顕微鏡に適用される遮光部材
【課題】 充分安価に製造することができるにも拘らず、環境光を充分に遮光することができ、そしてまたステージ(2)上へ試料(16)を載置する或いはステージ上から試料を取り出す際に特別な操作を加える必要がない、顕微鏡に適用される遮光部材(18)を提供する。
【解決手段】 少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、上部を対物レンズ組立体の外周面に被嵌することによって対物レンズ組立体に保持される、軟質重合体から形成された遮光部材(18)。
【解決手段】 少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、上部を対物レンズ組立体の外周面に被嵌することによって対物レンズ組立体に保持される、軟質重合体から形成された遮光部材(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されるものではないが特にラマン顕微鏡の如き微弱な光を検出する顕微鏡に好都合に適用することができる遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ラマン顕微鏡においては、微弱なラマン散乱光を検出するために、周囲の光即ち環境光を遮断することが重要である。また、試料を照明するレーザー光が周囲に漏れることが充分に防止されることも重要である。そこで、従来は、下記特許文献1乃至3に開示されている如く、顕微鏡の少なくとも主要部を覆う金属薄板製カバー部材を配設し、その少なくとも一部を開閉自在に構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−11045号公報
【特許文献2】特開2008−262031号公報
【特許文献3】特開2009−98230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、上記カバー部材は比較的高価である。加えて、ステージ上に被検査物即ち試料を載置する或いは試料をステージ上から取り出す際には、カバー部材の少なくとも一部を開閉動せしめることが必要であり、操作が煩雑であった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、充分安価に製造することができるにも拘らず、環境光を充分に遮光することができ、そしてまたステージ上へ試料を載置する或いはステージ上から試料を取り出す際に特別な操作を加える必要がない、新規且つ改良された遮光部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討の結果、少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、対物レンズ組立体の外周面に被嵌することによって対物レンズ組立体に保持される遮光部材を軟質重合体から形成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成することができる遮光部材として、試料が載置されるステージと該ステージに対向する対物レンズ組立体とを具備し、該対物レンズ組立体は円筒形状の外周面を有する顕微鏡に適用される遮光部材にして、
少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、軟質重合体から形成されていて、該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌することによって該対物レンズ組立体に保持される、ことを特徴とする遮光部材が提供される。
【0008】
好ましくは、遮光部材は300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下である。遮光部材の反発弾性率(JISK6255)は30%以上であり、圧縮永久歪率(JISK6301)は30%以下であるのが好適である。遮光部材は30%伸張せしめても破断せず、アスカーC型硬度は10乃至40であり、比重は1以下であるのが好都合である。軟質重合体の好適例としては、独立気泡スポンジ、特に独立気泡クロロプレン系ゴムスポンジ、を挙げることができる。遮光部材はカーボンブラックで着色されているのが好適である。好適実施形態においては、上部と下部とは硬度が異なり、上部の硬度は下部の硬度より大きい。好ましくは、厚さ方向全体に渡って延在すると共に軸線方向全体に渡って延在するスリットが形成されている。該スリットは半径方向に対して30度乃至70度の傾斜角度で傾斜せしめられている、或いは内周面から外周面まで凸円弧形状に延在せしめられているのが好都合である。該凸円弧形状は内周面の内径よりも大きい曲率半径を有するのが好適である。好ましくは、該スリットに対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片が形成されている。該スリットの周方向片側近傍から該スリットから遠ざかる方向に該スリットの他側近傍まで周方向に延びる弾性部材が埋設されているのが好都合である。好適実施形態においては、下部は下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状の内周面を有する、或いは下部の内周面は上部の内形よりも大きい内径を有する円筒形状である。下部には下端から上方に延びる円環状の切り目が少なくとも1個配設されている、及び/又は下部には半径方向に延びる切り目が周方向に間隔をおいて複数個配設されているのが好都合である。下端部には被検出部材を埋設することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遮光部材によれば、安価に製造することができるにも拘らず、単に対物レンズ組立体の外周面には被嵌することによって環境光を充分に遮光することができる。ステ−ジ上に試料を載置する或いはステージ上から試料を取り出す際には、単にステージに対して対物レンズを離隔する方向に相対的に移動せしめればよく、対物レンズ組立体から遮光部材を離脱せしめる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された遮光部材が適用されるラマン顕微鏡の要部を示す部分断面図。
【図2】本発明に従って構成された遮光部材の好適実施形態を示す斜面図。
【図3】図2に図示する遮光部材を図1に図示するラマン顕微鏡の対物レンズ組立体に適用した状態を示す部分断面図。
【図4】図3に図示する状態からステージを若干上昇せしめて、対物レンズ組立体に対して遮光部材を若干上方に変位せしめた状態を示す部分断面図。
【図5】図3に図示する状態からステージを若干上昇せしめて、遮光部材の下端部を若干弾性的に圧縮して状態を示す部分断面図。
【図6】本発明に従って構成された遮光部材の変形例を示す斜面図。
【図7】本発明に従って構成された遮光部材の他の変形例を示す斜面図。
【図8】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す斜面図。
【図9】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図10】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す斜面図。
【図11】図10に図示する遮光部材の平面図。
