顔領域に基づき設定された画像領域を対象とした補正処理
【課題】画像中から検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することを可能とする。
【解決手段】画像処理装置は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、検出された顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える。
【解決手段】画像処理装置は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、検出された顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔領域に基づき設定された画像領域を対象とした補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データの表す画像中から部分画像を順次切り出し、切り出した部分画像が顔に対応する画像であるか否かを判定することにより、画像中から顔の画像に対応する顔領域を検出する技術が知られている(例えば特許文献1ないし3)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−149018
【特許文献2】特開2007−108990
【特許文献3】特開2000−137788
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顔領域の検出の際には、顔の画像に対応していない画像領域を誤って顔領域として検出する誤検出が発生する場合がある。また、検出された顔領域は顔の画像に対応する画像領域ではあるものの、当該顔の画像が、顔の一部が例えばマスクのような遮蔽物により遮蔽された画像である場合もある。
【0005】
顔検出により検出された顔領域は、例えば所定の補正処理(例えば肌色補正)の対象となる対象画像領域の設定に用いられる。顔領域が、誤検出によるものであったり、顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理の結果が不自然なものとなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、画像中から検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]画像処理装置であって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える、画像処理装置。
【0009】
この画像処理装置では、検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で所定の補正処理が実行される。例えば顔領域が誤検出によるものであったり顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域が正しく検出されたものであったり顔が何ら遮蔽されてはいない画像に対応する画像領域であったりした場合とは、器官領域の検出結果が異なってくる。従って、この画像処理装置では、器官領域の検出結果に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度が前記器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0011】
この画像処理装置では、器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度を器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さく設定することにより、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記器官領域の検出結果に基づき、検出された前記器官領域が真に器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す器官領域信頼度を算出する器官領域信頼度算出部を備え、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功した場合における前記器官領域信頼度に基づき、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0013】
例えば顔領域が誤検出によるものであったり顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域が正しく検出されたものであったり顔が何ら遮蔽されてはいない画像に対応する画像領域であったりした場合とは、器官領域信頼度が異なってくる。従って、この画像処理装置では、器官領域の検出結果、すなわち器官領域信頼度に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0014】
[適用例4]適用例3に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0015】
この画像処理装置では、器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように補正内容を設定することにより、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0016】
[適用例5]適用例3または適用例4に記載の画像処理装置であって、
前記器官領域検出部は、
前記顔領域における互いに異なる複数の画像領域を順に判定対象画像領域に設定する判定対象設定部と、
前記判定対象画像領域について、顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す少なくとも1つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づき、前記判定対象画像領域が器官の画像に対応するか否かを判定する判定部と、
器官の画像に対応すると判定された1つまたは複数の互いに一部が重複する前記判定対象画像領域の位置および大きさに基づき、前記器官領域を設定する器官領域設定部と、を有し、
前記器官領域信頼度算出部は、前記器官領域の設定の際に参照された前記判定対象画像領域の数と前記評価値との少なくとも1つに基づき、前記器官領域信頼度を算出する、画像処理装置。
【0017】
この画像処理装置では、器官領域信頼度を器官領域が真に顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標値として算出することができ、器官領域信頼度に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記顔の器官は、右目と左目と口との少なくとも1つである、画像処理装置。
【0019】
この画像処理装置では、右目と左目と口との少なくとも1つである器官領域の検出結果に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、画像処理方法および装置、顔領域検出方法および装置、信頼度算出方法および装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.画像処理装置の構成:
A−2.顔領域・器官領域検出処理:
A−3.信頼度算出の他の方法:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0022】
A.第1実施例:
A−1.画像処理装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例における画像処理装置としてのプリンタ100の構成を概略的に示す説明図である。本実施例のプリンタ100は、メモリカードMC等から取得した画像データに基づき画像を印刷する、いわゆるダイレクトプリントに対応したインクジェット式カラープリンタである。プリンタ100は、プリンタ100の各部を制御するCPU110と、ROMやRAMによって構成された内部メモリ120と、ボタンやタッチパネルにより構成された操作部140と、液晶ディスプレイにより構成された表示部150と、プリンタエンジン160と、カードインターフェース(カードI/F)170と、を備えている。プリンタ100は、さらに、他の機器(例えばデジタルスチルカメラやパーソナルコンピュータ)とのデータ通信を行うためのインターフェースを備えているとしてもよい。プリンタ100の各構成要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0023】
プリンタエンジン160は、印刷データに基づき印刷を行う印刷機構である。カードインターフェース170は、カードスロット172に挿入されたメモリカードMCとの間でデータのやり取りを行うためのインターフェースである。なお、本実施例では、メモリカードMCに画像データを含む画像ファイルが格納されている。
【0024】
内部メモリ120には、画像処理部200と、表示処理部310と、印刷処理部320と、が格納されている。画像処理部200は、所定のオペレーティングシステムの下で、後述する顔領域・器官領域検出処理等の処理を実行するためのコンピュータプログラムである。表示処理部310は、表示部150を制御して、表示部150上に処理メニューやメッセージ、画像等を表示させるディスプレイドライバである。印刷処理部320は、画像データから印刷データを生成し、プリンタエンジン160を制御して、印刷データに基づく画像の印刷を実行するためのコンピュータプログラムである。CPU110は、内部メモリ120から、これらのプログラムを読み出して実行することにより、これら各部の機能を実現する。
【0025】
画像処理部200は、プログラムモジュールとして、領域検出部210と、信頼度算出部220と、情報付加部230と、を含んでいる。領域検出部210は、対象画像データの表す対象画像における所定の画像(例えば顔の画像や顔の器官の画像)に対応する画像領域の検出を行う。領域検出部210は、判定対象設定部212と、評価値算出部214と、判定部216と、領域設定部218と、を含んでいる。これら各部の機能については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。なお、後述するように、領域検出部210は、顔の画像に対応する顔領域の検出および顔の器官の画像に対応する器官領域の検出を行うため、本発明における顔領域検出部および器官領域検出部に相当する。
【0026】
信頼度算出部220は、領域検出部210により所定の画像(例えば顔の画像や顔の器官の画像)に対応する画像領域として検出された画像領域が、真に当該所定の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す信頼度を算出する。信頼度算出部220は、原信頼度算出部222を含んでいる。原信頼度算出部222の機能については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。なお、原信頼度算出部222は、後述の顔領域原信頼度の算出および器官領域原信頼度の算出を行うため、本発明における顔領域原信頼度算出部および器官領域原信頼度算出部に相当する。
【0027】
情報付加部230は、対象画像データを含む画像ファイルに後述する所定の情報(例えば顔領域および器官領域の位置を示す情報)を付加する。
【0028】
内部メモリ120には、また、領域検出部210による領域検出に用いられる顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDが格納されている。顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDの内容については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。
【0029】
A−2.顔領域・器官領域検出処理:
図2は、顔領域・器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。顔領域・器官領域検出処理は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行うと共に、検出された顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う処理である。本実施例では、顔の器官とは、右目と左目と口との3つの器官を意味している。
【0030】
ステップS110では、画像処理部200(図1)が、対象画像を表す対象画像データを取得する。本実施例のプリンタ100では、カードスロット172にメモリカードMCが挿入されると、メモリカードMCに格納された画像ファイルのサムネイル画像が表示部150に表示される。ユーザは、表示されたサムネイル画像を参照しつつ、操作部140を介して処理の対象となる1つまたは複数の画像を選択する。画像処理部200は、選択された1つまたは複数の画像に対応した画像データを対象画像データに設定し、対象画像データを含む画像ファイルをメモリカードMCより取得して内部メモリ120の所定の領域に格納する。
【0031】
ステップS120(図2)では、領域検出部210(図1)が、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う。図3は、顔領域検出処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、顔領域検出処理の概要を示す説明図である。図4の最上段には対象画像データの表す対象画像TImgの一例を示している。
【0032】
顔領域検出処理(図3)におけるステップS310では、領域検出部210(図1)が、対象画像データから顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データを生成する。本実施例では、図4に示すように、顔検出用画像FDImgは横320画素×縦240画素のサイズの画像である。領域検出部210は、必要により対象画像データの解像度変換を行うことにより、顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データを生成する。
【0033】
ステップS320(図3)では、判定対象設定部212(図1)が、判定対象画像(後述)の設定に用いるウィンドウSWのサイズを初期値に設定する。ステップS330では、判定対象設定部212が、ウィンドウSWを顔検出用画像FDImg上の初期位置に配置する。ステップS340では、判定対象設定部212が、顔検出用画像FDImg上に配置されたウィンドウSWにより規定される画像領域を、顔の画像に対応する顔領域であるか否かの判定(以下「顔判定」とも呼ぶ)の対象となる判定対象画像領域JIAに設定する。図4の中段には、顔検出用画像FDImg上に初期値のサイズのウィンドウSWが初期位置に配置され、ウィンドウSWにより規定される画像領域が判定対象画像領域JIAに設定された様子を示している。本実施例では、後述するように、正方形形状のウィンドウSWのサイズおよび位置が変更されつつ判定対象画像領域JIAの設定が順に行われるが、ウィンドウSWのサイズの初期値は最大サイズである横240画素×縦240画素であり、ウィンドウSWの初期位置はウィンドウSWの左上の頂点が顔検出用画像FDImgの左上の頂点に重なるような位置である。
【0034】
ステップS350(図3)では、評価値算出部214(図1)が、判定対象画像領域JIAについて、顔判定に用いる累計評価値Tvを算出する。なお、本実施例では、顔判定は予め設定された特定顔傾き毎に実行される。すなわち、特定顔傾き毎に、判定対象画像領域JIAが当該特定顔傾き分だけ傾いた顔の画像に対応する画像領域であるか否かの判定が行われる。そのため、累計評価値Tvも特定顔傾き毎に算出される。ここで、特定顔傾きとは、画像面内(インプレーン)における顔の画像の回転角度を意味している。本実施例では、特定顔傾きとして、画像の上下方向に沿って顔の画像が位置している状態(頭が上方向を向き顎が下方向を向いた状態)を基準(特定顔傾き=0度)とし、顔の画像の傾きを時計回りに30度ずつ増加させた計12個の傾き(0度、30度、60度、・・・、330度)が設定されている。
【0035】
図5は、顔判定に用いる累計評価値Tvの算出方法の概要を示す説明図である。本実施例では、累計評価値Tvの算出にN個のフィルタ(フィルタ1〜フィルタN)が用いられる。各フィルタの外形はウィンドウSWと同じアスペクト比を有しており(すなわち正方形形状であり)、各フィルタにはプラス領域paとマイナス領域maとが設定されている。評価値算出部214は、判定対象画像領域JIAにフィルタX(X=1,2,・・・,N)を順に適用して評価値vX(すなわちv1〜vN)を算出する。具体的には、評価値vXは、フィルタXのプラス領域paに対応する判定対象画像領域JIA上の領域内に位置する画素の輝度値の合計から、マイナス領域maに対応する判定対象画像領域JIA上の領域内に位置する画素の輝度値の合計を差し引いた値である。
