説明

食品の吸湿防止法と吸湿防止された食品

【課題】
ナッツ類などの低水分系食品素材とチルド洋菓子などの高水分系食品素材の組み合わせ食品において、低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止し、製造直後から実際に消費されるまで継続して吸湿防止される嗜好性のより高い食品の製造法を課題とする。
【解決手段】
低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、特定の含気泡チョコレートを被覆、塗布、載置または充填することにより、高水分系食品素材からの水分移行による低水分系食品素材の吸湿による食感変化を防止する。また、特定のソフトな食感の該含気泡チョコレートを低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面素材として組み合わせることにより、低水分食品素材の吸湿による食感の変化を防止するとともに違和感のない食感の組み合わせ食品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低水分系食品素材と高水分系食品素材の組み合わせ食品において、含気泡チョコレート類をさらに組み合わせることにより低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止する方法及びその方法により吸湿を防止した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキやパイとホイップクリーム、カスタードクリーム、クリームチーズなどの高水分洋菓子素材と組み合わされたショートケーキ、ロールケーキなどの洋菓子、プリン、ムース、ババロア、ゼリーなどのチルドデザートは多種多様な組み合わせで洋菓子店、スーパー、コンビニエンスストア他で市販されている。かかる組み合わせ商品に外観上の特徴を持たせ、食感のアクセントを付け、嗜好性をより高めるために、さらにナッツ類やパイなどの比較的低水分で食感的にもサクサク感やカリカリ感のある食品素材を上掛け(トッピング)したり、挟み込み(サンド)するような試みがなされている。
【0003】
上記の試みにより、確かに嗜好性も向上し付加価値の高い食品が得られるが、該食品の流通や保管時に時間の経過とともに低水分系食品素材が高水分系素材からの水分移行によって吸湿し、折角の嗜好性の高い食感が損なわれてしまう問題がある。すなわち、ナッツ類やパフなどが吸湿してサクサク感やカリカリ感が失われ、該食品の製造直後の嗜好性の高さを実際に消費される場面まで維持できないという問題である。
【0004】
上記の水分移行による吸湿を防止する試みとして、特許文献1は、低水分組成物側にラウリン酸系油脂を主体とした油脂組成物により被覆し、その上に非ラウリン酸系油脂を主体とした油性組成物により被覆する、二層の油脂被膜を形成させて高水分部から低水分部への水分移行抑制する方法を開示している。該方法は、水分移行抑制には効果的であるが、二層の油脂被膜形成に手間がかかることと、対象食品が洋生菓子やチルドデザートの場合に二層油脂被膜の硬い食感が違和感のあるものになるという問題がある。
【0005】
特許文献2は、ナッツ類の表面に、グァーガムほかのガム類の分解物またはプルランのような水溶性植物繊維水溶液を噴霧、乾燥するナッツの処理法である。該方法で処理されたナッツ類はナッツからの油脂の溶出、油脂の酸化防止及び水分吸湿を防止できるが、ナッツへの上記水溶液の噴霧、乾燥作業が煩わしく、またパイなどの焼き菓子には適用しにくい方法である。
【0006】
特許文献3は、コーン容器の内面に気泡を含んだチョコレート生地層を設け、次いで冷菓生地を充填するコーンアイスの製造法に関する。該方法により、冷菓からの水分移行によるコーン容器の吸湿を防ぐことができ、食感としても違和感のないものが得られることが記載されているが、かかる方法によるチルド洋菓子やチルドデザートでの低水分系素材の吸湿防止は何ら具体的に教示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−237319号公報
【特許文献2】特開平4−197161号公報
