説明

顕微鏡システム、位置検出方法および位置検出プログラム

【課題】初期化動作にかかる時間を短縮するとともに、標本の損傷を防止し、原点位置設定の位置再現性を向上することができる顕微鏡システム、位置検出方法および位置検出プログラムを提供すること。
【解決手段】対物レンズを保持する対物レンズ側本体部に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部と、ステージを保持するステージ側本体部に設けられ、複数の指標部をそれぞれ検知する複数の検知部と、各指標部の相対位置に対応する前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置情報を記憶する記憶部と、対物レンズ側本体部を対物レンズの光軸と平行な方向に移動・停止させる駆動制御を行う駆動制御部と、検知された指標部を判定し、対物レンズ側本体部の位置を決定する制御部と、を備え、駆動制御部は、検知部による指標部の検知動作を行う際、対物レンズ側本体部を、対物レンズが標本から離れる方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、照明光を標本に照射し、標本が反射した光をもとに生成された標本像を取得する顕微鏡システム、この顕微鏡システム等の初期化動作における位置検出方法および位置検出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医学や生物学等の分野では、細胞等の観察に、標本を照明して観察する顕微鏡装置を有する顕微鏡システムが用いられている。また、工業分野においても、金属組織等の品質管理や、新素材の研究開発、電子デバイスや磁気ヘッドの検査等、種々の用途で顕微鏡装置が利用されている。標本の観察を行う顕微鏡システムとして、目視によるものの他、CCDカメラ等の撮像素子を用いて標本像を撮像し、モニタ表示する構成を有するものが知られている。
【0003】
顕微鏡システムでは、電源投入時に各駆動部の初期化動作が行われる。初期化動作では、各駆動部の駆動範囲の原点位置まで駆動し、原点位置を検出後、電源投入時の位置に戻る動作を行う。このとき、顕微鏡システムの制御部では、駆動部を駆動開始位置から原点位置まで駆動させたパルス数を計測する。これにより、電源投入時の駆動部の現在位置がわかる。また、原点位置を検出した後は、計測したパルス数をもとに、駆動開始時の位置に戻ることができる。
【0004】
ところで、対物レンズおよびステージの少なくとも一方を駆動する駆動部に対して初期化動作を行う場合、例えばマウスやラットのような小動物のような厚みのある標本を観察するような顕微鏡装置であると、駆動部の駆動範囲が、通常40mm程度であるのに対して80mm程度必要となる。これに伴い、初期化動作にかかる時間も増大してしまうという問題があった。
【0005】
この問題に対して、対物レンズと標本とが離れる方向および近づく方向のそれぞれの移動限界位置、およびその中間位置にセンサ(第1のセンサ、第2のセンサおよび第3のセンサ)をそれぞれ配設し、駆動方向または駆動範囲を制限することによって、初期化動作に要する時間を短縮することができる顕微鏡システムが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この顕微鏡システムでは、対物レンズの先端位置を検出する複数のセンサを用いて、いずれかのセンサで対物レンズの先端位置を検出し、検出したセンサ位置に対して、設定された駆動範囲に応じたオフセット値を減算することによって原点位置の設定を行ない、駆動部の駆動範囲を短くすることで初期化動作に要する時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−317798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1が開示する初期化動作では、初期化動作中に対物レンズが標本に対して近接する方向に移動する場合がある。ここで、標本の大きさ(高さ)によっては、対物レンズ先端位置のステージに対する最近接可能位置より高くなっている場合があり、このときに対物レンズを標本に対して近接する方向に移動させてしまうと、標本と対物レンズとが衝突してしまい、標本および/または対物レンズを損傷してしまうおそれがあった。
【0008】
また、上述した特許文献1が開示する初期化動作では、第1のセンサ、第2のセンサおよび第3のセンサのいずれかのセンサで検出した後、この検出位置に応じてオフセット値を減算して原点位置を設定しているが、このオフセット値が、第1のセンサ、第2のセンサおよび第3のセンサを装置に組み付けた際のずれまでを考慮したものではなく、このずれにより、設定される原点位置にもずれが生じるため、センサによる位置再現性が低下してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、初期化動作にかかる時間を短縮するとともに、標本の損傷を防止し、原点位置設定の位置再現性を向上することができる顕微鏡システム、位置検出方法および位置検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる顕微鏡システムは、標本が載置されるステージと、少なくとも前記ステージ上の前記標本からの観察光を集光する対物レンズと、少なくとも前記対物レンズを保持する対物レンズ側本体部と、少なくとも前記ステージを保持するステージ側本体部と、前記対物レンズ側本体部および前記ステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部と、前記ステージ側本体部に設けられ、前記複数の指標部をそれぞれ検知する複数の検知部と、各指標部の相対位置に対応する前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置情報を記憶する記憶部と、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを駆動して、該対物レンズ側本体部または該ステージを前記対物レンズの光軸と平行な方向に移動させるとともに、前記検知部からの前記指標部の検知に応じて前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる駆動制御を行う駆動制御部と、前記検知部によって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した前記位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