説明

顕微鏡ステージを調節済みの状態で顕微鏡スタンドに取り付けるための装置と方法

【課題】顕微鏡ステージを調節済みの状態で顕微鏡スタンドに取り付けるための装置と方法を提供する。
【解決手段】顕微鏡スタンドに配置された第一の接続要素56と、顕微鏡ステージを顕微鏡スタンドに取付けるために第一の接続要素56と接続可能な第二の接続要素62と、顕微鏡スタンドに配置された第一の嵌合部品76と、プラットフォーム16の、顕微鏡スタンドに面する下面に配置され、第一の嵌合部品76と係合可能な第二の嵌合部品74を支持する位置決めベース66であり、プラットフォーム16を調節するために、嵌合部品74、76が係合しているときにプラットフォーム16に平行な調節面において取付けられる位置決めベース66と、位置決めベース66をプラットフォーム16にロックするロッキング装置80とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡ステージを調節済みの状態で顕微鏡スタンドに取り付けるための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個々の点状対象物、特に蛍光分子の逐次的な確率的位置推定に基づいて、従来の光学顕微鏡の回折限界に依存する分解能限界より小さい画像構造を画像化することができる光学顕微鏡法が開発された。このような方法は、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、非特許文献1および非特許文献2に記載されている。このような新たな分野の顕微鏡は、位置推定顕微鏡とも呼ばれる。その応用方式は、文献においては、たとえば(F)PALM((蛍光)光活性化位置推定顕微鏡法)((Fluorescence) Photoactivation Localization Microscopy)、PALMIRA(独立画像取得型PALM)(PALM with Independently Running Acquisition)、GSD(IM)(基底状態失活(個別分子回帰)顕微鏡法)(Ground State Depletion (Individual Molecule return)Microscopy)または(F)STORM((蛍光)確率的光学再構成顕微鏡法)((Fluorescence) Stochastic Optical Reconstruction Microscopy)の呼び名で知られている。
【0003】
新しい方式は、画像化対象の構造に、2つの識別可能な状態、すなわち「明」状態と「暗」状態を有するマーカで標識する点で共通している。たとえば、蛍光染料がマーカとして使用される場合、明状態はそれが蛍光を発することのできる状態であり、暗状態はこれらが蛍光を発することのできない状態である。光学イメージングシステムの従来の分解能限界より高い分解能で画像構造を画像化するには、マーカの小集合を繰り返し明状態にし、それゆえ、いわば活性化させる。これに関連して、活性化される小集合は、明状態にある隣接マーカの平均距離がその光学イメージングシステムの分解能限界より大きくなるように選択するものとする。活性化された小集合の輝度信号は、空間分解光検出器、たとえばCCDカメラに結像される。それゆえ、各マーカから光点が検出され、その大きさは光学イメージングシステムの分解能限界によって決まる。
【0004】
このようにして、生データのシングルフレームを複数捕捉し、その各々の中の異なる活性化小集合を画像化する。次に、画像解析工程を用いて、生データの各シングルフレームの中で、明状態のマーカを表す光点の重心を判定する。その後、生データのシングルフレームから判定された光点の重心を合成して全体図を作る。この全体図から作成される高分解能画像には、マーカの分布が反映される。画像化対象の構造を適正に表すように再現するためには、十分な信号を検出しなければならない。しかしながら、各活性化小集合の中のマーカの数は、明状態の2つのマーカが持ちうる最低平均距離によって限定されるため、構造物を完全に画像化するためには、非常に多くの生データのシングルフレームを捕捉しなければならない。一般に、生データのシングルフレームの数は10,000〜100,000の範囲である。
【0005】
生データの1つのシングルフレームを捕捉するのに必要な最小時間は、画像化検出器の最大撮像速度によって決まる。その結果、全体図を得るために必要な一連の生データのシングルフレームの捕捉時間の合計は比較的長くなる。それゆえ、総捕捉時間は数時間にもなりうる。
【0006】
