説明

風制御装置

【課題】簡便かつ確実に風の抑制を図る。
【解決手段】風に対向する開口枠105において、風への対向面が凸状をなす少なくとも1つの凸状部材100と、当該凸状部材100の周縁106から所定距離だけ離間する補助部材110とを配置し風制御装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風制御装置に関するものであり、具体的には、簡便かつ確実に風の抑制を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能なエネルギー源として活用され始めた風であるが、一方で、状況に応じて抑制すべき対象ともなる。例えば、高層ビル周辺に発生する所謂ビル風、空調室外機から路上に吹き出す排気風、強風発生時に建物や輸送機械内へ吹き込む風、などがそれにあたる。こうした抑制すべき風の制御技術として、例えば、複数本の部材からなるフレームと該フレームの外面又は内面に固定設置された強風に対する抵抗要素とから構成され、該抵抗要素の前記フレームの外形面に対する充実率は、樹木の防風性能と同等以上となるようにされた建物周囲に設置されるビル風低減用工作物(特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−236234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、風を制御する為のいずれの従来技術も、大規模な構造物や機構の構築が必要であったり、或いは風速や風向のセンサと情報処理装置とを連動させた緻密な制御システムの設置が要求されるものであった。してみると、必要とされる状況に応じ、簡便かつ確実に風の抑制を図る技術は提案されていなかった。
そこで本発明の目的は、簡便かつ確実に風の抑制を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の風制御装置は、風に対向する開口枠において、風への対向面が凸状をなす少なくとも1つの凸状部材と、当該凸状部材の周縁から所定距離だけ離間する補助部材とを配置してなることを特徴とする。前記凸状部材および補助部材に吹き当たった風は、凸状部材や補助部材らの表面に沿って各周縁に至り、そのまま凸状部材や補助部材らの後方、すなわち前記開口枠の後方に流れ去る。この時、凸状部材と補助部材の各周縁の間を通過する風は、凸状部材や補助部材の後端の空気を引き寄せつつ流れ去ろうとし、前記後端に負圧を生じさせる。その結果、開口枠後方に流れ去ろうとしている空気のうち、凸状部材や補助部材の後端に近いものは前記負圧によって前記後端に引き寄せられることになる。つまり、凸状部材と補助部材の各周縁の間を通過する風は凸状部材や補助部材の後端に向けて引き寄せられ、結果として、凸状部材と補助部材の各周縁の間を通過する風はその流れを当初の流路から左右に拡散させ、開口枠の後背領域での風速は弱まることになる。
【0006】
従って、大規模な構造物や機構、或いは各種センサと情報処理装置といった仕組みを導入することなく、ごく簡易な構造のみにて風の抑制を確実に図ることが可能である。つまり、簡便かつ確実に風の抑制を図る技術を提供することができる。
【0007】
なお、前記風制御装置において、前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかの周縁は、該周縁の接線が前記風の流れと平行になるよう成形されているとしてもよい。これによれば、凸状部材と補助部材の周縁間を流れる風が互いに平行となり、流れに乱れが生じにくくなる。そのため、前記後端の空気を引き寄せつつ流れ去る働きが高レベルで安定し、前記後端にて確実に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材と補助部材の間を通過する風の拡散がより確実なものとなり、開口枠の後背領域での風速も効率良く弱まることになる。
【0008】
また、前記風制御装置において、前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかにおける凸状部位頂点から前記周縁に至る面の断面が弧状をなしているとしてもよい。これによれば、前記凸状部材ないし前記補助部材に吹き当たった風が、前記弧状をなす表面に沿ってスムーズに前記周縁に至り、そのまま後方に流れ去ることができる。そのため、各周縁間の風の流れに乱れが生じにくくなり、前記後端の空気を引き寄せつつ流れ去る働きが高レベルで安定し、前記後端にて確実に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材と補助部材の間を通過する風の拡散がより確実なものとなり、開口枠の後背領域での風速も効率良く弱まることになる。また、風制御装置が凸状部材や補助部材を介して受ける風圧を適宜抑制することにもつながり、風制御装置における構成部材のダウンサイジングや軽量化を図ることも容易となる。当然ながら、風制御装置構成のコストや手間も低減される。
