説明

食品容器搬送用シート

【課題】食品容器搬送用シートとして紙製に代わる、優れた耐久性、耐水性を有し、軽量で取り扱い性が良好な食品容器搬送シートを提供することである。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成された食品容器搬送用シートであり、好ましくは厚さ0.8〜3mm、発泡倍率1.1〜3.5倍の範囲にあり、さらに好ましくは多層からなり、表面層が抗菌剤、抗黴剤を含有してなるポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成された食品容器搬送シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器搬送用シートに関する。詳しくは、ペットボトル等の食品容器を、食品容器製造工場内で搬送したり、または、食品容器を製造工場から食品メーカーへ輸送したりする際に使用する食品容器搬送用のポリオレフィン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ペットボトル等の食品容器を、食品容器製造工場内、または、食品容器を食品メーカー等へ輸送するに際し、食品容器を梱包する搬送用の通函、格納、運搬するパレット、または食品容器相互の間に、食品容器を保護するための仕切り材としてシートが用いられている。
このような目的に、従来から、紙製のシートが用いられてきた。しかし、紙製のシートは、剛性や強度等の機械的特性は良好であるが、吸水性や吸油性があり、容器の中身、例えば、清涼飲料、醤油、ソース等の汚れが付着しやすい等、耐汚染性、耐久性に難点があり、長期間使用すると、汚れが蓄積し、食品容器の搬送用として衛生上の観点より実質的に使用できなくなるという欠点がある。
【0003】
このような紙製シートに代わるものとして、樹脂製のシートが上記用途に適用し得る可能性がある。樹脂製のシートとして各種のシートが知られているが、シートの機械的特性や物理的な特性等の諸物性が、食品容器搬送用として要求されるものを満たすものであるかいなかは未だ十分に把握されていない。例えば、食品容器搬送用樹脂製シートの物性の一つとして、衝撃吸収性を有することが重要であり、このような特性を有する樹脂シートとして、特開2003−266522号公報(特許文献1参照)に記載されているような方法で製造されているポリオレフィン系樹脂発泡シートがある。
しかしながら、紙製に代わる食品容器搬送用シートとして、耐水性、耐油性等の耐汚染性や剛性、滑性、重さ等の取扱性や耐久性等に優れた搬送用シートは、未だ実用されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2003−266522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、紙製の食品容器搬送用シートに代わる、優れた耐久性、耐水性、耐汚染性を有し、軽量で取り扱い性が良好な上、食品容器を汚染することなく衛生面での問題が低減された食品容器搬送用の樹脂発泡シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成される発泡シートが、食品容器搬送用として、軽量で、耐水性、耐久性に優れていること、搬送用として適度の剛性、滑性及び重量であり、取り扱いやすさ等に優れ、特に厚みが0.8〜3mmであって、発泡倍率が1.1〜3.5倍の範囲にあるポリオレフィン系樹脂発泡シートが食品搬送用として優れた適用性を有するものであることを見出し、本発明に到った。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成された食品容器搬送用シートである。好ましくは、該ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、厚さ0.8〜3mm、発泡倍率1.1〜3.5倍である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる食品容器搬送シートは、従来使用されている紙製のシートと同様の機械的強度を有する上に、軽量で、搬送用として適度の剛性、滑性を有し、取り扱いが容易であり、耐水性、耐久性に優れ、衛生的に維持、管理が可能で、長期間安定して用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の食品容器搬送用シートは、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いることを必須とする。
