説明

食品容器

【課題】食品を容器から出して皿の上に置いた状況を簡単に実現できる食品容器を提供する。
【解決手段】食品容器1は、皿10と、皿10の上面に装着されるリング20と、リング20の環状壁21の外周面に貼着され、環状壁21と協働して食品充填空間Sを形成するとともに、環状壁21からの剥離が可能な剥離帯30を備える。環状壁21から剥離帯30を剥離すると、食品充填空間Sに充填されていた食品Fの側面が露出する。皿10の上面には食品回り止め突起16が形成されており、そのため食品Fは中心軸まわりに回転することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム、ゼリー、プリンのような本質的に不定形で軟らかい食品のための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム、ゼリー、プリンなどのように、本質的に不定形であって軟らかく、型で形を整えるタイプの食品では、食品容器を食品成形型に兼用することがしばしば行われる。そのような食品容器の例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
また合成樹脂で容器を成形する際、金型にラベルを装着し、容器とラベルを一体として成型する、インモールドラベルの手法がしばしば用いられる。その一例を特許文献2に見ることができる。
【特許文献1】実開昭56−121679号公報
【特許文献2】特開2004−256165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリンは通常、上広がりのテーパ状容器に入れられており、この容器を皿の表面に伏せ、中身を皿の上に出して食べる。プリンが落ちやすいよう、内部に空気を入れるための穴を開ける仕組みを備えた容器もある。特許文献1に記載されたものもその一例である。
【0005】
アイスクリームでも大型容器に入ったものを多人数で食べるときは、中身を皿の上に出して切り分ける。
【0006】
このように、本質的に軟らかい食品であって、中身を容器から皿に移すタイプのものの場合、中身が形崩れすることなくスムーズに容器から出てくれないと困るのであるが、プリンはともかく、アイスクリームやケーキなどは容器内壁への付着性が高く、容器の底に穴を開けて空気を入れる程度の対策では効き目がないことが多い。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、食品を容器から出して皿の上に置いた状況を簡単に実現できる食品容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するため、本発明では食品容器を次のように構成した。すなわち
食品容器は、皿と、前記皿の上面に設けられる環状壁と、前記環状壁の外周面に貼着され、環状壁と協働して食品充填空間を形成するとともに、環状壁からの剥離が可能な剥離帯とを備える。
【0009】
この構成によると、剥離帯を剥離すれば食品充填空間に充填されていた食品の側面が露出し、食品を皿に載置したのと同じ状態が得られる。容器を注意深く皿の上に伏せ、形を崩さないように容器から食品を出すといった気遣いは不要である。軟らかい食品であっても、大人数用に大直径にすることが可能である。また容器の一部が皿であるから、食品の大きさに釣り合う大きさの皿を探さなくて済む。
【0010】
(2)また本発明は、上記構成の食品容器において、前記食品充填空間が円錐台形状をなすことを特徴としている。
【0011】
この構成によると、剥離帯の剥離後、食品が形態を保ちやすく、形崩れしにくい。
【0012】
(3)また本発明は、上記構成の食品容器において、前記皿に装着されるリングに前記環状壁を形成したことを特徴としている。
【0013】
この構成によると、環状壁の外周面に剥離帯を貼着する作業が簡単になる。またリングと剥離帯の組み合わせをスタッキングしておけるから、食品充填工程において、食品充填前の容器に大空間を占拠されずに済む。
【0014】
(4)また本発明は、上記構成の食品容器において、前記リングと剥離帯はインモールド成形で結合されていることを特徴としている。
【0015】
この構成によると、リングを射出成型すると同時に剥離帯を環状壁に貼着することができ、貼着にかける手間が不要となる。
【0016】
(5)また本発明は、上記構成の食品容器において、前記リングの上面にはスタッキング時上に重なるリングの下面に当たる間隔維持突起が形成されていることを特徴としている。
【0017】
この構成によると、スタッキングしたリングと剥離帯の組み合わせを容易に分離でき、皿に対するリングの装着を自動化したとしても、その自動装着装置でリングと剥離帯の供給不良が起きる懸念が少ない。
