説明

食物繊維性魚肉食品及びその製造法

【課題】魚肉すりみの食材活用に於て、挽肉様類似の粒状食感を提供すること。
【解決手段】解凍した魚肉すりみと微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水を使用して作成したグルコマンナン水和糊とを混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉形状物を所望の各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法、およびこのような製造法であって、前記挽肉形状物を直ちに所望の各様形状に成型して加熱する代りに、前記挽肉形状物に再度前記のグルコマンナンの水和糊を混和してから各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法、ならびにこのような製造法によって製造された新規な食物繊維性魚肉食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚肉活用食品の製造法に関し、より詳しくは従来の擂潰する魚肉に替わって擂潰を無用とし、個形状の成型を補うために微粉砕グルコマンナンの水和物のゲル化能を活用する新規魚肉食品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉すりみ等の練製品である蒲鉾類は、魚肉蛋白を塩ずり擂潰して粘稠な糊状とし、これを成型、加熱して弾性ゲルを完成して製品となる。
【0003】
即ち、物理的食味のあし(食感)を得るために、魚肉原料に、これに対しほぼ同量の水と、約3〜5%の食塩を数回に分けて使用し、魚肉蛋白の筋原繊維を機械的に破砕し混合した擂潰物を成型して静置した坐りの後、成型物の中心が70〜80℃程度の蒸し温度から焼成物に必要な高温にまで加熱して、水分を保持したゲル化物とする。このようにして得る魚肉練製品は、かまぼこ、ちくわ、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、更には、なるとまき、だてまき、はんぺん、しんじょ等の各製品に所要の工程を経て、それぞれ、特有の食感のゲルを完成して製品となる。
【0004】
然しながら、魚肉原料に対し必須工程である塩ずりが、食味を画一的な蒲鉾味の域に止どめている。そのため、例えば、蒲鉾類が各種洋食材料に使用されないのも塩ずり擂潰が原因する。また、増量やカロリー調整の目的から、コンニャクの原料である精粉を混和する方法や植物ガム、カラギーナン等を混和する方法も種々検討されてきたが、これらの添加では、塩ずり擂潰が原因して食肉本来の好ましい食味食感が得られず、今日も改善に至っていない。すなわち、魚肉原料の擂潰は、塩の浸透圧による以外は達成し得なかったのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
魚肉練製品の共通原料である魚肉及び魚肉すりみは、先に説明したように、特有食感のゲルを完成するための必須工程として、塩ずりして粘稠な擂潰物を得た後、所定の工程を経て製品を完成する。
【0006】
そのため、このようにして製造される魚肉練製品の持ち味は、いずれも基本的に蒲鉾であり、食用利用の多様化が阻まれている原因となっている。そこで、本発明者は、これに着目し、必須工程である魚肉原料の塩ずり無用の新規な魚肉食品を完成することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前項記載の目的を達成するため鋭意研究の結果、魚肉すりみを擂潰する工程を無用とする新規魚肉食品の開発に成功した。すなわち、魚肉(すりみ)にグルコマンナンの水和糊を混和することにより、蒲鉾とは全く異なる新規食感を得るとの知見を得、この知見に基づいて新たに魚肉すりみ活用の食品の製造法を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、解凍した魚肉すりみと微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水を使用して作成したグルコマンナン水和糊とを混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉形状物を所望の各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法、およびこのような製造法であって、前記挽肉形状物を直ちに所望の各様形状に成型して加熱する代りに、前記挽肉形状物に再度前記のグルコマンナンの水和糊を混和してから各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法、ならびにこのような製造法によって製造された新規な食物繊維性魚肉食品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食物繊維性魚肉食品及びその製造法は、従来の塩擂り擂潰を無用とする新食感の魚肉食品を市場提供するに至った。然も画期的製造法が新製品を生み出し、これまでに未解決の冷凍耐性や電子レンジ対応等に適応し、また各種各様の成型も自在で好ましい物性やテクスチュア、形状等を容易に再現し、然も食物繊維食品として低カロリー提供を実現した。
