食器洗浄装置および食器洗浄方法
【課題】食器を適切に洗浄できる食器洗浄装置を提供する。
【解決手段】食器洗浄装置1は、複数の食器2を重ねて収納した食器カゴ3を移動させながら、食器カゴ3内の食器2を洗浄するものである。食器洗浄装置1は、浸漬水を貯留する浸漬槽21と、この浸漬槽21の上方に位置する洗浄室22とを備える。食器洗浄装置1は、食器カゴ3が浸漬槽21内の浸漬水中および洗浄室22を順次通過するように、食器カゴ3を搬送する搬送手段23を備える。食器洗浄装置1は、食器カゴ3内の食器2を浸漬水の浸漬および洗浄水の噴射によって洗浄する。
【解決手段】食器洗浄装置1は、複数の食器2を重ねて収納した食器カゴ3を移動させながら、食器カゴ3内の食器2を洗浄するものである。食器洗浄装置1は、浸漬水を貯留する浸漬槽21と、この浸漬槽21の上方に位置する洗浄室22とを備える。食器洗浄装置1は、食器カゴ3が浸漬槽21内の浸漬水中および洗浄室22を順次通過するように、食器カゴ3を搬送する搬送手段23を備える。食器洗浄装置1は、食器カゴ3内の食器2を浸漬水の浸漬および洗浄水の噴射によって洗浄する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器を適切に洗浄できる食器洗浄装置および食器洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された食器洗浄装置が知られている。
【0003】
この従来の食器洗浄装置は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴ(食器の収納具)を搬送するコンベヤと、このコンベヤにて搬送中の食器カゴ内の食器に対して洗浄水を噴射する複数のノズルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173258号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の食器洗浄装置では、食器に付着した付着物(汚れ等)の状態によっては、その付着物が除去されず、食器に付着したまま残ってしまう場合があり、食器を適切に洗浄できないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、食器を適切に洗浄できる食器洗浄装置および食器洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の食器洗浄装置は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄装置であって、前記食器カゴ内の食器が浸漬液に浸漬されることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる浸漬槽と、前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙が生じてその間隙に洗浄液が入り込むことにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる洗浄室と、前記食器カゴが前記浸漬槽内の浸漬液中および前記洗浄室を順次通過するように、前記食器カゴを搬送する搬送手段とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の食器洗浄装置は、請求項1記載の食器洗浄装置において、浸漬槽内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射し、この噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で前記食器カゴ内の食器を回転させる食器回転用噴射手段を備えるものである。
【0009】
請求項3記載の食器洗浄装置は、請求項1または2記載の食器洗浄装置において、洗浄室の食器カゴ移動領域の上方に配設され、食器カゴ内の食器に対してカーテン状の洗浄液を鉛直下方に向けて噴射する上噴射手段と、前記洗浄室の食器カゴ移動領域の下方に配設され、前記食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射する下噴射手段とを備えるものである。
【0010】
請求項4記載の食器洗浄装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の食器洗浄装置において、洗浄室は、浸漬槽の上方に配設されているものである。
【0011】
請求項5記載の食器洗浄方法は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄方法であって、浸漬槽内で前記食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行い、その後、洗浄室で前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙を生じさせてその間隙に洗浄液を入り込ませることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行うものである。
【0012】
請求項6記載の食器洗浄方法は、請求項5記載の食器洗浄方法において、浸漬槽内での洗浄の際に、洗浄液の噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で食器カゴ内の食器を回転させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄室で食器カゴ内の食器の洗浄を行う前に、浸漬槽内で食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させて食器カゴ内の食器の洗浄を行うため、食器を適切に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る食器洗浄装置の側面視断面図である。
【図2】同上食器洗浄装置の正面視断面図である。
【図3】複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴの斜視図である。
【図4】同上食器カゴの側面図である。
【図5】同上食器カゴの平面図である。
【図6】同上食器カゴの移動方向が食器重ね方向と直交する場合における食器洗浄状態を示す正面図である。
【図7】同上における食器洗浄状態を示す側面図である。
【図8】同上食器カゴの移動方向が食器重ね方向と一致する場合における食器洗浄状態を示す正面図である。
【図9】同上における食器洗浄状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1および図2において、1は食器洗浄装置で、例えば給食センター等に設置されて使用される浸漬槽付き立体式カゴごと洗浄装置である。
【0017】
食器洗浄装置1は、互いに隣り合う食器2のうちの一方の食器2の表面(食材を載せる側の面)と他方の食器2の裏面とが介在部材(例えば特開平10−137172号記載の移動可能な保持部材等)を介さずに互いに直接接触して対向するように複数の食器2が水平方向に重ねられて収納された食器カゴ3を連続的に移動させながら、食器カゴ3内の食器2を自動洗浄するものである。
【0018】
食器2は、図3ないし図5等に示されるように、例えば円形状の開口部5を表面側に有する皿である。食器2は、円形状の底面部6と、この底面部6の周端部に設けられ上方に向って徐々に拡径する截頭円錐筒状の側面部7と、この側面部7の上端部全周に外側方に向って突設された鍔部8とを有している。
【0019】
なお、洗浄対象物である食器2は、円形状の皿には限定されず、円形状の椀やトレイ等でもよく、4角等の多角形状の皿、椀やトレイ等でもよい。
【0020】
食器カゴ3は、図3ないし図5等に示されるように、例えば金属製の複数本の棒状部材が組み合わされて構成された外形略直方体状の金網カゴ等である。
【0021】
食器カゴ3は、複数の食器2が水平方向である食器重ね方向に直接重ねられて収納される食器収納部(食器収納空間)11を内部に有するとともに、この食器収納部11に対して食器2の出し入れをするための矩形状の開口部12を上面に有している。
【0022】
また、食器カゴ3は、食器収納部11に鉛直姿勢(自重に基づいて鉛直方向に対してやや傾斜した姿勢を含む)で水平な食器重ね方向に重ねられて収納された複数の食器2を下方から支持する食器支持体である下支持部13を下面に有している。下支持部13は、例えば食器カゴ3内の食器2の食器重ね方向に長手状で互いに平行な水平状の複数本、例えば2本の支持棒14のみにて構成されている。
【0023】
さらに、食器カゴ3は、食器収納部11に収納された複数の食器(食器群)2のうちの一方端の食器2(食器2a)の表面が当接する一方側当接部16を一側面に有するとともに、食器収納部11に収納された複数の食器2のうちの他方端の食器2(食器2b)の裏面が当接する他方側当接部17を一方側当接部16側とは反対側の他側面に有している。一方側当接部16は略T状をなす当接棒18にて構成され、他方側当接部17も同じく略T状をなす当接棒19にて構成されている。
【0024】
そして、食器カゴ3内には、互いに隣り合う食器2のうちの一方の食器2の表面(内面)と他方の食器2の裏面(外面)とが介在部材を介さずに互いに接触して対向するように、複数の食器2が水平な食器重ね方向に重ねられて収納される。
【0025】