【特許文献3】特開平3−210152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低水分系食品素材と高水分系食品素材の組み合わせ食品において、含気泡チョコレート類をさらに組み合わせることにより低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止する方法及びその方法により吸湿を防止した食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、チルド洋菓子やチルドデザートのような高水分系食品素材とナッツ類やパイなどの低水分系食品素材の組み合わせ食品において、高水分系食品素材からの水分移行による低水分系食品素材の吸湿による食感変化防止法を鋭意検討した結果、含気泡チョコレートをさらに界面素材として組み合わせることにより、吸湿による食感の変化を防止するとともに該組み合わせ食品と違和感のない食感を得ることができるという知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1は、低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布、載置または充填してなる食品、及びその製造法である。第2は、低水分系食品素材と含気泡チョコレート類の混合物と高水分系食品素材からなる第1記載の食品、及びその製造法である。第3は、低水分系食品素材の水分が10重量%以下である第1または第2のいずれかに記載の食品、及びその製造法である。第4は、高水分系食品素材の水分が25重量%以上である第1〜第3のいずれか1に記載の食品、及びその製造法である。第5は、低水分系食品素材と高水分系食品素材の水分差が20重量%以上である第1〜第4のいずれかに1に記載の食品、及びその製造法である。第6は、含気泡チョコレートの起泡直後のレオナー測定(直径3mmプランジャー、測定速度1mm/秒、測定歪率50%)による硬さが30〜300gf、5℃で一晩(12〜20時間)冷蔵後の硬さが100〜1000gfである第1〜第5のいずれか1に記載の食品、及びその製造法である。
【発明の効果】
【0011】
低水分系食品素材と高水分系食品素材の組み合わせ食品において、低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止することが可能となり、製造直後から実際に消費されるまで継続して吸湿防止される嗜好性のより高い食品の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、低水分系食品素材、高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレートを被覆、塗布、載置または充填してなる食品及びその製造法に関するものである。かかる製造法により、低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止するという課題を解決することができる。
【0013】
本発明に用いる低水分系食品素材としては、乾燥ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツ、ピスタチオ、ひまわり、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ落花生など)、パイ、ウェハース、コーン、ビスケット、クッキー、せんべい、ゴーフル、サブレ、ラスク、クラッカー、穀物類の膨化物、あられ、かりんとう、ポップコーン、パフスナック、焼きメレンゲ、果実・野菜の凍結乾燥物、ポテトチップス、ハードキャンディーなどの1種以上が使用できる。かかる素材の水分としては10重量%以下、好ましくは5重量%以下のものが好適に利用できる。上記素材は、比較的低水分であることにより、サクサク感やカリカリ感のある食感を有するものである。水分が10重量%を超えると、かかる好ましい食感が弱くなるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いる高水分系食品素材としては、ホイップクリーム、カスタードクリーム、クリームチーズなどの水分が40〜70%の高水分洋菓子素材、かかる高水分洋菓子素材とスポンジケーキが組み合わされた水分が25〜35%のショートケーキ、ロールケーキなどのチルド洋菓子、水分が50〜90%のプリン、ムース、ババロア、ゼリーなどのチルドデザート、イチゴ、バナナ、桃などの果物やかかる果物のシロップ煮のような果物加工品、ジャムなどから選ばれる1種以上が使用できる。上記の低水分系食品素材との組み合わせ菓子において、食感の差を顕著にするために、高水分系食品素材の水分は25重量%以上、好ましくは30重量%以上であるのが好ましい。
【0015】
本発明における低水分系食品素材と高水分系食品素材との水分差は20重量%以上、好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であるのが好ましい。かかる水分差により、低水分系素材のサクサク感やカリカリ感のある食感と高水分系食品素材のソフトでみずみずしい食感、口当たりが、好対称の食感に由来する絶妙のバランスとなって、嗜好性の高い組み合わせ菓子の製造を可能とする。該水分差が20重量%未満であると、食感の相違が小さくなる傾向のため、嗜好性が低下する傾向にある。
