顕微鏡スライド加熱システム
【課題】 顕微鏡スライド(37)上に載せた複数の組織サンプルを自動的に染色または処理するための装置を提供すること。
【解決手段】 複数のスライドの各々に対する熱出力を発生させる加熱装置;加熱装置を支持するための円形コンベアー;複数のスライドの各々のための温度感知器;温度感知器と連絡しているプロセッサー;およびプロセッサーと連絡している、複数のスライドの各々のための加熱装置の熱出力を変更するための手段を含んでなる、複数の顕微鏡スライドに関して異なる標的温度を維持するための顕微鏡スライド加熱システム。
【解決手段】 複数のスライドの各々に対する熱出力を発生させる加熱装置;加熱装置を支持するための円形コンベアー;複数のスライドの各々のための温度感知器;温度感知器と連絡しているプロセッサー;およびプロセッサーと連絡している、複数のスライドの各々のための加熱装置の熱出力を変更するための手段を含んでなる、複数の顕微鏡スライドに関して異なる標的温度を維持するための顕微鏡スライド加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【クロス・リファレンス出願】
【0001】
これは1998年2月27日に出願された米国特許出願番号60/076,198の一部継続出願であり、その主題はここでは引用することにより本発明の内容となる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、診断分子病理学における使用のための装置、そしてより特に顕微鏡スライド上に載せた組織サンプルの自動化染色および/または処理のために使用されるそのような装置に関する。
【背景技術】
【0003】
分子病理学は、疾病を引き起こすかまたは別の方法で疾病に関連するDNA、mRNA、および蛋白質の分子水準における試験である。この試験から、患者の診断、予後、および処置選択に関する重要な情報を明らかにすることができる。分子病理学の実施法は一般的には2つの主な部分、すなわち(i)無傷の細胞中のDNA、mRNA、および蛋白質の分析(in-situ)、並びに(ii)それらを組織から抽出した後のこれらの生物学的材料の分析、に分割される。本発明が主として関係する第一の範疇は、それにより病理学者または科学者が組織検体の組織病理学的構成またはこれらの形態を顕微鏡下で、核酸または蛋白質を検定するのと同時に、試験できるという利点を有する。これらの技術は、蛋白質を観察する免疫組織化学(IHC)、核酸を観察するin-situハイブリダイゼーション(ISH)、炭水化物を観察する組織化学(HC)、および酵素化学を観察する酵素組織化学(EHC)を包含する。例えば、ISHを使用して、顕微鏡下での観察時に形態学的に悪性に思える細胞中の発癌性遺伝子の特異的な増殖の如き遺伝子異常または状態の存在を観察することができる。ISHはまた、それが微生物配列だけでなく正確な感染細胞も検出可能にするため、感染症の診断においても有用である。これは重要な臨床病理学意義を有し且つ正の交雑信号が臨床的に無関係の隣接する組織からまたは血液もしくは外部汚染から生ずるかもしれない可能性を除外するための有効な手段である。
【0004】
IHCは、ある種のタイプの疾病細胞組織中でのみ存在する非反復エピトープと特異的に結合する抗体を利用する。IHCは、疾病状態のある種の形態学的指示薬を選択的に染色することにより強調するためにガラススライド上に載せた組織切片または細胞(例えば血液もしくは骨髄)上で行われる一連の処理段階を必要とする。典型的な段階は、パラフィンを除去しそして非−特異的結合を減ずるための組織切片の予備処理、蛋白質の架橋結合により化学固定液から遮蔽された抗原の読み出し、抗体処理およびインキュベーション、酵素標識二次抗体処理およびインキュベーション、抗体とのエピトープ結合を有する組織切片の領域を強調する発蛍光団または発色団を生成するための酵素との基質反応、対比染色などを包含する。これらの段階のほとんどは、前の段階からの未反応の残存試薬を除去するための複数のすすぎ段階により分離されている。インキュベーションは高められた温度、一般的には約37℃で行うことができ、そして組織を脱水から絶えず保護しなければならない。プローブと組織サンプルまたは体液の細胞からの非反復または反復ヌクレオチドは配列との特異的な結合親和性に依存するISH分析も多種の試薬を用いる同様な一連の処理段階を必要とし、そして温度条件を変えることによりさらに複雑になる。
【0005】
IHCおよびISHの両者に必要な多数の反復処理段階の点からみて、人的労力および費用並びにそれらに伴う誤りを減じ、そして均一性を導入するために自動化システムが導入される。好結果をもたらす使用されている自動化システムの例は、ベンタナ・メディカル・スステムズ(Ventana Medical Systems)(アリゾナ州、ツーソン)から入手できるネキセス(NEXES)Rおよびゲン(Gen)IIR染色システム並びにコペランド(Copeland)他の特許文献1に開示されているシステムを包含する。これらのシステムは放射状に配置されたスライドを支持する回転式円形コンベアー(carousel)を包含するマイクロプロセッサー調節システムを使用する。ステッパーモーターが円形コンベアーを回転させて各スライドをスライド上に置かれた一連の試薬分配器の1つの下に置く。スライド上のバーコードおよび試薬分配器が分配器およびスライドのコンピューター調節配置を可能にするため、コンピューターの適切なプログラミングにより種々の組織サンプルの各々に関して異なる試薬処理を行うことができる。
【0006】
上記の染色システムは、高められた温度を必要とする段階のために研究室周囲温度より高くサンプルを暖めるための熱風吹き出し器または加熱灯のいずれかを包含する。スライドの加熱は化学反応の促進により染色品質を改良し且つ反応温度を抗体が反応するように設定される体温(約37℃)により近く合わせることを可能にする。そのような対流または放射加熱システムは抗体をベースにしたIHCに一般的に適するが、それらはより高く且つより正確な温度調節を必要とする核酸をベースにしたISHにはそれほど適さない。標的サンプルおよびプローブの両者のDNA二重螺旋を変性させてそれらを一本鎖にするためには、温度を二本鎖の融点より上に、一般的には約94℃に、高めなければならない。同時に、100℃を越えて過熱するとサンプルは細胞形態を破壊して顕微鏡下で観察することが難しくなるため、そうしないことが絶対必要である。所望する厳重な調節下でプローブハイブリダイゼーションを行うためには、正確な温度調節がISHにおいても要求される。選択される温度はプローブと鋳型との間のハイブリダイゼーションを可能にするのに充分なほど低くあるべきであるが、誤ったハイブリッドが生成するのを妨害するのに充分なほど高くあるべきである。従って、ほとんどのISH用途に対する充分な正確さで反応温度を調節できる自動化組織染色装置があることが望ましい。
【0007】
自動化組織染色液と共に典型的に使用される加熱装置の他の欠点は、それらが個々のスライドの温度を別個に調節できないことである。先行技術のシステムでは、全てのスライドは工程中のいずれかの特定時点でも同一温度に加熱される。例えば、ボーゲン(Bogen)らの特許文献2は複数の顕微鏡スライドを運ぶために適合する分配組立品を開示している。抵抗加熱装置を含有する個々のスライドホルダーが提供される。しかしながら、ボーゲンらにより教示された組立品では、例えば、別個の加熱調節用のまたは隣接するスライドにより発生した熱からのスライドの遮蔽用の手段は開示されていないため、スライドの全てが共通温度に加熱されるであろう。これは、異なる温度パラメーターを有するプロトコールを同時に異なるサンプル上で行うことを妨げる。例えば、異なる厳重な条件を有するDNAプローブ検定を同時に効率的に実施できない。従って、試験が独特な加熱条件を有する時でも隣接するスライドがそれらに適用される異なる試験を行えるような自動化組織染色装置があることが望ましい。
【0008】
IHCおよびISH試験の両方でしばしば遭遇する難点は、組織を一般的に保存する方法から生ずる。診断病理学研究室の主要部分は長年にわたり、切断され且つガラススライド上に載せた組織のホルマリン固定されたパラフィン包埋ブロックであった。そのような保存液中の固定はアミノ酸および核酸の両方の高分子の架橋結合を引き起こす。プローブの標的核酸への接近を可能にし且つ抗体を対応する抗原を認識できるようにするためには、これらの架橋結合された成分を除去しなければならない。抗原および/または核酸の「露呈(unmasking)」は一般的には、複数の予備処理、陽子移行消化、および洗浄段階と共に手動式に行われる。細胞を条件づけしてそれらの抗原および核酸を検出できるようにする工程が自動化できることが望ましい。
【0009】
染色前に、パラフィンが抗体またはプローブ結合を妨害しないようにするためのパラフィンの完全な除去も必要である。疎水性物質であるパラフィンは、染色またはプローブを用いるハイブリダイゼーション前に除去しなければならない。脱パラフィン化は一般的には、有毒で、可燃性でそして環境公害を与えるかもしれないパラフィン溶媒である2種もしくは3種の連続するクリーニング試薬、例えばキシレン、キシレン置換体またはトルエンの使用により行われる。スライドを脱パラフィン化するためのより安全で且つより迅速な方法は有利であろう。
【特許文献1】米国特許第5,654,199号明細書
【特許文献2】米国特許第5,645,114号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明は、個別化された染色または処理プロトコールが異なる温度パラメーターを要求する時でさえ各サンプルがそのようなプロトコールを受けることができるようにするための顕微鏡スライド上に載せた複数の組織サンプルを自動的に染色または処理するための装置および方法に関する。それ故、異なるDNAプローブおよび/または抗体をベースにした染色工程を、各々が特定時点で異なる加熱条件を有するかもしれない事実にもかかわらず、同時に実施することができる。さらに、脱ワックス化を必要とするサンプル(例えば、腫瘍切片)をこの予備段階を必要としない他のサンプル(例えば、塗抹標本)と同時に自動的に処理することができる。
【0011】
より特に、装置は化学的および生物学的試薬を標準ガラス顕微鏡スライドに載せたまたは固定した組織または細胞に自動的に適用するコンピューター調節バーコード駆動式染色器具である。20個までのスライドを環状列で円形コンベアー(carousel)に載せ、それはコンピューターに指示されて回転して各スライドをスライドの上に置かれた一連の試薬分配器の1つの下に置く。各スライドは選択された試薬(例えば、DNAプローブ)を受けそして最適な順序で且つ必要な期間にわたり洗浄され、混合されおよび/または加熱される。このようにして染色されまたは処理された組織切片を次に装置から使用者により取り出し、顕微鏡下で患者診断、予後、または処置選択の目的のためにスライドを読み取る医師により観察される。コンピューター調節自動化により、装置を「楽な」方法で、すなわち少ない人的労力で、使用可能にする。
【0012】
個別化されたスライド温度調節は、スライドを加熱しそして各々の温度を感知するための円形コンベアーに放射状に据え付けられた熱台を有する本発明に従う加熱システムにより行われる。これもスライド円形コンベアーに据え付けられた印刷回路板が各々の熱台を別個に個別的に監視し且つ調節する。情報および動力は回転する円形コンベアーと固定された装置との間をスリップリング組立品を介して通過する。この情報は20個のスライドの各々を適切な期間にわたり加熱するために必要な上方および下方の温度パラメーターを包含する。
【0013】
本発明の重要な利点は、個別化された染色または処理プロトコールが異なる温度パラメーターを要求する時でさえ各サンプルがそのようなプロトコールを受けられることである。
【0014】
本発明の別の利点は、それにより組織を載せるスライドの全表面の温度を注意深く(すなわち、所望する温度の±2℃以内に)調節できることである。そのような正確さは、ISHにおけるDNA変性およびプローブ交雑並びに関連方法、例えばin-situ PCR、にとって必要である。さらに、本発明に従う加熱は均一になされるため、この狭い温度範囲がスライドの表面全体にわたり保たれるので組織はスライド上のその位置に無関係に均一に加熱される。
【0015】
本発明のさらに別の利点は、それが自動化方式における組織サンプルのワックス除去を例えばキシレンの如き有害な溶媒を頼みにせずに可能にすることである。
【0016】
本発明のさらに別の利点は、組織を水溶液中で加熱することにより細胞中の標的分子をステインにより接近させることにより組織が染色用により良好に条件づけされることである。
【0017】
本発明のさらに別の利点は、組織を載せるスライドの表面を急速に加熱して(すなわち37℃から95℃に2分間以内にそして同一範囲にわたり4分間以内に冷却して)過熱による過変性や細胞形態の損傷なしにDNA変性を可能にするその能力である。
【0018】
本発明のさらに別の利点は、熱を使用する染色後の組織サンプルを脱水するその能力である。
【0019】
本発明のさらに別の利点は、自動化から生ずる人間の誤りの無いことおよび生産量の増加である。
【0020】
以下で明らかになるであろう本発明の前記のおよび他の目的、利点および特徴と共に、本発明の性質は下記の本発明の詳細な記述、添付された請求の範囲および図面に示された数種の図を参照にすることによりさらにはっきりと理解されるであろう。
【0021】
発明の詳細な記述
全体にわたり同様な部品は同様な参照番号により示されている図面を次に詳細に参照すると、図1には一般的に参照番号10により示されている本発明に従う分子病理学装置の透視図が示されている。装置10は顕微鏡スライド上に載せた組織を核酸プローブ、抗体および/またはそれらに関連する試薬を所望する順序、時間および温度で自動的に染色するかまたは別の方法で処理するように設計されている。このようにして染色または処理された組織切片を次に顕微鏡下で、患者診断、予後、または処置選択の目的でスライドを読み取る医師により観察する。
【0022】
好ましい態様では、装置10はホストコンピューター14、好ましくはパーソナルコンピューター、モニター16、キーボード18、マウス20、バルク流体容器22、廃液容器23および関連装置も含んでなるシステム12(図2)の1つの構成部品またはモジュールとして機能する。追加の染色モジュールまたは他の器具をシステム12に加えてサーバーとして機能するコンピューター14とのネットワークを形成してもよい。或いは、これらの別個の構成部品の一部または全部を装置10の中に組み込んでそれを単一(stand-alone)器具にすることもできた。
【0023】
装置10並びにシステム12の好ましい配置は一般的には、以下で論じられている新規な加熱システム、スライド支持器、バルク流体モジュール、量調節、およびスライドワイプ以外は、両者とも引用することにより本発明の内容となる1997年12月19日に出願された米国特許出願番号08/995,052並びにベンタナ・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド(Ventana Medical Systems, Inc.)(アリゾナ州、ツーソン(Tuscon, AZ))から入手できるベンタナ・ネクセス(Ventana NexES)使用者案内に記載されている。平明にする目的のために、本発明および組み入れる参考文献の両者で見られる構成部品の詳細な記述は省略する。
【0024】
要するに、装置10は化学的および生物学的試薬を標準的ガラス顕微鏡スライド上に載せた組織に自動的に適用するマイクロプロセッサー調節染色器具である。放射状に配置されたガラススライドを支持する円形コンベアーがステッパーモーターにより回転して各スライドを一連の試薬分配器の1つの下に置く。装置10が分配、洗浄、混合、および加熱を調節して反応キネティック(reaction kinetics)を最適化する。コンピューター調節自動化により、楽な方法で、すなわち少ない人的労力で、装置10の使用が可能になる。
【0025】
より特に、装置10は上部32に回転式に据え付けまたは丁番連結された下部30からなるハウジングを含んでなる。スライド円形コンベアー34は下部30内に軸A−Aの周りの回転のために据え付けられている。以下でさらに詳細に示されているように、複数の熱台50が円形コンベアー34の周囲に放射状に据え付けられており、その下に標準的ガラススライドを組織サンプルと共に置くことができる。円形コンベアー34は好ましくはステンレス鋼製である。各スライドの温度をここに記載されているような種々の感知器およびマイクロプロセッサーにより個別に調節できることが本発明の重要な特徴である。装置10(図3)内には、洗浄液分配ノズル36、カバースリップ(Coverslip)TM分配ノズル37、流体ナイフ38、洗浄液量調節ノズル39、バーコードリーダーミラー40、および空気渦混合器42も収容されており、それらの詳細は以下で論じられている。
【0026】
上部32の頂上に試薬円形コンベアー28が回転できるように据え付けられている。分配器26は試薬トレー29(図4)に取り外しできるように据え付けられており、それは円形コンベアー28とかみ合うようにされている。試薬は、核酸プローブまたはプライマー、ポリメラーゼ、一次および二次抗体、消化酵素、前−固定液、後−固定液、読み出し薬品、並びに対比染料を包含するスライドに一般的に適用されるいずれかの化学的または生物学的材料を包含する。試薬分配器26は好ましくはコンピューターによる同定のためにバーコード標識29がつけられる。各スライド用に、1種の試薬が適用されそして次に正確な期間にわたり温度−調節された環境の中でインキュベーションされる。試薬の混合はスライドの端部に沿ってねらいをつけた圧縮空気噴射42により行われ、試薬を回転させる。適切なインキュベーション後に、試薬をノズル36を用いてスライドから洗い流す。次に残りの洗浄緩衝液量を量調節ノズル39を用いて調節する。蒸発を抑制するためのカバースリップTM溶液を次にスライドにノズル37を介して適用する。空気ナイフ38がカバースリップTMのプールを分割し、引き続き次の試薬を適用する。プロトコールが完了するまで円形コンベアーを回転させながら、これらの段階を繰り返す。
【0027】
ホストコンピューター14の他に、装置10は好ましくはそれ自身のマイクロプロセッサー44を包含し、それにはホストコンピューター14からの情報がダウンロードされる。特に、コンピューターはマイクロプロセッサー44に実施プログラムおよび「実施規則」と称する感知器監視および調節論理の段階の順序並びにプロトコールの温度パラメーターの両方をダウンロードする。テキサス州、ダラスのダラス・セミコンダクター(Dallas Semiconductor)からのモデルNo.DS2251T 128Kがこの機能を行えるマイクロプロセッサーの一例である。
【0028】
次に図5に向けると、スライド加熱システム48のブロック図が示されている。このシステムは一般的には、スライドを加熱し且つその温度を監視するための円形コンベアー34に放射状に据え付けられた約20個の熱台50、並びにこれも感知器を監視し且つ加熱器を調節するためのスライド円形コンベアーに据え付けられた調節電子装置印刷回路板52を含んでなる。調節電子装置52は回転するスライド円形コンベアー34の下に据え付けられている。情報および動力は固定された器具台から回転する円形コンベアーにスリップリング組立品56を介して移される。この情報はマイクロプロセッサー44から(コンピューター14からダウンロードされた後に)伝達されるスライド(上部および下部)を加熱するために必要な温度パラメーターを包含しており、以下に記載されているように調節電子装置52を調節する。実施中に、スライド温度がプログラムされた下限より下であると測定された場合には、熱台がスライドを加熱する。同様に、スライド温度が上限より上であると見いだされた場合には、加熱を停止する。(図14の区画88参照)。1個の加熱器当たり約8ワットを供給するのに充分な能力が与えられる必要な温度上昇(別名「勾配増加(ramp up)」)速度に合わせる。
【0029】
同様に、別の態様では、スライドの冷却も以下に記載されているように同様に調節できる。別の一態様では、冷却台がスライドの下に据え付けられる。冷却台はペルチエル(Peltier)−タイプの熱変換器を含んでなっていてもよい。別の態様では、スライドの急速冷却が特定用途にとって必要である場合には例えばファン(示されていない)の如き冷却装置を場合により装備してもよい。冷却装置は周囲空気を台の全てに関して変動させるであろうため、周囲空気温度における低下を相殺するために冷却してはならないスライドに対応する加熱器を必要とする。
【0030】
ここに記載されたスライド加熱システムは伝導加熱を使用しそしてスライドを個別に加熱する。このシステムはより正確なスライド上温度を与えそして個別スライド基準で温度設定を可能にする。加熱システム48の構成部品の各々を次にさらに詳細に記載する。
【0031】
熱台(Thermal Platforms)
図6−10を参照すると、熱台50は2つの構成部品、すなわち加熱器/感知器装置58、および加熱器/感知器装置58を円形コンベアー34に取り外しできるように据え付け且つスライド37を支持するためのハウジング70、を含んでなる。
【0032】
加熱器/感知器装置58は、好ましくは.04インチ厚さの黄銅板から構成される、長さが約2インチで幅が1インチの板60を有する。黄銅の代わりに、それが硬質であり且つ熱をその表面全体にわたり均一に散逸させてスライドを均一な方法で暖めるのに充分な伝導度を有するなら他の材料を使用してよい。板は場合により例えばテフロン(Teflon)Rの如き耐食性材料で被覆されていてもよい。
【0033】
隣接するスライドを場合により異なる温度に特定時点で加熱できることが本発明の特別な特徴である。これは、加熱器間に高い熱抵抗を有することによりスライドを互いに熱的に単離させることにより行われる。当業者が容易に認識するように、熱抵抗は材料の伝導度、材料の厚さ、および熱が進むはずの距離の関数である。従って、上記の基準に基づく熱抵抗を与えるなら、ゴム、プラスチック、セラミック、または金属を包含する種々の材料を使用して隣接するスライドを熱的に単離することができる。ここで使用される「熱的に単離される」という用語は1つの加熱器からの熱が隣接するスライドの温度に認識できるほどの影響を与えないことを意味する。さらに、熱抵抗性材料上へのスライドの設置、スライド間への熱抵抗性材料の設置、および熱抵抗性台上へのスライドの配置を包含する種々の構造を使用して隣接するスライドを熱的に単離することができる。
【0034】
好ましい態様では、好ましくはゴムまたは耐水性であり且つ熱絶縁体である同様な材料から構成されるスカート62が板60の周囲に且つその下側から垂直に垂れ下がって据え付けられる。スカート62の絶縁性が、隣接するスライド間でこれらの温度差を増加させるのを助ける。隣接するスライドを熱的に絶縁するためにゴムの代わりに少なくとも100℃の温度に耐えうるセラミックおよびプラスチックを包含する種々の材料を使用してよい。また、加熱器/感知器58(記載されている)の空洞内に収容されている構成部品は装置の染色操作中に適用されるであろう種々の加熱された溶液(油および水をベースにしたもの)から遮蔽しなければならない。従って、板60は好ましくはスカート62に、真空化または高温においても流体不透過性密封を生ずる同様な方法により、連結されている。スカート62の壁も同様にそのような加熱された溶液に対して耐性でなければならない。好ましい態様では、スカート62の厚さはゴム材料に関しては.06インチであり、それにより熱が進む断面積を最少にする。或いは、スカート62を熱抵抗を与えるのに充分なほど薄い(例えば、約0.1インチ厚さの)金属材料、例えば黄銅、から構成してもよい。円形コンベアー34に据え付けられる時には、スカート62の高さは約半インチであり、それにより板60およびその上に支持されるスライドを同じ距離だけ上昇させる。スライドが上におかれている台の上昇が、それらを操作中に円形コンベアー34上で集まり
そしてスライドが隣接する加熱器により発生する熱から熱的に単離または絶縁する種々の流体から離す。
【0035】
ホトエッチングされた抵抗加熱器64がスカート62により規定された空洞内で板60の下側に据え付けられる。加熱器は、高抵抗性ニッケルをベースとした材料、例えばインコネル(Inconel)、から伝導性がより大きい材料、例えばキュプロ−ニッケル(cuppro-nickel)にわたる種々の材料から製造することができる。キュプロ−ニッケルが好ましい。ホトエッチングされた抵抗器64は例えば.008インチ厚さのデュポン(DuPont)から入手できるカプトン(Kapton)TMポリイミドフィルムの如きプラスチックの2つの薄いシートに連結されそしてその間に保たれる。電線65が抵抗トレースの端部に溶接されそしてこれらの線は2つのカプトンTM層の間から引き出されそしてホトエッチングされた抵抗器に連結される。このサンドイッチ構造の1つの外側面は加熱器と連結するように指示されるが、他の外側面はそれに付いている別のホトエッチングされた回路を有する。第二回路は温度感知用でありそしてダラス・セミコンダクターにより製造された部品番号がDS1721Sである感知器に連結するハンダパッドのところで加熱器の中心で終る4つの低抵抗トレースを有する。4つのトレースは加熱トレースと連結されたワイヤーと同じ領域で出る4本のワイヤーを有する。カプトンTMの第三層は調節トレース上に連結されそしてこの第三層は中心部でハンダパッド上に出口を有しているため、感知器を付けることができる。図7に示されているように、6本のワイヤーが加熱器から出ており、2本は加熱器に動力を与えそして4本は温度を感知するためである。6本のワイヤーが例えばAMP(ペンシルバニア州、ハリスバーグ(Harrisburg, PA))またはモレックス(Molex)(イリノイ州、リッスル(Lisle, IL))の如き多くの会社により製造できるような6つの雌の回路プラグ67に連結される。雌の連結器は、別の場所に記載されている調節電子装置回路PC板52上にハンダ付けされている6つの適合ピン69の上を滑動する。PC板52はスライド円形コンベアー34の下にスライド加熱器が据え付けられている面と反対に据え付けられているため、6つのピンは円形コンベアー内の長方形の開口部75を通って上方に伸びる。
【0036】
ここに示された仕様に従う加熱器64用の製造原料はミンコ・プロダクツ(Minco Products)(ミネソタ州、ミネアポリス(Minneapolis, MN))である。以下でさらに詳細に示されているように、加熱器電流のスイッチをオンオフできる一体化回路励振器または個々のトランジスター(印刷回路板52に据え付けられている)により加熱器を個別に調節できる。
【0037】
記載されている加熱器/感知器装置はスライドの利用面積を37℃から95℃に2分間以内に急速に加熱し且つ同一範囲を4分間以内に冷却して過熱による過剰変性および細胞形態の損傷なしにDNA変性を可能にする能力を有する。
【0038】
組織検体はしばしばスライド上の異なる位置に載せられるため、スライド表面を均一に加熱することが本発明の別の重要な目標である。従来のホットプレートはしばしばパッチ状の「熱点」を生じてスライドを板のどこに置くかをわかりにくくするため、これは手動操作時でも伝導加熱課題をもたらす。組織全体で細胞が均一に加熱されない場合には、顕微鏡スライドは正確に解釈されない。例えば、温度がプローブおよび組織DNAを変性させるのに充分なほど高くない場合には、これは偽の負の値を与えるかもしれずそして厳重な洗浄中の不整合は偽の正の値を与えるかもしれない。
【0039】
熱台60による均一な加熱を確実にするために、抵抗加熱器64を板60の底面に連結する。上述のように、黄銅板は加熱トレースが表面上で連続しておらずむしろ熱が発生しない空間により分離される隣接する線であるという事実から生ずる局物的な非均一性を滑らかにするのに充分な伝導度を有する。この分離は.015インチの程度であるため、熱
源におけるこの非−均一性は黄銅板の他の面では見られない。スライドの温度の均一性は、加熱トレースを非−均一方法で熱を生ずるようにそれらを変えることによっても得られる。熱はスライド37の端部および黄銅板60の端部を含む全ての表面で周囲空気中に逃げる。しかし、熱は加熱器64中では黄銅板の底表面上でのみ発生する。熱発生が加熱器の領域全体にわたり均一であるため黄銅板の底に一定の流束がある場合には、ガラススライドの頂部の中心は熱がより急速に散逸できる端部よりかなり熱くなるであろう。この現象は加熱器流束が中心でより少ない場合に適用できるため、ガラススライドの頂部における温度均一性を増加させることができる。有限部品熱伝達プログラムであるパラメトリック・テクノロジーズ(Parametric Technologies)(マサチュセッツ州、ワルサム(Waltham,
MA))によるメカニカ(Mechanica)を使用してシステム中の熱流をモデル化することができる。加熱器流束は好ましくは図12に示されているように設定され、そこでは中心領域63が全体の40%を占めておりそして合計エネルギーの8.3%を発生し、外側区域領域61が残りを発生する。従って、中心領域はより少ない熱を受けるため、中心領域のすぐ上にあるスライド上の温度は横長のリングのすぐ上にあるスライドの温度よりわずかに冷たい。加熱器が記載されているような輪郭である時には、ガラススライドの有効領域(その組織を置く領域、それは一般的にはスライドの最先端は除く)上の温度変動は約0.2℃である。ガラススライドの中心からガラススライドの有効領域の端部までの温度勾配は以下の通りである:徐々に0.2℃上昇し、次に徐々に.2℃低下する。幅が1インチであり且つ長さが3インチである湿ったガラススライドの頂部表面が、幅が0.75インチで、長さが1.6インチであり且つ標識の反対端部から0.25インチで出発するスライドの幅に集中する領域として定義されるその有効領域全体にわたり特定の温度均一性を維持する。均一性目標は設定温度を有効領域全体にわたり37℃から95℃のいずれの設定温度に関しても±2℃以内に維持することである。
【0040】
上記の加熱部品の代わりに、トランデューサー中の極性を逆転することにより加熱および冷却の両方が可能なペルチエル−タイプの熱変換器を使用することができる。そのような冷却能力は本発明のある種の可能な使用および用途、例えばインシトゥPCR(以下で論じられている)の実施、に関連する効用を有する。
【0041】
温度感知器68も空洞73内に加熱器64の下側に据え付けられる。数種のタイプの感知器、例えばサーミスター、RTD、または熱電対、を使用することができた。本発明の好ましい態様では、直接的な温度対デジタル変換を与える一体化回路感知器68、例えばダラス・セミコンダクター(テキサス州、ダラス(Dallas, TX))から入手できる感知器モデル番号DS1721、が使用される。この感知器は感知した温度をデジタル式に報告するためのI2Cプロトコールを使用する。同様な感知器はナショナル・セミコンダクター(National Semiconductor)(カリフォルニア州、サンタクララ(Santa Clara, CA))から入手できる。選択される感知器は正確であり、反復可能であり、且つ低いサーマルマス(thermal mass)を有していなければならない。
【0042】
好ましくは射出成型プラスチックから構成されるハウジング70が、加熱器/感知器装置58を円形コンベアー34に取り外しできるように締めそしてガラススライド37を支持するために装備される。図9に最も良く示されているように、ハウジング70が一般的には長方形の空洞71を規定しており、その中に加熱器/感知器装置58を挿入しそしてクランプにより保持することができる。ハウジング70の底には、スカート62の末端に沿って規定された対応する縁74を受けて加熱器感知器装置58を定位置に保つための凹所のある領域72が規定される。装置の操作中に使用する種々の試薬から空洞71をさらに密封するために、下方に伸びるへり76を装備して縁74をさらにしっかり噛み合わせることもできる。さらなる密封のために、突出部78をスカート62の外側壁に沿って装備することもできる。この突出部の外側寸法はハウジングの内側寸法よりわずかに大きいため、液体がスカートとハウジングとの間の突出部の下で空洞中に入ることを防ぐ締めしろを生ずる。
【0043】
ハウジングの基部が開口部80のセット(図8)を規定して円形コンベアー中で規定された整列した穴と噛み合う小ねじを受ける。
【0044】
ガラススライド37は、ハウジング70に一体的に据え付けられている4つの上方に懸垂している柱82により捕獲されている板60に載っている。ガラススライドは.04インチの厚さであり、柱はガラススライドの頂部表面の.02インチ下にあるため、図9で見られるように柱はガラススライド37の厚さの半分まで伸びる。水溶液の表面張力が溶液を汲み出すことを防ぐためには、柱がスライドの頂部表面から突出することが重要である。スライドの頂部に対して垂直に挟む当該技術で既知の装置に伴う問題は、それらが毛管作用によりスライドから流体を吸引する傾向を有することである。スライドを捕獲または支持するための他の手段を使用できることを認識すべきである。
【0045】
調節電子装置(印刷回路板)
図13に示されたブロック図を参照すると、調節電子装置52は温度設定情報を染色装置マイクロプロセッサー44から連続的デジタルプロトコール57を介して受けそしてこの情報を用いて各加熱器64をその設定点に保つのに必要な構成部品を有する環状印刷回路板からなる。当業者により容易に理解される含まれるべき構成部品(例えば、抵抗器、コンデンサー、など)は図示されていない。加熱器の調節は種々の方法で行うことができる。好ましい態様では、加熱器は加熱器電流をオンオフにスイッチ切り替え可能な一体化回路励振器または個々のトランジスター53により個別に調節することができる。それ故、プロセッサーは、以下で記載されているように、加熱器のデューティーサイクルを調節することができる。別の態様では、加熱器への動力量をプロセッサー55により加熱器が全能力のある割合(例えば最大加熱動力の50%)で操業されるように調節することができる。好ましい態様では、アレグロ・マイクロシステムズ(Allegro Microsystems)(マサチューセッツ州、ワースター(Worcester, MA))から入手できる一体化回路(UDQ2559)である。マイクロプロセッサー44との(スリップリング組立品56を介する)順次伝達器57は好ましくはオランダ、アインドホーベン(Eindhoven, The Netherlands)のフィリップス・ラブス(Philips Labs)により開発されたI2C(インター・インテグレーテッド・サーキット(Inter Integrated Circuit)順次母線プロトコールを使用する。例えばRS232D、RS422などの別のプロトコールを使用することもできた。調節電子装置52は感知器68を監視し且つ加熱器64を調節するための両方で機能する。調節電子装置52の中心は、I2C順次母線を介して染色装置マイクロプロセッサー44と連結し、加熱器温度感知器68を監視し且つスライド温度を特定時間に上昇させることが必要な時に加熱器64を動かすのに充分な能力のマイクロプロセッサー55(それはメモリー51と連結されている)または他のデジタル回路である。そのようなマイクロプロセッサーの例は、アリゾナ州、チャンドラー(Chandler, AZ)のマイクロチップ・テクノロジー・インコーポレーテッド(Microchip Technology Inc.)から入手できるPIC16C64Aである。プログラムは、染色システムマイクロコントラローラーにより与えられる設定温度(または標的温度)と比べた時に、各加熱器を加熱器温度感知器に応答して各加熱器を調節すべきである。(図14参照)。マイクロプロセッサー55は、メモリー51中の設定点温度47のルックアップ表を基準にして、どのように加熱器を調節するかを決める。ルックアップ加熱器47中の設定点温度をマイクロプロセッサー44との順次伝達器57から受ける。マイクロプロセッサー55は感知器68から実際の温度を得て、そしてその後に実際の温度および設定点温度における差を基準にして加熱器64の調節を変える。加熱器のこの調節は厳密にオンオフしてよく(すなわち、感知器温度が設定点より低い場合には加熱器を入れ、そしてその感知器温度が設定点より上である場合には加熱器を切る)、或いはそれはよりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。
【0046】
動力分布および調節フィードバックシステムは、熱台が正確に調節されて熱循環技術における特徴を模することができ(例えば、in-situ PCR)且つ急速な温度上昇および冷却(例えば3分間以内の37℃から95℃への上昇および5分間以内の同じ範囲の冷却)を可能にするのに充分なものでなければならない。これらの特徴は好結果を与えるISH染色にとって特に重要である。
【0047】
プロセッサーは、スライドの温度を標的温度にするためにスライドに対する熱を変えることにより、スライドの温度を調節する。好ましい態様では、スライドに対する熱の変更は加熱器の出力を変更することにより行われる。図14を参照すると、個々のスライドの加熱調節のフローチャートが示されている。区画84で示されているように、個々のスライドに関する標的加熱温度(または設定点温度)が得られる。好ましい態様では、標的温度はマイクロプロセッサー42から調節電子装置52に送られる。標的温度は択一的に操作者から入力してもよく、またはスライド上のバーコードを通して読んでもよい。区画86で示されているように、温度感知器68により示されたスライドの温度が標的温度より上であるかどうかを測定する。「はい」なら、区画88で示されているように、加熱器は切られる。或いは、実際の温度と標的温度との間の相違により、加熱器により生ずる熱の量を変えてもよい。例えば、加熱器に関するデューティーサイクルを減少させてもよい。パルス幅調整により加熱器に関するデューティーサイクルを変えてもよい。(例えば、加熱器に関するデューティーサイクルを50%(加熱器が時間の50%稼働する)から25%デューティーサイクル(ここでは加熱器は時間の25%稼働する)に変えてもよい。)さらに別の態様では、実際の温度が標的温度よりかなり高い場合またはより微細な温度調節が求められる場合には、加熱器を切った後に冷却器を入れてもよい。
【0048】
さらに別の代替態様では、加熱器とスライドとの間で伝達される熱の量を変えることにより、プロセッサーがスライドに伝達される熱の量を調節することができる。一例として、マイクロプロセッサーは加熱器とスライドとの間の緩衝液の熱伝達特性を変えることができ、それによりスライドに伝達される熱の量を変えそしてそれによりスライドの温度を変える。
【0049】
スライドの温度が標的温度より低い場合には、区画90で示されているように、加熱器を切る。加熱器の調節は、よりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。好ましい態様では、加熱器により発生する熱の量は実際の温度と標的温度との間の相違を基準にする。例えば、現在の温度と標的温度との間の温度における相違により、加熱器を100%、50%、などのデューティーサイクルで入れることができる。それ故、実際の温度が標的温度より2℃以上高い場合には、加熱器を全デューティーサイクルで入れる。実際の温度が標的温度に接近するにつれて、加熱器のデューティーサイクルは減じられ、それによりスライドに対してより少ない合計熱が発生する。さらに、加熱器が標的温度に達したら、区画86で示されているように、プロセッサー55が実際の温度と標的温度との間の差を測定することにより調節を維持する。区画92に示されているように、スライドの加熱時間が終わるまでこのループが続けられる。それ故、スライドが予め決められた量の時間だけ加熱されるように指定される場合には、スライドの温度の調節は予め決められた量の時間が経過するまで行われる。
【0050】
さらに、スライドの特定の標的温度を基準にして、スライドを標的温度に保つのに必要な熱の量は経験的に決められている。例えば、熱の量が加熱器のデューティーサイクルの変更を基にして変えられる時には、加熱器に関する特定のデューティーサイクルは標的温度を基準にして決められる。これらの値はルックアップ表47に貯蔵される。それ故、スライドの実際の温度が標的温度に接近するにつれて、デューティーサイクルはルックアップ表47中の経験値に減じられる。この方法で、スライドの温度を現在の温度から標的温度に移すことができる。
【0051】
或いは、温度の調節を厳密にオンオフしてもよく(すなわち、感知器温度が標的温度より下である場合には加熱器を入れ、そしてその感知器温度が標的温度またはそれより上である場合には加熱器を切る)、または温度の調節を比例させてもよい(すなわち、デューティーサイクルの代わりに加熱器により発生する熱の量を変えて加熱器がその合計加熱動力の一部、例えばその合計加熱器出力の50%、を出す)。
【0052】
図15を参照すると、本発明の別の態様として個々のスライドの冷却調節のフローチャートが示されている。区画94で示されているように、個々のスライドに関する標的冷却温度が得られる。標的温度がマイクロプロセッサー42から調節電子装置52に送られる。標的温度を択一的に操作者が入力してもよくまたはスライド上のバーコードを通して読んでもよい。区画95に示されているように、システムの操作によっては、スライドを周囲空気により冷却してもよく、或いは冷却台などにより冷却してもよい。
【0053】
区画96で示されているように、図14と同様に、温度感知器68により示されるスライドの温度が標的温度より下であるかどうかが測定される。「はい」なら、冷却器が切られる。或いは、実際の温度と標的温度との間の相違によっては、冷却器により生ずる冷却量を変えてもよい。例えば、冷却器に関するデューティーサイクルを減じてもよい。パルス幅調節により、冷却器に関するデューティーサイクルを変えてもよい。
【0054】
スライドの温度が標的温度より高い場合には、区画98で示されているように、冷却器を入れる。加熱器の調節と同様に、冷却器の調節もよりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。1つの態様では、生ずる冷却力は実際の温度と標的温度との間の相違に基づく。例えば、現在の温度と標的温度との間の温度における相違によっては、冷却器を100%、50%などのデューティーサイクルで入れてもよい。それ故、実際の温度が標的温度から2℃以上高い場合には、冷却器を全デューティーサイクルで入れる。実際の温度が標的温度に接近するにつれて、冷却器のデューティーサイクルは減じられ、それによりスライドに対してより少ない合計冷却エネルギーが発生する。さらに、冷却器が標的温度に達すると、区画96で示されているように、実際の温度と標的温度との間の差を測定することによりプロセッサー55が調節を維持する。区画100で示されてように、スライドの冷却時間が終わるまでこのループが続けられる。
【0055】
スリップリング組立品
スリップリング組立品56は、回転する銀リングおよび銀グラファイトブラシを使用する技術を用いる。スリップリングは、I2Cデジタル調節信号を運び(2つの回路)、論理に動力を与え(2つの回路)、そして加熱器に動力を与える(2つの回路)のに充分な寸法(約3インチ直径)および容量(1回路当たり約10アンペア)でなければならない。この用途に適するスリップリングは、カリフォルニア州、サウスE1モンテ(South E1 Monte CA)のファブリカスト・インコーポレーテッド(Fabricast, Inc.)、ニュージャージー州、ベイヨンネ(Bayonne, New Jersey)のエアーフライト・エレクトロニクス(Airflyte
Electronics)、バージニア州、ブラックスブルグ(Blacksburg, VA)のリットン・ポリ−サイエンティフィック(Litton Poly-Scientific)などから入手できる。ケーブル57がスリップリング回転子を調節電子装置52に操作できる状態で連結する(図11)。固定子を装置10に小ねじなどを用いて据え付けるために(据え付けは示されていない)固定子ブラケット59が装備される。図16を参照すると、スリップリング組立品56の縦方向断面図が、図5および16に示されているデータ、論理動力および加熱器動力を伝達するリード線49と共に、示されている。
【0056】
図3を参照すると、下記の構成部品が一般的に米国特許出願番号08/995,052に記載されているような装置10内に据え付けられている:リキッド・カバースリップ(Liquid Coverslip)TM分配ノズル37、ステッパーモーター61、すすぎ液分配ノズル36、液体ナイフ38、バーコード読み取り機40、空気渦混合機42、および洗浄液量調節器39。上記の出願に開示されている緩衝液加熱器は除かれている。バルク流体モジュール22(図2)は好ましくはSSC、DI水、および細胞条件づけ緩衝液を包含するISH用に必要な複数の流体容器を収容するように構成される。量調節ノズル39は複数の流体の適用を可能にするように構成される。
【0057】
本発明はここでは、米国特許出願番号08/995,052に開示されているものとは、適用される次の試薬を希釈しないように洗浄緩衝液を適用後にスライドから拭う方法において異なる。本発明では、ノズル36が流体をスライドの端部で噴霧するようにねらいがつけられており、そこから流体が抜かれ、それにより毛管作用による流体の排除を引き起こす。
【0058】
定義
下記の用語はここで使用される際に下記の意味を有するであろう。
【0059】
「組織」は、器官の切片、腫瘍切片、体液、塗抹標本、凍結切片、細胞学調合物、および細胞株を、制限なく、包含する標準的ガラス顕微鏡スライド上に載せることができる細胞の採集物を意味する。
【0060】
「標的分子」は、核酸、蛋白質、炭水化物、脂質、および小分子を、制限なく、包含する細胞中で見られる検出できる分子を意味する。
【0061】
「ステイン」は、組織中の標的分子に適用される時に分子を顕微鏡下で検出できるようにする生物学的または化学的物体を意味する。ステインは検出できる核酸プローブ、抗体、および染料を、制限なく、包含する。
【0062】
「処理する」または「処理」は、組織に対するステインの適用並びに例えば、加熱、冷却、洗浄、すすぎ、乾燥、蒸発抑制、脱パラフィン化、細胞条件づけ、混合、インキュバーション、および蒸発を、制限なく、包含するそのような適用に関連する他の工程を意味する。
【0063】
「自動化」または「自動的」は実質的にコンピューターまたは機械で駆動されそして実質的に人間の関与のない動作を意味する。
【0064】
使用および操作
操作においては、装置10を使用してin-situハイブリダイゼーション(ISH)、in-situ PCR、免疫組織化学(IHC)、並びに種々の化学的な(非−生物学的な)組織染色技術を行うことができる。さらに、ここではこの発明性のある加熱システムによりそれらの異なる温度条件にもかかわらず2種もしくはそれ以上の上記の技術を1回の実施中に使用することもできる。
【0065】
ISHにおける段階の多くは正確な期間にわたり注意深く温度調節をしなければならないため、in-situハイブリダイゼーションは明らかに、単独でまたは他の技術と組み合わせて、本発明を用いて有利に使用できる技術である。特定の期間にわたる熱の正確な量が、DNAを充分変性させてその後のハイブリダイゼーションを細胞形態が変性される点までの過熱なしで起こすには必要である。異なる検体は、組織の製造および固定方法によって、変性のために異なる温度を必要とするかもしれない。変性、ハイブリダイゼーション、およびハイブリダイゼーション後洗浄の段階は各々、試験する特定のプローブおよび組織に依存する独自の温度条件を有する。これらの温度条件は、以上で論じたように、加熱器の個別化調節により調節することができる。DNAプローブは30°−55℃の間を必要としそして典型的にはそこでハイブリダイズされるが、RNAプローブは典型的にはそれより高い温度においてハイブリダイズされ、ハイブリダイゼーション時間は目標コピー数、プローブ寸法および検体タイプにより30分間から24時間に変動する。細胞遺伝学的調合物に関する標準的な変性は約72℃で2分間にわたり行われるが、組織切片に関しては条件づけは55℃から90℃まで2分間から30分間にわたり変動できる。ハイブリダイゼーション後洗浄温度は約37℃から72℃に2分間ないし15分間にわたり変動できる。塩濃度は.1×〜2×SSCに変動できる。プローブ検出温度は周囲温度から42℃まで2分間ないし30分間にわたり変動できる。
【0066】
板60および加熱器64の低い質量がスライドおよびその結果としてスライド上の組織の急速な加熱(180秒間以内の37℃から95℃への)および冷却を可能にする。加熱および冷却の速度増加がin-situハイブリダイゼーションの効率を高める。急速な温度上昇により加速される標的に対するプローブの急速なアニーリングがプローブの特異性を高める。同時に、背景が減じられそして生ずる試験の品質が大きく改良される。ISHはDNA、cDNA、および高コピーmRNAを検出するために使用できる。それは塗抹標本、組織、細胞株、および凍結切片に適用することができる。典型的には、検体を1インチ×3インチのガラススライド上に載せる。
【0067】
DNAのハイブリダイゼーションまたは変性が組織染色方法にとっては絶対的に必須であり、そして92−100℃の範囲の温度が急速に達成され、正確に調節されそして維持されることが必要である。熱台が顕微鏡スライドの処理された組織を180秒間以内に±2℃の精度で要求される温度範囲にする。ハイブリダイゼーションされた組織中の温度の急速損失が好結果を与える染色および診断にとって必須である。要求される温度を420秒間以内に37℃にするためにファンまたは他の急速冷却特色を加えてもよい。
【0068】
本発明の装置は、各ISH試験条件の独自の条件(すなわち、ハイブリダイゼーショ温度37−45℃の厳密性、および洗浄液濃度)を弱めずに、複数のタイプの検体およびISH試験の同一実験中への配置を可能にする。システムは同一実施において異なるスライド上で1回より多い検出化学法を実施してもよい。ここで使用される「ISH」は蛍光検出(FISH)および非−蛍光検出(例えば明視野検出)の両者を包含する。
【0069】
装置10はある種の組織切片に対するISHおよびIHC染色の同時適用のためにも使用できて遺伝子および蛋白質異常を同時に観察可能にする。これは、例えば、肺腫瘍切片の検定においてHER−2/neuの遺伝子増殖および蛋白質発現の両者が臨床的な意義を両方とも有するように思えるためこれらにとって有利である。Ross et al. "The Her-2/neu Oncogene in Breast Cancer," The Oncologist 1998; 3:237-253 参照。
【0070】
熱台による急速加熱および冷却が、より高いおよびより低い温度の繰り返しサイクルを必要とするin-situ PCR(ポリメアーゼ連鎖反応)における使用に本発明を用いることを可能にする。PCRの限界は、サンプルの細胞学的または組織学的特徴を伴う分子結果の補正を妨害する増殖の前に標的DNAまたはRNAを抽出する必要性である。in-situ PCRは、ISHの細胞局在能力をPCRの極端な感度と組み合わせることによりその限界を取り除く。この技術は引用することにより本発明の内容となるヌオボ(Nuovo)の米国特許第5,538,871号に記載されている。
【0071】
パラフィン中に包埋された切片は第一段階として包埋された組織の脱パラフィン化を必
要とする。熱台の使用が例えばキシレンの如き有害化学物質の使用を排除し、個々のスライドの正確に調節された加熱により組織中に包埋されたパラフィンを溶かしそしてそこで水溶液中に浮かせ、それを洗い流すことができる。水より密度が小さいパラフィンは、液化されると組織サンプル上の水性緩衝液を通って上昇しそしてこの流体の上部に浮かぶ。液体または気体状のいずれかの流体流を液体パラフィン上に通すことにより、液体パラフィンを次に顕微鏡スライドから除去しそして組織サンプルから離すことができる。この工程の詳細は引用することにより本発明の内容となる1998年9月3日に出願された米国特許出願番号60/099,018号に示されている。同様な技術を使用してパラフィン以外の包埋材料、例えばプラスチック、を除去できるが、エッチング試薬の添加が必要となるかもしれない。
【0072】
適切な水溶液中での熱台50による組織の加熱が、細胞(蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、または小分子)中の標的分子に対するステインの接近性を改良することが見いだされた。接近性の欠如は、組織の防腐中に使用されるアルデヒドによる分子の架橋結合によりまたは固定液により引き起こされる確認中の他の変化により、生ずるかもしれない。抗原の架橋結合は抗原性蛋白質の化学的改質による抗原性の欠如を引き起こす。分子標的に対するステイン(生物学的または化学的)の接近性を改良するこの方法はここでは「細胞条件づけ」と称する。DNA標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液であり、好ましい温度は約95度までであり、そして好ましい加熱時間は約1時間である。蛋白質標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液でありそして好ましい温度は約42分間にわたる約100℃までである。熱台による組織サンプルの加熱が、改質された抗原が対応する抗体により認識可能な形態に逆転するようにアルデヒド処理組織中の架橋結合度を減じ、それにより染色を促進させる。RNA標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液でありそして好ましい温度は約1時間にわたる約75℃までである。サイトレート緩衝液の多くの代替品を細胞条件づけ溶液として使用することができる。そのような溶液のリストは Analytical Morphology, Gu, ed., Eaton Publishing Co. (1997) at pp. 1-40 に見られる。溶液は一般的には既知のモル数、pH、および組成を有していなければならない。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、エチレングリコールが条件づけ溶液に好ましく加えられる。
【0073】
本発明の装置を用いて実施される典型的なin-situハイブリダイゼーション(ISH)、in-situ PCR、免疫組織化学(IHC)、組織化学(HC)、または酵素組織化学(EHC)方法は下記の段階を包含する。
1)サンプルと共に使用されるin-situハイブリダイゼーション、in-situ PCR免疫組織化学、組織化学、または酵素組織化学方法を指示するバーコードをスライドに適用することによりスライドを製造する。
2)スライドのバッチを装置中に挿入して各スライドをスライド支持体の中に載せる。
3)装置を閉めそして処理工程を開始する。
4)スライドが装置中で予備処理として脱パラフィン化される場合には、各スライドは60℃より上の温度に乾燥加熱されるであろう。乾燥加熱後に、スライドを約7mlのDI水で洗浄すると、約300μLの残存水量が残る。スライドを次に約600μlの蒸発抑制液で被覆する。スライドを60℃より上の温度にさらに6分間保ちそして次に約7mlのDI水で再びすすぎそして600μlの蒸発抑制液で被覆する。温度を37℃に下げる。スライドを脱パラフィン化すると、指示された工程の次の段階の準備がなされている。
5)細胞条件づけしようとするスライドを約7mlのDI水ですすぐ。装置内の減量用固定液が残存量を約300μlから約100μlに下げるであろう。装置中で量調節用固定液を用いて、200μlの細胞条件づけ溶液をスライドに加える。スライドは次に約600μlの蒸発抑制液を受容する。スライド温度を37℃〜100℃の範囲内の指示された温度に上昇させ、そして流体循環を開始しそして6−8分間毎に2時間までの期間にわたりプロトコールに示された通りに繰り返す。スライドを37℃に冷却しそして〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐ。この時点で、スライドは指示された方法の次の段階の準備がなされている。
6)各スライドが試薬適用区域中で止まるにつれて、適切な試薬容器を試薬円形コンベアーにより試薬適用台に動かす。計量された量の試薬をスライドに適用する。標的液は蒸発抑制液層中を下にある液体層まで通過する。
7)スライド円形コンベアーが次に進んで、スライドを渦混合台の前に直接動かす。渦合器噴射がスライド表面上の試薬を蒸発抑制液層の下で撹拌する。
8a)in-situハイブリダイゼーション用
工程が蛋白質消化を必要とする場合には、スライドを〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐと、〜300μlの残存量の緩衝液が残る。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階6および7に記載されているような段階を消化酵素適用のために繰り返す。選択できるインキュベーション時間は37℃における2分間から32分間の範囲である。スライドを〜7mlの2×SSC緩衝液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。減量用固定液を使用して量を〜300μLから〜100μLに移す。6および7に記載されたような段階をプローブ適用のために繰り返す。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。それぞれ標的および/またはプローブの変性(denaturization)または変性(unfolding)のためにスライド温度を37℃〜95℃の範囲内の特定温度に上昇させる。
選択できるインキュベーション時間は2分間から18時間の範囲である。
2×、1×、0.5×、0.1×SSCの選択できる塩濃度および37℃〜75℃の温度範囲を包含する使用者の選択できる厳密性を用いるハイブリダイゼーション後にすすぎが行われる。
プローブ段階後に、スライドを1×APK洗浄緩衝液で洗浄し、そして次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。プローブは、FISH中のように一部の標識プローブの場合のように直接的に、そして適当な検出技術に従う抗ハプテン抗体を用いるISHに関しては間接的に検出される。
清掃が望まれる場合には、プローブの検出段階後に、スライドをDI水ですすぎそして洗剤を適用して蒸発抑制液のスライドをきれいにする。
再びスライドをDI水ですすぎそして残存量を減量用固定液を用いて除去する。
スライドを37℃もしくはそれより上の温度で、全ての水性物質が組織、細胞または塗抹から蒸発するまで、乾燥加熱する。
8b)in-situ PCR用
工程が蛋白質消化を必要とする場合には、スライドを〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階6および7に記載されているような段階を消化酵素適用のために繰り返す。選択できるインキュベーション時間は37℃において2分間から32分間の範囲である。
スライドを〜7mlのDI水ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。減量用固定液を使用して量を〜300μLから〜100μLに移す。段階7に記載されているような段階を増殖試薬適用のために繰り返す。増殖試薬は分配用に37℃もしくはそれより上の温度において100μLの残存スライド量に調合される。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。スライド温度を37℃〜95℃の範囲内の特定温度に2分間より長く上昇させてPCR反応を開始させる。30回までのサイクルの熱循環は1.5分間にわたる55℃から始まり45秒間にわたる89℃である。
in-situ PCR後に、スライドは項に記載されているようなin-situハイブリダイゼーションにかけられる。
8c)IHC、HC、EHCプロトコールのためには、スライドを〜7mlの1×APK洗浄液または適当な緩衝液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。量を〜300μLから〜100μLに移すために、減量用固定液を使用してもよくまたは使用しなくてもよい。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階7に記載されているような段階を抗体または他の試薬適用に関して繰り返す。
選択できるインキュベーション時間は2分間から32分間の範囲である。
選択できるインキュベーション温度は、細胞条件づけまたは脱パラフィン化が必要かどうかにより、37℃〜95℃の範囲である。
工程全体にわたり、スライドを1×APK洗浄液または適当な緩衝液で洗浄し、そして次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。蛋白質、炭水化物、および酵素は、蛍光中のように直接的に標識づけされるか、または適当な検出技術を用いて間接的に標識づけされる。
指定された染色工程の最後に、スライドを自動化清掃工程を用いるカバースリップ操作用に準備し、カバースリップ操作を受け、そしてDNA/RNA、蛋白質、炭水化物、または酵素の適切な染色工程に関して顕微鏡により観察する。
【0074】
段階の順序、試薬の適用、上記の温度パラメーターを包含する上記の工程セットは好ましくは製造業者によりホストコンピューター中に予備−プログラミングされている。例えば反応時間の如きある種のパラメーターは場合により使用者が改変してもよい。試験の最初のプログラミングはプロトコールの複雑な取り扱いおよび標的組織または検体へのプローブの添加前および後の両方の複数の試薬(5−6種の試薬)の添加を可能にするのに充分なほど融通性がある。
【0075】
実施中のおよび実施間の温度調節は標的温度の±1%でありそして上記の通りに調節することができる。操作者は複数の複雑なISHプロトコールを同一実施中に行うことができる。これは、同一変性温度で実施されるISH方法用のプロトコールをプログラミングする能力を包含する。同様に、このシステムは器具のめんどうな撤去なしに操作者によるスライド温度目盛りつけを可能にする。使用者が規定したISHプロトコールに関するプロトコール変更は保護手段により保護される。システムはスライドおよび試薬システムの両者に関して操作されるバーコードである。試薬分配、洗浄液分配、カバースリップ(高温および低温)分配、スライド索引および温度調節を包含する全ての主要なハードウエア機能の操作者による手動調節も任意である。これにより、使用者はやっかいな問題を解決することができる。使用者が規定したプロトコールは、操作者が検出温度以外の反応の全段階の温度を調節することを可能にする。ソフトウエアは。ソフトウエアに内在する予備−プログラミングされた最適化プロトコールを含んでいるため、最適化ターンキープローブの連続的導入が可能になる。
【実施例】
【0076】
下記の非限定的な実施例がここに開示されている発明の使用および用途をさらに説明しそして詳記する。
【0077】
実施例I
自動化in-situハイブリダイゼーションを用いるヒト・パパロマ・ウイルス(Human Papaloma Virus)(HPV)の高危険性菌株の検出
通常はパパニコラウ(Papanicolau)ステイン(Pap塗抹標本)により染色されるであろう、例えば細胞ブラシ(cytobrush)の如き標準的収集装置によりまたはシンプレップ(ThinPrep)TMスライド方法(サイテック・インコーポレーテッド(Cytec, Inc.))により採集された頸塗抹標本を高危険性HPVタイプに特異的なプローブセットを用いてin-situハイブリダイゼーションにかける。検体スライドを本発明に従う装置(以下では「染色装置」と称する)のスライドホルダー中に充填する。システムをHPVインシトゥプログラムを実施するように設定する。このプログラムは、プログラムが開始されたら、インシトゥ反応の全段階を使用者からの必要な相互作用なしで実施する。
【0078】
染色装置が最初にスライドの予備処理、すなわち室温における1×APK(10×AP
Kベンタナ(Ventana)P/N250−042)によるすすぎおよびカバースリップ(Coverslip)TM適用、を行い、次に4分間にわたる37℃におけるプロテアーゼ1を用いるプロテアーゼ消化を行い、引き続き2×SSC中ですすぎ段階を行う。2×SSCすすぎ後に、残存スライド量を約300マイクロリットルから約100マイクロリットルに減じそしてカバースリップTMを適用する。ハイブリダイゼーション溶液と予備混合されたFITC−標識DNAプローブカクテルをベンタナ(Ventana)限定可能分配器からスライドに適用する。検体およびスライドを72℃に4分間加熱してプローブおよび検体DNAの両者を変性させる。染色装置が次に、スライドの温度を37℃に下方に勾配をつけそしてハイブリダイゼーションを37℃で2時間にわたり行う。染色装置が、プローブ混合物およびカバースリップTMをスライドから除去しそしてハイブリダイゼーション後洗浄を行う。ハイブリダイゼーション後洗浄溶液(2×SSC)およびカバースリップをスライドに加えそして器具がスライドを45℃に10分間加熱する。染色装置がハイブリダイゼーション後洗浄溶液を除去しそして検出段階を開始する。最初に、染色装置がスライドを1×APKですすぎそしてカバースリップを適用する。次に、抗−FITC(セロテック(serotec)P/N MCA1320)抗体を分配器からスライドに適用しそしてスライドを37℃に加熱しながらスライドを20分間にわたりインキュベーションし、引き続きAPKすすぎおよびカバースリップ適用を行う。次に、ビオチン標識二次抗体を加えそして37℃で8分間にわたりインキュベーションし、引き続きAPKすすぎおよびカバースリップ適用を行う。ストレプタビジン(Streptavidin)−アルカリ性ホスフェート共役体をスライド上に置きそして染色装置がスライドを37℃で30分間にわたりインキュベーションする。APKすすぎ後に、ベンタナ・ブルー検出試薬をスライドに加えそして室温で20分間にわたりインキュベーションする。ベンタナ・ブルー・キット(P/N760−060)はビオチン標識二次抗体、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェートおよびNBT/BCIP基質を含んでなる。スライドをDI水ですすぎ、そしてスライドを器具により熱乾燥する。この時点で、ヌクレアー・ファスト・レッド対比染料をスライドに適用し、室温で5分間にわたりインキュベーションし、そしてスライドを水ですすぐ。
【0079】
実施例II
自動化in-situハイブリダイゼーションを用いるパラフィン包埋組織中のエプスチエン・バル・ウイルス(Epstien Barr Virus)(EBER)のmRNAの検出
5ミクロン切片を脾臓#EBV37Aから切開しそしてサパー・フロスト・ガラス(supper frost glass)染色スライドの上に置く。検体スライドを本発明に従う装置(以下では「染色装置」と称する)のスライドホルダー中に充填する。染色装置をEBERインシトゥプログラムを実施するようにプログラミングする。このプログラムは、プログラムが開始されたら、インシトゥ反応の全段階を使用者からの必要な相互作用なしで実施する。
【0080】
染色装置は最初に脱パラフィン化を行う:スライドを65℃に6分間加熱し、室温のDI水でスライドをすすぐと、300μLの残存量および600μLの液体カバースリップが残り、それが蒸発を防止しそしてスライド検体を乾燥から保護する。温度を65℃に保ってパラフィンを溶かす。スライドをDI水ですすぎ、次に残存量を減じ、そして200μLの細胞条件づけ緩衝液(サイトレート・バッファー)および600μLの液体カバースリップTMを適用することにより、細胞条件づけを行った。スライドを75℃に加熱し、そして条件づけ緩衝液およびカバースリップTMを8分間毎に40分間にわたり再適用した。スライド温度を37℃に冷却し、そしてスライドを室温で1×APK洗浄液(ベンタナ
【数1】
【0081】
EBER用のmRNAを標的にするように設計されたDig−標識(ベーリガー・マンハイム・キャット(Boehringer Mannheim cat # 1 417 231)オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーション溶液と予備混合しそして試薬をベンタナ使用者限定分配器(ベンタナP/N551−761)の中に入れた。プローブを検体に適用しそしてスライドを75℃に4分間にわたり加熱してオリゴヌクレオチドおよび検体mRNAを巻き戻した。染色装置が次にスライドの温度を37℃に勾配をつけそして2時間にわたりハイブリダイゼーションを行う。染色装置がプローブ溶液およびカバースリップTMをスライドから除去しそして3回のハイブリダイゼーション後洗浄を行う。ハイブリダイゼーション後洗浄は、42℃における4分間にわたる2×SSCによるスライドの洗浄、次の42℃における4分間にわたる1×SSCによるスライドの洗浄および42℃における4分間にわたる0.5×SSCによる洗浄からなっていた。染色装置が次に検出段階を行った。スライドを1×APKで洗浄しそしてカバースリップを適用した。抗−Dig抗体(シグマ(Sigma)P/N D−8156)をスライドに適用しそして37℃で16分間にわたりインキュベーションし、引き続き1回のAPK洗浄およびカバースリップTM適用を行った。次に、ビオチン標識二次抗体をスライドに加えそして37℃で8分間にわたりインキュベーションし、引き続き1×APK洗浄およびカバースリップ適用を行った。二次抗体後に、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェート共役体を適用しそして37℃で30分間にわたりインキュベーションした。APK洗浄およびカラースリップ適用後に、ベンタナブルー検出試薬を検体に適用しそして37℃で20分間にわたりインキュベーションした。スライドを次に水で洗浄しそして器具により熱乾燥した。ビオチン標識二次抗体、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェートおよび検出試薬がベンタナ・ブルー・キット(P/N760−060)の成分である。検体の脱水後に、スライドをガラスカバースリップで被覆しそして顕微鏡で観察した。
【0082】
本発明のある種の現在好ましい態様をここに記載したが、上記の態様の変更および改変を本発明の精神および範囲から逸脱しないで行えることは本発明に関連のある当業者には明らかであろう。従って、本発明は添付された請求の範囲および適用可能な法律の規則により要求される程度のみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】スライドフードを開き且つ円形コンベアードアが除去された状態で示された本発明の透視図である。
【図2】コンピューターおよびそれが一緒に操作する他の器具と関係して示された本発明の透視図である。
【図3】本発明の分解組立図である。
【図4】試薬分配器と共に示された本発明の透視図である。
【図5】本発明の加熱システムのブロック図である。
【図6】調節電子装置の一部であるピンを示すために部分的に取り出した板と共に示された本発明の加熱器/感知器装置の透視図である。
【図7】加熱器の平面図である。
【図8】上部にあるガラススライドと共に示された熱台の透視図である。
【図9】図8の線9−9に沿って取り出された熱台の断面図である。
【図10】それに据え付けられた複数の熱台と共に示されたスリップリング組立品およびスライド円形コンベアーの透視図である。
【図11】それに据え付けられた調節電子装置印刷回路板と共に示された図10に示された円形コンベアーの下側の透視図である。
【図12】加熱器の上部平面図である。
【図13】図5に示された調節電子装置、加熱器および感知器のブロック図である。
【図14】個々のスライドの加熱の調節のフローチャートである。
【図15】個々のスライドの冷却の調節のフローチャートである。
【図16】リング組立品の断面図である。
【クロス・リファレンス出願】
【0001】
これは1998年2月27日に出願された米国特許出願番号60/076,198の一部継続出願であり、その主題はここでは引用することにより本発明の内容となる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、診断分子病理学における使用のための装置、そしてより特に顕微鏡スライド上に載せた組織サンプルの自動化染色および/または処理のために使用されるそのような装置に関する。
【背景技術】
【0003】
分子病理学は、疾病を引き起こすかまたは別の方法で疾病に関連するDNA、mRNA、および蛋白質の分子水準における試験である。この試験から、患者の診断、予後、および処置選択に関する重要な情報を明らかにすることができる。分子病理学の実施法は一般的には2つの主な部分、すなわち(i)無傷の細胞中のDNA、mRNA、および蛋白質の分析(in-situ)、並びに(ii)それらを組織から抽出した後のこれらの生物学的材料の分析、に分割される。本発明が主として関係する第一の範疇は、それにより病理学者または科学者が組織検体の組織病理学的構成またはこれらの形態を顕微鏡下で、核酸または蛋白質を検定するのと同時に、試験できるという利点を有する。これらの技術は、蛋白質を観察する免疫組織化学(IHC)、核酸を観察するin-situハイブリダイゼーション(ISH)、炭水化物を観察する組織化学(HC)、および酵素化学を観察する酵素組織化学(EHC)を包含する。例えば、ISHを使用して、顕微鏡下での観察時に形態学的に悪性に思える細胞中の発癌性遺伝子の特異的な増殖の如き遺伝子異常または状態の存在を観察することができる。ISHはまた、それが微生物配列だけでなく正確な感染細胞も検出可能にするため、感染症の診断においても有用である。これは重要な臨床病理学意義を有し且つ正の交雑信号が臨床的に無関係の隣接する組織からまたは血液もしくは外部汚染から生ずるかもしれない可能性を除外するための有効な手段である。
【0004】
IHCは、ある種のタイプの疾病細胞組織中でのみ存在する非反復エピトープと特異的に結合する抗体を利用する。IHCは、疾病状態のある種の形態学的指示薬を選択的に染色することにより強調するためにガラススライド上に載せた組織切片または細胞(例えば血液もしくは骨髄)上で行われる一連の処理段階を必要とする。典型的な段階は、パラフィンを除去しそして非−特異的結合を減ずるための組織切片の予備処理、蛋白質の架橋結合により化学固定液から遮蔽された抗原の読み出し、抗体処理およびインキュベーション、酵素標識二次抗体処理およびインキュベーション、抗体とのエピトープ結合を有する組織切片の領域を強調する発蛍光団または発色団を生成するための酵素との基質反応、対比染色などを包含する。これらの段階のほとんどは、前の段階からの未反応の残存試薬を除去するための複数のすすぎ段階により分離されている。インキュベーションは高められた温度、一般的には約37℃で行うことができ、そして組織を脱水から絶えず保護しなければならない。プローブと組織サンプルまたは体液の細胞からの非反復または反復ヌクレオチドは配列との特異的な結合親和性に依存するISH分析も多種の試薬を用いる同様な一連の処理段階を必要とし、そして温度条件を変えることによりさらに複雑になる。
【0005】
IHCおよびISHの両者に必要な多数の反復処理段階の点からみて、人的労力および費用並びにそれらに伴う誤りを減じ、そして均一性を導入するために自動化システムが導入される。好結果をもたらす使用されている自動化システムの例は、ベンタナ・メディカル・スステムズ(Ventana Medical Systems)(アリゾナ州、ツーソン)から入手できるネキセス(NEXES)Rおよびゲン(Gen)IIR染色システム並びにコペランド(Copeland)他の特許文献1に開示されているシステムを包含する。これらのシステムは放射状に配置されたスライドを支持する回転式円形コンベアー(carousel)を包含するマイクロプロセッサー調節システムを使用する。ステッパーモーターが円形コンベアーを回転させて各スライドをスライド上に置かれた一連の試薬分配器の1つの下に置く。スライド上のバーコードおよび試薬分配器が分配器およびスライドのコンピューター調節配置を可能にするため、コンピューターの適切なプログラミングにより種々の組織サンプルの各々に関して異なる試薬処理を行うことができる。
【0006】
上記の染色システムは、高められた温度を必要とする段階のために研究室周囲温度より高くサンプルを暖めるための熱風吹き出し器または加熱灯のいずれかを包含する。スライドの加熱は化学反応の促進により染色品質を改良し且つ反応温度を抗体が反応するように設定される体温(約37℃)により近く合わせることを可能にする。そのような対流または放射加熱システムは抗体をベースにしたIHCに一般的に適するが、それらはより高く且つより正確な温度調節を必要とする核酸をベースにしたISHにはそれほど適さない。標的サンプルおよびプローブの両者のDNA二重螺旋を変性させてそれらを一本鎖にするためには、温度を二本鎖の融点より上に、一般的には約94℃に、高めなければならない。同時に、100℃を越えて過熱するとサンプルは細胞形態を破壊して顕微鏡下で観察することが難しくなるため、そうしないことが絶対必要である。所望する厳重な調節下でプローブハイブリダイゼーションを行うためには、正確な温度調節がISHにおいても要求される。選択される温度はプローブと鋳型との間のハイブリダイゼーションを可能にするのに充分なほど低くあるべきであるが、誤ったハイブリッドが生成するのを妨害するのに充分なほど高くあるべきである。従って、ほとんどのISH用途に対する充分な正確さで反応温度を調節できる自動化組織染色装置があることが望ましい。
【0007】
自動化組織染色液と共に典型的に使用される加熱装置の他の欠点は、それらが個々のスライドの温度を別個に調節できないことである。先行技術のシステムでは、全てのスライドは工程中のいずれかの特定時点でも同一温度に加熱される。例えば、ボーゲン(Bogen)らの特許文献2は複数の顕微鏡スライドを運ぶために適合する分配組立品を開示している。抵抗加熱装置を含有する個々のスライドホルダーが提供される。しかしながら、ボーゲンらにより教示された組立品では、例えば、別個の加熱調節用のまたは隣接するスライドにより発生した熱からのスライドの遮蔽用の手段は開示されていないため、スライドの全てが共通温度に加熱されるであろう。これは、異なる温度パラメーターを有するプロトコールを同時に異なるサンプル上で行うことを妨げる。例えば、異なる厳重な条件を有するDNAプローブ検定を同時に効率的に実施できない。従って、試験が独特な加熱条件を有する時でも隣接するスライドがそれらに適用される異なる試験を行えるような自動化組織染色装置があることが望ましい。
【0008】
IHCおよびISH試験の両方でしばしば遭遇する難点は、組織を一般的に保存する方法から生ずる。診断病理学研究室の主要部分は長年にわたり、切断され且つガラススライド上に載せた組織のホルマリン固定されたパラフィン包埋ブロックであった。そのような保存液中の固定はアミノ酸および核酸の両方の高分子の架橋結合を引き起こす。プローブの標的核酸への接近を可能にし且つ抗体を対応する抗原を認識できるようにするためには、これらの架橋結合された成分を除去しなければならない。抗原および/または核酸の「露呈(unmasking)」は一般的には、複数の予備処理、陽子移行消化、および洗浄段階と共に手動式に行われる。細胞を条件づけしてそれらの抗原および核酸を検出できるようにする工程が自動化できることが望ましい。
【0009】
染色前に、パラフィンが抗体またはプローブ結合を妨害しないようにするためのパラフィンの完全な除去も必要である。疎水性物質であるパラフィンは、染色またはプローブを用いるハイブリダイゼーション前に除去しなければならない。脱パラフィン化は一般的には、有毒で、可燃性でそして環境公害を与えるかもしれないパラフィン溶媒である2種もしくは3種の連続するクリーニング試薬、例えばキシレン、キシレン置換体またはトルエンの使用により行われる。スライドを脱パラフィン化するためのより安全で且つより迅速な方法は有利であろう。
【特許文献1】米国特許第5,654,199号明細書
【特許文献2】米国特許第5,645,114号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明は、個別化された染色または処理プロトコールが異なる温度パラメーターを要求する時でさえ各サンプルがそのようなプロトコールを受けることができるようにするための顕微鏡スライド上に載せた複数の組織サンプルを自動的に染色または処理するための装置および方法に関する。それ故、異なるDNAプローブおよび/または抗体をベースにした染色工程を、各々が特定時点で異なる加熱条件を有するかもしれない事実にもかかわらず、同時に実施することができる。さらに、脱ワックス化を必要とするサンプル(例えば、腫瘍切片)をこの予備段階を必要としない他のサンプル(例えば、塗抹標本)と同時に自動的に処理することができる。
【0011】
より特に、装置は化学的および生物学的試薬を標準ガラス顕微鏡スライドに載せたまたは固定した組織または細胞に自動的に適用するコンピューター調節バーコード駆動式染色器具である。20個までのスライドを環状列で円形コンベアー(carousel)に載せ、それはコンピューターに指示されて回転して各スライドをスライドの上に置かれた一連の試薬分配器の1つの下に置く。各スライドは選択された試薬(例えば、DNAプローブ)を受けそして最適な順序で且つ必要な期間にわたり洗浄され、混合されおよび/または加熱される。このようにして染色されまたは処理された組織切片を次に装置から使用者により取り出し、顕微鏡下で患者診断、予後、または処置選択の目的のためにスライドを読み取る医師により観察される。コンピューター調節自動化により、装置を「楽な」方法で、すなわち少ない人的労力で、使用可能にする。
【0012】
個別化されたスライド温度調節は、スライドを加熱しそして各々の温度を感知するための円形コンベアーに放射状に据え付けられた熱台を有する本発明に従う加熱システムにより行われる。これもスライド円形コンベアーに据え付けられた印刷回路板が各々の熱台を別個に個別的に監視し且つ調節する。情報および動力は回転する円形コンベアーと固定された装置との間をスリップリング組立品を介して通過する。この情報は20個のスライドの各々を適切な期間にわたり加熱するために必要な上方および下方の温度パラメーターを包含する。
【0013】
本発明の重要な利点は、個別化された染色または処理プロトコールが異なる温度パラメーターを要求する時でさえ各サンプルがそのようなプロトコールを受けられることである。
【0014】
本発明の別の利点は、それにより組織を載せるスライドの全表面の温度を注意深く(すなわち、所望する温度の±2℃以内に)調節できることである。そのような正確さは、ISHにおけるDNA変性およびプローブ交雑並びに関連方法、例えばin-situ PCR、にとって必要である。さらに、本発明に従う加熱は均一になされるため、この狭い温度範囲がスライドの表面全体にわたり保たれるので組織はスライド上のその位置に無関係に均一に加熱される。
【0015】
本発明のさらに別の利点は、それが自動化方式における組織サンプルのワックス除去を例えばキシレンの如き有害な溶媒を頼みにせずに可能にすることである。
【0016】
本発明のさらに別の利点は、組織を水溶液中で加熱することにより細胞中の標的分子をステインにより接近させることにより組織が染色用により良好に条件づけされることである。
【0017】
本発明のさらに別の利点は、組織を載せるスライドの表面を急速に加熱して(すなわち37℃から95℃に2分間以内にそして同一範囲にわたり4分間以内に冷却して)過熱による過変性や細胞形態の損傷なしにDNA変性を可能にするその能力である。
【0018】
本発明のさらに別の利点は、熱を使用する染色後の組織サンプルを脱水するその能力である。
【0019】
本発明のさらに別の利点は、自動化から生ずる人間の誤りの無いことおよび生産量の増加である。
【0020】
以下で明らかになるであろう本発明の前記のおよび他の目的、利点および特徴と共に、本発明の性質は下記の本発明の詳細な記述、添付された請求の範囲および図面に示された数種の図を参照にすることによりさらにはっきりと理解されるであろう。
【0021】
発明の詳細な記述
全体にわたり同様な部品は同様な参照番号により示されている図面を次に詳細に参照すると、図1には一般的に参照番号10により示されている本発明に従う分子病理学装置の透視図が示されている。装置10は顕微鏡スライド上に載せた組織を核酸プローブ、抗体および/またはそれらに関連する試薬を所望する順序、時間および温度で自動的に染色するかまたは別の方法で処理するように設計されている。このようにして染色または処理された組織切片を次に顕微鏡下で、患者診断、予後、または処置選択の目的でスライドを読み取る医師により観察する。
【0022】
好ましい態様では、装置10はホストコンピューター14、好ましくはパーソナルコンピューター、モニター16、キーボード18、マウス20、バルク流体容器22、廃液容器23および関連装置も含んでなるシステム12(図2)の1つの構成部品またはモジュールとして機能する。追加の染色モジュールまたは他の器具をシステム12に加えてサーバーとして機能するコンピューター14とのネットワークを形成してもよい。或いは、これらの別個の構成部品の一部または全部を装置10の中に組み込んでそれを単一(stand-alone)器具にすることもできた。
【0023】
装置10並びにシステム12の好ましい配置は一般的には、以下で論じられている新規な加熱システム、スライド支持器、バルク流体モジュール、量調節、およびスライドワイプ以外は、両者とも引用することにより本発明の内容となる1997年12月19日に出願された米国特許出願番号08/995,052並びにベンタナ・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド(Ventana Medical Systems, Inc.)(アリゾナ州、ツーソン(Tuscon, AZ))から入手できるベンタナ・ネクセス(Ventana NexES)使用者案内に記載されている。平明にする目的のために、本発明および組み入れる参考文献の両者で見られる構成部品の詳細な記述は省略する。
【0024】
要するに、装置10は化学的および生物学的試薬を標準的ガラス顕微鏡スライド上に載せた組織に自動的に適用するマイクロプロセッサー調節染色器具である。放射状に配置されたガラススライドを支持する円形コンベアーがステッパーモーターにより回転して各スライドを一連の試薬分配器の1つの下に置く。装置10が分配、洗浄、混合、および加熱を調節して反応キネティック(reaction kinetics)を最適化する。コンピューター調節自動化により、楽な方法で、すなわち少ない人的労力で、装置10の使用が可能になる。
【0025】
より特に、装置10は上部32に回転式に据え付けまたは丁番連結された下部30からなるハウジングを含んでなる。スライド円形コンベアー34は下部30内に軸A−Aの周りの回転のために据え付けられている。以下でさらに詳細に示されているように、複数の熱台50が円形コンベアー34の周囲に放射状に据え付けられており、その下に標準的ガラススライドを組織サンプルと共に置くことができる。円形コンベアー34は好ましくはステンレス鋼製である。各スライドの温度をここに記載されているような種々の感知器およびマイクロプロセッサーにより個別に調節できることが本発明の重要な特徴である。装置10(図3)内には、洗浄液分配ノズル36、カバースリップ(Coverslip)TM分配ノズル37、流体ナイフ38、洗浄液量調節ノズル39、バーコードリーダーミラー40、および空気渦混合器42も収容されており、それらの詳細は以下で論じられている。
【0026】
上部32の頂上に試薬円形コンベアー28が回転できるように据え付けられている。分配器26は試薬トレー29(図4)に取り外しできるように据え付けられており、それは円形コンベアー28とかみ合うようにされている。試薬は、核酸プローブまたはプライマー、ポリメラーゼ、一次および二次抗体、消化酵素、前−固定液、後−固定液、読み出し薬品、並びに対比染料を包含するスライドに一般的に適用されるいずれかの化学的または生物学的材料を包含する。試薬分配器26は好ましくはコンピューターによる同定のためにバーコード標識29がつけられる。各スライド用に、1種の試薬が適用されそして次に正確な期間にわたり温度−調節された環境の中でインキュベーションされる。試薬の混合はスライドの端部に沿ってねらいをつけた圧縮空気噴射42により行われ、試薬を回転させる。適切なインキュベーション後に、試薬をノズル36を用いてスライドから洗い流す。次に残りの洗浄緩衝液量を量調節ノズル39を用いて調節する。蒸発を抑制するためのカバースリップTM溶液を次にスライドにノズル37を介して適用する。空気ナイフ38がカバースリップTMのプールを分割し、引き続き次の試薬を適用する。プロトコールが完了するまで円形コンベアーを回転させながら、これらの段階を繰り返す。
【0027】
ホストコンピューター14の他に、装置10は好ましくはそれ自身のマイクロプロセッサー44を包含し、それにはホストコンピューター14からの情報がダウンロードされる。特に、コンピューターはマイクロプロセッサー44に実施プログラムおよび「実施規則」と称する感知器監視および調節論理の段階の順序並びにプロトコールの温度パラメーターの両方をダウンロードする。テキサス州、ダラスのダラス・セミコンダクター(Dallas Semiconductor)からのモデルNo.DS2251T 128Kがこの機能を行えるマイクロプロセッサーの一例である。
【0028】
次に図5に向けると、スライド加熱システム48のブロック図が示されている。このシステムは一般的には、スライドを加熱し且つその温度を監視するための円形コンベアー34に放射状に据え付けられた約20個の熱台50、並びにこれも感知器を監視し且つ加熱器を調節するためのスライド円形コンベアーに据え付けられた調節電子装置印刷回路板52を含んでなる。調節電子装置52は回転するスライド円形コンベアー34の下に据え付けられている。情報および動力は固定された器具台から回転する円形コンベアーにスリップリング組立品56を介して移される。この情報はマイクロプロセッサー44から(コンピューター14からダウンロードされた後に)伝達されるスライド(上部および下部)を加熱するために必要な温度パラメーターを包含しており、以下に記載されているように調節電子装置52を調節する。実施中に、スライド温度がプログラムされた下限より下であると測定された場合には、熱台がスライドを加熱する。同様に、スライド温度が上限より上であると見いだされた場合には、加熱を停止する。(図14の区画88参照)。1個の加熱器当たり約8ワットを供給するのに充分な能力が与えられる必要な温度上昇(別名「勾配増加(ramp up)」)速度に合わせる。
【0029】
同様に、別の態様では、スライドの冷却も以下に記載されているように同様に調節できる。別の一態様では、冷却台がスライドの下に据え付けられる。冷却台はペルチエル(Peltier)−タイプの熱変換器を含んでなっていてもよい。別の態様では、スライドの急速冷却が特定用途にとって必要である場合には例えばファン(示されていない)の如き冷却装置を場合により装備してもよい。冷却装置は周囲空気を台の全てに関して変動させるであろうため、周囲空気温度における低下を相殺するために冷却してはならないスライドに対応する加熱器を必要とする。
【0030】
ここに記載されたスライド加熱システムは伝導加熱を使用しそしてスライドを個別に加熱する。このシステムはより正確なスライド上温度を与えそして個別スライド基準で温度設定を可能にする。加熱システム48の構成部品の各々を次にさらに詳細に記載する。
【0031】
熱台(Thermal Platforms)
図6−10を参照すると、熱台50は2つの構成部品、すなわち加熱器/感知器装置58、および加熱器/感知器装置58を円形コンベアー34に取り外しできるように据え付け且つスライド37を支持するためのハウジング70、を含んでなる。
【0032】
加熱器/感知器装置58は、好ましくは.04インチ厚さの黄銅板から構成される、長さが約2インチで幅が1インチの板60を有する。黄銅の代わりに、それが硬質であり且つ熱をその表面全体にわたり均一に散逸させてスライドを均一な方法で暖めるのに充分な伝導度を有するなら他の材料を使用してよい。板は場合により例えばテフロン(Teflon)Rの如き耐食性材料で被覆されていてもよい。
【0033】
隣接するスライドを場合により異なる温度に特定時点で加熱できることが本発明の特別な特徴である。これは、加熱器間に高い熱抵抗を有することによりスライドを互いに熱的に単離させることにより行われる。当業者が容易に認識するように、熱抵抗は材料の伝導度、材料の厚さ、および熱が進むはずの距離の関数である。従って、上記の基準に基づく熱抵抗を与えるなら、ゴム、プラスチック、セラミック、または金属を包含する種々の材料を使用して隣接するスライドを熱的に単離することができる。ここで使用される「熱的に単離される」という用語は1つの加熱器からの熱が隣接するスライドの温度に認識できるほどの影響を与えないことを意味する。さらに、熱抵抗性材料上へのスライドの設置、スライド間への熱抵抗性材料の設置、および熱抵抗性台上へのスライドの配置を包含する種々の構造を使用して隣接するスライドを熱的に単離することができる。
【0034】
好ましい態様では、好ましくはゴムまたは耐水性であり且つ熱絶縁体である同様な材料から構成されるスカート62が板60の周囲に且つその下側から垂直に垂れ下がって据え付けられる。スカート62の絶縁性が、隣接するスライド間でこれらの温度差を増加させるのを助ける。隣接するスライドを熱的に絶縁するためにゴムの代わりに少なくとも100℃の温度に耐えうるセラミックおよびプラスチックを包含する種々の材料を使用してよい。また、加熱器/感知器58(記載されている)の空洞内に収容されている構成部品は装置の染色操作中に適用されるであろう種々の加熱された溶液(油および水をベースにしたもの)から遮蔽しなければならない。従って、板60は好ましくはスカート62に、真空化または高温においても流体不透過性密封を生ずる同様な方法により、連結されている。スカート62の壁も同様にそのような加熱された溶液に対して耐性でなければならない。好ましい態様では、スカート62の厚さはゴム材料に関しては.06インチであり、それにより熱が進む断面積を最少にする。或いは、スカート62を熱抵抗を与えるのに充分なほど薄い(例えば、約0.1インチ厚さの)金属材料、例えば黄銅、から構成してもよい。円形コンベアー34に据え付けられる時には、スカート62の高さは約半インチであり、それにより板60およびその上に支持されるスライドを同じ距離だけ上昇させる。スライドが上におかれている台の上昇が、それらを操作中に円形コンベアー34上で集まり
そしてスライドが隣接する加熱器により発生する熱から熱的に単離または絶縁する種々の流体から離す。
【0035】
ホトエッチングされた抵抗加熱器64がスカート62により規定された空洞内で板60の下側に据え付けられる。加熱器は、高抵抗性ニッケルをベースとした材料、例えばインコネル(Inconel)、から伝導性がより大きい材料、例えばキュプロ−ニッケル(cuppro-nickel)にわたる種々の材料から製造することができる。キュプロ−ニッケルが好ましい。ホトエッチングされた抵抗器64は例えば.008インチ厚さのデュポン(DuPont)から入手できるカプトン(Kapton)TMポリイミドフィルムの如きプラスチックの2つの薄いシートに連結されそしてその間に保たれる。電線65が抵抗トレースの端部に溶接されそしてこれらの線は2つのカプトンTM層の間から引き出されそしてホトエッチングされた抵抗器に連結される。このサンドイッチ構造の1つの外側面は加熱器と連結するように指示されるが、他の外側面はそれに付いている別のホトエッチングされた回路を有する。第二回路は温度感知用でありそしてダラス・セミコンダクターにより製造された部品番号がDS1721Sである感知器に連結するハンダパッドのところで加熱器の中心で終る4つの低抵抗トレースを有する。4つのトレースは加熱トレースと連結されたワイヤーと同じ領域で出る4本のワイヤーを有する。カプトンTMの第三層は調節トレース上に連結されそしてこの第三層は中心部でハンダパッド上に出口を有しているため、感知器を付けることができる。図7に示されているように、6本のワイヤーが加熱器から出ており、2本は加熱器に動力を与えそして4本は温度を感知するためである。6本のワイヤーが例えばAMP(ペンシルバニア州、ハリスバーグ(Harrisburg, PA))またはモレックス(Molex)(イリノイ州、リッスル(Lisle, IL))の如き多くの会社により製造できるような6つの雌の回路プラグ67に連結される。雌の連結器は、別の場所に記載されている調節電子装置回路PC板52上にハンダ付けされている6つの適合ピン69の上を滑動する。PC板52はスライド円形コンベアー34の下にスライド加熱器が据え付けられている面と反対に据え付けられているため、6つのピンは円形コンベアー内の長方形の開口部75を通って上方に伸びる。
【0036】
ここに示された仕様に従う加熱器64用の製造原料はミンコ・プロダクツ(Minco Products)(ミネソタ州、ミネアポリス(Minneapolis, MN))である。以下でさらに詳細に示されているように、加熱器電流のスイッチをオンオフできる一体化回路励振器または個々のトランジスター(印刷回路板52に据え付けられている)により加熱器を個別に調節できる。
【0037】
記載されている加熱器/感知器装置はスライドの利用面積を37℃から95℃に2分間以内に急速に加熱し且つ同一範囲を4分間以内に冷却して過熱による過剰変性および細胞形態の損傷なしにDNA変性を可能にする能力を有する。
【0038】
組織検体はしばしばスライド上の異なる位置に載せられるため、スライド表面を均一に加熱することが本発明の別の重要な目標である。従来のホットプレートはしばしばパッチ状の「熱点」を生じてスライドを板のどこに置くかをわかりにくくするため、これは手動操作時でも伝導加熱課題をもたらす。組織全体で細胞が均一に加熱されない場合には、顕微鏡スライドは正確に解釈されない。例えば、温度がプローブおよび組織DNAを変性させるのに充分なほど高くない場合には、これは偽の負の値を与えるかもしれずそして厳重な洗浄中の不整合は偽の正の値を与えるかもしれない。
【0039】
熱台60による均一な加熱を確実にするために、抵抗加熱器64を板60の底面に連結する。上述のように、黄銅板は加熱トレースが表面上で連続しておらずむしろ熱が発生しない空間により分離される隣接する線であるという事実から生ずる局物的な非均一性を滑らかにするのに充分な伝導度を有する。この分離は.015インチの程度であるため、熱
源におけるこの非−均一性は黄銅板の他の面では見られない。スライドの温度の均一性は、加熱トレースを非−均一方法で熱を生ずるようにそれらを変えることによっても得られる。熱はスライド37の端部および黄銅板60の端部を含む全ての表面で周囲空気中に逃げる。しかし、熱は加熱器64中では黄銅板の底表面上でのみ発生する。熱発生が加熱器の領域全体にわたり均一であるため黄銅板の底に一定の流束がある場合には、ガラススライドの頂部の中心は熱がより急速に散逸できる端部よりかなり熱くなるであろう。この現象は加熱器流束が中心でより少ない場合に適用できるため、ガラススライドの頂部における温度均一性を増加させることができる。有限部品熱伝達プログラムであるパラメトリック・テクノロジーズ(Parametric Technologies)(マサチュセッツ州、ワルサム(Waltham,
MA))によるメカニカ(Mechanica)を使用してシステム中の熱流をモデル化することができる。加熱器流束は好ましくは図12に示されているように設定され、そこでは中心領域63が全体の40%を占めておりそして合計エネルギーの8.3%を発生し、外側区域領域61が残りを発生する。従って、中心領域はより少ない熱を受けるため、中心領域のすぐ上にあるスライド上の温度は横長のリングのすぐ上にあるスライドの温度よりわずかに冷たい。加熱器が記載されているような輪郭である時には、ガラススライドの有効領域(その組織を置く領域、それは一般的にはスライドの最先端は除く)上の温度変動は約0.2℃である。ガラススライドの中心からガラススライドの有効領域の端部までの温度勾配は以下の通りである:徐々に0.2℃上昇し、次に徐々に.2℃低下する。幅が1インチであり且つ長さが3インチである湿ったガラススライドの頂部表面が、幅が0.75インチで、長さが1.6インチであり且つ標識の反対端部から0.25インチで出発するスライドの幅に集中する領域として定義されるその有効領域全体にわたり特定の温度均一性を維持する。均一性目標は設定温度を有効領域全体にわたり37℃から95℃のいずれの設定温度に関しても±2℃以内に維持することである。
【0040】
上記の加熱部品の代わりに、トランデューサー中の極性を逆転することにより加熱および冷却の両方が可能なペルチエル−タイプの熱変換器を使用することができる。そのような冷却能力は本発明のある種の可能な使用および用途、例えばインシトゥPCR(以下で論じられている)の実施、に関連する効用を有する。
【0041】
温度感知器68も空洞73内に加熱器64の下側に据え付けられる。数種のタイプの感知器、例えばサーミスター、RTD、または熱電対、を使用することができた。本発明の好ましい態様では、直接的な温度対デジタル変換を与える一体化回路感知器68、例えばダラス・セミコンダクター(テキサス州、ダラス(Dallas, TX))から入手できる感知器モデル番号DS1721、が使用される。この感知器は感知した温度をデジタル式に報告するためのI2Cプロトコールを使用する。同様な感知器はナショナル・セミコンダクター(National Semiconductor)(カリフォルニア州、サンタクララ(Santa Clara, CA))から入手できる。選択される感知器は正確であり、反復可能であり、且つ低いサーマルマス(thermal mass)を有していなければならない。
【0042】
好ましくは射出成型プラスチックから構成されるハウジング70が、加熱器/感知器装置58を円形コンベアー34に取り外しできるように締めそしてガラススライド37を支持するために装備される。図9に最も良く示されているように、ハウジング70が一般的には長方形の空洞71を規定しており、その中に加熱器/感知器装置58を挿入しそしてクランプにより保持することができる。ハウジング70の底には、スカート62の末端に沿って規定された対応する縁74を受けて加熱器感知器装置58を定位置に保つための凹所のある領域72が規定される。装置の操作中に使用する種々の試薬から空洞71をさらに密封するために、下方に伸びるへり76を装備して縁74をさらにしっかり噛み合わせることもできる。さらなる密封のために、突出部78をスカート62の外側壁に沿って装備することもできる。この突出部の外側寸法はハウジングの内側寸法よりわずかに大きいため、液体がスカートとハウジングとの間の突出部の下で空洞中に入ることを防ぐ締めしろを生ずる。
【0043】
ハウジングの基部が開口部80のセット(図8)を規定して円形コンベアー中で規定された整列した穴と噛み合う小ねじを受ける。
【0044】
ガラススライド37は、ハウジング70に一体的に据え付けられている4つの上方に懸垂している柱82により捕獲されている板60に載っている。ガラススライドは.04インチの厚さであり、柱はガラススライドの頂部表面の.02インチ下にあるため、図9で見られるように柱はガラススライド37の厚さの半分まで伸びる。水溶液の表面張力が溶液を汲み出すことを防ぐためには、柱がスライドの頂部表面から突出することが重要である。スライドの頂部に対して垂直に挟む当該技術で既知の装置に伴う問題は、それらが毛管作用によりスライドから流体を吸引する傾向を有することである。スライドを捕獲または支持するための他の手段を使用できることを認識すべきである。
【0045】
調節電子装置(印刷回路板)
図13に示されたブロック図を参照すると、調節電子装置52は温度設定情報を染色装置マイクロプロセッサー44から連続的デジタルプロトコール57を介して受けそしてこの情報を用いて各加熱器64をその設定点に保つのに必要な構成部品を有する環状印刷回路板からなる。当業者により容易に理解される含まれるべき構成部品(例えば、抵抗器、コンデンサー、など)は図示されていない。加熱器の調節は種々の方法で行うことができる。好ましい態様では、加熱器は加熱器電流をオンオフにスイッチ切り替え可能な一体化回路励振器または個々のトランジスター53により個別に調節することができる。それ故、プロセッサーは、以下で記載されているように、加熱器のデューティーサイクルを調節することができる。別の態様では、加熱器への動力量をプロセッサー55により加熱器が全能力のある割合(例えば最大加熱動力の50%)で操業されるように調節することができる。好ましい態様では、アレグロ・マイクロシステムズ(Allegro Microsystems)(マサチューセッツ州、ワースター(Worcester, MA))から入手できる一体化回路(UDQ2559)である。マイクロプロセッサー44との(スリップリング組立品56を介する)順次伝達器57は好ましくはオランダ、アインドホーベン(Eindhoven, The Netherlands)のフィリップス・ラブス(Philips Labs)により開発されたI2C(インター・インテグレーテッド・サーキット(Inter Integrated Circuit)順次母線プロトコールを使用する。例えばRS232D、RS422などの別のプロトコールを使用することもできた。調節電子装置52は感知器68を監視し且つ加熱器64を調節するための両方で機能する。調節電子装置52の中心は、I2C順次母線を介して染色装置マイクロプロセッサー44と連結し、加熱器温度感知器68を監視し且つスライド温度を特定時間に上昇させることが必要な時に加熱器64を動かすのに充分な能力のマイクロプロセッサー55(それはメモリー51と連結されている)または他のデジタル回路である。そのようなマイクロプロセッサーの例は、アリゾナ州、チャンドラー(Chandler, AZ)のマイクロチップ・テクノロジー・インコーポレーテッド(Microchip Technology Inc.)から入手できるPIC16C64Aである。プログラムは、染色システムマイクロコントラローラーにより与えられる設定温度(または標的温度)と比べた時に、各加熱器を加熱器温度感知器に応答して各加熱器を調節すべきである。(図14参照)。マイクロプロセッサー55は、メモリー51中の設定点温度47のルックアップ表を基準にして、どのように加熱器を調節するかを決める。ルックアップ加熱器47中の設定点温度をマイクロプロセッサー44との順次伝達器57から受ける。マイクロプロセッサー55は感知器68から実際の温度を得て、そしてその後に実際の温度および設定点温度における差を基準にして加熱器64の調節を変える。加熱器のこの調節は厳密にオンオフしてよく(すなわち、感知器温度が設定点より低い場合には加熱器を入れ、そしてその感知器温度が設定点より上である場合には加熱器を切る)、或いはそれはよりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。
【0046】
動力分布および調節フィードバックシステムは、熱台が正確に調節されて熱循環技術における特徴を模することができ(例えば、in-situ PCR)且つ急速な温度上昇および冷却(例えば3分間以内の37℃から95℃への上昇および5分間以内の同じ範囲の冷却)を可能にするのに充分なものでなければならない。これらの特徴は好結果を与えるISH染色にとって特に重要である。
【0047】
プロセッサーは、スライドの温度を標的温度にするためにスライドに対する熱を変えることにより、スライドの温度を調節する。好ましい態様では、スライドに対する熱の変更は加熱器の出力を変更することにより行われる。図14を参照すると、個々のスライドの加熱調節のフローチャートが示されている。区画84で示されているように、個々のスライドに関する標的加熱温度(または設定点温度)が得られる。好ましい態様では、標的温度はマイクロプロセッサー42から調節電子装置52に送られる。標的温度は択一的に操作者から入力してもよく、またはスライド上のバーコードを通して読んでもよい。区画86で示されているように、温度感知器68により示されたスライドの温度が標的温度より上であるかどうかを測定する。「はい」なら、区画88で示されているように、加熱器は切られる。或いは、実際の温度と標的温度との間の相違により、加熱器により生ずる熱の量を変えてもよい。例えば、加熱器に関するデューティーサイクルを減少させてもよい。パルス幅調整により加熱器に関するデューティーサイクルを変えてもよい。(例えば、加熱器に関するデューティーサイクルを50%(加熱器が時間の50%稼働する)から25%デューティーサイクル(ここでは加熱器は時間の25%稼働する)に変えてもよい。)さらに別の態様では、実際の温度が標的温度よりかなり高い場合またはより微細な温度調節が求められる場合には、加熱器を切った後に冷却器を入れてもよい。
【0048】
さらに別の代替態様では、加熱器とスライドとの間で伝達される熱の量を変えることにより、プロセッサーがスライドに伝達される熱の量を調節することができる。一例として、マイクロプロセッサーは加熱器とスライドとの間の緩衝液の熱伝達特性を変えることができ、それによりスライドに伝達される熱の量を変えそしてそれによりスライドの温度を変える。
【0049】
スライドの温度が標的温度より低い場合には、区画90で示されているように、加熱器を切る。加熱器の調節は、よりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。好ましい態様では、加熱器により発生する熱の量は実際の温度と標的温度との間の相違を基準にする。例えば、現在の温度と標的温度との間の温度における相違により、加熱器を100%、50%、などのデューティーサイクルで入れることができる。それ故、実際の温度が標的温度より2℃以上高い場合には、加熱器を全デューティーサイクルで入れる。実際の温度が標的温度に接近するにつれて、加熱器のデューティーサイクルは減じられ、それによりスライドに対してより少ない合計熱が発生する。さらに、加熱器が標的温度に達したら、区画86で示されているように、プロセッサー55が実際の温度と標的温度との間の差を測定することにより調節を維持する。区画92に示されているように、スライドの加熱時間が終わるまでこのループが続けられる。それ故、スライドが予め決められた量の時間だけ加熱されるように指定される場合には、スライドの温度の調節は予め決められた量の時間が経過するまで行われる。
【0050】
さらに、スライドの特定の標的温度を基準にして、スライドを標的温度に保つのに必要な熱の量は経験的に決められている。例えば、熱の量が加熱器のデューティーサイクルの変更を基にして変えられる時には、加熱器に関する特定のデューティーサイクルは標的温度を基準にして決められる。これらの値はルックアップ表47に貯蔵される。それ故、スライドの実際の温度が標的温度に接近するにつれて、デューティーサイクルはルックアップ表47中の経験値に減じられる。この方法で、スライドの温度を現在の温度から標的温度に移すことができる。
【0051】
或いは、温度の調節を厳密にオンオフしてもよく(すなわち、感知器温度が標的温度より下である場合には加熱器を入れ、そしてその感知器温度が標的温度またはそれより上である場合には加熱器を切る)、または温度の調節を比例させてもよい(すなわち、デューティーサイクルの代わりに加熱器により発生する熱の量を変えて加熱器がその合計加熱動力の一部、例えばその合計加熱器出力の50%、を出す)。
【0052】
図15を参照すると、本発明の別の態様として個々のスライドの冷却調節のフローチャートが示されている。区画94で示されているように、個々のスライドに関する標的冷却温度が得られる。標的温度がマイクロプロセッサー42から調節電子装置52に送られる。標的温度を択一的に操作者が入力してもよくまたはスライド上のバーコードを通して読んでもよい。区画95に示されているように、システムの操作によっては、スライドを周囲空気により冷却してもよく、或いは冷却台などにより冷却してもよい。
【0053】
区画96で示されているように、図14と同様に、温度感知器68により示されるスライドの温度が標的温度より下であるかどうかが測定される。「はい」なら、冷却器が切られる。或いは、実際の温度と標的温度との間の相違によっては、冷却器により生ずる冷却量を変えてもよい。例えば、冷却器に関するデューティーサイクルを減じてもよい。パルス幅調節により、冷却器に関するデューティーサイクルを変えてもよい。
【0054】
スライドの温度が標的温度より高い場合には、区画98で示されているように、冷却器を入れる。加熱器の調節と同様に、冷却器の調節もよりたくさん調節された正確な応答を与えるための比例、積分、および/または導関数調節システムアルゴリズムを使用してもよい。1つの態様では、生ずる冷却力は実際の温度と標的温度との間の相違に基づく。例えば、現在の温度と標的温度との間の温度における相違によっては、冷却器を100%、50%などのデューティーサイクルで入れてもよい。それ故、実際の温度が標的温度から2℃以上高い場合には、冷却器を全デューティーサイクルで入れる。実際の温度が標的温度に接近するにつれて、冷却器のデューティーサイクルは減じられ、それによりスライドに対してより少ない合計冷却エネルギーが発生する。さらに、冷却器が標的温度に達すると、区画96で示されているように、実際の温度と標的温度との間の差を測定することによりプロセッサー55が調節を維持する。区画100で示されてように、スライドの冷却時間が終わるまでこのループが続けられる。
【0055】
スリップリング組立品
スリップリング組立品56は、回転する銀リングおよび銀グラファイトブラシを使用する技術を用いる。スリップリングは、I2Cデジタル調節信号を運び(2つの回路)、論理に動力を与え(2つの回路)、そして加熱器に動力を与える(2つの回路)のに充分な寸法(約3インチ直径)および容量(1回路当たり約10アンペア)でなければならない。この用途に適するスリップリングは、カリフォルニア州、サウスE1モンテ(South E1 Monte CA)のファブリカスト・インコーポレーテッド(Fabricast, Inc.)、ニュージャージー州、ベイヨンネ(Bayonne, New Jersey)のエアーフライト・エレクトロニクス(Airflyte
Electronics)、バージニア州、ブラックスブルグ(Blacksburg, VA)のリットン・ポリ−サイエンティフィック(Litton Poly-Scientific)などから入手できる。ケーブル57がスリップリング回転子を調節電子装置52に操作できる状態で連結する(図11)。固定子を装置10に小ねじなどを用いて据え付けるために(据え付けは示されていない)固定子ブラケット59が装備される。図16を参照すると、スリップリング組立品56の縦方向断面図が、図5および16に示されているデータ、論理動力および加熱器動力を伝達するリード線49と共に、示されている。
【0056】
図3を参照すると、下記の構成部品が一般的に米国特許出願番号08/995,052に記載されているような装置10内に据え付けられている:リキッド・カバースリップ(Liquid Coverslip)TM分配ノズル37、ステッパーモーター61、すすぎ液分配ノズル36、液体ナイフ38、バーコード読み取り機40、空気渦混合機42、および洗浄液量調節器39。上記の出願に開示されている緩衝液加熱器は除かれている。バルク流体モジュール22(図2)は好ましくはSSC、DI水、および細胞条件づけ緩衝液を包含するISH用に必要な複数の流体容器を収容するように構成される。量調節ノズル39は複数の流体の適用を可能にするように構成される。
【0057】
本発明はここでは、米国特許出願番号08/995,052に開示されているものとは、適用される次の試薬を希釈しないように洗浄緩衝液を適用後にスライドから拭う方法において異なる。本発明では、ノズル36が流体をスライドの端部で噴霧するようにねらいがつけられており、そこから流体が抜かれ、それにより毛管作用による流体の排除を引き起こす。
【0058】
定義
下記の用語はここで使用される際に下記の意味を有するであろう。
【0059】
「組織」は、器官の切片、腫瘍切片、体液、塗抹標本、凍結切片、細胞学調合物、および細胞株を、制限なく、包含する標準的ガラス顕微鏡スライド上に載せることができる細胞の採集物を意味する。
【0060】
「標的分子」は、核酸、蛋白質、炭水化物、脂質、および小分子を、制限なく、包含する細胞中で見られる検出できる分子を意味する。
【0061】
「ステイン」は、組織中の標的分子に適用される時に分子を顕微鏡下で検出できるようにする生物学的または化学的物体を意味する。ステインは検出できる核酸プローブ、抗体、および染料を、制限なく、包含する。
【0062】
「処理する」または「処理」は、組織に対するステインの適用並びに例えば、加熱、冷却、洗浄、すすぎ、乾燥、蒸発抑制、脱パラフィン化、細胞条件づけ、混合、インキュバーション、および蒸発を、制限なく、包含するそのような適用に関連する他の工程を意味する。
【0063】
「自動化」または「自動的」は実質的にコンピューターまたは機械で駆動されそして実質的に人間の関与のない動作を意味する。
【0064】
使用および操作
操作においては、装置10を使用してin-situハイブリダイゼーション(ISH)、in-situ PCR、免疫組織化学(IHC)、並びに種々の化学的な(非−生物学的な)組織染色技術を行うことができる。さらに、ここではこの発明性のある加熱システムによりそれらの異なる温度条件にもかかわらず2種もしくはそれ以上の上記の技術を1回の実施中に使用することもできる。
【0065】
ISHにおける段階の多くは正確な期間にわたり注意深く温度調節をしなければならないため、in-situハイブリダイゼーションは明らかに、単独でまたは他の技術と組み合わせて、本発明を用いて有利に使用できる技術である。特定の期間にわたる熱の正確な量が、DNAを充分変性させてその後のハイブリダイゼーションを細胞形態が変性される点までの過熱なしで起こすには必要である。異なる検体は、組織の製造および固定方法によって、変性のために異なる温度を必要とするかもしれない。変性、ハイブリダイゼーション、およびハイブリダイゼーション後洗浄の段階は各々、試験する特定のプローブおよび組織に依存する独自の温度条件を有する。これらの温度条件は、以上で論じたように、加熱器の個別化調節により調節することができる。DNAプローブは30°−55℃の間を必要としそして典型的にはそこでハイブリダイズされるが、RNAプローブは典型的にはそれより高い温度においてハイブリダイズされ、ハイブリダイゼーション時間は目標コピー数、プローブ寸法および検体タイプにより30分間から24時間に変動する。細胞遺伝学的調合物に関する標準的な変性は約72℃で2分間にわたり行われるが、組織切片に関しては条件づけは55℃から90℃まで2分間から30分間にわたり変動できる。ハイブリダイゼーション後洗浄温度は約37℃から72℃に2分間ないし15分間にわたり変動できる。塩濃度は.1×〜2×SSCに変動できる。プローブ検出温度は周囲温度から42℃まで2分間ないし30分間にわたり変動できる。
【0066】
板60および加熱器64の低い質量がスライドおよびその結果としてスライド上の組織の急速な加熱(180秒間以内の37℃から95℃への)および冷却を可能にする。加熱および冷却の速度増加がin-situハイブリダイゼーションの効率を高める。急速な温度上昇により加速される標的に対するプローブの急速なアニーリングがプローブの特異性を高める。同時に、背景が減じられそして生ずる試験の品質が大きく改良される。ISHはDNA、cDNA、および高コピーmRNAを検出するために使用できる。それは塗抹標本、組織、細胞株、および凍結切片に適用することができる。典型的には、検体を1インチ×3インチのガラススライド上に載せる。
【0067】
DNAのハイブリダイゼーションまたは変性が組織染色方法にとっては絶対的に必須であり、そして92−100℃の範囲の温度が急速に達成され、正確に調節されそして維持されることが必要である。熱台が顕微鏡スライドの処理された組織を180秒間以内に±2℃の精度で要求される温度範囲にする。ハイブリダイゼーションされた組織中の温度の急速損失が好結果を与える染色および診断にとって必須である。要求される温度を420秒間以内に37℃にするためにファンまたは他の急速冷却特色を加えてもよい。
【0068】
本発明の装置は、各ISH試験条件の独自の条件(すなわち、ハイブリダイゼーショ温度37−45℃の厳密性、および洗浄液濃度)を弱めずに、複数のタイプの検体およびISH試験の同一実験中への配置を可能にする。システムは同一実施において異なるスライド上で1回より多い検出化学法を実施してもよい。ここで使用される「ISH」は蛍光検出(FISH)および非−蛍光検出(例えば明視野検出)の両者を包含する。
【0069】
装置10はある種の組織切片に対するISHおよびIHC染色の同時適用のためにも使用できて遺伝子および蛋白質異常を同時に観察可能にする。これは、例えば、肺腫瘍切片の検定においてHER−2/neuの遺伝子増殖および蛋白質発現の両者が臨床的な意義を両方とも有するように思えるためこれらにとって有利である。Ross et al. "The Her-2/neu Oncogene in Breast Cancer," The Oncologist 1998; 3:237-253 参照。
【0070】
熱台による急速加熱および冷却が、より高いおよびより低い温度の繰り返しサイクルを必要とするin-situ PCR(ポリメアーゼ連鎖反応)における使用に本発明を用いることを可能にする。PCRの限界は、サンプルの細胞学的または組織学的特徴を伴う分子結果の補正を妨害する増殖の前に標的DNAまたはRNAを抽出する必要性である。in-situ PCRは、ISHの細胞局在能力をPCRの極端な感度と組み合わせることによりその限界を取り除く。この技術は引用することにより本発明の内容となるヌオボ(Nuovo)の米国特許第5,538,871号に記載されている。
【0071】
パラフィン中に包埋された切片は第一段階として包埋された組織の脱パラフィン化を必
要とする。熱台の使用が例えばキシレンの如き有害化学物質の使用を排除し、個々のスライドの正確に調節された加熱により組織中に包埋されたパラフィンを溶かしそしてそこで水溶液中に浮かせ、それを洗い流すことができる。水より密度が小さいパラフィンは、液化されると組織サンプル上の水性緩衝液を通って上昇しそしてこの流体の上部に浮かぶ。液体または気体状のいずれかの流体流を液体パラフィン上に通すことにより、液体パラフィンを次に顕微鏡スライドから除去しそして組織サンプルから離すことができる。この工程の詳細は引用することにより本発明の内容となる1998年9月3日に出願された米国特許出願番号60/099,018号に示されている。同様な技術を使用してパラフィン以外の包埋材料、例えばプラスチック、を除去できるが、エッチング試薬の添加が必要となるかもしれない。
【0072】
適切な水溶液中での熱台50による組織の加熱が、細胞(蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、または小分子)中の標的分子に対するステインの接近性を改良することが見いだされた。接近性の欠如は、組織の防腐中に使用されるアルデヒドによる分子の架橋結合によりまたは固定液により引き起こされる確認中の他の変化により、生ずるかもしれない。抗原の架橋結合は抗原性蛋白質の化学的改質による抗原性の欠如を引き起こす。分子標的に対するステイン(生物学的または化学的)の接近性を改良するこの方法はここでは「細胞条件づけ」と称する。DNA標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液であり、好ましい温度は約95度までであり、そして好ましい加熱時間は約1時間である。蛋白質標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液でありそして好ましい温度は約42分間にわたる約100℃までである。熱台による組織サンプルの加熱が、改質された抗原が対応する抗体により認識可能な形態に逆転するようにアルデヒド処理組織中の架橋結合度を減じ、それにより染色を促進させる。RNA標的に関しては、好ましい条件づけ溶液はサイトレート緩衝液でありそして好ましい温度は約1時間にわたる約75℃までである。サイトレート緩衝液の多くの代替品を細胞条件づけ溶液として使用することができる。そのような溶液のリストは Analytical Morphology, Gu, ed., Eaton Publishing Co. (1997) at pp. 1-40 に見られる。溶液は一般的には既知のモル数、pH、および組成を有していなければならない。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、エチレングリコールが条件づけ溶液に好ましく加えられる。
【0073】
本発明の装置を用いて実施される典型的なin-situハイブリダイゼーション(ISH)、in-situ PCR、免疫組織化学(IHC)、組織化学(HC)、または酵素組織化学(EHC)方法は下記の段階を包含する。
1)サンプルと共に使用されるin-situハイブリダイゼーション、in-situ PCR免疫組織化学、組織化学、または酵素組織化学方法を指示するバーコードをスライドに適用することによりスライドを製造する。
2)スライドのバッチを装置中に挿入して各スライドをスライド支持体の中に載せる。
3)装置を閉めそして処理工程を開始する。
4)スライドが装置中で予備処理として脱パラフィン化される場合には、各スライドは60℃より上の温度に乾燥加熱されるであろう。乾燥加熱後に、スライドを約7mlのDI水で洗浄すると、約300μLの残存水量が残る。スライドを次に約600μlの蒸発抑制液で被覆する。スライドを60℃より上の温度にさらに6分間保ちそして次に約7mlのDI水で再びすすぎそして600μlの蒸発抑制液で被覆する。温度を37℃に下げる。スライドを脱パラフィン化すると、指示された工程の次の段階の準備がなされている。
5)細胞条件づけしようとするスライドを約7mlのDI水ですすぐ。装置内の減量用固定液が残存量を約300μlから約100μlに下げるであろう。装置中で量調節用固定液を用いて、200μlの細胞条件づけ溶液をスライドに加える。スライドは次に約600μlの蒸発抑制液を受容する。スライド温度を37℃〜100℃の範囲内の指示された温度に上昇させ、そして流体循環を開始しそして6−8分間毎に2時間までの期間にわたりプロトコールに示された通りに繰り返す。スライドを37℃に冷却しそして〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐ。この時点で、スライドは指示された方法の次の段階の準備がなされている。
6)各スライドが試薬適用区域中で止まるにつれて、適切な試薬容器を試薬円形コンベアーにより試薬適用台に動かす。計量された量の試薬をスライドに適用する。標的液は蒸発抑制液層中を下にある液体層まで通過する。
7)スライド円形コンベアーが次に進んで、スライドを渦混合台の前に直接動かす。渦合器噴射がスライド表面上の試薬を蒸発抑制液層の下で撹拌する。
8a)in-situハイブリダイゼーション用
工程が蛋白質消化を必要とする場合には、スライドを〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐと、〜300μlの残存量の緩衝液が残る。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階6および7に記載されているような段階を消化酵素適用のために繰り返す。選択できるインキュベーション時間は37℃における2分間から32分間の範囲である。スライドを〜7mlの2×SSC緩衝液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。減量用固定液を使用して量を〜300μLから〜100μLに移す。6および7に記載されたような段階をプローブ適用のために繰り返す。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。それぞれ標的および/またはプローブの変性(denaturization)または変性(unfolding)のためにスライド温度を37℃〜95℃の範囲内の特定温度に上昇させる。
選択できるインキュベーション時間は2分間から18時間の範囲である。
2×、1×、0.5×、0.1×SSCの選択できる塩濃度および37℃〜75℃の温度範囲を包含する使用者の選択できる厳密性を用いるハイブリダイゼーション後にすすぎが行われる。
プローブ段階後に、スライドを1×APK洗浄緩衝液で洗浄し、そして次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。プローブは、FISH中のように一部の標識プローブの場合のように直接的に、そして適当な検出技術に従う抗ハプテン抗体を用いるISHに関しては間接的に検出される。
清掃が望まれる場合には、プローブの検出段階後に、スライドをDI水ですすぎそして洗剤を適用して蒸発抑制液のスライドをきれいにする。
再びスライドをDI水ですすぎそして残存量を減量用固定液を用いて除去する。
スライドを37℃もしくはそれより上の温度で、全ての水性物質が組織、細胞または塗抹から蒸発するまで、乾燥加熱する。
8b)in-situ PCR用
工程が蛋白質消化を必要とする場合には、スライドを〜7mlのAPK洗浄溶液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階6および7に記載されているような段階を消化酵素適用のために繰り返す。選択できるインキュベーション時間は37℃において2分間から32分間の範囲である。
スライドを〜7mlのDI水ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。減量用固定液を使用して量を〜300μLから〜100μLに移す。段階7に記載されているような段階を増殖試薬適用のために繰り返す。増殖試薬は分配用に37℃もしくはそれより上の温度において100μLの残存スライド量に調合される。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。スライド温度を37℃〜95℃の範囲内の特定温度に2分間より長く上昇させてPCR反応を開始させる。30回までのサイクルの熱循環は1.5分間にわたる55℃から始まり45秒間にわたる89℃である。
in-situ PCR後に、スライドは項に記載されているようなin-situハイブリダイゼーションにかけられる。
8c)IHC、HC、EHCプロトコールのためには、スライドを〜7mlの1×APK洗浄液または適当な緩衝液ですすぐと、〜300μLの残存量の緩衝液が残る。量を〜300μLから〜100μLに移すために、減量用固定液を使用してもよくまたは使用しなくてもよい。スライドは次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。段階7に記載されているような段階を抗体または他の試薬適用に関して繰り返す。
選択できるインキュベーション時間は2分間から32分間の範囲である。
選択できるインキュベーション温度は、細胞条件づけまたは脱パラフィン化が必要かどうかにより、37℃〜95℃の範囲である。
工程全体にわたり、スライドを1×APK洗浄液または適当な緩衝液で洗浄し、そして次に〜600μLの蒸発抑制液を受容する。蛋白質、炭水化物、および酵素は、蛍光中のように直接的に標識づけされるか、または適当な検出技術を用いて間接的に標識づけされる。
指定された染色工程の最後に、スライドを自動化清掃工程を用いるカバースリップ操作用に準備し、カバースリップ操作を受け、そしてDNA/RNA、蛋白質、炭水化物、または酵素の適切な染色工程に関して顕微鏡により観察する。
【0074】
段階の順序、試薬の適用、上記の温度パラメーターを包含する上記の工程セットは好ましくは製造業者によりホストコンピューター中に予備−プログラミングされている。例えば反応時間の如きある種のパラメーターは場合により使用者が改変してもよい。試験の最初のプログラミングはプロトコールの複雑な取り扱いおよび標的組織または検体へのプローブの添加前および後の両方の複数の試薬(5−6種の試薬)の添加を可能にするのに充分なほど融通性がある。
【0075】
実施中のおよび実施間の温度調節は標的温度の±1%でありそして上記の通りに調節することができる。操作者は複数の複雑なISHプロトコールを同一実施中に行うことができる。これは、同一変性温度で実施されるISH方法用のプロトコールをプログラミングする能力を包含する。同様に、このシステムは器具のめんどうな撤去なしに操作者によるスライド温度目盛りつけを可能にする。使用者が規定したISHプロトコールに関するプロトコール変更は保護手段により保護される。システムはスライドおよび試薬システムの両者に関して操作されるバーコードである。試薬分配、洗浄液分配、カバースリップ(高温および低温)分配、スライド索引および温度調節を包含する全ての主要なハードウエア機能の操作者による手動調節も任意である。これにより、使用者はやっかいな問題を解決することができる。使用者が規定したプロトコールは、操作者が検出温度以外の反応の全段階の温度を調節することを可能にする。ソフトウエアは。ソフトウエアに内在する予備−プログラミングされた最適化プロトコールを含んでいるため、最適化ターンキープローブの連続的導入が可能になる。
【実施例】
【0076】
下記の非限定的な実施例がここに開示されている発明の使用および用途をさらに説明しそして詳記する。
【0077】
実施例I
自動化in-situハイブリダイゼーションを用いるヒト・パパロマ・ウイルス(Human Papaloma Virus)(HPV)の高危険性菌株の検出
通常はパパニコラウ(Papanicolau)ステイン(Pap塗抹標本)により染色されるであろう、例えば細胞ブラシ(cytobrush)の如き標準的収集装置によりまたはシンプレップ(ThinPrep)TMスライド方法(サイテック・インコーポレーテッド(Cytec, Inc.))により採集された頸塗抹標本を高危険性HPVタイプに特異的なプローブセットを用いてin-situハイブリダイゼーションにかける。検体スライドを本発明に従う装置(以下では「染色装置」と称する)のスライドホルダー中に充填する。システムをHPVインシトゥプログラムを実施するように設定する。このプログラムは、プログラムが開始されたら、インシトゥ反応の全段階を使用者からの必要な相互作用なしで実施する。
【0078】
染色装置が最初にスライドの予備処理、すなわち室温における1×APK(10×AP
Kベンタナ(Ventana)P/N250−042)によるすすぎおよびカバースリップ(Coverslip)TM適用、を行い、次に4分間にわたる37℃におけるプロテアーゼ1を用いるプロテアーゼ消化を行い、引き続き2×SSC中ですすぎ段階を行う。2×SSCすすぎ後に、残存スライド量を約300マイクロリットルから約100マイクロリットルに減じそしてカバースリップTMを適用する。ハイブリダイゼーション溶液と予備混合されたFITC−標識DNAプローブカクテルをベンタナ(Ventana)限定可能分配器からスライドに適用する。検体およびスライドを72℃に4分間加熱してプローブおよび検体DNAの両者を変性させる。染色装置が次に、スライドの温度を37℃に下方に勾配をつけそしてハイブリダイゼーションを37℃で2時間にわたり行う。染色装置が、プローブ混合物およびカバースリップTMをスライドから除去しそしてハイブリダイゼーション後洗浄を行う。ハイブリダイゼーション後洗浄溶液(2×SSC)およびカバースリップをスライドに加えそして器具がスライドを45℃に10分間加熱する。染色装置がハイブリダイゼーション後洗浄溶液を除去しそして検出段階を開始する。最初に、染色装置がスライドを1×APKですすぎそしてカバースリップを適用する。次に、抗−FITC(セロテック(serotec)P/N MCA1320)抗体を分配器からスライドに適用しそしてスライドを37℃に加熱しながらスライドを20分間にわたりインキュベーションし、引き続きAPKすすぎおよびカバースリップ適用を行う。次に、ビオチン標識二次抗体を加えそして37℃で8分間にわたりインキュベーションし、引き続きAPKすすぎおよびカバースリップ適用を行う。ストレプタビジン(Streptavidin)−アルカリ性ホスフェート共役体をスライド上に置きそして染色装置がスライドを37℃で30分間にわたりインキュベーションする。APKすすぎ後に、ベンタナ・ブルー検出試薬をスライドに加えそして室温で20分間にわたりインキュベーションする。ベンタナ・ブルー・キット(P/N760−060)はビオチン標識二次抗体、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェートおよびNBT/BCIP基質を含んでなる。スライドをDI水ですすぎ、そしてスライドを器具により熱乾燥する。この時点で、ヌクレアー・ファスト・レッド対比染料をスライドに適用し、室温で5分間にわたりインキュベーションし、そしてスライドを水ですすぐ。
【0079】
実施例II
自動化in-situハイブリダイゼーションを用いるパラフィン包埋組織中のエプスチエン・バル・ウイルス(Epstien Barr Virus)(EBER)のmRNAの検出
5ミクロン切片を脾臓#EBV37Aから切開しそしてサパー・フロスト・ガラス(supper frost glass)染色スライドの上に置く。検体スライドを本発明に従う装置(以下では「染色装置」と称する)のスライドホルダー中に充填する。染色装置をEBERインシトゥプログラムを実施するようにプログラミングする。このプログラムは、プログラムが開始されたら、インシトゥ反応の全段階を使用者からの必要な相互作用なしで実施する。
【0080】
染色装置は最初に脱パラフィン化を行う:スライドを65℃に6分間加熱し、室温のDI水でスライドをすすぐと、300μLの残存量および600μLの液体カバースリップが残り、それが蒸発を防止しそしてスライド検体を乾燥から保護する。温度を65℃に保ってパラフィンを溶かす。スライドをDI水ですすぎ、次に残存量を減じ、そして200μLの細胞条件づけ緩衝液(サイトレート・バッファー)および600μLの液体カバースリップTMを適用することにより、細胞条件づけを行った。スライドを75℃に加熱し、そして条件づけ緩衝液およびカバースリップTMを8分間毎に40分間にわたり再適用した。スライド温度を37℃に冷却し、そしてスライドを室温で1×APK洗浄液(ベンタナ
【数1】
【0081】
EBER用のmRNAを標的にするように設計されたDig−標識(ベーリガー・マンハイム・キャット(Boehringer Mannheim cat # 1 417 231)オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーション溶液と予備混合しそして試薬をベンタナ使用者限定分配器(ベンタナP/N551−761)の中に入れた。プローブを検体に適用しそしてスライドを75℃に4分間にわたり加熱してオリゴヌクレオチドおよび検体mRNAを巻き戻した。染色装置が次にスライドの温度を37℃に勾配をつけそして2時間にわたりハイブリダイゼーションを行う。染色装置がプローブ溶液およびカバースリップTMをスライドから除去しそして3回のハイブリダイゼーション後洗浄を行う。ハイブリダイゼーション後洗浄は、42℃における4分間にわたる2×SSCによるスライドの洗浄、次の42℃における4分間にわたる1×SSCによるスライドの洗浄および42℃における4分間にわたる0.5×SSCによる洗浄からなっていた。染色装置が次に検出段階を行った。スライドを1×APKで洗浄しそしてカバースリップを適用した。抗−Dig抗体(シグマ(Sigma)P/N D−8156)をスライドに適用しそして37℃で16分間にわたりインキュベーションし、引き続き1回のAPK洗浄およびカバースリップTM適用を行った。次に、ビオチン標識二次抗体をスライドに加えそして37℃で8分間にわたりインキュベーションし、引き続き1×APK洗浄およびカバースリップ適用を行った。二次抗体後に、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェート共役体を適用しそして37℃で30分間にわたりインキュベーションした。APK洗浄およびカラースリップ適用後に、ベンタナブルー検出試薬を検体に適用しそして37℃で20分間にわたりインキュベーションした。スライドを次に水で洗浄しそして器具により熱乾燥した。ビオチン標識二次抗体、ストレプタビジン−アルカリ性ホスフェートおよび検出試薬がベンタナ・ブルー・キット(P/N760−060)の成分である。検体の脱水後に、スライドをガラスカバースリップで被覆しそして顕微鏡で観察した。
【0082】
本発明のある種の現在好ましい態様をここに記載したが、上記の態様の変更および改変を本発明の精神および範囲から逸脱しないで行えることは本発明に関連のある当業者には明らかであろう。従って、本発明は添付された請求の範囲および適用可能な法律の規則により要求される程度のみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】スライドフードを開き且つ円形コンベアードアが除去された状態で示された本発明の透視図である。
【図2】コンピューターおよびそれが一緒に操作する他の器具と関係して示された本発明の透視図である。
【図3】本発明の分解組立図である。
【図4】試薬分配器と共に示された本発明の透視図である。
【図5】本発明の加熱システムのブロック図である。
【図6】調節電子装置の一部であるピンを示すために部分的に取り出した板と共に示された本発明の加熱器/感知器装置の透視図である。
【図7】加熱器の平面図である。
【図8】上部にあるガラススライドと共に示された熱台の透視図である。
【図9】図8の線9−9に沿って取り出された熱台の断面図である。
【図10】それに据え付けられた複数の熱台と共に示されたスリップリング組立品およびスライド円形コンベアーの透視図である。
【図11】それに据え付けられた調節電子装置印刷回路板と共に示された図10に示された円形コンベアーの下側の透視図である。
【図12】加熱器の上部平面図である。
【図13】図5に示された調節電子装置、加熱器および感知器のブロック図である。
【図14】個々のスライドの加熱の調節のフローチャートである。
【図15】個々のスライドの冷却の調節のフローチャートである。
【図16】リング組立品の断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライドの各々に対する熱出力を発生させる加熱装置;
加熱装置を支持するための円形コンベアー;
複数のスライドの各々のための温度感知器;
温度感知器と連絡しているプロセッサー;および
プロセッサーと連絡している、複数のスライドの各々のための加熱装置の熱出力を変更するための手段
を含んでなる、複数の顕微鏡スライドに関して異なる標的温度を維持するための顕微鏡スライド加熱システム。
【請求項2】
熱を変更するための手段が加熱装置のデューティーサイクルを変更するための手段を包含する請求項1に記載の顕微鏡スライド加熱システム。
【請求項1】
複数のスライドの各々に対する熱出力を発生させる加熱装置;
加熱装置を支持するための円形コンベアー;
複数のスライドの各々のための温度感知器;
温度感知器と連絡しているプロセッサー;および
プロセッサーと連絡している、複数のスライドの各々のための加熱装置の熱出力を変更するための手段
を含んでなる、複数の顕微鏡スライドに関して異なる標的温度を維持するための顕微鏡スライド加熱システム。
【請求項2】
熱を変更するための手段が加熱装置のデューティーサイクルを変更するための手段を包含する請求項1に記載の顕微鏡スライド加熱システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−304806(P2006−304806A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190677(P2006−190677)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【分割の表示】特願2000−533730(P2000−533730)の分割
【原出願日】平成11年2月26日(1999.2.26)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【分割の表示】特願2000−533730(P2000−533730)の分割
【原出願日】平成11年2月26日(1999.2.26)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
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