説明

飲料ディスペンサ

【課題】ミキシングユニット内で原料放出口に向かって上昇する湯気の量を低減し、それにより、原料放出口における粉末原料の付着や固着を低減した飲料ディスペンサを提供することを目的とする。
【解決手段】ミキシングユニット21のミキシングケース23は、ケース本体31とキャップ41とを備えており、これらを組み合わせることにより、粉末原料と湯とを混合するためのミキシング部23aと、ミキシング部23a内に粉末原料を供給するためのガイド部23bとが形成される。また、キャップ41の隔離壁43cは、ガイド部23bの内部を粉末原料が案内される原料通路51と、原料通路51から隔てられた閉鎖空間部52とに区画しており、ミキシング部23a内に供給された湯から発生した湯気の少なくとも一部を、閉鎖空間部52内に集めることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末原料と湯とを混合して飲料を生成する飲料ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者に茶やコーヒー等の温かい飲料を提供する装置の一種として、特許文献1に記載の飲料ディスペンサが用いられる。この飲料ディスペンサは、キャニスタ内に収容された粉末原料と貯湯タンク内に貯められた湯とを、ミキシングユニット内で混合することによって飲料を生成するものである。尚、キャニスタ内の粉末原料は、スクリュに押し出されることによって原料放出口から放出され、放出された粉末原料がミキシングユニット内に供給される。このような飲料ディスペンサにおいて、ミキシングユニット内の湯から発生した湯気が上昇して原料放出口近傍を湿らせると、水分を吸収した粉末原料が固着してしまい、その後の原料放出に支障が生じる。したがって、特許文献1に記載の飲料ディスペンサでは、ミキシングユニット内の湯気を吸入して外部に排出するためのファンモータを設置し、原料放出口に湯気が到達することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−152520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の飲料ディスペンサのように、ファンモータを用いてミキシングユニット内の湯気を吸引することは有効な方法ではあるが、現状では、以下に説明するような場合に効果が不十分となることがある。まず、飲料ディスペンサの稼働時間が長くなると、ファンモータの経年劣化によって湯気の吸引能力が低下してしまう。また、短時間内における飲料の注出頻度が多い場合、ファンモータが湯気を吸引し終える前に次の注出が始まってしまう。これらの場合、ファンモータによる吸引が追いつかなくなってミキシングユニット内に湯気が滞留してしまうため、粉末原料が原料放出口近傍で固着するという問題点の他に、粉末原料がミキシングユニットの内部壁面に付着するという問題点も生じる。さらに、粉末原料が高い吸湿性を有している場合、ファンモータが湯気を吸引し終える前に粉末原料が水分を吸収してしまうという問題点も生じる。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、ミキシングユニット内で原料放出口に向かって上昇する湯気の量を低減し、それにより、原料放出口における粉末原料の付着や固着を低減した飲料ディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る飲料ディスペンサは、内部に収容された粉末原料を原料放出口から放出するキャニスタと、原料放出口から放出された粉末原料を湯と混合して飲料を生成するミキシングユニットとを備えた飲料ディスペンサにおいて、ミキシングユニットは、粉末原料と湯とを混合するためのミキシング部と、ミキシング部を原料放出口に接続するガイド部とを有しており、ガイド部には、原料放出口から放出された粉末原料をミキシング部に案内する原料通路と、原料通路から遮られるとともにミキシング部に向かって開口する閉鎖空間部とが設けられることを特徴とするものである。
【0007】
