説明

飲用容器

【課題】手や首に障害がある者でも容易に使用することができる飲用容器の提供。
【解決手段】この飲用容器30は、筒状本体37と、第1仕切板31及び第2仕切板32とを備えている。筒状本体37は円筒状に形成されており、第1仕切板31が傾斜して筒状本体37の内部に配置されている。筒状本体37の内部に上側収容室33及び下側収容室34が区画され、下側収容室34内に第2仕切板32が配置されている。第2仕切板32は、傾斜して配置されており、第1仕切板31の中央に接続されている。第1仕切板31及び第2仕切板32は、45°に傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲用容器の構造、特に障害者や要介護者が使用することを前提とした飲用容器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に手や首に障害や不自由を持つ人にとって、飲用物をカップその他飲用容器を用いて飲用することは容易でないことが多く、カップから飲用物が溢れてしまうことも少なくない。これを防止するため、従来から特別の形状の飲み口が形成されたカップが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このカップでは、当該カップの開口部に板部材が設けられている。この板部材は、開口部の一部を塞ぐように設けられており、且つこの板部材の中央部が切り欠かれており、当該切欠部によって注ぎ口が形成されている。使用者は、このカップを手に持ち、注ぎ口に口を当てて当該カップを傾斜させることにより、飲用物を少量ずつ注ぎ口から簡単に口に流し込める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−226017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、手や首に障害や不自由を持つ人は、そもそもカップを自由に傾斜させることが困難であることが多く、上記注ぎ口が設けられていたとしてもカップを用いて容易に飲用物を飲用することができない場合もある。
【0005】
そこで、本発明は、手や首を大きく動かすことなく飲用物を少しずつ容易且つ確実に飲用することができる飲用カップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係る飲用容器は、上端及び下端にそれぞれ上端開口部及び下端開口部が設けられた筒状本体と、当該筒状本体の内部に上記上端開口部を有する上側収容室及び上記下端開口部を有する下側収容室を区画するように配置された仕切板とを備える。当該仕切板は、上記上側収容室及び下側収容室がくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜されている。
【0007】
この発明に係る飲用容器は、上記筒状本体の上端が上向きとなるようにテーブル上に載置され、あるいは使用者の手によって把持される。この状態で、上記仕切板は、上記筒状本体の底板として機能し、上記筒状本体の内面と仕切板の上面とによって上記上側収容室が区画される。この上側収容室に上記上端開口部を通じて飲料等が注がれる。また、上記筒状本体の内面と仕切板の下面とによって上記下側収容室が区画される。この下側収容室の下端開口部は下向きに開口しているから、上記筒状本体の上端が上向きとなっている状態では、飲料等は下側収容室に収容され得ない。しかし、上記筒状本体の下端が上向きとなるようにテーブル上に載置され、あるいは使用者の手によって把持されるときは、上記下側収容室に上記下端開口部を通じて飲料等が注がれる。
【0008】
ところで、上記仕切板が前述のように傾斜しているから、上記上側収容室及び下側収容室はくさび状空間を形成している。すなわち、上記上側収容室の深さは、上記上端開口部の所定位置で最も小さく、当該所定位置から離れるほど大きくなっている。したがって、使用者が当該飲用容器を手に持って上記所定位置に口を付けることにより、使用者は、当該飲用容器をわずかに傾けるだけで、上記飲料等を少しずつ口に運ぶことができる。
【0009】
(2) 上記上側収容室及び下側収容室は、上記仕切板を基準に対称に形成されていてもよい。
【0010】
この構成では、上記筒状本体の上端が上向きであっても下端が上向きであっても、使用者は同様に飲用容器を使用することができる。
【0011】
(3) 上記筒状本体に把手が設けられているのが好ましい。
【0012】
この構成では、使用者は、把手を掴んで飲用容器を持つことができ、より簡単に内容物を口に運ぶことができる。なお、この把手は、左右対称に設けられていてもよいし、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0013】