このように長い総捕捉時間では、画像化対象の試料が光学イメージングシステムに関して移動する可能性がある。高分解能の全体画像を作成するために、重心判定後に生データのシングルフレームのすべてを合成するため、2つの連続する生データのシングルフレームの捕捉中に発生する、試料と光学イメージングシステムの間の相対移動のそれぞれが、全体画像の空間分解能を損なう。多くの場合、このような相対移動は、システムの系統的な機械的運動に起因し、これは機械的ドリフトとも呼ばれ、この移動はたとえば熱膨張や収縮、機械的歪み、または機械的構成部品に使用される潤滑剤の稠度によって生じる。
【0007】
上記の高分解能顕微鏡法において、特に重要なのは、結像系を形成する対物レンズが確実に、プラットフォーム上に配置された試料に関して、ドリフトが発生しないように位置決めされることである。これは、対物レンズを通常のように対物レンズレボルバに取り付けるのではなく、プラットフォームに直接取り付けることで実現できる。このような設計によれば、対物レンズは、プラットフォームの、試料に面していない下面の、プラットフォームに形成された貫通穴の領域に配置され、プラットフォームの上面に装着される試料ホルダの上に配置される試料を、貫通孔を通じて結像する。対物レンズをプラットフォームに直接取り付けることにより、対物レンズが試料ホルダに機械的に連結される経路が比較的短くなり、それによって対物レンズと試料ホルダの間で発生する機械的ドリフトをほとんど防止することができる。
【0008】
しかしながら、対物レンズを顕微鏡ステージに直接取り付けた場合、対物レンズを顕微鏡スタンドの光軸に整列させることは比較的複雑である。たとえば、顕微鏡ステージは、たとえば修理のためにそれが顕微鏡スタンドから取り外された後には常に、顕微鏡スタンドに関して調節しなおさなければならない。これは面倒で、エラーが発生しやすい。
【0009】
特許文献6から、異なる顕微鏡ステージを顕微鏡スタンドに調節済みの状態で素早く取り付ける役割を果たす機構が知られている。この機構は、取り付けブラケットと、取り付けブラケットの背面に配置された取り付け板で形成され調節ユニットを備える。取り付け板は、顕微鏡スタンドに垂直移動可能に配置されたスライド要素に固定される。顕微鏡ステージは、取り付けブラケットに連結される。取り付け板と取り付けブラケットは接触面を有し、それによって、取り付け板は取り付けブラケットに関して変位することができる。
【0010】
特許文献7には、鏡筒、ステージおよび、鏡筒をステージから取り外せるようにする機構を有する顕微鏡が開示されている。この機構は、鏡筒に取り付けられたねじ式シャフトと、これと合致するねじ山が設けられ、ステージ内で回転させて、鏡筒をステージに着脱することのできる刻み付つまみを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2006/127692 A2号パンフレット
【特許文献2】独国特許第10 2006 021 317 B3号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/128434 A1号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0134342 A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2008 024 568 A1号明細書
【特許文献6】米国特許第3,572,889 A号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0083569 A1号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“Sub-diffraction-limit imaging by stochastic optical reconstruction microscopy(STORM)”,Nature Methods 3,793−796(2006),M. J. Rust,M. Bates,X. Zhuang