【0016】
本発明に用いる含気泡チョコレート用のチョコレートとしては、原料としてカカオマス、ココアパウダー、砂糖などの糖類、ココアバターなどの油脂、乳化剤、香料等を使用して作られるダークチョコレート、たとえば原料としてカカオマス、ココアパウダー、砂糖などの糖類、ココアバター等の油脂、全脂粉乳等の乳製品類、乳化剤、香料等を使用して作られるミルクチョコレート、例えば砂糖などの糖類、ココアバター等の油脂、全脂粉乳等の乳製品類、乳化剤、香料等を使用して作られるホワイトチョコレート、ホワイトチョコレートを色素で着色、香料で風味付けしたカラーチョコレートのいずれも使用することが出来る。また、カカオ分の含量により、チョコレート(カカオ分35%以上)、準チョコレート(カカオ分15%以上)、ミルクチョコレート(カカオ分21%以上)、準ミルクチョコレート(カカオ分7%以上)、チョコレート利用食品であるチョコレートコーチング(カカオ分8%以上)、乳製品を使用したチョコレートコーチング(カカオ分5%以上)の他、カカオ分非含有のホワイトコーチングやカラーコーチングのようにも区別されるが、いずれも本発明に使用することが出来る。また、チョコレート類中の油脂には、油溶性の色素、レシチン、乳化剤、抗酸化剤等を適宜添加することが出来る。なお、チョコレート類中の油脂の融点は、高水分系食品素材との組み合わせたときにバランスの良い食感、口溶けとするのが好ましいので、上昇融点(AOCSCc3−25)で20〜40℃であるのが好ましい。また、チョコレート中の水分は、含気泡チョコレートが水分移行防止素材としての効果を効率的に発揮するように、2重量%以下、好ましくは1重量%以下であるのが好ましい。
本発明には、上記のチョコレート生地を溶融し、ケンウッドミキサー、コートミキサー、連続ホイッパーなどの起泡装置を用いて起泡させた含気泡チョコレートが使用できる。該チョコレート生地は、起泡性を持たすために公知の乳化剤、増粘多糖類、高融点油脂類などを適宜含有させるのが好ましい。
【0017】
本発明に用いる含気泡チョコレートの比重は特に限定されないが、好ましくは0.3〜0.9である。比重が0.9より高いと食感が硬く、ソフトな食感の高水分系食品素材との相性が悪くなるため好ましくない。逆に比重が0.3未満であると食感は軽くなるが、起泡後の流動性が悪くなり、高水分系食品素材及び低水分系食品素材との組み合わせ作業が困難となるため好ましくない。
【0018】
本発明は、上記の低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布、載置または充填する方法からなる食品、及びその製造法である。低水分系食品素材、高水分系食品素材との組み合わせでは、高水分系食品素材から低水分系素材への水分移行が速やかに生じるため、低水分食品素材の吸湿による食感変化が避けられないが、本発明の含気泡チョコレートを界面素材として」さらに組み合わせることにより、低水分食品素材の吸湿を低減または防止し、食感低下を軽減することができる。本発明の低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布、載置または充填する方法からなる食品は、所望によりその他の水分10〜25重量%の中水分食品素材を組み合わせることも出来る。
【0019】
本発明の、低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布、載置または充填する方法とは、高水分系素材と低水分系食品素材の接する境界面に、含気泡チョコレート類の境界層を設けることにより、高水分系食品素材から低水分系素材への水分移行を低減または防止する方法である。例えば、スポンジケーキとホイップクリームを組み合わせたショートケーキやロールケーキの表面に、含気泡チョコレートを塗布し、塗布された含気泡チョコレートの表面にナッツフレークやパイフレークなどの焼き菓子を載置するような方法が簡便に、また好適に利用できる。あるいは、焼成・冷却後のパイ上面に含気泡チョコレートを塗布し、該含気泡チョコレート上にカスタードクリームやホイップクリームを塗布または載置し、さらに該カスタードクリームや該ホイップクリーム上に新たな含気泡チョコレートを塗布または載置し、次いで焼成・冷却後のパイを載置するような多層構造のミルフィーユ様組み合わせ食品にも好適に利用できる。
【0020】
また、低水分系食品素材と含気泡チョコレート類の混合物と高水分系食品素材を組み合わせる方法も好適に利用することができる。すなわち、含気泡チョコレート類にナッツフレークやパイフレークなどの焼き菓子などの低水分系食品素材を添加、混合したものをショートケーキやロールケーキなどの高水分系素材の表面に塗布または載置することにより、低水分系食品素材と高水分系食品素材間の界面に含気泡チョコレートが存在する形になり、該低水分系食品素材が経時的な吸湿によって食感変化するのを簡便に防止または低減することができる。