原料通路から遮られるとともにミキシング部に向かって開口する閉鎖空間部をミキシングユニットのガイド部に設けたので、ミキシング部に供給された湯から発生する湯気の少なくとも一部が、ファンモータに依存することなく閉鎖空間部内に集められるようになり、そのため、原料放出口に向かって上昇する湯気の量が低減される。尚、閉鎖空間部内に集められた湯気はより大きな水滴となって内部壁面に付着するが、閉鎖空間部は原料通路から遮られているため、水滴とともに内部壁面に付着する粉末原料の量も低減される。さらに、閉鎖空間部の内部壁面に付着した水滴はミキシング部に流れ落ちる際に、付着している粉末原料を洗い流す。したがって、飲料ディスペンサにおいて、ミキシングユニット内で原料放出口に向かって上昇する湯気の量を低減し、粉末原料の付着や固着を低減することが可能となる。
【0008】
ミキシングユニットは、ミキシング部に湯を供給するための給水口を有しており、閉鎖空間部は、給水口とは反対側となる部位に形成されてもよい。
また、ミキシングユニットは、ガイド部の一部を形成するケース本体と、ガイド部の残りの一部を形成するキャップとを有するミキシングケースを備えており、キャップに一体として設けられた隔離壁がガイド部を区画することにより、原料通路と閉鎖空間部とが形成されるような構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飲料ディスペンサよれば、ミキシングユニット内で原料放出口に向かって上昇する湯気の量が低減されることにより、原料放出口における粉末原料の付着や固着が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る飲料ディスペンサを示す外観図である。
【図2】実施の形態に係る飲料ディスペンサの内部構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る飲料ディスペンサにおけるミキシングユニット周辺の構成を示す部分拡大断面側面図である。
【図4】実施の形態に係る飲料ディスペンサにおけるミキシングユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図5】図3のV−V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
まず、図1及び図2を用いて、この実施の形態に係る飲料ディスペンサ1の全体的な構成について説明する。尚、飲料ディスペンサ1は、粉末原料と水(湯または冷水)とを混合することによって生成した飲料を利用者に提供する装置である。また、飲料ディスペンサ1における前後方向及び上下方向を、図1、2等に示す各矢印によって規定する。
【0012】
図1に示すように、飲料ディスペンサ1は、前面扉2aを有する筐体2を備えている。前面扉2aは、その一方の端部を中心として回動可能となるように筐体2に支持されており、前面扉2aを回動させることによって筐体2が開閉される。前面扉2aには、飲料の注出等を行う際に利用者によって操作される操作部3が設けられている。また、操作部3の下方には、利用者に飲料を提供するための空間である飲料注出部4が形成されている。飲料注出部4は筐体2の内部に設けられたカップステージ5によって区画された空間であり、利用者が飲料注出部4内に図示しないカップ等を載置して操作部3を操作すると、飲料の注出が開始される。
【0013】
図2に示すように、筐体2(図1参照)の内部は、上端部が屈折した仕切板6によって前方側と後方側とに区画されており、仕切板6の前方側には、飲料の生成及び注出が行われる飲料生成室7が形成されている。一方、仕切板6の後方側には、飲料を生成するための水の加熱や冷却を行うとともに、加熱及び冷却された水が貯留される機械室8が形成されている。機械室8内には、図示しない加熱装置によって加熱された湯を貯める貯湯タンク9や、図示しない冷凍回路によって冷却された冷水を貯める冷水タンク(図示されず)等が設けられている。
【0014】
飲料生成室7において、仕切板6には前方側に突出するベース部材10が固定されており、ベース部材10の上面10aには、粉末原料を内部に収容するキャニスタ11が載置されている。また、キャニスタ11の下方には、キャニスタ11から供給される粉末原料と、機械室8から供給される水とを混合して飲料を生成するためのミキシングユニット21が設けられている。キャニスタ11の前面における下方側には、キャニスタ11内の粉末原料をミキシングユニット21に導くためのシュータ12が取り付けられている。また、ミキシングユニット21の底部には飲料放出口21aが形成されており、ミキシングユニット21内で生成された飲料が飲料放出口21aから放出される。
