説明

風向調整装置

【課題】成形時にバリやグイチが発生しても操作ノブの操作性にバラツキが生じることはなく、操作ノブの操作時に所望の大きさの摺動抵抗が安定して得られ、良好な操作性を確保することができる風向調整装置を提供する。
【解決手段】本発明は、空気吹出口(3)の開口端部に上流側フィン(11)を回動自在に有する上流側ルーバ(10)と、その下流側に前記上流側フィン(11)と直交するように合成樹脂製の摺動操作ガイド部材(21a)とを配し、前記摺動操作ガイド部材(21a)に操作ノブ(30)を摺動可能に嵌着し、前記操作ノブ(30)を前記摺動操作ガイド部材(21a)に沿って摺動させて前記空気吹出口(3)から吹き出される空気の風向を調整する風向調整装置(1)であって、前記摺動操作ガイド部材(21a)は、前記操作ノブ(30)が摺接する摺接部と、摺接しない非摺接部とを有し、前記摺動操作ガイド部材(21a)のパーティングライン(40)は、前記非摺接部に設定されてなることに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内の換気や空調等を行うために空気吹出口から吹き出される空気の風向きを調整する風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のインストルメントパネル等には、車室内の換気や空調等を行うために空気吹出口が設けられており、この空気吹出口には、吹き出される空気の風向きを上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に調整するために風向調整装置が取り付けられている。
【0003】
この風向調整装置は、一般に、左右方向に風向きを調整可能な上流側ルーバ(縦ルーバ)と、上下方向に風向きを調整可能な下流側ルーバ(横ルーバ)とが空気吹出口の開口端部に配されている。なお、以下では、風向調整装置の構成を運転席側から見て分かり易くするために、空気吹出口の上流側を後方とし、空気吹出口の下流側を前方として説明を行う。
【0004】
前記上流側ルーバは、複数の縦フィンを左右方向に回動可能に軸支するとともに、これらの縦フィンを第1リンクバーで互いに連結して、全ての縦フィンの向きが連動するように構成されている。また、複数の縦フィンの中の1枚には、その前縁部に係合ピンが設けられている。
【0005】
また、前記下流側ルーバは、上流側ルーバの前方(下流側)に配され、複数の横フィンを上下方向に回動可能に軸支するとともに、これらの横フィンを第2リンクバーで互いに連結して、全ての横フィンの向きが連動するように構成されている。更に、複数の横フィンの中の1枚に、縦フィンの向きと横フィンの向きとを操作する操作ノブが摺動可能に嵌着されており、その操作ノブの後端部には二股のアームが後方に向けて突設され、同アームの間に縦フィンに設けた前記係合ピンを挟持している。
【0006】
このような構成を有する風向調整装置は、横フィンに嵌着した操作ノブが横フィンに沿って左右方向に摺動するように操作されることによって、操作ノブのアームで挟持している縦フィンを左右方向に回動させるとともに、この縦フィンの回動に連動してその他の縦フィンも同じ方向に回動させることができるため、空気吹出口から吹き出される空気の風向きを左右に変えることが可能である。また、前記操作ノブが上下方向に操作されることによって、その操作ノブが嵌着している横フィンを上下方向に回動させるとともに、この横フィンの回動に連動してその他の横フィンも同じ方向に回動させることができるため、空気吹出口から吹き出される空気の風向きを上下に変えることが可能である。
【0007】
この種の風向調整装置の1つとして、例えば特開2003−276428号公報(特許文献1)に開示されている風向調整装置が知られている。この特許文献1に記載されている風向調整装置は、横フィンの後面に断面三角形状のガイド溝がフィン長手方向に沿って形成されるとともに、操作ノブの内面後部には前記ガイド溝に係合可能な三角係合部が突設されており、操作ノブは、その三角係合部を横フィンのガイド溝に係合させた状態で横フィンに嵌着している。またこのとき、操作ノブは、その内部前方側にシリコンゴム等のゴム状弾性体を装着するとともに、このゴム状弾性体の後面を横フィンの前端縁に当接させた状態で横フィンに嵌着している。
【0008】
このような構成を有する前記特許文献1の風向調整装置は、操作ノブの三角係合部が横フィンのガイド溝に係合するともに、操作ノブの内面と横フィンの前端縁との間にゴム状弾性体が介在するため、操作ノブが横フィンに対してガタつかず、操作ノブを横フィンに沿って円滑に操作することができる。また、前記ゴム状弾性体は横フィンの前端縁を適度に押圧するため、操作ノブの操作時に適度な摺動抵抗が発生して良好な操作ノブの操作性が得られ、更に、操作ノブを横フィンの任意の位置で確実に停止させて、その位置を安定して維持することができる。
【特許文献1】特開2003−276428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
風向調整装置に用いられる縦フィンや横フィンは、剛性を確保するとともに、空気の流れを阻害しないようにするために、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性合成樹脂を薄肉の平板状に射出成形することによって形成されている。また、縦フィンや横フィンの射出成形においては、金型のパーティングライン(分割面)がフィンの前後端部や左右側縁部の部分に設定されている。これにより、成形装置にスライドコアを設けずに、金型構造を簡単に構成することができるため、金型を安価に製造することが可能となる。
【0010】
しかしながら、風向調整装置に用いられる横フィンの成形において、パーティングラインを上述のようにフィンの前後端部に設定した場合、横フィンの前端部や後端部には、金型の分割面に合成樹脂が入り込むことによって形成されるバリや、分割した金型の食い違いやズレに起因して形成されるグイチといった成形不良がそのパーティングラインに沿って生じてしまう。更に、射出成形においては、1回の型締めを行うごとに、分割した金型がパーティングラインで当接して磨耗等が生じることから、射出成形のショット回数が多くなるにつれて横フィンに発生するバリやグイチの大きさにバラツキが出るという不具合があった。
【0011】
このように横フィンの前端部にバリやグイチが発生してしまうと、例えば前記特許文献1のように操作ノブの内面と横フィンの前端縁との間にゴム状弾性体を介装して操作ノブ操作時の摺動抵抗を得るときに、所望の大きさの摺動抵抗を安定して得ることができない。更に、ショット回数の違いによってバリやグイチの大きさが変わることにより、操作ノブ操作時の摺動抵抗も変化してしまい、各製品毎に操作ノブの操作性にバラツキが生じるといった問題もあった。
【0012】
また一般に、成形品にバリやグイチが発生した場合には、カッターやヤスリで切削や研磨などの後加工を行うことによってバリやグイチを除去することが行われる。しかしながら、横フィンの前端部にバリやグイチが発生したときに、後加工によって横フィンの前端部からバリやグイチを除去した場合、その前端部の表面状態が後加工の加工条件等に応じて変化してしまう。このため、従来では、フィン前端部が均一な表面状態を有するように横フィンを大量に生産することは極めて難しく、結果的に、操作ノブの操作性にバラツキを生じさせるという問題が生じていた。
【0013】
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、成形時にバリやグイチが発生しても操作ノブの操作性にバラツキが生じることはなく、操作ノブの操作時に所望の大きさの摺動抵抗が安定して得られ、良好な操作性を確保することができる風向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明により提供される風向調整装置は、基本的な構成として、空気吹出口の開口端部に、少なくとも1枚の合成樹脂製の上流側フィンを回動自在に有する上流側ルーバと、前記上流側ルーバの下流側に前記上流側フィンと直交するように少なくとも1つの合成樹脂製の摺動操作ガイド部材とを配し、前記摺動操作ガイド部材に操作ノブを摺動可能に嵌着し、前記操作ノブを前記摺動操作ガイド部材に沿って摺動させることにより、前記上流側フィンの向きを変えて前記空気吹出口から吹き出される空気の風向を調整する風向調整装置であって、前記摺動操作ガイド部材は、前記操作ノブが摺接する摺接部と、摺接しないガイド部材側非摺接部とを有し、前記摺動操作ガイド部材のパーティングラインは、前記非摺接部に設定されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る風向調整装置において、前記摺動操作ガイド部材は、その下流側先端部の一部に前記摺接部を有し、前記パーティングラインは、前記摺動操作ガイド部材の下流側先端部に有する前記摺接部の外周を回るように前記摺動操作ガイド部材の表面側及び裏面側の平面部に設定されるとともに、前記摺動操作ガイド部材の前記摺接部以外の少なくとも一部の下流側先端部と、左右側縁部と、上流側先端部とに設定されていることが好ましい。
【0016】
またこの場合、前記操作ノブは、前記摺動操作ガイド部材の下流側先端部に有する前記摺接部を摺動する摺動部を有するとともに、同摺動部の摺動方向の前方側と後方側に前記摺接部に接触しない非摺動部を有して、前記摺動操作ガイド部材の表面側及び裏面側の平面部に設定された前記パーティングラインを覆い隠すように構成されていることが好ましい。
【0017】
更に、前記摺動操作ガイド部材は、前記下流側先端部の前記摺接部の両端に切欠きを有していることが好ましい。
更にまた、前記操作ノブは、その内面前方部に弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記摺動操作ガイド部材の前記摺接部に押圧した状態で摺接していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る風向調整装置は、摺動操作ガイド部材が、操作ノブが摺接する摺接部と、摺接しない非摺接部とを有するとともに、摺動操作ガイド部材のパーティングラインが、前記非摺接部に設定されている。これにより、例えば摺動操作ガイド部材として下流側ルーバが有する下流側フィンを用いた場合、下流側フィンを成形するときに、成形不良としてパーティングラインに沿ってバリやグイチが発生しても、パーティングラインが非摺接部に設定されているため操作ノブが摺接する摺接部にバリやグイチが発生することはない。このため、摺接部の表面を成形不良に起因する凹凸が存在しない平らな面状態に形成することができる。
【0019】
即ち、本発明では、下流側フィン(摺動操作ガイド部材)の摺接部にパーティングラインが設定されないため、その摺接部の表面状態が金型のショット回数の違いによって変化することはなく、また、成形後に摺接部に対して切削や研磨などの後加工を行う必要がなく、成形時の表面状態をそのまま維持することができるため、これらの後加工に起因して摺接部の表面状態にバラツキが生じることもない。
【0020】
従って、本発明の風向調整装置は、例え古くなった金型を用いて下流側フィンの成形が行われて、下流側フィンにバリやグイチが生じる場合でも、摺接部の表面状態はバリやグイチの影響を受けることはない。このため、摺動操作ガイド部材となる下流側フィンに嵌着した操作ノブは、その操作性にバラツキが生じることはなく、操作ノブの操作時に所望の大きさの摺動抵抗が確実に得られ、良好な操作性を安定して確保することができる。なお、本発明では、下流側ルーバが有する下流側フィンを摺動操作ガイド部材として用いることが好ましいが、その他に、例えば上流側ルーバの下流に柱状のガイドピン等を設けておき、このガイドピン等を摺動操作ガイド部材として用いることも可能である。
【0021】
また、本発明の風向調整装置において、下流側フィン(摺動操作ガイド部材)は、その下流側先端部の一部に前記摺接部を有し、前記操作ノブは、下流側フィンの摺接部を摺動する摺動部を有するとともに、この摺動部の摺動方向の前方側と後方側に、前記摺動操作ガイド部材に接触しない非摺動部を有している。これにより、風向調整装置は、下流側フィンの表面側及び裏面側の平面部に設定されたパーティングラインを操作ノブで容易に覆い隠して外部から見えなくすることができるため、風向調整装置の外観品質を向上させることができる。
【0022】
更に、前記下流側フィンは、下流側先端部の摺接部の両端に切欠きを有している。これにより、下流側フィンの下流側先端部では摺接部とそれ以外の領域とが互いに離間する。従って、例えば摺接部以外の下流側先端部にバリやグイチが発生し、そのバリやグイチを除去するために切削や研磨などの後加工を行う場合でも、摺接部を後加工中に誤って傷付けることを防ぐことができる。このため、摺接部は成形時の表面状態を安定して維持できるとともに、摺接部以外のバリやグイチを除去する作業を効率的に行って、下流側フィンの外観や触感を向上させることができる。
【0023】
更にまた、本発明の風向調整装置では、前記操作ノブがその内面前方部に弾性部材を備え、この弾性部材は、下流側フィンの摺接部に押圧した状態で摺接している。これにより、下流側フィンに嵌着した操作ノブにガタツキが生じることを防止するとともに、操作ノブの操作時に所望の摺動抵抗が安定して得られる。このため、操作ノブの操作性を安定させることができ、また、操作した操作ノブを横フィンの任意の位置で確実に停止させて、その位置を安定して維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る風向調整装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の風向調整装置の縦断面図であり、図2は、同風向調整装置の横断面図である。また、図3は、同風向調整装置の操作ノブ及び下流側フィンの分解斜視図である。
【0025】
本実施形態の風向調整装置1は、自動車のインストルメントパネル2に設けられた角筒状の空気吹出口3の開口端部に配されている。また、空気吹出口3の上流側には、ダクトを介して空調装置が接続されており(ダクトも空調装置も図示せず)、その空調装置から供給された冷気や暖気などが、空気吹出口3から本実施形態の風向調整装置1を介して車室内に吹き出すように構成されている。なお、本実施形態では、空気の流れの上流側を後方とし、下流側を前方として説明を行う。
【0026】