する制御部と、を備え、前記駆動制御部は、少なくとも前記検知部による前記指標部の検知動作を行う際、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記検知部は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って当該検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、前記駆動制御部は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記位置情報は、前記複数の指標部のうちの基準となる指標部と他の指標部との相対位置で決定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる位置検出方法は、対物レンズを保持する対物レンズ側本体部、または標本が載置されるステージの少なくともどちらか一方を、前記対物レンズの光軸と平行な方向であって、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させる移動ステップと、前記対物レンズ側本体部および前記ステージを保持するステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部のうち、いずれかの指標部を検知部によって検知する検知ステップと、前記検知ステップによって前記指標部が検知された場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる停止ステップと、前記検知ステップによって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる位置検出方法は、上記発明において、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って前記検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、前記停止ステップは、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる位置検出プログラムは、対物レンズを保持する対物レンズ側本体部、または標本が載置されるステージの少なくともどちらか一方を、前記対物レンズの光軸と平行な方向であって、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させる移動手順と、前記対物レンズ側本体部および前記ステージを保持するステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部のうち、いずれかの指標部を検知部によって検知する検知手順と、前記検知手順によって前記指標部が検知された場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる停止手順と、前記検知手順によって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する決定手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる位置検出プログラムは、上記発明において、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って前記検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、前記停止手順は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対物レンズ側本体部またはステージの異なる位置を検出する2つのセンサのいずれか一方によってヘッド本体部の位置を検知するとともに、位置検知におけるヘッド本体部の初期動作を上方向(標本から離れる方向)に移動させ、各センサの相対位置をもとに原点位置を設定するようにしたので、初期化動作にかかる時間を短縮するとともに、標本の損傷を防止し、原点位置設定の位置再現性を向上することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの構成の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの要部の構成を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの表示入力部の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの要部の構成を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる顕微鏡システム1の構成の一例を示す概念図である。図2は、本実施の形態にかかる顕微鏡システム1の機能構成を示すブロック図である。なお、図1および図2において、顕微鏡システム1が載置される平面をXY平面とし、XY平面と垂直な方向をZ方向として説明する。
【0021】
図1および図2に示すように、顕微鏡システム1は、標本Sを観察する顕微鏡装置2と、顕微鏡装置2を駆動制御する顕微鏡制御部3と、顕微鏡装置2を介して標本Sを撮像して画像データを生成する撮像装置4と、撮像装置4の駆動を制御する撮像制御部5と、撮像装置4が撮像した画像データに対応する画像を表示するとともに、顕微鏡システム1の各種の操作の入力を受け付ける表示入力部6と、顕微鏡制御部3、撮像装置4、撮像制御部5および表示入力部6を制御する制御端末7と、を備える。顕微鏡装置2、顕微鏡制御部3、撮像装置4、撮像制御部5、表示入力部6および制御端末7は、データが送受信可能に有線または無線で接続されている。
【0022】
顕微鏡装置2は、標本Sを保持する顕微鏡基部2a(ステージ側本体部)と、顕微鏡基部2aに保持されるヘッド部2bと、を備える。顕微鏡基部2aは、標本Sが載置されるステージ21を支持する支持部22を有する。ヘッド部2bは、ノーズピース23を介して対物レンズ24を保持するとともに、Z方向に移動可能なヘッド本体部25と、標本Sを照明する照明光を射出する落射照明用光源26と、を有する。また、顕微鏡装置2は、顕微鏡基部2aおよびヘッド部2bを連結し、ヘッド部2bをZ方向に移動させるZ駆動部27を有する。
【0023】