(4) また、上記目的が達成されるため、本願発明に係る飲用容器は、上端及び下端にそれぞれ上端開口部及び下端開口部が設けられた筒状本体と、当該筒状本体の内部に上記上端開口部を有する上側収容室を区画するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜して配置された第1仕切板と、当該第1仕切板と協働して上記筒状本体の内部に上記下端開口部を有する下側収容室を区画するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜し且つ上記第1仕切板と交差して配置された第2仕切板とを備える。上記第1仕切板は、上記上側収容室が上記上端から上記下端に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜している。上記第2仕切板は、上記下側収容室が上記下端から上記第1仕切板と交差する部位に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜している。
【0014】
この発明に係る飲用容器は、上記筒状本体の上端が上向きとなるようにテーブル上に載置され、あるいは使用者の手によって把持される。この状態で、上記第1仕切板は、上記筒状本体の底板として機能し、上記筒状本体の内面と第1仕切板の上面とによって上記上側収容室が区画される。この上側収容室に上記上端開口部を通じて飲料等が注がれる。また、上記筒状本体の内面、上記第1仕切板の下面及び第2仕切板の下面によって上記下側収容室が区画される。この下側収容室の下端開口部は下向きに開口しているから、上記筒状本体の上端が上向きとなっている状態では、飲料等は下側収容室に収容され得ない。しかし、上記筒状本体の下端が上向きとなるようにテーブル上に載置され、あるいは使用者の手によって把持されるときは、上記下側収容室に上記下端開口部を通じて飲料等が注がれる。
【0015】
ところで、上記第1仕切板が前述のように傾斜しているから、上記上側収容室は、上記上端から上記下端に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成している。また、上記第2仕切板が前述のように傾斜しているから、上記下側収容室は、上記下端から上記第1仕切板と上記第2仕切板とが交差する部位に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成している。すなわち、上記上側収容室の深さは、上記上端開口部の所定位置で最も小さく、当該所定位置から離れるほど大きくなっている。また、上記下側収容室の深さは、上記下端開口部の所定位置で最も小さく、当該下側収容室の中央部で最も大きくなっている。つまり、上記下側収容室は、いわゆるすり鉢状に形成されている。したがって、使用者が当該飲用容器を手に持って上記所定位置に口を付けることにより、使用者は、当該飲用容器をわずかに傾けるだけで、上記飲料等を少しずつ口に運ぶことができる。また、上記すり鉢状に形成された下側収容室は、内容物としてゼリー状のものを収容するのに便利である。
【0016】
(5) 上記第1仕切板及び第2仕切板により、上記筒状本体の外周面にV字状の窪みが区画形成されていてもよい。
【0017】
すなわち、この構成では、上記筒状本体は、上記第1仕切板の縁部及び第2仕切板の縁部と交差する仮想線によって切り取られており、その結果、上記筒状本体の外周面にV字状の窪みが形成されている。このため、使用者が上記飲用容器を把持する際に親指を上記窪みに進入させることができ、この飲用容器の外形形状は、使用者にとって非常に持ち易いものとなる。
【0018】
(6) 上記第2仕切板は、上記第1仕切板の中央と交差しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、上記下側収容室の深さは、当該下側収容室の中央が最も大きくなり、対称形状となる。これにより、上記下側収容室にゼリー状のものを安定して収容することができる。
【0020】
(7) 上記筒状本体の外周面であって上記上端部又は下端部の少なくともいずれか一方の外周面を形成する部位は、径方向に漸次先鋭する一対の平面を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、上記一対の平面により、上記筒状本体の上端部又は下端部に飲み口が形成される。これにより、使用者は、より一層簡単に内容物を口に運ぶことができる。
【0022】
(8) 上記筒状本体の外周面に、上記第1仕切板と第2仕切板とが交差する部位を中心とする凹部が形成されているのが好ましい。
【0023】
この構成によれば、使用者が上記筒状本体を把持した状態で、親指と人差し指との間の部位が上記凹部に沿って配置されることになる。これにより、使用者にとって飲用容器の握り心地が向上する。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、飲用容器の底部が傾斜しているから、使用者は、当該飲用容器をわずかに傾けるだけで、内容物(飲料等)を少しずつ口に運ぶことができる。それにより、使用者が手や首に障害を持つ場合であっても、手や首を大きく動かすことなく簡単且つ確実に飲料等を飲むことができる。また、使用者が介護者であるときは、介護が非常に簡単になる。加えて、本発明に係る飲用容器は、離乳食を始めた幼児の知育食器としても利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る飲用容器10の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−矢視図である。
