説明

飲用冷水機

【課題】電動コンプレッサ駆動用モータの過熱を確実に防止することができる飲用冷水機を提供する。
【解決手段】飲用冷水機は、上水道管などの給水源から給水管21を経由して供給される水を貯留する水タンク10と、水タンク10に貯留された水を冷却する冷却手段を構成する電動式のコンプレッサ11と、水タンク10内に貯留された水を流出させる出水管22と、を備えている。また、コンプレッサ11を駆動するモータ12へ給電する電源回路13に所定値を超える電流が流れたときに電源回路13を遮断するバイメタル式継電器14と、モータ12が所定値を超える温度に昇温したときに電源回路13を遮断するサーモスタット15と、水温設定用サーモスタット17と、始動リレー18と、が電源回路13に直列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校や公衆浴場あるいはその他の公共施設などに設置される飲用冷水機において電動コンプレッサの駆動モータが過熱して故障するのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
給水源から供給される水を貯留する水タンクと、水タンクに貯留された水を冷却する電動コンプレッサ方式の冷却手段と、を備え、使用者の手動操作によって注水口から冷水を流出させる機能を有する飲用冷水機においては、電動コンプレッサの駆動モータに過負荷が加わり、モータに過電流が流れたときに、モータを構成するコイルや絶縁部材などが焼損するのを防止するための自動停止手段が設けられている。
【0003】
従来の自動停止手段としては、電動コンプレッサの駆動モータに給電する電源回路に過電流が流れたときに、それを検知して電源回路を遮断するバイメタル式継電器が一般的に使用されている。バイメタル式継電器は、モータに給電する電源回路に直列に配線された通電部と、この通電部の近傍に配置されたバイメタルスイッチと、を備えている。電源回路に過電流が流れると、バイメタル式継電器の通電部が発熱し、この熱によってバイメタルスイッチを構成するバイメタルが変形して電源回路がOFFされ、電動コンプレッサが停止する。また、電源回路がOFFされた後はバイメタル式継電器の通電部の発熱が止まるので、時間の経過に伴ってバイメタルが元の状態に戻って電源回路がONされ、電動コンプレッサが運転再開する。
【0004】
一方、清涼飲料のディスペンサーにおいて、冷凍機の冷却ファンの通気口に設けられたフィルタに生じた目詰まりなどによって通気性が低下して、不具合が発生するのを防止する技術に係る発明が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−97877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、従来のバイメタル式継電器は、バイメタルの熱変形を利用してOFF・ON作動するものであるため、作動回数が積み重なると、金属疲労によりバイメタルに亀裂が生じたり、割れたりして、作動不能となり、OFF状態またはON状態のまま固定してしまうことがある。
【0007】
バイメタル式継電器がOFF状態で固定したときは、電動コンプレッサが作動しなくなるので、故障発見が早く、バイメタル式継電器などの交換程度の比較的簡単な修理で対処することができるが、ON状態で固定したときは、過電流の有無にかかわらず、電動コンプレッサが運転し続けるので、駆動モータが過熱して内部のコイルや絶縁部材などが焼損し、電動コンプレッサの取り換えなどの大規模な修理を要することがある。
【0008】
一方、特許文献1記載の発明の場合、冷凍機のコンプレッサ、放熱器及び冷却ファンなどが配置された機械室内に温度センサが配置されているため、何らかの原因でコンプレッサが過熱したとき、その熱によって機械室内の気温が異常上昇して温度センサが検出してコンプレッサを止めるまでにタイムラグが生じ、その間に、コンプレッサのコイルや絶縁部材などが焼損する可能性がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、電動コンプレッサ駆動用モータの過熱を確実に防止することができる飲用冷水機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の飲用冷水機は、給水源から供給される水を貯留する水タンクと、前記水タンクに貯留された水を冷却する電動コンプレッサ方式の冷却手段と、を備えた飲用冷水機において、前記電動コンプレッサを駆動するモータへ給電する電源回路に所定値を超える電流が流れたときに前記電源回路を遮断する継電器と、前記モータが所定値を超える温度に昇温したときに前記電源回路を遮断するサーモスタットと、を前記電源回路に直列に接続したことを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、電動コンプレッサを駆動するモータに過電流が流れたときは継電器が作動して電源回路が遮断されモータが自動停止し、過電流が流れているにもかかわらず、継電器自体の故障により、電源回路が遮断されずモータが回転し続けたときは、モータの温度が所定値を超えた時点でサーモスタットが作動して電源回路が遮断されモータが自動停止する。従って、電動コンプレッサ駆動用モータの過熱を確実に防止することができる。
【0012】
ここで、前記サーモスタットを前記電動コンプレッサのケーシングに取り付けることができる。このような構成とすれば、コンプレッサとモータとが一体構造をなす電動コンプレッサの過熱を有効に防止することができる。
【0013】
一方、前記冷却手段を構成する凝縮器を冷却するための電動ファンへの給電回路を前記電源回路に並列に接続することが望ましい。このような構成とすれば、電動コンプレッサの駆動用モータに過電流が流れて継電器が作動して電源回路が遮断されたとき、若しくは、駆動用モータが過熱してサーモスタットが作動して電源回路が遮断されたときに、同時に電動ファンが停止してしまうのを回避することができる。従って、継電器やサーモスタットが作動して電源回路が遮断された後も電動ファンは送風を続けることができ、電動コンプレッサの駆動用モータが停止した後の凝縮器などの残留熱によるトラブルを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電動コンプレッサ駆動用モータの過熱を確実に防止することができる飲用冷水機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である飲用冷水機を示す正面図である。