【0015】
尚、飲料ディスペンサ1は、キャニスタ11及びミキシングユニット21をそれぞれ3組ずつ備えており、最大で3種類の飲料を生成可能となっている。3つのミキシングユニット21の下方側には、これらの飲料放出口21aから放出された飲料を受けるドリンクガイド22が設けられている。また、ドリンクガイド22の下方には、飲料注出部4(図1参照)を区画するカップステージ5が配置されている。ドリンクガイド22は、カップステージ5の内部に延びて開口する注出口22aを有しており、ドリンクガイド22が各ミキシングユニット21から受けた飲料が、注出口22aを介してカップステージ5内の図示しない容器に注出される。
【0016】
次に、図3〜5を用いて、キャニスタ11、ミキシングユニット21及びその周辺の構成について説明する。
図3に示すように、キャニスタ11は、上部開口13aを有する中空の容器であるキャニスタ本体13と、上部開口13aを塞ぐ蓋14とを備えており、蓋14を開けて上部開口13aを開放することにより、キャニスタ11内への粉末原料の供給が可能となる。また、キャニスタ本体13の前面における下方側には、粉末原料を放出するための原料放出口15aが形成された放出口部材15が設けられており、この放出口部材15にシュータ12が取り付けられている。シュータ12の内部には、原料放出口15aから放出された粉末原料を下方側に導く案内路12aが形成されており、案内路12aを介して原料放出口15aとミキシングユニット21の内部とが連通した状態となっている。
【0017】
キャニスタ11内の底部には、粉末原料を原料放出口15aに送るためのスクリュ16が設けられている。スクリュ16の前方側の端部は、放出口部材15によって回転可能に支持されており、スクリュ16の後方側の端部は、キャニスタ本体13の後部に回転可能に設けられた支持部材17に接続されている。また、支持部材17は、ベース部材10に固定された原料放出用モータ18の駆動軸18aにカップリング18bを介して連結されている。すなわち、原料放出用モータ18に駆動されてスクリュ16が回転すると、スクリュ16によって送られた粉末原料が原料放出口15aから放出され、シュータ12の案内路12aを通過して、ミキシングユニット21内に供給されるようになっている。
【0018】
ミキシングユニット21は、中空の容器であるミキシングケース23と、ミキシングケース23の内部に回転可能に設けられたインペラ24とを備えている。また、ミキシングケース23は、インペラ24が内部に配置されるミキシング部23aと、ミキシング部23aの前部側からシュータ12に向かって上方に延びて開口するガイド部23bとを有している。ガイド部23bは、原料放出口15aとミキシング部23aとを接続するための筒状の部位であって、原料放出口15aから放出されてシュータ12の案内路12aに導かれた粉末原料が、ガイド部23b内を落下してミキシング部23aに供給されるようになっている。
【0019】
尚、ミキシングケース23のミキシング部23aには、機械室8(図2参照)内から飲料生成室7内に延出する図示しない給水管と、ベース部材10に設けられた図示しない給水路とを介して、機械室8に貯留された水が供給されるようになっている。また、ミキシングケース23の後部には、飲料の生成時に余剰分となった水や、ミキシングケース23内に供給された湯から発生する湯気を排出するためのオーバーフロー排出口23cが形成されている。オーバーフロー排出口23cの下方側には、排出された水や湯気を受け取るための湯気抜きダクト25が設けられている。この湯気抜きダクト25の後部には、フィルタ25aが取り付けられた開口部25bが形成されており、開口部25bの後方には、電動式のファンモータ26が設けられている。ファンモータ26は、通電されると後方側に向かう空気の流れを形成し、それにより、ミキシングケース23内の空気をオーバーフロー排出口23c及び湯気抜きダクト25を介して吸入するものである。
【0020】
