説明

飲料水供給装置

【課題】 取水操作の終了により取水弁が閉切換された後、次回の取水操作により取水弁が開切換されるまでの間に、取水弁から下流側の取水口までの通路内に飲料水が残留することを防止し得るようにした飲料水供給装置を提供する。
【解決手段】 冷水取水弁27の弁室272に連通する取水出口管28を取水口281まで延ばす。取水出口管28として、傾斜通路部286と出口通路部287とを交差させて、角縁283を境にして屈曲する屈曲部282を備えたものとする。角縁283を挟んで上流側の傾斜通路部286の通路内壁面284を昇り勾配にし、下流側の出口通路部287の通路内壁面288を鉛直に垂下させる。通路内壁面284を流下した水流は角縁283を超える際に通路内壁面288から剥離して、背後に空気を含んだ渦流が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク等から延ばした取水管に取水弁を介装し、タンク等内に貯留した飲料水が取水弁の開閉により供給されるようにした飲料水供給装置に関し、特に非供給期間における取水弁から取水口までの間の衛生状態を良好に維持させ得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば浄水器の分野では、浄水の出口パイプが浄水器ハウジングの頂面から水平に延びた後に垂下するように配設された浄水器において、その出口パイプの浄水出口部における水流に対し空気導入部から空気を導入して泡沫を発生させて水中に混合させることで、浄水出口部から流出する水流を柔らかくして水が飛散することを防止するようにすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−29116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばウォータサーバ又はディスペンサと称される飲料水供給装置では、ユーザのスイッチ操作により取水弁が開切換されると、開状態の取水弁を通して飲料水が供給され、下流端で開口する取水口から外部に流出してコップに注がれるようになっている。そして、このような構造の飲料水供給装置においては、取水弁が閉止されると、取水弁から取水口までの通路には未流出の飲料水が滞留状態で残ることになる。例えば図7に示すように、取水弁101が開切換(同図の一点鎖線参照)されると、上流側の取水管102と下流側の出口管103とが連通状態になるため、取水管102から飲料水が弁室104及び出口管103を通して取水口105から流出してコップPに注がれることになる。一方、取水弁101が閉切換されると(同図の実線参照)、それまで流れていた連続流が遮断され、弁室104及び出口管103の内部に飲料水が残留することになる。
【0005】
しかしながら、取水口105が外部空間に臨んで開口しているため、出口管103等の通路内に残留した飲料水が取水口105において外部空間の空気と接触したままとなって、衛生上好ましくない状態になる。特に、ユーザによる取水操作がさほど頻繁ではなくて比較的長期にわたって取水操作が行われないと、その間、残留した飲料水が取水口105において空気と接触した状態に維持されるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取水操作が終了して取水弁が閉切換された後、次回の取水操作による取水弁の開切換までの間に、取水弁から下流側の取水口までの通路内に飲料水が残留することを防止し得るようにした飲料水供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、飲料水が取水される取水通路に開閉弁が介装され、この開閉弁が開切換されることで上流側からの飲料水が取水口まで流れて、取水口から取水可能とされた飲料水供給装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記開閉弁から取水口までの間の取水出口通路として屈曲部を備えたものとする。上記屈曲部としては角縁を境にして屈曲されたものとし、上記角縁を挟んで上流側の通路内壁面が上記開閉弁に向けて昇り勾配を有し、かつ、上記角縁を挟んで下流側の通路内壁面が下向きに延びるように形成することとした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、開閉弁が開切換されて、上流側の取水通路からの飲料水が取水出口通路に流入して屈曲部に流れると、その水流が角縁を越して下流側に流下する際に角縁の直下位置の下流側の通路内壁面から剥離して一種の乱流状態を生じさせ、これにより、背後に空気を含んだ渦流を生じさせて空気溜まりが生じることになる。