説明

顕微鏡を較正する装置、方法および較正装置を具えるステージ

標本スライド114を支持し、顕微鏡100を較正するステージ110は、ベース部と、前記ベース部と一体型の較正部品120とを具える。前記較正部品120は、位置的較正用の少なくとも1の較正要素120aと、光学的較正用の少なくとも1の較正要素120bとを具える。前記顕微鏡100の較正は、独立した較正用スライドの必要性なく実行することができる。前記較正部品120は、ガラスの較正部品または前記ベース部を通って形成または食刻された較正要素によって規定されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の較正に関する装置に関し、より具体的には、顕微鏡の位置的および光学的な較正を実施する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞学は、細胞の形成、構造および機能の研究を含む生物学の一分野である。研究室の設定において適用される場合、細胞学者、細胞検査技師および他の医療専門家は、患者の細胞の標本の視覚調査に基づいて患者の状態を医学的に診断する。一般的な細胞学的手法は「パップスメア(Pap smear)」検査であり、異常細胞、子宮頸癌の始まりとなる前駆体の存在を検知するために、女性の子宮頸から細胞を掻爬し、その細胞を分析することを含む。細胞学的手法は、人間の身体の他の部位における異常細胞および病気を検知するためにも用いられる。
【0003】
細胞学的手法は、分析用の細胞試料の採取が生体組織検査法といった従来の外科病理学的な方法よりも一般的に低侵襲のため、広く用いられている。生体組織検査法は、通常、ばね荷重の可動スタイレット、固定カニューレ、およびその種のものを有する特殊な生検針を使って、患者から組織標本を切除することを含む。一方、細胞学的手法を用いた場合、細胞試料は様々な方法によって患者から採取され、例えば部位を掻爬または拭き取り、あるいは胸腔、膀胱、脊柱管、または他の適当な部位から体液を吸引する針を使用することにより採取できる。細胞試料はしばしば溶液の中に配置され、その後回収され、拡大して見るためにガラススライドに移される。検査を容易すると共に、長期保管を目的として標本を保護するために、通常は固定液および染色溶液がガラススライド上で細胞に投与され、しばしば細胞スメアと呼ばれる。
【0004】
自動画像処理および観察顕微鏡といった機械的視覚デバイスが細胞試料の画像を取得し、試料を分析するのに利用されている。一体型の画像処理および観察システムの一部である顕微鏡を含む顕微鏡は、定期的な較正を必要とする。較正方法は、顕微鏡のステージおよび/または顕微鏡のスライドの実際の位置がシステムに表示された位置であることを確認する位置的較正と、光学パラメータがシステムに表示されたものであることを確認する光学的較正とを含む。
【0005】
過去には、較正部品を具える独立した顕微鏡スライドを使用して較正が行われていた。使用時に、較正スライドが顕微鏡ステージ上の位置に置かれ、較正が行われ、特注の顕微鏡スライドが取り除かれる。同一の較正スライドが他の顕微鏡を較正するのに使用されてもよい。
【0006】
他の周知の較正システムが、Saulietisによる米国特許第5,367,401号に記載されている。Saulietisは顕微鏡の工場での較正について記載しており、モータアセンブリ上への複数のスライドスロットを有するステージの装着と、検査窓に沿って較正対象を配置するモータアセンブリの使用とを含んでいる。各対象物の位置読み取り値および既知の距離データは、ステージの基準座標を規定する。工場での較正時に、各スライドスロットにおいて較正スライドを使用して、較正スライド上の目標基準点が検査窓に合わされてその座標が読まれ、ステージの目標基準によって決められたステージ座標を基準として絶対位置が提供される。各較正スライドの絶対的な基準座標位置は、製造番号と関連して記録することが可能である。この手法では、エンドユーザは各スライドスロットの較正を行う必要はないが、製造番号を入力して記録されたデータに頼ることになる。
【0007】