インペラ24は、ミキシングケース23内に供給された粉末原料と水とを混合するための部材であって、円筒状の軸部24aを有している。軸部24aの上方側の端部には、図示しない永久磁石が内部に設けられた円板状の連結部24bが一体として形成されている。また、連結部24bの上方側には、インペラ24を駆動するための攪拌用モータ27aと、攪拌用モータ27aに駆動されて回転するマグネットカップリング27bとが配置されている。マグネットカップリング27bは、連結部24b内の図示しない永久磁石を磁力によって引き付けるものであり、攪拌用モータ27aが作動すると、マグネットカップリング27b及びインペラ24が一体として回転するようになっている。
【0021】
一方、軸部24aの下方側の端部には、円板状の攪拌部24cが一体として形成されており、攪拌部24cの下面には、粉末原料と水とを混合するための攪拌翼24dが形成されている。攪拌部24cの下面には、下方側に開口する凹部24eが中心部に形成されており、この凹部24eの内部に、ミキシングケース23の底部から突出する凸部23dが挿入されている。すなわち、インペラ24は、その上方側の端部をマグネットカップリング27bに支持されるとともに、下方側の端部を凸部23dに支持されている。
【0022】
ここで、ミキシングケース23の構成について、さらに詳細に説明する。
図4に示すように、ミキシングケース23は、着脱可能に設けられたケース本体31とキャップ41とを備えており、これらの部材を組み合わせることによってミキシングケース23が構成されている。ケース本体31は、上部が開口した略円筒状のミキシング構成部32と、後方側に開口した略コ字状の第一ガイド構成部33とを有している。一方、キャップ41は、ミキシング構成部32の上部開口32aを塞ぐ蓋部42と、第一ガイド構成部33の後部開口33aを塞ぐ平板状の第二ガイド構成部43とを有しており、蓋部42及び第二ガイド構成部43がミキシング構成部32及び第一ガイド構成部33をそれぞれ塞ぐことにより、ミキシング部23a及びガイド部23b(図3参照)が構成される。
【0023】
尚、ケース本体31のミキシング構成部32は、上部開口32aが形成された第一円筒部32bと、第一円筒部32bより小さい径を有し、底部に飲料放出口21aが形成された第二円筒部32cとを、斜面形成部32dを介してつないだものとなっている。また、キャップ41の蓋部42には、インペラ24を挿入するための貫通穴42aが中心部に形成されており、貫通穴42aの側部には、ミキシングケース23内に水を供給するための給水口42bが形成されている。
【0024】
キャップ41の第二ガイド構成部43の上部における両端部には、前方側に屈折した上壁部43a、43bが形成されている。また、第二ガイド構成部43の前面には、上下方向に延びるとともに前方側に突出する平板状の隔離壁43cが形成されている。この隔離壁43cは、蓋部42の給水口42bとは反対側となる部位に形成されており、隔離壁43cの上端部と上壁部43aの内側の端部とが接続されている。さらに、第二ガイド構成部43の下端部からは、ケース本体31の内部に向かって延びる平板状の仕切り壁44が形成されている。
【0025】
ここで、図3に示すように、隔離壁43cは、ケース本体31にキャップ41を取り付けてミキシングケース23とした時に、ケース本体31の前部内壁面31aに当接するように形成されている。また、隔離壁43cの下端部は、ミキシング部23aの上部で終端している。すなわち、図5に示すように、ミキシングケース23のガイド部23bの内部は、隔離壁43cによって2つに区切られており、原料放出口15aからシュータ12(図3参照)を介して放出された粉末原料をミキシング部23aに案内するための空間である原料通路51と、この原料通路51から遮られるとともに下方側のミキシング部23aに向かって開口する閉鎖空間部52とが、隔離壁43cによって形成された状態となっている。また、給水口42bと閉鎖空間部52とは、ミキシング部23aの中央部を間に挟んで互いに反対側となる部位に形成されている。
【0026】
また、飲料の生成時にミキシングケース23内に供給される湯が、図5の一点鎖線で示される湯面Wの高さまで達する場合、仕切り壁44は、その下端部が湯面Wの直上に位置するように形成されている。すなわち、仕切り壁44は、ミキシングケース23の内部を湯の上面の直上で前方側、すなわち原料通路51があるガイド部23b側と、オーバーフロー排出口23c(図2参照)がある後方側とに区画している。尚、ケース本体31及びキャップ41は樹脂から形成されることが一般的である。つまり、キャップ41を上壁部43a、43b、隔離壁43c及び仕切り壁44を有するように構成したとしても、例えば射出成型等によって低コストで容易に製造することが可能となっている。