そして、開閉弁が閉切換されると、飲料水の流れが停止される一方、それまでに角縁直下で生じていた渦流の空気が気泡となって上流側の上り勾配の通路内壁面に沿って閉状態の開閉弁の側に上っていき、その空気の移動に伴い取水口から取水出口通路内に空気が引き込まれることになる。これにより、取水出口通路内の水が空気との置換により押し出され、取水口から落下して排出されることになって、取水出口通路内は空の状態にされることになる。以上より、次回の取水操作による開閉弁の開切換までの間に、取水出口通路内に飲料水が残留することが防止され、残留した場合に生じるおそれのある雑菌の混入や繁殖という事態が生じることを確実に回避して、優良な衛生状態に維持し得ることになる。
【0009】
本発明において、上記開閉弁から取水出口通路を流下する水流が上記角縁を超える際に下流側の通路内壁面から剥離するように、上記角縁を挟んで上流側と下流側との両通路内壁面を交差させることができる(請求項2)。この場合、角縁の直下位置に空気を含んだ渦流を生じさせて空気溜まりを生じさせるための角縁の構成がより具体化され、請求項1による作用がより明確に得られるようになる。
【0010】
又、上記取水出口通路として、コップ置き場の手前側に向けて斜め下方に延びる傾斜通路部と、取水口まで略鉛直に延びる出口通路部とを備えるようにし、上記傾斜通路部の下流端と上記出口通路部の上流端とが互いに交差した状態で接続されることにより上記角縁が形成されるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、角縁を備えた取水出口通路の構成がより具体化され、請求項1による作用がより明確に得られるようになる。しかも、傾斜通路部によって出口通路部の取水口の位置をコップ置き場のより前方位置に配置することが併せて可能となり、取水口の状況に対するユーザの視認性を向上させ得ることになる。これにより、取水口から水が出たり停止したりする状況を見ながら、取水操作を容易にかつ確実に行わせることが可能になる。
【0011】
さらに、上記角縁の下流側近傍位置の通路内壁面に、空気吸い込み用の孔を貫通形成することができる(請求項4)。このようにすることにより、角縁の直下位置で空気を含んだ渦流が形成されると、上記孔から空気が吸い込まれて空気溜まりが形成され易くなる上に、開閉弁が閉切換されて水の流れが停止すると、孔から流入した空気が上流側の上り勾配の通路内壁面に沿って上動することになる。これにより、孔が存在しない場合よりも迅速かつ確実に取水出口通路内の水を空気と置換させて押し出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明の飲料水供給装置によれば、取水時に取水出口通路に流入した飲料水が屈曲部に流れると、その水流が角縁を越して下流側に流下する際に角縁の直下位置の下流側の通路内壁面から剥離して一種の乱流状態を生じさせ、これにより、背後に空気を含んだ渦流を生じさせて空気溜まりを生じさせることができる。このため、取水が終了して飲料水の流れが停止されると、それまでに角縁直下で生じていた渦流の空気が気泡となって上流側の上り勾配の通路内壁面に沿って上動し、この空気の移動に伴い取水口から取水出口通路内に空気が引き込まれることにより、取水出口通路内の水を空気との置換により押し出すことができ、取水出口通路内を空の状態にすることができる。これにより、次回の取水操作による開閉弁の開切換までの間に、取水出口通路内に水が残留することを防止することができる。このため、水が残留した場合に生じるおそれのある雑菌の混入や繁殖という事態が生じることを確実に回避して、優良な衛生状態に維持させることができるようになる。
【0013】
特に、請求項2によれば、取水出口通路を流下する水流が角縁を超える際に下流側の通路内壁面から剥離するように、角縁を挟んで上流側と下流側との両通路内壁面を交差させるようにすることで、角縁の直下位置に空気を含んだ渦流を生じさせて空気溜まりを生じさせるための角縁の構成をより具体化して、本発明による上述の効果をより明確に得ることができるようになる。
【0014】
