説明

顕微鏡セット

【課題】複数の装着装置間における対物レンズの同焦距離を保ちながら、これらの装着装置を選択的に交換して用いる。
【解決手段】顕微鏡本体10と、この顕微鏡本体に選択的に取り付けられる着脱可能な複数の対物レンズユニット20,30,40,50とを備え、顕微鏡本体10が、取り付けたこれらの対物レンズユニットを光軸方向に移動可能な昇降機構16を備え、複数の対物レンズユニット20,30,40,50が、顕微鏡本体10に取り付け可能なレボルバ21あるいはノーズピース31,41,51と、これらレボルバあるいはノーズピースに着脱可能に装着される対物レンズ23,33,43,53とを有し、対物レンズユニット20,30,40,50どうしが、顕微鏡本体10におけるレボルバ21あるいはノーズピース31,41,51の取付位置から対物レンズ23,33,43,53の焦点位置までの距離が同一に設定されている顕微鏡セット100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の対物レンズを着脱可能に備え、これらの対物レンズを顕微鏡の観察光路に選択的に配置可能な装着装置を有する顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の顕微鏡装置は、第1の対物レンズを保持する第1の保持部材と、第1の対物レンズよりも作動距離が短い第2の対物レンズを保持する第2の保持部材と、第2の対物レンズを光軸方向に移動させる昇降機構と、昇降機構による第2の対物レンズの光軸方向の移動位置を調整する調整機構とを有する装着装置を備えている。
【0003】
この特許文献1に記載の顕微鏡装置は、作動距離が長い第1の対物レンズを顕微鏡の観察光路に配置した状態を基準にしておき、昇降機構により第2の対物レンズを光軸方向に移動させて、調整機構により第2の対物レンズの移動位置を調整することにより、第1の対物レンズから第2の対物レンズへ同焦距離を保ちながら切り替えることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3900664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同焦距離が異なる複数種類の対物レンズを交換して使用する場合は、装着装置ごと交換することがある。このような場合は、スペースを確保するために装着装置をステージ上の試料から光軸方向に一端退避させた状態で他の装着装置に交換することとなるが、装着装置ごとに光軸方向の退避距離が異なるため、交換後の新たな装着装置を交換前の装着装置が退避させられた距離だけ戻しても、ピントが合わなかったり試料に対物レンズの先端が接触してしまったりする不都合が生じる。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の装着装置間における対物レンズの同焦距離を保ちながら、これら複数の装着装置を選択的に交換して用いることができる顕微鏡セットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試料に照射する照明光を発生し該試料からの検出光を検出する顕微鏡本体と、該顕微鏡本体に対して選択的に取り付けられる着脱可能な複数の対物レンズユニットとを備える顕微鏡セットであって、前記顕微鏡本体が、取り付けられた前記対物レンズユニットを光軸方向に移動可能な昇降機構を備え、前記複数の対物レンズユニットが、前記顕微鏡本体に取り付け可能な装着装置と、該装着装置に着脱可能に装着され、前記顕微鏡本体から発せられた照明光を前記試料に照射する一方、該試料からの検出光を集光する対物レンズとを有し、これらの対物レンズユニットどうしが、前記顕微鏡本体における前記装着装置の取付位置から前記対物レンズの焦点位置までの距離が同一に設定されている顕微鏡セットを提供する。
【0008】
本発明によれば、複数の対物レンズユニットが選択的に顕微鏡本体に取り付けられて用いられ、顕微鏡本体により、取り付けられた一の対物レンズユニットの対物レンズを介して試料に照明光が照射され、試料からの検出光がその対物レンズを介して検出される。
【0009】
この場合において、対物レンズユニットどうしの顕微鏡本体における装着装置の取付位置から対物レンズの焦点位置までの距離を同一に設定することで、対物レンズユニットの切替時に、スペースを確保するために昇降機構により対物レンズユニットを光軸方向に移動させても、切替前の対物レンズユニットの装着装置における対物レンズの装着位置から対物レンズの焦点位置までの距離(以下、装着装置における対物レンズの装着位置から対物レンズの焦点位置までの距離を「同焦距離」という。)と切替後の対物レンズユニットの同焦距離を簡易に保つことができる。したがって、複数の対物レンズユニット間における対物レンズの同焦距離を保ちながら、これら複数の対物レンズユニットを選択的に交換して用いることができる。
【0010】
上記発明においては、いずれかの前記対物レンズユニットの装着装置が、前記対物レンズが装着される装着装置本体と、該装着装置本体に固定され、該装着装置本体を前記顕微鏡本体に着脱可能に取り付ける装着アダプタとを有することとしてもよい。
このように構成することで、いずれかの対物レンズユニットの装着装置本体の寸法が、他の対物レンズユニットの単体の装着装置の寸法よりも小さくても、装着アダプタによりその寸法差を補い、これらの対物レンズユニットどうしの顕微鏡本体における装着装置の取付位置から対物レンズの焦点位置までの距離を一致させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記装着装置が、前記対物レンズを前記照明光の光路上に選択的に配置可能に複数備え、前記装着装置におけるこれらの対物レンズの装着位置から該対物レンズの焦点位置までの距離が同一に設定されていることとしてもよい。
このように構成することで、同一の対物レンズユニット内においても、複数の対物レンズを同焦距離を保ったまま容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の装着装置間における対物レンズの同焦距離を保ちながら、これら複数の装着装置を選択的に交換して用いることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡セットを示す概略構成図である。
【図2】イメージング用の対物レンズユニットを示す概略構成図である。
【図3】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニットの概略構成図である。
【図4】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の他の対物レンズユニットの概略構成図である。
【図5】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の他の対物レンズユニットの概略構成図である。
【図6】顕微鏡本体にイメージング用の対物レンズユニットを取り付けて試料を観察する場合を示す概略構成図である。
【図7】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニットを取り付けて試料を観察する場合を示す概略構成図である。
【図8】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の他の対物レンズユニットを取り付けて試料を観察する場合を示す概略構成図である。
【図9】パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の他の対物レンズユニットを取り付けて試料を観察する場合を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡セットについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡セット100は、例えば、図1に示すように、顕微鏡本体10と、顕微鏡本体10に対して選択的に取り付けられる着脱可能な複数の対物レンズユニット20,30,40,50とを備えている。
【0015】
顕微鏡本体10は、試料(図示略)を載置するステージ11と、落射照明用の照明光を発する光源(図示略)と、透過照明用の光源(図示略)から発せられた照明光を試料に照射するコンデンサ13と、対物レンズユニット20,30,40,50が択一的に取り付けられるアーム15と、照明光学系(図示略)を内部に有する投光管17と、これらコンデンサ13、アーム15および投光管17を支持するフレーム19と、照明光が照射された試料から戻る検出光を検出する検出部(図示略)とを備えている。
【0016】
この顕微鏡本体10は、ステージ11に対して対物レンズユニット20,30,40,50を上下動させることによりピント合わせを行うステージ固定式の正立顕微鏡である。顕微鏡本体10には、取り付けられた対物レンズユニット20,30,40,50を光軸方向に移動可能な、例えば電動式の昇降機構16が備えられている。
【0017】
フレーム19は、水平方向のベース部19aと、ベース部19aに対して直立して形成された胴部19bからなるL字型形状をなしている。
ステージ11は、図示しないステージ用支柱により支持されてフレーム19のベース部19aの上方に配置され、所定の高さに設定することができるようになっている。また、ステージ11は、ステージ用支柱により支持された状態で、高さ方向(Z軸方向)に直交する水平方向(XY軸方向)に移動可能に設けられている。
【0018】
コンデンサ13は、フレーム19のベース部19a上に着脱可能に設けられるコンデンサホルダ14により支持され、ステージ11を介して対物レンズユニット20,30,40,50に対向して配置されるようになっている。このコンデンサ13は、コンデンサホルダ14に対して着脱可能に設けられており、フレーム19のベース部19aに直接設置することができるようになっている。
【0019】
アーム15は、フレーム19の胴部19bのステージ11側壁面に着脱可能に設けられ、昇降機構16により、ステージ11側壁面に沿って上下動可能に設けられている。図1において、符号Dは、アーム15のストローク範囲を示している。このアーム15は、対物レンズユニット20,30,40,50を着脱可能に保持し、対物レンズユニット20,30,40,50をステージ11の上方に配置するようになっている。同図において、符号15aは、アーム15における対物レンズユニット20,30,40,50の取付位置を示している。
【0020】
投光管17は、フレーム19の胴部19bの上端部に設けられ、ステージ11の上方に張り出すように配置されている。投光管17とフレーム19の胴部19bの上端部との間には、所定の厚さ寸法を有する嵩上げ部材18が着脱可能に設けられている。嵩上げ部材18を着脱することにより、アーム15の基準位置および投光管17の高さを調整することができるようになっている。
【0021】
対物レンズユニット20,30,40,50としては、例えば、図2に示すようなイメージング用の対物レンズユニット20と、図3〜図5に示すようなパッチクランプ用あるいは生体の生きたまま(IN VIVO)の観察用の対物レンズユニット30,40,50等が挙げられる。
【0022】
イメージング用の対物レンズユニット20は、図2に示すように、顕微鏡本体10のアーム15に取り付け可能なレボルバ(装着装置)21と、レボルバ21に着脱可能な対物レンズ23とにより構成されている。
【0023】
レボルバ21は、アーム15の上下動により、対物レンズ23の光軸方向(Z方向)に動作可能となっている。また、レボルバ21は、所定の回転軸(図示略)回りに回転可能に設けられ、周方向に沿って間隔をあけて複数の対物レンズ23を同時に装着することができるようになっている。図2では、レボルバ21に対物レンズ23が1つ装着されている。このレボルバ21は、回転軸回りに回転することにより、複数の対物レンズ23のいずれか1つを試料に対向する位置に択一的に配置することができるようになっている。
【0024】
また、レボルバ21は、アーム15に対する取付位置21aから対物レンズ23の装着位置21bまでの距離が寸法Cに設定されている。レボルバ21に装着される複数の対物レンズ23は、レボルバ21における各対物レンズ23の装着位置21bから各対物レンズ23の焦点位置までの距離(以下、レボルバ21における対物レンズ23の装着位置21bから対物レンズ23の焦点位置までの距離を「同焦距離」という。)が寸法Eになるように、それぞれの長さ寸法が設定されている。
【0025】
また、レボルバ21は、微分干渉観察にも対応しており、微分干渉観察法(DIC:Differential Interference Contrast)で用いる微分干渉用プリズムユニットとしてのDICスライダ1が着脱可能に設けられている。DICスライダ1は、レボルバ21に対して水平に装着され、DICスライダ1内に設けられた微分干渉用プリズムとしてのDICプリズム(図示略)が、対物レンズ23の瞳位置近傍に配置されるようになっている。
【0026】
パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニット30,40,50は以下の通りである。
対物レンズユニット30は、図3に示すように、顕微鏡本体10のアーム15に取り付け可能なノーズピース(接着装置)31と、ノーズピース31に着脱可能な対物レンズ33とにより構成されている。
【0027】
ノーズピース31は、XY軸方向に延びる所定の揺動軸回りに揺動可能な揺動部35を備えている。揺動部35には、その揺動方向に沿って間隔をあけて複数の対物レンズ33を同時に装着することができるようになっている。図3では、ノーズピース31に対物レンズ23が2つ装着されている。このノーズピース31は、揺動部35を揺動軸回りに揺動させることにより、複数の対物レンズ33のいずれか1つを試料に対向する位置に択一的に配置することができるようになっている。
【0028】
また、ノーズピース31は、アーム15に対する取付位置31aから対物レンズ33の装着位置31bまでの距離が寸法Cに設定されている。ノーズピース31に装着される複数の対物レンズ33は、ノーズピース31における各対物レンズ33の装着位置31bから各対物レンズ33の焦点位置までの距離(以下、ノーズピース31における対物レンズ31の装着位置31bから対物レンズ31の焦点位置までの距離を「同焦距離」という。)が寸法Eになるように、それぞれの長さ寸法が設定されている。
【0029】
次に、対物レンズユニット40は、図4に示すように、顕微鏡本体10のアーム15に取り付け可能なスライド式のノーズピース(接着装置)41と、ノーズピース41に着脱可能な対物レンズ43とにより構成されている。ノーズピース41は、XY軸方向にスライド可能に設けられ、スライド方向に沿って間隔をあけて複数の対物レンズ43を同時に装着することができるようになっている。このノーズピース41は、スライドすることにより、複数の対物レンズ43のいずれか1つを試料に対向する位置に択一的に配置することができるようになっている。
【0030】
また、ノーズピース41は、アーム15に対する取付位置41aから対物レンズ43の装着位置41bまでの距離が寸法Cに設定されている。図4では、ノーズピース41に対物レンズ23が2つ装着されている。一方の対物レンズ43は、ノーズピース41における装着位置41bとの間に配置される対物アダプタ45を備えている。一方の対物レンズ43においては、ノーズピース41における装着位置41bとの間に対物アダプタ45を介在させるだけの簡易な構成で、他方の対物レンズ43との同焦距離を一致させることができる。
【0031】
これにより、一方の対物レンズ43の長さ寸法を調整し、ノーズピース41におけるこれら2つの対物レンズ43の装着位置41bから各対物レンズ43の焦点位置までの距離(以下、ノーズピース41における対物レンズ41の装着位置41bから対物レンズ41の焦点位置までの距離を「同焦距離」という。)がそれぞれ寸法Eになるように設定されている。
【0032】
次に、対物レンズユニット50は、図5に示すように、顕微鏡本体10のアーム15に取り付け可能なノーズピース(接着装置)51と、ノーズピース51に着脱可能な対物レンズ53とにより構成されている。ノーズピース51は、対物レンズ53が装着されるノーズピース本体(装着装置本体)55Aと、ノーズピース本体55Aに固定され、ノーズピース本体55Aをアーム15における取付位置15aに着脱可能に取り付ける装着アダプタ55Bとを有している。
【0033】
ノーズピース本体55Aは、所定の回転軸(図示略)回りに回転可能に設けられ、周方向に沿って間隔をあけて複数の対物レンズ53を同時に装着することができるようになっている。図5では、ノーズピース本体55Aに対物レンズ53が1つ装着されている。このノーズピース51は、ノーズピース本体55Aが回転軸回りに回転することにより、複数の対物レンズ53のいずれか1つを試料に対向する位置に択一的に配置することができるようになっている。
【0034】
このノーズピース本体55Aは、ノーズピース31やノーズピース41の厚さ寸法よりも小さい厚さ寸法Aを有している。装着アダプタ55Bは、ノーズピース本体55Aの厚さ寸法とノーズピース31およびノーズピース41の厚さ寸法との差分に相当する厚さ寸法Bを有している。これにより、ノーズピース51は、アーム15に対する取付位置51aから対物レンズ53の装着位置51bまでの距離が寸法Cに設定されている。したがって、ノーズピース51は、アーム15における取付位置15aとノーズピース本体55Aとの間に装着アダプタ55Bを介在させることで、単体からなるノーズピース31,41との寸法差を補うようになっている。
【0035】
ノーズピース51に装着される複数の対物レンズ53は、ノーズピース51における各対物レンズ53の装着位置51bから各対物レンズ53の焦点位置までの距離(以下、ノーズピース51における対物レンズ51の装着位置51bから対物レンズ51の焦点位置までの距離を「同焦距離」という。)が寸法Eになるように、それぞれの長さ寸法が設定されている。
【0036】
これらパッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニット30,40,50もアーム15の上下動により、各対物レンズ33,43,53の光軸方向(Z方向)に動作可能となっている。また、対物レンズユニット30,40,50も微分干渉観察に対応しており、レボルバ21と同様に、各ノーズピース31,41,51にDICスライダ1が着脱可能に設けられている。
【0037】
上記すべての対物レンズユニット20,30,40,50は、顕微鏡本体10のアーム15に対するレボルバ21またはノーズピース31,41,51の各取付位置21a,31a,41a,51a、すなわち、アーム15における取付位置15aから各対物レンズ23,33,43,53の焦点位置までの距離が同一寸法(寸法C+寸法E)に設定されている。
【0038】
次に、このように構成された顕微鏡セット100の作用について説明する。
本実施形態に係る顕微鏡セット100により、イメージング用の対物レンズユニット20を用いて、スライドガラスやディッシュにより保持された細胞等の試料を観察する場合は、図6に示すように、嵩上げ部材18は外し、フレーム19のベース部19a上にコンデンサホルダ14を介さずにコンデンサ13を配置する。
【0039】
また、ステージ11とコンデンサ13との間の距離がβとなるように、ステージ11の高さを設定する。さらに、顕微鏡本体10に対物レンズユニット20を取り付け、レボルバ21により、いずれかの対物レンズ23を試料の真上に配置する。アーム15が基準位置のときの対物レンズ23の先端からステージ11までの距離をαとする。
【0040】
この状態で、過照明用の光源から照明光を発生させ、コンデンサ13により試料に照明光を照射する。ステージ11の下方から照明光が照射されることにより、試料を透過した透過光(検出光)は、対物レンズ23により集光されて検出部により検出される。これにより、試料を観察することができる。
【0041】
この場合において、対物レンズユニット20に装着される複数の対物レンズ23のレボルバ21における装着位置21bから焦点位置までの距離を同一に設定しているので、対物レンズユニット20内で、対物レンズ23を倍率が異なる他の対物レンズ23に同焦距離を保ったまま容易に切り替えることができる。
【0042】
次に、イメージング用の対物レンズユニット20からパッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニット30,40,50に切り替えて、スライドガラスやディッシュにより保持された細胞等の試料を観察する場合は、図7に示すように、嵩上げ部材18を装着し、アーム15の基準位置および投光管17を嵩上げする。また、フレーム19のベース部19a上にコンデンサホルダ14を設けて、コンデンサホルダ14によりコンデンサ13を支持させる。また、ステージ11とコンデンサ13との間の距離がβとなるように、ステージ11の高さを設定する。
【0043】
例えば、対物レンズユニット30を用いるとすると、アーム15をステージ11から離間させて対物レンズユニット20を外し、アーム15に対物レンズユニット30を取り付ける。そして、ノーズピース31により、いずれかの対物レンズ33を試料の真上に配置する。嵩上げ部材18を装着してアーム15を嵩上げしたことにより、コンデンサホルダ14を設けても、アーム15が基準位置のときの対物レンズ33の先端からステージ11までの距離がαとなる。
【0044】
この場合において、アーム15に対するレボルバ21の取付位置21aから対物レンズ23の焦点位置までの距離と、アーム15に対するノーズピース31の取付位置31aから対物レンズ33の焦点位置までの距離を同一に設定しているので、対物レンズユニット20,30の切替時に、スペースを確保するために昇降機構16により対物レンズユニット20を光軸方向に移動させても、切替前の対物レンズユニット20の同焦距離と、切替後の対物レンズユニット30の同焦距離を簡易に保つことができる。
【0045】
この状態で、透過照明用の光源から照明光を発生させてコンデンサ13により試料に照明光を照射し、試料を透過した透過光を対物レンズ33により集光させて検出部により検出する。これにより、試料を観察することができる。対物レンズユニット30を用いる場合を例示して説明したが、対物レンズ40,50を用いる場合も同様である。
【0046】
この場合も同様に、対物レンズユニット30に装着される複数の対物レンズ33のノーズピース31における装着位置31bから焦点位置までの距離を同一に設定しているので、対物レンズユニット30内で、対物レンズ33を倍率が異なる他の対物レンズ33に同焦距離を保ったまま容易に切り替えることができる。
【0047】
次いで、パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニット30,40,50を用いて、スライドガラスやディッシュにより保持された細胞等の試料に代えて、試料として比較的小さい小動物を観察する場合は、図8に示すように、嵩上げ部材18を装着したままで、フレーム19のベース部19a上からコンデンサホルダ14およびコンデンサ13を外す。
【0048】
そして、例えば、対物レンズユニット30に代えて対物レンズユニット40を用いるとすると、アーム15をステージ11から離間させて対物レンズユニット30を外し、アーム15に対物レンズユニット40を取り付ける。ノーズピース41により、いずれかの対物レンズ43を試料の真上に配置する。試料の大きさに合わせてステージ11と対物レンズ43とのスペースを確保するため、ステージ11と対物レンズ43の先端との間の距離が例えばα+40mmとなるように、ステージ11の高さを設定する。
【0049】
この場合も同様に、アーム15に対するノーズピース31の取付位置31aから対物レンズ33の焦点位置までの距離と、アーム15に対するノーズピース41の取付位置41aから対物レンズ43の焦点位置までの距離を同一に設定しているので、切替前の対物レンズユニット30の同焦距離と、切替後の対物レンズユニット40の同焦距離を簡易に保つことができる。
【0050】
この状態で、落射照明用の光源から照明光を発生させ、投光管17の照明光学系を介して対物レンズ43により試料に照明光を照射する。照明光が照射されることにより試料から戻る戻り光(検出光)は、対物レンズ43により集光されて検出部により検出される。これにより、試料を観察することができる。対物レンズユニット40を用いる場合を例示して説明したが、対物レンズ30,50を用いる場合も同様である。
【0051】
この場合も同様に、対物レンズユニット40に装着される複数の対物レンズ43のノーズピース41における装着位置41bから焦点位置までの距離を同一に設定しているので、対物レンズユニット40内で、対物レンズ43を倍率が異なる他の対物レンズ43に同焦距離を保ったまま容易に切り替えることができる。
【0052】
次いで、パッチクランプ用あるいはIN VIVO用の対物レンズユニット30,40,50を用いて、試料として比較的小さい小動物に代えて比較的大きい小動物を観察する場合は、図9に示すように、嵩上げ部材18を装着したままで、また、コンデンサホルダ14およびコンデンサ13を外したままで、試料の大きさに合わせて、ステージ11の高さを下げる。
【0053】
例えば、対物レンズユニット40に換えて対物レンズユニット50を用いるとすると、アーム15をステージ11から離間させて対物レンズユニット40を外し、アーム15に対物レンズユニット50を取り付ける。そして、ノーズピース51により、対物レンズ53のいずれかを試料の真上に配置する。試料の大きさに合わせて、ステージ11と対物レンズ53とのスペースを確保するため、ステージ11と対物レンズ53の先端との間の距離がα+(40+50)mmとなるように、ステージ11の高さを設定する。
【0054】
この場合も同様に、アーム15に対するノーズピース41の取付位置41aから対物レンズ43の焦点位置までの距離と、アーム15に対するノーズピース51の取付位置51aから対物レンズ53の焦点位置までの距離を同一に設定しているので、切替前の対物レンズユニット40の同焦距離と、切替後の対物レンズユニット50の同焦距離を簡易に保つことができる。
【0055】
この状態で、落射照明用の光源から照明光を発生させて、投光管17の照明光学系を介して対物レンズ53により試料に照射し、試料から戻る戻り光を対物レンズ53により集光させて検出部により検出する。これにより、試料を観察することができる。対物レンズユニット50を用いる場合を例示して説明したが、対物レンズ30,40を用いる場合も同様である。
【0056】
この場合も同様に、対物レンズユニット50に装着される複数の対物レンズ53のノーズピース51における装着位置51bから焦点位置までの距離を同一に設定しているので、対物レンズユニット50内で、対物レンズ53を倍率が異なる他の対物レンズ53に同焦距離を保ったまま容易に切り替えることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態における顕微鏡セット100によれば、対物レンズユニット20,30,40,50どうしの顕微鏡本体10に対するレボルバ21あるいはノーズピース31,41,51の各取付位置21a,31a,41a,51aから各対物レンズ23,33,43,53の焦点位置までの距離を同一に設定することで、対物レンズユニット20,30,40,50の切替時に、スペースを確保するために昇降機構16により対物レンズユニット20,30,40,50を光軸方向に移動させても、切替前の対物レンズユニット20,30,40,50の同焦距離と切替後の対物レンズユニット20,30,40,50の同焦距離を簡易に保つことができる。したがって、複数の対物レンズユニット20,30,40,50間における対物レンズ23,33,43,53の同焦距離を保ちながら、これら対物レンズユニット20,30,40,50を選択的に交換して用いることができる。
【0058】
本実施形態においては、対物レンズ43が対物アダプタ45を備えることとしたが、他の対物レンズ23,33,53が対物アダプタを備えることにより、同一の対物レンズユニット20,30,50内の複数の対物レンズ23,33,53の同焦距離が一致するように、その長さを調整することとしてもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、対物レンズユニット50のノーズピース51が接着アダプタ55を備えることとしたが、例えば、対物レンズユニット20のレボルバ21、対物レンズユニット30のノーズピース31、対物レンズユニット40のノーズピース41のいずれかが接着アダプタを備えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 顕微鏡本体
20,30,40,50 対物レンズユニット
21 レボルバ(装着装置)
21a 取付位置
23 対物レンズ
31 ノーズピース(装着装置)
31a 取付位置
33 対物レンズ
41 ノーズピース(装着装置)
41a 取付位置
43 対物レンズ
51 ノーズピース(装着装置)
51a 取付位置
53 対物レンズ
55B 装着アダプタ
100 顕微鏡セット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射する照明光を発生し該試料からの検出光を検出する顕微鏡本体と、
該顕微鏡本体に対して選択的に取り付けられる着脱可能な複数の対物レンズユニットとを備える顕微鏡セットであって、
前記顕微鏡本体が、取り付けられた前記対物レンズユニットを光軸方向に移動可能な昇降機構を備え、
前記複数の対物レンズユニットが、前記顕微鏡本体に取り付け可能な装着装置と、該装着装置に着脱可能に装着され、前記顕微鏡本体から発せられた照明光を前記試料に照射する一方、該試料からの検出光を集光する対物レンズとを有し、
これらの対物レンズユニットどうしが、前記顕微鏡本体における前記装着装置の取付位置から前記対物レンズの焦点位置までの距離が同一に設定されている顕微鏡セット。
【請求項2】
いずれかの前記対物レンズユニットの装着装置が、前記対物レンズが装着される装着装置本体と、該装着装置本体に固定され、該装着装置本体を前記顕微鏡本体に着脱可能に取り付ける装着アダプタとを有する請求項1に記載の顕微鏡セット。
【請求項3】
前記装着装置が、前記対物レンズを前記照明光の光路上に選択的に配置可能に複数備え、前記装着装置におけるこれらの対物レンズの装着位置から該対物レンズの焦点位置までの距離が同一に設定されている請求項1または請求項2に記載の顕微鏡セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−25046(P2013−25046A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159301(P2011−159301)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】