【0027】
図3に戻って、原料放出用モータ18は、3つのキャニスタ11(図2参照)のそれぞれに対して1つずつ設けられている。同様に、攪拌用モータ27aも、3つのミキシングユニット21のそれぞれに対して1つずつ設けられている。また、原料放出用モータ18ファンモータ26及び攪拌用モータ27aは、筐体2の前面扉2a(図1参照)に設けられた図示しない制御部に電気的に接続されている。制御部は、飲料ディスペンサ1の利用者による操作部3の操作に応じて原料放出用モータ18、ファンモータ26及び攪拌用モータ27aの動作を制御するとともに、機械室8(図2参照)からミキシングユニット21内への水の供給を制御する。
【0028】
次に、この発明の実施の形態に係る飲料ディスペンサ1の動作について、図1〜5に基づいて説明する。尚、上述したように、飲料ディスペンサ1は3組のキャニスタ11(図2参照)を備えており、異なる3種類の飲料を注出可能となっているが、飲料の生成及び注出を行う際の動作は飲料の種類に関わらず共通である。
【0029】
まず、図1に示される前面扉2aに設けられた操作部3が飲料ディスペンサ1の利用者によって操作され、利用者が注出しようとする飲料の種類が選択される。飲料の種類が選択されると、図示しない制御部は、図3に示される原料放出用モータ18の作動を開始させる。原料放出用モータ18の作動が開始されると、その駆動力がカップリング18b及び支持部材17を介して伝達されることにより、スクリュ16の回転が開始される。キャニスタ11内の粉末原料は、回転するスクリュ16によって原料放出口15aに順次送られ、それにより、粉末原料が原料放出口15aから放出される。
【0030】
原料放出口15aから放出された粉末原料は、シュータ12の案内路12aに案内され、ミキシングケース23の原料通路51(図5参照)を通ってミキシング部23aに供給される。同時に、ミキシング部23aの内部には、機械室8(図2参照)内に貯留されている水が図示しない給水管を介して供給される。さらに、図示しない制御部が攪拌用モータ27aの作動を開始させることにより、マグネットカップリング27b及びインペラ24が一体として回転する。ミキシング部23a内に供給された粉末原料と水とは、回転するインペラ24の攪拌翼24dによって混合され、それにより、ミキシングユニット21内で飲料が生成される。
【0031】
ここで、インペラ24が回転している間、ミキシングユニット21内の飲料は、攪拌翼24dによって径方向外側に押し出されるため、生成途中の飲料がミキシングユニット21の飲料放出口21aから漏れることはない。攪拌用モータ27aの作動が開始されてから予め設定された所定時間が経過すると、図示しない制御部は攪拌用モータ27aの作動を停止させ、それにより、インペラ24の回転も停止される。インペラ24の回転が停止すると、生成された飲料が飲料放出口21aからドリンクガイド22(図2参照)に放出される。ドリンクガイド22は、その注出口22aからカップステージ5に載置された図示しない容器に注出される。
【0032】
以上のように動作する飲料ディスペンサ1において、利用者が温かい飲料を選択した場合、機械室8の貯湯タンク9(図2参照)からミキシングケース23の内部に湯が供給されるため、供給された湯から湯気が発生する。この湯気がミキシングケース23のガイド部23bにおける原料通路51(図5参照)内を上昇してシュータ12の案内路12aを通過すると、原料放出口15aの近傍にある粉末原料が湯気の水分を吸収して固着してしまい、原料放出口15aからの粉末原料の放出に支障をきたすこととなる。
【0033】
したがって、飲料ディスペンサ1では、ミキシングケース23内への湯の供給に伴ってファンモータ26を作動させることにより、発生した湯気を吸引して外部に排出している。ここで、ミキシングケース23の内部は、キャップ41の仕切り壁44によって、ガイド部23b側である前方側と、オーバーフロー排出口23c側である後方側とに区画されている。すなわち、仕切り壁44の後方側で発生した湯気は、仕切り壁44に遮断されることによってガイド部23b側に拡散しにくい状態となっている。したがって、ガイド部23b内を上昇する湯気の量が低減され、原料放出口15a近傍の湿度が高くなりにくい状態となっているため、原料放出口15a近傍における粉末原料の固着が低減される。