なお、ここでいう一方の食器2の表面と他方の食器2の裏面とが互いに接触する場合には、表面と裏面とが厳密な意味で接触する場合のほか、表面と裏面とが略接触する場合も含まれる。すなわち例えば、互いに隣り合う食器2間に食器2に付着した汚れである付着物(残飯、残汁等の残滓)が存在して表面と裏面とが若干離れている場合も含まれる。
【0026】
ここで図3ないし図5には、食器カゴ3内に複数の食器2が隣り合うもの同士が互いに接触した状態で水平な食器重ね方向に重ねられて収納された状態の例が示されている。
【0027】
この例においては、図4および図5から明らかなように、他方端の食器2(食器2b)は他方側当接部17に当接しているが、一方端の食器2(食器2a)は一方側当接部16に当接しておらず、一方端の食器2(食器2a)と一方側当接部16との間には食器カゴ3内で食器2が下支持部13にて支持された状態で動くように所望の大きさの空間部20があり、食器2は食器カゴ3内で食器重ね方向に不安定な状態となっている。つまり、洗浄対象物である複数枚の食器2は、鉛直姿勢の状態で、空間部20に相当する余裕を持って食器カゴ3内に食器重ね方向に沿って移動可能に収納されている。
【0028】
食器洗浄装置1は、図1および図2等に示されるように、食器カゴ3内の食器2がその食器カゴ3とともに全体が浸漬液である浸漬水aに浸漬されることにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄(前処理洗浄)が行われる浸漬槽21と、食器カゴ3内の食器2に対する洗浄液である洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる洗浄室22とを備えている。また、食器洗浄装置1は、食器カゴ3が浸漬槽21内の浸漬水a中および洗浄室22を順次通過するように、複数の食器カゴ3を搬送する搬送手段23を備えている。
【0029】
浸漬槽21が洗浄装置本体25の下部に設けられ、洗浄室22が洗浄装置本体25の上部に設けられており、この洗浄室22は浸漬槽21の上方に配設されている。
【0030】
浸漬槽21は、所定量の浸漬水aが貯留されるもので、例えば前後方向にやや長手状に形成されており、この浸漬槽21の前端側上方には、複数の食器2が収納された食器カゴ3を投入するための投入口26が配設されている。つまり、洗浄前の食器2が収納された食器カゴ3を投入するための水平状の投入口26が洗浄装置本体25の一端側である前端側に設けられている。そして、洗浄後の食器2が収納された食器カゴ3を排出するための鉛直状の排出口27が洗浄装置本体25の他端側である後端側に設けられている。
【0031】
また、浸漬槽21内の食器カゴ移動領域(浸漬槽21内における食器カゴ3が移動する領域)の下方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方(食器2の移動方向に対して横斜め上方)に向けて噴射しこの噴射により浸漬槽21内の浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2をその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して回転させる複数(例えば7つ)の食器回転用噴射手段31が互いに間隔をおいて配設されている。
【0032】
食器回転用噴射手段31は、左右方向に細長い水平状に形成され浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬されたパイプ部32と、このパイプ部32に上方に向って突出するように設けられ互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数のノズル部33とを有している。ノズル部33は、正面視略くの字状のもので、傾斜状の上端面に噴射口部34を有している。なお、それぞれのパイプ部32に設けられた各ノズル部33の噴射口部34は、全て同じ方向に向けられている。
【0033】
そして、浸漬槽21内の浸漬水a中において、浸漬噴射口部34から洗浄水bが斜め上方に向けて噴射され、この噴射された洗浄水bが食器カゴ3内の食器2の円中心部以外に当たると、その食器2が食器カゴ3内で回転する。なお図示しないが、例えば浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31には浸漬槽21内の浸漬水aが圧送されて供給されるようになっており、食器回転用噴射手段31の噴射口部34から噴射される洗浄水(洗浄液)bとして、浸漬槽21内の浸漬水(浸漬液)aが使用される。
【0034】
洗浄室22は、下段主洗浄室部(第1洗浄室部)41と、この下段主洗浄室部41の一方側上方である前側上方に位置する上段主洗浄室部(第2洗浄室部)42と、下段主洗浄室部41の他方側上方である後側上方に位置する仕上げ洗浄室部(第3洗浄室部)43とを有している。
【0035】
下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域(下段主洗浄室部41における食器カゴ3が移動する領域)の上方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射する複数(例えば12)の上噴射手段(上洗浄ノズル)46が互いに間隔をおいて配設されている。下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域の下方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方(食器2の移動方向に対して横斜め上方)に向けて噴射する複数(例えば6つ)の下噴射手段(下洗浄ノズル)47が互いに間隔をおいて配設されている。
【0036】
なお、上段主洗浄室部42においても、下段主洗浄室部41と同じように、複数(例えば6つ)の上噴射手段46および複数(例えば3つ)の下噴射手段47が食器カゴ移動領域の上方および下方にそれぞれ配設されている。また、仕上げ洗浄室部43においても、下段主洗浄室部41と同じように、複数(例えば7つ)の上噴射手段46および複数(例えば4つ)の下噴射手段47が食器カゴ移動領域の上方および下方にそれぞれ配設されている。
【0037】
上噴射手段46は、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射する左右方向に細長いスリット状の噴射口部50を水平状の下面に有している。
【0038】
下噴射手段47は、左右方向に細長い水平状のパイプ部52と、このパイプ部52に上方に向って突出するように設けられ互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数のノズル部53とを有している。ノズル部53は、正面視略くの字状のもので、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方に向けて噴射する噴射口部54を傾斜状の上端面に有している。なお、パイプ部52の長手方向寸法は、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50の長手方向寸法(搬送手段23の左右方向寸法である幅寸法)と略同じである(図2参照)。
【0039】
また、下段主洗浄室部41、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各々に配設されている下噴射手段47のパイプ部52に設けられた各ノズル部53の噴射口部54は、全て同じ方向に向けられており、浸漬槽21に配設されている食器回転用噴射手段31のパイプ部32に設けられた各ノズル部33の噴射口部34と同じ方向となっている。
【0040】
なお、上噴射手段46が有するスリット状の噴射口部50と、下噴射手段47が有するパイプ部52の長手方向に間隔をおいて並ぶ複数の噴射口部54とは、同じ垂直面上に位置しないように配置されており、下噴射手段47の噴射口部54からの洗浄水による食器2の回転が上噴射手段46の噴射口部50からの洗浄水によって弱められることを防止するようになっている。つまり、下噴射手段47の噴射口部54は、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50の真下位置から食器移動方向に沿った方向に少しずれた位置に配置されている。
【0041】
また、図1に示されるように、下段主洗浄室部41の上噴射手段46および上段主洗浄室部42の上噴射手段46には、主洗浄用タンク56内の洗浄水bが主洗浄用ポンプ57の作動により主洗浄用配管58から供給される。また、仕上げ洗浄室部43の上噴射手段46には、仕上げ洗浄用タンク61内の洗浄水bが仕上げ洗浄用ポンプ62の作動により仕上げ洗浄用配管63から供給される。
【0042】
なお図示しないが、下段主洗浄室部41の下噴射手段47および上段主洗浄室部42の下噴射手段47には主洗浄用タンク56内の洗浄水bが圧送されて供給され、仕上げ洗浄室部43の下噴射手段47には仕上げ洗浄用タンク61内の洗浄水bが圧送されて供給される。
【0043】
さらに、下段主洗浄室部41の下噴射手段47および上段主洗浄室部42の下噴射手段47の各々の下方には、主洗浄用水受け体59がぞれぞれ配設されている。そして、主洗浄用水受け体59に入った洗浄水(洗浄後の汚れた排水である主洗浄水)bが、主洗浄用水受け体59から主洗浄用タンク56へと流れる。また、仕上げ洗浄室部43の下噴射手段47の下方には、仕上げ洗浄用水受け体64が配設されている。そして、仕上げ洗浄用水受け体64に入った洗浄水(洗浄後の汚れた排水である仕上げ洗浄水)bが、仕上げ洗浄用水受け体64から仕上げ洗浄用タンク61へと流れる。
【0044】
