説明

飯盛り方法

【課題】米飯の品質を損なうことなく、盛り付けの作業性を向上させることができる、飯盛り方法を提供すること。
【解決手段】炊飯された飯を容器に盛り付けるための飯盛り方法であって、所定の炊飯装置から排出された飯を所定の切り出し装置において所定量毎に切り出す切り出し工程(ステップSA−3)と、この切り出し工程において切り出された飯を所定の冷却装置によって冷却する冷却工程(ステップSA−5、SA−6)と、この冷却工程において冷却された飯を容器に盛り付ける盛り付け工程(ステップSA−7)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お弁当容器等の各種容器に米飯等を盛り付けるための飯盛り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の食品は、工業製品のように均一な形状や物性を持たないため、製造ラインの自動化が比較的困難である。例えば、お弁当のような食品の製造ラインにおいては、炊飯された米飯を弁当容器に盛り付ける必要があるが、米飯は柔らかいためにこれを機械的に保持等することが困難であり、実際にはその多くの工程を人手で行っている。
【0003】
図8は従来の第1の飯盛り方法の工程図である。この第1の方法では、炊飯釜で米飯を炊飯し(ステップSB−1)、この米飯をコンベアを介してバットに移し取る(ステップSB−2)。そして、このバットを台車の上に数段積み重ね、この台車を真空庫内で真空冷却することで、所定量(例えば200Kg程度)の米飯を、流通過程において衛生上の問題がない程度の温度(例えば約20〜30℃。以下、出荷温度)に冷却する(ステップSB−3)。次いで、真空庫から台車を取り出し、各バット内の米飯を切り出し装置に投入し、この切り出し装置によって、米飯を一食当りの所定量に切り出す(ステップSB−4)。具体的には、切り出し装置において、米飯を少量ずつ計量器に投入することで計量し、あるいは、所定間隔で開閉するシャッターにてタイミング計量する。その後、計量した米飯をコンベアにて搬送し、このコンベアの側方に立っている作業者が、手で米飯を保持して弁当容器に盛り付けることで、米飯の盛り付けを行う(ステップSB−5)。なお、図8において括弧内には、各工程の途中又は終了時における米飯の温度例を示す(後述する図2及び図9において同じ)。
【0004】
図9は従来の第2の飯盛り方法の工程図、図10は従来の第2の飯盛り方法を実行するための製造ラインの平面図である。この第2の方法では、第1の方法と同様に、炊飯された米飯をバット(ここでは保温用バット)に移し取った後(ステップSC−1、SC−2)、冷却を行うことなく、この米飯を切り出し装置100に投入して所定量毎に切り出す(ステップSC−3)。そして、切り出された米飯をコンベア101にて搬送し、このコンベア101の側方に立っている作業者が、手で米飯を保持して弁当容器に盛り付ける(ステップSC−4)。その後、米飯を盛りつけた弁当容器を、複数毎に、ホット成型冷却機102と称される冷却装置を用いて出荷温度に冷却する(ステップSC−5)。具体的には、各弁当容器をホット成型冷却機102の内部に導入し、各弁当容器に盛り付けた米飯の内部に図示しない細長のノズルを挿入し、このノズルから冷却用空気を噴射することで、米飯を冷却する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−225058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の方法のうち、第1の方法では、真空冷却後に米飯を切り出していたので、凝縮作用によって硬くなった米飯や、冷却作用によって粘りが増加した状態の米飯を切り出し装置で処理することになるため、米飯が潰れることがあった。あるいは、従来、このような原因による米飯の潰れを防止するために、炊飯時に米飯に油分を添加する必要が生じていた。
【0007】
一方、第2の方法では、米飯を冷却する前に切り出しているので、米飯の潰れを防止できる反面、冷却前に容器に盛り付ける必要があるため、作業者が米飯を熱いうちに持つ必要があり、容器への盛り付け作業が困難であった。また、米飯を容器に盛り付けた後で冷却しているので、米飯内に噴射した空気の抜けが悪く、冷却効率が低くなっていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、米飯の品質を損なうことなく、盛り付けの作業性を向上させることができる、飯盛り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の飯盛り方法は、炊飯された飯を容器に盛り付けるための飯盛り方法であって、所定の炊飯装置から排出された前記飯を、所定の切り出し装置において所定量毎に切り出す切り出し工程と、前記切り出し工程において切り出された前記飯を、所定の冷却装置によって冷却する冷却工程と、前