【0034】
また、ファンモータ26を作動させることにより、ミキシングケース23の内部には後方側に向かう空気の流れが生じるため、ミキシング部23aに落下する粉末原料の一部は、この空気の流れに乗って浮遊してミキシングケース23の内部壁面に付着する。しかしながら、上述したように、仕切り壁44の前方側には湯気が拡散しにくい状態となっているため、ミキシングケース23の内部壁面において仕切り壁44の前方側に位置する部位への粉末原料の付着は低減される。一方、ミキシングケース23の内部壁面において仕切り壁44の後方側に位置する部位では、ファンモータ26によって吸引されるまでの間、一時的に湯気が滞留する。
【0035】
したがって、仕切り壁44の後方側で浮遊する粉末原料は湯気の水分を吸収して重くなり、下方側のミキシング部23aに落下して飲料となるため、内部壁面への付着も低減される。また、ミキシングケース23のオーバーフロー排出口23cを通過してフィルタ25aに到達する粉末原料の量も低減され、フィルタ25aが詰まりにくくなるため、清掃等のメンテナンスを行う頻度を低減することも可能である。
【0036】
上述したように、ファンモータ26による湯気の吸引、及び仕切り壁44によるミキシングケース23内の区画により、原料放出口15a近傍での粉末原料の固着やミキシングケース23の内部壁面への粉末原料の付着は低減される。しかしながら、例えばファンモータ26の吸引能力が経年劣化等によって低下した場合や、短時間内における飲料の注出頻度が多くなった場合等、ファンモータ26による湯気の吸引が追いつかなくなる場合がある。
【0037】
ここで、図5に示すように、ミキシングケース23のガイド部23bは、隔離壁43cにより、粉末原料をミキシング部23aに案内するための原料通路51と、原料通路51から遮られるとともにミキシング部23aに向かって開口する閉鎖空間部52とに隔てられている。すなわち、ミキシング部23a内の湯から発生した湯気の少なくとも一部は閉鎖空間部52内に集められるため、原料通路51内を上昇して原料放出口15a(図3参照)に到達する湯気の量を、ファンモータ26に依存することなく低減することが可能となっている。
【0038】
つまり、飲料ディスペンサ1におけるミキシングユニット21は、ファンモータ26(図3参照)によって湯気を吸引する他に、閉鎖空間部52によって湯気を集める構成となっている。そのため、上述したようにファンモータ26による湯気の吸引が追いつかなくなった場合においても、原料放出口15aに向かって上昇する湯気の量を低減することが可能となっている。
【0039】
また、隔離壁43cは、ミキシング部23a内に湯を供給するための給水口42bとは反対側に形成されているため、給水口42bが図5における右側に配置されているのに対し、閉鎖空間部52が左側に配置された状態となっている。給水口42bからミキシング部23a内に供給される湯は、まず矢印A1で示されるように下方側に落下して斜面形成部32dの内部壁面に当たり、次いで、矢印A2で示されるようにミキシング部23aの中央部に向かって流れる。また、矢印A2で示される方向に流れる湯は、その慣性力により、矢印A3で示されるように反対側、すなわち閉鎖空間部52側の斜面形成部32d内を駆け上がるように流れ、最終的には矢印A4で示されるように第二円筒部32c内に流入する。
【0040】
以上に述べたように、給水口42bからミキシング部23a内に供給される湯には、矢印A2及び矢印A3で示される流れ、すなわち図5における右側から左側に向かう流れが生じる。そのため、このように流れる湯から発生する湯気にも同様に、右側から左側に向かう流れが生じる。さらに、湯から発生した湯気にはミキシングケース23内を上昇する流れも生じる。したがって、ミキシングケース23内における全体的な湯気の流れは、矢印B1〜B4で示すように、図5の右下側から左上側、すなわち閉鎖空間部52側に向かう流れとなる。つまり、本発明におけるミキシングユニット21は、ミキシングケース23内に供給される湯の流れ自体を利用して、より多くの量の湯気を閉鎖空間部52内に集められるようになっており、原料放出口15aに到達する湯気の量を、さらに低減することが可能となっている。
【0041】