しかしながら、周知の較正デバイスおよび手法は改善することが可能である。例えばSaulietisにより記載されたような様々な周知のデバイスは、まだ特別な較正スライドを利用しており、位置的較正(x、y、z、θ)のみ可能である。特別な較正スライドは、紛失、破損または破棄されることがある。各較正スライドは、時間がかかって不便な較正手順を伴い、頻繁な較正を必要とすることもある。さらに、較正スライドは、例えばほこり、ちり、油等の環境が原因による光学的な性能の劣化が起こってしまう。特殊な較正スライドは、各スライドによって異なることもある。例えば、異なる較正スライドの厚さは異なる場合がある。これらの変化は較正の原因となる。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態によると、標本スライドを支持するステージは、標本スライドを担持するように構成された底面および上面を有するベース部と、ベース部と一体化した較正部品とを具える。較正部品は、顕微鏡の位置的較正を行うように構成された第1の較正要素と、顕微鏡の光学的較正を行うように構成された第2の較正要素とを具える。
【0009】
他の実施形態によると、標本スライドを支持するステージは、底面および上面を有するベース部と、較正部品とを具える。ベース部は単一のスライドを支持するように構成され、較正部品はベース部と一体化している。較正部品は、第1の視野を規定する第1の較正要素を具える。第1の較正要素は、独立した較正スライドを使用することなく、顕微鏡の位置的較正を行うように構成される。較正部品はまた、第2の視野を規定する第2の較正要素も具える。第2の較正要素は、独立した較正スライドを使用することなく、顕微鏡の光学的較正を行うように構成される。
【0010】
さらなる実施形態は、顕微鏡を較正する方法に関する。当該方法は、顕微鏡のステージと一体化した較正部品から位置的較正の情報を算出するステップと、較正部品から光学的較正の情報を算出するステップと、位置的および光学的較正の情報に基づいて顕微鏡を較正するステップとを含む。
【0011】
他の実施形態は、顕微鏡の位置的および光学的較正を行う装置に関する。当該装置は、顕微鏡のステージと一体化した較正部品を具える。当該較正部品は、顕微鏡の位置的較正を行うように構成された第1の較正要素と、顕微鏡の光学的較正を行うように構成された第2の較正要素とを具える。
【0012】
1以上の実施形態では、較正部品は顕微鏡のステージのベース部に取り付けまたは固定され、かつベース部により規定された空洞内に配置されたガラスの較正部品であってもよい。当該較正部品は、ベース部を通って形成または食刻された要素を具えてもよい。1以上の実施形態では、較正部品は独立した較正スライドを使用することなく、顕微鏡の位置的較正および光学的較正を行うように構成される。例えば、較正部品は、複数の視野を規定する複数の較正要素を具えてもよい。第1の視野は位置的較正を行う基準マークを具え、第2の視野は透明で、(例えば、光度、光の均一性または変調伝達関数に基づいて)光学的較正を行うために用いられる。較正部品は光学的較正を行う透明な中心視野を規定する中心較正要素を具えるように構成され、中心視野の周りに配置された視野の、少なくとも1が位置的較正用の基準マークを具えてもよい。複数の実施形態では、顕微鏡の較正は独立した較正スライドなしで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図を参照すると、図を通して同じ符号は対応する部分を示す。
【図1】図1は、一実施形態による較正部品を具えるステージを有する顕微鏡の側面図を示す。
【図2】図2は、図1に示した顕微鏡の正面図を示す。
【図3】図3は、較正部品を具える一実施形態により構成されたステージの平面図を示す。
【図4】図4は、較正部品を具える他の実施形態により構成されたステージの平面図を示す。
【図5】図5は、位置的較正および光学的較正を行うように構成された較正部品を具える一実施形態により構成された較正部品を示す。
【図6】図6は、位置的較正および光学的較正を行うように構成された較正部品を具える、代替実施形態により構成された較正部品を示す。
【図7】図7は、基板の上面に形成または配置された較正要素を有する一実施形態により構成された較正部品の側面図を示す。
【図8】図8は、ステージ内部に形成された空洞内に配置され、ステージの下部から照光されている図7で示す較正部品を具える一実施形態により構成された顕微鏡のステージの断面図を示す。
【図9】図9は、ステージを貫通して形成または食刻された較正要素を有する較正部品を具える代替の実施形態により構成された顕微鏡のステージの断面図を示す。
【図10】図10は、図9に示された較正部品の平面図を示す。