【図12】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図13】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図14】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す底面図。
【図15】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図16】図15に図示する遮光部材の使用形態を示す斜面図。
【図17】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図18】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図19】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図20】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された遮光部材の好適実施形態について、更に詳述する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成された遮光部材が適用されるラマン顕微鏡の要部が簡略に図示されている。図示のラマン顕微鏡は実質上水平に延在せしめられているステージ2を含んでいる。鋼板の如き適宜の金属板から形成することができるステージ2は、X方向(図1において左右方向)、Y方向(図1において紙面に垂直な方向)及びZ方向(図1において上下方向)に移動自在に装着されており、手動操作することができる移動機構(図示していない)によってX方向、Y方向及びZ方向に適宜に移動せしめられる(所望ならば、ステージ2をZ方向に移動せしめることに代えて或いはこれに加えて、後述する対物レンズ組立体12をZ方向に移動せしめることもできる)。ステージ2の中央部には上下方向に貫通する開口4が形成されている。ステージ2の下方には、コンデンサレンズ組立体6が昇降動自在に配設されており、手動操作することができる昇降動機構(図示していない)によって昇降動せしめられる。ステージ2の下面にはコンデンサレンズ組立体6を囲繞する適宜の遮光カバー8が配設されており、ステージ2の下面とコンデンサレンズ組立体6の周囲は環境光から遮光されている。ステージ2の上方には対物レンズレボルバー10(図1にその一部のみを図示している)が配設されている。この対物レンズレボルバー10には複数個の対物レンズ組立体12(図1にはそのうちの1個のみを図示している)が装着されており、対物レンズレボルバー10を回転せしめることによって所要の対物レンズ組立体12がステージ2の開口4に対向して位置せしめられる。対物レンズ組立体12の主部外周面は円筒形状であり、下端部外周面は逆円錐台形状である。ステージ2の上面には、例えば開口4を跨って延在する支持ガラス板14が載置され、試料16はこの支持ガラス板14上に載置される。図示のラマン顕微鏡の上述したとおりの構成は当業者には周知のものであるので、その詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0013】
本発明に従って構成された遮光部材の一実施形態を図示している図2を参照して説明を続けると、図示の遮光部材18は円筒形状であり、その内径dは上記対物レンズ組立体12の主部外周面の外径Dに対応せしめられている。D−dは0乃至2mm(0mm≦D−d≦2.0mm、特に0.5乃至1.5mm(0.5mm≦D−d≦1.5mm)、であるのが好適である。遮光部材18の高さhは、図3に図示するとおり、被検出物16を実際に検出する際に、遮光部材18の下端面をステージ2の上面に接触せしめた時に対物レンズ組立体12の主部外周面に遮光部材18の上端部が係合せしめられている状態が確立されるのに適した長さであることが重要である。
【0014】
上記遮光部材18は軟質重合体から形成されており、充分な遮光性を有すると共に充分な弾性及び伸張性を有し、そしてまた充分に軽量であることが重要である。詳述すると、充分な遮光性を有するために、遮光部材18における内周面から外周面への透過率は、ラマン顕微鏡に使用される300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下、特に1×10−4%以下、であるのが好適である。透過率を低減するためには軟質重合体にカーボンブラックを混入して着色することが望ましい。充分な弾性及び伸張性の点から、遮光部材18の反発弾性率(JISK6255)は40%以上、特に30%以上、であり、圧縮永久歪率(JISK6301)は40%以下、特に30%以下、であるのが好ましい。加えて、遮光部材18は30%以上、特に100%以上、伸張せしめても破断しない材料から形成されていることが望ましい。また、遮光部材18のアスカーC型硬度は10乃至40、特に20乃至30、であり、充分容易に手で変形することができることが望まれる。遮光部材18は充分に軽量であり、後述するとおりにして対物レンズ組立体12に被嵌された遮光部材18が落下することなく対物レンズ組立体12に保持されることが重要であり、遮光部材18の比重は1以下、特に0.5以下であるのが好都合である。上述したとおりの諸特性を充足する好適軟質重合体としては、独立気泡スポンジ、特にカーボンブラックで着色されたクロロプレン系ゴムスポンジを挙げることができる。クロロプレン系ゴムスポンジC−4305は、独立気泡スポンジであり、カーボンブラックで着色されており、アスカーC型硬度が25、比重が0.19であり、150%伸張せしめた特に破断が開始し、厚さ10mmの場合の300乃至1000nmの波長範囲の光の透過率が1×10−5%以下であり、遮光部材18の材料として好適に使用することができる。
【0015】
図2に図示する遮光部材18は、ステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12の下端から充分に離隔せしめた後に、対物レンズ組立体12の下端から上方に移動せしめ、半径方向に幾分伸張せしめて、図3に図示する如く、その上部を対物レンズ組立体12の主部外周面に被嵌して使用することができる。遮光部材18はそれ自身の弾性把持作用によって対物レンズ組立体12に被嵌された状態に保持される。遮光部材18の下端部は対物レンズ組立体12の下端を越えて下方に延出していることが重要である。ステージ2を図3に図示する位置まで上昇せしめてステージ2の上面を遮光部材18の下端面に当接せしめると、ステージ2の上面と共に支持ガラス板14及び試料16は、対物レンズ組立体12と遮光部材18によって囲繞され、環境光から遮断されると共に、試料16に照射されるレーザー光が周囲に漏れることが充分確実に防止される。焦点整合等のためにステージ2を若干上昇せしめた場合、遮光部材18の弾性把持力が比較的小さいときには、図4に図示する如く、対物レンズ組立体12に対して遮光部材18が上方に若干変位してステージ2の上昇が補償され、遮光部材18の弾性把持力が比較的大きいときには、図5に図示する如く、遮光部材18の下端部が若干弾性的に圧縮されてステージ2の上昇が補償される。ステージ2上に支持ガラス板14及び試料16を載置する際或いはステージ2上から支持ガラス14及び試料16を取り出す際には、単にステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12及び遮光部材18から離隔せしめるだけでよい。対物レンズ組立体12から遮光部材18を離脱せしめる必要はない。