【0009】
また、前記風制御装置において、前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかは、前記風の流れと平行な側断面が円弧状をなしているとしてもよい。これによれば、前記凸状部材や補助部材に吹き当たる風の向きがばらついていたとしても、前記円弧状をなす表面に沿ってスムーズに前記周縁に至り、そのまま後方に流れ去ることができる。そのため、各周縁間の風の流れに乱れが生じにくくなり、前記後端の空気を引き寄せつつ流れ去る働きが高レベルで安定し、前記後端にて確実に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材と補助部材の間を通過する風の拡散がより確実なものとなり、開口枠の後背領域での風速も効率良く弱まることになる。また、風制御装置が凸状部材や補助部材を介して受ける風圧を、風向きの違いを吸収して適宜抑制することにもつながり、風制御装置における構成部材のダウンサイジングや軽量化を図ることも容易となる。当然ながら、風制御装置構成のコストや手間も低減される。
【0010】
また、前記風制御装置において、前記開口枠の後背領域で風速が所定レベルとなる位置と、該凸状部材ないし補助部材の後端面との間の距離を所定基準より小さくする場合、凸状部材と補助部材との離間距離を所定値より狭めて配置し、前記位置と前記後端面との間の距離を所定基準より大きくする場合、凸状部材と補助部材との離間距離を所定値より広げて配置してなる、としてもよい。
【0011】
上述したように、凸状部材や補助部材らの後方に流れ去ろうとしている空気のうち、前記後端に近いものは前記負圧によって前記後端に引き寄せられることになる。この時、凸状部材と補助部材の間隔すなわち各周縁間の距離が所定より大きい場合、前記後端に引き寄せられずに通過していく風が多くなる。従って、前記後端に近い風を介して前記負圧の影響が及ぶ範囲が小さくなって、前記後端に風が引き寄せられる影響も小さくなる。結果として、凸状部材と補助部材の間を通過する風がその流れを当初の流路から左右に拡散させる程度が小さくなり、開口枠の後背領域で風速が所定レベルとなる位置と、凸状部材ないし補助部材の後端面との間の距離が所定基準より大きくなる。一方、凸状部材と補助部材の間隔すなわち各周縁間の距離が所定より小さい場合、前記後端に引き寄せられずに通過していく風は所定より少なくなる。従って、前記後端に近い風を介して前記負圧の影響が及ぶ範囲が大きくなって、前記後端に風が引き寄せられる影響も大きくなる。結果として、凸状部材と補助部材の間を通過する風がその流れを当初の流路から左右に拡散させる程度が大きくなり、前記開口枠の後背領域で風速が所定レベルとなる位置と、凸状部材ないし補助部材の後端面との間の距離が所定基準より小さくなる。このように、開口枠の後背領域において、所定レベルまで風速を弱める位置を管理することも可能である。
【0012】
また、前記風制御装置において、前記凸状部材の凸状部位頂点を、前記開口枠において回動自在に固定したとしてもよい。これによれば、凸状部材に対し吹き当たる風の向きが、場所により或いは時間により大きくばらつく状況であっても、凸状部材が前記凸状部位頂点を基点に回動し、常に安定する位置すなわち凸状部位を風に正対させた位置で姿勢を維持することができる。従って、凸状部材と補助部材の周縁間における風の流れも安定し、風が前記後端の空気を引き寄せつつ流れ去る働きも高レベルで安定して、前記後端にて確実に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材と補助部材の間を通過する風の拡散がより確実なものとなり、開口枠の後背領域での風速も効率良く弱まることになる。また、風制御装置が凸状部材や補助部材を介して受ける風圧を風向きによらず効果的に抑制することにもつながり、風制御装置における構成部材のダウンサイジングや軽量化を図ることも容易となる。当然ながら、風制御装置構成のコストや手間も低減される。
【0013】
また、前記風制御装置において、前記凸状部材が、凸状をなす風への対向面と、略平面をなす後端面とを備えた棒状であるとしてもよい。これによれば、少ない部材でより効率的に広い範囲にわたる風制御を行うことができる。なお、この場合、例えば、当該棒状である少なくとも3つの凸状部材を前記開口枠において、互いに所定間隔で平行に配置するとすれば好適である。
【0014】