【図11】図11は、図9で示す較正部品と、一体化または取り付けられたナイフエッジの較正部品とを具える、他の実施形態により構成された顕微鏡のステージの断面図を示す。
【図12】図12は、実施例が実装されうる別個の画像処理および観察部品を具える画像処理および観察システムを示す。
【図13】図13は、標本の画像処理および観察に同一の顕微鏡が使用されて実施形態が実装されうる一体型のシステムを示す。
【図14】図14は、標本の画像処理および観察に同一の顕微鏡が使用されて実施形態が実装されうる一体型のシステムをさらに示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
複数の実施形態は、特別な較正スライドを用いる必要なく、顕微鏡の位置的較正および光学的較正を実施するために使用される較正装置、顕微鏡のステージおよび較正方法に関する。複数の実施形態は、較正部品または対象物を顕微鏡のステージ内部またその上に一体化することにより、特別な較正スライドの必要性を好適に除外する。
【0015】
下記の説明では本書の一部をなす添付図面を参照しており、これは特定の実施形態および如何に実行されうるかを例示している。実施形態の範囲を超えることなく、変更が行われてもよいということ理解されたい。
【0016】
図1および2は一般に、位置的および光学的較正の対象物またはステージ110と一体化した部品120(全般的に「較正部品」120と呼ばれる)を具えるステージ110を有する顕微鏡100または他の機械的視覚デバイス(通常は「顕微鏡」100と称する)を示す。ステージ110と「一体化」することにより、較正部品120はステージ110内部に一体化または埋め込まれ、ステージを通って形成または規定、ステージ110上に形成または配置、またはステージ110に取り付けられる。換言すると、較正部品120は、異なる顕微鏡を較正するのに使用される周知の特別な較正スライドといった独立した較正デバイスとは対照的に、較正部品120がステージ110に固定、取り付け、一体構成されるようにステージ110と一体化される。説明の容易のため、ステージ110と一体化した較正部品120について説明する。
【0017】
ステージ110は標本スライド114を支持する上面112を有し、光源130は標本スライド114上の標本を照光するように配置されている。好適な光源130は、タングステン−ハロゲン光源、発光ダイオード(LED)、または他の好適な光源を含む。光源130による発光は、例えばステージ110の下部113を通って延在する1以上の開口部、溝または空間を通り抜ける発光を利用することにより、直接または間接的に較正部品120を照光する。
【0018】
顕微鏡100はまた制御装置を具え(明確のため図示せず)、これはステージ110の位置を調整し、光源130による発光のバランスおよび光度といった光学的または光のパラメータを調整するために使用されてもよい。顕微鏡100は、拡大した標本の画像を形成するために標本から受ける光を強める複数の対物レンズ140と、対物レンズ140により形成された拡大画像を観察するのに使用される接眼レンズ150とをさらに具える。好適な顕微鏡100の構成部品のさらなる態様が、米国特許出願第2007/0139638(A1)にある。図1および2で示される顕微鏡100は、複数の実施形態で使用できる顕微鏡100の一例として与えられており、他の好適な顕微鏡100は、明確および説明の容易のために図示しない他の既知の構成部品を具えてもよいことを理解されたい。
【0019】
図3を参照すると、一実施形態により構成されたステージ110は、一体型の較正対象物120と、例えば裏当てまたは他の支持部材312に押しつけてステージ110の上面112の所定の位置にスライド114を保持する、ばね荷重の支持アームのような回転可能または回動可能な支持アーム310とを具えても良い。較正部品120は、他の構成を有するステージ110と一体化されてもよい。
【0020】
図示された実施形態では、較正部品120はスライド114に隣接するステージ110と一体化している。しかしながら、例えばステージ110の形状、ステージ110上のスライド114の位置、および顕微鏡100の光学的な構成部品の配置および数によって、他の実施形態では較正部品120は異なる配置であってもよい。従って、図3に示される構成は、いかに実施形態が実行されうるかの一例として示されている。
【0021】