尚、閉鎖空間部52内に集められた湯気は、より大きな水滴となって閉鎖空間部52の内部壁面に付着するが、閉鎖空間部52は原料通路51から遮られているため、水滴と共に付着する粉末原料の量も低減される。さらに、閉鎖空間部52の内部壁面に付着した水滴はミキシング部23aに向かって流れ落ちるが、その際、ミキシングケース23の内部壁面に付着している粉末原料が洗い流されるため、ミキシングケース23内を衛生的に保つことも可能となっている。
【0042】
以上に述べたように、原料通路51から遮られるとともにミキシング部23aに向かって開口する閉鎖空間部52をミキシングケース23のガイド部23bに設けたので、ミキシング部23aに供給された湯から発生する湯気の少なくとも一部が閉鎖空間部52内に集められるようになり、そのため、原料放出口15aに向かって上昇する湯気の量が低減される。したがって、本発明による飲料ディスペンサ1によれば、原料放出口15aやミキシングケース23の内部壁面への粉末原料の付着や固着を低減することが可能となる。
【0043】
また、給水口42bと閉鎖空間部52とを、ミキシング部23aの中央部を間に挟んで互いに反対側となる部位に形成したので、給水口42bからミキシング部23a内に供給される湯の流れ自体を利用して、発生した湯気を閉鎖空間部52内に集めることができる。したがって、原料放出口15aに向かって原料通路51内を上昇する湯気の量がさらに低減され、粉末原料の付着や固着をさらに低減することが可能となる。
【0044】
さらに、樹脂から形成されることが一般的であるミキシングケース23を、ガイド部23bの一部を形成するケース本体31と、ガイド部23bの残りの一部を形成するキャップ41とから構成し、キャップ41に一体として設けられた隔離壁43cで区画することによって原料通路51と閉鎖空間部52とを形成したので、容易に且つ低コストで原料放出口近傍に湯気が上昇しにくい構成とすることができる
【0045】
本発明の実施の形態に係る飲料ディスペンサ1は、キャニスタ11及びミキシングユニット21を3つずつ備えたものとして説明されたが、これらの部材の数を限定するものではなく、例えば注出する飲料の種類等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 飲料ディスペンサ、11 キャニスタ、15a 原料放出口、21 ミキシングユニット、23 ミキシングケース、23a ミキシング部、23b ガイド部、31 ケース本体、41 キャップ、42b 給水口、43c 隔離壁、51 原料通路、52 閉鎖空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容された粉末原料を原料放出口から放出するキャニスタと、
前記原料放出口から放出された前記粉末原料を湯と混合して飲料を生成するミキシングユニットと
を備えた飲料ディスペンサにおいて、
前記ミキシングユニットは、前記粉末原料と前記湯とを混合するためのミキシング部と、前記ミキシング部を前記原料放出口に接続するガイド部とを有しており、
前記ガイド部には、
前記原料放出口から放出された前記粉末原料を前記ミキシング部に案内する原料通路と、
前記原料通路から遮られるとともに前記ミキシング部に向かって開口する閉鎖空間部と
が形成されることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記ミキシングユニットは、前記ミキシング部に湯を供給するための給水口を有しており、
前記給水口と前記閉鎖空間部とは、前記ミキシング部の中央部を間に挟んで互いに反対側となる部位にそれぞれ形成される請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記ミキシングユニットは、前記ガイド部の一部を形成するケース本体と、前記ガイド部の残りの一部を形成するキャップとを有するミキシングケースを備えており、
前記キャップに一体として設けられた隔離壁が前記ガイド部を区画することにより、前記原料通路と前記閉鎖空間部とが形成される請求項1に記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−94483(P2013−94483A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241186(P2011−241186)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】