【0016】
図6乃至図20は、本発明に従って構成された遮光部材の変形例を図示している。図2に図示する遮光部材18はその全体が単一の軟質重合体から形成されているが、図6に図示する変形例においては上部18aと下部18bとは異なった軟質重合体から形成されている。上部18aは硬度が比較的大きい軟質重合体から形成され下部18bは硬度が比較的小さい軟質重合体から形成されている。対物レンズ組立体12の外周面に被嵌される上部18aは比較的硬い故に、充分強固に対物レンズ組立体12に装着することができ、他方下部18bは比較的柔らかい故に、容易に弾性変形してステージ2、支持ガラス板14或いは試料16に確実に密着される。
【0017】
図7に図示する変形例においては、厚さ方向全体に渡って延在すると共に高さ方向即ち軸線方向全体に渡って延在するスリット20が形成されている。更に、スリット20の周方向片側近傍からスリット20から遠ざかる方向にスリット20の他側近傍まで円弧状に延びる弾性部材22が埋設されている。弾性部材22の軸線方向長さは遮光部材18の軸線方向長さと同一(従って、軸線方向においては遮光部材18の全長に渡って弾性部材22が存在する)或いはこれによりも短くてもよい。弾性部材22は例えばバネ鋼薄板から形成することができる。かような遮光部材18によれば、スリット20の両側部を弾性的に離隔せしめてスリット20を拡張することによって、対物レンズ組立体12の下方からではなくて側方から遮光部材18を対物レンズ組立体12に被嵌せしめることができる(従って、遮光部材18を対物レンズ組立体12に被嵌する際にステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12から離隔せしめる必要がない)。スリット20を相当拡張せしめても、対物レンズ組立体12に遮光部材18を被嵌した後においては弾性部材22の弾性作用によってスリット20は充分確実に閉じられ、遮光部材18は充分堅固に対物レンズ組立体12に保持される。
【0018】
図8に図示する変形例においては、スリット20は半径方向に対して30度乃至70度であるのが好適である傾斜角度αをなして延びている。かような遮光部材18によれば、対物レンズ組立体12に遮光部材18を被嵌した後にスリット20が完全に閉じられることなく幾分かの間隙が生成された場合でも、生成された間隙は半径方向に対して傾斜して延在する故に、遮光作用が毀損されることがない。
【0019】
図9に図示する変形例においては、スリット20に対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片24が一体に形成されている。かような遮光部材18においては、一対の把持片24を把持して相互に接近せしめる方向に強制することによって充分容易にスリット20を拡張することができる。
【0020】
図10及び図11に図示する変形例においては、スリット20は内周面から外周面まで円弧形状に延在せしめられている。スリット20の曲率半径φは内周面の半径rよりも大きく設定されている。スリット20の両端部(図11に符号Xで示す領域)においては軟質重合体が省略されており、破損し易い鋭い先端部の存在が回避されている。かような遮光部材18においては、対物レンズ組立体12の外径の変動に応じて遮光部材18の内径が拡張されても、スリット20に間隙が生成されることが可及的に回避される。
【0021】
図12に図示する変形例においては、遮光部材18の上部内周面は円筒形状であるが、これよりも下方の内周面は下方に向かって内径が漸次増大する円錐台形状である。かような遮光部材18によれば、試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14が対物レンズ組立体12の主部外周面を超えて幾分張り出す形態のものであっても、遮光部材18内に収容することができる。
【0022】
図13に図示する変形例においては、遮光部材18の下部には下端から上方に延びる円環状の切れ目26が同心状に3個形成されている。所望ならば、1個又は2個或いは4個以上の円環状切れ目を形成することもできる。かような遮光部材18においては、試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14が対物レンズ組立体12の主部外周面を超えて幾分張り出す形態のものである場合でも、遮光部材18の下部が充分容易に半径方向外方に変位して試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14を覆うことができる。
【0023】
図14に図示する変形例においては、遮光部材18の下部に同心状に3個の環状切れ目26を形成することに加えて、半径方向に内周面から外周面まで延びる複数個(図示の場合は8個)の切れ目28が周方向に等間隔をおいて配設されている。所望ならば、環状切れ目26を省略して半径方向に延びる複数個の切れ目28のみを配設することもできる。
【0024】
図15に図示する変形例においては、遮光部材18の上部18aの内径d1は対物レンズ組立体12の外径Dに対応した寸法であるが、下部18bの内径d2は上部18aの内径d1よりも相当大きく設定されている。かような遮光部材18は、試料16が比較的大きくて対物レンズ組立体12の外周面を超えて延在する場合に好都合に使用することができる。図16に図示する如く、試料16が遮光部材18の下部18bの内周面を超えて長く延在する場合には、試料16の形状に応じて遮光部材18の下部18bを適宜に切り欠いて試料16が遮光部材18を超えて延出するのを許容する切欠30を形成することができる。
【0025】
図17に図示する変形例においては、遮光部材18の下端部に、例えば円環状の永久磁石でよい被検出部材32が埋設されている。一方、ステージ2には、近接スイッチから構成することができる検出器34が1個乃至周方向に間隔を置いて複数個配設されている。かような変形例においては、図11に図示する状態、即ち対物レンズ組立体12に遮光部材18が被嵌されていて、ステージ2の上面と共に支持ガラス板14及び試料16が対物レンズ組立体18と遮光部材18によって囲繞されて環境光から遮断された状態が確立されると、検出器34が被検出部材32を検知し、レーザー光によって試料16を照射することが許容される態が確立されていることを示す信号が生成される。
【0026】
図18に図示する変形例においては、遮光部材18には対物レンズ組立体12の主部外周面に被嵌される補助リング36が付設されている。補助リング36はばね鋼の如き適宜の弾性材料から形成されており、対物レンズ組立体12の主部外周面に弾性的に保持されると共に軸線方向に位置調整自在であるのが好都合である。遮光部材18自体においては、その上部内周面に、上記補助リング36の形状及び寸法に対応した環状リング収容溝38が形成されている。図18に図示する如く、遮光部材18はそのリング収容溝38内に補助リング36を収容した状態にせしめて対物レンズ組立体12に装着される。かような形態の遮光部材18においては、対物レンズ組立体12に対する補助リング36の軸線方向位置を微細に調整することによって対物レンズ組立体12に対する遮光部材18の軸線方向位置を微細に設定することができる。例えば、試料のレーザー光照射部位を変更するために対物レンズ組立体12に対してステージ2を図18に置いて左右方向或いは紙面に垂直な方向に移動せしめる際に、薄い試料16が遮光部材18に接触して汚染されることを確実に回避するために、遮光部材18の下端面を試料16の上面よりも若干だけ上方に位置せしめることができる(かくしても遮光部材18による遮光効果の阻害は比較的小さい)。