図3に示される実施形態では、顕微鏡100の位置的較正および光学的較正の両方を行うため、単一の較正部品120が設けられており、特別な較正スライドの必要がない。例えば、較正部品120は、ステージ110の「x」位置、ステージ110の「y」位置、ステージ110の「z」位置、カメラ−ステージ整列度(例えば、顕微鏡100が画像処理を目的として使用される場合)、スライド114の画像処理および/または観察中におけるステージ110の「x」および「y」位置の一方または双方の変化、および画像処理および/または観察中におけるステージ110の「z」位置を変化の1以上を含む、位置的較正パラメータを測定または判定するように構成されてもよい。較正部品120は、例えば、グレースケールの直線性、拡大率、信号−雑音比、スライド114の画像処理前後での照度の変化、変調伝達関数(MTF)、および露出される光の量にかかわらず一定値を出力する顕微鏡100の電荷結合素子(CCD)のスタックピクセルまたは要素の検査の1以上を含む顕微鏡100の光学的較正パラメータを測定または判定するのに使用されてもよい。MTFを含む試験および測定法に関する更なる詳細が、マサチューセッツ州Cambridge、Optikos Corporation社の“How to Measure MTF and other Properties of Lenses”pp.1−64(July 19,1999)で提供されている。較正部品120は様々な位置的および光学的較正処置を行うために利用することができ、上記の位置的および光学的較正パラメータは、いかに実施形態が実装されるかの例示であることを解するべきである。
【0022】
例えば、較正部品120は、他の種類の位置的較正、例えば顕微鏡のステージ110の角度または回転の較正(θ)を行うように構成されてもよい。この目的のために、ステージ110の回転を測定する互いに分離した2の較正部品120が利用されてもよい。説明を簡単にするため、(x、y、z)位置について言及する。さらに、図4を参照すると、代替的な実施形態では、第1の較正部品120aは顕微鏡100の位置的較正を行うためにステージ110と一体化され、第2の較正部品120bは顕微鏡100の光学的較正を行うためにステージ110と一体化されている。
【0023】
従って、複数の実施形態は、位置的較正および光学的較正の両方に利用できる単一の較正部品120(図3に示す)、または異なる種類の較正を行う複数の一体型の較正部品120a、120b(図4に示す)を用いて実現されてもよく、一方で特別な較正スライドの必要性を排除する。説明を簡単にするため、顕微鏡100の位置的較正および光学的較正の両方を行うために使用されうる、図3に示す単一の一体型の較正部品120を具えるステージ110の構成について説明する。
【0024】
図5を参照すると、顕微鏡100の位置的較正および光学的較正の両方を行うのに用いられる、一実施形態により構成された較正部品120が、外側境界510によって規定され、少なくとも2の視野または印刷される画像の境界を規定する少なくとも2の較正要素を具える(全般的に視野520と称する)。画像の基準点または基準マーク522(全般的に基準マーク522と称する)は、視野520の内側にあってもよい。
【0025】
図示された実施形態では、外側境界510および視野520は同じ形状であり、2の視野520は同じ形状および寸法である。一実施形態では、外側境界510により規定される較正部品120の直径は約6.4mmであり、それぞれの視野520の直径は約2.2mmである。これらの直径は、10倍の対物レンズ140を有する顕微鏡100に用いるのに適している。他の境界510および視野520の形状および寸法を使用してもよく、必要に応じて、例えば顕微鏡100の構成が異なる場合や異なる対物レンズ140が利用された場合に視野520は異なる形状および/または寸法を有していてもよい。さらに、図5に示された視野520は水平に並んで配置されているが、視野520は異なる方法、例えば垂直あるいは水平または垂直線を基準とした角度で配置されてもよい。
【0026】