記冷却工程において冷却された前記飯を、前記容器に盛り付ける盛り付け工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の飯盛り方法は、請求項1に記載の飯盛り方法において、前記冷却工程において、前記冷却装置における開放空間に前記飯を配置し、この飯に冷却用気体を送風することにより、当該飯を冷却することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の飯盛り方法は、請求項1又は2に記載の飯盛り方法において、前記冷却工程と同時に、又は、前記冷却工程の前又は後に、前記飯を所定形状に均す均し工程を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の飯盛り方法は、請求項3に記載の飯盛り方法において、前記均し工程は、米飯を成形スペースに供給する米飯供給工程と、前記成形スペースに供給された米飯を、当該米飯に挿入した均し具を側方に摺動させる摺動均し工程と、前記成形スペースに供給された米飯を、当該成形スペースの側方端部から押圧具にて押圧成形する押圧均し工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の飯盛り方法は、請求項4に記載の飯盛り方法において、前記摺動均し工程と、前記押圧均し工程とを、それぞれ2回以上、交互に行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、飯を冷却前に切り出すので、飯が凝縮によって硬くなってから切り出す場合や、飯が冷却されて粘りが出てから切り出す場合に比べて、飯をスムーズに切り出すことができ、飯が潰れて品質が損なわれることを防止できる。また、従来のように炊飯時に油分を添加するような必要性がなくなるので、炊飯を容易かつ低コストで行なうことができると共に、近年の健康志向に合致した製品を製造できる。また、飯を冷却した後で容器に盛り付けるので、従来の第2の方法のように熱い飯を盛り付ける場合と異なり、飯を容易に手で持って盛り付けることができ、盛り付け効率を高めることができる。
【0015】
また、この発明によれば、開放空間に配置した飯に冷却用気体を送風することにより、飯を冷却するので、従来のように容器に盛り付けた後で飯の冷却を行う場合に比べて、冷却用気体が飯をスムーズに通過し、飯の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
また、この発明によれば、冷却と同時に、又は、冷却の前又は後に、飯を所定形状に均すので、作業者が飯を手動で均す必要がなくなり、盛り付け効率を一層向上させることができる。特に、冷却の前に均しを行った場合には、飯を比較的高温で粘りが生じていない状態で均すことができるので、冷却後の粘りが増した状態で均す場合に比べて、一層スムーズに均しを行うことができる。
【0017】
また、この発明によれば、均し工程において、均し具による側方からの摺動を行うことで米飯の厚みを均一化できると共に、押圧具による側方端部からの押圧成形を行うことで米飯を所望の外形に成形できる。
【0018】
また、この発明によれば、摺動均し工程と、押圧均し工程とを、それぞれ2回以上、交互に行うことにより、摺動均し工程で広がった米飯を押圧均し工程で所望の外形に成形でき、押圧均し工程で生じた左右端部の盛り上がりをさらに摺動均し工程で均すことができ、摺動均し工程と押圧均し工程とのコンビネーションによって、米飯を所望の状態に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る飯盛り付け方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る飯盛り方法は、炊飯された飯を容器に盛り付けるためのものである。
【0021】
ここで、本実施の形態が対象とする「飯」は、炊飯した全ての穀物が該当し、米飯の他、米以外の穀物を米に混合させた混合飯や、米以外の穀物のみからなる雑穀飯を含む。以下では、米飯を盛り付ける場合について説明する。また、「容器」とは、飯を流通させるための全ての容器が対象になり、飯を最終消費者に届けるための容器(例えば弁当容器)の他、飯を中間的に保管等するための容器を含む。以下では、弁当容器に盛り付ける場合について説明する。
【0022】
この飯盛り方法の特徴の一つは、米飯を、切り出した後で冷却することにある。すなわち、従来の第1の方法では、米飯を切り出す前に冷却していたので、米飯が冷却されて硬くなったり粘りが増した状態で切り出されることで、種々の不具合が生じていた。これに対して本実施の形態では、米飯が比較的柔らかく、しかもその粘りが比較的少ない状態で切り出すことで、この不具合を解消できる。
【0023】