また、前記風制御装置において、前記凸状部材と前記補助部材の組を、前記開口枠において所定間隔で複数配置してなるとしてもよい。このような構成によれば、例えば、所定領域において必要な場所だけに凸状部材や補助部材らの組を配置したり、或いは前記組を領域全体を緻密に配置したりといった柔軟な対応が可能であり、開口枠の後背領域における風の抑制効果を柔軟かつ更に確実に図ることが可能である。つまり、簡便かつ確実に風の抑制を図る技術を提供することができる。
【0015】
また、前記風制御装置において、前記補助部材を前記凸状部材で構成したとしてもよい。このような構成によれば、風の抑制が必要な領域において無駄なく凸状部材の配置を行うことが可能であり、ひいては、開口枠の後背領域における風の抑制効果を柔軟かつ更に確実に図ることが可能である。また、風制御装置を構成する部材として凸状部材以外に補助部材を用意する必要が無くなるから、部材の導入や設置のコスト、手間も良好となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便かつ確実に風の抑制を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における風制御装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態における風制御装置の作用例を示す図である。
【図3】本実施形態における凸状部材の他の例を示す図である。
【図4】本実施形態における凸状部材の配置間隔例を示す図である。
【図5】本実施形態における計測結果を示す図である。
【図6】他の実施形態における風制御装置の構成例1を示す図である。
【図7】他の実施形態における風制御装置の構成例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の風制御装置10の構成例を示す図であり、図2は本実施形態における風制御装置の作用例を示す図である。
【0019】
図1に示す風制御装置10は、簡便かつ確実に風の抑制を図る装置である。本実施形態の風制御装置10は、風への対向面101が凸状をなす少なくとも3つの凸状部材100を所定間隔で配置して構成したものである。図1に示す例では、前記凸状部材100が、風に対し凸状をなす対向面101と、略平面をなす後端面102とを備えた棒状である場合を例示している。棒状である凸状部材100は互いに所定間隔で平行に配置されている。この場合の凸状部材100は、円柱を延長方向で半割りした形状とも言える。
【0020】
このような凸状部材100における周縁106は、該周縁106の接線が前記風の流れと平行になるよう成形されていると言える(図1中での“強風時”の状態)。また、前記凸状部材100における凸状部位頂点103から前記周縁106に至る面の断面は弧状をなしており、図1の場合は特に、前記風の流れと平行な側断面が半円弧をなしている。
【0021】
また、図示した例では、各凸状部材100の延長方向には、凸状部位頂点103において、例えば所定強度を有する軸体である回動軸104が貫通している。凸状部材100と一体となった前記回動軸104の端部は、開口枠105の凹部においてボールベアリング等の適宜な滑動手段を介して固定されている。前記開口枠105は、風に対して開口を備え、略垂直に立設される枠体を想定できる。風はこの開口を介して凸状部材100に吹き当たることとなる。
【0022】
こうした構造により、前記凸状部材100は、前記回動軸104を起点に前記開口枠105において回動自在に固定されているのである。勿論、凸状部材100の開口枠105への回動自在な固定手段は上述のボールベアリング等の滑動手段を介したものに限定せず、その他の種々の手段を採用してよい。
【0023】
なお、ここでは、凸状部材100が開口枠105に対して回動自在に固定されている例を示したが、風制御装置10に対して吹き付ける風の向きが変動しにくい状況であれば、「回動自在に」固定する必要はない。変動が少ない風に対し、前記対向面101の全面が正対する姿勢で、凸状部材100を開口枠105に固定しておけばよい。こうした固定を行った場合の凸状部材100の姿勢は図1における“強風時”の場合のものと同様になる。
【0024】
凸状部材100が開口枠105に対して回動自在に固定されている場合、無風ないし弱風が凸状部材100に吹き当たれば、図1の上段および図2左欄の実線にて示すように、凸状部材100は前記対向面101を上方に向けたまま特段の作用を生じない。一方、強風が凸状部材100に吹き当たれば、図1の下段および図2左欄の破線にて示すように、凸状部材100は前記対向面101の全面を風に対して正対するよう回動し、強風が吹いている間はその姿勢を維持する。これによれば、凸状部材100に対し吹き当たる風の向きが、場所により或いは時間により大きくばらつく状況であっても、凸状部材100が前記凸状部位頂点102(の回動軸104)を基点に回動し、常に安定する位置すなわち凸状部位を風に正対させた位置で姿勢を維持することができる。
