚は切除するだけで良いことになる。眼瞼下垂症であれば、眼瞼挙筋という筋肉の手術を行う必要がある。本測定用補助具を用いれば、眼瞼下垂症と皮膚弛緩症、これらの合併症例を区別して診断することができる。
【0065】
また、顔面神経麻痺患者は、目が閉じないことが主な主訴で、目が閉じない症状は、顔面神経の支配筋である眼輪筋麻痺によって生じるものである。本測定用補助具を用いた検査結果から、顔面神経麻痺患者は、眼輪筋に拮抗する眼瞼挙筋(まぶたを開ける筋肉)の機能低下を伴うことが分かった。顔面神経麻痺が自然に治癒した場合、閉じることはできるが、目が開きにくいといった症状を呈することの裏付けとなり、顔面神経麻痺発症時から経過を追えば、早期に眼瞼下垂症の出現を早期診断することができ、リハビリテーションなどの機能温存治療に結びつけることができる(まぶたに重りを付けて開瞼運動をすれば、眼瞼挙筋の筋肉トレーニングになり、眼瞼下垂症の発症を予防できる)。
【0066】
(2)運動速度について
運動距離に加えて眼瞼運動速度を算出することができる。眼瞼下垂症は先天性眼瞼下垂症と後天性眼瞼下垂症に大きく二分される。外傷や顔面神経麻痺を除いて大半の後天性眼瞼下垂症は腱膜性眼瞼下垂症である。眼瞼挙筋は、上眼瞼の瞼板軟骨に挙筋腱膜を介して付着している。腱膜性眼瞼下垂症は、挙筋腱膜が加齢性変化や、コンタクトレンズ、目を強くこするなどにより発症する。症状の出現は、始めは無症状、肩こり、眉のしわ寄せから最後にまぶたが開きにくくなり、この最終段階で眼瞼運動距離の低下となる。運動速度の低下は、眼瞼運動距離の異常の前に出現しており、早期に腱膜性眼瞼下垂症を診断し、治療につなげる必要がある。腱膜性眼瞼下垂症は20歳台からすでにかなりの割合で発症していると言われており、病院にかかる前の検診レベルで眼瞼機能の検査が必要であると考える。本測定用補助具は、腱膜性眼瞼下垂症を正常から代償期、非代償期に分類・診断するツールとして有用性が高いと考える。
【0067】
特に近年、高齢者人口の増加、コンタクトレンズの長期装用やコンピューター操作の長時間化により、腱膜性眼瞼下垂症が急増し、形成外科・眼科を受診する頻度が高まった。眼瞼下垂症の手術方法は様々あり、症状・病態によって術式の適応が異なる。高精度で再現性のある本測定用補助具は、診断にとどまらず、術式の工夫・開発・術式の適応を決める点でも有用と考えられる。
【0068】
(3)顔面神経麻痺の評価法について
本測定用補助具は、眼瞼下垂症の診断・治療以外に、顔面神経麻痺の診断と経過の変化、治療結果の評価に応用することができる。顔面神経の支配筋である前頭筋は、眉毛を挙上させる唯一の筋肉で、本測定用補助具と眉毛のマーキングにより、運動距離と運動速度が得られ、治療効果の判定が数値として示すことができることは、先に述べた通りである。顔面神経麻痺は、眉、眼瞼、鼻、口の運動障害であり、各点のマーキングにより、総合的評価が可能で、新しい評価法の開発につながる。先天性両側顔面神経麻痺(メビウス症候群)は、両側対称性の顔面神経麻痺が生まれつき出現している疾患である。両側麻痺の場合、左右の運動を比べることが出来ないため、症状がわかりにくい。運動距離と運動速度のデータを算出し、標準値と比較することで診断することができる。
【0069】
この測定用補助具は、顔面運動・形態位置を算出することができる。また、この測定用補助具を用いることで、従来の検査では評価が難しい顔面運動機能低下や疾患の早期発見が可能になり、診断に役立てることができる。さらに、術前・術後の評価や簡便な手術シミュレーションとしての利用価値があり、形成外科、耳鼻咽喉科、眼科、美容外科など顔表面に関わる分野に広く利用価値がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の測定装置は、眼瞼挙筋機能診断のみならず、様々な眼瞼の運動障害や異常の診断および治療効果の判定に用いることができる。顔面神経麻痺は、眼瞼・口唇・外鼻・眉毛の運動異常を呈する疾患で、眼瞼運動に限らず、顔全体の運動異常の診断および治療効果判定が可能になる。さらに、この様な測定用補助具は、顔面形態異常の形成手術を行う際、位置決定に役立ち、術前・術中シミュレーションおよび術後効果判定に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 測定用補助具
5 デジタルカメラ
10 顔表面部位画像解析装置(情報処理装置)
11 制御部
15 運動解析部
17 表示部
19 操作部
21 データ格納部
25 インタフェース
31 マーカ(基準点)
100 顔表面部位の運動機能(運動距離及び運動速度)の測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、前記メガネフレームにマーカが取り付けられた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項2】
被験者の両耳の外耳道に挿入され得るイアチップと、前記イアチップを前記メガネフレームに連結する連結部とをさらに備えたことを特徴とする、請求項1記載の測定用補助具。
【請求項3】
さらに、前記両耳のイアチップにポールが取り付けられたことを特徴とする、請求項2記載の測定用補助具。
【請求項4】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
レンズ上方部は支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、前記メガネフレームにメジャーが取り付けられた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項5】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
ヘッドギアと、前記基準点を与えるマーカと、前記マーカを支持する支持部とを備えた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項6】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
被験者の頭部を後方より支持する支持部分と、前記支持部分から延びた連結部に取り付けられた、前記基準点を与えるマーカとを備えた椅子である、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項7】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
台座と、前記台座に固定され、前記被験者の顎部及び額部の少なくとも一方を支持する支持部と、前記基準点を与えるマーカとを備えた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項8】
顔表面の運動機能を測定する装置であって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、前記画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき被験者の顔の部位の運動を解析する画像解析装置と
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項9】