熱可塑性樹脂発泡シートとしては、ポリオレフィン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートやポリ塩化ビニル系樹脂発泡シート等が知られているが、ポリオレフィン系樹脂発泡シートが、剛性、加工性、耐候性、機械的強度に優れ、軽量であり取り扱いやすく、食品容器搬送用シート資材として極めて優れている。
一方、汎用熱可塑性樹脂の中でポリスチレン系樹脂発泡体は、剛性、加工性に優れるものの、衝撃強度が弱く、取り扱い時の軽度な衝突等で簡単に破損し易く好ましくない。また、耐熱性が低いため、夏場での搬送時に変形が発生しやすく、好ましくない。また、ポリ塩化ビニル系樹脂発泡体は、剛性、耐候性、加工性、強度に優れるものの、使用後の廃棄処理時に、塩化水素、ダイオキシン等を発生することから環境汚染の問題があり好ましくない。
【0009】
本発明の食品容器搬送用ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤を添加して、押出機等の成形機を用いて、発泡させながらシート状に賦形、固化して成形し、得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートを所定の寸法に切断、打ち抜きなどする方法等によって製造される。
【0010】
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、又これらの中間の中密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、プロピレンホモポリマー、プロピレン、エチレン及びその他のオレフィンから作られるランダムプロピレンコポリマー、プロピレンブロックコポリマー等のポリプロピレン系樹脂、エチレン、プロピレンに第3成分として各種ゴム成分、或いはカルボン酸やメタクリル酸又はそのエステル等を共重合させた変性ポリオレフィンコポリマー、或いはこれら各種ポリオレフィン類を所定の比率で配合したものが含まれる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である。
【0011】
本発明に用いる発泡剤としては、化学発泡剤又は炭酸ガスが挙げられる。樹脂発泡シートをリサイクルする場合、化学発泡剤を発泡成分として用いたものは、その残渣がリサイクル成形時の発泡状態に影響を与えることがある。かかる点を考慮すると、炭酸ガスを発泡成分として用いることが好ましい。
【0012】
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムの他、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド等が挙げられる。炭酸ガスとしては、ガス状、液状、超臨界状態のいずれでも使用することが可能である。
【0013】
これらの化学発泡剤は、粉体、マスターバッチ等、その形態によらず、押出機に投入する前にポリオレフィン系樹脂と配合して、均一に混合される。その配合量は、特に限定されず、得られる発泡体の発泡倍率及び厚みが所望の範囲となるように、通常、後述する量の範囲で調整することができる。
この際、化学発泡剤と共に帯電防止剤、抗菌剤、抗黴剤、各種顔料、染料、着色剤、発泡核剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤、或いはこれらのマスターバッチを必要に応じて配合したり、必要物性確保のため各種フィラー類、或いはフィラーのマスターバッチを配合したりすることも可能である。
なかでも、帯電防止剤、抗菌剤、抗黴剤は、埃の付着、雑菌繁殖の低減の観点から、有効な添加剤である。
【0014】
発泡剤として炭酸ガスを用いる場合にも、化学発泡剤を発泡剤として用いる場合と同様に、上記の各種添加剤を配合することができる。これら各種添加剤を原料樹脂への配合は、一般にヘンシェルミキサー、ブレンダー等を用い、必要に応じて各種液状の展着剤を加えながら混合し均一化させて押出機へ供給する。
【0015】
発泡剤として炭酸ガスを用いる場合、ポリオレフィン系樹脂と必要に応じて配合された各種添加剤との均一混合物が押出機内で混練、可塑化された状態になった後、炭酸ガスを直接押出機内へ圧入する。炭酸ガスの注入方法に特に限定はないが、単軸押出機で一段スクリュー型式のものでは、内圧の関係から超臨界状態、又は液状の炭酸ガスを用いる。二段スクリュー形式の押出機、又はタンデム型式の押出機、或いは、二軸押出機では、ガス状炭酸ガスの注入が可能である。いずれの場合も注入した炭酸ガスは、可塑化された樹脂中に溶解させることが好ましい。炭酸ガスが非溶解の状態で、可塑化樹脂と混合した状態ではダイス内発泡を生じ、発泡シートの表面が著しく荒れるので好ましくない。