【0027】
図19に図示する遮光部材18は、図18に図示する遮光部材18に代えて補助リング36と共に使用することができる。図19に図示する遮光部材18においては、上部内周面に下方を向いた環状肩面40が規定されており、環状肩面40より上方の内径は補助リング36の外径より大きくて対物レンズ組立体12の主部外周面の外径に対応せしめられており、環状肩面40より下方の内径は補助リング36の外径と同一乃至これより幾分大きい。かような遮光部材18は、その内周面に規定されている環状肩面40を補助リング36の環状上面に係止せしめることによって、対物レンズ組立体12に装着される。対物レンズ組立体12に対する補助リング36の軸線方向位置を微細に調整することによって、対物レンズ組立体12に対する遮光部材18の軸線方向位置を微細に設定することができる。
【0028】
図20に図示する実施形態においては、対物レンズ組立体12の主部外周面に軸線方向に間隔をおいて2個の補助リング36が被嵌されている。上部内周面に環状肩面40が使用される場合、例えば試料16を交換する際には、図20に図示する如く、遮光部材18の環状肩面40を上方に位置する補助リング36の環状上面に係止せしめて対物レンズ組立体12に遮光部材18を装着し、遮光部材18の下端面を対物レンズ組立体12の下端面よりも上方に後退せしめることができ、試料16にレーザー光を照射する際には、図20に二点鎖線で図示する如く、遮光部材18を下方に変位せしめてその環状肩面40を下方に位置する補助リング36の環状上面に係止せしめて対物レンズ組立体12に遮光部材18を装着し、遮光部材18の下端面をステージ2の上面に当接せしめて環境光を所要とおりに遮光することができる。
【符号の説明】
【0029】
2:ステージ
12:対物レンズ組立体
16:試料
18:遮光部材
20:スリット
22:弾性部材
24:把持片
26:切れ目
28:切れ目
32:被検出部材
36:補助リング
38:環状リング収容溝
40:環状肩面
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されるものではないが特にラマン顕微鏡の如き微弱な光を検出する顕微鏡に好都合に適用することができる遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ラマン顕微鏡においては、微弱なラマン散乱光を検出するために、周囲の光即ち環境光を遮断することが重要である。また、試料を照明するレーザー光が周囲に漏れることが充分に防止されることも重要である。そこで、従来は、下記特許文献1乃至3に開示されている如く、顕微鏡の少なくとも主要部を覆う金属薄板製カバー部材を配設し、その少なくとも一部を開閉自在に構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−11045号公報
【特許文献2】特開2008−262031号公報
【特許文献3】特開2009−98230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、上記カバー部材は比較的高価である。加えて、ステージ上に被検査物即ち試料を載置する或いは試料をステージ上から取り出す際には、カバー部材の少なくとも一部を開閉動せしめることが必要であり、操作が煩雑であった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、充分安価に製造することができるにも拘らず、環境光を充分に遮光することができ、そしてまたステージ上へ試料を載置する或いはステージ上から試料を取り出す際に特別な操作を加える必要がない、新規且つ改良された遮光部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討の結果、少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、対物レンズ組立体の外周面に被嵌することによって対物レンズ組立体に保持される遮光部材を軟質重合体から形成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成することができる遮光部材として、試料が載置されるステージと該ステージに対向する対物レンズ組立体とを具備し、該対物レンズ組立体は円筒形状の外周面を有する顕微鏡に適用される遮光部材にして、
少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、軟質重合体から形成されていて、該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌することによって該対物レンズ組立体に保持される、ことを特徴とする遮光部材が提供される。
【0008】
好ましくは、遮光部材は300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下である。遮光部材の反発弾性率(JISK6255)は30%以上であり、圧縮永久歪率(JISK6301)は30%以下であるのが好適である。遮光部材は30%伸張せしめても破断せず、アスカーC型硬度は10乃至40であり、比重は1以下であるのが好都合である。軟質重合体の好適例としては、独立気泡スポンジ、特に独立気泡クロロプレン系ゴムスポンジ、を挙げることができる。遮光部材はカーボンブラックで着色されているのが好適である。好適実施形態においては、上部と下部とは硬度が異なり、上部の硬度は下部の硬度より大きい。好ましくは、厚さ方向全体に渡って延在すると共に軸線方向全体に渡って延在するスリットが形成されている。該スリットは半径方向に対して30度乃至70度の傾斜角度で傾斜せしめられている、或いは内周面から外周面まで凸円弧形状に延在せしめられているのが好都合である。該凸円弧形状は内周面の内径よりも大きい曲率半径を有するのが好適である。好ましくは、該スリットに対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片が形成されている。該スリットの周方向片側近傍から該スリットから遠ざかる方向に該スリットの他側近傍まで周方向に延びる弾性部材が埋設されているのが好都合である。好適実施形態においては、下部は下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状の内周面を有する、或いは下部の内周面は上部の内形よりも大きい内径を有する円筒形状である。下部には下端から上方に延びる円環状の切り目が少なくとも1個配設されている、及び/又は下部には半径方向に延びる切り目が周方向に間隔をおいて複数個配設されているのが好都合である。下端部には被検出部材を埋設することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遮光部材によれば、安価に製造することができるにも拘らず、単に対物レンズ組立体の外周面には被嵌することによって環境光を充分に遮光することができる。ステ−ジ上に試料を載置する或いはステージ上から試料を取り出す際には、単にステージに対して対物レンズを離隔する方向に相対的に移動せしめればよく、対物レンズ組立体から遮光部材を離脱せしめる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された遮光部材が適用されるラマン顕微鏡の要部を示す部分断面図。