【0036】
算出された評価値vXは、各評価値vXに対応して設定された閾値thX(すなわちth1〜thN)と比較される。本実施例では、評価値vXが閾値thX以上である場合には、フィルタXに関しては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する画像領域であると判定され、フィルタXの出力値として値「1」が設定される。一方、評価値vXが閾値thXより小さい場合には、フィルタXに関しては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応するとは考えられない画像領域であると判定され、フィルタXの出力値として値「0」が設定される。各フィルタXには重み係数WeX(すなわちWe1〜WeN)が設定されており、すべてのフィルタについての出力値と重み係数WeXとの積の合計が、累計評価値Tvとして算出される。
【0037】
なお、顔判定に用いられるフィルタXの態様や閾値thX、重み係数WeX、後述の閾値THは、上記12個の特定顔傾きのそれぞれについて予め設定されており、顔学習データFLD(図1)として内部メモリ120に格納されている。顔学習データFLDは、サンプル画像を用いた学習によって設定される。図6は、学習に用いられるサンプル画像の一例を示す説明図である。学習には、顔の画像に対応した画像であることが予めわかっている複数の顔サンプル画像によって構成された顔サンプル画像群と、顔の画像に対応した画像ではないことが予めわかっている複数の非顔サンプル画像によって構成された非顔サンプル画像群と、が用いられる。
【0038】
学習による顔学習データFLDの設定は特定顔傾き毎に実行されるため、図6に示すように、顔サンプル画像群は、12個の特定顔傾きのそれぞれに対応したものが準備される。例えば0度の特定顔傾きについての顔学習データFLDの設定は、0度の特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とを用いて実行され、30度の特定顔傾きについての顔学習データFLDの設定は、30度の特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とを用いて実行される。
【0039】
各特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群は、画像サイズに対する顔の画像の大きさの比が所定の値の範囲内であると共に顔の画像の傾きが特定顔傾きに等しい複数の顔サンプル画像(以下、「基本顔サンプル画像」とも呼ぶ)を含む。また、顔サンプル画像群は、少なくとも1つの基本サンプル画像について、基本サンプル画像を例えば1.2倍から0.8倍までの範囲の所定の倍率で拡大および縮小した画像(例えば図6における画像FIaおよびFIb)や、基本顔サンプル画像を時計回りおよび反時計回りに例えば15度の範囲で所定の角度だけ回転させた画像(例えば図6における画像FIcおよびFId)をも含む。
【0040】
サンプル画像を用いた学習は、例えばニューラルネットワークを用いた方法や、ブースティング(例えばアダブースティング)を用いた方法、サポートベクターマシーンを用いた方法等により実行される。例えば学習がニューラルネットワークを用いた方法により実行される場合には、各フィルタX(すなわちフィルタ1〜フィルタN、図5参照)について、ある特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とに含まれるすべてのサンプル画像を用いて評価値vX(すなわちv1〜vN)が算出され、所定の顔検出率を達成する閾値thX(すなわちth1〜thN)が設定される。ここで、顔検出率とは、顔サンプル画像群を構成する顔サンプル画像の総数に対する、評価値vXによる閾値判定によって顔の画像に対応する画像であると判定される顔サンプル画像の数の割合を意味している。
【0041】
次に、各フィルタXに設定された重み係数WeX(すなわちWe1〜WeN)が初期値に設定され、顔サンプル画像群および非顔サンプル画像群の中から選択された1つのサンプル画像についての累計評価値Tvが算出される。後述するように、顔判定においては、ある画像について算出された累計評価値Tvが所定の閾値TH以上の場合には、当該画像は顔の画像に対応する画像であると判定される。学習においては、選択されたサンプル画像(顔サンプル画像または非顔サンプル画像)について算出された累計評価値Tvによる閾値判定結果の正誤に基づき、各フィルタXに設定された重み係数WeXの値が修正される。以降、サンプル画像の選択と、選択されたサンプル画像について算出された累計評価値Tvによる閾値判定、および判定結果の正誤に基づく重み係数WeXの値の修正が、顔サンプル画像群および非顔サンプル画像群に含まれるすべてのサンプル画像について繰り返し実行される。以上の処理が特定顔傾き毎に実行されることにより、特定顔傾き毎の顔学習データFLDが設定される。
【0042】
判定対象画像領域JIAについて特定顔傾き毎に累計評価値Tvが算出されると(図3のステップS350)、判定部216(図1)は、累計評価値Tvを特定顔傾き毎に設定された閾値THと比較する(ステップS360)。ある特定顔傾きについて累計評価値Tvが閾値TH以上である場合には、領域検出部210が、判定対象画像領域JIAは当該特定顔傾き分だけ傾いた顔の画像に対応する画像領域であるとして、判定対象画像領域JIAの位置、すなわち現在設定されているウィンドウSWの座標と、当該特定顔傾きと、を記憶する(ステップS370)。一方、いずれの特定顔傾きについても累計評価値Tvが閾値THより小さい場合には、ステップS370の処理はスキップされる。
【0043】
ステップS380(図3)では、領域検出部210(図1)が、現在設定されているサイズのウィンドウSWにより顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたか否かを判定する。未だ顔検出用画像FDImg全体がスキャンされていないと判定された場合には、判定対象設定部212(図1)が、ウィンドウSWを所定の方向に所定の移動量だけ移動する(ステップS390)。図4の下段には、ウィンドウSWが移動した様子を示している。本実施例では、ステップS390において、ウィンドウSWがウィンドウSWの水平方向の大きさの2割分の移動量で右方向に移動するものとしている。また、ウィンドウSWがさらに右方向には移動できない位置に配置されている場合には、ステップS390において、ウィンドウSWが顔検出用画像FDImgの左端まで戻ると共に、ウィンドウSWの垂直方向の大きさの2割分の移動量で下方向に移動するものとしている。ウィンドウSWがさらに下方向には移動できない位置に配置されている場合には、顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたこととなる。ウィンドウSWの移動(ステップS390)の後には、移動後のウィンドウSWについて、上述のステップS340以降の処理が実行される。
【0044】
ステップS380(図3)において現在設定されているサイズのウィンドウSWにより顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたと判定された場合には、ウィンドウSWの所定のサイズがすべて使用されたか否かが判定される(ステップS400)。本実施例では、ウィンドウSWのサイズとして、初期値(最大サイズ)である横240画素×縦240画素の他に、横213画素×縦213画素、横178画素×縦178画素、横149画素×縦149画素、横124画素×縦124画素、横103画素×縦103画素、横86画素×縦86画素、横72画素×縦72画素、横60画素×縦60画素、横50画素×縦50画素、横41画素×縦41画素、横35画素×縦35画素、横29画素×縦29画素、横24画素×縦24画素、横20画素×縦20画素(最小サイズ)、の合計15個のサイズが設定されている。未だ使用されていないウィンドウSWのサイズがあると判定された場合には、判定対象設定部212(図1)が、ウィンドウSWのサイズを現在設定されているサイズの次に小さいサイズに変更する(ステップS410)。すなわち、ウィンドウSWのサイズは、最初に最大サイズに設定され、その後、順に小さいサイズに変更されていく。ウィンドウSWのサイズの変更(ステップS410)の後には、変更後のサイズのウィンドウSWについて、上述のステップS330以降の処理が実行される。
【0045】
ステップS400(図3)においてウィンドウSWの所定のサイズがすべて使用されたと判定された場合には、領域設定部218(図1)が、顔領域設定処理を実行する(ステップS420)。図7および図8は、顔領域設定処理の概要を示す説明図である。領域設定部218は、図3のステップS360において累計評価値Tvが閾値TH以上であると判定されステップS370において記憶されたウィンドウSWの座標と特定顔傾きとに基づき、顔の画像に対応する画像領域としての顔領域FAを設定する。具体的には、特定顔傾きが0度である場合には、ウィンドウSWにより規定される画像領域(すなわち判定対象画像領域JIA(図4参照))が、そのまま顔領域FAとして設定される。一方、特定顔傾きが0度以外である場合には、ウィンドウSWにより規定される画像領域(判定対象画像領域JIA)を所定の点(例えばウィンドウSWの重心)を中心として時計回りに特定顔傾き分だけ回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される。例えば図7(a)に示すように、30度の特定顔傾きについて累計評価値Tvが閾値TH以上であると判定された場合には、図7(b)に示すように、ウィンドウSWにより規定される画像領域をウィンドウSWの重心を中心として時計回りに30度回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される。
【0046】
また、領域設定部218は、ステップS370において、ある特定顔傾きについて互いに一部が重複する複数のウィンドウSWが記憶された場合には、各ウィンドウSWにおける所定の点(例えばウィンドウSWの重心)の座標の平均の座標を重心とし、各ウィンドウSWのサイズの平均のサイズを有する1つの新たなウィンドウ(以下、「平均ウィンドウAW」とも呼ぶ)を設定する。例えば図8(a)に示すように、互いに一部が重複する4つのウィンドウSW(SW1〜SW4)が記憶された場合には、図8(b)に示すように、4つのウィンドウSWのそれぞれの重心の座標の平均の座標を重心とし、4つのウィンドウSWのそれぞれのサイズの平均のサイズを有する1つの平均ウィンドウAWが定義される。このとき、上述したのと同様に、特定顔傾きが0度である場合には、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域がそのまま顔領域FAとして設定される。一方、特定顔傾きが0度以外である場合には、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域を所定の点(例えば平均ウィンドウAWの重心)を中心として時計回りに特定顔傾き分だけ回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される(図8(c)参照)。
【0047】
なお、図7に示したように、他のウィンドウSWと重複しない1つのウィンドウSWが記憶された場合にも、図8に示した互いに一部が重複する複数のウィンドウSWが記憶された場合と同様に、1つのウィンドウSW自身が平均ウィンドウAWであると解釈することも可能である。
【0048】
本実施例では、学習の際に用いられる顔サンプル画像群(図6参照)に、基本顔サンプル画像を例えば1.2倍から0.8倍までの範囲の所定の倍率で拡大および縮小した画像(例えば図6における画像FIaおよびFIb)が含まれているため、ウィンドウSWの大きさに対する顔の画像の大きさが基本サンプル画像と比べてわずかに大きかったり小さかったりする場合にも、顔領域FAが検出されうる。従って、本実施例では、ウィンドウSWのサイズとして上述した15個の離散的なサイズのみが設定されているが、あらゆる大きさの顔の画像について顔領域FAが検出されうる。同様に、本実施例では、学習の際に用いられる顔サンプル画像群に、基本顔サンプル画像を時計回りおよび反時計回りに例えば15度の範囲で所定の角度だけ回転させた画像(例えば図6における画像FIcおよびFId)が含まれているため、ウィンドウSWに対する顔の画像の傾きが基本サンプル画像とはわずかに異なっている場合にも、顔領域FAが検出されうる。従って、本実施例では、特定顔傾きとして上述した12個の離散的な角度のみが設定されているが、あらゆる角度の顔の画像について顔領域FAが検出されうる。
【0049】
顔領域検出処理(図2のステップS120)において、顔領域FAが検出されなかった場合には(ステップS130:No)、顔領域・器官領域検出処理は終了する。一方、少なくとも1つの顔領域FAが検出された場合には(ステップS130:Yes)、信頼度算出部220の原信頼度算出部222(図1)が、検出された顔領域FAについての顔領域原信頼度を算出する(ステップS140)。顔領域原信頼度は、顔領域検出処理の結果に基づき算出される指標であって、顔領域検出処理により検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。顔領域検出処理では、顔の画像に対応しない画像領域、すなわち、顔の画像をまったく含まない画像領域や顔の画像の一部を含むが顔の画像に真に対応する画像領域ではない画像領域が、誤って顔領域FAとして検出される可能性がある。顔領域原信頼度は、顔領域検出処理が、誤検出ではなく正しい検出であることの確からしさを表している。
【0050】
本実施例では、重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を顔領域原信頼度として用いている。ここで、重複ウィンドウ数は、各顔領域FAの設定の際に参照された判定対象画像領域JIAの数、すなわち判定対象画像領域JIAを規定するウィンドウSWの数である。例えば、図8(c)に示した顔領域FAの設定の際には、図8(a)および(b)に示した互いに一部が重複する4つのウィンドウSW(SW1〜SW4)が参照されているため、重複ウィンドウ数は4となる。また、最大重複ウィンドウ数は、顔領域検出処理において顔検出用画像FDImg(図4参照)上に配置されたすべてのウィンドウSWの内、少なくとも一部が平均ウィンドウAW(図8(b)参照)に重複するウィンドウSWの数である。最大重複ウィンドウ数は、ウィンドウSWの移動ピッチやサイズ変更のピッチにより一義的に定まる。
【0051】
検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域である場合には、位置およびサイズが互いに近似する複数のウィンドウSWについて、判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域であると判定される可能性が高い。一方、検出された顔領域FAが顔の画像に対応する画像領域ではなく誤検出である場合には、あるウィンドウSWについては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域であると判定されたとしても、当該ウィンドウSWに位置およびサイズが近似する別のウィンドウSWについては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域ではないと判定される可能性が高い。そのため、本実施例では、重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を顔領域原信頼度として用いている。
【0052】
ステップS150(図2)では、領域検出部210(図1)が、ステップS120において検出された顔領域FAの1つを選択する。ステップS160では、領域検出部210が、選択された顔領域FAにおける顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う。上述したように、本実施例では、顔の器官とは、右目と左目と口との3つの器官を意味している。図9は、器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。また、図10は、器官領域検出処理の概要を示す説明図である。図10の最上段には、顔検出処理に用いられた顔検出用画像FDImg(図4参照)の一例を示している。