又、請求項3によれば、取水出口通路としてコップ置き場の手前側に向けて斜め下方に延びる傾斜通路部と出口通路部とを備えるようにし、傾斜通路部の下流端と出口通路部の上流端とを互いに交差した状態で接続することにより角縁の形成を行うようにすることで、角縁を備えた取水出口通路の構成をより具体化して、本発明による上述の効果をより明確に得ることができるようになる。しかも、傾斜通路部によって出口通路部の取水口の位置をコップ置き場のより前方位置に配置することができ、取水口の状況に対するユーザの視認性を向上させることができるようになる。これにより、取水口から水が出たり停止したりする状況を見ながら、取水操作を容易にかつ確実に行わせることができるようになる。
【0015】
さらに、請求項4によれば、角縁の下流側近傍位置の通路内壁面に空気吸い込み用の孔を貫通形成することで、孔が存在しない場合よりも迅速かつ確実に取水出口通路内の水を空気と置換させて押し出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す模式図である。
【図2】実施形態の外観構成例を示す斜視図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】第1実施形態に係る取水口近傍を示す図4の部分拡大図であり、図5(a)は取水弁が開切換されて取水されている状態を、図5(b)は取水弁が閉切換された直後の状態を、それぞれ示す。
【図6】第2実施形態に係る取水口近傍を示す図4の部分拡大図であり、図6(a)は取水弁が開切換されて取水されている状態を、図6(b)は取水弁が閉切換された直後の状態を、それぞれ示す。
【図7】本発明の課題を示すための飲料水供給装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態として本発明の飲料水供給装置を例えばウォータサーバに適用した場合について説明する。
【0018】
<以下の実施形態に共通する全体構成>
図1は実施形態に係る飲料水供給装置の全体構成を、図2はこの飲料水供給装置の外観構成例を示す。両図において、符号1は外装となるハウジング、2(図1にのみ表れる)は貯留タンクとしての冷水タンク、3は上記冷水タンク2の上側に着脱可能に装着されて冷水タンク2への飲料供給源となる飲料供給ボトルとしてのウォータボトル、4(図1にのみ表れる)は冷水タンク2内の水を冷却する冷凍回路、5(図1にのみ表れる)は冷水タンク2を介して水の供給を受ける温水タンク、6(図1にのみ表れる)は温水タンク5内の水を加熱するヒータ、7(図1にのみ表れる)は殺菌灯としての紫外線灯29a,29bを点灯・消灯させる点灯制御や取水制御等の飲料水供給装置の作動制御を行うコントローラである。本実施形態では、飲料水として水を対象としたものを説明するが、この飲料水供給装置に適用される「飲料水」としては、ミネラルウォータ等の水の他に、お茶やジュース等の飲用に利用される液体全般を含むものである。
【0019】
ハウジング1の上面中央部位にはウォータボトル3を装着させるための連結凹部11が形成されている。この連結凹部11は、ウォータボトル3の首部31を天地逆転した状態で内嵌させ得る内面形状を有すると共に、その中心軸に沿って上向きに突出する連通筒部12(図1参照)を備えている。この連結凹部11に対し、ウォータボトル3の天地を逆にした状態で首部31を上から下に内嵌させることにより、連通筒部12がウォータボトル3の首部31内に上向きに挿入されてウォータボトル3内と冷水タンク2内とを互いに連通した状態にして、ウォータボトル3と冷水タンク2とが互いに連結されるようになっている。又、ハウジング1の前面の中段位置には冷水及び温水の2種類の飲料水を受けるコップ置き場13が形成され、このコップ置き場13の上側位置に上記冷水及び温水の各取水口281,521が配置されている。又、このコップ置き場13の上側位置の前面には、ユーザが各種の入力操作を行うための操作パネル14が配設されている。この操作パネル14には温水取り出しのための温水用取水スイッチ15と、冷水取り出しのための冷水用取水スイッチ16とが配設されている。
【0020】
