説明

飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁

【課題】道路工事現場において、簡単な構成で効果的に飛散物の飛散を防止し、且つ軽量で移動することが容易な飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁を提供することを目的とする。
【解決手段】台座17と支柱18と第一固定板19と第二固定板20とからなり、第一固定板19は支柱18に設けられた溝部により保持され、第二固定板20は支柱18の上部に設けられた傾斜面と係止用溝部とから成る第二固定板係止部によって所定の角度だけ傾けて設置され、台座17には水が溜められるように構成した。第一固定板19と第二固定板20は、枠部を有する網とした。また、台座17には他の台座と連結できるように連結部材22と連結部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁に関するものである。更に詳述すれば、本願発明は、道路工事のはつり作業においてコンクリート片やアスファルト片などが飛散する場合があるが、その飛散物を遮蔽し、特定の範囲から外へ飛散しないようにする飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車で路面を走行しているとき、路面に凹凸が生じている場合は乗り心地が悪いものである。また、生じた凹凸をそのまま放っておくと、この凹凸によって事故が発生しかねない。それ故、路面に生じた凹凸は直ぐさま補修される。生じた凹凸が小さな場合には、局所的にそこだけ補修すれば良いが、路面全体に亘って凹凸が生じている場合には、路面全体を改修する必要がある。
【0003】
路面を全面的に改修する場合には、一旦古い路面を取り崩さなければならない。路面はコンクリート又はアスファルトで構成されている場合が多く、この場合にコンクリート又はアスファルトのはつり(ハツリ、斫り)作業が必須となる。
【0004】
作業員は、はつり作業を行う場合に、はつり作業によってはつりしたコンクリート又はアスファルト片が、飛散して自分の目又は顔面、体などに当たって損傷を受けないように十分な保護具を装着して作業を行うようにしている。
【0005】
更に、周囲に飛散して事故が発生しないように様々の対策が施される。図12は、工事現場などで一般に使用される保護フェンスである。この保護フェンス30は、支柱33に鋼網31と鋼板32が取り付けられてあり、この保護フェンス30を立てて置くための支持部材34が設けられている。この支持部材34に土のう35を置いて使用する。土のう35は、例えば強風で防護フェンス31が倒壊する心配がある場合には、必要に応じて複数個用いれば良い。また、土のう35の替りに適当な重し、例えばコンクリート片を用いることも可能である。
【0006】
この防護フェンス30で、はつり作業を行っている場所を中心に三方或いは四方を囲めば、飛散物が飛散するのをある程度防ぐことができる。現場でのはつり作業は、一カ所のはつり作業が終了したら、場所を移して次のはつり作業を行うという広範囲に亘る作業である。通常、作業場所の移動と共に、前述の防護フェンス30を移して行くこととなる。
【0007】
この防護フェンス30は、壁面寸法はある程度大きいものの、一面であるために風があると風圧に影響されて倒れやすいため、支持部材34に土のう35を載置して安定を図っているが、使用勝手が非常に悪い。然も、はつり作業の場所の移動とともに、防護フェンス30を移動させることは非常に面倒であり、はつり作業全体の作業効率の低下を招いていた。
【0008】
また、防護フェンス30の高さがそれ程高くない場合には、はつり作業で飛散したコンクリート片が防護フェンス30を容易に超えてしまい、災害ポテンシャルが高くなっていた。これを防ぐためには、防護フェンス30の高さを高くすれば良いが、前述の倒壊の危険性が急増し、また重量が増すために移動させることが益々困難であるという新たな問題を招へいしていた。
【0009】
図13は、特許文献1に開示されている飛散防止用フェンスである。飛散防止用フェンス36は、防護部の上方を鋼網、下方を鋼板とし、柱を鋼製パイプとする3枚の壁部材37を観音開き可能に連接した本体と、壁部材の柱を嵌合する鋼製パイプの柱受けを壁部材の柱に対応する箇所に上方に向けて備え、重し部材38を拘束する枠部を形成した壁部材の支持部材39と、支持部材39の枠部に嵌合して拘束される形状の重し部材38とからなることを特徴とする。この飛散防止用フェンス36は組み立て式になっており、本体は蝶番40により折り畳めるように構成されている。
【0010】