前記画像解析装置は、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項8記載の測定装置。
【請求項10】
前記顔表面部位は被験者上眼瞼である、請求項8または9記載の測定装置。
【請求項11】
顔表面の運動機能を測定する方法であって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像するステップと、
撮像した画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップと
を含む、ことを特徴とする顔表面の運動機能の測定方法。
【請求項12】
前記運動を解析するステップは、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項11記載の測定方法。
【請求項13】
前記顔表面部位は上眼瞼である、請求項11または12記載の測定方法。
【請求項14】
情報処理装置を用いて顔表面の運動機能を測定するプログラムであって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を取り込むステップと、
前記画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを
前記情報処理装置に実行させる、
ことを特徴とする顔表面の運動機能測定プログラム。
【請求項15】
前記運動を解析するステップは、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項14記載の運動機能測定プログラム。
【請求項16】
前記顔表面部位は上眼瞼である、請求項14または15記載の運動機能測定プログラム。
【請求項1】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
レンズ上方部を支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、前記メガネフレームにマーカが取り付けられた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項2】
被験者の両耳の外耳道に挿入され得るイアチップと、前記イアチップを前記メガネフレームに連結する連結部とをさらに備えたことを特徴とする、請求項1記載の測定用補助具。
【請求項3】
さらに、前記両耳のイアチップにポールが取り付けられたことを特徴とする、請求項2記載の測定用補助具。
【請求項4】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
レンズ上方部は支持せず、レンズ下方部のみを支持するよう形成されたレンズ保持部を有するメガネフレームを含み、前記メガネフレームにメジャーが取り付けられた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項5】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
ヘッドギアと、前記基準点を与えるマーカと、前記マーカを支持する支持部とを備えた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項6】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
被験者の頭部を後方より支持する支持部分と、前記支持部分から延びた連結部に取り付けられた、前記基準点を与えるマーカとを備えた椅子である、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項7】
顔表面の基準点を提供するために使用される補助具であって、
台座と、前記台座に固定され、前記被験者の顎部及び額部の少なくとも一方を支持する支持部と、前記基準点を与えるマーカとを備えた、ことを特徴とする、測定用補助具。
【請求項8】
顔表面の運動機能を測定する装置であって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された被験者の顔の画像を取り込み、前記画像中に含まれるマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき被験者の顔の部位の運動を解析する画像解析装置と
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項9】
前記画像解析装置は、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項8記載の測定装置。
【請求項10】
前記顔表面部位は被験者上眼瞼である、請求項8または9記載の測定装置。
【請求項11】
顔表面の運動機能を測定する方法であって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を撮像するステップと、
撮像した画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップと
を含む、ことを特徴とする顔表面の運動機能の測定方法。
【請求項12】
前記運動を解析するステップは、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項11記載の測定方法。
【請求項13】
前記顔表面部位は上眼瞼である、請求項11または12記載の測定方法。
【請求項14】
情報処理装置を用いて顔表面の運動機能を測定するプログラムであって、
請求項1から7のいずれかに記載の測定用補助具を装着した被験者の顔の画像を取り込むステップと、
前記画像中に含まれる測定用補助具のマーカの位置に基づき基準点を設定して、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動を解析するステップとを
前記情報処理装置に実行させる、
ことを特徴とする顔表面の運動機能測定プログラム。
【請求項15】
前記運動を解析するステップは、前記基準点に基づき、被験者の顔表面部位の運動距離及び運動速度の少なくともいずれかを測定する、
請求項14記載の運動機能測定プログラム。
【請求項16】
前記顔表面部位は上眼瞼である、請求項14または15記載の運動機能測定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−139272(P2012−139272A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292391(P2010−292391)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本形成外科学会発行の「日本形成外科学会基礎学術集会プログラム・抄録集」第101頁(25)において、2010年8月19日に発表した。
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本形成外科学会発行の「日本形成外科学会基礎学術集会プログラム・抄録集」第101頁(25)において、2010年8月19日に発表した。
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】
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