【0021】
上記の低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布または充填してなる食品に利用する含気泡チョコレート類として、含気泡チョコレートの起泡直後のレオナー測定(直径3mmプランジャー、測定速度1mm/秒、測定歪率50%)による硬さが30〜300gf、5℃で一晩(12〜20時間)冷蔵後の硬さが100〜1000gfのものが好適に利用することができる。起泡直後の硬さが30gf未満であると、流動性がありすぎて含気泡チョコレート類を塗布したり載置する作業が困難になるため好ましくない。逆に300gfを超えると硬すぎて、同様に塗布や載置作業が困難になるため好ましくない。また、5℃で一晩冷蔵後の硬さが100未満であると保型性が弱く、組み合わせ菓子が崩れやすくなるため好ましくない。逆に、1000gfを超えると硬すぎて、ソフトな食感の高水分系食品素材との食感の相性が悪くなるため好ましくない。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%及び部はいずれも重量基準を意味する。また、例中の含気泡チョコレートの硬さは、レオナー(YAMADEN RHEONER II、直径3mmプランジャー、測定速度1mm/秒、測定歪率50%)を用いて、80ml亀甲容器に満杯になるように充填した含気泡チョコレートについて、測定した。
【0023】
試作例1
全脂粉乳6部、砂糖24部、乳糖12部、ココアバター2.4部、パームスーパーオレイン18部、ヤシ油21.6部、硬化菜種油(融点35℃)9部、硬化パーム核油(融点36℃)7部、レシチン1部、ジグリセリンモノステアレート1.5部を配合して、常法通りチョコレート生地aを試作した。チョコレート生地aの融点は24℃であった。チョコレート生地a 600gを40℃に調温してから、ケンウッドミキサー(ホイッパー使用)を用いて速度4で約5分間攪拌して起泡させ、比重0.50、起泡直後の品温35.1℃の含気泡チョコレートAを得た。含気泡チョコレートAの起泡直後の硬さは170gf、5℃で一晩(18時間)冷蔵後の硬さは860gfであった。
【0024】
試作例2
全脂粉乳6部、砂糖24部、乳糖12部、ココアバター2.4部、大豆油11.1部、硬化パーム核油(融点36℃)44.5部、レシチン1部、ジグリセリンモノステアレート1.5部を配合して、常法通りチョコレート生地bを試作した。該チョコレート生地bの融点は24℃であった。該チョコレート生地600gを40℃に調温してから、ケンウッドミキサー(ホイッパー使用)を用いて速度4で約5分間攪拌して起泡させ、比重0.48、起泡直後の品温34.0℃の含気泡チョコレートBを得た。含気泡チョコレートBの起泡直後の硬さは320gf、5℃で一晩(18時間)冷蔵後の硬さは1980gfであった。
【0025】
試作例3
カカオマス40部、砂糖48部、ハイオレイックひまわり油12部、レシチン0.5部を配合して常法通りチョコレート生地c1を試作した。別に、高エルシン酸菜種油の極度硬化油(沃素価1以下、融点62℃)10部とハイオレイックひまわり油90部の混合油を80℃に加熱して融解した後、水温15℃の水槽中で油脂の品温が40℃まで冷却して、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶を析出させ、この状態の混合油c2を20℃で保存した。
チョコレート生地c1 90部を最下点25℃、リヒート点28℃でテンパリングしてから品温30℃に調温し、上記混合油c2 10部を加え、ケンウッドミキサー(ホイッパー使用)を用いて速度4で約5分間攪拌して起泡させ、比重0.70、起泡直後の品温30.0℃の含気泡チョコレートCを得た。含気泡チョコレートCの起泡直後の硬さは120gf、5℃で一晩(18時間)冷蔵後の硬さは560gfであった。
なお、チョコレート生地c1 90部と混合油c2 10部の混合物の融点は32℃であった。
【0026】
試作例4
ココアマス40部、砂糖48部、ココアバター12部、レシチン0.5部を配合して常法通りチョコレート生地d1を試作した。別に、高エルシン酸菜種油の極度硬化油(沃素価1以下、融点62℃)10部とハイオレイックひまわり油90部の混合油を80℃に加熱して融解した後、水温15℃の水槽中で油脂の品温が40℃まで冷却して、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶を析出させ、この状態の混合油d2を20℃で保存した。