図5は、光学的較正を行う第1の視野と位置的較正を行う第2の視野との2つの視野を規定する、較正要素520a、520bを具える較正部品120の一実施形態を図示する。図示された実施形態では、第1の視野520aはクリア521であり、光学的較正を行うのに使用される。光学的較正は、例えば照光の均等性または均一性の測定、および信号−雑音比を悪化させるほこりや汚れといった人工物の検出を含む。図示された実施形態では、第2の視野520bは、基準点または基準マーク522を具えており、参照基準点としてあるいは測定用または位置的較正する目的で利用できる。他の実施形態では、較正部品120は、異なる較正機能用の異なる数の視野520、他の画像、およびマークを具えてもよい。従って、図5は、いかに実施形態が実行されるかの一例を示している。
【0027】
例えば、図6は、位置的較正および光学的較正の両方を行うために利用できる、他の実施形態により構成された較正部品120を図示している。図示された実施形態では、較正部品120は、8の視野520a乃至hをそれぞれ規定する8の別個の較正要素を囲んでいる8の外側境界510を具える。図示された実施形態では、7の視野520b乃至hをそれぞれ規定する7の較正要素が中心視野520aを規定する中心較正要素の周りに配置され、図示された実施形態では、これはクリア521であり、光学的較正を行うのに使用される。一実施形態では、図示のように、7の視野520b乃至hをそれぞれ規定する7の較正要素は、中心視野520の周りに円形かつ等間隔に配置される。一実施形態では、較正部品120を規定する外側境界510は約10mmの直径を有し、各視野520は約2.2mmの直径を有してもよい。従って、図5および6に示されるように、較正部品120の直径は、使用される較正要素によって異なってもよい。他の実施形態は、異なる総数、配置、寸法および間隔の較正要素を具えてもよい。
【0028】
図示された実施形態では、視野520c乃至hを規定する較正要素は、例えば変調伝達関数(MTF)パターンを利用する光学的較正を行うように構成され、かつ較正要素は、位置的較正を行うのに用いられる基準マーク522を具える視野520bを規定する。例えば、各較正要素によって規定された視野520c乃至hは異なるMTFパターンを具えてもよく、これは水平、および/または垂直のMTFパターンでもよい。図6に示されるように、視野520c、e、gは水平の変調伝達関数(MTF)パターン600c、e、g(一般的にMTFパターン600と呼ばれる)を具え、視野520d、f、hは垂直のMTFパターン600d、f、hを具える。さらに、他の実施形態では、較正部品120は、異なる寸法のMTFパターン600e、fを有する較正要素を具えてもよい。例えば、2の較正要素は、2ミクロンの間隔を有する各MTFパターン600g、hを具える視野520g、hを規定して、一方で他の2の較正要素は、3ミクロンの間隔を有する各MTFパターン600e、fを具える視野520e、fを規定し、他の較正要素は4ミクロンの間隔を有するMTFパターン600c、dを具える視野520c、dを規定してもよい。
【0029】
他の種類の光学的較正の要素、配置およびその寸法が利用されてもよいという事を解するべきである。例えば、中心較正要素は、クリア521の視野ではなく位置的較正用の基準マーク522を具える視野520aを規定してもよい。さらに、異なるMTFパターン600の種類、数および配置が使用されてもよい。
【0030】
さらに、図8は、光学的較正を行う視野520aおよび520c乃至hをそれぞれ規定する7の較正要素と、位置的較正を行う基準マーク522を有する1の視野520bとを具える較正部品120を図示しているが、較正部品120は、位置的較正を行う複数の視野を具えてもよい。従って、図5および6に示される構成は、いかに実施形態が実施されるかを例示している。
【0031】
図7乃至10は、異なる実施形態による、顕微鏡100のステージ110を有する一体型の較正部品120の異なる形態を図示している。図7および8を参照すると、一実施形態により、較正部品120は基板700上に形成され、その後ステージ110内部の空洞または空間111内に一体化または埋め込まれてもよい。一実施形態では、基板700はガラス基板、例えばガラスディスクであって、較正部品120は、クロムのような材料710が上面702に配置されることによって、基板700の上面702に形成される。これにより、顕微鏡100の位置的および光学的較正を行うように構成された較正部品120を形成する。配置された材料710を有する基板700は、空洞111内部に埋め込みまたは配置され、それにより較正部品120がステージ110と一体化してもよい。
【0032】