また、飯盛り方法の他の特徴の一つは、米飯を冷却した後で盛り付けることにある。すなわち、従来の第2の方法では、米飯を熱い状態で盛り付けていたので、作業者が米飯を持つことが困難であり、作業性が悪かった。これに対して本実施の形態では、米飯が冷却した後で持つことができ、この不具合を解消できる。
【0024】
特に、飯盛り方法の特徴の一つは、上記2つの特徴を同時に達成した点にある。すなわち、従来の第2の方法では、米飯を切り出した後で冷却しており、また従来の第1の方法では、米飯を盛り付ける前に冷却していたが、これらは相互に相反する方法であると認識されており、両者の利点を同時に得ること(あるいは両者の欠点を同時に解消すること)が想定されていなかった。この原因の一つは、米飯は何らかの容器に保持した状態でなければ冷却することが困難であるとの固定観念があり、バットに入れて冷却するか(従来の第1の方法のパターン)、弁当容器に盛り付けてから冷却する(従来の第2の方法のパターン)ことしか想定されていなかった点にある。このため、従来では、冷却してから切り出すか、弁当容器に盛り付けてから冷却する方法しか立案されていなかった。これに対して本実施の形態では、米飯を、切り出した後で、かつ、弁当容器に入れる前に冷却するという新規な発想に至ることで、上記2つの特徴を同時に達成した。
【0025】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。図1は、本実施の形態に係る飯盛り方法を実行するための製造ラインの平面図である。この製造ライン1は、米飯を所定量ずつ切り出すための切り出し装置10、切り出された米飯を搬送する第1コンベア11、米飯の均し及び一次冷却を行う第1ロータリー装置12、一次冷却された米飯を搬送する第2コンベア13、米飯の二次冷却を行う第2ロータリー装置14、及び、二次冷却された米飯を搬送する第3コンベア15、を備えて構成されている。ただし、この製造ライン1は、例示にすぎず、本実施の形態に係る飯盛り方法を実行するためには他の製造ラインを用いることが可能である。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る飯盛り方法の工程図である。この図2に示すように、本実施の形態に係る飯盛り方法は、炊飯工程(ステップSA−1)、移し取り工程(ステップSA−2)、切り出し工程(ステップSA−3)、均し工程(ステップSA−4)、一次冷却工程(ステップSA−5)、二次冷却工程(ステップSA−6)、及び、盛り付け工程(ステップSA−7)を含んで構成されている。以下、各工程について順次説明する。
【0027】
まず、炊飯工程(ステップSA−1)では、所定量の生米及び水を図示しない炊飯釜(特許請求の範囲における炊飯装置に対応する)に投入し、この炊飯釜にて生米を炊飯して米飯とする。
【0028】
次に、移し取り工程では、炊飯装置にて炊飯された米飯を、図示しないコンベアを介して搬送し、このコンベアの側方や先端部において、図示しない保温用容器(以下、保温用バット)に移し取る(ステップSA−3)。このように保温用バットに取るのは、米飯の温度を耐菌性が維持できる温度(例えば70℃以上。以下、耐菌温度)に保持し、かつ、米飯の温度を高温に保持してその粘り気を抑えた状態で切り出し装置10に投入するためである。また、このように保温用バットで取ることで、炊飯装置による炊飯タイミングと、切り出し装置10による切り出しタイミングとの間のバッファを取ることができる。
【0029】
次いで、切り出し工程(ステップSA−3)では、保温用バットをリフタにて持ち上げて、その内部の米飯を図2の切り出し装置10(特許請求の範囲における切り出し装置に対応する)に投入する。そして、この切り出し装置10によって、米飯を所定量(ここでは、各弁当容器に対応した1食当りの分量。以下、目標切り出し量)毎に切り出す。この切り出し装置10は、米飯を投入するホッパーと、ホッパーの米飯を少量ずつ供給するスクリューフィーダーと、スクリューフィーダーにて供給された米飯を受容する受容部とを備えて構成される(これら各部は図示しないか又は符号を省略する)。このように構成された切り出し装置10を用いた米飯の切り出し方法としては、重量計量とタイミング計量との2つの方法があり、いずれか一方の方法が採用される。
【0030】
重量計量の場合、受容部の下方に計量器が配置されており、スクリューフィーダーにて供給され受容部にて受容された米飯の重量が計量器にて計量される。そして、この計量器の計量値が所定量に達した場合には、スクリューフィーダーによる供給を停止すると共に、受容部にて受容された米飯を次工程に押し出す。
【0031】
一方、タイミング計量の場合、スクリューフィーダーによる米飯の供給を所定時間だけ連続して断続的に行い、所定時間が経過する毎に、スクリューフィーダーの回転を停止等すると共に、受容部の上部をシャッターで閉じることで、所定量の米飯を受容部に供給する。そして、受容部にて受容された米飯を次工程に押し出す。
【0032】