ステージ21は、XY方向に移動自在に構成されている。ステージ21は、モータ211によってXY平面内で移動自在である。ステージ21は、顕微鏡制御部3の制御のもと、図示しないXY位置の原点センサによってXY平面における所定の原点位置を検出し、この原点位置を基点としてモータ211の駆動量が制御されることによって、標本S上の観察箇所を移動する。ステージ21は、観察時のX位置およびY位置に関する位置信号(XY座標)を顕微鏡制御部3に出力する。
【0024】
ノーズピース23は、ヘッド本体部25に対してスライド自在に設けられたスライダ231を介して、所望の対物レンズ24を標本Sの上方に配置する。ノーズピース23は、スライダ231によって倍率(観察倍率)が異なる複数の対物レンズ24(241,242)を保持する。ノーズピース23は、顕微鏡制御部3の制御のもと、モータ232によってスライダ231をX方向にスライドさせることによって、観察光の光路上に挿入されて標本Sの観察に用いる対物レンズ24を択一的に切換える。なお、ノーズピース23は、電動レボルバを代わりに用いる構成であってもよい。
【0025】
対物レンズ24は、たとえば1倍,2倍,4倍の比較的倍率の低い対物レンズ241(以下、「低倍対物レンズ241」という)と、10倍,20倍,40倍の低倍対物レンズ241の倍率に対して高倍率である対物レンズ242(以下、「高倍対物レンズ242」という)とを少なくとも一つずつスライダ231に装着させる。なお、低倍対物レンズ241および高倍対物レンズ242の倍率は一例であり、高倍対物レンズ242が低倍対物レンズ241に対して高ければよい。
【0026】
ヘッド本体部25は、上述したノーズピース23を保持するとともに、ファイバー261を介して落射照明用光源26から射出された照明光L1(以下、「落射照明光L1」という)を集光する照明レンズ251と、落射照明光L1の光路を対物レンズ24の光軸に沿って偏向させるハーフミラー252と、標本Sを拡大するズームレンズ253と、対物レンズ24、ズームレンズ253およびハーフミラー252を介して入射される標本Sの反射光を集光して観察像を結像する結像レンズ254とが内部に設けられている。
【0027】
ズームレンズ部253は、ズームレンズ群およびズームレンズ群を駆動するズームレンズモータ(図示せず)等を用いて構成される。ズームレンズモータは、顕微鏡制御部3の制御のもと、ズームレンズ群を光軸方向に沿って移動させることにより、ズームレンズ部のズーム倍率を変更する。
【0028】
また、ヘッド本体部25は、後述するヘッド保持部271に保持され、モータ274によってZ方向に移動自在である。ヘッド本体部25は、顕微鏡制御部3の制御のもと、ヘッド本体部25のZ方向における所定の原点位置を基点としてモータ274の駆動量が制御されることによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に標本Sを焦準移動させる。なお、本実施の形態では、ヘッド本体部25およびヘッド保持部271によって対物レンズ側本体部を構成する。
【0029】
落射照明用光源26は、ハロゲンランプ、キセノンランプまたはLED(Light Emitting Diode)等によって構成される。落射照明用光源26は、ファイバー261を介して標本Sの観察像を形成するための落射照明光L1を出射する。
【0030】
落射照明光L1は、照明レンズ251、ハーフミラー252、ズームレンズ253および対物レンズ24を経て標本Sに照射される。標本Sで反射した反射光L2(以下、「観察光L2」という)は、対物レンズ24、ズームレンズ253、ハーフミラー252および結像レンズ254を経て撮像装置4に入射する。
【0031】
図3は、本実施の形態にかかるZ駆動部27の構成を示す模式図である。図1〜3に示すZ駆動部27は、ヘッド本体部25を保持するとともに、支持部22に対してZ方向に移動可能なヘッド保持部271と、ヘッド保持部271に設けられ、X方向に略板状をなして突出し、互いに異なる位置の指標をなす2つの指標部としての旗272a,272bと、支持部22に設けられ、旗272a,272bをそれぞれ検知する検知部273と、ヘッド保持部271をZ方向に駆動させるモータ274と、を有する。また、検知部273は、旗272aを検知する第1センサ273aと、旗272bを検知する第2センサ273bと、を有する。
【0032】
第1センサ273aと旗272aとは、Z方向における同軸上に設けられる。また、第2センサ273bと旗272bとは、Z方向における第1センサ273aおよび旗272aの軸と異なる軸に対して同軸上に設けられる。
【0033】
第1センサ273aおよび第2センサ273bは、Z方向から見た側面が略凹状をなし、この凹状の内部空間を通過する旗272aおよび旗272bをそれぞれ検知する。第1センサ273aおよび第2センサ273bは、フォトインタラプタや、フォトリフレクタ等を用いて実現され、旗272a,272bによる遮光の有無を判断することにより検知する。
【0034】
旗272aは、旗272aが第1センサ273aの凹状の内部空間に収容された状態において、ヘッド本体部25が最上限位置付近に配置される位置に設けられる。また、旗272bは、旗272bが第2センサ273bの凹状の内部空間に収容された状態において、ヘッド本体部25が最上限位置と最下限位置との中間位置に配置される位置に設けられる。
【0035】
例えば、ヘッド本体部25の最上限位置と最下限位置との間の距離が110mmである場合、旗272aは、第1センサ273aの凹状の内部空間に収容された状態でヘッド本体部25が最上限位置に位置するよう設けられる。また、旗272bは、第2センサ273bの凹状の内部空間に収容された状態でヘッド本体部25が最上限位置から55mm下方となる位置に設けられる。
【0036】
顕微鏡制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、制御端末7の制御のもと、顕微鏡装置2を構成する各部の動作を統括的に制御する。具体的には、顕微鏡制御部3は、スライダ231を駆動させて観察光L2の光路上に配置する対物レンズ24を切換える切換処理、モータ211またはモータ274を駆動することにより、ステージ21およびヘッド本体部25の駆動処理、および標本Sの観察に伴う顕微鏡装置2の各部の調整を行う調整処理等を行う。また、顕微鏡制御部3は、顕微鏡装置2を構成する各部の状態、例えばステージ21の位置情報(XY位置)、ヘッド本体部25の位置情報(Z位置)およびスライダ231に装着された対物レンズ24の種類情報等を制御端末7に出力する。
【0037】