図8に示されるように、一実施形態では、ステージ110の下方に配置された光源130を利用して較正部品120を照光するために、1以上の開口部801a乃至c(全体として801)がステージ110を通って形成される。較正部品120の照明は、直接的であっても間接的であってもよい。開口部801の総数、幅および形状は必要に応じて異なってもよい。従って、図8に示される開口部801は、ステージ110と一体化した較正部品120が照光されていることを全般的に図示するために示されている。
【0033】
図9および10を参照すると、代替の実施形態により、較正部品120は、ステージ110の部分900を食刻または除去することによりステージ110内に較正部品120を形成することで、ステージ110と一体型の部位であってもよい。この方法では、1以上の食刻部900および1以上の残部910は、較正部品120の較正要素を規定または形成する。例えば、1の較正要素によって規定された視野520は基準マーク522を有し、食刻した後に残るステージ110の一部910によって規定され、他の較正要素で規定されたクリア521の視野520は、食刻によって形成された開口空間900または開口部で規定されてもよい。ステージ110は、例えば既知の機械加工またはフライス加工システム、およびレーザフライス加工および光化学エッチングといった方法を含む、周知の様々な手法によって食刻されてもよい。較正部品120は異なる方法でステージ110と一体化されてもよく、図7乃至10は、いかに実施形態が実施されるかを例示している。例えば、一実施形態では、較正部品120はステージ110に、接着剤のようなもので取り付けまたは固定され、それにより較正部品120はステージ110と一体型の部位となる。
【0034】
図11を参照すると、他の実施形態では、較正部品はレーザブレードまたは同様のデバイス1110のような精密な較正部品であって、ステージ110に取り付け、固定、一体化または埋め込まれてもよい。図示した実施形態では、較正部品1110は鋭いエッジまたは「ナイフエッジ」の形状をしており、例えばフーコーのナイフエッジ試験に基づいて、有効な光学的または位置的較正データを得るために、視覚システムまたは顕微鏡100がレーザブレード1110を具えて測定を行うのを可能にする。
【0035】
一実施形態では、ステージ110は、レーザブレードまたはナイフエッジ1110の形状をした単一の一体型較正部品を具える。他の実施形態では、ステージ110は、較正部品120(例えば、図1乃至10を参照して記載したようなもの)と、レーザブレードまたはナイフエッジ1110の形状をした較正部品とを具える。一体型の較正部品120の様々な組み合わせは、例えば、較正の必要性、性能およびシステム構成により、必要に応じて利用されてもよい。
【0036】
1またはそれ以上の一体型の較正部品を有するステージ110の実施形態は様々な機械的視覚装置に用いることができ、その1つはスライド114が担持する細胞の標本を検査する顕微鏡100(全体が図1および2に示される)である。一体型の較正部品を有する顕微鏡のステージを利用する細胞学的な処理システムの例が、図12乃至14に示されている。細胞学的な処理システムは、異なる種類の較正部品、例えば図1乃至10に示される較正部品120および/または図11に示されるナイフエッジの較正部品1110を利用できるが、説明を簡単にするため主に較正部品120について説明する。
【0037】
図12は、画像ステーション1210と、サーバ1220と、1以上の観察ステーション1230a乃至cとを具える生物のスクリーニングシステム1200を図示する。当該システム1200は、カメラ1211と、第1の顕微鏡100aと、第1のステージ110aと、第1のステージ110aと一体化した第1の較正部品120aとを利用して、スライド114に担持される生物標本を画像処理するように構成されている。第1の較正部品120aの位置は必要に応じて異なり、図12は第1の較正部品120aを具える第1のステージ110aを全体的に図示している。
【0038】
画像化した生物標本の、同定された関心対象(OOIs)の位置を選択および記録するため、得られた画像データ1212は、好適なハードウェアと、ソフトウェア、例えばプロセッサ1221乃至1223と、メモリ1224とを具えるサーバ1220によって処理される。OOIsは、観察ステーション1230aの第2の較正部品120bを有する第2の顕微鏡110b、または他のステーション1230b、cの他の顕微鏡100を使ってOOIsを観察することができる細胞学者に提示されてもよい。第2の較正部品120bの位置は必要に応じて異なり、図12は第2の較正部品120bを具える第2のステージ110bを全体的に図示する。