【非特許文献2】“Resolution of Lambda/10 in fluorescence microscopy using fast single molecule photo-switching”,Geisler C. et al,Appl.Phys.A,88,223−226(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、容易かつ再現可能な方法により、対物レンズが取り付けられる顕微鏡ステージを調節済みの状態で顕微鏡スタンドに取り付けることを可能にする、高分解能光学顕微鏡のための装置と方法を特定するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項1に従い、顕微鏡スタンドに配置された少なくとも1つの第一の接続要素と、顕微鏡ステージに配置され、顕微鏡ステージを顕微鏡スタンドに取り付けるために第一の接続要素に接続可能な少なくとも1つの第二の接続要素と、顕微鏡スタンドに配置された少なくとも1つの第一の嵌合部品と、顕微鏡ステージのプラットフォームの、顕微鏡スタンドに面する下面に配置され、第一の嵌合部品と係合可能な第二の嵌合部品を支持する少なくとも1つの位置決めベースであって、顕微鏡スタンド上のプラットフォームを調節するために、嵌合部品が係合した状態でプラットフォームに平行な調節面において移動可能に取り付けられた位置決めベースと、位置決めベースを調節済みのプラットフォームにロックするための少なくとも1つのロッキング装置とを備える装置によって上記の目的を実現する。
【0015】
それゆえ、本発明は、顕微鏡スタンド上の調節面内でプラットフォームを変位させ、それと同時に、プラットフォームの下面に配置された位置決めベースは、係合する嵌合部品を介して、顕微鏡スタンドに関して正確に継手接続されているようにする。このために、位置決めベースが調節面上で移動可能に取り付けられる。このタイプの取り付けはまた、「浮揚式」と呼ぶこともできる。
【0016】
プラットフォームを顕微鏡スタンドに所望通りに位置決めでき、プラットフォームに取り付けられた対物レンズが顕微鏡スタンドの光軸に精密に整合されると、位置決めベースおよびそれゆえ、その上に保持される嵌合部品は、ロッキング装置によってプラットフォームに固定される。それゆえ、顕微鏡スタンド上での調節済みのプラットフォームの位置決めは、再現可能に設定される。顕微鏡ステージは、たとえば修理のために顕微鏡スタンドから取り外しても、その後、嵌合部品が相互に係合するように、単純に顕微鏡スタンドに戻される。何度も調節しなおす必要がない。
【0017】
有利な発展型では、ベース受容部がプラットフォームの下面に形成され、そこに、調節面内の間隙を設けて位置決めベースが配置される。プラットフォームの、顕微鏡スタンドに面していない上面には、少なくとも1つの挿入穴が形成され、これはベース受容部へと続く。位置決めベースには、少なくとも1つの凹部が形成され、この凹部は、間隙があることによって位置決めベースが調節面内で移動できる領域全体にわたり、挿入穴と連通する。ロッキング装置は、ベース受容部の中に納まる第一の固定要素と、第二の固定要素を有する固定具を備え、第二の固定要素は、挿入穴の中に納まり、第一の固定要素に締結して、ベース受容部に配置された位置決めベースを2つの固定要素の間にロックすることができる。
【0018】
挿入穴または位置決めベースの凹部の中に配置された固定具の部分は、調節面内の間隙を有する。この実施形態において、位置決めベースはプラットフォームに形成された凹部の中に、浮揚した状態で取り付けられる。その結果、プラットフォームは顕微鏡スタンド上で変位させることができ、それと同時に、位置決めベースは顕微鏡スタンドにしっかりと納っている。プラットフォームを調節した直後に、位置決めベースを固定具によって凹部内にロックすることができる。このために、位置決めベースは2つの固定要素の間に固定される。第一の固定要素はプラットフォームの上面に形成された挿入穴に納まるため、第一の固定要素には上からアクセスできる。その結果、位置決めベースは、所望の調節が行われた後に、上から容易にロックすることができる。
【0019】
好ましい発展型において、少なくとも1つの位置決めバーが顕微鏡スタンドに取り付けられ、その位置決めバーに、第一の接続要素と第一の嵌合部品が配置される。位置決めバーは、たとえば、顕微鏡ステージを取り付けるために、何らかの形で顕微鏡スタンドに設けられている標準的な取り付け穴を介して取り付けることができる。位置決めバーはそれゆえ、係合することになる嵌合部品のための仲介物となる。言うまでもなく、本発明の調節装置は、必ずしもこのような仲介物を必要としない。この場合、第一の嵌合部品は顕微鏡スタンドに直接設置される。
【0020】
その他の有利な実施形態は、従属項および以下の説明からわかる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、請求項9に記載の、顕微鏡ステージを調節済みの状態で顕微鏡スタンドに取り付けるための方法が提供される。