冷水タンク2は上方に開放された容器であり、その上端開口に対し遮光板を兼ねる蓋21がパッキン等を介して嵌め込まれて、密閉されている。蓋21の略中央部位は上記連結凹部11に対し下側から外嵌し得る凹部22とされ、この凹部22の中心位置には上記の連通筒部12が挿通される貫通孔221が形成されている。さらに、冷水タンク2内の所定レベル位置には水平方向に拡がるバッフルプレート23が配設され、このバッフルプレート23の中央位置に対し上流端が開口するように接続管24が接続されている。この接続管24の下流端が温水タンク5の底部に連通されている。つまり、接続管24は温水タンク5から温水取り出しのための温水に変えるための水を冷水タンク2から供給(取り出す)ための取水管としての役割を果たすものである。又、冷水タンク2の底部に対し凹状に形成された溜まり部25から冷水取水管26がハウジング1のコップ置き場13の上方位置まで延ばされ、その冷水取水管26の下流端側に設置された冷水取水弁27が開作動されることにより冷水用の取水口281から冷水タンク2内の冷水が吐出されるようになっている。この冷水取水弁27は電磁式開閉制御弁により構成されており、通常は閉状態に維持されて、ユーザが冷水用取水スイッチ16をON操作(押圧操作)すると、その操作信号の出力を受けてコントローラ7により開切換制御されて冷水を取水口281から吐出させ、冷水用取水スイッチ16がOFF(押圧解除)されると閉切換制御されて元の閉状態に戻るようになっている。
【0021】
一方、冷水タンク2内には殺菌灯として複数(図例では2つ)の紫外線灯29a,29bが設置され、これら紫外線灯29a,29bの点灯による紫外線照射によって内部に貯留されている飲料水が殺菌処理されるようになっている。一方の紫外線灯29aの下端部は上記溜まり部25内まで延ばされて冷水取水管26の内方まで照らし得るようにされている。より詳細に説明すると、図3に示すように、取水経路である冷水取水管26は溜まり部25から冷水取水弁27まで一直線状に延ばされている。冷水取水管26の上流端261は溜まり部25に対し側方から開口して連通し、下流端262は冷水取水弁27の弁体271に相対向して弁体271が着座する弁座を構成している。そして、溜まり部25には紫外線灯29aの下端部が上から下に挿入されて、紫外線灯29aから照射される紫外線が冷水取水管26の内部空間を一直線に延びて冷水取水弁27の弁体271に突き当たることになるように、紫外線灯29aと、冷水取水管26及び冷水取水弁27との位置関係が設定されている。つまり、紫外線灯29aを点灯すれば、紫外線灯29aからの紫外線により、冷水タンク2の内部空間に貯留された冷水のみならず、冷水取水管26内の上流端261から冷水取水弁27の弁体271位置の下流端262までの全範囲の内部空間に亘って照射されて冷水取水管26の内部空間に存する冷水も殺菌されるようになっている。なお、同図中の符号291は紫外線ランプの保護シースであり、符号292は紫外線ランプの端部であり、この端部292は冷水取水管26よりも下位置になるように溜まり部25内に挿入されて固定されている。
【0022】
ウォータボトル3は「ガロンボトル」とも言われ、内部に飲料である水が充填・収容された状態で提供されるものである。そして、このウォータボトル3がウォータサーバに対し上記の如く装着され、装着されたウォータボトル3内の水が消費されて空になるたびに、新しいウォータボトル3に交換されるようになっている。
【0023】
冷凍回路4は、内部に冷媒を封入した循環経路41上に蒸発器を構成する冷却管42を備えている。そして、この冷却管42を上記冷水タンク2の周囲に巻き付け、コンプレッサ43により圧縮した冷媒を放熱器44で放熱させて液化させ、これを膨張させて冷却管42に供給することにより冷水タンク2内の水から熱を奪って冷却するようになっている。この冷凍回路4は冷水タンク2内の冷水温度の検出値に基づきコントローラ7による保冷運転制御により作動されるようになっており、この保冷運転制御は電源が投入されてウォータサーバが使用される際に開始され、冷凍回路4を作動させて冷水タンク2内の飲料水を所定温度まで冷却した後、その飲料水が所定の冷水温度範囲(例えば5℃〜10℃)に維持されるように保冷運転を行うようになっている。
【0024】
温水タンク5は冷水タンク2よりも下位に配置された密閉容器であり、内部にヒータ6が配設されている。この温水タンク5には、上記接続管24を通して冷水タンク2内から水頭差に基づき水が注水され、かつ、取水により減った分だけ補給されるようになっている。又、温水タンク5の頂部から温水取水管51がハウジング1のコップ置き場の上方位置まで延ばされ、その温水取水管51の下流端側に介装された温水取水弁52が開作動されることによりその温水取水口521から温水タンク5内の温水が吐出されるようになっている。この温水取水弁52も冷水取水弁27と同様に電磁式開閉制御弁により構成されており、通常は閉状態に維持されて、ユーザが取水スイッチ15をON操作(押圧操作)すると、その操作信号の出力を受けてコントローラ7により開切換制御されて温水を取水口521から吐出させ、取水スイッチ15がOFF(押圧解除)されると元の閉状態に切換えるようになっている。なお、図1中の符号241は水抜き用配管、53は過熱防止装置である。