【0039】
従って、図12に示されたシステム1200は、画像処理ステーション1210における第1の顕微鏡100aと、観察ステーション1230における第2の顕微鏡100bとの2つの顕微鏡を具える。顕微鏡100aおよび100bの構成は異なるが、各顕微鏡100は、一体型の較正部品120を有する顕微鏡のステージ110を具える。図12に全体的に図示された種類のシステム1200のさらなる態様が、米国特許出願第2004/0254738(A1)号で提供されている。
【0040】
図13は、図1乃至11を参照して上述したような、一体型の較正部品120を有するステージ110を具える一体型の画像処理/観察顕微鏡ステーションまたはシステム1300を全体的に図示している。図14は、一体型の画像処理/観察ステーションまたはシステム1300を実行しうる一方法を、更に詳細を図示している。
【0041】
図13および14に示されたシステム1300では、1つのスライド114で一度に、別個の生物標本を画像処理および観察をするのに、同じ顕微鏡が利用されてもよい。システム1300は、光源130からの光が生物の標本を通り抜け、対物レンズ140を通り抜け、その後ビームスプリッタ1310へ通過するように構成される。ビームスプリッタ1310は、第1の方向1311に光を向けて、技術者が観察するために接眼レンズ150を通し、かつ第2の方向1312に光を向けて、他のレンズ1320を通して、デジタルカメラ1330に誘導する。デジタルカメラ1330は操作可能なようにプロセッサ1340に接続され、細胞学者によって観察されるOOIsを選択するために、デジタルカメラ1330から取得した画像を処理する。
【0042】
一体型の画像処理/観察ステーション1300は、ユーザによって(例えば、デスクトップ画像処理/観察システム)、1のスライド114で同時に標本スライド114の画像処理および観察を可能にする。複数の実施形態は特に、ユーザによって操作されるため、この種のステーション1300の顕微鏡のステージ110での用途に適しており、従って、周知の自動システムと比較して追加の較正処理が必要となることがある。
【0043】
例えば、複数の実施形態では、一体型の較正部品120を利用して一体型の画像処理/観察ステーション1300で各スライド114が処理される前に、位置的較正および光学的較正の手順が行われるように利用することが出来る。使用時に異なる顕微鏡100aおよび100b(図12に示される)または単一の顕微鏡100(図13および14に示される)を用いるか否かにかかわらず、位置的較正データ(例えば、1以上のx、yおよびzの位置データ)がステージ110と一体化した較正部品120から読み込まれるか取得され、光学的較正データ(例えば、光度、MTF等)が同じ較正部品(例えば、図3に示される実施形態)から読み込まれるか取得されてもよい。顕微鏡100は、位置的および光学的補正の情報に基づいて、必要に応じて較正および調整されてもよい。この目的のため、一体型の画像処理/観察システム1300において使用される較正部品120の位置は必要に応じて異なり、図13は、較正部品120を具えるステージ110を全体的に図示する。顕微鏡100は標本の画像処理および/または観察に使用され、同じ一体型の較正部品120を用いて再度較正される。
【0044】
上述から理解されるように、複数の実施形態によれば、観察または画像処理にのみ利用されるか否かにかかわらず、顕微鏡100が特別な較正スライドの必要性なしに、必要な時に較正することが好適に可能になる。さらに、較正部品120はステージ110と一体化した部品であるため、常に利用可能な較正部品120で較正を行うこともできる。手動またはロボットでステージ110に特別な較正スライドを配置し、ステージ110からこの特別なスライドを取り去る必要がないので、較正の反復率および生産性を向上させる。較正部品は様々な位置的および光学的較正パラメータで使用することができる。較正部品は、位置的および光学的な視野が異なる総数、配置でもよい。さらに、較正部品は様々な方法で、ステージ内部と一体化または埋め込まれてもよい。実施形態は、様々な画像処理、顕微鏡の構成部品および他の機械的視覚システムにおいて実行されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本スライドを支持するステージであって、