【0053】
器官領域検出処理(図9)におけるステップS510では、領域検出部210(図1)が、顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データから器官検出用画像ODImgを表す器官検出用画像データを生成する。本実施例では、図10に示すように、器官検出用画像ODImgは、顔検出用画像FDImgにおける顔領域FAに対応した画像であって、横60画素×縦60画素のサイズの画像である。領域検出部210は、必要により顔検出用画像データのトリミング、アフィン変換、解像度変換を行うことにより、器官検出用画像ODImgを表す器官検出用画像データを生成する。
【0054】
器官検出用画像ODImgからの器官領域の検出は、上述した顔検出用画像FDImgからの顔領域FAの検出と同様に行われる。すなわち、図10に示すように、正方形形状のウィンドウSWがそのサイズおよび位置が変更されつつ器官検出用画像ODImg上に配置され(図9のステップS520,S530,S580〜S610)、配置されたウィンドウSWにより規定される画像領域が顔の器官の画像に対応する器官領域であるか否かの判定(以下「器官判定」とも呼ぶ)の対象となる判定対象画像領域JIAとして設定される(図9のステップS540)。設定された判定対象画像領域JIAについて、顔器官学習データOLD(図1)を用いて、器官(右目、左目、口)毎に、器官判定に用いられる累計評価値Tvが算出される(図9のステップS550)。顔器官学習データOLDは、累計評価値Tvの算出や器官判定に用いられるフィルタXの態様や閾値thX、重み係数WeX、閾値TH(図5参照)を規定するデータである。なお、顔器官学習データOLDの設定のための学習は、顔学習データFLDの設定のための学習と同様に、顔の器官の画像を含むことが予めわかっている複数の器官サンプル画像によって構成された器官サンプル画像群と、顔の器官の画像を含まないことが予めわかっている複数の非器官サンプル画像によって構成された非器官サンプル画像群と、を用いて実行される。
【0055】
なお、顔領域FAの検出(図3)においては累計評価値Tvが特定顔傾き毎に算出され、特定顔傾き毎に顔判定が行われるのに対し、器官検出用画像ODImgからの器官領域の検出では、累計評価値Tvは1つの判定対象画像領域JIAについて傾き0度に対応した1つの値のみが算出され、傾き0度に対応した器官の画像についての器官判定のみが行われる。これは、顔の器官の傾きは、顔全体の傾きに概ね一致するものと考えられるからである。ただし、器官領域の検出においても、所定の傾き毎に累計評価値Tvが算出され、所定の傾き毎に器官判定が行われるものとしてもよい。
【0056】
器官毎に算出された累計評価値Tvが所定の閾値TH以上である場合には、判定対象画像領域JIAは顔の当該器官の画像に対応する画像領域であるとして、判定対象画像領域JIAの位置、すなわち現在設定されているウィンドウSWの座標が記憶される(図9のステップS570)。一方、累計評価値Tvが閾値THより小さい場合には、ステップS570の処理はスキップされる。ウィンドウSWの所定のサイズのすべてについて、ウィンドウSWにより器官検出用画像ODImg全体がスキャンされた後に、器官領域設定処理が実行される(図9のステップS620)。器官領域設定処理は、顔領域設定処理(図8参照)と同様に、平均ウィンドウAWを設定して、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域を器官領域として設定する処理である。
【0057】
以上の処理により、器官検出用画像ODImgにおいて、右目の画像に対応する画像領域である右目領域EA(r)と、左目の画像に対応する画像領域である左目領域EA(l)と、口の画像に対応する画像領域である口領域MAと、の検出が行われる。図11は、器官領域の検出結果の一例を示す説明図である。
【0058】
ステップS160(図2)において少なくとも1つの器官領域が検出された場合には(ステップS170:Yes)、信頼度算出部220の原信頼度算出部222(図1)が、検出された器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度を算出する(ステップS180)。器官領域原信頼度は、器官領域検出処理の結果に基づき算出される指標であって、器官領域検出処理により検出されたある器官についての器官領域が真に顔の当該器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。器官領域検出処理では、顔の器官の画像に対応しない画像領域、すなわち、顔の器官の画像をまったく含まない画像領域や顔の器官の画像の一部を含むが顔の器官の画像に真に対応する画像領域ではない画像領域が、誤って器官領域として検出される場合がある。器官領域原信頼度は、器官領域検出処理が、誤検出ではなく正しい検出であることの確からしさを表している。
【0059】
本実施例では、上述した顔領域原信頼度と同様に、候補重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値が器官領域原信頼度として用いられる。なお、ステップS160において器官領域が検出されなかった場合には(ステップS170:No)、ステップS180の処理はスキップされる。
【0060】
ステップS190(図2)では、信頼度算出部220(図1)が、顔領域の検出結果、すなわちステップS140において算出された顔領域原信頼度と、器官領域の検出結果、すなわちステップS160における器官領域の検出の成否およびステップS180において算出された器官領域原信頼度と、に基づき、顔領域総合信頼度を算出する。顔領域総合信頼度は、顔領域の検出結果(顔領域原信頼度)に加えて器官領域の検出結果(器官領域の検出の成否および器官領域原信頼度)を考慮して算出される、顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。顔領域総合信頼度は、本発明における顔領域信頼度に相当する。
【0061】
本実施例では、顔領域総合信頼度は、顔領域原信頼度に各器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度を加算した値である。このとき、ステップS160において検出されなかった器官領域についての器官領域原信頼度はゼロとする。すなわち、すべての器官(右目、左目、口)についての器官領域が検出されなかった場合には、顔領域総合信頼度は顔領域原信頼度に等しい。
【0062】
検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域である場合には、顔領域FAに器官の画像が含まれている可能性が高いため、顔領域FAにおいて器官領域が検出される可能性が高く、また器官領域原信頼度が大きいと考えられる。一方、検出された顔領域FAが顔の画像に対応する画像領域ではなく誤検出である場合には、顔領域FAに器官の画像が含まれていないため、顔領域FAにおいて器官領域が検出される可能性は低く、仮に器官領域が検出された場合にも、その検出は誤検出であるため器官領域原信頼度は小さいと考えられる。そのため、顔領域原信頼度に各器官領域についての器官領域原信頼度を加算した値を顔領域総合信頼度として用いることにより、対象画像中の顔領域FAの検出における信頼度をより精度良く算出することができる。
【0063】
ステップS150(図2)において選択された顔領域FAについての顔領域総合信頼度の算出(ステップS190)の完了後、ステップS120において検出された顔領域FAでステップS150における選択が未だなされていない顔領域FAが存在するか否かが判定される(ステップS200)。未だ選択されていない顔領域FAが存在すると判定された場合には(ステップS200:No)、ステップS150に戻って未選択の顔領域FAの1つが選択され、ステップS160以降の処理が実行される。一方、検出されたすべての顔領域FAが選択されたと判定された場合には(ステップS200:Yes)、処理はステップS210に進む。
【0064】
ステップS210(図2)では、情報付加部230(図1)が、対象画像における検出された顔領域FAおよび器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の位置(座標)を示す情報と、算出された顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とを、対象画像データを含む画像ファイルに付属情報として付加する。これにより、対象画像データと、対象画像における顔領域および器官領域の位置(座標)を示す情報と、顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とが含まれた画像ファイルが生成される。
【0065】
生成された画像ファイルに含まれる種々の情報は、種々の用途に利用可能である。例えば、顔領域FA、あるいは顔領域FAに基づき設定された画像領域を対象画像領域として所定の補正処理を行う場合に、顔領域総合信頼度に基づき補正処理内容を設定することが可能である。例えば、所定の補正処理が対象画像領域内の画像の変形である場合には、顔領域総合信頼度が比較的小さいときの変形量が、顔領域総合信頼度が比較的大きいときの変形量より小さい値に設定される。あるいは、顔領域総合信頼度が所定の閾値より小さい場合には、画像の変形が実行されない(すなわち変形量がゼロに設定される)。このようにすれば、対象画像領域に対する変形処理の結果をより自然なものとすることができる。一般に、顔領域総合信頼度が比較的小さい場合には、顔領域総合信頼度が比較的大きい場合より、所定の補正処理における補正の程度が小さい値に設定されることが好ましい。
【0066】
以上説明したように、第1実施例のプリンタ100では、顔領域の検出結果(すなわちステップS140において算出された顔領域原信頼度)と、器官領域の検出結果(すなわちステップS160における器官領域の検出の成否およびステップS180において算出された器官領域原信頼度)と、に基づき、顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である顔領域総合信頼度が算出される。そのため、第1実施例のプリンタ100では、対象画像中の顔領域FAの検出における信頼度をより精度良く算出することができる。
【0067】
A−3.信頼度算出の他の方法:
上述した顔領域原信頼度および器官領域原信頼度(以下、まとめて「原信頼度」とも呼ぶ)の算出方法は種々変形可能である。例えば、顔領域検出処理(図3)のステップS350や器官領域検出処理(図9)のステップS550において算出された累計評価値Tv(図5参照)を原信頼度(顔領域原信頼度、器官領域原信頼度)として用いるとしてもよい。顔領域(または器官領域)が真に顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域である場合には累計評価値Tvは大きい値になる可能性が高いため、累計評価値Tvを原信頼度として用いることが可能である。なお、顔領域や器官領域の設定の際に複数のウィンドウSWが考慮された場合には(図8参照)、各ウィンドウSWに対応した判定対象画像領域JIAについて算出された累計評価値Tvの平均を原信頼度として用いればよい。
【0068】
また、累計評価値Tvの算出のために算出された各フィルタXについての評価値vX(図5参照)を用いて原信頼度を算出するとしてもよい。すなわち、累計評価値Tvの算出の際には、評価値vXは、閾値thXとの比較判定によって1または0の値に変換された後に重み係数WeXを乗じられていたが、評価値vXそのものと重み係数WeXとを乗算し、その積の合計を原信頼度として用いるとしてもよい。顔領域(または器官領域)が真に顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域である場合には上記積の合計は大きい値になる可能性が高いため、上記積の合計を原信頼度として用いることが可能である。なお、顔領域や器官領域の設定の際に複数のウィンドウSWが考慮された場合には、各ウィンドウSWに対応した判定対象画像領域JIAについて算出された評価値vXと重み係数WeXとの積の合計の平均を原信頼度として用いればよい。
【0069】
また、顔領域原信頼度については、ある特定顔傾きについて設定された顔領域FAに重複する他の特定顔傾きについて設定された顔領域FAの数を顔領域原信頼度として用いるとしてもよい。この場合に、特定顔傾きの差が所定値以上の場合には、重複数に含めないとすることが好ましい。
【0070】
また、上記実施例のように、候補重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を原信頼度(顔領域原信頼度、器官領域原信頼度)として用いる場合に、候補重複ウィンドウ数が所定数以上となった場合には、原信頼度は最大値であるとみなし、それ以降、重複する位置にウィンドウSWを配置しないようにしてもよい。このようにすれば、処理の高速化を図ることができる。
【0071】
上述した顔領域総合信頼度の算出方法も種々変形可能である。例えば、顔領域原信頼度に各器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度に応じて設定された値(器官領域原信頼度が大きいほど小さく設定される値)を減算した値を顔領域総合信頼度として用いるとしてもよい。このとき、ステップS160において少なくとも1つの顔の器官についての器官領域が検出されなかった場合には、顔領域総合信頼度をゼロとするとしてもよい。また、顔領域原信頼度と各器官領域についての器官領域原信頼度との平均値を顔領域総合信頼度として用いるとしてもよい。
【0072】
また、上記実施例では、器官領域原信頼度は、顔の器官(右目、左目、口)毎に算出されているが、すべての顔の器官に対応した1つの器官領域原信頼度が算出されるとしてもよい。
【0073】
B.第2実施例:
図12は、本発明の第2実施例における画像処理装置としてのプリンタ100aの構成を概略的に示す説明図である。第2実施例のプリンタ100aは、画像処理部200の構成が図1に示した第1実施例のプリンタ100と異なっている。すなわち、第2実施例のプリンタ100aの画像処理部200は、信頼度算出部220(図1参照)を含まず、原信頼度算出部222が信頼度算出部220から独立した要素となっている。また、第2実施例のプリンタ100aの画像処理部200は、情報付加部230(図1参照)を含まず、補正処理部240を含んでいる。プリンタ100aのその他の構成は、第1実施例のプリンタ100と同じである。
【0074】
補正処理部240は、領域検出部210により検出された顔領域FA(図7および図8参照)に基づき設定された対象画像領域を対象に、所定の補正処理を実行する。具体的には、補正処理部240は、顔領域FAそのものを対象画像領域として、肌の画像に対応した画像領域の色を好ましい肌色に補正する肌色補正を実行する。
【0075】
図13は、顔領域補正処理の流れを示すフローチャートである。顔領域補正処理は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行うと共に、検出された顔領域を対象画像領域として、肌色補正を実行する処理である。顔領域補正処理は、ユーザにより操作部140を介した処理の対象となる1つまたは複数の画像の選択に応じて開始される。
【0076】
顔領域補正処理(図13)のステップS110からS200までの処理内容は、第1実施例における顔領域・器官領域検出処理(図2)のステップS110からS200までの処理内容と同じである。ただし、第2実施例の顔領域補正処理では、第1実施例の顔領域・器官領域検出処理における顔領域原信頼度算出のステップ(図2のステップS140)と顔領域総合信頼度算出のステップ(図2のステップS190)とは実行されない。すなわち、第2実施例の顔領域補正処理では、算出される信頼度は、ステップS180において算出される器官領域原信頼度のみである。
【0077】
第2実施例の顔領域補正処理における顔領域検出(図13のステップS120)では、顔の器官(右目、左目、口)の少なくとも1つが遮蔽物(例えばマスクやサングラス)で遮蔽された顔の画像のように、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像であっても、顔領域FAとして検出されうる。図14および図15は、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。図14(a)には、口がマスクで遮蔽された顔の画像に対応して検出された顔領域FAの例を示しており、図14(b)には、顔領域FAにおいて検出された右目領域EA(r)および左目領域EA(l)の例を示している。図14(b)の例では、口領域MAは検出されていない。また、図15(a)には、両目がサングラスで遮蔽された顔の画像に対応して検出された顔領域FAの例を示しており、図15(b)には、顔領域FAにおいて検出された口領域MAの例を示している。図15(b)の例では、右目領域EA(r)および左目領域EA(l)は検出されていない。第2実施例では、顔学習データFLD(図1)を設定するための学習に用いられる顔サンプル画像群(図6参照)に、例えば口がマスクで遮蔽された顔のサンプル画像や両目がサングラスで遮蔽された顔のサンプル画像が含まれているため、顔領域検出において、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像であっても、顔領域FAとして検出可能となっている。