撮像装置4は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子41を用いて構成される。撮像装置4は、撮像制御部5の制御のもと、結像レンズ254を経て入射された標本Sの観察像を撮像して標本Sの画像データを連続して生成する。撮像装置4は、カメラケーブルを介して生成した標本Sの画像データを制御端末7へ出力する。
【0038】
撮像制御部5は、CPU等を用いて構成され、撮像装置4の動作を制御する。具体的には、撮像制御部5は、撮像装置4の自動ゲイン制御のON/OFF切換処理、ゲインの設定処理およびフレームレートの設定処理等を行って撮像装置4の撮影動作を制御する。撮像制御部5は、AE処理部51と、AF処理部52と、を有する。
【0039】
AE処理部51は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4の露出条件を自動的に設定する。具体的には、AE処理部51は、制御端末7を介して取得した画像データから輝度を算出し、算出した輝度に基づいて撮像装置4の露出条件、たとえば露光時間を決定することで撮像装置4の自動露出を行う。
【0040】
AF処理部52は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4のピントを自動的に調整する。具体的には、AF処理部52は、画像データに含まれるコントラストを評価し、合焦している合焦位置(焦点位置)を検出することにより、撮像装置4のピントを自動的に調整する。なお、AF処理部52は、画像データに基づいて、ヘッド本体部25の各Z位置における画像のコントラストを評価することにより、合焦している焦点位置(Z位置)を検出してもよい。
【0041】
表示入力部6は、制御端末7との通信を行う表示通信部61と、画像を表示する表示部62と、外部からの物体の接触に応じた位置信号を出力するタッチパネル63と、を有する。
【0042】
表示通信部61は、制御端末7との通信を行うための通信インターフェースである。表示通信部61は、制御端末7から出力される画像データを表示部62へ出力する。
【0043】
表示部62は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等からなる表示パネルを用いて構成される。表示部62は、表示通信部61を介して入力される画像データに対応する画像を表示する。表示部62は、顕微鏡システム1の各種操作情報等を表示する。
【0044】
タッチパネル63は、表示部62の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付ける。具体的には、タッチパネル63は、ユーザが表示部62に表示される操作アイコンに従ってタッチ(接触)した位置を検出し、この検出したタッチ位置に応じた位置信号を制御端末7へ出力する。たとえば、図4に示すように、タッチパネル63は、表示部62が顕微鏡システム1の各種操作情報を画像表示領域A1内で表示することで、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)として機能する。一般に、タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式および光学方式等がある。本実施の形態では、いずれの方式のタッチパネルであっても適用可能である。
【0045】
制御端末7は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6との通信を行う制御通信部71と、顕微鏡システム1の各種情報を記憶する記憶部73と、顕微鏡システム1の各部の駆動を指示する駆動指示信号の入力を受け付ける入力部72と、顕微鏡システム1の各部を制御する制御部74と、を備える。
【0046】
制御通信部71は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6それぞれとの通信を行うための通信インターフェースである。また、制御通信部71は、カメラケーブルを介して撮像装置4から出力される画像データを制御部74へ出力する。
【0047】
入力部72は、キーボード、マウス、ジョイスティックおよび各種スイッチ等を用いて構成され、各種スイッチの操作入力に応じた操作信号を制御部74に出力する。
【0048】
記憶部73は、制御端末7の内部に固定的に設けられるフラッシュメモリおよびRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリを用いて実現される。記憶部73は、顕微鏡システム1に実行させる各種プログラム(例えば、位置検出プログラム)、プログラムの実行中に使用される各種データを記憶する。また、記憶部73は、制御部74の処理中の情報を一次的に記憶する。記憶部73は、撮像装置4が撮像した画像データを記憶する画像データ記憶部731と、ヘッド本体部25の位置(例えば旗272a,272bの位置)に関する位置情報を記憶する位置情報記憶部732と、を有する。なお、記憶部73は、外部から装着されるメモリカード等を用いて構成されてもよい。
【0049】
制御部74は、CPU等を用いて構成され、入力部72およびタッチパネル63からの駆動指示信号、位置信号および切換信号等に応じて顕微鏡システム1を構成する各部に対応する指示やデータの転送等を行って顕微鏡システム1の動作を統括的に制御する。また、検知部273が検知した旗を判定し、ヘッド本体部25の位置を設定する処理を行う。
【0050】
また、制御部74は、画像処理部741と、駆動制御部742と、表示制御部743と、を有する。
【0051】
画像処理部741は、制御通信部71を介して入力される画像データに対して、所定の画像処理を施して表示部62で表示する表示画像を生成する。具体的には、画像処理部741は、画像データに対して、オプティカルブラック減算処理、ホワイトバランス調整処理、同時化処理、カラーマトリクス演算処理、γ補正処理、色再現処理およびエッジ強調処理等を含む画像処理を行う。画像処理部741は、画像データを所定の方式、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式で圧縮し、圧縮した画像データを画像データ記憶部731へ出力する。
【0052】
駆動制御部742は、例えばタッチパネル63または入力部72からの入力に応じて顕微鏡装置2を構成する電動ユニット(ステージ21、ヘッド本体部25)を駆動する駆動制御を行う。駆動制御部742は、例えば、ヘッド本体部25を対物レンズ24の光軸と平行な方向に移動させるとともに、第1センサ273aまたは第2センサ273bによる旗272aまたは旗272bの検知に応じてヘッド本体部25の移動を停止させる駆動制御を行う。