【図3】図3は、飲用容器10の外観斜視図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の変形例に係る飲用容器25の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係る飲用容器30の外観斜視図である。
【図6】図6は、飲用容器30の外観斜視図である。
【図7】図7は、図5におけるVII−矢視図である。
【図8】図8は、飲用容器30の外観斜視図である。
【図9】図9は、飲用容器30の外観斜視図である。
【図10】図10は、第2の実施形態の第1の変形例に係る飲用容器50の斜視図である。
【図11】図11は、飲用容器50の斜視図である。
【図12】図12は、第2の実施形態の第2の変形例に係る飲用容器60の斜視図である。
【図13】図13は、飲用容器60の外観斜視図である。
【図14】図14は、図12におけるXIV−矢視図である。
【図15】図15は、飲用容器60の外観斜視図である。
【図16】図16は、飲用容器60の外観斜視図である。
【図17】図17は、第2の実施形態の第3の変形例に係る飲用容器70の斜視図である。
【図18】図18は、飲用容器70の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面が参照されつつ、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る飲用容器の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0027】
<第1の実施形態>
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る飲用容器10の外観斜視図である。
【0029】
この飲用容器10は、特に手や首等に障害を持つ人や介護者又は被介護者(以下、適宜「使用者」と称する。)が使用することを前提とするものである。この飲用容器10は、清涼飲料その他の飲用物、ゼリー状の食品等を収容することができ、いわゆるカップないし食器として使用される。本実施形態に係る飲用容器10の特徴とするところは、底面を構成する仕切板11が同図に示すように傾斜して配置されている点である。このように仕切板11が配置されることにより、使用者は、飲用容器10の所定位置12に口をつけ、わずかに飲用容器10を傾けるだけで、仮に首や手が自由に動かせなくとも当該飲用容器10に収容された飲料等を少量ずつ簡単に溢さずに飲むことができるようになっている。つまり、この飲用容器10は、障害者等にとって非常に使いやすく、また、介護者にとっても使いやすいものである。
【0030】
以下、飲用容器10の構造について詳述される。
【0031】
同図が示すように、飲用容器10は、筒状本体13と、上記仕切板11とを備えている。本実施形態では、筒状本体13に把手14が設けられている。筒状本体13、仕切板11及び把手14は、樹脂により一体的に形成されている。なお、これらが樹脂以外の材料で構成されてもよいことは勿論である。
【0032】
筒状本体13は、本実施形態では円筒状に形成されている。したがって、筒状本体13の上端に上端開口部15が設けられている。同様に、筒状本体13の下端に下端開口部16が設けられている。本実施形態では、筒状本体13の上端周縁に肉厚部17が形成され、同様に下端周縁に肉厚部18が形成されている。これにより、筒状本体13の上端開口部15及び下端開口16の剛性が向上されている。もっとも、これら肉厚部17、18は、省略されてもよい。また、上記把手14は、楕円状に湾曲形成されている。この把手14の上端が上記肉厚部17に接続され、下端が上記肉厚部18に接続されている。
【0033】
図2は、図1におけるII−矢視図であって、上記飲用容器10の側面図である。図3は、上記飲用容器10の外観斜視図であって、図1と異なる方向から観た図である。
【0034】
上記仕切板11は、楕円形を呈する薄肉板である。図2が示すように、この仕切板11は、筒状本体13の中心軸19に対して角度θだけ傾斜して配置されている。この角度θは、30°(agree)〜60°に設置され得る。本実施形態では、角度θは45°に設定されている。
【0035】
仕切板11が前述のように配置されることにより、筒状本体13の内部に2つのキャビティが区画形成される。すなわち、筒状本体13の内部に、上側収容室20及び下側収容室21が形成されている。この上側収容室20は、筒状本体13の内面と仕切板11の上面とによって区画される。上側収容室20は、上記上端開口部15を有し、くさび形の空間を構成している。つまり、上側収容室20は、上記上端開口部15から下方に向かって(すなわち、筒状本体13の上端から下端に向かって)漸次先鋭する空間を構成しており、この上側収容室20の深さは、上端開口部15の上記所定位置12において最も小さく、この所定位置12から筒状本体13の径方向に沿って離れるほど大きくなっている。