底面および上面を有するベース部であって、前記上面が前記標本スライドを支持するように構成されたベース部と、
前記ベース部と一体型の較正部品であって、顕微鏡の位置的較正を行うように構成された第1の較正要素と前記顕微鏡の光学的較正を行うように構成された第2の較正要素とを具える較正部品と、
を具えることを特徴とするステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のステージにおいて、前記較正部品が、前記ベース部に取り付けられていることを特徴とするステージ。
【請求項3】
請求項1に記載のステージにおいて、前記ベース部が空洞を規定し、前記較正部品が前記空洞内部に配置されることを特徴とするステージ。
【請求項4】
請求項1に記載のステージにおいて、前記較正部品の一部がガラスであることを特徴とするステージ。
【請求項5】
請求項1に記載のステージにおいて、前記較正部品が、前記ステージの前記ベース部を通って形成または食刻された少なくとも1の較正要素を具えることを特徴とするステージ。
【請求項6】
請求項1に記載のステージにおいて、前記第1の較正要素が基準マークを具える第1の視野を規定し、前記第2の較正要素が透明な第2の視野を規定することを特徴とするステージ。
【請求項7】
請求項6に記載のステージにおいて、前記較正部品が、
中心視野を規定する中心較正要素と、
前記中心視野の周りに配置された各視野を規定する複数の較正要素と、
を具えることを特徴とするステージ。
【請求項8】
請求項7に記載のステージにおいて、前記中心視野が透明で、前記中心較正要素が光学的較正を行うように構成されており、少なくとも1の他の較正要素が基準マークを具える視野を規定し、前記少なくとも1の他の較正要素が位置的較正を行うように構成されることを特徴とするステージ。
【請求項9】
請求項1に記載のステージにおいて、前記第2の較正要素が、光度、光の均一性または変調伝達関数に基づいて光学的較正を行うように構成されることを特徴とするステージ。
【請求項10】
標本スライドを支持するステージであって、
底面および上面を有するベース部であって、前記上面の単一のスライドを支持するように構成されたベース部と、
前記ベース部と一体型の較正部品であって、第1の視野を規定し独立した較正スライドを使用することなく位置的較正を行うように構成された第1の較正要素と、第2の視野を規定し独立した較正スライドを使用することなく光学的較正を行うように構成された第2の較正要素とを具える較正部品と、
を具えることを特徴とするステージ。
【請求項11】
請求項10に記載のステージにおいて、前記較正部品が、前記ベース部を通って形成または食刻された少なくとも1の較正要素を具えることを特徴とするステージ。
【請求項12】
請求項10に記載のステージにおいて、前記第1の視野が基準マークを具え、かつ前記第2の視野が透明であることを特徴とするステージ。
【請求項13】
請求項10に記載のステージにおいて、前記較正部品が、
中心視野を規定する中心較正要素と、
前記中心視野の周りに配置された各視野を規定する複数の較正要素と、
を具えることを特徴とするステージ。
【請求項14】
請求項13に記載のステージにおいて、前記中心視野が透明で、前記中心較正要素が光学的較正を行うように構成されており、少なくとも1の他の較正要素が基準マークを具える視野を規定し、前記少なくとも1の他の較正要素が位置的較正を行うように構成されることを特徴とするステージ。
【請求項15】
請求項14に記載のステージにおいて、前記第2の較正要素が、光度、光の均一性、倍率、または変調伝達関数に基づいて光学的較正を行うように構成されることを特徴とするステージ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−507014(P2011−507014A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536957(P2010−536957)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082411
【国際公開番号】WO2009/075969
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】