【0053】
表示制御部743は、表示部62の表示態様を制御する。具体的には、表示制御部743は、画像データ記憶部731が記憶する複数の画像データの各々の画像を表示部62に表示させる。表示制御部743は、顕微鏡システム1の各々の動作に関する操作情報、たとえば、ステージ21またはヘッド本体部25の操作情報等を表示部62に表示させる。
【0054】
このように構成された顕微鏡システム1は、制御部74の制御のもと、撮像装置4で撮像された標本Sの画像データを表示部62に表示することによってユーザに標本Sの画像を観察させることができる。さらに、顕微鏡システム1は、タッチパネル63から入力される位置信号に基づいて、制御部74が顕微鏡システム1の各部に指示信号や駆動信号を出力することにより、顕微鏡装置2および撮像装置4が駆動する。
【0055】
図5は、本実施の形態にかかる顕微鏡システム1の要部の構成を示す模式図であって、Z駆動部27の動作を説明する図である。図6は、本実施の形態にかかる顕微鏡システム1が行う処理の概要を説明する図である。まず、2つの旗272a,272bが第1センサ273aおよび第2センサ273bより紙面下方に位置する状態において(図5(a))、ヘッド保持部271が上方に移動すると、旗272bが第2センサ273b内に挿通し、第2センサ273bによって、旗272bが検知される(図5(b))。この状態においてヘッド保持部271がさらに上方に移動すると、旗272aが第1センサ273a内に挿通し、第1センサ273aによって、旗272aが検知される(図5(c))。
【0056】
このとき、例えば第1センサ273aは、ヘッド本体部25の移動に伴って第1センサ273aに対して相対的に移動する旗272aを検知する検知ラインSL1が設けられ、この検知ラインSL1に旗272aが位置して遮光されることによって、旗272aを検知する(図6参照)。検知ラインSL1は、例えば、第1センサ273aの中心部を通過し、旗272aの端面と平行となるように設定される。
【0057】
続いて、第1および第2センサによる旗の位置検出処理について説明する。図7は、本実施の形態にかかる顕微鏡システム1が行う位置検出処理の概要を示すフローチャートである。図8は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を説明する図である。なお、図8では、一例として旗272aおよび第1センサ273aの動作を示す。
【0058】
まず、顕微鏡制御部3は、第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗を検知したか否かを判断し、制御通信部71を介して制御部74に出力する(ステップS101)。制御部74は、顕微鏡制御部3から第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗272aまたは旗272bを検知した旨を受信した場合(ステップS101:Yes)、ステップS105に移行する。
【0059】
また、制御部74は、顕微鏡制御部3から第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗を検知していない旨を受信した場合(ステップS101:No)、ヘッド本体部25を上方向(紙面上方向(Z方向))に移動させるよう駆動制御部742に指示する(ステップS102、図8(a))。駆動制御部742は、モータ274を駆動してヘッド本体部25を上方向に移動させる。駆動制御部742は、旗を検知するまでヘッド本体部25を上方向に移動させる(ステップS103:No)。
【0060】
ヘッド本体部25が上方向に移動し、第1センサ273aが旗272aを検知すると(ステップS103:Yes、図8(b))、駆動制御部742は、モータ274の駆動を停止し、ヘッド本体部25の移動動作を停止する(ステップS104)。このとき、第1センサ273aが検知ラインSL1で旗272aを検知してから駆動制御部742がヘッド本体部25の移動動作を停止させるまでのオーバーランにより、図8(c)に示すように、旗272aが第1センサ273aの検知ラインSL1を通過し、旗272aの上端の高さが第1センサ273aの検知ラインSL1の高さより高くなっている。
【0061】
このため、駆動制御部742は、ヘッド本体部25を下方向に移動させる(ステップS105、図8(c))。駆動制御部742は、第1センサ273aの検知結果をもとに(ステップS106)、旗272aが第1センサ273aの検知ラインSL1から離れる位置(上方向への移動に対して検知ラインSL1よりも手前側の位置)までヘッド本体部25を下方向に移動させながら検知結果を受信する(ステップS106:Yes)。なお、このときの移動速度は、ヘッド本体部25が上方向に移動する移動速度と比して小さい。
【0062】
駆動制御部742は、第1センサ273aが旗272aを検知しない、すなわち、旗272aが第1センサ273aの検知ラインSL1から離れると(ステップS106:No)、モータ274の駆動を停止し、ヘッド本体部25の移動動作を停止する(ステップS107、図8(d))。
【0063】
その後、駆動制御部742は、ヘッド本体部25を上方向に微小量移動させる(ステップS108)。このときの移動速度は、上述した下方向にヘッド本体部25を移動させる移動速度と比して小さい。駆動制御部742は、ヘッド本体部25を微小量移動させて移動動作を停止させた後(ステップS109)、第1センサ273aが旗272aを検知しているか判断する(ステップS110)。駆動制御部742は、第1センサ273aが旗272aを検知するまでヘッド本体部25の微小量移動および移動動作停止を繰り返す(ステップS110:No)。
【0064】
制御部74は、第1センサ273aが旗272aを検知すると(ステップS110:Yes、図8(e))、旗を検知したセンサを判定する(ここでは、第1センサ273aであると判定する、ステップS111)。このとき、旗272aの上端が検知ラインSL1と一致する。制御部74は、検知したセンサを判定後、位置検出処理を終了する。なお、上述した位置検出処理は、第1センサ273aによって旗272aの位置を検知するものとして説明したが、第2センサ273bおよび旗272bにおいても同様である。
【0065】
上述した位置検出処理によって、制御部74は、ヘッド本体部25の位置の検出を行なう。複数のセンサを用いた位置検出処理によって、位置検出および設定にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