【0025】
ヒータ6はコントローラ7による保温運転制御により作動されるようになっており、この保温運転制御は電源が投入されてウォータサーバが使用される際に開始され、ヒータ6を作動させて温水タンク5内の飲料水を所定温度まで加熱した後、その飲料水が所定の温水温度範囲(例えば80℃〜90℃)に維持されるように保温運転を行うようになっている。従って、温水タンク5内の温水については加熱殺菌が施されることになる。
【0026】
コントローラ7は、ヒータ6等の電気駆動式の要素に対する電源供給と、冷凍回路4による保冷運転制御及びヒータ6による保温運転制御と、冷水スイッチ16又は温水スイッチ15からの出力に基づく冷水又は温水の供給運転に係る制御と、殺菌灯である紫外線灯29a、29bを所定の点灯周期に基づいて点灯(ON)・消灯(OFF)させる殺菌運転制御とを行うようになっている。
【0027】
<第1実施形態>
以上の全体構成を備えた飲料水供給装置において、図4に示すように、開閉弁としての冷水取水弁27から取水口281までの通路を構成する取水出口管28として、取水口281の近傍位置に屈曲部282が形成されたものとしている。この屈曲部282は、角縁283を有して屈曲するように、すなわち、滑らかに湾曲するものではなくて、飲料水が流れることになる内面の傾斜又は勾配が角縁283を境にして急変するように、形成されている。加えて、角縁283を挟んで上流側の通路内壁面284が取水弁27に向けて上り勾配になるように形成されている。上記の取水出口管28が管路によって形成された取水出口通路を構成する。
【0028】
より詳細に説明すると、図4に示すように、取水出口管28は、冷水取水弁27の弁体271を収容し弁体271が開切換されると冷水(飲料水)が冷水取水管26から流入することになる弁室272と連通して、冷水取出口281まで延びるものである。図例の取水出口管28は、弁室272に連通してほぼ鉛直に僅かに垂下する垂下通路部285と、通路内壁面284が少なくとも上り勾配になるように斜め下向きにかつハウジング1のコップ置き場13の前面側から見て手前に向けて延びる傾斜通路部286と、取水口281までほぼ鉛直に垂下する出口通路部287とから構成されている。そして、傾斜通路部286と、出口通路部287とが互いに交差して屈曲部282を構成し、傾斜通路部286の通路内壁面284と、出口通路部287の通路内壁面288とが所定の交差角度αで交差することで、その境界線による角(エッジ)により角縁283が構成されることになる。上記の交差角度αは0度<α<90度の範囲を最低限の要件として、好ましくは、最大でも60度よりも小さい角度範囲、中でも45度〜60度の角度範囲の値にαを設定すればよい。この際、交差角度を形成する片方の出口通路部287を鉛直に配置することで、コップPに対し冷水を鉛直に注ぎ込むことができ、これにより、飛び散りを可及的に抑えることができる。以上のような取水出口管28は合成樹脂成形により形成すればよく、あるいは、金属パイプを用いて溶接等の手段により一体に形成するようにしてもよい。
【0029】
冷水取水弁27が開切換されて、冷水取水管26からの冷水が取水出口管28に流入して上記の如き屈曲部282に流れると、図5(a)に示すように、傾斜通路部286の特に通路内壁面284に沿って角縁283位置まで流れ下る水流が、角縁283を越して出口通路部287に流入する際に最も内側寄りの角縁283直下位置の通路内壁面288から剥離して背後に一種の乱流状態を生じさせた後、取水口281からコップ(図3又は図4参照)に向けて落下して冷水が注がれることになる。そして、上記の角縁283を越した水流が通路内壁面288から離れることにより、角縁283の直下の通路内壁面288と、通路内壁面288から離れた水流との間に空気を含んだ渦流が生じ、これにより空気溜まりが生じることになる。
【0030】