【0036】
同様に、上記下側収容室21は、筒状本体13の内面と仕切板11の下面とによって区画される。下側収容室21は、上記下端開口部16を有し、くさび形の空間を構成している。つまり、下側収容室21は、上記下端開口部16から下方に向かって(すなわち、筒状本体13の下端から上端に向かって)漸次先鋭する空間を構成している。そして、下側収容室20の深さは、下端開口部16の所定位置22において最も小さく、この所定位置22から筒状本体13の径方向に沿って離れるほど大きくなっている。なお、この所定位置22は、上端開口部15の所定位置12に対する対角の位置である(図2参照)。
【0037】
また、本実施形態では、仕切板11の角度θが45°に設定されている。したがって、上側収容室20及び下側収容室21は、仕切板11を基準に上下に対称に形成されている。このように上側収容室20及び下側収容室21が上下に対称に配置されることによる作用効果については後述される。
【0038】
この飲用容器10は、典型的には図1ないし図3が示すように、筒状本体13の上端が上向きとなるようにテーブル上に載置される。また、使用者は、筒状本体13の上端が上向きとなるように、この飲用容器10を手で把持する。そして、この状態で、仕切板11は、筒状本体13の底板として機能し、上記上側収容室20が区画される。もっとも、筒状本体13の下端が上向きとなるようにテーブル上に載置されることも可能であり、使用者は、筒状本体13の下端が上向きとなるように、この飲用容器10を手で把持することもできる。この場合も、上記仕切板11が筒状本体13の底板として機能し、上記下側収容室21が区画される。
【0039】
図1ないし図3の状態では、上記上端開口部15を通じて上側収容室20に飲料等が注がれる。また、筒状本体12の下端が上向きにされるときは、上記下端開口部16を通じて下側収容室21に飲料等が注がれる。上記仕切板11が傾斜しているから、上側収容室20及び下側収容室21は、前述のようなくさび状空間を形成している。したがって、図1ないし図3の状態で、使用者が飲用容器10を手に持って上記所定位置12に口を付けることにより、使用者は、飲用容器10をわずかに傾けるだけで、上記飲料を少しずつ溢さずに口に運ぶことができる。なお、筒状本体13の下端が上向きとなるように飲用容器10が使用される場合は、使用者が飲用容器10を手に持って上記所定位置22に口を付けることにより、使用者は、飲用容器10をわずかに傾けるだけで、上記飲料を少しずつ溢さずに口に運ぶことができる。
【0040】
その結果、仮に使用者が手や首に障害を持っている場合であっても、手や首を大きく動かすことなく簡単且つ確実に飲料を飲むことができる。また、使用者が介護者であるときは、介護が非常に簡単になるという利点がある。
【0041】
本実施形態では、前述のように上側収容室20及び下側収容室20が仕切板11を基準に対称に形成されているので、筒状本体13の上端が上向きであっても下向きであっても、使用者は同様に飲用容器10を使用することができるという利点がある。
【0042】
また、本実施形態では、特に把手14が設けられているので、使用者は、把手14を掴んで飲用容器10を持つことができる。これにより、より簡単に飲料を口に運ぶことができる。なお、この把手14は、図1が示す位置に設けられているが、筒状本体13の径方向に対向するように2つの把手14が設けられていてもよい。また、いずれか一方の把手14が設けられているのみでもよい。
【0043】
図4は、本実施形態の変形例に係る飲用容器25の斜視図である。
【0044】
同図が示すように、本変形例に係る飲用容器25が上記飲用容器10と異なるところは、上記飲用容器10には把手14が設けられていたのに対し、本変形例に係る飲用容器25は、把手14が省略されている点である。なお、その他の構成については上記飲用容器10と同様である。
【0045】
この場合、使用者は、飲用容器25の筒状本体13を掴み、飲料を口に運ぶことができる。そして、仕切板11が前述のように傾斜しているので、上記実施形態に係る飲用容器10と同様の作用効果が奏される。
【0046】
上記実施形態に係る飲用容器10では、筒状本体13は円筒状に形成されているが、筒状本体13は、筒状に形成されていれば、他の形状であってもよいことは勿論である。
【0047】
<第2の実施形態>
【0048】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る飲用容器30の外観斜視図である。図6は、飲用容器30の外観斜視図であって、図5とは異なる方向から観た斜視図である。図7は、図5におけるVII−矢視図である。さらに、図8は、図5において上下が反転された状態の飲用容器30の外観斜視図であり、図9は、図8とは異なる方向から観た斜視図である。
【0049】
上記第1の実施形態に係る飲用容器10と同様に、飲用容器30は、特に手や首等に障害を持つ人や介護者又は被介護者が使用することを前提とするものである。この飲用容器30は、飲用容器10と同様に、清涼飲料その他の飲用物、ゼリー状の食品等を収容することができ、いわゆるカップないし食器として使用される。