このように本実施の形態においては、冷却前の米飯を切り出し装置10で切り出すので、米飯が凝縮によって硬くなってから切り出す場合や、米飯が冷却されて粘りが出てから切り出す場合に比べて、米飯をスムーズに切り出すことができ、米飯が潰れて品質が損なわれることを防止できる。また、従来のように炊飯時に油分を添加するような必要性がなくなるので、炊飯を容易かつ低コストで行なうことができると共に、近年の健康志向に合致した製品を製造できる。なお、このような重量計量又はタイミング計量による切り出しにおいて、受容部の形状を、弁当容器における米飯盛り付け部分の形状(以下、目標形状)に略対応させておくことで、盛り付けに適した形状で米飯を塊状に切り出すことが可能になる。ただし、本実施の形態においては、後述する均し工程において米飯を均す際、米飯の形状を目標形状に均すため、切り出し工程において米飯を目標形状にしなくてもよい。
【0033】
次に、均し工程(ステップSA−4)について説明する。この均し工程では、所定量毎に切り出された米飯を、目標形状になるように均す。具体的には、切り出し装置10にて切り出された米飯を、第1コンベア11を介して、第1ロータリー装置12に供給する。この第1ロータリー装置12は、例えば、円盤12aに複数の凹部12bを形成して構成されている。そして、円盤12aを図示矢印方向に連続又は断続的に回転させつつ、投入位置P1において各凹部12bに米飯を投入し、排出位置P2において各凹部12bの米飯を第2コンベア13に排出する。この投入位置P1から排出位置P2に至る間のうち、最初の所定時間の間に当該均し工程を行い、残りの時間の間に次の一次冷却工程を行う。
【0034】
この均し工程について、均し機構と共により詳細に説明する。この均し工程は、図3に示す米飯供給工程、図4に示す第1均し工程、図5に示す第1成形工程、図6に示す第2均し工程、及び、図7に示す第2成形工程に大別される。なお、第1均し工程及び第2均し工程は、特許請求の範囲における摺動均し工程に対応し、第1成形工程及び第2成形工程は、特許請求の範囲における押圧均し工程に対応する。
【0035】
ここで、第1ロータリー装置12の凹部12bの長手方向(第1ロータリー装置12の回転方向)の両端部には、後述するパッド12cが配置されている。このパッド12cは、凹部12bの幅(第1ロータリー装置12の直径方向に沿った長さ)に略対応する幅の直方体であり、図示しないカム機構やシリンダ駆動によって凹部12bの長手方向に沿って摺動するものであって、特許請求の範囲における押圧具に対応する。また、凹部12bの上方には、後述するくし歯12dが配置されている。このくし歯12dは、左右一対に設けられており、各くし歯12dは、凹部12bの幅方向に沿って並設された複数の細径の棒体にて形成されている。このくし歯12dは、図示しないカム機構やシリンダ駆動によって、凹部12bの長手方向に沿って摺動すると共に、上下に摺動する。このくし歯12dは、特許請求の範囲における均し具に対応する。
【0036】
まず、米飯供給工程では、第1コンベア11を介して、第1ロータリー装置12の凹部12bに米飯を供給する(図3(a)(b))。
【0037】
次に、第1均し工程では、左右のパッド12cを、当該凹部12bの長手方向の中央寄りの第1位置にスライドさせることで、凹部12bに投入した米飯を長手方向の中央に寄せる(図4(a)(b))。この第1位置は、米飯の所望の成形形状よりも左右に狭い位置である。そして、この米飯の中央位置近傍に、左右一対のくし歯12dを上方から第1高さに至るように挿入し(図4(c))、このくし歯12dとパッド12cとを左右の両端部にスライドさせることで(図4(d)(e))、米飯を凹部12bの内部において広げる。その後、くし歯12dを上方に抜き上げる(図4(f))。この第1均し工程を行うことにより、米飯を、成形形状より広い範囲に略均等に均すことができる。
【0038】
次いで、第1成形工程では、パッド12cのみを長手方向の中央寄りの第2位置にスライドさせる(図5(a)(b))。この第2位置は、先の第1位置よりも左右外側寄りに広い位置であって、米飯の所望の成形形状に対応する位置である。その後、このパッド12cを左右の両端部にスライドさせる(図5(c))。この第1成形工程を行うことで、米飯を所望の成形形状に概略的に略均すことができる。
【0039】
次いで、第2均し工程では、米飯の中央位置近傍に、くし歯12dを上方から第2高さに至るように挿入し(図6(a)(b))、くし歯12dを米飯の左右の端部近傍又は当該端部より外側にスライドさせる(図6(c))。その後、くし歯12dを上方に抜き上げる(図6(d))。この第2均し工程を行うことにより、パッド12cに押圧されることで盛り上がっている米飯の左右端部を崩すことができ、米飯全体を略均一に均すことができる。このため、くし歯12dの第2高さは、米飯の左右端部の盛り上がり部分(所望の厚みより上方に突出している部分)の高さに対応させることが好ましい。なお、第1均し工程における第1高さは、第2高さと同じとしてもよいが、米飯の均し効果に応じて、第1高さとは異なる高さとしてもよい。