また、搬送手段23は、互いに離間対向する左右1対の無端体であるチェーン71を有し、このチェーン71は駆動手段であるモータ72からの動力で所定方向に回行する。チェーン71の等間隔をおいた複数箇所には、複数個、すなわち例えば4個の食器カゴ3を載置可能な食器カゴ支持体73が設けられている。
【0045】
食器カゴ支持体73は、チェーン71に対して水平方向の軸74を中心として回動可能な左右1対の回動フレーム75と、この回動フレーム75に取り付けられ食器カゴ3が載置される折り畳み可能な食器カゴ支持枠(載せ枠)76と、回動フレーム75に回転可能に取り付けられ水平状のガイド板80上を走行するガイドローラ77とを有している。このガイドローラ77がガイド板80上を回転しながら走行するため、洗浄水bが当たっても食器カゴ支持枠76上の食器カゴ3が前後に回動(揺動)しないようになっている。
【0046】
また、食器カゴ支持枠76は、例えば食器カゴ3と同様、金属製の複数本の棒状部材が組み合わされて構成されている。そして、食器カゴ支持枠76は、浸漬槽21内の浸漬水a中において浸漬槽21の底部付近を投入口26側に向かって移動する場合にのみ、食器カゴ3を支持する通常状態に比べて高さの低い折り畳み状態となり、浸漬槽21の容積を抑えるようにしている(図1参照)。
【0047】
次に、上記食器洗浄装置1の作用等を説明する。
【0048】
作業者は、例えば上下方向に積み重ねた複数の食器2を横にして収納した図3ないし図5に示す状態の食器カゴ3を、投入口26から浸漬槽21内に投入し、その浸漬槽21内の浸漬水a中における食器カゴ支持枠76上に載せる。
【0049】
この際、食器カゴ3の載せ方としては、2通りある。すなわち、第1の載せ方は、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3の移動方向(搬送方向)が食器重ね方向と直交するように、食器カゴ3を搬送手段23の食器カゴ支持枠76上に載せる方法である(図6および図7参照)。第2の載せ方は、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3の移動方向(搬送方向)が食器重ね方向と一致するように、食器カゴ3を搬送手段23の食器カゴ支持枠76上に載せる方法である(図8および図9参照)。
【0050】
そこで、まず、第1の載せ方で載せた場合(図6および図7参照)の洗浄について説明する。
【0051】
投入口26から投入されて食器カゴ支持枠76の底部上に載せられた食器カゴ3内の複数の食器2は、その食器2の開口部5と浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31から噴射されてくる洗浄水bとが互いに向かい合うようにして、その食器全体が食器カゴ3とともに浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬され、この浸漬された状態のまま浸漬槽21内の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、A方向)に向って移動する。
【0052】
この際、食器カゴ3内の食器2は、浸漬水aへの浸漬により洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。なお、例えば食器2の表面に固くこびり付いた付着物は、水分を吸収して膨軟になり、除去されやすくなる。
【0053】
またこの際、浸漬水a中の食器回転用噴射手段31が、上方を通過していく食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中の食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。
【0054】
しかも、その食器回転用噴射手段31からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるときには、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2がその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して一方向および他方向に回転し、食器2に対する洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2の付着物除去および浸漬が促進される。なお、浸漬水a中では、食器2に浮力が作用するため、食器2は食器カゴ3内で回転しやすくなっている。
【0055】
そして、このような浸漬槽21内での洗浄後、食器カゴ支持枠76上に載せられた食器カゴ3は、下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、B方向)に向って移動し、その後、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、C方向)に向って移動する。
【0056】
この際、上噴射手段46が、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射するとともに、下噴射手段47が、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる。
【0057】
つまり、図6に示すように、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50からの食器重ね方向に沿ったカーテン状の洗浄水b、すなわち食器カゴ3の移動方向と直交する水平方向寸法以上の幅寸法を有するカーテン状の洗浄水bが、各食器カゴ3内のすべての食器2に上方から当たると、例えば他方側当接部17に当接した他方端の食器2以外の食器2は、一方端の食器2が一方側当接部16に当接するまで、一方側当接部16側の空間部20側に向って一斉に水平移動し、隣り合う食器2から離れる。その結果、食器カゴ3内のすべての食器2に関して互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が同時に生じ、これらの各間隙に洗浄水bの一部が入り込み、この入り込んだ洗浄水bによって食器2の表面および裏面に付着した付着物が除去される。そのカーテン状の洗浄水bによって生じる各間隙の大きさは略等しく、洗浄水bが入り込んで食器2の付着物を除去するのに十分な大きさである。間隙がわずかな大きさであっても洗浄水bが入り込めば水流および浸漬効果によって食器2の汚れが除去される。
【0058】
なお、すべての食器2に関して隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じるとあるが、ここでいう「すべて」には厳密な意味でのすべてのほか、略すべての意味が含まれる。すなわち例えば隣り合う食器2間に残飯等の付着物が付着しているために、洗浄用の間隙が生じにくいことがある。この場合には、2番目以降の少なくともいずれかの上噴射手段46からの洗浄水bによって隣り合う食器2間に間隙が生じることとなる。
【0059】
またこの際、図7に示すように、上噴射手段46からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるときには、隣り合う食器2との間に洗浄用の間隙を保持した状態で、食器カゴ3内のすべての食器2が、主として上噴射手段46からのカーテン状の洗浄水bから受ける力で、食器カゴ3の移動方向前側が下方に向う方向(一方向)および食器カゴ3の移動方向後側が下方に向う方向(他方向)に向って食器カゴ3に対して回転してカーテン状の洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2全体にカーテン状の洗浄水bが効率的に当たることとなり、食器2の洗浄が確実となる。
【0060】
なお、食器カゴ3内の食器2は、下噴射手段47からの洗浄水bからも補助的な回転力を受ける。また、上噴射手段46からのカーテン状の洗浄水bによって食器カゴ3内の隣り合う食器2間の間隙の下側が上側よりも狭くなろうとするが、下噴射手段47からの洗浄水bを隣り合う食器2間の間隙の下側に送り込むことで、食器2間の間隙の下側が狭くなるのを防止している。
【0061】
このようにして、食器カゴ3内の食器2は、洗浄室22における各洗浄室部41,42,43において洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。作業者は、食器洗浄後の食器カゴ3を食器カゴ支持枠76上から持ち上げ、排出口27から取り出す。
【0062】
次いで、第2の載せ方で載せた場合(図8および図9参照)の洗浄について説明する。
【0063】
投入口26から投入されて食器カゴ支持枠76の底部上に載せられた食器カゴ3内の複数の食器2は、前記第1の載せ方の場合と同様、その全体が食器カゴ3とともに浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬され、この浸漬された状態のまま浸漬槽21内の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、A方向)に向って移動する。
【0064】
この際、食器カゴ3内の食器2は、浸漬水aへの浸漬により洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。なお、例えば食器2の表面に固くこびり付いた付着物は、水分を吸収して膨軟になり、除去されやすくなる。
【0065】