【図2】本発明に従って構成された遮光部材の好適実施形態を示す斜面図。
【図3】図2に図示する遮光部材を図1に図示するラマン顕微鏡の対物レンズ組立体に適用した状態を示す部分断面図。
【図4】図3に図示する状態からステージを若干上昇せしめて、対物レンズ組立体に対して遮光部材を若干上方に変位せしめた状態を示す部分断面図。
【図5】図3に図示する状態からステージを若干上昇せしめて、遮光部材の下端部を若干弾性的に圧縮して状態を示す部分断面図。
【図6】本発明に従って構成された遮光部材の変形例を示す斜面図。
【図7】本発明に従って構成された遮光部材の他の変形例を示す斜面図。
【図8】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す斜面図。
【図9】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図10】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す斜面図。
【図11】図10に図示する遮光部材の平面図。
【図12】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図13】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図14】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す底面図。
【図15】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図16】図15に図示する遮光部材の使用形態を示す斜面図。
【図17】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図18】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図19】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【図20】本発明に従って構成された遮光部材の更に他の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された遮光部材の好適実施形態について、更に詳述する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成された遮光部材が適用されるラマン顕微鏡の要部が簡略に図示されている。図示のラマン顕微鏡は実質上水平に延在せしめられているステージ2を含んでいる。鋼板の如き適宜の金属板から形成することができるステージ2は、X方向(図1において左右方向)、Y方向(図1において紙面に垂直な方向)及びZ方向(図1において上下方向)に移動自在に装着されており、手動操作することができる移動機構(図示していない)によってX方向、Y方向及びZ方向に適宜に移動せしめられる(所望ならば、ステージ2をZ方向に移動せしめることに代えて或いはこれに加えて、後述する対物レンズ組立体12をZ方向に移動せしめることもできる)。ステージ2の中央部には上下方向に貫通する開口4が形成されている。ステージ2の下方には、コンデンサレンズ組立体6が昇降動自在に配設されており、手動操作することができる昇降動機構(図示していない)によって昇降動せしめられる。ステージ2の下面にはコンデンサレンズ組立体6を囲繞する適宜の遮光カバー8が配設されており、ステージ2の下面とコンデンサレンズ組立体6の周囲は環境光から遮光されている。ステージ2の上方には対物レンズレボルバー10(図1にその一部のみを図示している)が配設されている。この対物レンズレボルバー10には複数個の対物レンズ組立体12(図1にはそのうちの1個のみを図示している)が装着されており、対物レンズレボルバー10を回転せしめることによって所要の対物レンズ組立体12がステージ2の開口4に対向して位置せしめられる。対物レンズ組立体12の主部外周面は円筒形状であり、下端部外周面は逆円錐台形状である。ステージ2の上面には、例えば開口4を跨って延在する支持ガラス板14が載置され、試料16はこの支持ガラス板14上に載置される。図示のラマン顕微鏡の上述したとおりの構成は当業者には周知のものであるので、その詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0013】
本発明に従って構成された遮光部材の一実施形態を図示している図2を参照して説明を続けると、図示の遮光部材18は円筒形状であり、その内径dは上記対物レンズ組立体12の主部外周面の外径Dに対応せしめられている。D−dは0乃至2mm(0mm≦D−d≦2.0mm、特に0.5乃至1.5mm(0.5mm≦D−d≦1.5mm)、であるのが好適である。遮光部材18の高さhは、図3に図示するとおり、被検出物16を実際に検出する際に、遮光部材18の下端面をステージ2の上面に接触せしめた時に対物レンズ組立体12の主部外周面に遮光部材18の上端部が係合せしめられている状態が確立されるのに適した長さであることが重要である。
【0014】
上記遮光部材18は軟質重合体から形成されており、充分な遮光性を有すると共に充分な弾性及び伸張性を有し、そしてまた充分に軽量であることが重要である。詳述すると、充分な遮光性を有するために、遮光部材18における内周面から外周面への透過率は、ラマン顕微鏡に使用される300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下、特に1×10−4%以下、であるのが好適である。透過率を低減するためには軟質重合体にカーボンブラックを混入して着色することが望ましい。充分な弾性及び伸張性の点から、遮光部材18の反発弾性率(JISK6255)は40%以上、特に30%以上、であり、圧縮永久歪率(JISK6301)は40%以下、特に30%以下、であるのが好ましい。加えて、遮光部材18は30%以上、特に100%以上、伸張せしめても破断しない材料から形成されていることが望ましい。また、遮光部材18のアスカーC型硬度は10乃至40、特に20乃至30、であり、充分容易に手で変形することができることが望まれる。遮光部材18は充分に軽量であり、後述するとおりにして対物レンズ組立体12に被嵌された遮光部材18が落下することなく対物レンズ組立体12に保持されることが重要であり、遮光部材18の比重は1以下、特に0.5以下であるのが好都合である。上述したとおりの諸特性を充足する好適軟質重合体としては、独立気泡スポンジ、特にカーボンブラックで着色されたクロロプレン系ゴムスポンジを挙げることができる。クロロプレン系ゴムスポンジC−4305は、独立気泡スポンジであり、カーボンブラックで着色されており、アスカーC型硬度が25、比重が0.19であり、150%伸張せしめた特に破断が開始し、厚さ10mmの場合の300乃至1000nmの波長範囲の光の透過率が1×10−5%以下であり、遮光部材18の材料として好適に使用することができる。
【0015】