【0040】
最後に、第2均し工程では、パッド12cを所望の成形位置に再びスライドさせることで(図7(a)〜(c))、第2均し工程で左右に崩れ落ちた可能性がある米飯を成形して、米飯の成形が完了する。
【0041】
なお、この均し工程に含まれる各工程は、米飯の成形性によっては、一部を省略したり、一部を繰り返して行ったり、あるいは、順序を入れ替えて行ってもよい。また、均し工程は、他の任意の方法、例えば、凹部12bの底部を図示しない振動手段にて振動させること等にて行うこともできる。ここで、「均す」とは、主として、米飯を全体的に略均一な厚みにすることを意味しているが、米飯の上面を波形に成型したり、米飯に具材を入れるための凹凸部を形成すること等を含む。本実施の形態では、このような均し工程を、後述する一次冷却工程や二次冷却工程の前に行うことで、米飯を比較的高温で粘りが生じていない状態で均すことができるので、冷却後の粘りが増した状態で均す場合に比べて、一層スムーズに均しを行うことができる。
【0042】
次に、一次冷却工程(ステップSA−5)において、各凹部12bにおいて均された米飯に対して冷却用気体(例えば空気)を吹き出すことで、米飯を約50〜60℃程度に冷却する。具体的には、各凹部12bの底面に図示しない通気孔を形成しておき、この通気孔から凹部12bに向けて冷気を噴射することで、米飯を冷却する。あるいは、各凹部12bの上方に図示しない通気ノズルを配置し、この通気ノズルから凹部12bに向けて冷気を噴射することで、米飯を冷却する(この点において、第1ロータリー装置12は、特許請求の範囲における冷却装置に対応する)。その後、米飯が排出位置に来た時点で、例えば凹部12bの底部のみを図示しないリフタで上方に持ち上げることで、米飯を凹部12bから上方に排出し、さらにこの米飯を図示しないプッシャで第2コンベア13に押し出す。
【0043】
その後、二次冷却工程(ステップSA−6)において、米飯をさらに出荷温度に冷却する。具体的には、一次冷却された米飯を、第2コンベア13を介して、第2ロータリー装置14に供給する。この第2ロータリー装置14は、例えば、平円盤14aを備えて構成されている。そして、この平円盤14aを図示矢印方向に連続又は断続的に回転させつつ、投入位置P3においてその上面に米飯を投入し、排出位置P4において米飯が作業者によって取り上げられる。この投入位置P3から排出位置P4に至る全時間において、二次冷却工程を行う。この冷却の具体的方法は任意であるが、例えば、平円盤14aの底面に図示しない通気孔を形成しておき、この通気孔から米飯に向けて冷気を噴射することで、米飯を冷却する(この点において、第2ロータリー装置14は、第1ロータリー装置12と共に、特許請求の範囲における冷却装置に対応する)。
【0044】
ここで、米飯の冷却は、主として、冷気と米飯との間の熱交換ではなく、冷気によって米飯の蒸気を飛ばすことによって達成される。従って、従来の第2の方法のように、弁当容器に米飯を盛り付けた後で冷却した場合には、弁当容器に冷気がこもってしまい、蒸気を効率よく飛ばすことが困難であった。これに対して、本実施の形態では、周囲に障害物がない平円盤14aの上面の開放空間に米飯を載置し、この米飯に冷気を噴射しているので、冷気が米飯を通過して周囲の開放空間にスムーズに抜け、高い冷却効率を得ることができる。なお、このように冷却工程を一次冷却工程と二次冷却工程に分けなくてもよく、いずれか一方の冷却工程のみで米飯を出荷温度に冷却できる場合には他方を省略してもよい。例えば、第1ロータリー装置12における円盤12aの径を大きくすることで一次冷却工程の時間を延ばし、第2ロータリー装置14を省略してもよい。
【0045】
最後に、盛り付け工程(ステップSA−7)において、米飯が排出位置に来た時点で、作業者がこの米飯を手で取って弁当容器に盛り付け、この弁当容器を第3コンベア15に載せて次工程に供給する。ここで、米飯は、一次冷却工程及び二次冷却工程によって冷却され、出荷温度に冷却されているので、従来の第2の方法のように熱い米飯を盛り付ける場合と異なり、米飯を容易に手で持って盛り付けることができ、盛り付け効率を高めることができる。また、米飯は均し工程で目標形状に略合致する形状に均されているため、作業者が米飯を手動で均す必要がなくなり、この点においても盛り付け効率が向上する。
【0046】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0047】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、米飯の切り出し時における粘りから生ずる問題を完全に解消できない場合においても、従来よりも切り出し時における粘りを低減できている限りにおいて、あるいは、同等の効果を異なる手段で達成できている限りにおいて、本願発明の課題は解決されている。