またこの際、浸漬水a中の食器回転用噴射手段31が、上方を通過していく食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中の食器カゴ3内の食器2において移動方向の先端側から互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が順次行われ、食器2の付着物が除去される。
【0066】
しかも、その食器回転用噴射手段31からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるため、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2がその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して一方向のみに回転し、食器2に対する洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2の付着物除去および浸漬が促進される。なお、浸漬水a中では、食器2に浮力が作用するため、食器2は食器カゴ3内で回転しやすくなっている。
【0067】
そして、このような浸漬槽21内での洗浄後、食器カゴ支持枠76上に載せられた食器カゴ3は、下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、B方向)に向って移動し、その後、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、C方向)に向って移動する。
【0068】
この際、上噴射手段46が、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射するとともに、下噴射手段47が、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる。
【0069】
つまり、図9に示すように、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50からの食器重ね方向に沿ったカーテン状の洗浄水bが、食器カゴ3内の食器2に上方から当たると、食器2は、空間部20側に向って1枚ずつ水平移動し、隣り合う食器2から離れる。その結果、食器カゴ3の移動に伴って食器カゴ3内の隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が順次生じることとなり、その順次に生じる間隙に洗浄水bの一部が入り込み、この入り込んだ洗浄水bによって食器2の表面および裏面に付着した付着物が除去される。
【0070】
またこの際、図8に示すように、下噴射手段47の上方を通過していく食器カゴ3内の食器2は、下噴射手段47からの洗浄水bから受ける力で、一方向(図8中では、反時計周りの方向)に向って食器カゴ3に対して回転して洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2全体にカーテン状の洗浄水bが効率的に当たることとなり、食器2の洗浄が確実となる。
【0071】
このようにして、食器カゴ3内の食器2は、洗浄室22における各洗浄室部41,42,43において洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。作業者は、食器洗浄後の食器カゴ3を食器カゴ支持枠76上から持ち上げ、排出口27から取り出す。
【0072】
そして、食器洗浄装置1によれば、前記第1、第2のいずれの載せ方の場合であっても、洗浄室22で食器カゴ3内の食器2の洗浄を行う前に、浸漬槽21内で食器カゴ3内の食器2を浸漬水aに浸漬させて食器カゴ3内の食器2の洗浄を行うため、食器2に付着した付着物の状態等にかかわらず、食器2を適切に洗浄できる。
【0073】
また、浸漬槽21内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方に向けて噴射し、この噴射により浸漬槽21内の浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2を回転させる食器回転用噴射手段31を備えるため、浸漬水aへの浸漬による食器2の洗浄が効率的に行われ、食器2をより一層適切に洗浄できる。
【0074】
さらに、洗浄室22が浸漬槽21の上方に配設されているため、食器洗浄装置1の設置面積が大きくなることなく、食器洗浄装置1の全体のコンパクト化を容易に図ることができる。
【0075】
また、食器カゴ3内で重なり合った食器2の下側を平行な2本の支持棒14のみで支持するため、浸漬槽21内の浸漬水aへの浸漬中および洗浄室22での洗浄水bの噴射中において、食器2から除去された付着物が食器カゴ3に付着しにくく、付着物の食器カゴ3への付着を抑制できる。
【0076】
さらに、食器カゴ3内で互いに隣り合う食器2間に介在部材を介在させる必要がなく、例えば積み重ねた複数の食器2を食器カゴ3内に容易に収納でき、また重なった食器2を食器カゴ3内から容易に取り出すことができる。
【0077】
なお、例えば図示しないが、食器2の種類や食器カゴ3内に収納した際の食器2の状態等に応じて食器カゴ3内での食器2の姿勢が変わるため、例えば食器2の種類等によっては、開口部5が鉛直面に対して傾斜した傾斜姿勢から鉛直姿勢に変化して隣り合う食器2間に間隙が生じる場合、傾斜姿勢のまま移動して食器2間に間隙が生じる場合、鉛直姿勢から傾斜姿勢に変化して食器2間に間隙が生じる場合、一方側傾斜姿勢から他方側傾斜姿勢に変化して食器2間に間隙が生じる場合等がある。
【0078】
また、洗浄室22が浸漬槽21の上方に配設された構成には限定されず、例えば洗浄室22が浸漬槽21の後方或いは側方等に配設された構成等でもよい。
【0079】
さらに、洗浄室22は、上段主洗浄室部42および下段主洗浄室部41を有するような2段のものには限定されず、例えば1段或いは3段以上のものでもよい。
【0080】
また、浸漬槽21内の浸漬液は、例えば所定温度以上の温水を用いることが好ましく、さらに浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31から噴射される洗浄液として、例えば主洗浄用タンク56内の洗浄水bを用いてもよい。
【0081】
さらに、浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31および洗浄室22内の下噴射手段47から噴射される洗浄液(噴射液)の向きは、全てが一定の斜め上方には限らず、例えば食器2の大きさや洗浄状態等に応じて変更できるようにしてもよい。すなわち例えばノズル部33,53の向きを変更可能な構成としてもよい。
【0082】
また、例えば洗浄中に食器カゴ3内の食器2が上面の開口部12から外へ飛び出すことを防止するために、開口部12を開閉可能に覆う開閉蓋を食器カゴ3に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 食器洗浄装置
2 食器
3 食器カゴ
21 浸漬槽
22 洗浄室
23 搬送手段
31 食器回転用噴射手段
46 上噴射手段
47 下噴射手段
a 浸漬液である浸漬水
b 洗浄液である洗浄水
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器を適切に洗浄できる食器洗浄装置および食器洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された食器洗浄装置が知られている。
【0003】
この従来の食器洗浄装置は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴ(食器の収納具)を搬送するコンベヤと、このコンベヤにて搬送中の食器カゴ内の食器に対して洗浄水を噴射する複数のノズルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173258号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の食器洗浄装置では、食器に付着した付着物(汚れ等)の状態によっては、その付着物が除去されず、食器に付着したまま残ってしまう場合があり、食器を適切に洗浄できないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、食器を適切に洗浄できる食器洗浄装置および食器洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の食器洗浄装置は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄装置であって、前記食器カゴ内の食器が浸漬液に浸漬されることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる浸漬槽と、前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙が生じてその間隙に洗浄液が入り込むことにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる洗浄室と、前記食器カゴが前記浸漬槽内の浸漬液中および前記洗浄室を順次通過するように、前記食器カゴを搬送する搬送手段とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の食器洗浄装置は、請求項1記載の食器洗浄装置において、浸漬槽内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射し、この噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で前記食器カゴ内の食器を回転させる食器回転用噴射手段を備えるものである。