そして、冷水取水弁27(図4参照)が閉切換されて弁体271により冷水取水管26の下流端262が閉止されると、冷水取水管26からの冷水の供給が停止される一方、図5(b)に示すように、それまでの冷水供給の際に角縁283直下で生じていた渦流の空気が気泡K1となって傾斜通路部286内を弁室271(図4参照)の側に上っていくと共に、その空気の移動に伴い取水口281から出口通路部287内に空気が引き込まれ、それが空気塊K2となって通路内壁面288,284に沿って弁室272の側に上動することになる。このような気泡K1や空気塊K2の上動との引換えにより、弁室272、垂下通路部285,傾斜通路部286及び出口通路部287内の水が押し出されて取水口281から落下し、コップP内に注ぎ込まれることになる。そして、ついには弁室272、垂下通路部285,傾斜通路部286及び出口通路部287内にあった全ての水が空気と置換されて外部に排出されることになる。
【0031】
このように冷水取水弁27の弁室272及び取水出口管28が空の状態で次回の冷水(飲料水)の取水まで維持され、次回の取水操作に基づく冷水取水弁27の開切換により、冷水取水管26からの冷水が、それまで空の状態であった弁室272及び取水出口管28に流れることになる。
【0032】
以上により、今回の取水操作から次回の取水操作までの間、取水出口管28内に冷水が残留して取水口281において外部空間の空気と接触したままの場合と比べ、上記第1実施形態の場合には、冷水取水管26の下流端262よりも下流側であって取水口281までの通路内、つまり弁室272を含めた取水出口管28の全てを空の状態のままに維持することができ、雑菌混入のおそれや、その雑菌の繁殖のおそれを全て回避することができ、これにより、優良な衛生状態に維持することができる。そして、次回の取水操作により冷水取水弁冷水弁27が開切換されると、冷水取水管26内から紫外線灯29aによる紫外線照射により殺菌された状態の冷水が取水出口管28に流入し、この殺菌された冷水が冷水取水口281からコップPに注がれることになる。
【0033】
又、取水出口管28において、傾斜通路部286がハウジング1のコップ置き場13の前面側から見て手前に向けて斜め下向きに延びて出口通路部287に接続されるようになっているため、取水口105(図7参照)が冷水取水弁27の真下位置に配置されている場合と比べ、出口通路部287及び取水口281がコップ置き場13を構成する空間のより前方位置に位置付けることができるようになる。このため、取水操作のために冷水用取水スイッチ16を操作するユーザから出口通路部287及び取水口281が明確に見えるようになり、取水口281からコップPに対し冷水が注がれる状況を見ながら上記の取水操作を行うことができるようになる。つまり、ユーザは屈まなくても立った姿勢のままで取水口281等を視認することができ、楽な姿勢で取水操作を行うことができるようになる。
【0034】
<第2実施形態>
図6は第2実施形態に係る飲料水供給装置における取水出口管28aを示す。この第2実施形態は取水出口管28aに対し空気引き込み用の孔289を形成した点でのみ、第1実施形態と異なり、その他の点は全て第1実施形態と同じであって第1実施形態と同じ構成及び作用効果を備えている。従って、以下の説明においては、異なる点について主として説明し、同じ構成については同じ符号を付して重複した詳細説明は省略する。
【0035】
第2実施形態の取水出口管28aは、屈曲部282の最も内側寄り位置の角縁283の下流側近傍位置の通路内壁面288に、空気引き込み用の1又は2以上の孔289を貫通形成したものである。この孔289の孔サイズは、水は殆ど透過させないものの空気は通過し得る程度の微小サイズに設定されている。
【0036】
この第2実施形態の場合、冷水取水弁27(図4参照)が開切換されて、冷水取水管26からの冷水が取水出口管28aに流入して屈曲部282に至ると、図6(a)に示すように、第1実施形態と同様に、傾斜通路部286内を通路内壁面284上に沿って角縁283位置まで流れ下る水流が、角縁283を越して出口通路部287に流入する際に最も内側寄りの角縁283直下位置の通路内壁面288から剥離して背後に一種の乱流状態を生じさせた後、取水口281からコップ(図4参照)に向けて落下して冷水が注がれることになる。この際、上記の角縁283を越した水流が通路内壁面288から離れることにより、角縁283の直下位置であって孔289が形成されている位置の通路内壁面288と、通路内壁面288から離れた水流との間に空気を含んだ渦流が生じ、この渦流により孔289から空気が吸い込まれることになる。