また、上述したオーバーランによって、ヘッド本体部25の停止位置が所望の停止位置を通過している。このため、特に最上限位置において、ヘッド本体部25の上端が顕微鏡装置2の最上限位置を越えないように設定される。
【0067】
ここで、制御部74は、第1センサ273aおよび第2センサ273bにおける検知ライン位置に応じた位置情報を参照してヘッド本体部25の位置を決定する。位置情報は、例えば第1センサ273aおよび第2センサ273bのセンサ間距離に応じて設定される。
【0068】
図9は、本実施の形態にかかるセンサ間距離設定処理の概要を示すフローチャートである。センサ間距離設定処理では、まず第1センサ273aで旗272aを検知する(ステップS201)。このとき、上述したように、駆動制御部742がヘッド本体部25を上下動させて検知ラインSL1と旗272aの上端とを一致させる。このときのヘッド本体部25の位置を第1検知位置とし、この第1検知位置を0に設定する(ステップS202)。
【0069】
その後、駆動制御部742は、ヘッド本体部25を下方向に移動させ(ステップS203)、第2センサ273bで旗272bを検知する(ステップS204)。このとき、上述したように、駆動制御部742がヘッド本体部25を上下動させて第2センサ273bの検知ラインと旗272bの上端とを一致させる。このときのヘッド本体部25の位置を第2検知位置とする。この第2検知位置は、第1検知位置からの移動量に対応し、この移動量dを第2検知位置として設定し、位置情報記憶部732に記憶する(ステップS205)。なお、第1検知位置が0以外の値である場合、例えばdであるとすると、第2検知位置は、d+dとなる。
【0070】
上述したセンサ間距離設定処理によって、第1センサ273aおよび第2センサ273bにそれぞれ対応した第1検知位置および第2検知位置が設定される。なお、このセンサ間距離設定処理では、旗272aに対する旗272bの相対位置から第1検知位置および第2検知位置が決定される。制御部74は、この位置情報を参照して、ヘッド本体部25の位置を決定することができる。
【0071】
ここで、本実施の形態における顕微鏡システム1の初期化動作処理について、図10を参照して説明する。図10は、本実施の形態にかかる初期化動作処理の概要を示すフローチャートである。初期化動作処理は、装置に電源が投入された場合、またはタッチパネル63や入力部72から初期化動作指示が入力された場合に行う処理である。
【0072】
まず、制御部74の制御のもと、顕微鏡制御部3は、第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗272aまたは旗272bを検知したか否かを判断し、制御通信部71を介して制御部74に出力する(ステップS301)。制御部74は、顕微鏡制御部3から第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗272aまたは旗272bを検知した旨を受信した場合(ステップS301:Yes)、ステップS302に移行する。
【0073】
制御部74は、旗を検知したセンサが第1センサ273aであるか第2センサ273bであるかを判定する(ステップ302)。ここで、制御部74は、旗を検知したセンサが第1センサ273aである場合(ステップS302:第1)、ステップS307に移行する。また、制御部74は、旗を検知したセンサが第2センサ273bである場合(ステップS302:第2)、ステップS303に移行する。
【0074】
一方、制御部74は、顕微鏡制御部3から第1センサ273aまたは第2センサ273bが旗272aまたは旗272bを検知していない旨を受信した場合(ステップS301:No)、ステップS303に移行する。制御部74は、ヘッド本体部25を上方向(紙面上方向(Z方向))に移動させるよう駆動制御部742に指示する(ステップS303)。駆動制御部742は、モータ274を駆動してヘッド本体部25を上方向に移動させる。駆動制御部742は、旗を検知するまでヘッド本体部25を上方向に移動させる(ステップS304:No)。
【0075】
ヘッド本体部25が上方向に移動し、第1センサ273aが旗272aを検知すると(ステップS304:Yes)、駆動制御部742は、モータ274の駆動を停止し、ヘッド本体部25の移動動作を停止する(ステップS305)。移動動作停止後、制御部74は、旗を検出したセンサが第1センサ273aであるか第2センサ273bであるかを判定し(ステップS306)、判定されたセンサを検知センサとして記憶する(ステップS307)。
【0076】
その後、上述したステップS105〜S110ように、駆動制御部742がヘッド本体部25を上下動させて検知ラインと旗の上端とを一致させる処理を行う(ステップS308〜S313)。制御部74は、センサが旗を検知すると(ステップS313:Yes)、ステップS307で記憶した検知センサを参照し、検知センサが第1センサ273aであるか第2センサ273bであるかを判定する(ステップS314)。
【0077】
制御部74は、ステップS314において判定されたセンサが第1センサ273aである場合(ステップS314:第1)、例えば図8に示すセンサ間距離設定処理で設定された第1検知位置を参照して、ヘッド本体部25の位置を0として設定し(ステップS315)、初期化動作処理を終了する。
【0078】
また、制御部74は、判定されたセンサが第2センサ273bである場合(ステップS314:第2)、第2検知位置を参照して、ヘッド本体部25の位置をdとして設定し(ステップS316)、初期化動作処理を終了する。
【0079】
上述した初期化動作処理によって、制御部74は、ヘッド本体部25の位置の初期化を行なう。この初期化動作処理によって、位置検出および設定にかかる時間を短縮し、初期化動作処理全体に要する時間を短縮することができる。また、ヘッド本体部25の位置を検知する際、ヘッド本体部25は、初期動作として上方向に移動するため、ステージ21に載置された標本Sに対して離れる方向に移動し、標本Sとの衝突を回避することができる。
【0080】
なお、初期化動作処理後、駆動制御部742がヘッド本体部25を初期化動作処理直前の位置に移動させてもよいし、初期化動作処理後の位置に配置するようにしてもよい。初期化動作処理後にヘッド本体部25を初期化動作処理直前の位置に移動させる場合、ステップS303のヘッド本体部25の移動開始とともに、符号付き駆動パルスのカウントを開始させ、ステップS313におけるヘッド本体部25の移動終了とともに、駆動パルスのカウントを終了させる。この間で記憶された駆動パルス分の移動の各ステップを各々の位置に挿入し、ヘッド本体部25を移動させる。