【0010】
また、加熱すると水分が蒸発して製品形状が縮み、目減りすること等も、本発明の新規魚肉食品では製品内部の水分移動を抑制する、グルコマンナンの不可逆的ゲルが機能する水分包括技術から新製品が出現し、魚肉資源の有効利用に至り経済的効果も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
第一に、本発明の第一の態様、すなわち、解凍した魚肉すりみと微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水を使用して作成したグルコマンナン水和糊とを混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉形状物を所望の各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法について説明する。
【0013】
この態様において、魚肉原料の解凍した魚肉すりみは肉挽機にかけられるが、解凍した魚肉すりみはそのままではドロドロで肉挽機にかけても所望の挽肉形状の成型物とはならない。
【0014】
因みに、周知のごとく、魚肉すりみは冷凍物の形態で流通に置かれ、これを解凍してから練製品などに加工されるが、解凍された魚肉すりみはドロドロで、これに種々の副原料を加えての擂潰を含む種々の工程を経て、例えばかまぼこなどの魚肉練製品とする。なお、冷凍すりみには、食塩を使用した加塩すりみと食塩不使用の無塩すりみがあるが、本発明の性質上、本発明に言う(冷凍)すりみは無塩すりみを意味する。
【0015】
本発明の製造法においては、解凍した魚肉すりみは、後に説明するグルコマンナンの水和糊と混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、ドロドロの魚肉すりみを水和糊とともに凝固させ、得られた凝固物を型枠から外してそのままでまたは適宜カットして肉挽機にかける。解凍した魚肉すりみとグルコマンナンの水和糊との混和物を型枠に詰めて加熱凝固させる理由は、魚肉すりみの分散を解消するためである。従って、この目的に適するものであれば、型枠は、その材質、形状、サイズなどには特別の制限はない。
【0016】
次に、これまでの魚肉擂潰を無用とする本発明の魚肉活用法において、魚肉に併用されるグルコマンナンの水和糊について説明する。
【0017】
サトイモ科植物のコンニャク芋は、その球茎中に多糖類のグルコマンナン(狭義)その他のマンナン類を多量に含有しており、これらは総括してグルコマンナン(広義)と称されており、また市販のこんにゃく原料であるところからコンニャクマンナン(こんにゃく精粉)とも呼ばれている。
【0018】
グルコマンナンは、グルコースとマンノースが例えば2:3のモル比で結合した高分子の特殊な複合多糖類で、その水溶液は、グルコマンナンの分子中に側鎖として僅かに存在するアセチル基が、アルカリの作用で離脱し、鎖状のグルコマンナン分子が水素結合によって、網目構造の会合体を生成してゲル化する(「こんにゃくの科学」渓水社1984年5月)。すなわち、アセチル基がアルカリの作用で離脱して、グルコマンナン水溶液はゲル化する。このアセチル基離脱時に特有の嫌忌臭が生成し、水和ゲル(糊)内に残留する為、グルコマンナンの食用多様化が阻まれている。この嫌忌臭解消に至ったのが本発明者による特許第2619743号(特開平5−038263)及び特許第3023837号(特開平10−286069)に係る発明である。すなわち、グルコマンナンの食材としての広範な活用には事前に解決すべき必須条件が存在する。それが前記嫌忌臭の解消であるが、市販のこんにゃく食品製造に見る如く、従来は、グルコマンナン(精粉)を水和し、次いでこれを100〜120分に及んで膨潤を図り、次に凝固剤水溶液を添加攪拌して成型(板状(こんにゃくなど)、球状(玉こんにゃくなど)、糸状(しらたきなど)等)して加熱し、不可逆的ゲル化した凝固物(こんにゃく食品)とする。しかしながら、この様にグルコマンナン(精粉)を水和膨潤した後では、凝固剤の添加を解消しない限り食用不適な嫌忌臭の解消は実現しないのである。