図2に図示する遮光部材18は、ステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12の下端から充分に離隔せしめた後に、対物レンズ組立体12の下端から上方に移動せしめ、半径方向に幾分伸張せしめて、図3に図示する如く、その上部を対物レンズ組立体12の主部外周面に被嵌して使用することができる。遮光部材18はそれ自身の弾性把持作用によって対物レンズ組立体12に被嵌された状態に保持される。遮光部材18の下端部は対物レンズ組立体12の下端を越えて下方に延出していることが重要である。ステージ2を図3に図示する位置まで上昇せしめてステージ2の上面を遮光部材18の下端面に当接せしめると、ステージ2の上面と共に支持ガラス板14及び試料16は、対物レンズ組立体12と遮光部材18によって囲繞され、環境光から遮断されると共に、試料16に照射されるレーザー光が周囲に漏れることが充分確実に防止される。焦点整合等のためにステージ2を若干上昇せしめた場合、遮光部材18の弾性把持力が比較的小さいときには、図4に図示する如く、対物レンズ組立体12に対して遮光部材18が上方に若干変位してステージ2の上昇が補償され、遮光部材18の弾性把持力が比較的大きいときには、図5に図示する如く、遮光部材18の下端部が若干弾性的に圧縮されてステージ2の上昇が補償される。ステージ2上に支持ガラス板14及び試料16を載置する際或いはステージ2上から支持ガラス14及び試料16を取り出す際には、単にステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12及び遮光部材18から離隔せしめるだけでよい。対物レンズ組立体12から遮光部材18を離脱せしめる必要はない。
【0016】
図6乃至図20は、本発明に従って構成された遮光部材の変形例を図示している。図2に図示する遮光部材18はその全体が単一の軟質重合体から形成されているが、図6に図示する変形例においては上部18aと下部18bとは異なった軟質重合体から形成されている。上部18aは硬度が比較的大きい軟質重合体から形成され下部18bは硬度が比較的小さい軟質重合体から形成されている。対物レンズ組立体12の外周面に被嵌される上部18aは比較的硬い故に、充分強固に対物レンズ組立体12に装着することができ、他方下部18bは比較的柔らかい故に、容易に弾性変形してステージ2、支持ガラス板14或いは試料16に確実に密着される。
【0017】
図7に図示する変形例においては、厚さ方向全体に渡って延在すると共に高さ方向即ち軸線方向全体に渡って延在するスリット20が形成されている。更に、スリット20の周方向片側近傍からスリット20から遠ざかる方向にスリット20の他側近傍まで円弧状に延びる弾性部材22が埋設されている。弾性部材22の軸線方向長さは遮光部材18の軸線方向長さと同一(従って、軸線方向においては遮光部材18の全長に渡って弾性部材22が存在する)或いはこれによりも短くてもよい。弾性部材22は例えばバネ鋼薄板から形成することができる。かような遮光部材18によれば、スリット20の両側部を弾性的に離隔せしめてスリット20を拡張することによって、対物レンズ組立体12の下方からではなくて側方から遮光部材18を対物レンズ組立体12に被嵌せしめることができる(従って、遮光部材18を対物レンズ組立体12に被嵌する際にステージ2を下降せしめて対物レンズ組立体12から離隔せしめる必要がない)。スリット20を相当拡張せしめても、対物レンズ組立体12に遮光部材18を被嵌した後においては弾性部材22の弾性作用によってスリット20は充分確実に閉じられ、遮光部材18は充分堅固に対物レンズ組立体12に保持される。
【0018】
図8に図示する変形例においては、スリット20は半径方向に対して30度乃至70度であるのが好適である傾斜角度αをなして延びている。かような遮光部材18によれば、対物レンズ組立体12に遮光部材18を被嵌した後にスリット20が完全に閉じられることなく幾分かの間隙が生成された場合でも、生成された間隙は半径方向に対して傾斜して延在する故に、遮光作用が毀損されることがない。
【0019】
図9に図示する変形例においては、スリット20に対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片24が一体に形成されている。かような遮光部材18においては、一対の把持片24を把持して相互に接近せしめる方向に強制することによって充分容易にスリット20を拡張することができる。
【0020】
図10及び図11に図示する変形例においては、スリット20は内周面から外周面まで円弧形状に延在せしめられている。スリット20の曲率半径φは内周面の半径rよりも大きく設定されている。スリット20の両端部(図11に符号Xで示す領域)においては軟質重合体が省略されており、破損し易い鋭い先端部の存在が回避されている。かような遮光部材18においては、対物レンズ組立体12の外径の変動に応じて遮光部材18の内径が拡張されても、スリット20に間隙が生成されることが可及的に回避される。
【0021】
図12に図示する変形例においては、遮光部材18の上部内周面は円筒形状であるが、これよりも下方の内周面は下方に向かって内径が漸次増大する円錐台形状である。かような遮光部材18によれば、試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14が対物レンズ組立体12の主部外周面を超えて幾分張り出す形態のものであっても、遮光部材18内に収容することができる。
【0022】
図13に図示する変形例においては、遮光部材18の下部には下端から上方に延びる円環状の切れ目26が同心状に3個形成されている。所望ならば、1個又は2個或いは4個以上の円環状切れ目を形成することもできる。かような遮光部材18においては、試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14が対物レンズ組立体12の主部外周面を超えて幾分張り出す形態のものである場合でも、遮光部材18の下部が充分容易に半径方向外方に変位して試料16或いは試料16が載置されている支持ガラス板14を覆うことができる。
【0023】
図14に図示する変形例においては、遮光部材18の下部に同心状に3個の環状切れ目26を形成することに加えて、半径方向に内周面から外周面まで延びる複数個(図示の場合は8個)の切れ目28が周方向に等間隔をおいて配設されている。所望ならば、環状切れ目26を省略して半径方向に延びる複数個の切れ目28のみを配設することもできる。
【0024】
図15に図示する変形例においては、遮光部材18の上部18aの内径d1は対物レンズ組立体12の外径Dに対応した寸法であるが、下部18bの内径d2は上部18aの内径d1よりも相当大きく設定されている。かような遮光部材18は、試料16が比較的大きくて対物レンズ組立体12の外周面を超えて延在する場合に好都合に使用することができる。図16に図示する如く、試料16が遮光部材18の下部18bの内周面を超えて長く延在する場合には、試料16の形状に応じて遮光部材18の下部18bを適宜に切り欠いて試料16が遮光部材18を超えて延出するのを許容する切欠30を形成することができる。
【0025】
図17に図示する変形例においては、遮光部材18の下端部に、例えば円環状の永久磁石でよい被検出部材32が埋設されている。一方、ステージ2には、近接スイッチから構成することができる検出器34が1個乃至周方向に間隔を置いて複数個配設されている。かような変形例においては、図11に図示する状態、即ち対物レンズ組立体12に遮光部材18が被嵌されていて、ステージ2の上面と共に支持ガラス板14及び試料16が対物レンズ組立体18と遮光部材18によって囲繞されて環境光から遮断された状態が確立されると、検出器34が被検出部材32を検知し、レーザー光によって試料16を照射することが許容される態が確立されていることを示す信号が生成される。