【0078】
顔領域補正処理におけるステップS230(図13)では、補正処理部240(図12)が、検出された顔領域FAを対象画像領域として、顔領域補正としての肌色補正を実行する。このとき補正処理部240は、器官領域の検出結果に基づき、肌色補正における補正内容を設定する。具体的には、補正処理部240は、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正の程度を最低(すなわち、補正量=ゼロ(補正しない))に設定する。一方、補正処理部240は、すべての器官領域の検出が成功した場合には、顔領域FA内の画素値に基づき肌色補正の程度を設定する。
【0079】
以上説明したように、第2実施例のプリンタ100aによる顔領域補正処理では、器官領域の検出結果に基づき、肌色補正における補正内容が設定される。具体的には、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正量はゼロに設定され、肌色補正は実行されない。検出された顔領域FAにおいて器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、当該顔領域FAは真に顔の画像に対応する画像領域ではあるものの、検出されなかった顔の器官が例えば遮蔽物で遮蔽され画像上に表現されていない可能性がある。このような場合に顔領域FAを対象として肌色補正のような補正処理を行うと、画像中の当該遮蔽物の画像の影響により補正結果が不自然なものとなる恐れがある。第2実施例の顔領域補正処理では、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には肌色補正は実行されないため、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0080】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0081】
C1.変形例1:
上記第1実施例では、情報付加部230により、対象画像における検出された顔領域FAおよび器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の位置(座標)を示す情報と、算出された顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とが、対象画像データを含む画像ファイルに付属情報として付加されているが、必ずしも画像ファイルにこのような情報がすべて付加される必要はなく、このような情報の一部のみが付加されるものとしてもよい。例えば、顔領域FAの位置を示す情報と顔領域総合信頼度とのみが、付属情報として画像ファイルに付加されるとしてもよい。また、顔領域FAの位置を示す情報と算出された顔領域総合信頼度とに加えて、器官領域の位置を示す情報と、顔領域原信頼度と、器官領域原信頼度と、の少なくとも1つが、付属情報として画像ファイルに付加されるとしてもよい。また、顔領域FAおよび器官領域の位置を示す情報、顔領域原信頼度、器官領域原信頼度、顔領域総合信頼度は、1つまたは複数のデータファイルとして内部メモリ120に格納され、画像ファイルと関連づけられるものとしてもよい。
【0082】
C2.変形例2:
上記第2実施例では、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正量がゼロに設定され、肌色補正は実行されないとしているが、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合にも、すべての器官領域の検出が成功した場合における肌色補正の程度と比較して小さい補正の程度で肌色補正が実行されるとしてもよい。
【0083】
また、上記第2実施例では、器官領域の検出結果に基づき顔領域補正処理における肌色補正の程度が設定されているが、本発明は、他の補正処理における補正内容の設定に適用可能である。例えば、顔領域FAを所定の倍率で拡大または縮小した画像領域が変形領域として設定され、補正処理として変形領域の画像変形が行われる場合に、器官領域の検出結果に基づき画像変形の変形量が設定されるとしてもよい。例えば、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、すべての器官領域の検出が成功した場合における変形量と比較して小さい変形量で画像変形が行われるとしてもよいし、変形量がゼロに設定され画像変形が行われないものとしてもよい。
【0084】
また、上記第2実施例では、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合に、肌色補正における補正量がゼロに設定され、肌色補正は実行されないとしているが、器官領域のすべての検出が成功しなかった場合にのみ肌色補正が実行されないものとしてもよい。あるいは、右目領域EA(r)と左目領域EA(l)とが共に検出されなかった場合にのみ肌色補正が実行されないものとしてもよい。
【0085】
また、上記第2実施例において、検出された器官領域の器官領域原信頼度に基づき、肌色補正における補正の程度が設定されるとしてもよい。例えば、すべての器官領域の検出が成功した場合であっても、各器官領域の器官領域原信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、補正の程度が設定されるとしてもよい。
【0086】
また、上記第2実施例において、器官領域原信頼度の算出(図13のステップS180)は必ずしも実行される必要はない。
【0087】
C3.変形例3:
上記各実施例における顔領域検出処理(図3)や器官領域検出処理(図9)の態様はあくまで一例であり、種々変更可能である。例えば顔検出用画像FDImg(図4参照)のサイズは320画素×240画素に限られず、他のサイズであってもよいし、対象画像TImgそのものを顔検出用画像FDImgとして用いることも可能である。同様に、器官検出用画像ODImg(図10参照)のサイズは60画素×60画素に限られず、他のサイズであってもよいし、顔検出用画像FDImgにおける顔領域FAのサイズそのものを器官検出用画像ODImgのサイズとして用いることも可能である。また、使用されるウィンドウSWのサイズやウィンドウSWの移動方向および移動量(移動ピッチ)は上述したものに限られない。また、上記各実施例では、顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImgのサイズが固定され、複数種類のサイズのウィンドウSWが顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImg上に配置されることにより複数サイズの判定対象画像領域JIAが設定されているが、複数種類のサイズの顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImgが生成され、固定サイズのウィンドウSWが顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImg上に配置されることにより複数サイズの判定対象画像領域JIAが設定されるものとしてもよい。
【0088】
また、上記各実施例では、累計評価値Tvを閾値THと比較することにより顔判定および器官判定を行っているが(図5参照)、顔判定および器官判定を複数の判別器を用いた判別等の他の方法によって行ってもよい。顔判定および器官判定の方法に応じて、顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDの設定に用いられる学習方法も変更される。また、顔判定および器官判定は、必ずしも学習を用いた判別方法により行われる必要はなく、パターンマッチング等の他の方法により行われるとしてもよい。
【0089】
また、上記各実施例では、30度刻みの12種類の特定顔傾き(図6参照)が設定されているが、より多くの種類の特定顔傾きが設定されてもよいし、より少ない種類の特定顔傾きが設定されてもよい。また、必ずしも特定顔傾きが設定される必要はなく、0度の顔傾きについての顔判定が行われるとしてもよい。また、上記各実施例では、顔サンプル画像群に基本サンプル画像を拡大・縮小した画像や回転させた画像が含まれるとしているが、顔サンプル画像群に必ずしもこのような画像が含まれる必要はない。
【0090】
上記各実施例において、あるサイズのウィンドウSWにより規定される判定対象画像領域JIAについての顔判定(または器官判定)で顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域であると判定された場合には、当該サイズより所定の比率以上小さいサイズのウィンドウSWを配置する場合には、顔の画像に対応する画像領域であると判定された判定対象画像領域JIAを避けて配置するものとしてもよい。このようにすれば、処理の高速化を図ることができる。
【0091】
上記各実施例では、顔領域検出処理(図2のステップS120)が完了した後に顔領域原信頼度の算出(図2のステップS140)が実行されるとしているが、顔領域原信頼度の算出は顔領域検出処理の途中で実行されるとしてもよい。例えば、顔領域検出処理においてウィンドウSWのサイズ毎に顔領域設定処理(図3のステップS420)が行われ、設定された顔領域FAについての顔領域原信頼度の算出が実行されるとしてもよい。器官領域原信頼度の算出(図2のステップS180)についても同様に変形可能である。
【0092】
上記各実施例では、メモリカードMCに格納された画像データが対象画像データに設定されているが、対象画像データはメモリカードMCに格納された画像データに限らず、例えばネットワークを介して取得された画像データであってもよい。
【0093】
上記各実施例では、顔の器官として、右目と左目と口とが設定されており、器官領域として、右目領域EA(r)と左目領域EA(l)と口領域MAとの検出が行われるが、顔の器官として顔のどの器官を設定するかは変更可能である。例えば、顔の器官として、右目と左目と口とのいずれか1つまたは2つのみが設定されるとしてもよい。また、顔の器官として、右目と左目と口とに加えて、または右目と左目と口との少なくとも1つに代わり、顔のその他の器官(例えば鼻や眉)が設定され、器官領域としてこのような器官の画像に対応する領域が検出されるとしてもよい。
【0094】
上記各実施例では、顔領域FAおよび器官領域は矩形の領域であるが、顔領域FAおよび器官領域は矩形以外の形状の領域であってもよい。
【0095】
上各記実施例では、画像処理装置としてのプリンタ100(または100a)による顔領域・器官領域検出処理(または顔領域補正処理)を説明したが、処理の一部または全部がパーソナルコンピュータやデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の他の種類の画像処理装置により実行されるものとしてもよい。また、プリンタ100(または100a)はインクジェットプリンタに限らず、他の方式のプリンタ、例えばレーザプリンタや昇華型プリンタであるとしてもよい。
【0096】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0097】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施例における画像処理装置としてのプリンタ100の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】顔領域・器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】顔領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】顔領域検出処理の概要を示す説明図である。
【図5】顔判定に用いる累計評価値Tvの算出方法の概要を示す説明図である。
【図6】学習に用いられるサンプル画像の一例を示す説明図である。
【図7】顔領域設定処理の概要を示す説明図である。
【図8】顔領域設定処理の概要を示す説明図である。
【図9】器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】器官領域検出処理の概要を示す説明図である。
【図11】器官領域の検出結果の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の第2実施例における画像処理装置としてのプリンタ100aの構成を概略的に示す説明図である。
【図13】顔領域補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。
【図15】顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
100…プリンタ
110…CPU
120…内部メモリ
140…操作部
150…表示部
160…プリンタエンジン
170…カードインターフェース
172…カードスロット
200…画像処理部
210…領域検出部
212…判定対象設定部
214…評価値算出部
216…判定部
218…領域設定部
220…信頼度算出部
222…原信頼度算出部
230…情報付加部
240…補正処理部
310…表示処理部
320…印刷処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔領域に基づき設定された画像領域を対象とした補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データの表す画像中から部分画像を順次切り出し、切り出した部分画像が顔に対応する画像であるか否かを判定することにより、画像中から顔の画像に対応する顔領域を検出する技術が知られている(例えば特許文献1ないし3)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−149018
【特許文献2】特開2007−108990
【特許文献3】特開2000−137788
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顔領域の検出の際には、顔の画像に対応していない画像領域を誤って顔領域として検出する誤検出が発生する場合がある。また、検出された顔領域は顔の画像に対応する画像領域ではあるものの、当該顔の画像が、顔の一部が例えばマスクのような遮蔽物により遮蔽された画像である場合もある。
【0005】
顔検出により検出された顔領域は、例えば所定の補正処理(例えば肌色補正)の対象となる対象画像領域の設定に用いられる。顔領域が、誤検出によるものであったり、顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理の結果が不自然なものとなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、画像中から検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]画像処理装置であって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える、画像処理装置。
【0009】
この画像処理装置では、検出された顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で所定の補正処理が実行される。例えば顔領域が誤検出によるものであったり顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域が正しく検出されたものであったり顔が何ら遮蔽されてはいない画像に対応する画像領域であったりした場合とは、器官領域の検出結果が異なってくる。従って、この画像処理装置では、器官領域の検出結果に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度が前記器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0011】