【0019】
因みに、そのような嫌忌臭の解消方法の例としては、前掲特許第3023837号明細書に開示の微粉グルコマンナン組成物乃至その製造法を挙げることができる。すなわち、このグルコマンナン組成物の製造に際して、グルコマンナン(精粉)を超低温下で160メッシュ通過の微粉末に生成する。その時点で凝固剤をグルコマンナンの3%および多糖類粉末を20%程度混和して粉体原料とし、これの水和溶解時でのママコ生成を防止する。
【0020】
この微粉グルコマンナン組成物の製造方法において使用すべきグルコマンナンは、こんにゃく精粉を人為的に破砕し好ましくは160メッシュ通過の微粉末とする。その理由はマンナン特有の嫌忌臭を解消するためである。この嫌忌臭を解消しない限り、グルコマンナンの水和ゲル化物は、アルカリ液に浸る市販のこんにゃくに止まるのである。さらに、この嫌忌臭はエグミを伴い、食用不適の原因ともなっているために、従来市販のこんにゃくなどではアク抜きと称する食用の事前処置も提案されてきた。
【0021】
すなわち、グルコマンナンの食材活用では、初めの水和溶解時(水と接触する時点)の攪拌によるアルカリの作用によって気化臭(嫌忌臭)が離脱した後、これに次ぐ粘度上昇に伴い各種成型した後、加熱して不可逆凝固を完成する。然して、新たに食用多様化へ開発進展したが、旧態依然のグルコマンナン活用の食品製造法は、科学的根拠からも不適原因が指摘されている。
【0022】
本発明の食物繊維性魚肉食品の製造法は、先に説明したように、魚肉原料の塩ずり擂潰工程を無用とする新規魚肉食品の製造法である。すなわち、従来の必須工程である魚肉擂潰を無用とし、それに替えてマンナンの水和糊を併用して加熱することにより、魚肉すりみ活用の新分野が開拓されるに至った。
【0023】
因みに、畜肉製品と従来の魚肉製品との食感についての比較を記述する。
【0024】
ハンバーグ:畜肉原料活用のハンバーグは、その主原料がヘテロ形状の不均質な口当たりが食感的にも好まれている。これに比べ魚肉活用のハンバーグは、ホモ形状の肉質となり違和感さえ伴う食感から今も畜肉ハンバーグ程の市場認知に至っていない。
【0025】
ソーセージ:畜肉原料と魚肉原料とのソーセージ製品の比較では、ハンバーグ同様、食感に大差がある。魚肉の均質食感は塩味の蒲鉾であるが、畜肉原料では第一に旨味成分が競われ、魚肉活用の製品は比較不向きの実態にある。
【0026】
肉ダンゴ:ミートボール形状の製品が市場に定着しているが、魚肉活用の肉ダンゴは未だに出現していない。その主原因は、蒲鉾質のダンゴでは馴染まず、然も既に塩味の味は嗜好味の付加さえ不向きな欠点を保有する。
【0027】
これらの比較から、魚肉製品が塩ずり擂潰を経て形成される食品であるところに食感調整不能の原因が存在するとの事実確認から、従来の塩摺擂潰を無用とする魚肉活用に於て、ホモ質からヘテロ質への肉質形態に変えて、実施例に示す如く新規な食感構成のハンバーグ、ソーセージ、魚肉ダンゴ等を完成したのが本発明である。
【0028】
本発明の食物繊維性魚肉食品の製造法は、魚肉すりみを主原料とするが、この魚肉すりみの擂潰を無用とするもので、魚肉すりみとグルコマンナン(例えば、160メッシュ通過の微粉末)の水和糊とを混和し、型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉状に成型し、この挽肉状成型物を所望の形状に成型し、加熱して畜肉仕様にも匹敵する好ましい食感の食物繊維性魚肉食品を完成したのである。
【0029】
周知のように、グルコマンナン(精粉)の水膨潤物(グルコマンナン水和物)は、Ca(OH)などのアルカリ性化合物(凝固剤)に接触させてゲル化し(グルコマンナンの水和糊)、次いでこれを所望の形状に成型して加温すると不可逆的凝固(不可逆的ゲル化)を完成し、弾性に富む市販の「こんにゃく」製品となる。以下、グルコマンナンを「マンナン」と略称することがある。
【0030】
本発明のマンナンの水和糊の作成に用いるマンナンには、特別の制限はなく、いわゆるこんにゃく精粉の形のものなど、いずれも使用できることは勿論である。さらにマンナンの粒度は、水に溶解が早く、且つ膨潤時間を不要ならしめる等の見地から、160メッシュ通過が好ましく、またマンナンには多糖類その他の副原料を併用することもできる。なお、これらの微粉末マンナンについては、本発明者の発明に係る、先に引用の特許第2619743号及び特許第3023837号明細書に記載してある。
【0031】