【0022】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ある実施形態としての高分解能光学顕微鏡の斜視図である。
【図2】顕微鏡ステージを上昇させた状態の、光学顕微鏡の斜視図である。
【図3】顕微鏡ステージの底面斜視図である。
【図4】顕微鏡ステージの図であり、本発明の調節装置を形成する構成部品を説明するために、顕微鏡ステージの一部が省略されている。
【図5】顕微鏡ステージの別の図であり、調節装置の一部の断面が示されている。
【図6】図5の部品を拡大して描いた図である。
【図7】図6に対応し、さまざまな調節状態を示す別の図である。
【図8】位置決めベースとロッキング固定具が下から示される、顕微鏡ステージの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、まず、高分解能光学顕微鏡10の全体的構造を、図1から図3を参照しながら説明する。ここでは、光学顕微鏡10の中の、本発明を理解するために不可欠な構成部品だけを説明する。
【0025】
光学顕微鏡10は顕微鏡スタンド12を有し、その上に顕微鏡14が螺合される。顕微鏡ステージ14はプラットフォーム16を有し、その上に試料ホルダ18が装着される。プラットフォーム16上には、第一のスライダ22と第二のスライダ24からなる概して参照記号20で特定される位置決め装置がある。2つのスライダ22と24は、相互に機械的に分離され、プラットフォーム16上の試料ホルダ18を直交する2方向に変位させる役割を果たす。このために、図3に示されるように、2つの回転つまみ26と28がプラットフォームの下面に取り付けられている。
【0026】
光学顕微鏡10は、顕微鏡スタンド12に取り付けられた1対の接眼レンズ30のほか、いくつかの顕微鏡対物レンズ34を保持する対物レンズレボルバ32をさらに有する。図2には、顕微鏡ステージ14が顕微鏡スタンド12から上昇された状態の光学顕微鏡10が示されており、そうでなければ顕微鏡ステージ14で覆われた対物レンズレボルバ32が見える。
【0027】
図2の底面図に示されるように、1つの対物レンズ38がプラットフォーム16の下面の、プラットフォーム16に形成された貫通穴36の下方に配置される。対物レンズ38は、対物レンズねじ山を介して合焦駆動装置40に螺合される。合焦駆動装置40は、たとえば圧電セラミックアクチュエータであり、これは対物レンズ38をその光軸に沿って移動させて、結像させるべき試料に焦点を合わせる。合焦駆動装置40は、プラットフォーム16の下で旋回可能なホルダ42に取り付けられる。旋回式レバー48により、ホルダ42は対物レンズ38とともに、旋回させて光学顕微鏡10の結像光軸に入るように移動させ、また結像光軸から外すことができる。
【0028】
対物レンズ38をプラットフォーム16に直接取り付けることによって、対物レンズ38が試料ホルダ18に機械的に連結される経路が比較的短くなる。それゆえ、対物レンズ38と試料ホルダ18の間で発生する機械的ドリフトを、ほとんど防止することができる。
【0029】
対物レンズ38による試料の高分解能の結像を保証するためには、対物レンズ38を支持する顕微鏡ステージ14が確実に、顕微鏡スタンド12に正確に位置付けられるようにしなければならない。特に、対物レンズ38は、顕微鏡スタンド12の光軸に精密に整合させなければならない。
【0030】
以下に説明する調節装置によって、顕微鏡ステージ14を顕微鏡スタンド12に、精密に調節された状態で取り付けることが可能となる。特に、調節装置によって、顕微鏡ステージ14を、たとえば修理のために顕微鏡スタンド12から取り外した後に(図2参照)、このステージを調節しなおすことなく、顕微鏡スタンド12に再び取り付けることが可能となる。
【0031】
図4に、プラットフォーム16の部品が省略されて示されているように、調節装置は、顕微鏡スタンド12に取り付けられた2つの位置決めバー52と54を備える。図2では、顕微鏡スタンド12に取り付けられた位置決めバー54が部分的に見えている。位置決めバー52と54は、顕微鏡ステージ14を、(本発明の調節装置がなくても)いずれにしても顕微鏡スタンド12に取り付けるために顕微鏡スタンドにすでに存在している標準的なねじ穴に固定される。
【0032】