特許文献1の飛散防止用フェンスは、上述のように構成して成るので、以下に示す効果を有する。まず、本体と支持部材と重し部材とが別々に形成されているので、運搬、収納が効率的である。特に、大きな防護部を有する本体であっても、壁部材を観音開き可能に連接してあるので、折り畳むことができ、その利便性を飛躍的に良くしている。また、本体の骨組を鋼管とし、支持部材の柱受けを鋼管としたので、柱と柱受けを嵌合するだけで組み立てられるので能率的に設置できる。さらに、重し部材が部材の一つとなっているので、これまでのように支持部材に設置する重しをありあわせの重量物で代替したり、載置し忘れたりすることはない。更に、組み立てられたフェンスは、観音開きにした両側の壁部材と支持部材とが接続されて、支持部材の枠部内に重し部材が載置されて枠部により移動を拘束されているので、ある程度の強風下でも自立安定しており、これまでのように風で飛んだり、倒れたりしないから安全である。また、防護部の上方は鋼網であり、風圧の影響は少なく、下方は鋼板であるからガス溶接等による火粉も防護できる。
【0011】
然しながら、特許文献1の飛散防止用フェンスも前述の防護フェンスと同様な問題を抱えている。即ち、飛散防止用フェンス36の高さがそれ程高くない場合には、はつり作業で飛散したコンクリート片が飛散防止用フェンス36超えてしまい、災害ポテンシャルが高くなっていた。これを防ぐためには、飛散防止用フェンス36の高さを高くすれば良いが、前述の防護フェンスと同様に、倒壊の危険性が急増し、また重量が増すために移動させることが困難である。
【0012】
道路工事におけるはつり作業では、通常直径3〜5cmのコンクリート片が路面に対して60度の角度で飛散するものが多い。飛散物は小さなものでは5mm程度のものもある。はつり作業は、保護フェンス或いは飛散防止用フェンスから約1m離れて行うものとすると、保護フェンス或いは飛散防止用フェンスの高さは約1.7mの高さが必要となり、かなり大型となってしまう。また、フェンスの網目が粗いと、直径の小さな飛散物は網目を通過してしまい、保護或いは飛散防止の役目を果たさず危険である。
【0013】
更に、上記の保護フェンス30及び特許文献1の飛散防止用フェンス36では、それらの下部に鋼板が設けられているため、はつり作業者は道路の一部分が見えないこととなる。鋼板を用いることで、より確実に飛散物を防止できるが、重量が重くなることに加え、安全性を十分に確保できないと言う問題も存在していた。
【特許文献1】特開平8−74422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明は、従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で効果的に飛散物の飛散を防止し、且つ軽量で移動することが容易な飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の飛散物遮蔽板は、第一固定板と、当該第一固定板の上部に設置される第二固定板と、前記第一固定板を固定する台座とから成ることを特徴とする。前記第一固定板は支柱に設けられた溝部によって保持され、前記第二固定板は前記支柱の上部に設けられた傾斜面と係止溝部によって傾斜して保持されるようにしても良い。前記支柱は前記台座に嵌合して固定できるように、前記台座に支柱嵌合用溝部を設けても良い。前記第一固定板及び/又は前記第二固定板は、枠部を有する網であることが望ましい。
【0016】
又は、前記第一固定板と前記第二固定板とが互いに嵌合して固定されるように、前記第一固定板には嵌合部又は突起部が設けられ、前記第二固定板にはそれに応じて突起部又は嵌合部が設けられていても良い。前記第二固定板は、特定の曲率を有する屈曲板であっても良い。前記台座には前記第一固定板を固定するための固定用溝部が設けられていても良い。前記屈曲板及び/又は前記第一固定板は、プラスチック材料で構成され、前記屈曲板及び/又は前記第一固定板のプラスチック材料は、透明であることが望ましい。
【0017】
前記固定用溝部と前記第一固定板の間に緩衝材を挿入することが好ましく、前記緩衝材は、ゴム板であっても良い。更に、前記第一固定板は、前記台座の前記固定用溝部に挿入された後にボルトで固定しても良い。
【0018】
前記台座は、水が溜められるように又は重し材が挿入できるように構成して成ることを特徴とする。前記台座には、他の台座と連結するための連結部と連結部材を設けても良い。また、前記台座には、持ち運び可能なように取っ手を設けても良い。更に、前記台座は、プラスチック材料で構成しても良い。
【0019】
本願発明の飛散物遮蔽壁は、請求項1乃至16の何れか一に記載の飛散物遮蔽板を、複数台横に連結して成ることを特徴とする。前記飛散物遮蔽壁を構成する両端の飛散物遮蔽板の側面に、プラスチック製シートを張伸しても良い。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁は、簡単な構成で効果的に飛散物の飛散を防止し、且つ軽量で移動することが容易である。従って、構成が簡単であるため、製造コストを低く抑えることができる。また、軽量で移動させることが容易なため、はつり作業の作業効率を上げることができる。
【0021】
なお、本願発明の飛散物遮蔽板単体では、家庭内或いは工場内で簡単な工作物を製作するときに使用することも可能である。これによって、工作物を製作しているときに飛散物を遮蔽することが出来る上に、誤って製作している場所に人などが入ることを防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。なお、本願発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(第一の実施の形態)
図1は、本願発明の第一の実施の形態に係る飛散物遮蔽板の斜視図である。飛散物遮蔽板1は、台座2と第一固定板3と屈曲板4とから成る。台座2に第一固定板3が挿入され、固定ボルト8で固定される。第一固定板3の上端には屈曲板4が嵌合される。台座2には、後述するように、水を溜める水タンクが収容されており、その水タンクに水を注入するための、水タンクキャップ6を備える。また、他の台座と連結するための連結部7、連結部材9を備える。以下、それぞれの構成部品について説明する。
【0024】
図2は、図1の台座2の斜視図であり、一部切り欠いて内部の様子を示している。台座2の上端には、第一固定板3を挿入するための固定用溝部10が設けられている。第一固定板3の断面形状に合わせて溝が切られている。第一固定板3が通常の平板である場合は、固定用溝部10の形状は凹形状となる。
【0025】
固定用溝部10には緩衝材5、ここではゴム板が挿入されている。このゴム板を挟んで第一固定板3が当該固定用溝部10で固定されることとなるが、ゴム板があることで、第一固定板3に飛散物が当たって横方向の応力を受けても、その応力はゴム板により吸収される。その結果、飛散物遮蔽板1が倒壊することを防ぐことに寄与することとなる。なお、ゴム板の替りにその他の緩衝材を用いることも可能である。
【0026】
第一固定板3を固定用溝部10にゴム板を介して挿入した後、必要に応じて固定ボルト8で、当該第一固定板3を固定用溝部10に確実に固定しても良い。使用する第一固定板3の大きさや、はつりの作業環境によっては、固定ボルト8で固定する必要がない場合もあるが、第一固定板3及びこれに嵌合する屈曲板4が大きい場合や、それらが風圧を受ける場合は、第一固定板3が固定用溝部10から外れる恐れがある。そのような場合には、固定ボルト8で確実に固定しておくことが大切である。但し、固定ボルト8が緩衝材を貫通して第一固定板3を固定するようにすると、第一固定板3に加わる横方向の応力を吸収できなくなる。従って、はつり作業を行う環境に応じて、第一固定板3を緩衝材を介して固定するか、又は緩衝材を貫通して直接に第一固定板3を固定するかを決定することが大切である。
【0027】
台座2の内部には水を溜める水タンク11が具備されている。水タンクキャップ6を外して水を入れることにより当該台座2の重量が増して、重し部材としての役割も発揮する。入れる水の量は、工事現場で使用する第一固定板3、屈曲板4の大きさや重量、また工事現場の環境、特に受ける風力などを考慮に入れて決めることができる。なお、飛散物遮蔽板1を移動するときには、水タンク11から水を抜いて移動することが可能なように、水抜き栓(図示してはいない)が具備されている。
【0028】
また、台座2には、他の台座と横に並べて連結できるように、連結部7と連結部材9が設けられている。連結部7は、連結部材9がちょうど嵌合できる構造になっており、一旦連結すると容易には外れないように構成されている。連結解除ボタン(図示してはいない)を押すことにより取り外すことが可能なように構成しても良い。
【0029】
台座2の材質は、強化プラスチック製が望ましい。コストを低く抑えることが可能であるし、軽量にできるからである。加えて耐久性があるからである。台座2の底面には危険防止のためにローラーやキャスターは取り付けない方が望ましい。また、路面との滑りをなくすために、底面は粗面にしておくことも良い。また、持ち運びし易くするため取っ手を設けても良い。図2には取っ手は示していない。
【0030】
第一固定板3は、プラスチック製の透明な板で構成されている。厚さ、大きさなどは、はつり作業に応じて適宜選択することができる。即ち、はつり作業においてそれ程飛散物が広範囲に発生しないのであれば、小さめの第一固定板を用いることができる。飛散物が広範囲に発生する場合は大きめのものを用いることができる。厚さは、飛散物が広範囲に発生し、飛散する距離が長いと想定される場合には、飛散物の持つ運動エネルギーが大きいと推定でき、薄い第一固定板では突き破ってしまう恐れがあるので、厚めの第一固定板を使用する必要がある。
【0031】
屈曲板4は、特定の曲率を持つ略1/4円弧であって透明のプラスチック板で構成した。曲率は、はつり作業にて発生する飛散物の飛散の態様により決定することができる。屈曲板4の持つ効果は後述する図5で詳しく説明する。図1の屈曲板4にも飛散物が当たるので、大きさや厚さに関して、上記第一固定板3で述べたことが同様に、この屈曲板4にも当てはまる。
【0032】
第一固定板3と屈曲板4は透明な強化プラスチック材料で構成したので、はつり作業者は周囲の状況を確認しながら作業を行うことが可能である。例えば、はつり作業している道路の反対側に、人の通行や自動車の走行を容易に認めることができ、その場合に、はつり作業の手を緩めることが可能である。また、第一固定板3も透明にすることで、従来の保護フェンスなどでは隠れて見えなかった道路の部分まで見えるため、より安全に作業することができることとなる。
【0033】
図3は、屈曲板4と第一固定板3との接合の様子を示す説明図である。第一固定板3には嵌合部13が設けられており、屈曲板4には突起部12が設けられている。上記嵌合部13に上記突起部12がちょうど嵌合するように構成されている。一旦嵌合すると簡単には外れないように寸法が調節されている。突起部12の突起の高さは、用いる屈曲板4の大きさ、重量などを考慮して適宜決めることができる。
【0034】
本願発明の飛散物遮蔽板1は、台座2を所定の場所に設置し、水タンク11に水を入れ、固定溝部10に緩衝材5を挟んで第一固定板3を挿入し、第一固定板3を固定ボルト8で固定溝部10に固定し、第一固定板3の上端に屈曲板4を嵌合して成る。図4は、そのようにして組み立てた飛散物遮蔽板を横に4台結合して構成した飛散物遮蔽壁14である。飛散物遮蔽壁14は、はつり作業が済んだら、次のはつり作業を行う場所まで移動可能な重量である。移動の際には台座2の水タンク11から水を抜いて行う。
【0035】
飛散物遮蔽壁14の両端の飛散物遮蔽板の側面には、プラスチック製シート15が張伸してある。これにより、はつり作業で飛散した飛散物が、飛散物遮蔽壁14の側面から飛散することを防ぐことができる。
【0036】
図5は、本願発明の飛散物遮蔽壁14の効果を示す説明図である。道路の左側で、はつり作業を行い、道路の右側を人或いは自動車が通行するものとする。道路の右側まで、はつり作業で発生した飛散物が飛散しないように道路の中央に本願発明の飛散物遮蔽壁14が設置されている。
【0037】
はつり作業で、コンクリート片などに飛散する力が印加されると、コンクリート片は飛散する。飛散物遮蔽板の屈曲板4が仮に真直ぐの場合(a)には、図示したように、飛散物が飛散物遮蔽壁14を超えて道路の右側に飛散するが、屈曲板4が特定の曲率を有している場合(b)には、飛散物が屈曲板4に当たって地面に落ち、道路の右側には飛散しない。このように、従来の保護フェンスなどに比べて、効果的に飛散物を遮蔽することが可能である。なお、この事例でも解かるように、固定板3の高さと屈曲板4の曲率や大きさは、はつり作業に適応したものを選ぶことが重要である。
【0038】
但し、第一固定板3の高さを高くし、屈曲板として曲げ半径の大きな(曲率の小さな)1/4円弧を用いた場合(c)、飛散物を遮蔽する効率は高くなるが、屈曲板4の自重で飛散物遮蔽壁14が倒壊したり、第一固定板3が台座2から外れる危険があるので、最適なサイズのものを選択することが必要である。
【0039】
(第二の実施の形態)
図6は、本願発明の第二の実施の形態に係る飛散物遮蔽板の斜視図である。飛散物遮蔽板16は、台座17と支柱18と第一固定板19と第二固定板20とから成る。第一固定板19と第二固定板20は、後述するように枠部を有する網であって、支柱18により保持固定されている。以下、それぞれの構成部品について説明する。
【0040】
図7は、図6の台座17の斜視図である。台座17の上面の左右の両端部には、第一固定板19及び第二固定板20を保持又は収納するための支柱18が、嵌合して確実に固定されるように、支柱嵌合用溝部17aが形成されている。支柱嵌合用溝部17aは支柱18の断面形状に合わせて溝が形成されている。台座17には、水を溜めることができるように構成されており、水を注入するための、キャップ21を備える。別途座台17の中に水タンクを具備しても良い。
【0041】
キャップ21を外して水を入れることにより当該台座17の重量が増して、重し部材としての役割を発揮する。入れる水の量は、工事現場で使用する第一固定板19及び第二固定板20の大きさや重量、また工事現場の環境、特に受ける風力などを考慮に入れて決めることができる。なお、飛散物遮蔽板16を移動するときには、台座17から水を抜いて移動することが可能なように、水抜き栓(図示してはいない)が具備されている。
【0042】
また、台座17には他の台座と横に並べて連結できるように、連結部23と連結部材22が設けられている。連結部23は、連結部材22がちょうど嵌合できる構造になっており、一旦連結すると容易には外れないように構成されている。連結解除ボタン(図示してはいない)を押すことにより取り外すことが可能なように構成しても良い。
【0043】
台座17の材質は、強化プラスチック製が望ましい。コストを低く抑えることが可能であるし、軽量にできるからである。また、耐久性の点でも有利である。台座17の底面には危険防止のためにローラーやキャスターは取り付けない方が望ましい。また、路面との滑りをなくすために、底面は粗面にしておくことも良い。また、持ち運びし易くするため取っ手を設けても良い。図7には取っ手は示していない。
【0044】
図8は、支柱18の斜視図(a)と要部拡大斜視図(b)である。支柱18には第一固定板19を保持するための溝部18aと第二固定板20を運搬時に収納するための第二固定板収納用溝部18bが形成されている。支柱18の上部には、第二固定板20を傾斜して保持するための傾斜面18eと係止用溝部18dが設けられて、第二固定板係止部18cを構成している。傾斜面18eの直線延長上に係止用溝部18dが形成されており、第二固定板20はこの傾斜面18eと係止用溝部18dにより傾斜して保持される。傾斜面18eの垂線となす角度θは、第二固定板20が傾けられる角度に相当する。本実施の形態では約60度に設定しているが、はつり作業の内容に応じて種々の角度を設定しても良い。なお、支柱18の材料は、アルミニウム製、プラスチック製、木製の何れでも構わないが、軽量と耐久性の点から強化プラスチック材料が望ましい。
【0045】
図9は、第一固定板(a)及び第二固定板(b)の平面図である。第一固定板19及び第二固定板20は、枠部19a、20aを有する網19b、20bである。この枠部と網は射出成形により一体に構成されたものである。材料はプラスチック材料を用いた。その他にも、枠部と網が別個に構成されたもの、例えば枠部が木製で、網がプラスチック又はナイロン製であっても構わない。網の目の細かさは、はつり作業で発生する飛散物によるが、飛散物の最小直径は5mm程度であることを考慮して、5mmとした。
【0046】
第一固定板19、第二固定板20を上記のように、枠部を有する網とすることで、飛散物遮蔽板16の重量を軽くすることができ、また風が強いときにも飛散物遮蔽板16が倒壊するという心配をすることもない。更に、飛散物を遮蔽するものは網19b、20bであるので飛散物が当たったときに、その衝撃を吸収することができ、作業上の安全も確保できることとなる。なお、第一固定板19及び第二固定板20の大きさ、或いは網19b、20bの大きさは、はつり作業に応じて適宜選択することができる。即ち、はつり作業においてそれ程飛散物が広範囲に発生しないのであれば、小さめの網を用いることができる。飛散物が広範囲に発生する場合は大きめのものを用いることができる。
【0047】
第一固定板19と第二固定板20は枠部を有する網で構成したので、はつり作業者は周囲の状況を確認しながら作業を行うことが可能である。例えば、はつり作業している道路の反対側に、人の通行や自動車の走行を容易に認めることができ、その場合に、はつり作業の手を緩めることが可能である。また、第一固定板3も枠部を有する網にすることで、従来の保護フェンスなどでは隠れて見えなかった道路の部分まで見えるため、より安全に作業することができることとなる。
【0048】
本願発明の飛散物遮蔽板16は、台座17を所定の場所に設置して水を入れ、支柱18を台座17の支柱嵌合用溝部17aに嵌合し、支柱8の溝部18aに第一固定板19を挿入し、第二固定板20を傾斜面18eに合わせて傾け、傾けたまま第二固定板20の底部を係止用溝部18dに落とし込んで成る。支柱18が台座17の支柱嵌合用溝部17aに嵌合されたままで、且つ第一固定板19が支柱18の溝部18aに挿入され、第二固定板20が支柱18の第二固定板収納用溝部18bに収納されていた場合、この場合は飛散物遮蔽板16を短い距離だけ運搬する時に相当するが、その場合は台座17を所定の場所に設置して水を入れ、第二固定板20を第二固定板収納用溝18bから引き出し、傾斜面18eに合わせて傾け、傾けたまま第二固定板20の底部を係止用溝部18dに落とし込めば良い。
【0049】
図10は、そのようにして組み立てた飛散物遮蔽板16を横に2台結合して構成した飛散物遮蔽壁24である。飛散物遮蔽壁24は、はつり作業が済んだら、次のはつり作業を行う場所まで移動可能な重量である。移動の際には台座17から水を抜いて行う。
【0050】
飛散物遮蔽壁24の側面には、プラスチック製シートを張伸しても良い。これにより、はつり作業で飛散した飛散物が、飛散物遮蔽壁24の側面から飛散することを防ぐことができる。
【0051】
図11は、本願発明の飛散物遮蔽壁24の効果を示す説明図である。道路の左側で、はつり作業を行い、道路の右側を人或いは自動車が通行するものとする。道路の右側まで、はつり作業で発生した飛散物が飛散しないように道路の中央に本願発明の飛散物遮蔽壁24が設置されている。
【0052】
前述のように、道路工事におけるはつり作業では、通常直径3〜5cmのコンクリート片が路面に対して60度の角度で飛散するものが多い。飛散物は小さなものでは5mm程度のものもある。はつり作業は、飛散物遮蔽壁24から約1m離れて行うものとすると、飛散物遮蔽板の第二固定板20が仮に真直ぐの場合(e)には、飛散物遮蔽壁24の高さが1.7m以上でないと図示したように、飛散物が飛散物遮蔽壁24を超えて道路の右側に飛散してしまう。しかし、第二固定板20が約60度の角度で傾斜している場合、路面から支柱18の高さを約1mとすると、第二固定板20の縦方向の長さは約40cmで前記飛散物を遮蔽することが可能である。
【0053】
即ち、第二固定板20を真直ぐにした場合と比較して、第二固定板20の縦方向の長さを約30cm短くしても、約60度の角度で傾けることで、今まで飛散を防げなかった飛散物を遮蔽することが可能となる。
【0054】
なお、第一固定板19及び第二固定板20の大きさや、第二固定板20の傾斜角度などは、はつり作業の内容や作業環境などを考慮して適宜設計できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明の飛散物遮蔽板及びそれを用いた飛散物遮蔽壁は、簡単な構成で効果的に飛散物の飛散を防止し、且つ軽量で移動すること容易なので、あらゆる工事現場で安全に使用することが可能である。また、飛散物遮蔽板単体は、家庭内で日曜大工を行うとき、或いは工場内で簡単な工作物を製作するときに使用することも可能である。これによって、工作物を製作しているときに飛散物を遮蔽することが出来る上に、誤って製作している場所に人などが入ることを防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本願発明の第一の実施の形態に係る飛散物遮蔽板の斜視図である。
【図2】図1の台座2の斜視図であり、一部切り欠いて内部の様子を示している。
【図3】屈曲板4と固定板3との接合の様子を示す説明図である。
【図4】第一の実施の形態に係る飛散物遮蔽壁14の斜視図である。
【図5】図4の飛散物遮蔽壁14の効果を示す説明図である。
【図6】本願発明の第二の実施の形態に係る飛散物遮蔽板の斜視図である
【図7】図6の台座17の斜視図である。
【図8】図6の支柱18の斜視図(a)と要部拡大斜視図(b)である。
【図9】図6の第一固定板19(a)と第二固定板20(b)の平面図である。
【図10】第二の実施の形態に係る飛散物遮蔽壁24の斜視図である。
【図11】図10の飛散物遮蔽壁24の効果を示す説明図である。
【図12】工事現場などで一般に使用される保護フェンスである。
【図13】特許文献1に開示されている飛散防止用フェンスである。
【符号の説明】
【0057】
1 飛散物遮蔽板
2 台座
3 第一固定板
4 屈曲板
5 緩衝材
6 水タンクキャップ
7 連結部
8 固定ボルト
9 連結部材
10 固定用溝部
11 水タンク
12 突起部
13 嵌合部
14 飛散物遮蔽壁
15 プラスチック製シート
16 飛散物遮蔽板
17 台座
17a 支柱嵌合用溝部
18 支柱
18a 溝部
18b 第二固定板収納用溝部
18c 第二固定板係止部
18d 係止用溝部
18e 傾斜面
19 第一固定板
19a 枠部
19b 網
20 第二固定板
20a 枠部
20b 網
21 キャップ
22 連結部材
23 連結部
24 飛散物遮蔽壁
30 防護フェンス
31 鋼網
32 鋼板
33 支柱
34 支持部材
35 土のう