本発明の食物繊維性魚肉食品の製造法に使用するマンナンの水和糊は、例えば160メッシュ通過の微粉末マンナン、所望による副原料、及び凝固剤を予め粉体混合し、これを水と混合攪拌して作成することができる。この水との混合攪拌物は、例えば2〜3分後にはゲル化して糊状を呈し、さらに攪拌継続5〜6分では既に膨潤した状態になっており(すなわち、マンナンの水和膨潤と凝固剤接触とがその場でin situ同時に生起)、それをそのまま、魚肉原料と混合する方法で使用することができる。
【0032】
このような、マンナン水和糊の作成法によるときは、凝固剤の懸濁液を別途に調製しておき、これを使用するといったことは不要となる。
【0033】
マンナンを水と攪拌して水和糊を作成する水の量は、マンナン1重量部当たり約15〜80重量部、好ましくは約20〜70重量部である。水の量がこの範囲より少量に過ぎるときは、マンナンの水和ゲルが硬化して作業性も悪くなる限界であり、一方、この範囲より多きに過ぎるときは、マンナン使用の効果が奏されない。凝固剤には、特別の制限はなく、従来の食用こんにゃくに使用されているものを使用することができる。凝固剤としてCa(OH)などのアルカリ性化合物を使用する時は、マンナンに対して1〜5重量%、好ましくは2.5〜3.5重量%の量で使用する。アルカリ剤は1種を単独に、または2種以上を別々に若しくは混合物として使用することもできる。
【0034】
このようにして作成されたグルコマンナン水和糊と解凍した魚肉すりみとを混和し、混和物を型枠に詰めて加熱して凝固させる。このときの加熱温度は、魚肉すりみが凝固し、また水和糊が不可逆的ゲル化(不可逆的凝固)する温度で、例えば、95〜100℃とすることができる。次いで、凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉状物をハンバーグ、肉だんご、ソーセージなどの所望の各様形状に成型し、最後に茹で、蒸し焙焼、焼成、油調などの加熱をすると本発明の食物繊維性魚肉製品が完成する。
【0035】
解凍した魚肉すりみとグルコマンナン水和糊の混和の割合は、解凍した魚肉すりみがドロドロ形状であるため、これをグルコマンナン水和糊の粘性に絡め、加熱前の分散を防止して肉挽機にかけられる成型物とする見地から定められ、例えば前者1重量部に対し、後者0.4〜1.5重量部とすることができる。
【0036】
第二に、本発明の第二の態様、すなわち、解凍した魚肉すりみと前記本発明の第一の態様に関して説明したグルコマンナンの水和糊とを混和し、次いで、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状の成型物とし、この挽肉状成型物に再度前記本発明の第一の態様に関して説明したグルコマンナンの水和糊を混和し、各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法について説明する。
【0037】
先に説明した本発明の第一の態様と第二の態様との主たる相違点は、前者においては魚肉原料をマンナン水和糊と1回だけ混和するのに対し、後者においては肉挽機にかける前とかけた後の2回にわたって混和することである。
【0038】
このように2回混和することのメリットは、魚肉すりみとグルコマンナン水和糊の混和物を加熱し、肉挽機にかけて得た挽肉形状の成型物が、以後の時間経過とともに漸次崩壊する型崩れを防止することができることである。
【0039】
魚肉原料にマンナン水和糊を混和する第1回目における両者の割合は、先に説明した本発明の第一の態様におけると同じく、魚肉すりみ1重量部に対し、マンナン水和糊の混和の割合は、例えば0.4〜1.5重量部とすることができる。この混和物を型枠につめて加熱する際の加熱温度は、先に説明したと同じく、魚肉すりみが凝固し、またマンナン水和糊の不可逆的ゲル化(不可逆的凝固)完成の見地から定められ、例えば95〜100℃とすることができる。
【0040】
このようにして得られた加熱凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状の成型物とし、この成型物に再度マンナン水和糊を混和するときの、マンナン水和糊を混和する第2回目における両者の割合は、混和物を各様形状に成型し、加熱して得られる最終製品の成型物が弾力保持の凝固完成の見地から定められ、前者1重量部に対し、後者を例えば0.2〜1.5重量部とすることができる。
【0041】
上述したところを除いては、本発明の第二の態様は本発明の第一の態様に関して説明したところに準じてその実施をすることができる。なお、本発明の第二の態様による製品は第一の態様による製品よりも、粒径乃至は肉粒感が大きい。
【0042】
なお、本発明の魚肉食品の原料に、本発明の目的乃至効果を阻害しない範囲内で、魚肉すりみおよびグルコマンナンに加えて、増量剤としてなどの目的で、海藻類、食物繊維性の各種食品原料、各種でんぷん等を適宜加えることができることは言うまでもない。すなわち、水和糊をこのようなものを加えて調製することができる。そして、このようなものを加えた場合の水和糊調製に使用する水は、先に説明したマンナン1重量部当りの水の量の範囲内において適宜増減される。また、適宜調味料も使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に説明する。
【0044】
実施例1:平盤肉だんご形状物(マンナン水和糊1回使用)
160メッシュ通過の微粉砕マンナン30gおよびCa(OH) 0.9gの計30.9gに、その約30倍量の水(20℃)900gを添加して、フードミキサーで6分攪拌し、約930gの水和糊を得た。これから280gを分取し、これと解凍したすりみ300gとの合計580gを混和し、以後実施例2におけると同様にて挽肉形状の成型物を得た。この挽肉形状物を肉だんご形状の丸型に成型し、その半分程の厚さに押し延し、平盤様肉だんご形にして、これを揚げ油(150℃)で3分間揚げて油中より取り出し、次いで仕上げ加熱として揚げ油(180℃)で2分間揚げて、平盤肉だんご形状の約26gのもの20個を収得した。
【0045】
このものは、ハンバーグのフライ状で肉厚の食感が好ましくまた単にソースのみで賞味したが美味良好であった。
【0046】
実施例2:ハンバーグ(マンナン水和糊1回使用+食物繊維使用)
160メッシュ通過の微粉砕マンナン30g、水溶性食物繊維「ファイバーソル」松谷化学工業製)20gおよびCa(OH)0.9gの計50.9gに、その約30倍量の水(20℃)1,500gを添加しフードミキサーで8分攪拌して、1,550gの水和糊を得、それから500gを分取し、これと自然解凍した魚肉すりみ500gとを混和し、型枠に詰め、蓋をして100℃で加熱した。得られた凝固物が冷えてから肉挽機によって押し出し、挽肉形状の成型物とし、この挽肉形状物を丸型に成型し(厚さ約10mm、直径約55mm、重さ約40g)、成型物22個をフライパンで表裏各8分焼成し、さらに調味料(市販のウスターソースとケチャップの同量の混合物(ソース))を表裏に適量塗布して焼成した。
【0047】
このハンバーグの焼成所要時間は、表裏各8分間と調味料塗布の手間(裏返し1回含む)約4分間を含め約20分であった。
【0048】
このものは、これまでの魚肉ハンバーグとは異なり、肉挽機を通し挽肉状に成型した魚肉すりみを活用し、食感的に好ましく、簡単調味(ソース塗布のみ)にも拘らず美味良好に仕上がった。
【0049】
実施例3:肉だんご(マンナン水和糊1回使用+調味料使用)
実施例2におけると同様の微粉砕マンナン群50.9gに、その約20倍量の水(20℃)1,000gを添加してフードミキサーで6分攪拌し、約1,000gの水和糊を得、これから300gを計取し、これと実施例2におけると同様にして得た魚肉すりみ400gとの合計700gに市販のハンバーグ用粉末調味料約8gを混合し、以後これを加熱するなど実施例2におけると同様にして挽肉形状の成型物を得た。この挽肉状物を球形に成形し(直径約27mm)、揚げ油で3分間揚げ(150℃)、次にこれを油中より全量取り出し、揚げ油に分散した揚げカスを取り除き、油量の減少分に見合う油を追加して再度、仕上げ加熱として揚げ油180℃で2分間揚げ、肉だんご約60g、10個を取得した。
【0050】
このものは弾力に富む食感の美味良好な球形の揚げ物で、ハンバーグとは異なり食用方法が、和洋中などの食材にも適応するものであった。
【0051】
実施例4:挽肉形状の成型物(マンナン水和糊2回使用)
160メッシュ通過の微粉砕マンナン20gおよびその3%のCa(OH) 0.6gの計20.6gにマンナンの30倍量の水600gを添加し、フードミキサーで8分攪拌してマンナン水和糊620gを得た。これから180gを分取し、これを自然解凍した魚肉すりみ200gとの計380gを混和し、次いで加熱膨張及び混和物の分散を防ぐため、型枠に詰めて加熱し(100℃)、得た凝固物が常温に冷えてから肉挽機により押し出し、挽肉形状の成型物とし、これに、その安定を図るためマンナン水和糊の残量440gから200gを分取して混和し、安定した挽肉形状物を得た。
【0052】
このものは、ハンバーグ、ソーセージ、肉だんご等の食材として好適な挽肉形状の成型物であり、更には、挽肉形状(3〜5mm)の粒状に各様の調味を付し、大きいソボロ形態で新食材の可能性を提供することができる。
【0053】
実施例5:ソーセージ(マンナン水和糊2回使用+食物繊維)
実施例2における使用残のマンナン水和糊から250g分取し、これと、同様にして解凍した魚肉すりみ250gを混和し、以後加熱など実施例2におけると同様にして挽肉形状の成型物を得た。これに、残りのマンナンの水和糊から250gを分取して混和し、この混和物にハンバーグ用スパイス8gを振りかけて絡ませ、次にスタッファーによって羊腸ケーシング(径20mm)に充填し、約100mm毎に3〜4回ねじて締め、以後同様にして腸詰めソーセージ8本を取得し、次いで沸騰水中に20分間加熱してソーセージを完成した。
【0054】
このものは、これまでの均質な然も塩味の魚肉ソーセージとは異なり、挽肉様の食感で美味良好に仕上がった。
【0055】
実施例6:各種形状のハンバーグ(マンナン水和糊2回使用+食物繊維+澱粉)
160メッシュ通過の微粉砕マンナン18g、水溶性食物繊維「ファイバーソル」(松谷化学工業製)7.5gおよびじゃがいも澱粉4.5gの合計30gに、マンナンの3.3%のCa(OH)0.6gを加えてかき混ぜ、次いで水1,200g(粉体30g×40)を添加してフードミキサーで8分間攪拌し、マンナン水和糊1,230g得た。
【0056】
次いで、解凍した魚肉すりみを500g計取し、これに上記マンナン水和糊から500g分取して混和した。以後この混和物を加熱するなど実施例2におけると同様にて挽肉形状の成型物を得た。この挽肉形状物1,000gに、さらに前記マンナン水和糊の残りから300gを分取して混和し、この混和物計1,300gを平盤電熱機「HITACHI・NEG−2200」のハンバーグ・ダイヤルメモリ(160)の平盤面(250mm×250mm)に、厚さ約12〜15mm程度に延して敷き、8分間焼成し、次にこれを裏返し8分間焼成、次いで市販のソース類(ケチャップとウスターソースの等量かき混ぜた物)を表面に適当に塗り、1分間焼成して裏返し、同様にソースを塗り1分間焼成した後、全量を取り出し自然放冷し、次に四角形など各様のカット成型をした。なお、当該焼成には蓋を用いた。
【0057】
このものは、白色生地に好ましい焼き色が高級感を呈し、魚肉すりみのハンバーグでも、畜肉原料に匹敵する粒状の食感を提供する物性を完成した。
【0058】
更に、製品の形状が、円形は元より四角形、長方形、ひし形、三角形なども自在に完成することも確認した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
海洋資源の有効活用に於て、魚肉すりみの食材活用は唯一塩分使用による擂潰を経て粘稠な食感を完成し今日に至っている。時に健康志向の高まりは、塩分の食用摂取を低減する感覚が年毎に高まり、我が国特有の「蒲鉾類」の食用は年毎に敬遠される時代となった。この時、食用資源の有効活用は先ず、塩分カットの食品構成が希求され、当該魚肉活用の絶対条件として、塩分無使用のすりみ原料活用の新製品である食物繊維性魚肉食品の市場提供はヘルシー食品としても正に時代的優位性をして、食用資源活用の利用可能性は極めて大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
解凍した魚肉すりみと微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水を使用して作成したグルコマンナン水和糊とを混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉形状物を所望の各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法。
【請求項2】
解凍した魚肉すりみと微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水を使用して作成したグルコマンナン水和糊とを混和し、この混和物を型枠に詰めて加熱し、得た凝固物を肉挽機にかけて挽肉形状に成型し、この挽肉形状物に前記水和糊を再度混和し、この混和物を所望の各様形状に成型して加熱することを特徴とする食物繊維性魚肉食品の製造法。
【請求項3】
該グルコマンナンの水和糊が微粉砕したグルコマンナン、凝固剤及び水に加えて水溶性多糖類、海藻類および/または澱粉類をも使用して得たものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食物繊維性魚肉食品の製造法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造法で得られたことを特徴とする食物繊維性魚肉食品。


【公開番号】特開2007−97452(P2007−97452A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289626(P2005−289626)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000200585)
【Fターム(参考)】