【0016】
一般に、帯電防止剤、抗菌剤及び/又は抗黴剤はいずれも、発泡シートに帯電防止効果、抗菌効果及び/又は抗黴効果を賦与するために発泡シートを形成するポリオレフィン系樹脂中に添加すると、コストが高くなるので、シートを3層構造とし、表面層にのみ帯電防止剤、抗菌剤及び/又は抗黴剤を添加することも可能である。
帯電防止剤、抗菌剤及び/又は抗黴剤を含有する表面層と発泡層との3層からなるシートの製造方法としては特に限定されないが、上記のように発泡剤を含み帯電防止剤、抗菌剤及び/又は抗黴剤を含まないポリオレフィン系樹脂を押出機から押出して発泡シートを成形し、その表裏両面に、帯電防止剤、抗菌剤及び/又は抗黴剤を含有するポリオレフィン系樹脂を混練、溶融して、押出し機のダイスから押出して積層する方法や、塗布する方法が挙げられる。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートの成形方法は、特に制限がなく、本願発明に係る発泡シートを製造できる方法であれば、公知の方法が適用できる。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、発泡倍率が1.1〜3.5倍である。通常、シートの発泡倍率は、主として発泡剤の添加量で制御する。発泡倍率を上記範囲に制御するためには、化学発泡剤を用いる場合は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、化学発泡剤0.1〜0.8重量部程度を添加することが好ましい。炭酸ガスを用いる場合は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、炭酸ガス0.2〜1.5重量部程度を添加することが好ましい。
【0018】
本発明の食品容器搬送用のポリオレフィン系樹脂発泡シートを押出成形により成形する際、その押出成形温度は、140〜180℃程度である。押出成形機のダイスより吐出したポリオレフィン系樹脂発泡性シートは、緊張下でシートの表裏両面を冷却して表層部の発泡を抑制しながらシート内部を発泡させる。次いで、シート全体を冷却して賦形する。
また、本発明の食品容器搬送用シートの形成に使用するポリオレフィン系樹脂発泡シートは、厚さが0.8〜3mmである。好ましくは1〜2mmである。取り扱い性、装着性などの観点から、食品容器搬送用シートの比重は、0.25〜0.82g/cc程度であることが好ましい。
【0019】
本発明の食品容器搬送用シートの形成に使用するポリオレフィン系樹脂発泡シートは、比重が0.25〜0.82g/ccである。比重が0.25g/cc未満では、剛性が低くなり、搬送時に変形したり、反りが発生したりして、輸送装置のトラブルが発生し好ましくない。また、0.82g/ccを超えると、従来の紙製のシートよりも重量が大きくなり、搬送時、シートを吸引して動かすような作業において、吸引困難ないしは吸引できない等の不具合が発生する。また、トラックでの輸送の際、従来、積載できていた量の食品容器を積載重量制限のため輸送できなくなり好ましくない。
【0020】
従って、本発明の食品容器搬送シートの厚みは、0.8〜3mmの範囲である。厚みが0.8mm未満であると、剛性が低下し、搬送時に変形したり、反りが発生したり、輸送装置のトラブルが発生し好ましくない。
また、3mmを超えると、重量が重くなり、また、食品容器を積み重ねて使用する際、積み高さが大きくなって、輸送上効率が悪くなる等の不具合が発生する。さらに、従来の搬送設備が使用できなくなる可能性、すなわち、シートが厚いため、従来の搬送のための作業機器の仕様に合致しない可能性がある。
すなわち、本発明の食品容器搬送シートは、厚さが0.8〜3mmの範囲であり、好ましくは1.0〜2.5mm、更に好ましくは1.5〜2mmが推奨される。発泡倍率については、1.1〜3.5倍の範囲である。好ましくは1.3〜2倍の範囲である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により、本発明の食品容器搬送用発泡シートについて、更に詳細に説明する。尚、実施例に示した特性は以下の方法で測定・評価した。
(1)見かけ密度
ミラージュ製MD−200Sの比重測定装置を用いて水中置換法により測定した
(2)曲げ弾性率
JIS K7170(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に準拠し、曲げ弾性率及び曲げ強さを測定した。
(3)吸水率
JIS K7209A法(プラスチック―吸水率の求め方)に準拠し、実施例で得られた重量既知の試料を室温の水に24時間浸漬した後、表面に付着した水分を拭きとって重量を測定し、水に浸漬した前後の重量差から吸水率を算出した。