【0025】
前記凸状部材100に吹き当たった強風は、図2右欄にて示すように、円弧状をなす表面つまり対向面101に沿って前記周縁106に至り、そのまま凸状部材後方に流れ去る。この時、各凸状部材100の周縁106における風は、凸状部材100の後端面102の周囲に存在する空気を引き寄せつつ流れ去ろうとし、前記後端面102の周辺に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材後方に流れ去ろうとしている空気のうち、前記後端面102に近いものは前記負圧によって前記後端面102に引き寄せられることになる。つまり、各凸状部材100の周縁106を通過する風は前記後端面102に向けて引き寄せられ、結果として、凸状部材間を通過する風はその流れを当初の流路から左右に拡散させ、凸状部材100の後背領域での風速は弱まることになる。
【0026】
本実施形態において、凸状部材100の後背領域にて風速弱まる状況は、例えば、風船の破裂時、それまで風船内に閉じ込められていた気体が一気に拡散するため、風として感じにくくなる状況に類似している。逆に、風船の栓のみを開くと、中で圧縮されていた気体が栓からのみ噴出するため、栓周辺では強い風を感じる。換言すると、圧縮した空気に道を与えると、その方向に噴出するが、道を与えず直ぐに開放すると、割った風船と同様に気体は拡散するだけになる。風を受けながら連続的に上記「拡散」の状態を作り出す風制御装置10の後背領域では、風圧を感じにくくなるのである。
【0027】
本願の発明者らは、実際に、本実施形態の風制御装置10に対して強風を吹き当て、風制御装置10の前面と、前記後背領域とで風圧の測定を行った。図5にその結果を示す。測定条件としては、風制御装置10の開口枠105に対して、最大風速6.7m/s、平均風速6.4m/sの強風を吹き当てる。また、この強風を発生させる送風機と開口枠105との距離は52cmであった。また、凸状部材同士の周縁106の間の間隔を、1.5mm〜24mmまで段階的に変えて、それぞれの間隔において、凸状部材後端すなわち開口枠105の背面からの距離毎の風圧を測定した。その結果、図5の表に示すように、開口枠105の前面での風速が約4.6m/sである時、後背領域における風圧は、ほとんど測定不可能なほど微弱なものとなっていた。例えば、各凸状部材100の周縁106の間隔を1.5〜3.0mmとした場合、凸状部材後端からの距離が10〜50cmのいずれにおいても風圧ゼロであった。また、各凸状部材100の周縁106の間隔が大きくなるにつれ、前記後背領域での風圧は、凸状部材後端からの距離が10〜50cmのいずれにおいても増加した。
【0028】
なお、前記凸状部材100は図1、2で示した断面が半円弧のものだけでなく、その他の形状例も想定できる。図3は本実施形態における凸状部材100の他の例を示す図である。図3にて示す例では、凸状部材100の対向面101が、半円弧より急峻な凸となったものを示す。いずれも、周縁106の付近は弧状とし、周縁106から後方に流れ去る風の流れを乱さないよう配慮を行うものの、凸状部位頂点103は先鋭化している。前記半円弧のものより、風から受ける圧力すなわち風圧を回避せずに開口枠105に直接伝達しやすくなるから、凸状部材100および開口枠105の構造や素材強度に配慮が必要となる。しかしながら、風制御装置10の後背領域における風速の低減効果は期待できる。
【0029】
図4は本実施形態における凸状部材の配置間隔例を示す図である。なお、前記風制御装置10において、前記凸状部材100の後背領域で風速が所定レベルとなる位置Aと、該凸状部材100の後端面102との間の距離Dを所定基準より小さくする場合、各凸状部材100を所定の配置間隔より狭めて配置するとすればよい。
【0030】
例えば、図4の左欄にて示すように、凸状部材100後方に流れ去ろうとしている空気のうち、前記後端面102に近いものは前記負圧によって前記後端面102に引き寄せられることになるが、各凸状部材100の配置間隔すなわち各周縁間の距離が所定より小さいと、前記後端面102に引き寄せられずに通過していく風は所定より少なくなる。従って、前記後端面102に近い風を介して前記負圧の影響が及ぶ範囲が大きくなって、前記後端面102に風が引き寄せられる影響も大きくなる。結果として、凸状部材間を通過する風がその流れを当初の流路から左右に拡散させる程度が大きくなり、前記凸状部材100の後背領域で風速が所定レベルとなる位置Aと、該凸状部材100の後端面102との間の距離Dが所定基準より小さくなる性質がある。つまり、こうした性質を利用し、凸状部材100の後背領域において、所定レベルまで風速を弱める位置を管理することとなる。
【0031】