【0081】
ここで、ヘッド本体部25の移動は、観察者によって任意に移動できるものであってもよい。観察者は、タッチパネル63または入力部72を操作してヘッド本体部25の移動を入力指示することができる。このとき、ヘッド本体部25の移動は、観察者の入力によって駆動制御部742がヘッド本体部25を所定距離移動させるものであってよいし、観察者が入力している間(例えば入力ボタンを押下している間)ヘッド本体部25を移動させるようにしてもよい。このとき、第1センサ273aであるか第2センサ273bを用いて、ヘッド本体部25の移動量の制御を行ってもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、ステップS302において、旗を検知したセンサが第2センサ273bである場合、次ステップであるステップS307に移行すると、ヘッド本体部25が下方向に移動して標本Sと衝突するおそれがあるため、ステップS303に移行させることで検知センサを第1センサ273aに変更する制御を行っている。
【0083】
上述した本実施の形態によれば、ヘッド本体部の異なる位置を検出する2つのセンサのいずれか一方によってヘッド本体部の位置を検知するようにしたので、位置検出および設定にかかる時間を短縮して初期化動作処理全体に要する時間を短縮することができる。また、位置検知におけるヘッド本体部の初期動作を上方向(標本から離れる方向)に移動するようにしたので、ステージに載置された標本に対して離れる方向に移動し、対物レンズと標本との衝突を回避することができる。
【0084】
また、上述した本実施の形態によれば、センサ間距離設定処理によって設定された各センサの相対位置をもとに原点位置を設定するようにしたので、センサを装置に組み付けた際にずれが生じた場合であっても、原点位置設定を確実に行うことができ、位置再現性を向上することができる。
【0085】
ここで、従来では、取り付けられる対物レンズの光軸方向の長さが異なる等、対物レンズの移動限界位置が変わる場合、初期化動作時等、対物レンズの下方向の移動によって標本または標本を載置するステージと対物レンズとが衝突するおそれがあり、対物レンズと標本とが近づく方向の移動限界位置のセンサの位置を変更する必要がある。これに対して、本実施の形態は、位置検知におけるヘッド本体部の初期動作を上方向(標本から離れる方向)に移動するため、対物レンズに応じてセンサの配設位置を変更することなく、初期化動作時の対物レンズと標本との衝突を回避することができる。
【0086】
なお、上述した実施の形態において、電源を切断する際に、ヘッド本体部25の位置を移動させるようにしてもよい。このとき、旗272aの上端の位置が第1センサ273aの検知ラインSL1の若干下方に位置するように配置されることが好ましい。この位置に配置することによって、図10に示す初期化動作処理を開始した際、ステップS301からステップS303に移行して、ヘッド本体部25を若干量上方向に移動させれば第1センサ273aが旗272aを検知することができるため、処理にかかる時間を一段と短縮することが可能となる。また、第1センサ273aの検知処理により、ヘッド本体部25は、顕微鏡装置2の最上限位置近傍で初期化動作処理を行うため、標本Sとの衝突リスクを一段と確実に回避することができる。
【0087】
また、上述した実施の形態において、旗およびセンサの数は2つに限らず、3以上の複数個有するものであってもよく、1つのセンサが複数の旗を検知するものであってもよい。さらに、旗の移動方向の長さを長くし、センサが、旗に対して光を遮断する上端位置と、光の遮断を解除させる下端位置との2箇所を検知するものであってもよい。検知箇所を増やすことによって、一段と精密な制御および処理の時間短縮を実現することができる。なお、指標部が、図示したように、平板状をなす旗であるものとして説明したが、検知ラインに位置した際に遮光できる形状であれば、如何なる形状をなすものであってもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態において、ヘッド本体部25の移動速度が遅く、駆動制御部742によって旗の上端を検知ライン上で停止させることができれば、ヘッド本体部25の上下動による停止位置の微調整を行わなくてもよい。さらに、標本Sに対して移動させる低倍対物レンズと高倍対物レンズとに応じて、ヘッド本体部25の移動分解能を変えるようにしてもよい。このとき、低倍対物レンズを標本Sに対して移動させる場合、高倍対物レンズの移動と比して低い移動分解能で移動させる。
【0089】
また、上述した実施の形態では、対物レンズ(ヘッド本体部)側がZ方向に移動するものとして説明したが、例えばステージ21側がZ方向に移動するものであってもよいし、対物レンズ24およびステージ21がそれぞれZ方向に移動するものであってもよい。なお、ステージ21がZ方向に移動する場合、Z駆動部27をステージ21と支持部22との間に設け、ステージ21が、少なくとも支持部22側のセンサによってステージ21の最上限位置付近を検知する指標部(旗)を有することが好ましい。
【0090】
また、上述した実施の形態おけるセンサおよび旗の位置関係は逆であってもよく、例えば、支持部22側に旗を配置し、ヘッド保持部271またはステージ21がセンサを有するものであってもよい。
【0091】
また、上述した実施の形態では、顕微鏡装置として正立型顕微鏡装置を例に説明したが、たとえば倒立型顕微鏡装置であっても本発明を適用することができる。さらに、顕微鏡装置を組み込んだライン装置といった各種システムにも、本発明を適用することができる。
【0092】
また、上述した実施の形態では、表示入力部と制御端末とが別々に構成されていたが、たとえば表示入力部と制御端末とが一体的に形成された携帯型端末であってもよい。
【0093】
また、上述した実施の形態では、顕微鏡装置、撮像装置、表示入力部および制御端末を備えた顕微鏡システムを例に説明したが、たとえば標本を拡大する対物レンズ、対物レンズを介して標本を撮像する撮像機能、および画像を表示する表示機能を備えた撮像装置、たとえばビデオマイクロスコープ等であっても、本発明を適用することができる。
【0094】
以上のように、本発明にかかる顕微鏡システム、初期化動作にかかる時間を短縮するとともに、標本の損傷を防止し、原点位置設定の位置再現性を向上するのに有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 顕微鏡システム