【0018】
(6)また本発明は、上記構成の食品容器において、前記皿の上面に食品回り止め突起が形成されることを特徴としている。
【0019】
この構成によると、食品が皿の上で回らないので、剥離帯を容易に、安定して剥離することができる。また飲食時には食品にナイフやスプーンを容易に突き刺すことができる。食品を切り分ける際、食品が回らないように指で押さえておくなどといった不衛生な行為もしなくて済む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、剥離帯を剥離するだけで、食品充填空間に充填されていた食品の側面が露出し、食品を皿に載置したのと同じ状態が得られる。軟らかい食品であっても形崩れさせずに済み、また大人数用に大直径にすることが可能である。しかも容器の一部が皿であるから、食品の大きさに釣り合う大きさの皿を探さなくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る食品容器の実施形態を図1−5に基づき説明する。図1は食品充填状態の食品容器の斜視図、図2は食品容器の分解斜視図、図3は食品充填前の食品容器の垂直断面図、図4は食品充填状態の食品容器の垂直断面図、図5は図4の状態から剥離帯を取り去った状態の垂直断面図、図6はリングと剥離帯の結合体をスタッキング状態にした状況を示す断面図である。
【0022】
食品容器1は3個の構成要素からなる。すなわち皿10、リング20、及び剥離帯30である。
【0023】
皿10はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂を射出成型したものであり、水平な円板部11の周囲に幅の狭いリム12を備える。リム12は擂り鉢状の傾斜面を形成する。円板部11とリム12の境界には高さの低い環状壁13が形成され、その内面にはリング20の上方への抜け出しを防ぐ突起14が90°間隔で4箇所に形成されている。円板部11の下面には糸底15(図4参照)が形成され、また円板部11の上面中央には半円形の板を立てた形状の食品回り止め突起16が形成される。
【0024】
リング20は皿10と同様の汎用樹脂を射出成型したものであり、皿10の環状壁13の中にはめ込まれると突起14によって円板部11に押し付けられ、円板部11に密着する。リングの内周縁には環状壁21が形成されている。環状壁21は環状壁13よりも高く、その外周面は上すぼまりのテーパ面となっている。リング20の外周縁と環状壁21との間の位置には、リング20をスタッキングしたときに上に重なるリング20の下面に当たる間隔維持突起22が所定間隔で形成されている。
【0025】
剥離帯30はリング20の環状壁21を一巻きする形でその外周面に貼着され、環状壁21と協働して皿10の上に食品充填空間S(図3参照)を形成する。剥離帯30は環状壁21の外周テーパ面を延長する形で延びており、その結果、食品充填空間Sは円錐台形状をなす。食品充填空間Sに充填される食品F(図4参照)も円錐台形状となる。
【0026】
剥離帯30には、食品充填空間Sに充填される食品Fの圧力に耐える「腰の強さ」及び「環状壁21への付着力の強さ」が求められる。また、食品Fの成分がにじみ出すようなものであってはならず、食品Fに悪影響を及ぼすものであってもならない。このような条件を満たす素材の例としては、次のようなものがある。
a.合成紙
b.二軸延伸ポリプロピレン/ヒートシールポリプロピレン
c.二軸延伸ポリプロピレン/印刷層/アルミ箔/ヒートシールポリプロピレン
上記b、cはそこに掲げられた材料を掲示順に積層したものである。
【0027】
上記材料を扇形に打ち抜いた剥離帯30をリング20の射出成型金型に入れ、インモールド成型でリング20に剥離帯30を一体化する。ヒートシール樹脂(上記例ではヒートシールポリプロピレン)を含む積層材料では、ヒートシール樹脂がリング20に接するようにする。
【0028】
剥離帯30は両端が重なり合うようにして射出成型金型に入れる。重なりの外側に位置する方の端はリング20には貼着されず、この部分はリング20から剥離帯30を剥離するときの指がかりとなる。指がかりであることを示す矢印マーク31(図1参照)がそこに印刷されている。
【0029】
インモールド成型により得られたリング20と剥離帯30の結合体は、図6に示すように順次上に積み重ねる、すなわちスタッキングすることができる。スタッキングの際、間隔維持突起22が上に重なるリング20の下面に当たり、リング同士の間隔を維持する。このため、下側の剥離帯30の円錐台形状に上側の剥離帯30の円錐台形状がきつく嵌合することがなく、上下の結合体を容易に分離できる。これは、手作業によるか自動機械によるかを問わず、皿10に組み合わせるためにリング20と剥離帯30の結合体を取り上げる作業を楽にする。