位置決めバー52と54はそれぞれ、2つのねじ/ナット要素56を介して顕微鏡スタンド12に取り付けられ、ねじ/ナット要素56は上記の標準的なねじ穴に螺合される。図6の拡大図からわかるように、ねじ/ナット要素56は各々、顕微鏡スタンド12の、それに関連する標準的なねじ穴と、ナット60に螺合されるねじ式シャフト58を有する。ナット60は雌ねじを有し、その中に固定ねじ62を螺合させて、顕微鏡ステージ14のプラットフォーム16をそれぞれ各位置決めバー52と54に取り付けることができる。このために、固定ねじ62を挿入できる貫通穴64がプラットフォーム16に形成される。
【0033】
本発明の調節装置は2つの位置決めベース66と68をさらに有し、これらはそれぞれ2つの位置決めバー52と54に割り当てられる。図8の底面図からわかるように、位置決めベース66と68はそれぞれベース受容部70と72に配置され、受容ベースはプラットフォーム16の下面に形成されている。2つの位置決めベース66と68は同じ構造と機能を有するため、位置決めベース66およびそれと相互作用する構成部品のみについて、以下に詳しく説明する。
【0034】
図6の拡大図からわかるように、位置決めベース66は嵌合ピン74を支持し、嵌合ピン74は位置決めバー54に形成された嵌合穴76と係合できる。嵌合ピン74と嵌合穴76は、正確に適合した状態で相互に係合し、すなわち、ほとんど間隙がない。
【0035】
位置決めベース66はベース受容部70に浮揚した状態で取り付けられる。これは、位置決めベース66が(ロックされていない状態にあるとき)、ベース受容部70の中で、プラットフォーム16に平行な調節面において移動可能であることを意味する。それゆえ、嵌合ピン74と嵌合穴76が係合すると、プラットフォーム16は調節平面において位置決めベース60に関して、およびそれゆえ、顕微鏡スタンドに関して移動可能である。このようにプラットフォーム16が移動できることを利用して、顕微鏡ステージ14は、その上に保持される対物レンズ38とともに顕微鏡スタンド12の光軸に正確に整合される。
【0036】
顕微鏡ステージ14を顕微鏡スタンド12に合わせて調節した直後に、それまで移動可能であった位置決めベース66を、同じ構造を有する2つのロッキング固定具80によってベース受容部70の中にロックし、それゆえ、プラットフォーム16を位置決めバー54に関して固定することができる。図6に示されるように、2つのロッキング固定具80は同じ構造を有する。したがって、図6の左手側のロッキング固定具80のみについて、以下に詳しく説明する。
【0037】
ロッキング固定具80は、締め付けねじ82と、そこに螺合される締め付けナット84を含む。締め付けねじ82は、プラットフォーム16に形成され、上からベース受容部70の中へと続く挿入穴86の中に納まる。締め付けナット84はベース受容部70の中に配置される。
【0038】
嵌合ピン74の両側で、位置決めベース66に2つの凹部90がある。図6の断面図において、凹部90は各々階段状に形成されている。各凹部90は、関連する挿入穴86と接続する接続部分92と、位置決めバー54に面する接触部分94で構成される。凹部90のこれらの2つの部分92と94の中に、締め付けナット84が配置される。それゆえ、締め付けナット84は、凹部90の接続部分92の中に配置される円筒形連結部96のほか、略直方体の形状で、凹部90の接触部分94の中に納まる接触部98を有する。締め付けナット84の接触部98は、連結部96より大きい。
【0039】
締め付けナット84の連結部96は雌ねじを有し、その中に締め付けねじ82を螺合させることができる。締め付けねじ82をこの雌ねじに螺合させると、それが締め付けナット84の接触部98を凹部90の接触部分94に締め付ける。その結果、位置決めベース66はプラットフォー16にロックされる。
【0040】
図6に示される実施形態において、締め付けナット84は、ロックされていない状態では、調節面内で間隙を有し、それに対し、締め付けねじ82は、ほとんど間隙のない状態で挿入穴86の中に納まる。しかしながら、この実施形態は例にすぎない。挿入穴86を適当な寸法とすることによって、締め付けねじ82に間隙を持たせ、締め付けナット84を位置決めベース66に固定されるように配置することも同様に可能である。調節のためには、位置決めベース66がベース受容部70の中で調節面において間隙を有し、プラットフォーム16が、嵌合ピン74が嵌合穴76と正確に適合した状態で係合することで位置決めバー54に空間的に固定されている位置決めベース66に関して変位できるようにすることさえ保証されればよい。
【0041】
図6からさらにわかるように、固定ねじもまた貫通穴76の中に、調節面において間隙があるように配置される。この間隙は、調節のためにプラットフォーム16が顕微鏡スタンド12に関して移動できる領域全体にわたり、固定ねじ62をナット60に螺合できるような寸法としなければならない。
【0042】
上記の関係が再び図7に描かれており、この図にはさまざまな調節状態が示されている。ここで、矢印は各々、位置決めバー54、およびそれゆえ顕微鏡スタンド12の上のプラットフォーム16の変位を示している。この変位は、ベース受容部70の中での位置決めバー66に関するロッキング固定具80の、それに対応する移動に反映される。
【0043】
顕微鏡ステージ14を調節された状態で顕微鏡スタンド12に取り付けるためには、まず、プラットフォーム16を、顕微鏡スタンド12にしっかりと取り付けられた位置決めバー52、54の上に設置し、位置決めベース66にある嵌合ピン74が位置決めバー52、54に形成された、それに関連する嵌合穴76と係合するようにする。嵌合ピン74と嵌合穴76は相互にほとんど間隙のない状態で係合するため、位置決めベース66と位置決めバー52、54(およびそれゆえ、顕微鏡スタンド12)は、相互に対して固定された状態で空間的に配置される。すると、プラットフォーム16を、位置決めバー52、54の上で調節面において、プラットフォーム16に取り付けられた対物レンズ38が顕微鏡スタンドの光軸と正確に整合されるまで変位させる。その後、ロッキング固定具80を締め、位置決めベース66をプラットフォーム16に固定する。その結果、勘合ピン74はプラットフォーム16に関して固定される。最後に、固定ねじ62をねじ/ナット要素56に螺合させる。
【0044】
顕微鏡スタンド12に調節済みの状態で取り付けられた顕微鏡ステージ14をその後、たとえば修理のために固定ねじ62を緩めることによって再び取り外した場合、嵌合ピン74が正確に位置決めされた状態でプラットフォーム16に固定されているため、次に顕微鏡ステージを取り付ける際、調節しなおす必要がない。
【符号の説明】
【0045】
10 光学顕微鏡
12 顕微鏡スタンド
14 顕微鏡ステージ
16 プラットフォーム
18 試料ホルダ
20 位置決め装置
22 第一のスライダ
24 第二のスライダ
26、28 回転つまみ
30 接眼レンズ
32 対物レンズレボルバ
34 顕微鏡対物レンズ
36 貫通穴
38 対物レンズ
40 合焦駆動装置
42 ホルダ
48 ピボットレバー
52、54 位置決めバー
56 ねじ式シャフト
60 ナット
62 固定ねじ
64 貫通穴
66、68 位置決めベース
70、72 ベース受容部
74 嵌合ピン
76 嵌合穴
80 ロッキング固定具
82 締め付けねじ
84 締め付けナット
86 挿入穴
90 凹部
92、94 部分
96 連結部
98 接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ(38)が取り付けられている顕微鏡ステージ(14)を調節済みの状態で顕微鏡スタンド(12)に取り付けるための装置であって、
前記顕微鏡スタンド(12)に配置された少なくとも1つの第一の接続要素(56)と、
前記顕微鏡ステージ(14)に配置され、且つ前記顕微鏡ステージ(14)を前記顕微鏡スタンド(12)に取り付けるために前記第一の接続要素(56)と接続可能な少なくとも1つの第二の接続要素(62)と、
前記顕微鏡スタンド(12)に配置された少なくとも1つの第一の嵌合部品(76)と、
前記顕微鏡ステージ(14)のプラットフォーム(16)の、前記顕微鏡スタンド(12)に面する下面に配置され、且つ前記第一の嵌合部品(76)と係合可能な第二の嵌合部品(74)を支持する少なくとも1つの位置決めベース(66)と、
前記位置決めベース(66)を調節済みの前記プラットフォーム(16)にロックするための少なくとも1つのロッキング装置(80)と、
を備え、前記位置決めベース(16)が、前記顕微鏡スタンド(12)の上で前記プラットフォーム(16)を調節するために、前記嵌合部品(74、76)の係合の際に前記プラットフォーム(16)に平行な調節面にて前記プラットフォーム(16)に移動可能に取り付けられる、装置。
【請求項2】
前記プラットフォーム(16)の前記下面にベース受容部(70)が形成され、その中に前記位置決めベース(66)が、前記調節面内の間隙を設けて配置され、
前記プラットフォーム(16)の、前記顕微鏡スタンド(12)に面していない上面に、前記ベース受容部(70)に続く少なくとも1つの挿入穴(86)が形成され、
前記位置決めベース(66)に、前記位置決めベース(66)がその間隙によって前記調節面内で移動可能な領域全体にわたって、前記挿入穴(86)に接続される少なくとも1つの凹部(90)が形成され、
前記ロッキング装置が、前記ベース受容部(70)の中に納まる第一の締め付け要素(84)と、第二の締め付け要素(82)であって、前記挿入穴(86)の中に納まり、前記第一の締め付け要素(84)に締結されて前記ベース受容部(70)の中に配置された前記位置決めベース(66)を前記2つの締め付け要素(82、84)の間にロックすることができる第二の締め付け要素(84)とを備えて構成され、
前記固定具(80)のうち前記挿入穴(86)または前記位置決めベース(66)の前記凹部(90)の中に配置された部分が、調節面内の間隙を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位置決めベース(66)の前記凹部(90)が、前記挿入穴(86)と接続される接続部分(92)と、前記顕微鏡スタンド(12)に面し、且つ前記接続部分(92)より大きい接触部分(94)とを備えて構成され、
前記第一の締め付け要素(84)が、前記位置決めベース(66)の前記凹部(90)の前記接続部分(92)に配置され、前記第二の締め付け要素(82)に連結される連結部(96)と、前記連結部(96)から延び、且つそれより大きい接触部(98)とを備え、前記2つの締め付け要素(82、84)が締結されると、前記接触部が、前記位置決めベース(66)の前記凹部(90)の前記接触部分(94)と接触することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記連結部(96)が円筒形であり、前記接触部(98)が直方体の形状であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第一の締め付け要素(84)がナットであり、前記第二の締め付け要素(82)がねじであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記顕微鏡スタンド(12)に取り付けられ、その上に前記第一の接続要素(56)と前記第一の嵌合部品(76)が配置される、少なくとも1つの位置決めバー(52、54)を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第一の接続要素が、前記位置決めバー(52、54)を前記顕微鏡スタンド(12)に取り付けるのに用いられる少なくとも1つのねじ/ナット要素(56)を備え、
前記第二の接続要素が、前記プラットフォーム(16)に形成された貫通穴(64)の中に、前記調節面における間隙を設けて挿入することができ、且つ前記ねじ/ナット要素(56)に螺合させることのできる固定ねじ(62)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記係合可能な嵌合部品が、嵌合穴(76)と嵌合ピン(74)を備えて構成されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
対物レンズ(38)が取り付けられている顕微鏡ステージ(14)を調節済みの状態で顕微鏡スタンド(12)に取り付けるための方法であって、
前記顕微鏡スタンド(12)に第一の嵌合部品(76)を設けるステップと、
第二の嵌合部品(74)を支持する少なくとも1つの位置決めベース(66)を、前記顕微鏡ステージ(14)のプラットフォーム(16)の、前記顕微鏡スタンド(12)に面する下面に、前記プラットフォーム(16)に平行な調整面にて移動可能に取り付けるステップと、
前記第二の嵌合部品(74)を前記第一の嵌合部品(76)に係合させるステップと、
前記顕微鏡スタンド(12)の上で前記プラットフォーム(16)を調節するステップと、
前記位置決めベース(66)を、調節済みの前記プラットフォーム(16)にロックするステップと、
前記プラットフォーム(16)を前記顕微鏡スタンド(12)に接続するステップと、
を含む方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−128418(P2012−128418A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268863(P2011−268863)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】