【0026】
図18に図示する変形例においては、遮光部材18には対物レンズ組立体12の主部外周面に被嵌される補助リング36が付設されている。補助リング36はばね鋼の如き適宜の弾性材料から形成されており、対物レンズ組立体12の主部外周面に弾性的に保持されると共に軸線方向に位置調整自在であるのが好都合である。遮光部材18自体においては、その上部内周面に、上記補助リング36の形状及び寸法に対応した環状リング収容溝38が形成されている。図18に図示する如く、遮光部材18はそのリング収容溝38内に補助リング36を収容した状態にせしめて対物レンズ組立体12に装着される。かような形態の遮光部材18においては、対物レンズ組立体12に対する補助リング36の軸線方向位置を微細に調整することによって対物レンズ組立体12に対する遮光部材18の軸線方向位置を微細に設定することができる。例えば、試料のレーザー光照射部位を変更するために対物レンズ組立体12に対してステージ2を図18に置いて左右方向或いは紙面に垂直な方向に移動せしめる際に、薄い試料16が遮光部材18に接触して汚染されることを確実に回避するために、遮光部材18の下端面を試料16の上面よりも若干だけ上方に位置せしめることができる(かくしても遮光部材18による遮光効果の阻害は比較的小さい)。
【0027】
図19に図示する遮光部材18は、図18に図示する遮光部材18に代えて補助リング36と共に使用することができる。図19に図示する遮光部材18においては、上部内周面に下方を向いた環状肩面40が規定されており、環状肩面40より上方の内径は補助リング36の外径より大きくて対物レンズ組立体12の主部外周面の外径に対応せしめられており、環状肩面40より下方の内径は補助リング36の外径と同一乃至これより幾分大きい。かような遮光部材18は、その内周面に規定されている環状肩面40を補助リング36の環状上面に係止せしめることによって、対物レンズ組立体12に装着される。対物レンズ組立体12に対する補助リング36の軸線方向位置を微細に調整することによって、対物レンズ組立体12に対する遮光部材18の軸線方向位置を微細に設定することができる。
【0028】
図20に図示する実施形態においては、対物レンズ組立体12の主部外周面に軸線方向に間隔をおいて2個の補助リング36が被嵌されている。上部内周面に環状肩面40が使用される場合、例えば試料16を交換する際には、図20に図示する如く、遮光部材18の環状肩面40を上方に位置する補助リング36の環状上面に係止せしめて対物レンズ組立体12に遮光部材18を装着し、遮光部材18の下端面を対物レンズ組立体12の下端面よりも上方に後退せしめることができ、試料16にレーザー光を照射する際には、図20に二点鎖線で図示する如く、遮光部材18を下方に変位せしめてその環状肩面40を下方に位置する補助リング36の環状上面に係止せしめて対物レンズ組立体12に遮光部材18を装着し、遮光部材18の下端面をステージ2の上面に当接せしめて環境光を所要とおりに遮光することができる。
【符号の説明】
【0029】
2:ステージ
12:対物レンズ組立体
16:試料
18:遮光部材
20:スリット
22:弾性部材
24:把持片
26:切れ目
28:切れ目
32:被検出部材
36:補助リング
38:環状リング収容溝
40:環状肩面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置されるステージと該ステージに対向する対物レンズ組立体とを具備し、該対物レンズ組立体は円筒形状の外周面を有する顕微鏡に適用される遮光部材にして、
少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、軟質重合体から形成されていて、上部を該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌することによって該対物レンズ組立体に保持される、ことを特徴とする遮光部材。
【請求項2】
内周面から外周面への、300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下である、請求項1記載の遮光部材。
【請求項3】
反発弾性率(JISK6255)が40%以上であり、圧縮永久歪率(JISK6301)が40%以下である、請求項1又は2記載の遮光部材。
【請求項4】
30%伸張せしめても破断しない、請求項1から3までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項5】
アスカーC型硬度が10乃至40である、請求項1から4までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項6】
比重が1以下である、請求項1から5までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項7】
独立気泡スポンジから形成されている、請求項1から6までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項8】
クロロプレン系ゴムスポンジから形成されている、請求項7記載の遮光部材。
【請求項9】
カーボンブラックで着色されている、請求項1から8までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項10】
上部と下部とは硬度が異なり、上部の硬度は下部の硬度より大きい、請求項1から9までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項11】
厚さ方向全体に渡って延在すると共に軸線方向全体に渡って延在するスリットが形成されている、請求項1から10までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項12】
該スリットは半径方向に対して30度乃至70度の傾斜角度で傾斜せしめられている、請求項11記載の遮光部材。
【請求項13】
該スリットは内周面から外周面まで凸円弧形状に延在せしめられている、請求項11記載の遮光部材。
【請求項14】
該凸円弧形状は内周面の内径よりも大きい曲率半径を有する、請求項13記載の遮光部材。
【請求項15】
該スリットに対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片が形成されている、請求項11から14までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項16】
該スリットの周方向片側近傍から該スリットから遠ざかる方向に該スリットの他側近傍まで周方向に延びる弾性部材が埋設されている、請求項11から15までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項17】
下部は下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状の内周面を有する、請求項1から16までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項18】
下部の内周面は上部の内径よりも大きい内径を有する円筒形状である、請求項1から17までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項19】