【0037】
そして、冷水取水弁27(図4参照)が閉切換されて弁体271により冷水取水管26の下流端262が閉止されると、冷水取水管26からの冷水の供給が停止される一方、図6(b)に示すように、それまでの冷水供給の際に角縁283直下位置に生じていた渦流の空気が気泡K1となって傾斜通路部286の通路内壁面284に沿って弁室271(図4参照)の側に上っていくと共に、その空気の移動に伴い主として孔289から出口通路部287内に空気が引き込まれ、それが空気塊K2となって弁室272の側に上動することになる。このような気泡K1や空気塊K2の上動との引換えにより、弁室272、垂下通路部285,傾斜通路部286及び出口通路部287内の水が押し出されて取水口281から落下し、コップP内に注ぎ込まれることになる。そして、ついには弁室272、垂下通路部285,傾斜通路部286及び出口通路部287内にあった全ての水が空気と置換されて外部に排出されることになる。
【0038】
このように第2実施形態の場合にも、第1実施形態と同様に、冷水取水弁27の弁室272及び取水出口管28aが空の状態で次回の冷水(飲料水)の取水まで維持され、次回の取水操作に基づく冷水取水弁27の開切換により、冷水取水管26からの冷水が、それまで空の状態であった弁室272及び取水出口管28に流れることになる。
【0039】
以上により、今回の取水操作から次回の取水操作までの間、取水出口管28内に冷水が残留して取水口281において外部空間の空気と接触したままの場合と比べ、第2実施形態の場合にも、冷水取水管26の下流端262よりも下流側であって取水口281までの通路内、つまり弁室272を含めた取水出口管28aの全てを空の状態のままに維持することができ、雑菌混入のおそれや、その雑菌の繁殖のおそれを全て回避することができ、これにより、優良な衛生状態に維持することができる。そして、次回の取水操作により冷水取水弁冷水弁27が開切換されると、冷水取水管26内から紫外線灯29aによる紫外線照射により殺菌された状態の冷水が取水出口管28aに流入し、この殺菌された冷水が冷水取水口281からコップPに注がれることになる。
【0040】
加えて、第2実施形態の場合には、角縁283直下で水流が通路内壁面288から離れることにより形成される渦流により孔289から外部の空気が容易に吸い込まれることになるため、冷水取水弁27が閉切換された際の水と空気との置換を第1実施形態の場合よりも迅速にかつ確実に完了させることができる。しかも、孔289の形成により確実に空気の取り込みが行われるため、出口通路部287の長短の如何に拘わらず水と空気との置換により取水出口管28a内を空の状態にすることができ、取水出口管28aの配置設計の自由度も増大させることができる。
【0041】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、本発明を適用する対象として図1等に例示したもの以外の構成であっても、本発明を適用することができる。例えば、殺菌用の紫外線灯として1本の取水連動用の紫外線灯29aと、1本の定期点灯用の紫外線灯29bとで構成したものを例示しているが、これに限らず、取水連動用の紫外線灯として複数本を、定期点灯用の紫外線灯として複数本をそれぞれ備えるようにしてもよい。又、冷水タンク2の他に温水タンク5をも備えたものを例示したが、温水タンク5を省略して冷水タンク2による冷水のみを取水可能に飲料水供給装置を構成するようにしてもよい。さらに、何らかの貯留タンクに貯留された飲料水を取水弁の開操作によって取水し得るように構成された飲料水供給装置であればよく、ウォータボトル3を省略してもよい。
【0042】
上記各実施形態では、取水連動用の紫外線灯29aとして、下端部を溜まり部25まで延ばして冷水取水管26の下流端まで紫外線を照射し得るように配置した例を示したが、これに限らず、溜まり部25を省略してもよい。この場合には、取水連動用の紫外線灯の下端部付近の側方位置に冷水取水管を開口させて紫外線灯からの紫外線が冷水取水管内に一直線状に延びて照射されるように配置すればよい。
【0043】
上記各実施形態では、取水出口管28,28aというように管路により取水のための取水出口通路が構成されたものを例示しているが、これに限らず、例えばあるブロック内に穿たれた孔(連通孔)により取水のための取水出口通路が形成されるようにしてもよい。又、通路内壁面284,288としては、円形断面,楕円形断面,多角形断面又は矩形断面等の種々の断面形状のもので構成してもよい。