【0030】
剥離帯30を貼着したリング20を上方から皿10の環状壁13の中に押し込むと、リング20は突起14でかかえられる形になり、図3に示す食品容器1の完成形態が得られる。
【0031】
皿10とリング20の結合については、本実施形態のような嵌合方式以外の手法、例えばヒートシールによる接着や超音波溶着なども採用可能である。
【0032】
完成形態の食品容器1を食品充填工程に送り、食品充填空間Sに食品Fを充填する。すると図4の状態になる。この状態の食品容器1にラッピングやカートン詰め等必要な外装を施し、流通過程に送り出す。
【0033】
食品Fを購入した消費者は、カートンから食品容器1を取り出した後、剥離帯30を剥離する。すると図5のように、円錐台形状の食品Fが、側面を露出させ、皿10に載った状態で現れる。この時点から食べ始めることができる。
【0034】
剥離帯30を引っ張ることにより食品Fに中心軸まわりのモーメントが与えられたとしても、食品回り止め突起16があるので食品は回転しない。そのため、食品Fが回らないように指で押さえる必要がなく、剥離帯30を容易に、衛生的に剥離することができる。剥離帯30を剥離した後、食品Fの一方の端にナイフやスプーンを突き刺したときにも食品Fは回転しないので、食品Fを指で押さえないまま衛生的に切り分け作業を行うことができる。
【0035】
食品回り止め突起16の形状は図示のような半円形に限られず、その位置も円板部11の中央に限られない。食品Fが環状壁21の内側で回転しないという目的さえ達成できれば、どのような構成のものでも採用可能である。
【0036】
また本実施形態では皿10と別体のリング20に剥離帯30を貼着する環状壁21を設けたが、環状壁21に相当する環状壁を皿10自体に形成し、リング20を省略する構成も可能である。
【0037】
以上本発明の実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨から逸脱しない範囲で種々の改変を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、アイスクリーム、ゼリー、プリン等軟質の食品の容器として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】食品充填状態の食品容器の斜視図
【図2】食品容器の分解斜視図
【図3】食品充填前の食品容器の垂直断面図
【図4】食品充填状態の食品容器の垂直断面図
【図5】図4の状態から剥離帯を取り去った状態の垂直断面図
【図6】リングと剥離帯の結合体をスタッキング状態にした状況を示す断面図
【符号の説明】
【0040】
1 食品容器
10 皿
11 円板部
12 リム
13 環状壁
14 突起
16 食品回り止め突起
20 リング
21 環状壁
22 間隔維持突起
30 剥離帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿と、前記皿の上面に設けられる環状壁と、前記環状壁の外周面に貼着され、環状壁と協働して食品充填空間を形成するとともに、環状壁からの剥離が可能な剥離帯とを備えることを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記食品充填空間が円錐台形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の食品容器。
【請求項3】
前記皿に装着されるリングに前記環状壁を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の食品容器。
【請求項4】
前記リングと剥離帯はインモールド成形で結合されていることを特徴とする請求項3に記載の食品容器。
【請求項5】
前記リングの上面にはスタッキング時上に重なるリングの下面に当たる間隔維持突起が形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の食品容器。
【請求項6】
前記皿の上面に食品回り止め突起が形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の食品容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−195416(P2008−195416A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30763(P2007−30763)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】