説明

食品及び製造方法

【目的】 芯部が液状又はペースト状でそれを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品が、経日で離水する、形状が萎縮する、芯部のエキスがカプセルの外に流出して風味が低下する、芯部の液体の粘度が低下する等の欠点を解除すると同時に新規な食品を作り出すことにある。
【構成】 カプセル状食品とゲル化性ゾルよりなる食品で、ゲル化性ゾルの割合が5重量%以上になる様にして包装用容器にて密閉する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品で離水のない新規形態の食品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来芯部が液状又はペースト状でそれを包む膜がアルギン酸、ペクチン等の高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品は、経日で前記高分子多糖類と金属塩との反応が進行するにつれて離水が起こり、最終的にはカプセル状食品中に含有する膜の重量程度の量が離水する。例えば造粒直後のカプセル状食品が100gであり、このうちの高分子多糖類の金属塩ゲルの重量が30gとすると、高分子多糖類と金属塩との反応が平衡に達した時点で離水が30gで、カプセル状食品が70gとなり、しかもこの離水によりカプセル状食品の形状の萎縮が起こること、カプセル状食品の芯部のエキスが膜を透過して流出して風味が低下すること、カプセル状食品の芯部の粘度が低下する等の欠点を有し、増粘剤でもって粘度を上げた溶液を、カプセル状食品と共に密封しても、これらの欠点は解決出来ない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする問題点は芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品の経日での離水、形状の萎縮、芯部のエキスの流出、芯部の粘度低下を防止すると共に新規な食品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はアルギン酸、ペクチン等の高分子多糖類の金属塩ゲル、又はアルギン酸、ペクチン等の高分子多糖類の金属塩ゲルで包み込まれたカプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封することにより、カプセル状食品の離水防止、形状の萎縮防止、芯部のエキスの流出の防止、芯部の粘度低下の防止が図れると共に、ゲル化性ゾルの混入量、組成を変えることにより、今まで市場にない新規な食品を作り出すことに成功し本発明を完成した。
【0005】本発明を更に詳細に説明すると、本発明で使用するゲル化性ゾルは、カラギーナン、ファーセレラン、ゼラチン、ジェランガム、サイリュームシードガム、キサンタンガムとローガストビーンガムとの併用、マンナンとキサンタンガム、タマリンド種子多糖類等の溶液であるが、これらに限ったものではないし、これらのゲル化性物質の2種類以上の併用でも良いし、これ等のゲル化性物質と他の多糖類、例えばペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、プルラン、ローガストビーンガム、グアーガム等との併用も可能である。
【0006】これ等のゲル化性物質はゲル形成時のテクスチャーがそれぞれ特有のテクスチャーを有するので求めるテクスチャーにより選択すれば良く、カプセル状食品の離水防止、形状の萎縮防止、カプセル状食品の芯部のエキスの流出防止効果等は同じである。
【0007】カプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封するゲル化性ゾルのゲル化性物質の濃度はゲル強度に与える影響のみで、極端に柔らかいゲルであってもカプセル状食品の離水防止、形状の萎縮防止、芯部のエキスの流出防止効果があるので、求めるテクスチャーにより、それぞれのゲル化剤のゲル形成能に応じて添加濃度を決定すれば良い。
【0008】カプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封するゲル化性ゾルの、カプセル状食品への混入量は、その混入量が少ない場合は、ゲル化性ゾルでカプセル状食品を十分コーチング出来ない為、コーチングされていない部分が生じ、その部分からの離水が生じるので、カプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物の5重量パーセント以上必要である。
【0009】又カプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物は、そのまま開放系に放置しておくと離水現象が促進されるので、混合後は速やかに密封保存した方が良い。以下実験例、実施例を示す。
【0010】実験1 次の配合にて芯液と膜液を調整し、直形6mmのノズルから芯液を膜液に滴下して2分間攪拌反応させてカプセル状食品を調整した。


【0011】別にゲル化性ゾルを調整し前記カプセル状食品90重量パーセントにゲル化性ゾル10重量パーセントの割合で、各品温65℃で混合して、65ccのプラスチック製容器に65g充填し、プラスチック製フィルムにてトップシールして冷蔵庫にて1週間保存した後、離水率、及び形状の萎縮率を試験した。この結果は表1に示す。表中のゲル化性物質の添加濃度は水とゲル化性物質の重量の和で、ゲル化性物質の重量を割った値に100を掛けた値(重量パーセント)であり、離水率は経日後の離水重量を全重量で割って100を掛けた値(重量パーセント)であり、萎縮率はカプセルの造粒直後と経日後の直形の差を造粒直後の直径で割ったものに100を掛けた値(パーセント)である。
【0012】
【表1】


【0013】実験2 実験1にて調製したカプセル状食品と表2に記載のゲル化性ゾルと混合比率を変えて混合し、離水率及び形状の萎縮率を試験した。この結果は表2に示すがゲル化性ゾルの混合割合はカプセルの重量とゲル化性ゾルの重量を加えた値でゲル化性ゾルの重量を割って100を掛けた値(重量パーセント)であり、離水率はゲル化性ゾルと混合する直前のカプセル状食品の重量の和で、混合経日後のカプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物からの離水重量を測定した値を割って100を掛けた値(重量パーセント)である。但し無添加区のみは造粒直後の重量で、経日後の離水重量を割って、100を掛けた値(重量パーセント)である。萎縮率は実験1と同じである。
【0014】
【表2】


【0015】
【実施例】キサンタンガム5g、砂糖350g、1/5オレンジ果汁100g、乳酸カルシウム10g、オレンジフレーバー1g、水534gで芯液を調製する。アルギン酸ナトリウム5gを水995gに溶解して膜液を調製する。芯液を6mmのノズルより滴下して6mmのカプセル状食品1.3Kgを得た。別にタマリンド種子多糖類を0.3g、砂糖40g、クエン酸0.3g、水59.4gを加熱溶解し、ゲル化性ゾルを調製し、これを1300gのカプセル状食品と各品温65℃で混合した。
【0016】このカプセル状食品とゲル化性ゾルの混合物を65ccのプラスチック製の容器に65g充填し、プラスチックのフィルムでトップシールして8℃の冷蔵庫にて保存し1週間後に開封したが、離水は無く、かつ形状の萎縮も無く、これを食したら、カプセル状食品のカプセルの内部がソース状でとろりとした粘度のあるもので、かつ風味も殆ど作りたての時と同じであった。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、芯部が液状又はペースト状でそれを包む膜がアルギン酸とか、ペクチンの高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器に密封することにより、カプセル状食品が経日で離水し、形状が萎縮し、芯部のエキスが流出し風味が低下し、芯部の液の粘度が低下するという欠点が解決出来、かつ、カプセル状食品をゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封するゲル化性ゾルのゲル化性物質の種類、混入量を変えることにより、今まで市場に無い新規なテクスチャーと形態を有する食品を作り得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品を、ゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封することを特徴とする食品。
【請求項2】 請求項1のカプセル状食品と共に包装用容器に密封するゲル化性ゾルの、食品中の含有量が5重量パーセント以上であるもの。
【請求項3】 芯部が液状又はペースト状で、それを包む膜が高分子多糖類の金属塩ゲルであるカプセル状食品を、ゲル化性ゾルと共に包装用容器にて密封することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項4】 請求項3のカプセル状食品と共に包装用容器に密封するゲル化性ゾルの、食品中の含有量が5重量パーセント以上であるもの。