前記風向調整装置1は、空気の風向を左右方向に調整する上流側ルーバ10と、この上流側ルーバ10の下流側に配されて空気の風向を上下方向に調整する下流側ルーバ20と、上流側ルーバ10及び下流側ルーバ20を操作する操作ノブ30とを備えている。また、上流側ルーバ10と下流側ルーバ20とは、剛性を確保するために、ガラスを混入したポリエチレンテレフタレートを射出成形することによって形成されている。
【0027】
前記上流側ルーバ10は、上下方向に沿って配した4枚の縦フィン11を平行に有している。各縦フィン11は、図1に示したように、上下両端に突設した係止突部12を介して空気吹出口3に左右方向に回動可能に軸支されている。また、4枚の縦フィン11は、第1リンクバー13で互いに連結され、全ての縦フィン11の向きが連動するように構成されている。更に、これらの縦フィン11の中の1枚の縦フィン11aには、図1に示したように穴部14が形成され、その前縁部には係合ピン15が設けられている。
【0028】
前記下流側ルーバ20は、左右方向に沿って配した4枚の横フィン21を平行に有している。各横フィン21は、図2に示したように、左右両端に突設した係止突部22が左右のスペーサ24に上下方向に回動可能に軸支されており、左右のスペーサ24は空気吹出口3の左右側壁に嵌着されている。また、4枚の横フィン21は、第2リンクバー23で互いに連結され、全ての横フィン21の向きが連動するように構成されている。
【0029】
これらの横フィン21の中の1枚の横フィン21aは摺動操作ガイド部材として機能し、図2及び図3に示したように、弾性部材31を内部に装着した操作ノブ30が摺動可能に嵌着されている。この操作ノブ30を嵌着する横フィン21aは、その後端面に左右方向に沿って突設された係合突条25を有するとともに、その下面に左右方向に沿って突設されたガイド突条26を有している(図4及び図5を参照)。このガイド突条26の左右端部は直角に屈曲した図示しない停止部が形成されており、操作ノブ30の左右方向の操作範囲を設定している。
【0030】
また、横フィン21aの前端部には、操作ノブ30をその操作範囲で左右方向に摺動させたときに、操作ノブ30に装着した弾性部材31が横フィン21aの前端部で摺接する摺接部27が設定されており、この摺接部27の両脇には、横フィン21aの前端部から切り込まれた切欠き28が形成されている。なお、横フィン21aの前端部に形成された切欠き28は、横フィン21aに嵌着した操作ノブ30で隠蔽され、外部からは見えなくなる(図2(a)〜(c)を参照)。
【0031】
更に、操作ノブ30の上面と下面には、左右の前記切欠き28に挟まれた範囲に隆起部29a,29bが設けられており、これらの隆起部29a,29bは、横フィン21aに操作ノブ30を嵌着したときに、操作ノブ30の内面と摺接するように形成されている。これにより、操作ノブ30が横フィン21aに対してガタつくことを防ぐことができる。
【0032】
即ち、本実施形態において、横フィン21aは、図1に示したように、摺接部27で操作ノブ30と弾性部材31を介して摺接する以外に、横フィン21aの後端部に形成した係合突条25の基端部と、ガイド突条26の前面と、隆起部29a,29bとにおいても操作ノブ30自体と直接摺接し、これらの部位も摺接部を形成している。
【0033】
このような横フィン21aに嵌着する操作ノブ30は、横フィン21aが挿通する内部空間32を有するノブ本体33と、ノブ本体33の内面前方側に装着される弾性部材31と、ノブ本体33の前部から嵌合して装飾効果を高めるフィニッシャ34と、ノブ本体33の後端部から後方に向けて突設した二股のアーム35とを有している。
【0034】
また、操作ノブ30の内部空間32の後面側には、横フィン21aの後端面に突設した係合突条25が嵌入する係合凹部36が設けられている。この係合凹部36の深さは、係合突条25の高さよりも大きく設定されており、係合突条25の突端が操作ノブ30に摺接しないように形成されている。更に、この弾性部材31の左右(摺動方向の前方側と後方側)には、横フィン21aの前端部に有する摺接部27と接触しない非摺動部が設けられている。
【0035】
前記弾性部材31はシリコンゴムで構成されており、この弾性部材31をノブ本体33の内面前端部に設けられた突起33aに嵌着するとともに、弾性部材31の後面を横フィン21aの前端縁に当接させて横フィン21aの前端縁を適度に押圧する。これにより、操作ノブ30を嵌着したときに、操作ノブ30が横フィン21aに対してガタつくことを更に防いで、操作ノブ30の操作を円滑に行うことができるようにしている。
【0036】
それとともに、操作ノブ30の操作時には適度な摺動抵抗が発生するため、良好な操作性が得られるとともに、操作ノブ30を横フィン21aの任意の位置で確実に停止させて、その位置を安定して維持することができる。この場合、操作ノブ30の摺動抵抗は、弾性部材31の弾性力を変えることによって、容易に調整することができる。なお、本実施形態において、弾性部材31はシリコンゴムで構成されているが、本発明はこれに限定されず、弾性部材31としてコイルスプリングや板バネなどを利用することができる。
【0037】
前記アーム35は、前方側から見え難いようにするために下方に傾斜して突設されており、2つのアーム35の間に縦フィン11aに設けた係合ピン15を挟持している。これにより、弾性部材31を左右方向に操作することによって、図2(a)〜(c)に示すように、アーム35で挟持している縦フィン11を左右に回動させるとともに、第1リンクバー13で連結されたその他の縦フィン11も連動して同じ方向に回動させることができる。
【0038】
このような本実施形態の風向調整装置1において、操作ノブ30が嵌着する横フィン21aは、射出成形を行うときの金型のパーティングライン40が摺接部27を含む全ての摺接部以外の部分に設定されている。即ち、横フィン21aのパーティングライン40は、図3に示したように、横フィン21aの後端縁と、左右側縁と、摺接部27以外の前端縁と、フィン表面側及びフィン裏面側の平面部とに設定されており、特に、フィン表面側及びフィン裏面側の平面部では摺接部27を迂回するようにパーティングライン40が設定されている。
【0039】
この場合、横フィン21aの射出成形を行う成形装置の金型構造は、図4及び図5に断面図で示したように、横フィン21aの上面側に配される第1分割型41と、下面側に配される第2分割型42と、前端縁側の左右の切欠き28に挟まれた部分に配される第3分割型43とにより形成されており、その金型構造を簡単に構成することができる。
【0040】
このような3つの分割型41〜43を用いて射出成形された横フィン21aは、パーティングライン40が全ての摺接部以外の非摺接部に設定されるため、横フィン21aの成形時に摺接部27内に成形不良となるバリやグイチが発生することはなく、摺接部27の表面を凹凸がない平らな面状態に形成することができる。特に本実施形態では、射出成形を行う際に、第3分割型43のキャビティ面を鏡面に仕上げてから横フィン21aの成形を行うことにより、摺接部27の表面を鏡面状態に形成することができる。
【0041】
このため、本実施形態における横フィン21aは、分割型41〜43の成形ショット回数の違いによって摺接部27の表面状態が変化することはない。また、摺接部27に対しては成形後に切削や研磨などの後加工を行う必要がないため、射出成形によって得られた摺接部27の表面状態が変化することもない。従って、本実施形態の風向調整装置1は、分割型41〜43が古くなって横フィン21aのパーティングライン40に沿ってバリやグイチが発生したとしても、摺接部27は常に安定した表面状態を確保することができる。
【0042】
これにより、この摺接部27に弾性部材31を当接させて嵌着した操作ノブ30は、例えば図2(a)〜(c)に示したように左右に操作して上流側ルーバの縦フィン11の向きを変える際に、所望の大きさの摺動抵抗が確実に得られるため、良好な操作性を安定して確保することができ、製品毎に操作ノブ30の操作性にバラツキが生じることはない。
【0043】
なお、横フィン21aのパーティングライン40に沿ってバリやグイチが発生した場合、これらの成形不良はカッター等で切削したり、ヤスリ等で研磨することによって容易に除去して仕上げることができ、これにより、横フィン21aの外観や触感を良好にして、風向調整装置1の品質を向上させることができる。
【0044】
またこの場合、横フィン21aの摺接部27の両脇には前述のように切欠き28が形成されていて、摺接部27の前端縁と摺接部27以外の前端縁とが互いに離間しているため、後加工時に摺接部27を誤ってカッターやヤスリ等で傷付けることを効果的に防ぐことができる。従って、本実施形態では、摺接部27の良好な表面状態をより確実に確保することができるとともに、後加工の作業性を向上させることができる。
【0045】
更に、操作ノブ30の内面後部側には、前述のように係合凹部36が設けられており、この係合凹部36の深さは、係合突条25の高さよりも大きく設定されている。これにより、例えばパーティングライン40に沿ってバリやグイチが横フィン21aの係合突条25の突端部に生じても、そのバリやグイチを除去すれば、係合突条25の突端部が操作ノブ30と接触することはないので、操作ノブ30の操作性に影響を与えることはない。
【0046】
その上、本実施形態では、操作ノブ30が、弾性部材31の左右に摺接部27と接触しない非摺動部を有しているため、横フィン21aの表面側及び裏面側の平面部に設定されたパーティングライン40を容易に覆い隠して外部から見えなくすることができ、風向調整装置1の外観品質を向上させることができる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、風向調整装置に配設される縦フィンや横フィンの数や材質、また、操作ノブが嵌着される位置などは特に限定されず、任意に変更することが可能である。
【0048】
更に、前記実施形態の風向調整装置1において、下流側ルーバ20の横フィン21は上下に回動可能に配されているが、本発明は、下流側ルーバの横フィンが回動しない風向調整装置にも同様に適用することが可能であり、更には、上流側ルーバに横フィンを軸支するとともに下流側ルーバに縦フィンを軸支した風向調整装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の風向調整装置の縦断面図である。
【図2】同風向調整装置の横断面図である。
【図3】同風向調整装置の操作ノブ及び下流側フィンの分解斜視図である。
【図4】図3に示したIV−IV線の線断面図である。
【図5】図3に示したV−V線の線断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 風向調整装置
2 インストルメントパネル
3 空気吹出口
10 上流側ルーバ
11(11a) 縦フィン
12 係止突部
13 第1リンクバー
14 穴部
15 係合ピン
20 下流側ルーバ
21,21a 横フィン
22 係止突部
23 第2リンクバー
24 スペーサ
25 係合突条
26 ガイド突条
27 摺接部
28 切欠き
29a,29b 隆起部
30 操作ノブ
31 弾性部材
32 内部空間
33 ノブ本体
33a 突起
34 フィニッシャ
35 アーム
36 係合凹部
40 パーティングライン
41 第1分割型
42 第2分割型
43 第3分割型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吹出口(3)の開口端部に、少なくとも1枚の合成樹脂製の上流側フィン(11)を回動自在に有する上流側ルーバ(10)と、前記上流側ルーバ(10)の下流側に前記上流側フィン(11)と直交するように少なくとも1つの合成樹脂製の摺動操作ガイド部材(21a)とを配し、前記摺動操作ガイド部材(21a)に操作ノブ(30)を摺動可能に嵌着し、前記操作ノブ(30)を前記摺動操作ガイド部材(21a)に沿って摺動させることにより、前記上流側フィン(11)の向きを変えて前記空気吹出口(3)から吹き出される空気の風向を調整する風向調整装置(1)であって、
前記摺動操作ガイド部材(21a)は、前記操作ノブ(30)が摺接する摺接部と、摺接しない非摺接部とを有し、
前記摺動操作ガイド部材(21a)のパーティングライン(40)は、前記非摺接部に設定されてなる、
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
前記摺動操作ガイド部材(21a)は、その下流側先端部の一部に前記摺接部(27)を有し、
前記パーティングライン(40)は、前記摺動操作ガイド部材(21a)の下流側先端部に有する前記摺接部(27)の外周を回るように前記摺動操作ガイド部材(21a)の表面側及び裏面側の平面部に設定されるとともに、前記摺動操作ガイド部材(21a)の前記摺接部(27)以外の少なくとも一部の下流側先端部と、左右側縁部と、上流側先端部とに設定されてなる、
請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記操作ノブ(30)は、前記摺動操作ガイド部材(21a) の下流側先端部に有する前記摺接部(27)を摺動する摺動部を有するとともに、同摺動部の摺動方向の前方側と後方側に前記摺接部(27)に接触しない非摺動部を有して、前記摺動操作ガイド部材(21a)の表面側及び裏面側の平面部に設定された前記パーティングライン(40)を覆い隠すように構成されてなる請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
前記摺動操作ガイド部材(21a)は、前記下流側先端部の前記摺接部(27)の両端に切欠き(28)を有してなる請求項2又は3記載の風向調整装置。
【請求項5】
前記操作ノブ(30)は、その内面前方部に弾性部材(31)を備え、
前記弾性部材(31)は、前記摺動操作ガイド部材(21a)の前記摺接部(27)に押圧した状態で摺接してなる、
請求項1〜4のいずれかに記載の風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−195133(P2008−195133A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30332(P2007−30332)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】