c(wt%)=(m−m)/m×100
c:吸水率(wt%)
:浸漬前の重量
:浸漬後の重量
【0022】
(4)臭気性(官能試験)
実施例で得られた重量既知の試料を醤油、ソースに24時間浸漬した後、表面に付着した醤油、ソースを拭きとって、シートの残存する臭いを官能的に測定した。
〇:若干臭う
×:かなり臭う
(5)静摩擦係数
ASTM D−1984に準じて測定した。
【0023】
<製造設備>
押出機(池貝社製、二段スクリュー形式、シリンダー径:40mm、L/D:32)の先端に、ダイス幅250mmのTダイを設置した。
<エンドレススチールベルトの概要>
外径110mmのジャケットロールを上側に8本、下側に8本をそれぞれロール間隔120mmで水平となるように並べて設置し、上下各8本のロール全体をそれぞれ厚みが0.3mmのステンレス製スチールベルトで覆い、ベルト先端部と後端部を接続して、上下一対のエンドレススチールベルトとした(シート搬送距離が840mm)。エンドレススチールベルトの走行速度を0〜5m/min.で可変調整出来るようにした。エンドレススチールベルトのシート入口側ジャケットロールには、オイル循環温調器を設置(上下共通)し、250〜40℃の範囲の温度制御ができるようにし、シート排出側ジャケットロールには、冷却器付き温水循環器を設置(上下共通)し、5〜60℃の範囲の温度制御ができるようにした。シート入口側から2番目〜7番目のジャケットロールは上下2対づつにそれぞれ温調器を設置し、エンドレススチールベルトは全体を5段に区分して温度制御できるようにした。
【0024】
実施例1
非架橋ポリオレフィン樹脂として、ブロックポリプロピレン〔(株)グランドポリマー製、商品名:J−705〕80重量部、低密度ポリエチレン〔三井化学(株)製、商品名:ミラソン102〕20重量部、化学発泡剤としてアゾジカルボアミド〔大塚化学(株)製、商品名:ユニフォーム、以下、ADCAという〕0.2重量部をカレンダーで配合し樹脂組成物とした。得られた樹脂組成物を、前記製造設備を用いて170℃で混練、溶融し、押し出した。
前記上下一対のエンドレススチールベルト(シート搬送速度0.25m/min.、シート入口温度90℃、シート排出温度20℃)間に挿入し、賦形、冷却し、厚さ1.8mm、発泡倍率1.3倍の発泡シートを得た。諸物性を表1に示す。
【0025】
実施例2
化学発泡剤の量を0.3重量部とした以外は、実施例1と同様に押出し、成形を行い、厚さ2mm、発泡倍率2倍の発泡シートを得た。諸物性を表1に纏めて示す。
【0026】
実施例3
化学発泡剤の量を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様に押出し、成形を行い、厚さ2mm、発泡倍率3倍の発泡シートを得た。諸物性を表1に纏めて示す。
【0027】
比較例1
市販の紙製シート(厚み1.78mm,密度0.824g/cc)について、性能を評価した。結果を表1に纏めて示す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
食品容器搬送用シートは、紙製のシートが使用されている。紙製シートは、剛性が非常に高い点で、搬送シートとして使用されているが、吸水性、吸油性が高く食品容器用としては、容器の中身により汚染され、その上、菌又は黴にも汚染されやすく、長期に使用するには問題があった。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成されるシートは、食品容器搬送用として、耐水性、耐久性、耐汚染性に優れ、長期間使用できる。また、リサイクルが可能であり経済性、環境保護上の利点もある。したがって、本発明の食品容器搬送用シートは、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートから形成された食品容器搬送用シート。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートが、厚さ0.8〜3mm、発泡倍率1.1〜3.5倍である請求項1記載の食品容器搬送用シート。

【公開番号】特開2008−265835(P2008−265835A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112847(P2007−112847)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000111432)三井化学ファブロ株式会社 (36)
【Fターム(参考)】