【0044】
上記各実施形態では、取水出口管28,28aを冷水取水弁27に付設した例を示したが、これに限らず、開閉弁を構成する温水取水弁52に対しても同様構成の取水出口管(取水出口通路)を接続するようにしてもよい。
【0045】
上記各実施形態では「角縁」として尖った角を有する角縁283を図示しているが、これに限らず、「角縁」としては、水流が角縁を乗り越える際に下流側の通路内壁面288から剥離するきっかけとなるものであればよく、上流側の通路内壁面284から下流側の通路内壁面288へと傾斜が急激に切り替わる傾斜変換部を構成する角縁であればよい。従って、相対的に微小な半径の円弧面等により形成された角であっても「角縁」に含まれる。
【0046】
上記各実施形態では傾斜通路部286として一直線状の管に形成したものを示したが、これに限らず、通路内壁面284が弁室272に向けて上り勾配を有するように形成されていれば、傾斜通路部は一直線形状、屈曲形状、螺旋形状のいずれに形成されていてもよい。一直線形状以外の形状を選択する場合であっても、コップ置き場13においてハウジング1の前面から見て徐々に手前側に位置することになるように配置することが好ましい。
【0047】
垂下通路部285と傾斜通路部286との接続部形状として図例では屈曲形状のものを示しているが、これに限らず、滑らかに湾曲する形状を採用してもよいし、あるいは、垂下通路部285を省略して傾斜通路部286を弁室272に直接に連通させるように接続してもよい。
【0048】
さらに、上記各実施形態では出口通路部287の通路内壁面288が最も内側寄り位置の角縁283から鉛直に延びるようにしているが、これに限らず、例えば図5(a)に一点鎖線で示す通路内壁面288aのように取水口281から見てオーバーハング状に斜めに拡がるように形成してもよい。これにより、角縁283を超した水流が通路内壁面288aから剥離し易くなって確実に空気溜まりを生じさせることができる上に、空気塊K2(図5(b)参照)が取り込まれ易くなって、より迅速に水と空気との置換を行わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
13 コップ置き場
27 冷水取水弁(開閉弁)
28,28a 取水出口管(取水出口通路)
281 取水口
282 屈曲部
283 角縁
284 通路内壁面(角縁を挟んで上流側の通路内壁面)
286 傾斜通路部
287 出口通路部
288 通路内壁面(角縁を挟んで下流側の通路内壁面)
289 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水が取水される取水通路に開閉弁が介装され、この開閉弁が開切換されることで上流側からの飲料水が取水口まで流れて、取水口から取水可能とされた飲料水供給装置であって、
上記開閉弁から取水口までの間の取水出口通路が屈曲部を備え、
上記屈曲部は角縁を境にして屈曲され、
上記角縁を挟んで上流側の通路内壁面が上記開閉弁に向けて昇り勾配を有し、かつ、上記角縁を挟んで下流側の通路内壁面が下向きに延びるように形成されている
ことを特徴とする飲料水供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料水供給装置であって、
上記開閉弁から取水出口通路を流下する水流が上記角縁を超える際に下流側の通路内壁面から剥離するように、上記角縁を挟んで上流側と下流側との両通路内壁面が交差されている、飲料水供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の飲料水供給装置であって、
上記取水出口通路は、コップ置き場の手前側に向けて斜め下方に延びる傾斜通路部と、取水口まで略鉛直に延びる出口通路部とを備え、上記傾斜通路部の下流端と上記出口通路部の上流端とが互いに交差した状態で接続されることにより上記角縁が形成されている、飲料水供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の飲料水供給装置であって、
上記角縁の下流側近傍位置の通路内壁面には空気吸い込み用の孔が貫通形成されている、飲料水供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate