説明

飲料用ディスペンサー洗浄システム

【課題】洗浄水と炭酸ガスを常に安定的に所定の圧力比で混合して飲料流路を洗浄する飲料用ディスペンサー洗浄システムの提供。
【解決手段】高圧ガスの供給経路となるガス配管20と洗浄水の供給経路となる水配管30を備え、ガス配管20は高圧ガス供給源10より分岐管を経て二つの系統21,22へと分岐され、第一系統21はガス弁7を経て飲料タンク3に着脱自在なディスペンスヘッド2へと連接され、第二系統22はガス圧により駆動するダイヤフラムポンプ5へと連接されており、さらに、水配管30は洗浄水供給源11よりダイヤフラムポンプ5および水弁6を経てディスペンスヘッド2を着脱自在な混合栓1へと順次連接され、洗浄時には、前記飲料タンク3より取り外したディスペンスヘッド2を混合栓1に取り付け、混合栓1において所定の圧力比で混合させた高圧ガスおよび洗浄水を該ディスペンスヘッド2から前記飲料サーバー4へと送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料用ディスペンサー洗浄システムに関し、詳しくは、簡単な操作により洗浄水と炭酸ガスを所定の圧力比で混合して飲料流路を洗浄することができる飲料用ディスペンサー洗浄システムの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な生ビールのディスペンサーとして、樽に充填されたビール等を別に用意した炭酸ガスの力で吐出させ、ジョッキ等に注入させるものがあるが、それに冷却装置を組み込み、樽からジョッキに注入させるまでに冷却させるものが広く使用されている。この冷却装置は、生ビールディスペンサー内の冷却部に螺旋状のビール配管と冷媒配管をそれぞれ設け、冷媒により冷却部の冷却水を冷却し、ビール配管を流れるビールを間接的に冷却するというものである。
【0003】
ところで、生ビールディスペンサー内部の螺旋状のビール配管には、飲食物であるビールや発泡酒が残留しやすいため、ややもすると雑菌の発生等が生じ、風味を低下させるおそれがある。したがって、この配管を頻繁に洗浄することが求められている。
【0004】
そこで、かかるビール流路内を効果的に洗浄する方法として、洗浄水と炭酸ガスなどの高圧ガスを混合したものをビール流路内に流して洗浄する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
本発明者は、特に、洗浄水と高圧ガスとの混合時の圧力比をほぼ同圧とした場合に、ビール流路内において洗浄水が螺旋状に回転しながら流れるいわゆるスパイラル流が形成され、細くて長いビール流路内であっても、非常に効果的に汚れを洗浄できることを見出した。
【0006】
しかしながら、実際に販売の現場において、洗浄水と高圧ガスの圧力比をほぼ同圧とするには、常に一定の圧力に保たれた洗浄水供給源とガス供給源とを別途用意しておけばよいが、洗浄時にいちいちディスペンサーをそれらの供給源につなぎかえることは面倒であり、手間のかかる作業であった。
【0007】
そこで、つなぎかえる手間を省くため、高圧ガスの供給源として、営業時にビールを抽出するために用いた炭酸ガスをそのまま利用することも考えられる。しかしながら、かかる炭酸ガスの圧力は、サーバーの冷却方式(瞬冷か空冷か)の違いや、ビールメーカーの違いによって設定する圧力がまちまちであり、その都度、ガス圧に応じて水圧を調整しなければいけないという手間があった。また、洗浄水の供給源として水道を利用する場合、現場によっては、極端に水圧が低いこともあり、そのようなときには、洗浄水と高圧ガスの圧力比をほぼ同圧とすることが困難な場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−48497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明は、従来のかかる飲料用ディスペンサーの洗浄装置の欠点を克服し、洗浄水と炭酸ガスを常に安定的に所定の圧力比で混合して飲料流路を洗浄する飲料用ディスペンサーの洗浄システムの提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、高圧ガスにより飲料タンク内の飲料を飲料サーバーへと注出する飲料用ディスペンサーの洗浄システムであって、高圧ガスの供給経路となるガス配管と洗浄水の供給経路となる水配管を備え、前記ガス配管は高圧ガス供給源より分岐管を経て二つの系統へと分岐され、その第一系統はガス弁を経て飲料タンクに着脱自在なディスペンスヘッドへと連接され、第二系統はガス圧により駆動するダイヤフラムポンプへと連接されており、さらに、前記水配管は洗浄水供給源より前記ダイヤフラムポンプおよび水弁を経て前記ディスペンスヘッドを着脱自在な混合栓へと順次連接され、洗浄時には、前記飲料タンクより取り外した前記ディスペンスヘッドを前記混合栓に取り付け、該混合栓において所定の圧力比で混合させた高圧ガスおよび洗浄水を該ディスペンスヘッドから前記飲料サーバーへと送出することを特徴とする飲料用ディスペンサー洗浄システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の飲料用ディスペンサー洗浄システムは、ガス管を途中で二つの系統へと分岐させ、その一方(第二系統)をダイヤフラムポンプに接続して、そのガス圧でダイヤフラムポンプを駆動させる。その結果、同じくダイヤフラムポンプへ接続した水配管より供給される洗浄水がダイヤフラムポンプへ送り込まれるガス圧とほぼ同圧に調整されて排出され、最終的に混合栓において、他方の分岐したガス管(第一系統)のガスとほぼ同圧で混合することができる。
【0012】
すなわち、本発明の飲料用ディスペンサー洗浄システムによると、高圧ガスの供給源として、営業時にビールを注出するために用いた炭酸ガスをそのまま利用しても、ダイヤフラムポンプにより自動的に洗浄水と炭酸ガスの圧力比がほぼ同圧に保たれるため、サーバーの冷却方式やビールメーカーの違いに応じて圧力比を調整する手間が省かれる。また、ダイヤフラムポンプを介して洗浄水が供給されるため、洗浄水の供給源として水道を利用する場合も、水道の水圧が問題となることはない。さらに、本発明の飲料用ディスペンサー洗浄システムは、飲料タンクよりディスペンスヘッドを取り外して混合栓に付け替え、スイッチを入れるだけでよく、非常に簡単な作業により洗浄を行うことができる。
【0013】
以上のとおり、本発明の飲料用ディスペンサー洗浄システムによると、洗浄に効果的なスパイラル流を常に安定的に発生させることにより洗浄効率を高め、洗浄作業を簡便化し、洗浄時間の短縮が可能となる。さらに、洗浄作業に必要な洗浄水およびガスの使用量を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムのガス管および水配管の経路および各部材の配置を示した図。
【図2】本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの混合栓の側面図。
【図3】本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの混合栓の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の飲料用ディスペンサー洗浄システムの実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムのガス配管および水配管の経路および各部材の配置を示した図である。図中、1は混合栓、2はディスペンスヘッド、3は飲料タンク、4は飲料サーバー、5はダイヤフラムポンプ、6は水弁、7はガス弁、8はコントローラーボックス、9は分岐管、10は高圧ガス供給源、11は洗浄水供給源、12は水道ゲートバルブ、13は逆流防止弁、20はガス管、21は第一系統ガス配管、22は第二系統ガス配管、30は水配管、40は飲料配管をそれぞれ示す。図に示すように、本実施態様の飲料用ディスペンサー洗浄システムは、途中で二つに分岐するガス配管と、水配管を有している。基本的に、飲料タンクに高圧ガスを送り込んでタンク内のビールを飲料サーバーへと注出し、飲料サーバー内で冷却水により瞬冷する方式は、従来公知の生ビールディスペンサーと同様である。
【0017】
しかしながら、本発明では、高圧ガスを供給する経路において、途中で第一系統ガス配管21および第二系統ガス配管22へと、分岐管9において分岐されている点に特徴を有する。このように分岐された第一系統ガス配管21は、ガス弁7を経て飲料タンク3に着装されたディスペンスヘッド2へと接続されている。一方、第二系統ガス配管22はダイヤフラムポンプ5へと接続されている。かかるダイヤフラム式ポンプは、ガス送入口およびガス排出口と、水送入口および水排出口とを備え、ガス圧により内部のポンプを駆動して液体を送出するタイプのものであり、市販のものを利用することができる。具体的には、米国Flojet社製のFlojetビヴァレッジポンプN5000シリーズなどが挙げられる。
【0018】
ダイヤフラムポンプ5には、洗浄水供給源11より洗浄水が供給されている。本実施例では、洗浄水供給源11として、一般の水道水を使用しており、ダイヤフラムポンプ5に至る水配管30の途中には、水道ゲートバルブ12と逆流防止弁13とが設けられている。そして、ダイヤフラムポンプ5から排出された洗浄水は、水配管30により、水弁6を経て、混合栓1へと送られる。
【0019】
図2は、本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの混合栓1の側面図、図3は同断面図である。図中、101は洗浄水供給口、102はディスペンスヘッド取付部、103は内筒体、104は水流入路、105は外筒体、106はバネ部をそれぞれ示す。
【0020】
図に示すように、混合栓1は上部にディスペンスヘッド取付部102を、側部に洗浄水供給口101を有している。ディスペンスヘッド取付部102は底部に開口を有する皿状に形成されており、かかる開口から外筒体105が混合栓1内部に突出するように設けられている。そして、外筒体105内には、内筒体103が縦方向に摺動可能に設けられており、内筒体103の底部と混合栓1内部の床面との間には、バネ部106が設けられている。また、内筒体103の下部側壁には、水流入路104が側壁を貫通して形成されており、混合栓1にディスペンスヘッドを取り付けていない状態では、バネ部106により内筒体103が上方へ付勢され、内筒体103とともに水流入路104は外筒体105内に収納された状態になっている。
【0021】
混合栓1にディスペンスヘッド2を接続すると、ディスペンスヘッド2の下部が外筒体105内に挿入され、内筒体103は下方へと押し下げられる。その結果、内筒体103の下部が外筒体105内から露出し、水流入路104が混合栓1内の空間と連通することになる。したがって、洗浄水供給口101に接続された水配管(図示せず)により混合栓1内に洗浄水が供給されると、水流入路104を通って外筒体105へ、そして外筒体105内に挿入されたディスペンスヘッド2の下部よりディスペンスヘッド2内へと流入する。
【0022】
一方、ディスペンスヘッド2には接続された第一系統ガス配管21より炭酸ガスが供給され、混合栓1内において洗浄水と混合し、スパイラル流を形成しながら同じくディスペンスヘッド2に接続された飲料配管40へと送出される。
【0023】
本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの営業時におけるガスと洗浄水の流れは以下の通りである。まず、営業時においては、水弁6は閉じられ、ガス弁7は開いた状態となっている。したがって、洗浄水の流れはなく、高圧ガス供給源10より供給された高圧ガスは、分岐管9で分岐された後、第一系統ガス配管21を通り、ディスペンスヘッド2を介して飲料タンク3に送り込まれる。その結果、タンク内のビールは飲料サーバー4へと送出され、飲料サーバー4内で冷却水により瞬冷されて最終的にグラス等へと注出可能な状態となる。
【0024】
次に、本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの洗浄時におけるガスと洗浄水の流れは以下の通りである。洗浄時には、まず、ディスペンスヘッド2が、飲料タンク3から取り外され、混合栓1へと付け替えられる。そして、水弁6およびガス弁7はともに開いた状態となっており、高圧ガス供給源10より供給された高圧ガスは、分岐管9で分岐された後、第一系統ガス配管21を通るガスはディスペンスヘッド2に送られている。また、第二系統ガス配管22を通るガスはダイヤフラムポンプ5へと送られ、ポンプを駆動する。水弁6が開いているため、ダイヤフラムポンプ5を駆動した結果、洗浄水供給源11より供給されている洗浄水は混合栓1へと送られることになる。こうして、ディスペンスヘッド2と混合栓1へ送られたガスおよび洗浄水は、混合栓1内で混合した後、ディスペンスヘッド2に接続された飲料配管40へと送出され、飲料流路を洗浄することができる。なお、ここで飲料流路とは、飲料配管40および飲料サーバー4のビール配管を意味する。
【0025】
そして、スパイラル流を形成するに必要なガス圧および水圧は、以下のように保たれる。すなわち、分岐管9で分岐された高圧ガスは、第一系統ガス配管21および第二系統ガス配管22へと等しい圧力で送り出される。そして、第二系統ガス配管22を経由するガスは、ダイヤフラムポンプ5を駆動して洗浄水を排出するが、このとき、入力されたガス圧と排出される水圧とはほぼ等しくなる。したがって、洗浄水の水圧と、第一系統ガス配管21のガス圧もほぼ同圧となって、最終的に、スパイラル流を形成するに適当な圧力比で混合栓1へと送り込むことができる。そして、高圧ガス供給源10および洗浄水供給源11のそれぞれのガス圧、水圧を変えた場合も、分岐管9で分岐された高圧ガスは常に同圧となるため、混合栓1における洗浄水の水圧と高圧ガスのガス圧も、安定的に同圧に近く維持される。かかる水とガスの圧力比は、水:炭酸ガス=2.5:3〜3:3(同圧)の範囲内で保たれていればスパイラル流を形成することができるが、同圧に近い方がより好ましい。
【0026】
また、本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムの水弁6およびガス弁7はともに手動で開閉してもよいが、本実施態様のように、コントローラーボックス8により制御することがより作業も簡便化されるため好ましい。このコントローラーボックス8は水弁6およびガス弁7の開閉を以下のように制御する。まず、営業時には、コントローラーボックス8の営業スイッチをオンにすると、ガス弁7は開き、水弁6は閉じる。そして、洗浄時には、コントローラーボックス8の洗浄スイッチをオンにすることにより、水弁6およびガス弁7が共に開かれる。そして、コントローラーボックス8に備えられたタイマーにより、セット時間(およそ1分〜4分程度)が経過すると、まず、水弁6のみ閉じられる。飲料配管40および飲料サーバー4内の飲料流路にはガスのみが送られるため、内部に残留する洗浄水をガスにより排出し、10〜30秒後にガス弁7が閉じて洗浄が完了する。
【0027】
このように、本発明に係る飲料用ディスペンサー洗浄システムであって、水弁6およびガス弁7の開閉を制御するコントローラーボックス8が設けられたものは、営業時は、コントローラーボックス8の営業スイッチをオンにすることにより、通常の生ビールディスペンサーとして使用することができ、洗浄時には、ディスペンスヘッド2を飲料タンク3から取り外し、混合栓1へと付け替えて、コントローラーボックス8の洗浄スイッチをオンにするだけで、自動で洗浄完了まで行うため、洗浄にかかる手間および時間が大幅に軽減される。
【符号の説明】
【0028】
1 … … 混合栓
2 … … ディスペンスヘッド
3 … … 飲料タンク
4 … … 飲料サーバー
5 … … ダイヤフラムポンプ
6 … … 水弁
7 … … ガス弁
8 … … コントローラーボックス
9 … … 分岐管
10 … … 高圧ガス供給源
11 … … 洗浄水供給源
12 … … 水道ゲートバルブ
13 … … 逆流防止弁
20 … … ガス管
21 … … 第一系統ガス配管
22 … … 第二系統ガス配管
30 … … 水配管
40 … … 飲料配管
101 … … 洗浄水供給口
102 … … ディスペンスヘッド取付部
103 … … 内筒体
104 … … 水流入路
105 … … 外筒体
106 … … バネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスにより飲料タンク内の飲料を飲料サーバーへと注出する飲料用ディスペンサーの洗浄システムであって、高圧ガスの供給経路となるガス配管と洗浄水の供給経路となる水配管を備え、前記ガス配管は高圧ガス供給源より分岐管を経て二つの系統へと分岐され、その第一系統はガス弁を経て飲料タンクに着脱自在なディスペンスヘッドへと連接され、第二系統はガス圧により駆動するダイヤフラムポンプへと連接されており、さらに、前記水配管は洗浄水供給源より前記ダイヤフラムポンプおよび水弁を経て前記ディスペンスヘッドを着脱自在な混合栓へと順次連接され、洗浄時には、前記飲料タンクより取り外した前記ディスペンスヘッドを前記混合栓に取り付け、該混合栓において所定の圧力比で混合させた高圧ガスおよび洗浄水を該ディスペンスヘッドから前記飲料サーバーへと送出することを特徴とする飲料用ディスペンサー洗浄システム。
【請求項2】
前記の圧力比が、水:炭酸ガス=2.5:3〜3:3の範囲内で保たれていることを特徴とする請求項1記載の飲料用ディスペンサー洗浄システム。
【請求項3】
前記混合栓において混合された高圧ガスおよび洗浄水がスパイラル流を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料用ディスペンサー洗浄システム。
【請求項4】
前記ガス弁および水弁の開閉を制御するタイマー付のコントローラーボックスを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の飲料用ディスペンサー洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247854(P2010−247854A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98211(P2009−98211)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(506163423)オリオンサポート株式会社 (4)
【Fターム(参考)】