【0009】
請求項3記載の食器洗浄装置は、請求項1または2記載の食器洗浄装置において、洗浄室の食器カゴ移動領域の上方に配設され、食器カゴ内の食器に対してカーテン状の洗浄液を鉛直下方に向けて噴射する上噴射手段と、前記洗浄室の食器カゴ移動領域の下方に配設され、前記食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射する下噴射手段とを備えるものである。
【0010】
請求項4記載の食器洗浄装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の食器洗浄装置において、洗浄室は、浸漬槽の上方に配設されているものである。
【0011】
請求項5記載の食器洗浄方法は、互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄方法であって、浸漬槽内で前記食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行い、その後、洗浄室で前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙を生じさせてその間隙に洗浄液を入り込ませることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行うものである。
【0012】
請求項6記載の食器洗浄方法は、請求項5記載の食器洗浄方法において、浸漬槽内での洗浄の際に、洗浄液の噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で食器カゴ内の食器を回転させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄室で食器カゴ内の食器の洗浄を行う前に、浸漬槽内で食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させて食器カゴ内の食器の洗浄を行うため、食器を適切に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る食器洗浄装置の側面視断面図である。
【図2】同上食器洗浄装置の正面視断面図である。
【図3】複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴの斜視図である。
【図4】同上食器カゴの側面図である。
【図5】同上食器カゴの平面図である。
【図6】同上食器カゴの移動方向が食器重ね方向と直交する場合における食器洗浄状態を示す正面図である。
【図7】同上における食器洗浄状態を示す側面図である。
【図8】同上食器カゴの移動方向が食器重ね方向と一致する場合における食器洗浄状態を示す正面図である。
【図9】同上における食器洗浄状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1および図2において、1は食器洗浄装置で、例えば給食センター等に設置されて使用される浸漬槽付き立体式カゴごと洗浄装置である。
【0017】
食器洗浄装置1は、互いに隣り合う食器2のうちの一方の食器2の表面(食材を載せる側の面)と他方の食器2の裏面とが介在部材(例えば特開平10−137172号記載の移動可能な保持部材等)を介さずに互いに直接接触して対向するように複数の食器2が水平方向に重ねられて収納された食器カゴ3を連続的に移動させながら、食器カゴ3内の食器2を自動洗浄するものである。
【0018】
食器2は、図3ないし図5等に示されるように、例えば円形状の開口部5を表面側に有する皿である。食器2は、円形状の底面部6と、この底面部6の周端部に設けられ上方に向って徐々に拡径する截頭円錐筒状の側面部7と、この側面部7の上端部全周に外側方に向って突設された鍔部8とを有している。
【0019】
なお、洗浄対象物である食器2は、円形状の皿には限定されず、円形状の椀やトレイ等でもよく、4角等の多角形状の皿、椀やトレイ等でもよい。
【0020】
食器カゴ3は、図3ないし図5等に示されるように、例えば金属製の複数本の棒状部材が組み合わされて構成された外形略直方体状の金網カゴ等である。
【0021】
食器カゴ3は、複数の食器2が水平方向である食器重ね方向に直接重ねられて収納される食器収納部(食器収納空間)11を内部に有するとともに、この食器収納部11に対して食器2の出し入れをするための矩形状の開口部12を上面に有している。
【0022】
また、食器カゴ3は、食器収納部11に鉛直姿勢(自重に基づいて鉛直方向に対してやや傾斜した姿勢を含む)で水平な食器重ね方向に重ねられて収納された複数の食器2を下方から支持する食器支持体である下支持部13を下面に有している。下支持部13は、例えば食器カゴ3内の食器2の食器重ね方向に長手状で互いに平行な水平状の複数本、例えば2本の支持棒14のみにて構成されている。
【0023】
さらに、食器カゴ3は、食器収納部11に収納された複数の食器(食器群)2のうちの一方端の食器2(食器2a)の表面が当接する一方側当接部16を一側面に有するとともに、食器収納部11に収納された複数の食器2のうちの他方端の食器2(食器2b)の裏面が当接する他方側当接部17を一方側当接部16側とは反対側の他側面に有している。一方側当接部16は略T状をなす当接棒18にて構成され、他方側当接部17も同じく略T状をなす当接棒19にて構成されている。
【0024】
そして、食器カゴ3内には、互いに隣り合う食器2のうちの一方の食器2の表面(内面)と他方の食器2の裏面(外面)とが介在部材を介さずに互いに接触して対向するように、複数の食器2が水平な食器重ね方向に重ねられて収納される。
【0025】
なお、ここでいう一方の食器2の表面と他方の食器2の裏面とが互いに接触する場合には、表面と裏面とが厳密な意味で接触する場合のほか、表面と裏面とが略接触する場合も含まれる。すなわち例えば、互いに隣り合う食器2間に食器2に付着した汚れである付着物(残飯、残汁等の残滓)が存在して表面と裏面とが若干離れている場合も含まれる。
【0026】
ここで図3ないし図5には、食器カゴ3内に複数の食器2が隣り合うもの同士が互いに接触した状態で水平な食器重ね方向に重ねられて収納された状態の例が示されている。
【0027】
この例においては、図4および図5から明らかなように、他方端の食器2(食器2b)は他方側当接部17に当接しているが、一方端の食器2(食器2a)は一方側当接部16に当接しておらず、一方端の食器2(食器2a)と一方側当接部16との間には食器カゴ3内で食器2が下支持部13にて支持された状態で動くように所望の大きさの空間部20があり、食器2は食器カゴ3内で食器重ね方向に不安定な状態となっている。つまり、洗浄対象物である複数枚の食器2は、鉛直姿勢の状態で、空間部20に相当する余裕を持って食器カゴ3内に食器重ね方向に沿って移動可能に収納されている。
【0028】
食器洗浄装置1は、図1および図2等に示されるように、食器カゴ3内の食器2がその食器カゴ3とともに全体が浸漬液である浸漬水aに浸漬されることにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄(前処理洗浄)が行われる浸漬槽21と、食器カゴ3内の食器2に対する洗浄液である洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる洗浄室22とを備えている。また、食器洗浄装置1は、食器カゴ3が浸漬槽21内の浸漬水a中および洗浄室22を順次通過するように、複数の食器カゴ3を搬送する搬送手段23を備えている。
【0029】
浸漬槽21が洗浄装置本体25の下部に設けられ、洗浄室22が洗浄装置本体25の上部に設けられており、この洗浄室22は浸漬槽21の上方に配設されている。
【0030】
浸漬槽21は、所定量の浸漬水aが貯留されるもので、例えば前後方向にやや長手状に形成されており、この浸漬槽21の前端側上方には、複数の食器2が収納された食器カゴ3を投入するための投入口26が配設されている。つまり、洗浄前の食器2が収納された食器カゴ3を投入するための水平状の投入口26が洗浄装置本体25の一端側である前端側に設けられている。そして、洗浄後の食器2が収納された食器カゴ3を排出するための鉛直状の排出口27が洗浄装置本体25の他端側である後端側に設けられている。
【0031】
また、浸漬槽21内の食器カゴ移動領域(浸漬槽21内における食器カゴ3が移動する領域)の下方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方(食器2の移動方向に対して横斜め上方)に向けて噴射しこの噴射により浸漬槽21内の浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2をその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して回転させる複数(例えば7つ)の食器回転用噴射手段31が互いに間隔をおいて配設されている。
【0032】
食器回転用噴射手段31は、左右方向に細長い水平状に形成され浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬されたパイプ部32と、このパイプ部32に上方に向って突出するように設けられ互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数のノズル部33とを有している。ノズル部33は、正面視略くの字状のもので、傾斜状の上端面に噴射口部34を有している。なお、それぞれのパイプ部32に設けられた各ノズル部33の噴射口部34は、全て同じ方向に向けられている。