【0048】
(各工程の具体的実施方法について)
各工程では、その目的を達成できる限りにおいて、上記説明した具体的方法とは異なる方法を採用することができる。例えば、切り出し工程において、切り出し装置10の代わりに、作業者が人手で米飯を所定量毎に計量してもよい。すなわち、各工程において自動で行うものとして説明した内容を手動で行ってもよく、あるいは、各工程において手動で行うものとして説明した内容を公知の機械を用いて自動で行うことができる。同様に、均し工程、一次冷却工程、あるいは、二次冷却工程においても、他の方法を採ることができる。
【0049】
(各工程間の関係について)
本実施の形態では、米飯を比較的高温で均すため、均し工程の後に、一次冷却工程と二次冷却工程とを行っているが、これらは相互にその順番を入れ替えることができる。例えば、一次冷却工程と二次冷却工程との間に均し工程を行ってもよく、あるいは、一次冷却工程及び二次冷却工程の後に均し工程を行ってもよい。また、各工程を複数含めることもでき、例えば、一次冷却工程や二次冷却工程の前後の両方で、均し工程を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明に係る飯盛り方法は、特に、弁当工場の製造ラインにおいて米飯を弁当容器に盛り付ける際に適用でき、米飯の品質を損なうことなく、盛り付けの作業性を向上させるために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る飯盛り方法を実行するための製造ラインの平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る飯盛り方法の工程図である。
【図3】均し工程における米飯供給工程を示す縦断面図である。
【図4】均し工程における第1均し工程を示す縦断面図である。
【図5】均し工程における第1成形工程を示す縦断面図である。
【図6】均し工程における第2均し工程を示す縦断面図である。
【図7】均し工程における2成形工程を示す縦断面図である。
【図8】従来の第1の飯盛り方法の工程図である。
【図9】従来の第2の飯盛り方法の工程図である。
【図10】従来の第2の飯盛り方法を実行するための製造ラインの平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 製造ライン
10、100 切り出し装置
11 第1コンベア
12 第1ロータリー装置
12a 円盤
12b 凹部
12c パッド
12d くし歯
13 第2コンベア
14 第2ロータリー装置
14a 平円盤
15 第3コンベア
101 コンベア
102 ホット成型冷却機
P1、P3 投入位置
P2、P4 排出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯された飯を容器に盛り付けるための飯盛り方法であって、
所定の炊飯装置から排出された前記飯を、所定の切り出し装置において所定量毎に切り出す切り出し工程と、
前記切り出し工程において切り出された前記飯を、所定の冷却装置によって冷却する冷却工程と、
前記冷却工程において冷却された前記飯を、前記容器に盛り付ける盛り付け工程と、
を含むことを特徴とする飯盛り方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記冷却装置における開放空間に前記飯を配置し、この飯に冷却用気体を送風することにより、当該飯を冷却すること、
を特徴とする請求項1に記載の飯盛り方法。
【請求項3】
前記冷却工程と同時に、又は、前記冷却工程の前又は後に、前記飯を所定形状に均す均し工程、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の飯盛り方法。
【請求項4】
前記均し工程は、
米飯を成形スペースに供給する米飯供給工程と、
前記成形スペースに供給された米飯を、当該米飯に挿入した均し具を側方に摺動させる摺動均し工程と、
前記成形スペースに供給された米飯を、当該成形スペースの側方端部から押圧具にて押圧成形する押圧均し工程と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の飯盛り方法。
【請求項5】
前記摺動均し工程と、前記押圧均し工程とを、それぞれ2回以上、交互に行うこと、
を特徴とする請求項4に記載の飯盛り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−275019(P2007−275019A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108837(P2006−108837)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(592001218)株式会社武蔵野 (20)
【Fターム(参考)】