【図2】図1に示す飲用冷水機の平面図である。
【図3】図1に示す飲用冷水機の右側面図である。
【図4】図1に示す飲用冷水機の内部構造を示す一部省略正面である。
【図5】図1に示す飲用冷水機の過熱防止機構を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施形態の飲用冷水機100は、建築物(図示せず)の壁面Wに床面Fから離れた状態で取り付けられ、正面上方部分に設けられたプッシュボタン101を押圧すると、上面部分に設けられたトップシンク102の正面寄りの角隅に立設されたバブラー103から放物線を描くように冷水CWが噴出し、プッシュボタン101の押圧を解除すると、冷水CWの噴出が停止する。
【0017】
図4,図5に示すように、飲用冷水機100は、上水道管などの給水源(図示せず)から給水管21を経由して供給される水を貯留する水タンク10と、水タンク10に貯留された水を冷却する冷却手段を構成する電動式のコンプレッサ11と、水タンク10内に貯留された水を流出させる出水管22と、を備えている。
【0018】
また、コンプレッサ11を駆動するモータ12へ給電する電源回路13に所定値を超える電流が流れたときに電源回路13を遮断するバイメタル式継電器14と、モータ12が所定値を超える温度に昇温したときに電源回路13を遮断するサーモスタット15と、水温設定用サーモスタット17と、始動リレー18と、が電源回路13に直列に接続されている。電源回路13は、差し込みプラグ25を介して商用電源(例えば、AC100V)に接続されている。
【0019】
コンプレッサ11及びモータ12は一体構造をなした状態でケーシング16内に収納され、バイメタル式継電器14及びサーモスタット15はケーシング16外面に密着した状態で取り付けられている。
【0020】
コンプレッサ11から延設された冷媒管19は水タンク10の外周面に巻回され、凝縮器20を経由し、再びコンプレッサ11に戻るように配管されている。また、冷媒管19に接続された凝縮器20を冷却するため電動ファン23が凝縮器20の近傍に配置され、電動ファン23への給電回路24が電源回路13に並列に接続されている。
【0021】
飲用冷水機100において、何らかの原因でコンプレッサ11を駆動するモータ12に所定値を超える電流が流れたときはバイメタル式継電器14が作動して電源回路13が遮断されモータ12が自動停止する。これにより、モータ12に過電流が流れ続けることによってコイルや絶縁部材などが損傷するのを防止することができる。
【0022】
一方、バイメタル式継電器14自体がバイメタル(図示せず)の損傷などにより動作不能に陥り、モータ12に過電流が流れているにもかかわらず電源回路13が遮断されず、モータ12が回転し続け、昇温したときは、モータ12の温度が所定値を超えた時点でサーモスタット15が作動して電源回路13が遮断されモータ12が自動停止する。従って、バイメタル式継電器14の故障などにより回路が自動遮断されなくなった場合でも、コンプレッサ11の駆動用のモータ12の過熱を確実に防止することができる。
【0023】
また、サーモスタット15をコンプレッサ11のケーシング16に取り付けたことにより、電動コンプレッサ11とモータ12とが一体構造をなす電動コンプレッサにおいても確実な過熱防止効果を得ることができる。
【0024】
さらに、冷却手段を構成する凝縮器20を冷却するための電動ファン23への給電回路24を電源回路13に並列に接続しているため、コンプレッサ11の駆動用のモータ12に過電流が流れてバイメタル式継電器14が作動して電源回路13が遮断されたとき、あるいは、モータ12が過熱してサーモスタット15が作動して電源回路13が遮断されたときに、同時に電動ファン23が停止することがない。即ち、バイメタル式継電器14やサーモスタット15が作動して電源回路13が遮断された後も電動ファン23は送風を続けることができ、モータ12が停止した後の凝縮器20などの残留熱によるトラブルを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の飲用冷水機は、飲料水の供給手段として、学校や公衆浴場あるいはその他の公共施設などに設置して広く利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 水タンク
11 コンプレッサ
12 モータ
13 電源回路
14 バイメタル式継電器
15 サーモスタット
16 ケーシング
17 水温設定用サーモスタット
18 始動リレー
19 冷媒管
20 凝縮器
21 給水管
22 出水管
23 電動ファン
24 給電回路
25 差し込みプラグ
100 飲用冷水機
101 プッシュボタン
102 トップシンク
103 バブラー
CW 冷水
F 床面
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給される水を貯留する水タンクと、前記水タンクに貯留された水を冷却する電動コンプレッサ方式の冷却手段と、を備えた飲用冷水機において、前記電動コンプレッサを駆動するモータへ給電する電源回路に所定値を超える電流が流れたときに前記電源回路を遮断する継電器と、前記モータが所定値を超える温度に昇温したときに前記電源回路を遮断するサーモスタットと、を前記電源回路に直列に接続したことを特徴とする飲用冷水機。
【請求項2】
前記サーモスタットを前記電動コンプレッサのケーシングに取り付けた請求項1記載の飲用冷水機。
【請求項3】
前記冷却手段を構成する凝縮器を冷却するための電動ファンへの給電回路を前記電源回路に並列に接続した請求項1または2記載の飲用冷水機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−64517(P2013−64517A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202156(P2011−202156)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(511077672)株式会社九州イトミック (2)
【Fターム(参考)】