【0033】
そして、浸漬槽21内の浸漬水a中において、浸漬噴射口部34から洗浄水bが斜め上方に向けて噴射され、この噴射された洗浄水bが食器カゴ3内の食器2の円中心部以外に当たると、その食器2が食器カゴ3内で回転する。なお図示しないが、例えば浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31には浸漬槽21内の浸漬水aが圧送されて供給されるようになっており、食器回転用噴射手段31の噴射口部34から噴射される洗浄水(洗浄液)bとして、浸漬槽21内の浸漬水(浸漬液)aが使用される。
【0034】
洗浄室22は、下段主洗浄室部(第1洗浄室部)41と、この下段主洗浄室部41の一方側上方である前側上方に位置する上段主洗浄室部(第2洗浄室部)42と、下段主洗浄室部41の他方側上方である後側上方に位置する仕上げ洗浄室部(第3洗浄室部)43とを有している。
【0035】
下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域(下段主洗浄室部41における食器カゴ3が移動する領域)の上方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射する複数(例えば12)の上噴射手段(上洗浄ノズル)46が互いに間隔をおいて配設されている。下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域の下方には、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方(食器2の移動方向に対して横斜め上方)に向けて噴射する複数(例えば6つ)の下噴射手段(下洗浄ノズル)47が互いに間隔をおいて配設されている。
【0036】
なお、上段主洗浄室部42においても、下段主洗浄室部41と同じように、複数(例えば6つ)の上噴射手段46および複数(例えば3つ)の下噴射手段47が食器カゴ移動領域の上方および下方にそれぞれ配設されている。また、仕上げ洗浄室部43においても、下段主洗浄室部41と同じように、複数(例えば7つ)の上噴射手段46および複数(例えば4つ)の下噴射手段47が食器カゴ移動領域の上方および下方にそれぞれ配設されている。
【0037】
上噴射手段46は、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射する左右方向に細長いスリット状の噴射口部50を水平状の下面に有している。
【0038】
下噴射手段47は、左右方向に細長い水平状のパイプ部52と、このパイプ部52に上方に向って突出するように設けられ互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数のノズル部53とを有している。ノズル部53は、正面視略くの字状のもので、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方に向けて噴射する噴射口部54を傾斜状の上端面に有している。なお、パイプ部52の長手方向寸法は、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50の長手方向寸法(搬送手段23の左右方向寸法である幅寸法)と略同じである(図2参照)。
【0039】
また、下段主洗浄室部41、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各々に配設されている下噴射手段47のパイプ部52に設けられた各ノズル部53の噴射口部54は、全て同じ方向に向けられており、浸漬槽21に配設されている食器回転用噴射手段31のパイプ部32に設けられた各ノズル部33の噴射口部34と同じ方向となっている。
【0040】
なお、上噴射手段46が有するスリット状の噴射口部50と、下噴射手段47が有するパイプ部52の長手方向に間隔をおいて並ぶ複数の噴射口部54とは、同じ垂直面上に位置しないように配置されており、下噴射手段47の噴射口部54からの洗浄水による食器2の回転が上噴射手段46の噴射口部50からの洗浄水によって弱められることを防止するようになっている。つまり、下噴射手段47の噴射口部54は、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50の真下位置から食器移動方向に沿った方向に少しずれた位置に配置されている。
【0041】
また、図1に示されるように、下段主洗浄室部41の上噴射手段46および上段主洗浄室部42の上噴射手段46には、主洗浄用タンク56内の洗浄水bが主洗浄用ポンプ57の作動により主洗浄用配管58から供給される。また、仕上げ洗浄室部43の上噴射手段46には、仕上げ洗浄用タンク61内の洗浄水bが仕上げ洗浄用ポンプ62の作動により仕上げ洗浄用配管63から供給される。
【0042】
なお図示しないが、下段主洗浄室部41の下噴射手段47および上段主洗浄室部42の下噴射手段47には主洗浄用タンク56内の洗浄水bが圧送されて供給され、仕上げ洗浄室部43の下噴射手段47には仕上げ洗浄用タンク61内の洗浄水bが圧送されて供給される。
【0043】
さらに、下段主洗浄室部41の下噴射手段47および上段主洗浄室部42の下噴射手段47の各々の下方には、主洗浄用水受け体59がぞれぞれ配設されている。そして、主洗浄用水受け体59に入った洗浄水(洗浄後の汚れた排水である主洗浄水)bが、主洗浄用水受け体59から主洗浄用タンク56へと流れる。また、仕上げ洗浄室部43の下噴射手段47の下方には、仕上げ洗浄用水受け体64が配設されている。そして、仕上げ洗浄用水受け体64に入った洗浄水(洗浄後の汚れた排水である仕上げ洗浄水)bが、仕上げ洗浄用水受け体64から仕上げ洗浄用タンク61へと流れる。
【0044】
また、搬送手段23は、互いに離間対向する左右1対の無端体であるチェーン71を有し、このチェーン71は駆動手段であるモータ72からの動力で所定方向に回行する。チェーン71の等間隔をおいた複数箇所には、複数個、すなわち例えば4個の食器カゴ3を載置可能な食器カゴ支持体73が設けられている。
【0045】
食器カゴ支持体73は、チェーン71に対して水平方向の軸74を中心として回動可能な左右1対の回動フレーム75と、この回動フレーム75に取り付けられ食器カゴ3が載置される折り畳み可能な食器カゴ支持枠(載せ枠)76と、回動フレーム75に回転可能に取り付けられ水平状のガイド板80上を走行するガイドローラ77とを有している。このガイドローラ77がガイド板80上を回転しながら走行するため、洗浄水bが当たっても食器カゴ支持枠76上の食器カゴ3が前後に回動(揺動)しないようになっている。
【0046】
また、食器カゴ支持枠76は、例えば食器カゴ3と同様、金属製の複数本の棒状部材が組み合わされて構成されている。そして、食器カゴ支持枠76は、浸漬槽21内の浸漬水a中において浸漬槽21の底部付近を投入口26側に向かって移動する場合にのみ、食器カゴ3を支持する通常状態に比べて高さの低い折り畳み状態となり、浸漬槽21の容積を抑えるようにしている(図1参照)。
【0047】
次に、上記食器洗浄装置1の作用等を説明する。
【0048】
作業者は、例えば上下方向に積み重ねた複数の食器2を横にして収納した図3ないし図5に示す状態の食器カゴ3を、投入口26から浸漬槽21内に投入し、その浸漬槽21内の浸漬水a中における食器カゴ支持枠76上に載せる。
【0049】
この際、食器カゴ3の載せ方としては、2通りある。すなわち、第1の載せ方は、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3の移動方向(搬送方向)が食器重ね方向と直交するように、食器カゴ3を搬送手段23の食器カゴ支持枠76上に載せる方法である(図6および図7参照)。第2の載せ方は、搬送手段23にて搬送中(移動中)の食器カゴ3の移動方向(搬送方向)が食器重ね方向と一致するように、食器カゴ3を搬送手段23の食器カゴ支持枠76上に載せる方法である(図8および図9参照)。
【0050】
そこで、まず、第1の載せ方で載せた場合(図6および図7参照)の洗浄について説明する。
【0051】
投入口26から投入されて食器カゴ支持枠76の底部上に載せられた食器カゴ3内の複数の食器2は、その食器2の開口部5と浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31から噴射されてくる洗浄水bとが互いに向かい合うようにして、その食器全体が食器カゴ3とともに浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬され、この浸漬された状態のまま浸漬槽21内の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、A方向)に向って移動する。
【0052】
この際、食器カゴ3内の食器2は、浸漬水aへの浸漬により洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。なお、例えば食器2の表面に固くこびり付いた付着物は、水分を吸収して膨軟になり、除去されやすくなる。
【0053】
またこの際、浸漬水a中の食器回転用噴射手段31が、上方を通過していく食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中の食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。
【0054】
しかも、その食器回転用噴射手段31からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるときには、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2がその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して一方向および他方向に回転し、食器2に対する洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2の付着物除去および浸漬が促進される。なお、浸漬水a中では、食器2に浮力が作用するため、食器2は食器カゴ3内で回転しやすくなっている。
【0055】
そして、このような浸漬槽21内での洗浄後、食器カゴ支持枠76上に載せられた食器カゴ3は、下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、B方向)に向って移動し、その後、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、C方向)に向って移動する。
【0056】
この際、上噴射手段46が、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射するとともに、下噴射手段47が、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる。
【0057】
つまり、図6に示すように、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50からの食器重ね方向に沿ったカーテン状の洗浄水b、すなわち食器カゴ3の移動方向と直交する水平方向寸法以上の幅寸法を有するカーテン状の洗浄水bが、各食器カゴ3内のすべての食器2に上方から当たると、例えば他方側当接部17に当接した他方端の食器2以外の食器2は、一方端の食器2が一方側当接部16に当接するまで、一方側当接部16側の空間部20側に向って一斉に水平移動し、隣り合う食器2から離れる。その結果、食器カゴ3内のすべての食器2に関して互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が同時に生じ、これらの各間隙に洗浄水bの一部が入り込み、この入り込んだ洗浄水bによって食器2の表面および裏面に付着した付着物が除去される。そのカーテン状の洗浄水bによって生じる各間隙の大きさは略等しく、洗浄水bが入り込んで食器2の付着物を除去するのに十分な大きさである。間隙がわずかな大きさであっても洗浄水bが入り込めば水流および浸漬効果によって食器2の汚れが除去される。
【0058】
なお、すべての食器2に関して隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じるとあるが、ここでいう「すべて」には厳密な意味でのすべてのほか、略すべての意味が含まれる。すなわち例えば隣り合う食器2間に残飯等の付着物が付着しているために、洗浄用の間隙が生じにくいことがある。この場合には、2番目以降の少なくともいずれかの上噴射手段46からの洗浄水bによって隣り合う食器2間に間隙が生じることとなる。
【0059】
またこの際、図7に示すように、上噴射手段46からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるときには、隣り合う食器2との間に洗浄用の間隙を保持した状態で、食器カゴ3内のすべての食器2が、主として上噴射手段46からのカーテン状の洗浄水bから受ける力で、食器カゴ3の移動方向前側が下方に向う方向(一方向)および食器カゴ3の移動方向後側が下方に向う方向(他方向)に向って食器カゴ3に対して回転してカーテン状の洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2全体にカーテン状の洗浄水bが効率的に当たることとなり、食器2の洗浄が確実となる。
【0060】
なお、食器カゴ3内の食器2は、下噴射手段47からの洗浄水bからも補助的な回転力を受ける。また、上噴射手段46からのカーテン状の洗浄水bによって食器カゴ3内の隣り合う食器2間の間隙の下側が上側よりも狭くなろうとするが、下噴射手段47からの洗浄水bを隣り合う食器2間の間隙の下側に送り込むことで、食器2間の間隙の下側が狭くなるのを防止している。
【0061】
このようにして、食器カゴ3内の食器2は、洗浄室22における各洗浄室部41,42,43において洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。作業者は、食器洗浄後の食器カゴ3を食器カゴ支持枠76上から持ち上げ、排出口27から取り出す。
【0062】
次いで、第2の載せ方で載せた場合(図8および図9参照)の洗浄について説明する。
【0063】
投入口26から投入されて食器カゴ支持枠76の底部上に載せられた食器カゴ3内の複数の食器2は、前記第1の載せ方の場合と同様、その全体が食器カゴ3とともに浸漬槽21内の浸漬水aに浸漬され、この浸漬された状態のまま浸漬槽21内の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、A方向)に向って移動する。
【0064】
この際、食器カゴ3内の食器2は、浸漬水aへの浸漬により洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。なお、例えば食器2の表面に固くこびり付いた付着物は、水分を吸収して膨軟になり、除去されやすくなる。
【0065】
またこの際、浸漬水a中の食器回転用噴射手段31が、上方を通過していく食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中の食器カゴ3内の食器2において移動方向の先端側から互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が順次行われ、食器2の付着物が除去される。
【0066】
しかも、その食器回転用噴射手段31からの洗浄水bが食器2の円中心部からずれた部位に当たるため、この洗浄水bの噴射に基づいて浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2がその円形状の食器2の円中心部を中心として食器カゴ3に対して一方向のみに回転し、食器2に対する洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2の付着物除去および浸漬が促進される。なお、浸漬水a中では、食器2に浮力が作用するため、食器2は食器カゴ3内で回転しやすくなっている。
【0067】
そして、このような浸漬槽21内での洗浄後、食器カゴ支持枠76上に載せられた食器カゴ3は、下段主洗浄室部41の食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、B方向)に向って移動し、その後、上段主洗浄室部42および仕上げ洗浄室部43の各食器カゴ移動領域を所定の移動方向(図1中、C方向)に向って移動する。
【0068】
この際、上噴射手段46が、食器カゴ3内の食器2に対してカーテン状の洗浄水bを鉛直下方に向けて噴射するとともに、下噴射手段47が、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを食器カゴ3の移動方向に対して直交する面に略沿って横斜め上方に向けて噴射する。すると、この洗浄水bの噴射に基づいて食器カゴ3内の互いに隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が生じてその間隙に洗浄水bが入り込むことにより、食器カゴ3内の食器2の洗浄が行われる。
【0069】
つまり、図9に示すように、上噴射手段46のスリット状の噴射口部50からの食器重ね方向に沿ったカーテン状の洗浄水bが、食器カゴ3内の食器2に上方から当たると、食器2は、空間部20側に向って1枚ずつ水平移動し、隣り合う食器2から離れる。その結果、食器カゴ3の移動に伴って食器カゴ3内の隣り合う食器2間に洗浄用の間隙が順次生じることとなり、その順次に生じる間隙に洗浄水bの一部が入り込み、この入り込んだ洗浄水bによって食器2の表面および裏面に付着した付着物が除去される。
【0070】
またこの際、図8に示すように、下噴射手段47の上方を通過していく食器カゴ3内の食器2は、下噴射手段47からの洗浄水bから受ける力で、一方向(図8中では、反時計周りの方向)に向って食器カゴ3に対して回転して洗浄水bの当たる位置が変わるため、食器2全体にカーテン状の洗浄水bが効率的に当たることとなり、食器2の洗浄が確実となる。
【0071】
このようにして、食器カゴ3内の食器2は、洗浄室22における各洗浄室部41,42,43において洗浄が行われ、食器2の付着物が除去される。作業者は、食器洗浄後の食器カゴ3を食器カゴ支持枠76上から持ち上げ、排出口27から取り出す。
【0072】
そして、食器洗浄装置1によれば、前記第1、第2のいずれの載せ方の場合であっても、洗浄室22で食器カゴ3内の食器2の洗浄を行う前に、浸漬槽21内で食器カゴ3内の食器2を浸漬水aに浸漬させて食器カゴ3内の食器2の洗浄を行うため、食器2に付着した付着物の状態等にかかわらず、食器2を適切に洗浄できる。
【0073】
また、浸漬槽21内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ3内の食器2に対して洗浄水bを斜め上方に向けて噴射し、この噴射により浸漬槽21内の浸漬水a中で食器カゴ3内の食器2を回転させる食器回転用噴射手段31を備えるため、浸漬水aへの浸漬による食器2の洗浄が効率的に行われ、食器2をより一層適切に洗浄できる。
【0074】
さらに、洗浄室22が浸漬槽21の上方に配設されているため、食器洗浄装置1の設置面積が大きくなることなく、食器洗浄装置1の全体のコンパクト化を容易に図ることができる。
【0075】
また、食器カゴ3内で重なり合った食器2の下側を平行な2本の支持棒14のみで支持するため、浸漬槽21内の浸漬水aへの浸漬中および洗浄室22での洗浄水bの噴射中において、食器2から除去された付着物が食器カゴ3に付着しにくく、付着物の食器カゴ3への付着を抑制できる。
【0076】
さらに、食器カゴ3内で互いに隣り合う食器2間に介在部材を介在させる必要がなく、例えば積み重ねた複数の食器2を食器カゴ3内に容易に収納でき、また重なった食器2を食器カゴ3内から容易に取り出すことができる。
【0077】
なお、例えば図示しないが、食器2の種類や食器カゴ3内に収納した際の食器2の状態等に応じて食器カゴ3内での食器2の姿勢が変わるため、例えば食器2の種類等によっては、開口部5が鉛直面に対して傾斜した傾斜姿勢から鉛直姿勢に変化して隣り合う食器2間に間隙が生じる場合、傾斜姿勢のまま移動して食器2間に間隙が生じる場合、鉛直姿勢から傾斜姿勢に変化して食器2間に間隙が生じる場合、一方側傾斜姿勢から他方側傾斜姿勢に変化して食器2間に間隙が生じる場合等がある。
【0078】
また、洗浄室22が浸漬槽21の上方に配設された構成には限定されず、例えば洗浄室22が浸漬槽21の後方或いは側方等に配設された構成等でもよい。
【0079】
さらに、洗浄室22は、上段主洗浄室部42および下段主洗浄室部41を有するような2段のものには限定されず、例えば1段或いは3段以上のものでもよい。
【0080】
また、浸漬槽21内の浸漬液は、例えば所定温度以上の温水を用いることが好ましく、さらに浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31から噴射される洗浄液として、例えば主洗浄用タンク56内の洗浄水bを用いてもよい。
【0081】
さらに、浸漬槽21内の食器回転用噴射手段31および洗浄室22内の下噴射手段47から噴射される洗浄液(噴射液)の向きは、全てが一定の斜め上方には限らず、例えば食器2の大きさや洗浄状態等に応じて変更できるようにしてもよい。すなわち例えばノズル部33,53の向きを変更可能な構成としてもよい。
【0082】
また、例えば洗浄中に食器カゴ3内の食器2が上面の開口部12から外へ飛び出すことを防止するために、開口部12を開閉可能に覆う開閉蓋を食器カゴ3に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 食器洗浄装置
2 食器
3 食器カゴ
21 浸漬槽
22 洗浄室
23 搬送手段
31 食器回転用噴射手段
46 上噴射手段
47 下噴射手段
a 浸漬液である浸漬水
b 洗浄液である洗浄水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄装置であって、
前記食器カゴ内の食器が浸漬液に浸漬されることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる浸漬槽と、
前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙が生じてその間隙に洗浄液が入り込むことにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる洗浄室と、
前記食器カゴが前記浸漬槽内の浸漬液中および前記洗浄室を順次通過するように、前記食器カゴを搬送する搬送手段と
を備えることを特徴とする食器洗浄装置。
【請求項2】
浸漬槽内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射し、この噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で前記食器カゴ内の食器を回転させる食器回転用噴射手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の食器洗浄装置。
【請求項3】
洗浄室の食器カゴ移動領域の上方に配設され、食器カゴ内の食器に対してカーテン状の洗浄液を鉛直下方に向けて噴射する上噴射手段と、
前記洗浄室の食器カゴ移動領域の下方に配設され、前記食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射する下噴射手段とを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の食器洗浄装置。
【請求項4】
洗浄室は、浸漬槽の上方に配設されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の食器洗浄装置。
【請求項5】
互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄方法であって、
浸漬槽内で前記食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行い、
その後、洗浄室で前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙を生じさせてその間隙に洗浄液を入り込ませることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行う
ことを特徴とする食器洗浄方法。
【請求項6】
浸漬槽内での洗浄の際に、洗浄液の噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で食器カゴ内の食器を回転させる
ことを特徴とする請求項5記載の食器洗浄方法。
【請求項1】
互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄装置であって、
前記食器カゴ内の食器が浸漬液に浸漬されることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる浸漬槽と、
前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙が生じてその間隙に洗浄液が入り込むことにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄が行われる洗浄室と、
前記食器カゴが前記浸漬槽内の浸漬液中および前記洗浄室を順次通過するように、前記食器カゴを搬送する搬送手段と
を備えることを特徴とする食器洗浄装置。
【請求項2】
浸漬槽内の食器カゴ移動領域の下方に配設され、食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射し、この噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で前記食器カゴ内の食器を回転させる食器回転用噴射手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の食器洗浄装置。
【請求項3】
洗浄室の食器カゴ移動領域の上方に配設され、食器カゴ内の食器に対してカーテン状の洗浄液を鉛直下方に向けて噴射する上噴射手段と、
前記洗浄室の食器カゴ移動領域の下方に配設され、前記食器カゴ内の食器に対して洗浄液を斜め上方に向けて噴射する下噴射手段とを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の食器洗浄装置。
【請求項4】
洗浄室は、浸漬槽の上方に配設されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の食器洗浄装置。
【請求項5】
互いに隣り合う食器のうちの一方の食器の表面と他方の食器の裏面とが介在部材を介さずに互いに対向するように複数の食器が水平方向に重ねられて収納された食器カゴを移動させながら、前記食器カゴ内の食器を洗浄する食器洗浄方法であって、
浸漬槽内で前記食器カゴ内の食器を浸漬液に浸漬させることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行い、
その後、洗浄室で前記食器カゴ内の食器に対する洗浄液の噴射に基づいて前記食器カゴ内の互いに隣り合う食器間に間隙を生じさせてその間隙に洗浄液を入り込ませることにより、前記食器カゴ内の食器の洗浄を行う
ことを特徴とする食器洗浄方法。
【請求項6】
浸漬槽内での洗浄の際に、洗浄液の噴射により前記浸漬槽内の浸漬液中で食器カゴ内の食器を回転させる
ことを特徴とする請求項5記載の食器洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−111117(P2013−111117A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257899(P2011−257899)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】
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