一方、各凸状部材100の配置間隔すなわち各周縁106間の距離が所定より大きい場合、図4の右欄にて示すように、前記後端面102に引き寄せられずに通過していく風が多くなる。従って、凸状部材100後端面102に近い風を介して前記負圧の影響が及ぶ範囲が小さくなって、前記後端面102に風が引き寄せられる影響も小さくなる。結果として、凸状部材間を通過する風がその流れを当初の流路から左右に拡散させる程度が小さくなり、前記凸状部材100の後背領域で風速が所定レベルとなる位置Aと、該凸状部材100の後端面102との間の距離Dが所定基準より大きくなる性質がある。やはりこのように、凸状部材100の後背領域において、所定レベルまで風速を弱める位置を管理することも可能である。
【0032】
なお、上述した例では、開口枠105に配置する部材を凸状部材100のみとした構成を示した。一方、前記開口枠105において、1つの凸状部材100と、当該凸状部材100の周縁106から所定距離だけ離間する補助部材110とを配置して風制御装置10を構成するとしてもよい。この場合、例えば図6に示すように、前記補助部材110の側端は、開口枠105の内側面に固定されている。図6にて例示した風制御装置10は、補助部材110を開口枠105の内空にて一定間隔で固定し、その間の空間に凸状部材100を配置した構成となっている。図6では、開口枠105の内空に、凸状部材100と補助部材110との組を複数配置した例を示したが、1組だけであってもよい。その場合、開口枠自体が補助部材110となりうるから、開口枠105の上下の内側面と一定距離を隔てた位置に周縁106が来るよう、凸状部材100を配置し、開口枠105の内空を主として1体の凸状部材100のみで占める構成となる。
【0033】
前記補助部材110の周縁116と、所定距離だけ離間する位置に配置されるのが凸状部材100である。従って、補助部材110の周縁116と凸状部材100の周縁106とは所定間隔を保っていることになる。図7に例示するように、前記凸状部材100および補助部材110に吹き当たった風は、凸状部材100や補助部材110らの表面に沿って各周縁に至り、そのまま凸状部材100や補助部材110らの後方、すなわち前記開口枠105の後方に流れ去る。この時、凸状部材100と補助部材110の各周縁の間を通過する風は、凸状部材100や補助部材110の後端の空気を引き寄せつつ流れ去ろうとし、前記後端に負圧を生じさせる。その結果、開口枠後方に流れ去ろうとしている空気のうち、凸状部材100や補助部材110の後端に近いものは前記負圧によって前記後端に引き寄せられることになる。つまり、凸状部材100と補助部材110の各周縁の間を通過する風は凸状部材100や補助部材110の後端に向けて引き寄せられ、結果として、凸状部材100と補助部材110の各周縁の間を通過する風はその流れを当初の流路から左右に拡散させ、開口枠105の後背領域での風速は弱まることになる。
【0034】
また当然ながら、上述した例の如く、凸状部材100ないし補助部材110の少なくともいずれかの周縁は、該周縁の接線が前記風の流れと平行になるよう成形されているとすれば好適である。更に、前記補助部材110の形状としては、凸状部材100と同様に断面が凸状を成す部材であって、その凸状部位頂点から前記周縁116に至る面の断面が弧状をなしているとすればより好適である。この場合、補助部材110は、前記風の流れと平行な側断面が円弧状をなしていれば更に好適である。
【0035】
また、前記開口枠105の後背領域で風速が所定レベルとなる位置と、凸状部材100ないし補助部材110の後端面との間の距離を所定基準より小さくする場合、凸状部材100と補助部材110との離間距離を所定値より狭めて配置する。他方、前記位置と前記後端面との間の距離を所定基準より大きくする場合、凸状部材100と補助部材110との離間距離を所定値より広げて配置する。この点も、前記開口枠105に配置する部材を、凸状部材100のみとした上記例と同様である。
【0036】
勿論、補助部材110に挟まれた前記凸状部材100の凸状部位頂点を、前記開口枠105において回動自在に固定すれば、凸状部材100に対し吹き当たる風の向きが、場所により或いは時間により大きくばらつく状況であっても、凸状部材100が前記凸状部位頂点を基点に回動し、常に安定する位置すなわち凸状部位を風に正対させた位置で姿勢を維持することができる。従って、凸状部材100と補助部材110の周縁間における風の流れも安定し、風が前記後端の空気を引き寄せつつ流れ去る働きも高レベルで安定して、前記後端にて確実に負圧を生じさせる。その結果、凸状部材100と補助部材110の間を通過する風の拡散がより確実なものとなり、開口枠105の後背領域での風速も効率良く弱まることになる。また、風制御装置10が凸状部材100や補助部材110を介して受ける風圧を風向きによらず効果的に抑制することにもつながり、風制御装置10における構成部材のダウンサイジングや軽量化を図ることも容易となる。当然ながら、風制御装置構成のコストや手間も低減される。
【0037】
なお、本実施形態の風制御装置10を実際に適用する状況としては、例えば、建物や移動体(例:船舶、自動車、航空機など)の窓枠や開口等に設置する防風装置、空調機等の排気口における排気風速の低減装置、屋外に立設した防風柵、高層ビル周辺の所定領域にて風速を低減するビル風対策装置、などが想定できる。
【0038】
また、本願の発明者らは、本実施形態の風制御装置10に対して強風を吹き当て、風制御装置10の前面と、前記後背領域とで風速の測定を行った際に、前記後背領域における周縁間の付近において酸素濃度の高まりを示す知見を得ている。周縁間付近におけるライターの炎が、その他の通常空間のものより大きくなる現象が観察された。周縁間付近には前記後端面102のものも含め空気が収束しているから、それだけ酸素濃度も高まっているものと思量される。従って、本実施形態の風制御装置10は、強風を抑制する目的だけでなく、例えば、強風が吹きやすい環境(例:高山地帯、海上など)での酸素供給装置などとして応用することも可能である。
【0039】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0040】
こうした本実施形態によれば、簡便かつ確実に風の抑制を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
10 風制御装置
100 凸状部材
101 風への対向面
102 後端面
103 凸状部位頂点
104 回動軸
105 開口枠
106、116 周縁
110 補助部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風に対向する開口枠において、風への対向面が凸状をなす少なくとも1つの凸状部材と、当該凸状部材の周縁から所定距離だけ離間する補助部材とを配置してなることを特徴とする風制御装置。
【請求項2】
前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかの周縁は、該周縁の接線が前記風の流れと平行になるよう成形されていることを特徴とする請求項1に記載の風制御装置。
【請求項3】
前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかにおける凸状部位頂点から前記周縁に至る面の断面が弧状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の風制御装置。
【請求項4】
前記凸状部材ないし前記補助部材の少なくともいずれかは、前記風の流れと平行な側断面が円弧状をなしていることを特徴とする請求項3に記載の風制御装置。
【請求項5】
前記開口枠の後背領域で風速が所定レベルとなる位置と、該凸状部材ないし補助部材の後端面との間の距離を所定基準より小さくする場合、凸状部材と補助部材との離間距離を所定値より狭めて配置し、前記位置と前記後端面との間の距離を所定基準より大きくする場合、凸状部材と補助部材との離間距離を所定値より広げて配置してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の風制御装置。
【請求項6】
前記凸状部材の凸状部位頂点を、前記開口枠において回動自在に固定したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の風制御装置。
【請求項7】
前記凸状部材が、凸状をなす風への対向面と、略平面をなす後端面とを備えた棒状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の風制御装置。
【請求項8】
前記凸状部材と前記補助部材の組を、前記開口枠において所定間隔で複数配置してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の風制御装置。
【請求項9】
前記補助部材を前記凸状部材で構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の風制御装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215000(P2012−215000A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79927(P2011−79927)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511082850)
【出願人】(511082861)
【Fターム(参考)】