この画像処理装置では、器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度を器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さく設定することにより、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記器官領域の検出結果に基づき、検出された前記器官領域が真に器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す器官領域信頼度を算出する器官領域信頼度算出部を備え、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功した場合における前記器官領域信頼度に基づき、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0013】
例えば顔領域が誤検出によるものであったり顔の一部が遮蔽物により遮蔽された画像に対応する画像領域であったりした場合には、顔領域が正しく検出されたものであったり顔が何ら遮蔽されてはいない画像に対応する画像領域であったりした場合とは、器官領域信頼度が異なってくる。従って、この画像処理装置では、器官領域の検出結果、すなわち器官領域信頼度に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0014】
[適用例4]適用例3に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【0015】
この画像処理装置では、器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように補正内容を設定することにより、顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象とした所定の補正処理を行う際に、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0016】
[適用例5]適用例3または適用例4に記載の画像処理装置であって、
前記器官領域検出部は、
前記顔領域における互いに異なる複数の画像領域を順に判定対象画像領域に設定する判定対象設定部と、
前記判定対象画像領域について、顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す少なくとも1つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づき、前記判定対象画像領域が器官の画像に対応するか否かを判定する判定部と、
器官の画像に対応すると判定された1つまたは複数の互いに一部が重複する前記判定対象画像領域の位置および大きさに基づき、前記器官領域を設定する器官領域設定部と、を有し、
前記器官領域信頼度算出部は、前記器官領域の設定の際に参照された前記判定対象画像領域の数と前記評価値との少なくとも1つに基づき、前記器官領域信頼度を算出する、画像処理装置。
【0017】
この画像処理装置では、器官領域信頼度を器官領域が真に顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標値として算出することができ、器官領域信頼度に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記顔の器官は、右目と左目と口との少なくとも1つである、画像処理装置。
【0019】
この画像処理装置では、右目と左目と口との少なくとも1つである器官領域の検出結果に基づき補正内容を設定することにより、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、画像処理方法および装置、顔領域検出方法および装置、信頼度算出方法および装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.画像処理装置の構成:
A−2.顔領域・器官領域検出処理:
A−3.信頼度算出の他の方法:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0022】
A.第1実施例:
A−1.画像処理装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例における画像処理装置としてのプリンタ100の構成を概略的に示す説明図である。本実施例のプリンタ100は、メモリカードMC等から取得した画像データに基づき画像を印刷する、いわゆるダイレクトプリントに対応したインクジェット式カラープリンタである。プリンタ100は、プリンタ100の各部を制御するCPU110と、ROMやRAMによって構成された内部メモリ120と、ボタンやタッチパネルにより構成された操作部140と、液晶ディスプレイにより構成された表示部150と、プリンタエンジン160と、カードインターフェース(カードI/F)170と、を備えている。プリンタ100は、さらに、他の機器(例えばデジタルスチルカメラやパーソナルコンピュータ)とのデータ通信を行うためのインターフェースを備えているとしてもよい。プリンタ100の各構成要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0023】
プリンタエンジン160は、印刷データに基づき印刷を行う印刷機構である。カードインターフェース170は、カードスロット172に挿入されたメモリカードMCとの間でデータのやり取りを行うためのインターフェースである。なお、本実施例では、メモリカードMCに画像データを含む画像ファイルが格納されている。
【0024】
内部メモリ120には、画像処理部200と、表示処理部310と、印刷処理部320と、が格納されている。画像処理部200は、所定のオペレーティングシステムの下で、後述する顔領域・器官領域検出処理等の処理を実行するためのコンピュータプログラムである。表示処理部310は、表示部150を制御して、表示部150上に処理メニューやメッセージ、画像等を表示させるディスプレイドライバである。印刷処理部320は、画像データから印刷データを生成し、プリンタエンジン160を制御して、印刷データに基づく画像の印刷を実行するためのコンピュータプログラムである。CPU110は、内部メモリ120から、これらのプログラムを読み出して実行することにより、これら各部の機能を実現する。
【0025】
画像処理部200は、プログラムモジュールとして、領域検出部210と、信頼度算出部220と、情報付加部230と、を含んでいる。領域検出部210は、対象画像データの表す対象画像における所定の画像(例えば顔の画像や顔の器官の画像)に対応する画像領域の検出を行う。領域検出部210は、判定対象設定部212と、評価値算出部214と、判定部216と、領域設定部218と、を含んでいる。これら各部の機能については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。なお、後述するように、領域検出部210は、顔の画像に対応する顔領域の検出および顔の器官の画像に対応する器官領域の検出を行うため、本発明における顔領域検出部および器官領域検出部に相当する。
【0026】
信頼度算出部220は、領域検出部210により所定の画像(例えば顔の画像や顔の器官の画像)に対応する画像領域として検出された画像領域が、真に当該所定の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す信頼度を算出する。信頼度算出部220は、原信頼度算出部222を含んでいる。原信頼度算出部222の機能については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。なお、原信頼度算出部222は、後述の顔領域原信頼度の算出および器官領域原信頼度の算出を行うため、本発明における顔領域原信頼度算出部および器官領域原信頼度算出部に相当する。
【0027】
情報付加部230は、対象画像データを含む画像ファイルに後述する所定の情報(例えば顔領域および器官領域の位置を示す情報)を付加する。
【0028】
内部メモリ120には、また、領域検出部210による領域検出に用いられる顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDが格納されている。顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDの内容については、後述の顔領域・器官領域検出処理の説明において詳述する。
【0029】
A−2.顔領域・器官領域検出処理:
図2は、顔領域・器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。顔領域・器官領域検出処理は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行うと共に、検出された顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う処理である。本実施例では、顔の器官とは、右目と左目と口との3つの器官を意味している。
【0030】
ステップS110では、画像処理部200(図1)が、対象画像を表す対象画像データを取得する。本実施例のプリンタ100では、カードスロット172にメモリカードMCが挿入されると、メモリカードMCに格納された画像ファイルのサムネイル画像が表示部150に表示される。ユーザは、表示されたサムネイル画像を参照しつつ、操作部140を介して処理の対象となる1つまたは複数の画像を選択する。画像処理部200は、選択された1つまたは複数の画像に対応した画像データを対象画像データに設定し、対象画像データを含む画像ファイルをメモリカードMCより取得して内部メモリ120の所定の領域に格納する。
【0031】
ステップS120(図2)では、領域検出部210(図1)が、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う。図3は、顔領域検出処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、顔領域検出処理の概要を示す説明図である。図4の最上段には対象画像データの表す対象画像TImgの一例を示している。
【0032】
顔領域検出処理(図3)におけるステップS310では、領域検出部210(図1)が、対象画像データから顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データを生成する。本実施例では、図4に示すように、顔検出用画像FDImgは横320画素×縦240画素のサイズの画像である。領域検出部210は、必要により対象画像データの解像度変換を行うことにより、顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データを生成する。
【0033】
ステップS320(図3)では、判定対象設定部212(図1)が、判定対象画像(後述)の設定に用いるウィンドウSWのサイズを初期値に設定する。ステップS330では、判定対象設定部212が、ウィンドウSWを顔検出用画像FDImg上の初期位置に配置する。ステップS340では、判定対象設定部212が、顔検出用画像FDImg上に配置されたウィンドウSWにより規定される画像領域を、顔の画像に対応する顔領域であるか否かの判定(以下「顔判定」とも呼ぶ)の対象となる判定対象画像領域JIAに設定する。図4の中段には、顔検出用画像FDImg上に初期値のサイズのウィンドウSWが初期位置に配置され、ウィンドウSWにより規定される画像領域が判定対象画像領域JIAに設定された様子を示している。本実施例では、後述するように、正方形形状のウィンドウSWのサイズおよび位置が変更されつつ判定対象画像領域JIAの設定が順に行われるが、ウィンドウSWのサイズの初期値は最大サイズである横240画素×縦240画素であり、ウィンドウSWの初期位置はウィンドウSWの左上の頂点が顔検出用画像FDImgの左上の頂点に重なるような位置である。
【0034】
ステップS350(図3)では、評価値算出部214(図1)が、判定対象画像領域JIAについて、顔判定に用いる累計評価値Tvを算出する。なお、本実施例では、顔判定は予め設定された特定顔傾き毎に実行される。すなわち、特定顔傾き毎に、判定対象画像領域JIAが当該特定顔傾き分だけ傾いた顔の画像に対応する画像領域であるか否かの判定が行われる。そのため、累計評価値Tvも特定顔傾き毎に算出される。ここで、特定顔傾きとは、画像面内(インプレーン)における顔の画像の回転角度を意味している。本実施例では、特定顔傾きとして、画像の上下方向に沿って顔の画像が位置している状態(頭が上方向を向き顎が下方向を向いた状態)を基準(特定顔傾き=0度)とし、顔の画像の傾きを時計回りに30度ずつ増加させた計12個の傾き(0度、30度、60度、・・・、330度)が設定されている。
【0035】
図5は、顔判定に用いる累計評価値Tvの算出方法の概要を示す説明図である。本実施例では、累計評価値Tvの算出にN個のフィルタ(フィルタ1〜フィルタN)が用いられる。各フィルタの外形はウィンドウSWと同じアスペクト比を有しており(すなわち正方形形状であり)、各フィルタにはプラス領域paとマイナス領域maとが設定されている。評価値算出部214は、判定対象画像領域JIAにフィルタX(X=1,2,・・・,N)を順に適用して評価値vX(すなわちv1〜vN)を算出する。具体的には、評価値vXは、フィルタXのプラス領域paに対応する判定対象画像領域JIA上の領域内に位置する画素の輝度値の合計から、マイナス領域maに対応する判定対象画像領域JIA上の領域内に位置する画素の輝度値の合計を差し引いた値である。
【0036】
算出された評価値vXは、各評価値vXに対応して設定された閾値thX(すなわちth1〜thN)と比較される。本実施例では、評価値vXが閾値thX以上である場合には、フィルタXに関しては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する画像領域であると判定され、フィルタXの出力値として値「1」が設定される。一方、評価値vXが閾値thXより小さい場合には、フィルタXに関しては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応するとは考えられない画像領域であると判定され、フィルタXの出力値として値「0」が設定される。各フィルタXには重み係数WeX(すなわちWe1〜WeN)が設定されており、すべてのフィルタについての出力値と重み係数WeXとの積の合計が、累計評価値Tvとして算出される。
【0037】
なお、顔判定に用いられるフィルタXの態様や閾値thX、重み係数WeX、後述の閾値THは、上記12個の特定顔傾きのそれぞれについて予め設定されており、顔学習データFLD(図1)として内部メモリ120に格納されている。顔学習データFLDは、サンプル画像を用いた学習によって設定される。図6は、学習に用いられるサンプル画像の一例を示す説明図である。学習には、顔の画像に対応した画像であることが予めわかっている複数の顔サンプル画像によって構成された顔サンプル画像群と、顔の画像に対応した画像ではないことが予めわかっている複数の非顔サンプル画像によって構成された非顔サンプル画像群と、が用いられる。
【0038】
学習による顔学習データFLDの設定は特定顔傾き毎に実行されるため、図6に示すように、顔サンプル画像群は、12個の特定顔傾きのそれぞれに対応したものが準備される。例えば0度の特定顔傾きについての顔学習データFLDの設定は、0度の特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とを用いて実行され、30度の特定顔傾きについての顔学習データFLDの設定は、30度の特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とを用いて実行される。
【0039】
各特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群は、画像サイズに対する顔の画像の大きさの比が所定の値の範囲内であると共に顔の画像の傾きが特定顔傾きに等しい複数の顔サンプル画像(以下、「基本顔サンプル画像」とも呼ぶ)を含む。また、顔サンプル画像群は、少なくとも1つの基本サンプル画像について、基本サンプル画像を例えば1.2倍から0.8倍までの範囲の所定の倍率で拡大および縮小した画像(例えば図6における画像FIaおよびFIb)や、基本顔サンプル画像を時計回りおよび反時計回りに例えば15度の範囲で所定の角度だけ回転させた画像(例えば図6における画像FIcおよびFId)をも含む。
【0040】
サンプル画像を用いた学習は、例えばニューラルネットワークを用いた方法や、ブースティング(例えばアダブースティング)を用いた方法、サポートベクターマシーンを用いた方法等により実行される。例えば学習がニューラルネットワークを用いた方法により実行される場合には、各フィルタX(すなわちフィルタ1〜フィルタN、図5参照)について、ある特定顔傾きに対応した顔サンプル画像群と非顔サンプル画像群とに含まれるすべてのサンプル画像を用いて評価値vX(すなわちv1〜vN)が算出され、所定の顔検出率を達成する閾値thX(すなわちth1〜thN)が設定される。ここで、顔検出率とは、顔サンプル画像群を構成する顔サンプル画像の総数に対する、評価値vXによる閾値判定によって顔の画像に対応する画像であると判定される顔サンプル画像の数の割合を意味している。
【0041】
次に、各フィルタXに設定された重み係数WeX(すなわちWe1〜WeN)が初期値に設定され、顔サンプル画像群および非顔サンプル画像群の中から選択された1つのサンプル画像についての累計評価値Tvが算出される。後述するように、顔判定においては、ある画像について算出された累計評価値Tvが所定の閾値TH以上の場合には、当該画像は顔の画像に対応する画像であると判定される。学習においては、選択されたサンプル画像(顔サンプル画像または非顔サンプル画像)について算出された累計評価値Tvによる閾値判定結果の正誤に基づき、各フィルタXに設定された重み係数WeXの値が修正される。以降、サンプル画像の選択と、選択されたサンプル画像について算出された累計評価値Tvによる閾値判定、および判定結果の正誤に基づく重み係数WeXの値の修正が、顔サンプル画像群および非顔サンプル画像群に含まれるすべてのサンプル画像について繰り返し実行される。以上の処理が特定顔傾き毎に実行されることにより、特定顔傾き毎の顔学習データFLDが設定される。
【0042】
判定対象画像領域JIAについて特定顔傾き毎に累計評価値Tvが算出されると(図3のステップS350)、判定部216(図1)は、累計評価値Tvを特定顔傾き毎に設定された閾値THと比較する(ステップS360)。ある特定顔傾きについて累計評価値Tvが閾値TH以上である場合には、領域検出部210が、判定対象画像領域JIAは当該特定顔傾き分だけ傾いた顔の画像に対応する画像領域であるとして、判定対象画像領域JIAの位置、すなわち現在設定されているウィンドウSWの座標と、当該特定顔傾きと、を記憶する(ステップS370)。一方、いずれの特定顔傾きについても累計評価値Tvが閾値THより小さい場合には、ステップS370の処理はスキップされる。
【0043】
ステップS380(図3)では、領域検出部210(図1)が、現在設定されているサイズのウィンドウSWにより顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたか否かを判定する。未だ顔検出用画像FDImg全体がスキャンされていないと判定された場合には、判定対象設定部212(図1)が、ウィンドウSWを所定の方向に所定の移動量だけ移動する(ステップS390)。図4の下段には、ウィンドウSWが移動した様子を示している。本実施例では、ステップS390において、ウィンドウSWがウィンドウSWの水平方向の大きさの2割分の移動量で右方向に移動するものとしている。また、ウィンドウSWがさらに右方向には移動できない位置に配置されている場合には、ステップS390において、ウィンドウSWが顔検出用画像FDImgの左端まで戻ると共に、ウィンドウSWの垂直方向の大きさの2割分の移動量で下方向に移動するものとしている。ウィンドウSWがさらに下方向には移動できない位置に配置されている場合には、顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたこととなる。ウィンドウSWの移動(ステップS390)の後には、移動後のウィンドウSWについて、上述のステップS340以降の処理が実行される。
【0044】
ステップS380(図3)において現在設定されているサイズのウィンドウSWにより顔検出用画像FDImg全体がスキャンされたと判定された場合には、ウィンドウSWの所定のサイズがすべて使用されたか否かが判定される(ステップS400)。本実施例では、ウィンドウSWのサイズとして、初期値(最大サイズ)である横240画素×縦240画素の他に、横213画素×縦213画素、横178画素×縦178画素、横149画素×縦149画素、横124画素×縦124画素、横103画素×縦103画素、横86画素×縦86画素、横72画素×縦72画素、横60画素×縦60画素、横50画素×縦50画素、横41画素×縦41画素、横35画素×縦35画素、横29画素×縦29画素、横24画素×縦24画素、横20画素×縦20画素(最小サイズ)、の合計15個のサイズが設定されている。未だ使用されていないウィンドウSWのサイズがあると判定された場合には、判定対象設定部212(図1)が、ウィンドウSWのサイズを現在設定されているサイズの次に小さいサイズに変更する(ステップS410)。すなわち、ウィンドウSWのサイズは、最初に最大サイズに設定され、その後、順に小さいサイズに変更されていく。ウィンドウSWのサイズの変更(ステップS410)の後には、変更後のサイズのウィンドウSWについて、上述のステップS330以降の処理が実行される。
【0045】
ステップS400(図3)においてウィンドウSWの所定のサイズがすべて使用されたと判定された場合には、領域設定部218(図1)が、顔領域設定処理を実行する(ステップS420)。図7および図8は、顔領域設定処理の概要を示す説明図である。領域設定部218は、図3のステップS360において累計評価値Tvが閾値TH以上であると判定されステップS370において記憶されたウィンドウSWの座標と特定顔傾きとに基づき、顔の画像に対応する画像領域としての顔領域FAを設定する。具体的には、特定顔傾きが0度である場合には、ウィンドウSWにより規定される画像領域(すなわち判定対象画像領域JIA(図4参照))が、そのまま顔領域FAとして設定される。一方、特定顔傾きが0度以外である場合には、ウィンドウSWにより規定される画像領域(判定対象画像領域JIA)を所定の点(例えばウィンドウSWの重心)を中心として時計回りに特定顔傾き分だけ回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される。例えば図7(a)に示すように、30度の特定顔傾きについて累計評価値Tvが閾値TH以上であると判定された場合には、図7(b)に示すように、ウィンドウSWにより規定される画像領域をウィンドウSWの重心を中心として時計回りに30度回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される。
【0046】
また、領域設定部218は、ステップS370において、ある特定顔傾きについて互いに一部が重複する複数のウィンドウSWが記憶された場合には、各ウィンドウSWにおける所定の点(例えばウィンドウSWの重心)の座標の平均の座標を重心とし、各ウィンドウSWのサイズの平均のサイズを有する1つの新たなウィンドウ(以下、「平均ウィンドウAW」とも呼ぶ)を設定する。例えば図8(a)に示すように、互いに一部が重複する4つのウィンドウSW(SW1〜SW4)が記憶された場合には、図8(b)に示すように、4つのウィンドウSWのそれぞれの重心の座標の平均の座標を重心とし、4つのウィンドウSWのそれぞれのサイズの平均のサイズを有する1つの平均ウィンドウAWが定義される。このとき、上述したのと同様に、特定顔傾きが0度である場合には、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域がそのまま顔領域FAとして設定される。一方、特定顔傾きが0度以外である場合には、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域を所定の点(例えば平均ウィンドウAWの重心)を中心として時計回りに特定顔傾き分だけ回転させた画像領域が顔領域FAとして設定される(図8(c)参照)。
【0047】
なお、図7に示したように、他のウィンドウSWと重複しない1つのウィンドウSWが記憶された場合にも、図8に示した互いに一部が重複する複数のウィンドウSWが記憶された場合と同様に、1つのウィンドウSW自身が平均ウィンドウAWであると解釈することも可能である。
【0048】
本実施例では、学習の際に用いられる顔サンプル画像群(図6参照)に、基本顔サンプル画像を例えば1.2倍から0.8倍までの範囲の所定の倍率で拡大および縮小した画像(例えば図6における画像FIaおよびFIb)が含まれているため、ウィンドウSWの大きさに対する顔の画像の大きさが基本サンプル画像と比べてわずかに大きかったり小さかったりする場合にも、顔領域FAが検出されうる。従って、本実施例では、ウィンドウSWのサイズとして上述した15個の離散的なサイズのみが設定されているが、あらゆる大きさの顔の画像について顔領域FAが検出されうる。同様に、本実施例では、学習の際に用いられる顔サンプル画像群に、基本顔サンプル画像を時計回りおよび反時計回りに例えば15度の範囲で所定の角度だけ回転させた画像(例えば図6における画像FIcおよびFId)が含まれているため、ウィンドウSWに対する顔の画像の傾きが基本サンプル画像とはわずかに異なっている場合にも、顔領域FAが検出されうる。従って、本実施例では、特定顔傾きとして上述した12個の離散的な角度のみが設定されているが、あらゆる角度の顔の画像について顔領域FAが検出されうる。
【0049】
顔領域検出処理(図2のステップS120)において、顔領域FAが検出されなかった場合には(ステップS130:No)、顔領域・器官領域検出処理は終了する。一方、少なくとも1つの顔領域FAが検出された場合には(ステップS130:Yes)、信頼度算出部220の原信頼度算出部222(図1)が、検出された顔領域FAについての顔領域原信頼度を算出する(ステップS140)。顔領域原信頼度は、顔領域検出処理の結果に基づき算出される指標であって、顔領域検出処理により検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。顔領域検出処理では、顔の画像に対応しない画像領域、すなわち、顔の画像をまったく含まない画像領域や顔の画像の一部を含むが顔の画像に真に対応する画像領域ではない画像領域が、誤って顔領域FAとして検出される可能性がある。顔領域原信頼度は、顔領域検出処理が、誤検出ではなく正しい検出であることの確からしさを表している。
【0050】
本実施例では、重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を顔領域原信頼度として用いている。ここで、重複ウィンドウ数は、各顔領域FAの設定の際に参照された判定対象画像領域JIAの数、すなわち判定対象画像領域JIAを規定するウィンドウSWの数である。例えば、図8(c)に示した顔領域FAの設定の際には、図8(a)および(b)に示した互いに一部が重複する4つのウィンドウSW(SW1〜SW4)が参照されているため、重複ウィンドウ数は4となる。また、最大重複ウィンドウ数は、顔領域検出処理において顔検出用画像FDImg(図4参照)上に配置されたすべてのウィンドウSWの内、少なくとも一部が平均ウィンドウAW(図8(b)参照)に重複するウィンドウSWの数である。最大重複ウィンドウ数は、ウィンドウSWの移動ピッチやサイズ変更のピッチにより一義的に定まる。
【0051】
検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域である場合には、位置およびサイズが互いに近似する複数のウィンドウSWについて、判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域であると判定される可能性が高い。一方、検出された顔領域FAが顔の画像に対応する画像領域ではなく誤検出である場合には、あるウィンドウSWについては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域であると判定されたとしても、当該ウィンドウSWに位置およびサイズが近似する別のウィンドウSWについては判定対象画像領域JIAが顔の画像に対応する顔領域ではないと判定される可能性が高い。そのため、本実施例では、重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を顔領域原信頼度として用いている。
【0052】
ステップS150(図2)では、領域検出部210(図1)が、ステップS120において検出された顔領域FAの1つを選択する。ステップS160では、領域検出部210が、選択された顔領域FAにおける顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う。上述したように、本実施例では、顔の器官とは、右目と左目と口との3つの器官を意味している。図9は、器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。また、図10は、器官領域検出処理の概要を示す説明図である。図10の最上段には、顔検出処理に用いられた顔検出用画像FDImg(図4参照)の一例を示している。
【0053】
器官領域検出処理(図9)におけるステップS510では、領域検出部210(図1)が、顔検出用画像FDImgを表す顔検出用画像データから器官検出用画像ODImgを表す器官検出用画像データを生成する。本実施例では、図10に示すように、器官検出用画像ODImgは、顔検出用画像FDImgにおける顔領域FAに対応した画像であって、横60画素×縦60画素のサイズの画像である。領域検出部210は、必要により顔検出用画像データのトリミング、アフィン変換、解像度変換を行うことにより、器官検出用画像ODImgを表す器官検出用画像データを生成する。
【0054】
器官検出用画像ODImgからの器官領域の検出は、上述した顔検出用画像FDImgからの顔領域FAの検出と同様に行われる。すなわち、図10に示すように、正方形形状のウィンドウSWがそのサイズおよび位置が変更されつつ器官検出用画像ODImg上に配置され(図9のステップS520,S530,S580〜S610)、配置されたウィンドウSWにより規定される画像領域が顔の器官の画像に対応する器官領域であるか否かの判定(以下「器官判定」とも呼ぶ)の対象となる判定対象画像領域JIAとして設定される(図9のステップS540)。設定された判定対象画像領域JIAについて、顔器官学習データOLD(図1)を用いて、器官(右目、左目、口)毎に、器官判定に用いられる累計評価値Tvが算出される(図9のステップS550)。顔器官学習データOLDは、累計評価値Tvの算出や器官判定に用いられるフィルタXの態様や閾値thX、重み係数WeX、閾値TH(図5参照)を規定するデータである。なお、顔器官学習データOLDの設定のための学習は、顔学習データFLDの設定のための学習と同様に、顔の器官の画像を含むことが予めわかっている複数の器官サンプル画像によって構成された器官サンプル画像群と、顔の器官の画像を含まないことが予めわかっている複数の非器官サンプル画像によって構成された非器官サンプル画像群と、を用いて実行される。
【0055】
なお、顔領域FAの検出(図3)においては累計評価値Tvが特定顔傾き毎に算出され、特定顔傾き毎に顔判定が行われるのに対し、器官検出用画像ODImgからの器官領域の検出では、累計評価値Tvは1つの判定対象画像領域JIAについて傾き0度に対応した1つの値のみが算出され、傾き0度に対応した器官の画像についての器官判定のみが行われる。これは、顔の器官の傾きは、顔全体の傾きに概ね一致するものと考えられるからである。ただし、器官領域の検出においても、所定の傾き毎に累計評価値Tvが算出され、所定の傾き毎に器官判定が行われるものとしてもよい。
【0056】
器官毎に算出された累計評価値Tvが所定の閾値TH以上である場合には、判定対象画像領域JIAは顔の当該器官の画像に対応する画像領域であるとして、判定対象画像領域JIAの位置、すなわち現在設定されているウィンドウSWの座標が記憶される(図9のステップS570)。一方、累計評価値Tvが閾値THより小さい場合には、ステップS570の処理はスキップされる。ウィンドウSWの所定のサイズのすべてについて、ウィンドウSWにより器官検出用画像ODImg全体がスキャンされた後に、器官領域設定処理が実行される(図9のステップS620)。器官領域設定処理は、顔領域設定処理(図8参照)と同様に、平均ウィンドウAWを設定して、平均ウィンドウAWにより規定される画像領域を器官領域として設定する処理である。
【0057】
以上の処理により、器官検出用画像ODImgにおいて、右目の画像に対応する画像領域である右目領域EA(r)と、左目の画像に対応する画像領域である左目領域EA(l)と、口の画像に対応する画像領域である口領域MAと、の検出が行われる。図11は、器官領域の検出結果の一例を示す説明図である。
【0058】
ステップS160(図2)において少なくとも1つの器官領域が検出された場合には(ステップS170:Yes)、信頼度算出部220の原信頼度算出部222(図1)が、検出された器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度を算出する(ステップS180)。器官領域原信頼度は、器官領域検出処理の結果に基づき算出される指標であって、器官領域検出処理により検出されたある器官についての器官領域が真に顔の当該器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。器官領域検出処理では、顔の器官の画像に対応しない画像領域、すなわち、顔の器官の画像をまったく含まない画像領域や顔の器官の画像の一部を含むが顔の器官の画像に真に対応する画像領域ではない画像領域が、誤って器官領域として検出される場合がある。器官領域原信頼度は、器官領域検出処理が、誤検出ではなく正しい検出であることの確からしさを表している。
【0059】
本実施例では、上述した顔領域原信頼度と同様に、候補重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値が器官領域原信頼度として用いられる。なお、ステップS160において器官領域が検出されなかった場合には(ステップS170:No)、ステップS180の処理はスキップされる。
【0060】
ステップS190(図2)では、信頼度算出部220(図1)が、顔領域の検出結果、すなわちステップS140において算出された顔領域原信頼度と、器官領域の検出結果、すなわちステップS160における器官領域の検出の成否およびステップS180において算出された器官領域原信頼度と、に基づき、顔領域総合信頼度を算出する。顔領域総合信頼度は、顔領域の検出結果(顔領域原信頼度)に加えて器官領域の検出結果(器官領域の検出の成否および器官領域原信頼度)を考慮して算出される、顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である。顔領域総合信頼度は、本発明における顔領域信頼度に相当する。
【0061】
本実施例では、顔領域総合信頼度は、顔領域原信頼度に各器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度を加算した値である。このとき、ステップS160において検出されなかった器官領域についての器官領域原信頼度はゼロとする。すなわち、すべての器官(右目、左目、口)についての器官領域が検出されなかった場合には、顔領域総合信頼度は顔領域原信頼度に等しい。
【0062】
検出された顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域である場合には、顔領域FAに器官の画像が含まれている可能性が高いため、顔領域FAにおいて器官領域が検出される可能性が高く、また器官領域原信頼度が大きいと考えられる。一方、検出された顔領域FAが顔の画像に対応する画像領域ではなく誤検出である場合には、顔領域FAに器官の画像が含まれていないため、顔領域FAにおいて器官領域が検出される可能性は低く、仮に器官領域が検出された場合にも、その検出は誤検出であるため器官領域原信頼度は小さいと考えられる。そのため、顔領域原信頼度に各器官領域についての器官領域原信頼度を加算した値を顔領域総合信頼度として用いることにより、対象画像中の顔領域FAの検出における信頼度をより精度良く算出することができる。
【0063】
ステップS150(図2)において選択された顔領域FAについての顔領域総合信頼度の算出(ステップS190)の完了後、ステップS120において検出された顔領域FAでステップS150における選択が未だなされていない顔領域FAが存在するか否かが判定される(ステップS200)。未だ選択されていない顔領域FAが存在すると判定された場合には(ステップS200:No)、ステップS150に戻って未選択の顔領域FAの1つが選択され、ステップS160以降の処理が実行される。一方、検出されたすべての顔領域FAが選択されたと判定された場合には(ステップS200:Yes)、処理はステップS210に進む。
【0064】
ステップS210(図2)では、情報付加部230(図1)が、対象画像における検出された顔領域FAおよび器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の位置(座標)を示す情報と、算出された顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とを、対象画像データを含む画像ファイルに付属情報として付加する。これにより、対象画像データと、対象画像における顔領域および器官領域の位置(座標)を示す情報と、顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とが含まれた画像ファイルが生成される。
【0065】
生成された画像ファイルに含まれる種々の情報は、種々の用途に利用可能である。例えば、顔領域FA、あるいは顔領域FAに基づき設定された画像領域を対象画像領域として所定の補正処理を行う場合に、顔領域総合信頼度に基づき補正処理内容を設定することが可能である。例えば、所定の補正処理が対象画像領域内の画像の変形である場合には、顔領域総合信頼度が比較的小さいときの変形量が、顔領域総合信頼度が比較的大きいときの変形量より小さい値に設定される。あるいは、顔領域総合信頼度が所定の閾値より小さい場合には、画像の変形が実行されない(すなわち変形量がゼロに設定される)。このようにすれば、対象画像領域に対する変形処理の結果をより自然なものとすることができる。一般に、顔領域総合信頼度が比較的小さい場合には、顔領域総合信頼度が比較的大きい場合より、所定の補正処理における補正の程度が小さい値に設定されることが好ましい。
【0066】
以上説明したように、第1実施例のプリンタ100では、顔領域の検出結果(すなわちステップS140において算出された顔領域原信頼度)と、器官領域の検出結果(すなわちステップS160における器官領域の検出の成否およびステップS180において算出された器官領域原信頼度)と、に基づき、顔領域FAが真に顔の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す指標である顔領域総合信頼度が算出される。そのため、第1実施例のプリンタ100では、対象画像中の顔領域FAの検出における信頼度をより精度良く算出することができる。
【0067】
A−3.信頼度算出の他の方法:
上述した顔領域原信頼度および器官領域原信頼度(以下、まとめて「原信頼度」とも呼ぶ)の算出方法は種々変形可能である。例えば、顔領域検出処理(図3)のステップS350や器官領域検出処理(図9)のステップS550において算出された累計評価値Tv(図5参照)を原信頼度(顔領域原信頼度、器官領域原信頼度)として用いるとしてもよい。顔領域(または器官領域)が真に顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域である場合には累計評価値Tvは大きい値になる可能性が高いため、累計評価値Tvを原信頼度として用いることが可能である。なお、顔領域や器官領域の設定の際に複数のウィンドウSWが考慮された場合には(図8参照)、各ウィンドウSWに対応した判定対象画像領域JIAについて算出された累計評価値Tvの平均を原信頼度として用いればよい。
【0068】
また、累計評価値Tvの算出のために算出された各フィルタXについての評価値vX(図5参照)を用いて原信頼度を算出するとしてもよい。すなわち、累計評価値Tvの算出の際には、評価値vXは、閾値thXとの比較判定によって1または0の値に変換された後に重み係数WeXを乗じられていたが、評価値vXそのものと重み係数WeXとを乗算し、その積の合計を原信頼度として用いるとしてもよい。顔領域(または器官領域)が真に顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域である場合には上記積の合計は大きい値になる可能性が高いため、上記積の合計を原信頼度として用いることが可能である。なお、顔領域や器官領域の設定の際に複数のウィンドウSWが考慮された場合には、各ウィンドウSWに対応した判定対象画像領域JIAについて算出された評価値vXと重み係数WeXとの積の合計の平均を原信頼度として用いればよい。
【0069】
また、顔領域原信頼度については、ある特定顔傾きについて設定された顔領域FAに重複する他の特定顔傾きについて設定された顔領域FAの数を顔領域原信頼度として用いるとしてもよい。この場合に、特定顔傾きの差が所定値以上の場合には、重複数に含めないとすることが好ましい。
【0070】
また、上記実施例のように、候補重複ウィンドウ数を最大重複ウィンドウ数で除した値を原信頼度(顔領域原信頼度、器官領域原信頼度)として用いる場合に、候補重複ウィンドウ数が所定数以上となった場合には、原信頼度は最大値であるとみなし、それ以降、重複する位置にウィンドウSWを配置しないようにしてもよい。このようにすれば、処理の高速化を図ることができる。
【0071】
上述した顔領域総合信頼度の算出方法も種々変形可能である。例えば、顔領域原信頼度に各器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)についての器官領域原信頼度に応じて設定された値(器官領域原信頼度が大きいほど小さく設定される値)を減算した値を顔領域総合信頼度として用いるとしてもよい。このとき、ステップS160において少なくとも1つの顔の器官についての器官領域が検出されなかった場合には、顔領域総合信頼度をゼロとするとしてもよい。また、顔領域原信頼度と各器官領域についての器官領域原信頼度との平均値を顔領域総合信頼度として用いるとしてもよい。
【0072】
また、上記実施例では、器官領域原信頼度は、顔の器官(右目、左目、口)毎に算出されているが、すべての顔の器官に対応した1つの器官領域原信頼度が算出されるとしてもよい。
【0073】
B.第2実施例:
図12は、本発明の第2実施例における画像処理装置としてのプリンタ100aの構成を概略的に示す説明図である。第2実施例のプリンタ100aは、画像処理部200の構成が図1に示した第1実施例のプリンタ100と異なっている。すなわち、第2実施例のプリンタ100aの画像処理部200は、信頼度算出部220(図1参照)を含まず、原信頼度算出部222が信頼度算出部220から独立した要素となっている。また、第2実施例のプリンタ100aの画像処理部200は、情報付加部230(図1参照)を含まず、補正処理部240を含んでいる。プリンタ100aのその他の構成は、第1実施例のプリンタ100と同じである。
【0074】
補正処理部240は、領域検出部210により検出された顔領域FA(図7および図8参照)に基づき設定された対象画像領域を対象に、所定の補正処理を実行する。具体的には、補正処理部240は、顔領域FAそのものを対象画像領域として、肌の画像に対応した画像領域の色を好ましい肌色に補正する肌色補正を実行する。
【0075】
図13は、顔領域補正処理の流れを示すフローチャートである。顔領域補正処理は、対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行うと共に、検出された顔領域を対象画像領域として、肌色補正を実行する処理である。顔領域補正処理は、ユーザにより操作部140を介した処理の対象となる1つまたは複数の画像の選択に応じて開始される。
【0076】
顔領域補正処理(図13)のステップS110からS200までの処理内容は、第1実施例における顔領域・器官領域検出処理(図2)のステップS110からS200までの処理内容と同じである。ただし、第2実施例の顔領域補正処理では、第1実施例の顔領域・器官領域検出処理における顔領域原信頼度算出のステップ(図2のステップS140)と顔領域総合信頼度算出のステップ(図2のステップS190)とは実行されない。すなわち、第2実施例の顔領域補正処理では、算出される信頼度は、ステップS180において算出される器官領域原信頼度のみである。
【0077】
第2実施例の顔領域補正処理における顔領域検出(図13のステップS120)では、顔の器官(右目、左目、口)の少なくとも1つが遮蔽物(例えばマスクやサングラス)で遮蔽された顔の画像のように、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像であっても、顔領域FAとして検出されうる。図14および図15は、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。図14(a)には、口がマスクで遮蔽された顔の画像に対応して検出された顔領域FAの例を示しており、図14(b)には、顔領域FAにおいて検出された右目領域EA(r)および左目領域EA(l)の例を示している。図14(b)の例では、口領域MAは検出されていない。また、図15(a)には、両目がサングラスで遮蔽された顔の画像に対応して検出された顔領域FAの例を示しており、図15(b)には、顔領域FAにおいて検出された口領域MAの例を示している。図15(b)の例では、右目領域EA(r)および左目領域EA(l)は検出されていない。第2実施例では、顔学習データFLD(図1)を設定するための学習に用いられる顔サンプル画像群(図6参照)に、例えば口がマスクで遮蔽された顔のサンプル画像や両目がサングラスで遮蔽された顔のサンプル画像が含まれているため、顔領域検出において、顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像であっても、顔領域FAとして検出可能となっている。
【0078】
顔領域補正処理におけるステップS230(図13)では、補正処理部240(図12)が、検出された顔領域FAを対象画像領域として、顔領域補正としての肌色補正を実行する。このとき補正処理部240は、器官領域の検出結果に基づき、肌色補正における補正内容を設定する。具体的には、補正処理部240は、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正の程度を最低(すなわち、補正量=ゼロ(補正しない))に設定する。一方、補正処理部240は、すべての器官領域の検出が成功した場合には、顔領域FA内の画素値に基づき肌色補正の程度を設定する。
【0079】
以上説明したように、第2実施例のプリンタ100aによる顔領域補正処理では、器官領域の検出結果に基づき、肌色補正における補正内容が設定される。具体的には、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正量はゼロに設定され、肌色補正は実行されない。検出された顔領域FAにおいて器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、当該顔領域FAは真に顔の画像に対応する画像領域ではあるものの、検出されなかった顔の器官が例えば遮蔽物で遮蔽され画像上に表現されていない可能性がある。このような場合に顔領域FAを対象として肌色補正のような補正処理を行うと、画像中の当該遮蔽物の画像の影響により補正結果が不自然なものとなる恐れがある。第2実施例の顔領域補正処理では、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には肌色補正は実行されないため、補正結果が不自然なものとなる事態の発生を抑制することができる。
【0080】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0081】
C1.変形例1:
上記第1実施例では、情報付加部230により、対象画像における検出された顔領域FAおよび器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の位置(座標)を示す情報と、算出された顔領域原信頼度、器官領域原信頼度および顔領域総合信頼度とが、対象画像データを含む画像ファイルに付属情報として付加されているが、必ずしも画像ファイルにこのような情報がすべて付加される必要はなく、このような情報の一部のみが付加されるものとしてもよい。例えば、顔領域FAの位置を示す情報と顔領域総合信頼度とのみが、付属情報として画像ファイルに付加されるとしてもよい。また、顔領域FAの位置を示す情報と算出された顔領域総合信頼度とに加えて、器官領域の位置を示す情報と、顔領域原信頼度と、器官領域原信頼度と、の少なくとも1つが、付属情報として画像ファイルに付加されるとしてもよい。また、顔領域FAおよび器官領域の位置を示す情報、顔領域原信頼度、器官領域原信頼度、顔領域総合信頼度は、1つまたは複数のデータファイルとして内部メモリ120に格納され、画像ファイルと関連づけられるものとしてもよい。
【0082】
C2.変形例2:
上記第2実施例では、器官領域(右目領域EA(r)、左目領域EA(l)、口領域MA)の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、肌色補正における補正量がゼロに設定され、肌色補正は実行されないとしているが、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合にも、すべての器官領域の検出が成功した場合における肌色補正の程度と比較して小さい補正の程度で肌色補正が実行されるとしてもよい。
【0083】
また、上記第2実施例では、器官領域の検出結果に基づき顔領域補正処理における肌色補正の程度が設定されているが、本発明は、他の補正処理における補正内容の設定に適用可能である。例えば、顔領域FAを所定の倍率で拡大または縮小した画像領域が変形領域として設定され、補正処理として変形領域の画像変形が行われる場合に、器官領域の検出結果に基づき画像変形の変形量が設定されるとしてもよい。例えば、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合には、すべての器官領域の検出が成功した場合における変形量と比較して小さい変形量で画像変形が行われるとしてもよいし、変形量がゼロに設定され画像変形が行われないものとしてもよい。
【0084】
また、上記第2実施例では、器官領域の少なくとも1つの検出が成功しなかった場合に、肌色補正における補正量がゼロに設定され、肌色補正は実行されないとしているが、器官領域のすべての検出が成功しなかった場合にのみ肌色補正が実行されないものとしてもよい。あるいは、右目領域EA(r)と左目領域EA(l)とが共に検出されなかった場合にのみ肌色補正が実行されないものとしてもよい。
【0085】
また、上記第2実施例において、検出された器官領域の器官領域原信頼度に基づき、肌色補正における補正の程度が設定されるとしてもよい。例えば、すべての器官領域の検出が成功した場合であっても、各器官領域の器官領域原信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、補正の程度が設定されるとしてもよい。
【0086】
また、上記第2実施例において、器官領域原信頼度の算出(図13のステップS180)は必ずしも実行される必要はない。
【0087】
C3.変形例3:
上記各実施例における顔領域検出処理(図3)や器官領域検出処理(図9)の態様はあくまで一例であり、種々変更可能である。例えば顔検出用画像FDImg(図4参照)のサイズは320画素×240画素に限られず、他のサイズであってもよいし、対象画像TImgそのものを顔検出用画像FDImgとして用いることも可能である。同様に、器官検出用画像ODImg(図10参照)のサイズは60画素×60画素に限られず、他のサイズであってもよいし、顔検出用画像FDImgにおける顔領域FAのサイズそのものを器官検出用画像ODImgのサイズとして用いることも可能である。また、使用されるウィンドウSWのサイズやウィンドウSWの移動方向および移動量(移動ピッチ)は上述したものに限られない。また、上記各実施例では、顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImgのサイズが固定され、複数種類のサイズのウィンドウSWが顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImg上に配置されることにより複数サイズの判定対象画像領域JIAが設定されているが、複数種類のサイズの顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImgが生成され、固定サイズのウィンドウSWが顔検出用画像FDImgおよび器官検出用画像ODImg上に配置されることにより複数サイズの判定対象画像領域JIAが設定されるものとしてもよい。
【0088】
また、上記各実施例では、累計評価値Tvを閾値THと比較することにより顔判定および器官判定を行っているが(図5参照)、顔判定および器官判定を複数の判別器を用いた判別等の他の方法によって行ってもよい。顔判定および器官判定の方法に応じて、顔学習データFLDおよび顔器官学習データOLDの設定に用いられる学習方法も変更される。また、顔判定および器官判定は、必ずしも学習を用いた判別方法により行われる必要はなく、パターンマッチング等の他の方法により行われるとしてもよい。
【0089】
また、上記各実施例では、30度刻みの12種類の特定顔傾き(図6参照)が設定されているが、より多くの種類の特定顔傾きが設定されてもよいし、より少ない種類の特定顔傾きが設定されてもよい。また、必ずしも特定顔傾きが設定される必要はなく、0度の顔傾きについての顔判定が行われるとしてもよい。また、上記各実施例では、顔サンプル画像群に基本サンプル画像を拡大・縮小した画像や回転させた画像が含まれるとしているが、顔サンプル画像群に必ずしもこのような画像が含まれる必要はない。
【0090】
上記各実施例において、あるサイズのウィンドウSWにより規定される判定対象画像領域JIAについての顔判定(または器官判定)で顔の画像(または顔の器官の画像)に対応する画像領域であると判定された場合には、当該サイズより所定の比率以上小さいサイズのウィンドウSWを配置する場合には、顔の画像に対応する画像領域であると判定された判定対象画像領域JIAを避けて配置するものとしてもよい。このようにすれば、処理の高速化を図ることができる。
【0091】
上記各実施例では、顔領域検出処理(図2のステップS120)が完了した後に顔領域原信頼度の算出(図2のステップS140)が実行されるとしているが、顔領域原信頼度の算出は顔領域検出処理の途中で実行されるとしてもよい。例えば、顔領域検出処理においてウィンドウSWのサイズ毎に顔領域設定処理(図3のステップS420)が行われ、設定された顔領域FAについての顔領域原信頼度の算出が実行されるとしてもよい。器官領域原信頼度の算出(図2のステップS180)についても同様に変形可能である。
【0092】
上記各実施例では、メモリカードMCに格納された画像データが対象画像データに設定されているが、対象画像データはメモリカードMCに格納された画像データに限らず、例えばネットワークを介して取得された画像データであってもよい。
【0093】
上記各実施例では、顔の器官として、右目と左目と口とが設定されており、器官領域として、右目領域EA(r)と左目領域EA(l)と口領域MAとの検出が行われるが、顔の器官として顔のどの器官を設定するかは変更可能である。例えば、顔の器官として、右目と左目と口とのいずれか1つまたは2つのみが設定されるとしてもよい。また、顔の器官として、右目と左目と口とに加えて、または右目と左目と口との少なくとも1つに代わり、顔のその他の器官(例えば鼻や眉)が設定され、器官領域としてこのような器官の画像に対応する領域が検出されるとしてもよい。
【0094】
上記各実施例では、顔領域FAおよび器官領域は矩形の領域であるが、顔領域FAおよび器官領域は矩形以外の形状の領域であってもよい。
【0095】
上各記実施例では、画像処理装置としてのプリンタ100(または100a)による顔領域・器官領域検出処理(または顔領域補正処理)を説明したが、処理の一部または全部がパーソナルコンピュータやデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の他の種類の画像処理装置により実行されるものとしてもよい。また、プリンタ100(または100a)はインクジェットプリンタに限らず、他の方式のプリンタ、例えばレーザプリンタや昇華型プリンタであるとしてもよい。
【0096】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0097】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施例における画像処理装置としてのプリンタ100の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】顔領域・器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】顔領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】顔領域検出処理の概要を示す説明図である。
【図5】顔判定に用いる累計評価値Tvの算出方法の概要を示す説明図である。
【図6】学習に用いられるサンプル画像の一例を示す説明図である。
【図7】顔領域設定処理の概要を示す説明図である。
【図8】顔領域設定処理の概要を示す説明図である。
【図9】器官領域検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】器官領域検出処理の概要を示す説明図である。
【図11】器官領域の検出結果の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の第2実施例における画像処理装置としてのプリンタ100aの構成を概略的に示す説明図である。
【図13】顔領域補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。
【図15】顔の器官の少なくとも1つが表現されていない画像の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
100…プリンタ
110…CPU
120…内部メモリ
140…操作部
150…表示部
160…プリンタエンジン
170…カードインターフェース
172…カードスロット
200…画像処理部
210…領域検出部
212…判定対象設定部
214…評価値算出部
216…判定部
218…領域設定部
220…信頼度算出部
222…原信頼度算出部
230…情報付加部
240…補正処理部
310…表示処理部
320…印刷処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度が前記器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記器官領域の検出結果に基づき、検出された前記器官領域が真に器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す器官領域信頼度を算出する器官領域信頼度算出部を備え、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功した場合における前記器官領域信頼度に基づき、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記器官領域検出部は、
前記顔領域における互いに異なる複数の画像領域を順に判定対象画像領域に設定する判定対象設定部と、
前記判定対象画像領域について、顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す少なくとも1つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づき、前記判定対象画像領域が器官の画像に対応するか否かを判定する判定部と、
器官の画像に対応すると判定された1つまたは複数の互いに一部が重複する前記判定対象画像領域の位置および大きさに基づき、前記器官領域を設定する器官領域設定部と、を有し、
前記器官領域信頼度算出部は、前記器官領域の設定の際に参照された前記判定対象画像領域の数と前記評価値との少なくとも1つに基づき、前記器官領域信頼度を算出する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記顔の器官は、右目と左目と口との少なくとも1つである、画像処理装置。
【請求項7】
画像処理方法であって、
(a)対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う工程と、
(b)検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う工程と、
(c)検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する工程と、を備える、画像処理方法。
【請求項8】
画像処理のためのコンピュータプログラムであって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出機能と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出機能と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理機能と、を、コンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項1】
画像処理装置であって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出部と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出部と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理部と、を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功しなかった場合の補正の程度が前記器官領域の検出が成功した場合の補正の程度より小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記器官領域の検出結果に基づき、検出された前記器官領域が真に器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す器官領域信頼度を算出する器官領域信頼度算出部を備え、
前記補正処理部は、前記器官領域の検出が成功した場合における前記器官領域信頼度に基づき、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記補正処理部は、前記器官領域信頼度が小さいほど補正の程度が小さくなるように、前記補正内容を設定する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記器官領域検出部は、
前記顔領域における互いに異なる複数の画像領域を順に判定対象画像領域に設定する判定対象設定部と、
前記判定対象画像領域について、顔の器官の画像に対応する画像領域であることの確からしさを表す少なくとも1つの評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づき、前記判定対象画像領域が器官の画像に対応するか否かを判定する判定部と、
器官の画像に対応すると判定された1つまたは複数の互いに一部が重複する前記判定対象画像領域の位置および大きさに基づき、前記器官領域を設定する器官領域設定部と、を有し、
前記器官領域信頼度算出部は、前記器官領域の設定の際に参照された前記判定対象画像領域の数と前記評価値との少なくとも1つに基づき、前記器官領域信頼度を算出する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記顔の器官は、右目と左目と口との少なくとも1つである、画像処理装置。
【請求項7】
画像処理方法であって、
(a)対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う工程と、
(b)検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う工程と、
(c)検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する工程と、を備える、画像処理方法。
【請求項8】
画像処理のためのコンピュータプログラムであって、
対象画像データの表す対象画像における顔の画像に対応する画像領域である顔領域の検出を行う顔領域検出機能と、
検出された前記顔領域における顔の器官の画像に対応する画像領域である器官領域の検出を行う器官領域検出機能と、
検出された前記顔領域に基づき設定された対象画像領域を対象に、前記器官領域の検出結果に基づき設定された補正内容で、所定の補正処理を実行する補正処理機能と、を、コンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−217609(P2009−217609A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61402(P2008−61402)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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