36 飛散防止用フェンス
37 壁部材
38 重し部材
39 支持部材
40 蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一固定板と、当該第一固定板の上部に設置される第二固定板と、前記第一固定板を固定する台座とから成ることを特徴とする飛散物遮蔽板。
【請求項2】
前記第一固定板は支柱に設けられた溝部によって保持され、前記第二固定板は前記支柱の上部に設けられた傾斜面と係止用溝部によって傾斜して保持されることを特徴とする請求項1に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項3】
前記支柱は前記台座に嵌合して固定できるように、前記台座に支柱嵌合用溝部が設けられて成ることを特徴とする請求項2に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項4】
前記第一固定板及び/又は前記第二固定板は、枠部を有する網であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項5】
前記第一固定板と前記第二固定板とが互いに嵌合して固定されるように、前記第一固定板には嵌合部又は突起部が設けられ、前記第二固定板にはそれに応じて突起部又は嵌合部が設けられて成ることを特徴とする請求項1に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項6】
前記第二固定板は、特定の曲率を有する屈曲板であることを特徴とする請求項1又は5に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項7】
前記台座には前記第一固定板を固定するための固定用溝部が設けられて成ることを特徴とする請求項1に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項8】
前記固定用溝部と前記第一固定板の間に緩衝材を挿入して成ることを特徴とする請求項7に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項9】
前記緩衝材は、ゴム板であることを特徴とする請求項8に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項10】
前記第一固定板は、前記台座の前記固定用溝部に挿入された後にボルトで固定されることを特徴とする請求項7又は8に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項11】
前記台座は、水が溜められるように又は重し材が挿入できるように構成して成ることを特徴とする請求項1、3又は7に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項12】
前記台座には、他の台座と連結するための連結部と連結部材が設けられて成ることを特徴とする請求項1、3、7又は11に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項13】
前記台座には、持ち運び可能なように取っ手が設けられて成ることを特徴とする請求項1、3、7、11又は12に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項14】
前記台座は、プラスチック材料で構成されて成ることを特徴とする請求項1、3、7、11、12又は13に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項15】
前記屈曲板及び/又は前記第一固定板は、プラスチック材料で構成されて成ることを特徴とする請求項5又は6に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項16】
前記屈曲板及び/又は前記第一固定板のプラスチック材料は、透明であることを特徴とする請求項5、6又は15に記載の飛散物遮蔽板。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一に記載の飛散物遮蔽板を、複数台横に連結して成ることを特徴とする飛散物遮蔽壁。
【請求項18】
前記飛散物遮蔽柵を構成する両端の飛散物遮蔽板の側面に、プラスチック製シートを張伸して成ることを特徴とする請求項17に記載の飛散物遮蔽壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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