2 顕微鏡装置
2a 顕微鏡基部
2a ヘッド部
3 顕微鏡制御部
4 撮像装置
5 撮像制御部
6 表示入力部
7 制御端末
21 ステージ
22 支持部
23 ノーズピース
24 対物レンズ
25 ヘッド本体部
26 落射照明用光源
41 撮像素子
51 AE処理部
52 AF処理部
61 表示通信部
62 表示部
63 タッチパネル
71 制御通信部
72 入力部
73 記憶部
74 制御部
211,232,274 モータ
251 照明レンズ
252 ハーフミラー
253 ズームレンズ部
254 結像レンズ
731 画像データ記憶部
732 位置情報記憶部
741 画像処理部
742 駆動制御部
743 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本が載置されるステージと、
少なくとも前記ステージ上の前記標本からの観察光を集光する対物レンズと、
少なくとも前記対物レンズを保持する対物レンズ側本体部と、
少なくとも前記ステージを保持するステージ側本体部と、
前記対物レンズ側本体部および前記ステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部と、
前記ステージ側本体部に設けられ、前記複数の指標部をそれぞれ検知する複数の検知部と、
各指標部の相対位置に対応する前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置情報を記憶する記憶部と、
前記対物レンズ側本体部または前記ステージを駆動して、該対物レンズ側本体部または該ステージを前記対物レンズの光軸と平行な方向に移動させるとともに、前記検知部からの前記指標部の検知に応じて前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる駆動制御を行う駆動制御部と、
前記検知部によって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した前記位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記検知部による前記指標部の検知動作を行う際、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って当該検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、
前記駆動制御部は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記位置情報は、前記複数の指標部のうちの基準となる指標部と他の指標部との相対位置で決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
対物レンズを保持する対物レンズ側本体部、または標本が載置されるステージの少なくともどちらか一方を、前記対物レンズの光軸と平行な方向であって、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させる移動ステップと、
前記対物レンズ側本体部および前記ステージを保持するステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部のうち、いずれかの指標部を検知部によって検知する検知ステップと、
前記検知ステップによって前記指標部が検知された場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる停止ステップと、
前記検知ステップによって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する決定ステップと、
を含むことを特徴とする位置検出方法。
【請求項5】
前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って前記検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、
前記停止ステップは、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする請求項4に記載の位置検出方法。
【請求項6】
対物レンズを保持する対物レンズ側本体部、または標本が載置されるステージの少なくともどちらか一方を、前記対物レンズの光軸と平行な方向であって、前記対物レンズが前記標本から離れる方向に移動させる移動手順と、
前記対物レンズ側本体部および前記ステージを保持するステージの一方に設けられ、互いに異なる位置の指標をなす複数の指標部のうち、いずれかの指標部を検知部によって検知する検知手順と、
前記検知手順によって前記指標部が検知された場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させる停止手順と、
前記検知手順によって検知された指標部が前記複数の指標部のうちいずれであるかを判定し、該検知された指標部に対応した位置情報をもとに、前記対物レンズ側本体部または前記ステージの位置を決定する決定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする位置検出プログラム。
【請求項7】
前記対物レンズ側本体部または前記ステージの移動に伴って前記検知部に対して相対的に移動する前記指標部を検知する検知ラインが設定され、
前記停止手順は、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを停止させた際、移動方向の先端側の端部が前記検知ラインを通過した場合、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向と逆方向に移動させて、前記先端側の端部を前記移動方向に沿って前記検知ラインよりも手前側に配置し、前記対物レンズ側本体部または前記ステージを前記移動方向に微少量移動させて前記先端側の端部と前記検知ラインとを一致させることを特徴とする請求項6に記載の位置検出プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−72993(P2013−72993A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211623(P2011−211623)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】