下部には下端から上方に延びる円環状の切り目が少なくとも1個配設されている、請求項1から18までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項20】
下部には半径方向に延びる切り目が周方向に間隔をおいて複数個配設されている、請求項1から19までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項21】
下端部には被検出部材が埋設されている、請求項1から20のいずれかに記載の遮光部材。
【請求項22】
該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌される補助リングを含み、遮光部材の該上部の内周面には、該補助リングに対応した環状リンング収容溝が形成され、或いは下方を向いた環状肩面が形成され該環状肩面より上方の内径は該補助リングの外径よりも小さく該環状肩面より下方の内径は該補助リングの外径と同一乃至これより大きい、請求項1から21までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項23】
該補助リングは弾性材料から形成されており、該対物レンズ組立体の該外周面に軸線方向位置調整自在に被嵌される、請求項22記載の遮光部材。
【請求項24】
該対物レンズ組立対の該外周面に軸線方向に間隔をおいて被嵌される2個の補助リングを含む、請求項21又は22記載の遮光部材。
【請求項1】
試料が載置されるステージと該ステージに対向する対物レンズ組立体とを具備し、該対物レンズ組立体は円筒形状の外周面を有する顕微鏡に適用される遮光部材にして、
少なくとも上部は円筒形状の内周面を有し、軟質重合体から形成されていて、上部を該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌することによって該対物レンズ組立体に保持される、ことを特徴とする遮光部材。
【請求項2】
内周面から外周面への、300乃至1000nmの波長領域の光の透過率が1%以下である、請求項1記載の遮光部材。
【請求項3】
反発弾性率(JISK6255)が40%以上であり、圧縮永久歪率(JISK6301)が40%以下である、請求項1又は2記載の遮光部材。
【請求項4】
30%伸張せしめても破断しない、請求項1から3までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項5】
アスカーC型硬度が10乃至40である、請求項1から4までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項6】
比重が1以下である、請求項1から5までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項7】
独立気泡スポンジから形成されている、請求項1から6までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項8】
クロロプレン系ゴムスポンジから形成されている、請求項7記載の遮光部材。
【請求項9】
カーボンブラックで着色されている、請求項1から8までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項10】
上部と下部とは硬度が異なり、上部の硬度は下部の硬度より大きい、請求項1から9までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項11】
厚さ方向全体に渡って延在すると共に軸線方向全体に渡って延在するスリットが形成されている、請求項1から10までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項12】
該スリットは半径方向に対して30度乃至70度の傾斜角度で傾斜せしめられている、請求項11記載の遮光部材。
【請求項13】
該スリットは内周面から外周面まで凸円弧形状に延在せしめられている、請求項11記載の遮光部材。
【請求項14】
該凸円弧形状は内周面の内径よりも大きい曲率半径を有する、請求項13記載の遮光部材。
【請求項15】
該スリットに対して直径方向反対側において、周方向に間隔をおいて外周面から突出する一対の把持片が形成されている、請求項11から14までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項16】
該スリットの周方向片側近傍から該スリットから遠ざかる方向に該スリットの他側近傍まで周方向に延びる弾性部材が埋設されている、請求項11から15までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項17】
下部は下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状の内周面を有する、請求項1から16までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項18】
下部の内周面は上部の内径よりも大きい内径を有する円筒形状である、請求項1から17までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項19】
下部には下端から上方に延びる円環状の切り目が少なくとも1個配設されている、請求項1から18までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項20】
下部には半径方向に延びる切り目が周方向に間隔をおいて複数個配設されている、請求項1から19までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項21】
下端部には被検出部材が埋設されている、請求項1から20のいずれかに記載の遮光部材。
【請求項22】
該対物レンズ組立体の該外周面に被嵌される補助リングを含み、遮光部材の該上部の内周面には、該補助リングに対応した環状リンング収容溝が形成され、或いは下方を向いた環状肩面が形成され該環状肩面より上方の内径は該補助リングの外径よりも小さく該環状肩面より下方の内径は該補助リングの外径と同一乃至これより大きい、請求項1から21までのいずれかに記載の遮光部材。
【請求項23】
該補助リングは弾性材料から形成されており、該対物レンズ組立体の該外周面に軸線方向位置調整自在に被嵌される、請求項22記載の遮光部材。
【請求項24】
該対物レンズ組立対の該外周面に軸線方向に間隔をおいて被嵌される2個の補助リングを含む、請求項21又は22記載の遮光部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−168492(P2012−168492A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62993(P2011−62993)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(503138134)ナノフォトン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(503138134)ナノフォトン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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