チョコレート生地d1 90部を最下点26℃、リヒート点28℃でテンパリングしてから品温30℃に調温し、上記混合油d2 10部を加え、ケンウッドミキサー(ホイッパー使用)を用いて速度4で約5分間攪拌して起泡させ、比重0.75、起泡直後の品温30.0℃の含気泡チョコレートDを得た。含気泡チョコレートDの起泡直後の硬さは200gf、5℃で一晩(18時間)冷蔵後の硬さは1850gfであった。
なお、チョコレート生地d1 90部と混合油d2 10部の混合物の融点は33℃であった。
【0027】
試作例5 ロールケーキの試作
全卵100部、卵黄20部、砂糖60部、水10部、小麦粉50部、バター10部、牛乳20部を用いて、生地を常法通り作成し、シート状に流して180℃のオーブンで15分焼成して、シート状のスポンジケーキを得た。
別に生クリーム92部、砂糖8部を加えて、ケンウッドミキサー(ホイッパー使用)を用いて速度4で約3分間攪拌して起泡させ、比重0.60の起泡生クリームを得た。シート状スポンジケーキに起泡生クリームを約3mmの厚みで塗り、スポンジケーキの縁を折り込み、渦巻きの形にして、スポンジケーキに起泡生クリーム層状に挟まれたロールケーキEを得た。ロールケーキEの水分は32.0%であった。
【0028】
試作例6 パイの試作
強力粉663部、薄力粉663部に、さいの目より少し大きめに切ったバター1116部を加え、低速でバターの表面に小麦粉が十分付くまでミキサー(愛工舎製作所製)にて攪拌した。その後、食塩18部、水537部を加え、中低速で全体がまとまるまで攪拌した。出来上がった生地を麺棒でシート状に伸ばし、3つ折り、4つ折りを2回行い、最終的に厚み約2.3mmに伸ばした。伸ばした生地を縦530mm×横360mmにカットし、全面にピケを十分入れた。こうして調製したパイ生地を鉄板に置き、オーブンにて190℃、40分焼成した。焼成後のパイFのサイズは縦450mm×330mm×8mm(平均値)であり、水分は1.4%であった。
【0029】
実施例1
試作例5のロールケーキEの上面及び横面に、起泡直後の含気泡チョコレートAを約2mmの厚みになるよう塗布した。その塗布された含気泡チョコレートAの上面にアーモンドナッツフレーク(水分1.0%)を万遍なく載置して、ロールケーキGを得た。ロールケーキGを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
食感評価はパネラー10人の官能評価で行い、10人の評価の平均点で相対評価した。
<食感評価> 5:サクサクして歯切れが良い。 4:サクサクして良好 3:ややサクサク感が残っている
2:サクサク感がない 1:ぐにゃぐにゃして食感悪い
ロールケーキGのナッツフレークの24時間後の食感は4.2、48時間後の食感は3.6であった。
また、ロールケーキGの製造直後及び48時間後の官能評価では、ロールケーキ及び含気泡チョコレートの食感がソフトで、そのソフトな食感とサクサク感のあるナッツフレークの食感が調和して、総合官能評価は製造直後◎、48時間後○であった。
<ロールケーキの総合官能評価> ◎:非常に良好 ○:良好 △:やや不良 ×:不良
【0030】
実施例2
実施例1の含気泡チョコレートAを含気泡チョッコレートBに変えて、実施例1同様にしてロールケーキHを得た。実施例1同様に、ロールケーキHを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
ロールケーキHのナッツフレークの24時間後の食感は4.3、48時間後の食感は3.8であった。
また、ロールケーキHの製造直後及び48時間後の官能評価では、ロールケーキはソフトで含気泡チョコレート部分がやや硬い食感であったが、サクサク感のあるナッツフレークの食感が加わることで、総合官能評価は製造直後○、48時間後○であった。
【0031】
実施例3
実施例1の含気泡チョコレートA 80部に実施例1のアーモンドナッツフレーク 20部を添加し軽く均一に、混合した混合物を、ロールケーキEの上面及び横面に、約3mmの厚みになるよう塗布してロールケーキJを得た。施例1同様に、ロールケーキJを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
ロールケーキJのナッツフレークの24時間後の食感は4.1、48時間後の食感は3.5であった。
また、ロールケーキJの製造直後及び48時間後の官能評価では、ロールケーキ及び含気泡チョコレートの食感がソフトで、そのソフトな食感とサクサク感のあるナッツフレークの食感が調和して、総合官能評価は製造直後◎、48時間後○であった。
【0032】
比較例1
実施例1の含気泡チョコレートAを試作例5の比重0.60の起泡生クリームに変えて、実施例1同様にしてロールケーキKを得た。実施例1同様に、ロールケーキKを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
ロールケーキKのナッツフレークの24時間後の食感は2.5、48時間後の食感は1.0であった。
また、ロールケーキKの製造直後及び48時間後の官能評価では、ロールケーキ及び含気泡チョコレートの食感がソフトで、そのソフトな食感とサクサク感のあるナッツフレークの食感が調和して、総合官能評価は製造直後◎であったが、48時間後はナッツフレークが吸湿して食感が悪く×であった。
【0033】
比較例2
実施例1の含気泡チョコレートAを、チョコレート生地aを起泡することなく品温25℃まで冷却したものに変えて、実施例1同様にしてロールケーキLを得た。実施例1同様に、ロールケーキLを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
ロールケーキLのナッツフレークの24時間後の食感は4.3、48時間後の食感は3.5であった。
また、ロールケーキLの製造直後及び48時間後の官能評価では、ロールケーキはソフトであったがチョコレート生地aの部分が硬い食感で食感の相性が悪く、サクサク感のあるナッツフレークの食感が加わっても総合官能評価は製造直後及び48時間後とも△であった。
【0034】
比較例3
試作例5の比重0.60の起泡生クリーム 80部に実施例1のアーモンドナッツフレーク 20部を添加し軽く均一に、混合した混合物を、ロールケーキEの上面及び横面に、約3mmの厚みになるよう塗布してロールケーキMを得た。施例1同様に、ロールケーキMを5℃、冷蔵ショーケース内に保存し、24時間後及び48時間後のアーモンドナッツフレークの食感を評価した。
ロールケーキMのナッツフレークの24時間後の食感は1.5、48時間後の食感は1.0であった。
また、ロールケーキMの製造直後の官能評価では、製造直後はロールケーキの食感はソフトで、ナッツフレークはやや吸湿してサクサク感が弱く、総合官能評価は△であった。48時間後は、ナッツフレークの吸湿が激しく、総合官能評価は×であった。
【0035】
表−1に、実施例1〜3及び比較例1〜3の試験結果を示した。
<表−1>

実施例1〜3の含気泡チョコレートを用いたロールケーキでは、比較例1及び比較例3と対比して、明らかにナッツフレークの吸湿が防止されていた。比較例2のチョコレート生地a使用の場合は、ナッツの吸湿防止効果は認められたが、ロールケーキの総合評価がやや低いものであった。
【0036】
実施例4
試作6で焼成したパイFを室温まで冷やし、パイFに試作例3の含気泡チョコレートCを厚み約1mmで塗布し、その上にカスタードクリーム(不二製油株式会社製:水分67.4%)を厚み約10mmで塗り、さらにその上に含気泡チョコレートCを厚み約1mmで塗布し、パイFを乗せた。最上面のパイFにさらに含気泡チョコレートCを厚み約1mmで塗布し、その上に上記カスタードクリームを厚み約10mmで塗り、さらにその上に含気泡チョコレートCを厚み約1mmで塗布し、パイFを乗せ、ミルフィーユ様菓子Nを作成した。
ミルフィーユ様菓子Nの官能による製造直後及び24時間後の総合評価を、10人のパネラーにより行った結果、パイのサクサク感とソフトな食感のカスタードクリーム及び含気泡チョコレートのバランスが良く、製造直後及び24時間後とも◎の評価であった。
総合評価 ◎:非常に良好 ○:良好 △:あまり良くない ×:食感のバランスが悪い
ミルフィーユ様菓子Nを縦約30mm×横約80mm×厚み約48mmにカットし、5℃の冷蔵ショーケースに保管した。8時間保管後及び24時間保管後に、ミルフィーユ様菓子Nの含気泡チョコレートC及びカスタードクリームを出来るだけ除去して得た中央のパイFを、官能評価、水分及び硬さで評価した。
パイの評価方法
パイの官能評価については、10人のパネラーによる口溶け・食感の評価を行い、その平均を求めた。
◎:大変良い ○:良い △:よくも悪くもない ×:悪い
水分の測定は、赤外水分計(ケット科学研究所製)にて測定した。具体的には、パイをすり鉢で細かく粉砕し約10gをトレイに置き、110℃、30分加熱語の重量より水分を換算した。
硬さの測定は、レオメーター(不動工業株式会社製)にて測定した。測定法は、パイ1枚をステージに水平に置き、ステージを5cm/分で上昇させたとき、直径1mmのプランジャーをしようし、測定される応力の最大値をパイの硬さとした。
評価結果を表−2に纏めた。
【0037】
実施例5
実施例4の含気泡チョコレートCを含気泡チョコレートDに変えて、実施例4同様にミルフィーユ様菓子Oを作成した。ミルフィーユ様菓子Oの実施例4同様の製造直後及び24時間後の官能による総合評価は、パイのサクサク感とソフトな食感のカスタードクリームのバランスは良いが、含気泡チョコレートが硬い食感のためか、製造直後及び24時間後とも○の評価であった。
また、ミルフィーユ様菓子Oを、実施例4同様の保管試験をおこない、官能評価、水分及び硬さで評価した。
評価結果を表―2に纏めた。
【0038】
比較例4
実施例4の含気泡チョコレートCの塗布をせずに、ミルフィーユ様菓子Pを得た。すなわち、パイFに実施例4のカスタードクリームを厚み約10mmで塗り、その上にパイFを載せ、さらにその上に同カスタードクリームを厚み約10mmで塗り、最後にパイFを乗せた。ミルフィーユ様菓子Pの実施例4同様の製造直後の官能による総合評価は、パイのサクサク感とソフトな食感のカスタードクリームのバランスが良く、◎の評価であった。一方、24時間後の評価はパイの吸湿が激しく×であった。
また、ミルフィーユ様菓子Pを、実施例4同様の保管試験をおこない、官能評価、水分及び硬さで評価した。
評価結果を表―2に纏めた。
【0039】
<表−2>

実施例4及び実施例5はの含気泡チョコレートを使用したミルフィーユ様菓子は、比較例4対比で、パイの吸湿が大幅に防止されており、ミルフィーユ様菓子の総合評価も良好であった。
【0040】
実施例6
試作6で焼成したパイFを室温まで冷やし、パイFに起泡直後の含気泡チョコレートAを約5mmの厚みになるよう塗布し、その上に試作例5の比重0.60の起泡生クリームを厚み約10mmで塗布し、さらにその上に含気泡チョコレートAを約5mmの厚みになるよう塗布した。最後にパイFを乗せ、ミルフィーユ様菓子Qを作成した。
ミルフィーユ様菓子Qの官能による製造直後及び24時間後の総合評価を、10人のパネラーにより行った結果、パイのサクサク感とソフトな食感の生クリーム及び含気泡チョコレートのバランスが良く、製造直後及び24時間後の実施例4同様の総合評価はいずれも◎の評価であった。
ミルフィーユ様菓子Qを縦約30mm×横約80mm×厚み約48mmにカットし、5℃の冷蔵ショーケースに保管した。8時間保管後及び24時間保管後に、ミルフィーユ様菓子Qの含気泡チョコレートA及び生クリームを出来るだけ除去して得たパイFを、官能評価および水分で評価した。
パイの官能評価及び水分は実施例4同様に評価した。
【0041】
比較例5
実施例6の含気泡チョコレートAの塗布をせずに、ミルフィーユ様菓子Rを得た。すなわち、パイFに試作例5の比重0.60の起泡生クリームを厚み約10mmで塗布し、最後にパイFを乗せた。ミルフィーユ様菓子Rの実施例4同様の製造直後の官能による総合評価は、パイのサクサク感とソフトな食感の生クリームのバランスが良く、◎の評価であった。一方、24時間後の評価はパイの吸湿が激しく×であった。
また、ミルフィーユ様菓子Rを、実施例4同様の保管試験をおこない、実施例6同様の方法で得たパイFを官能評価及び水分で評価した。パイの官能評価及び水分は実施例4同様に評価した。
評価結果を表―3に纏めた。
【0042】
表−3

含気泡チョコレートを用いた実施例6は、比較例5と対比して、パイの吸湿が大幅に防止されていて、ミルフィーユ様菓子としての総合評価も高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、低水分系食品素材と高水分系食品素材の組み合わせ食品において、低水分系食品素材が経時的に吸湿して食感が変化するのを防止する方法に関し、製造直後から実際に消費されるまで継続して吸湿防止される嗜好性のより高い食品の製造法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低水分系食品素材と高水分系食品素材の界面に、含気泡チョコレート類を被覆、塗布、載置または充填してなる食品、及びその製造法。
【請求項2】
低水分系食品素材と含気泡チョコレート類の混合物と高水分系食品素材からなる請求項1記載の食品、及びその製造法。
【請求項3】
低水分系食品素材の水分が10重量%以下である請求項1または2のいずれか1項に記載の食品、及びその製造法。
【請求項4】
高水分系食品素材の水分が25重量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品、及びその製造法。
【請求項5】
低水分系食品素材と高水分系食品素材の水分差が20重量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品、及びその製造法。
【請求項6】
含気泡チョコレートの起泡直後のレオナー測定(直径3mmプランジャー、測定速度1mm/秒、測定歪率50%)による硬さが30〜300gf、5℃で一晩(12〜20時間)冷蔵後の硬さが100〜1000gfである請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品、及びその製造法。