説明

食品の栄養強化物質およびそれを含む飲食品

【課題】従来用いられている飲食品の栄養価を高めることを、人工で得られるものを用いることなく、天然から得られるものを用いて行うことができる物質の提供。
【解決手段】カックフルーツを主として含むことを特徴とする飲食品の栄養強化物質および該栄養強化物質を含有する飲食品。栄養強化物質は、βカロテン、リコピン、ビタミンEおよびビタミンCを多量に含む。飲食品としては、従来使用されているものが挙げられ、例えば飲料、菓子、ソース、ジャム、カレー、漬け物などがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の栄養強化物質およびそれを含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、特に、人々の間に健康について関心が高まってきている。そのため、健康を維持・向上させるために、運動とともに、日常食する飲食品に関して種々考慮が払われ、いろいろな飲食品も研究、開発されてきている。
本発明者も、このようなヒトに優れた効果を与える飲食品について、検討した結果、本発明を見いだした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来用いられている飲食品例えば野菜ジュースは、本来、栄養価が高く健康に良いものとされて食されてきている。しかし、実際には、栄養価が低いものが多く、たとえ栄養価が高くても、さらに栄養価を高めれば、ヒトに利益を与えることになる。本発明は、これら従来用いられている飲食品の栄養価を高めることを、人工で得られるものを用いることなく、天然から得られるものを用いて行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により、ガックフルーツを主として含む飲食品の栄養強化物質およびガックフルーツを主として含む栄養強化物質を含有する飲食品が提供される。
【0005】
ガックフルーツは、学名をMomordica cochinchinensisという亜熱帯から熱帯、特に熱帯地方例えばベトナムに生育している、つる性の多年生草木から得られる果実であり、その大きさは、ほぼメロンに近く、果実全体の約35%を果肉が占める。甘さは、ブリックス10付近である。ベトナムにおける生産量は、果樹園で年間約3千トンが生産され、利用可能な果実は生産量の約90%であり、そのうち約15%が飲食品および医薬品として利用されている。
【0006】
ガックフルーツの栄養価は高く、リコペン(リコピン)、β−カロテン、ビタミンEを驚くほど多量に含む。リコペンの含有量については、ガックフルーツに含まれるオイルでは、2388μg/gであり、ピューレ状のガックフルーツでは、988μg/gである。これに対し、一般にリコペンの含量が多いというトマトでも、31−138μg/gに過ぎず、グレープフルーツでは33.6μg/g、スイカでは41μg/g、グァバでは54μg/gと少ない。ちなみに、リコペンの1日所要量は、10mgとされている。また、β−カロテンの含有量についていえば、ガックフルーツに含まれるオイルでは、5190μg/gであり、ピューレでは124μg/gである。これに対し、一般にβ−カロテンが多いとされるニンジンですら77μg/gであり、トウガラシで72μg/gであり、カボチャでは40μg/gに過ぎない。このように、ガックフルーツには、他の野菜や果物に比べて、栄養価が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の栄養強化物質に用いられるガックフルーツは、そのままでも用いられるが、処理してピューレ状にしたものが好ましい。ピューレ状物を得るには、種々の方法があるが、例えば以下の方法が好ましい。得られた果実をチェックし選果する。好ましい果実を水洗し、清潔にする。果実を切断し、種子を含む果肉を取り出し、種子を除く。種子を採った果肉をクラッシュして、得られたパルプを滅菌する。
【0008】
また、栄養に富んだ成分は、主として油溶性であるため、ガックフルーツに含まれている油溶性成分を抽出して、食用油、油の酸化防止剤、またはカプセルに封入して健康食品として用いることもできる。
【0009】
本発明の飲食品としては、従来使用されているものが挙げられ、例えば飲料、菓子、ソース、ジャム、カレー、漬け物などがある。
【0010】
飲料としては、以下のものがある。緑茶;紅茶;コーヒー;乳酸菌飲料;果汁飲料例えばタマネギジュース、トマトジュース、ニンジンジュース、麦芽抽出物、ウグイスカグラ果汁、オレンジ果汁、カウベリー果汁、グーズベリー果汁、クランベリー果汁、サーモンベリー果汁、ストロベリー果汁、ダークスイートチェリー果汁、チェリー果汁、チンブルベリー果汁、デュベリー果汁、パイナップル果汁、ハルクベリー果汁、ブドウ果汁、ブラックカーラント果汁、ブラックベリー果汁、プラム果汁、ブルーベリー果汁、ベリー果汁、ポイセンベリー果汁、ホワートルベリー果汁、マルベリー果汁、モレロチェリー果汁、ラズベリー果汁、レッドカーラント果汁、レモン果汁、ローガンベリー果汁;果汁入り清涼飲料;炭酸飲料;粉末飲料;果実酒例えばワイン、梅酒;野菜ジュース。
【0011】
菓子としては、例えば以下のものがある。シャーベット、かき氷などの冷菓;果汁入りプリン;ゼリー;ヨーグルト;ババロア;チューインガム例えば板ガムまたは粒状ガム;チョコレート例えば通常のチョコレート;マーブルチョコレート;添加物入りチョコレート(例えば、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレートまたはメロンチョコレート);ハードキャンディー(例えば、ドロップ、ボンボン、バターボール、マーブル);ソフトキャンディー(例えば、キャラメル、ヌガー、タフィ、グミキャンディー、マシュマロ);シリアルバー。
【0012】
ソースとしては、例えば以下のものがある。マヨネーズ、セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、たれ、ケチャップ、ウスターソース。
【0013】
ジャムとしては、例えば以下のものがある。イチゴジャム、ブルーベリージャム、リンゴジャム、アンズジャム、オレンジジャム、マンゴージャム。モモジャム。
【0014】
漬け物としては、例えば以下のものがある。らっきょう漬け、つぼ漬け、しょうが塩漬け、梅干し、うめ漬け、はくさい漬け、高菜漬け、広島菜漬け、野沢菜漬け、一夜漬けおよび桜漬けなどの塩漬け;福神漬け、らっきょう醤油漬け、割干漬け、しば漬け、しょうが醤油漬け、山菜醤油漬け、および松前漬けなどの醤油漬け;千枚漬け、らっきょう漬け、しょうが漬け、はりはり漬け、うめ酢漬けおよびはじかみ漬けなどの酢漬け;山菜みそ漬けおよびだいこんみそ漬けなどのみそ漬け;奈良漬け、山海漬け、わさび漬け、野菜わさび漬け、しょうが粕漬けおよびセロリ粕漬けなどの粕漬け;なす芥子漬けおよびふき芥子漬けなどの芥子漬け;こなすもろみ漬けおよびきゅうりもろみ漬けなどのもろみ漬け;朝鮮漬け例えばキムチまたはコチュジュン;すんき漬け;ピクルス;サワークラウトなどの各種漬け物。
【0015】
本発明の栄養強化物質は、添加される飲食品の種類などにより異なるが、飲食品に対して約0.1重量%から約80重量%、好ましくは約1重量%から約50重量%の量で使用される。
【0016】
また、本発明の栄養強化物質は、本発明の効果を妨げない限り、従来飲食品に使用されている添加物、例えば酸味料、退色防止剤、防腐剤、安定剤、粘度調節剤などを併用することができる。また、同様に本発明の効果を妨げない限り、栄養に好適な天然の添加物例えばカムカムなどとも併用して、効果を上げることができる。
【0017】
本発明の飲食品の製造にあたっては、従来使用されている方法を用いることができる。飲料の製造にあたっては、果汁などの主原料に本発明の栄養強化物質を加え、必要に応じさらにその他の添加物例えば安定剤、着色剤、香料などを加え、殺菌、冷却して容器に充填する。
【0018】
菓子として、ゼリーの製造では、例えば主原料の糖類例えば砂糖、水あめなど、およびゲル化剤、例えばペクチン、アガー、ゼラチン、カラギーナンなどを本発明の栄養強化物質とともに適当な割合で混合し、加熱溶解した後、香料および着色剤を加えて、冷却する。キャンディー類の製造では、例えば主原料、例えば砂糖、水あめなどに本発明の栄養強化物質とともに水を加え、加熱、溶解した後冷却し、次に香料、着色剤および果汁などを加え、成形し、冷却する。
【0019】
ドレッシングの製造では、例えば、植物油、醤油、果汁、醸造酢、食塩などの主原料に、安定剤、乳化剤などを加え、得られた液に本発明の栄養強化物質および香料、着色剤などを添加し混合し、殺菌、冷却する。
【0020】
漬け物の製造では、例えば、漬物の場合は、野菜、食塩、スクラロースなどの糖類、及びグルタミン酸ナトリウムを主原料とし、これに調味料及び酸味料等を加えて漬物を調製し、この漬物に本発明の栄養強化物質、香料及び色素を添加混合した後、容器に充填し、殺菌、冷却し最終製品を調製する方法を挙げることができる。この場合、ガックフルーツ(ピューレ)を2−10重量%添加するのが好ましい。
【0021】
本発明の栄養強化物質は、βカロテン、リコピン、ビタミンEおよびビタミンCを多量に含む。周知のように、βカロテンには、胃ガンリスクの低下、肺ガンの予防、抗活性酸化能力、血中コレステロールの低下の効果があり、リコペンには、優れた抗酸化能、ガンの予防、日焼けの予防、美肌効果、脳神経細胞の保持(アルツハイマー症の予防)の効果があり、ビタミンEには、強精補強、造血効果および血液の円滑な循環があり、そしてビタミンCには、風邪の予防、コラーゲンの体内合成の促進、免疫機能の増強、ウィルス性ガンを含むガンの予防、ストレスの予防および美肌効果がある。このように、本発明を用いることにより、飲食品の効果を上げることができる。
【0022】
本発明で用いられるガックフルーツは、きれいな赤色を呈し、そのため添加された飲食品の色彩を著しく改善することもできる。この場合、人工の着色料と異なり、天然のものであり、ベータカロテン、リコペン、ビタミンEの含有量が非常に多いため、優れた効果を得ることができる。
【0023】
次に、実施例を示す。
【実施例1】
【0024】
ガックフルーツ(ピューレ)20重量%、カムカム10重量%、リンゴ4倍濃縮液10重量%、アガベシロップ5重量%、ニンジンジュース1重量%、食塩0.01重量%、マンゴーフレーバー0.05重量%を混合し、得られた混合物に水を加えて、100重量%とした。えられた液状物5Lを70℃で20分間加熱して殺菌を行った。
【0025】
得られた飲料は、美味であり、しかも栄養分に富むものであった。
【実施例2】
【0026】
バター(無塩)15.00重量%に、ガックフルーツ(ピューレ)10.00重量%、砂糖15.00重量%を練り込んだ。練り込んだものに、次に全卵5.00重量%を少量ずつ練り込んだ。薄力粉32.80重量%、脱脂乳2.00重量%および食塩0.20重量%を練り込み、さらに大豆粉10.00重量%およびアーモンド粉末10.00重量%を練り込んだ。得られた生成物を成形し、160℃で15分間オーブンで焼いた。得られた製品は、美味であり、栄養分に富むものであった。
【実施例3】
【0027】
タマネギ、ニンニク、ショウガ、バター、カレー粉などを原料として通常の方法で作られたカレーソース95.00重量%にガックフルーツ(ピューレ)5重量%を加えて、よく混合した。得られた製品は、美味であり、栄養分に富むものであった。
【実施例4】
【0028】
サラダ油25重量%に、ガックフルーツ(ピューレ)10.00重量%、砂糖6.00重量%、食塩4.00重量%、魚醤2.00重量%、調味料0.80重量%、香辛料0.20重量%、水14.00重量%を加え、良く混合した。得られた混合物に穀物酢38.00重量%を加えて、良く混和した。得られたドレッシングは、美味であり、生野菜などにかけて食することができた。
【実施例5】
【0029】
サラダ油95.00重量%にガックフルーツ(ピューレ)5.00重量%を加えて、よく混合して、栄養分に富むサラダ油を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガックフルーツを主として含むことを特徴とする飲食品の栄養強化物質。
【請求項2】
ガックフルーツを主として含む栄養強化物質を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−124825(P2010−124825A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328686(P2008−328686)
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【出願人】(508376694)
【Fターム(参考)】