【0050】
本実施形態に係る飲用容器30の特徴とするところは、第1仕切板31及び第2仕切板32が備えられており、これらは図7が示すように傾斜して配置されている点である。このように第1仕切板31及び第2仕切板32が配置されることにより、2つのキャビティ(すなわち、後述される上側収容室33及び下側収容室34)が飲用容器30の内部に形成される。そして、使用者は、飲用容器30の所定位置35に口をつけ、わずかに飲用容器30を傾けるだけで、上記上側収容室33に収容された飲料等を少量ずつ簡単に溢さずに飲むことができ、また、使用者は、飲用容器30の上下を反転させ、飲用容器30の所定位置36に口をつけ、わずかに飲用容器30を傾けるだけで、上記下側収容室34に収容された飲料等を少量ずつ簡単に溢さずに飲むことができるようになっている。つまり、この飲用容器30は、障害者等にとって非常に使いやすく、また、介護者にとっても使いやすいものである。
【0051】
以下、飲用容器30の構造について詳述される。
【0052】
飲用容器30は、筒状本体37と、上記第1仕切板31及び第2仕切板32とを備えている。本実施形態では、上記飲用容器10に設けられていた把手14(図1参照)が設けられていない。もっとも、これと同様の把手が筒状本体37に設けられていてもよいことは勿論である。筒状本体37、第1仕切板31及び第2仕切板32は、樹脂により一体的に形成されている。なお、これらが樹脂以外の材料で構成されてもよいことは勿論である。
【0053】
筒状本体37は、本実施形態では円筒状に形成されている。したがって、筒状本体37の上端に上端開口部38が設けられている。同様に、筒状本体37の下端に下端開口部39が設けられている。なお、本実施形態では、上記飲用容器10に設けられていた肉厚部17、18(図1参照)が設けられていない。もっとも、上記肉厚部17、18と同様の肉厚部が筒状本体37の上端周縁及び下端周縁に形成されていてもよい。
【0054】
上記第1仕切板31は、楕円形を呈する薄肉板である。図7が示すように、この第1仕切板31は、筒状本体37の中心軸40に対して角度θだけ傾斜して配置されている。この角度θは、30°〜60°に設置され得る。本実施形態では、角度θは45°に設定されている。一方、上記第2仕切板32は、半楕円形を呈する薄肉板である。この第2仕切板32は、第1仕切板31の下面側に配置されており、上記中心軸40に対して角度φだけ傾斜して配置されている。この角度φは、30°〜60°に設置され得る。上記第2仕切板32は、第1仕切板31と交差しており。本実施形態では、第1仕切板31の中央と交差している。なお、第2仕切板32は、第1仕切板31の中央以外の部位と交差していてもよいことは勿論である。
【0055】
第1仕切板31及び第2仕切板32が前述のように配置されることにより、筒状本体37の内部に上記上側収容室33及び下側収容室34が形成されている。この上側収容室33は、筒状本体37の内面と第1仕切板31の上面とによって区画される。上側収容室33は、上記上端開口部38を有し、くさび形の空間を構成している。つまり、上側収容室33は、上記上端開口部38から下方に向かって(すなわち、筒状本体33の上端から下端に向かって)漸次先鋭する空間を構成しており、この上側収容室33の深さは、上端開口部38の上記所定位置35において最も小さく、この所定位置35から筒状本体13の径方向に沿って離れるほど大きくなっている。
【0056】
同様に、上記下側収容室34は、筒状本体37の内面、第1仕切板31の下面及び第2仕切板32の下面とによって区画される。このように、下側収容室34は、第1仕切板31と第2仕切板32とが協働して区画形成される。この下側収容室34は、上記下端開口部39を有し、くさび形の空間を構成している。つまり、下側収容室34は、上記下端開口部39から上方に向かって、具体的には、筒状本体13の下端から上記第1仕切板31と第2仕切板32とが交差する部位41に向かって漸次先鋭する空間を構成している。そして、下側収容室34の深さは、下端開口部39の所定位置36、44において最も小さく、この所定位置36、44から筒状本体13の径方向に沿って離れるほど大きくなっている。なお、この所定位置44は、上端開口部38の所定位置35に対する対角の位置であり、上記所定位置36は、下端開口部39において上記所定位置44と径方向に対向する位置である(図7参照)。
【0057】
本実施形態では、第1仕切板31の角度θが45°に設定されている。また、第2仕切板32は、第1仕切板31の中央と交差しており、上記交差する部位41は、真直な直線を形成する。本実施形態では、第2仕切板32が前述のように第1仕切板31と交差することにより、第2仕切板32の角度φは45°となっている。また、第2仕切板32が第1仕切板31の中央と交差することによって、下側収容室34は、いわゆるすり鉢状に形成されている。下側収容室34がすり鉢状に形成されることによる作用効果については後述される。
【0058】
また、本実施形態では、筒状本体37の外周面42の一部が切り取られており、図5ないし図9が示すようなV字状の窪み43が形成されている。具体的には、第1仕切板31及び第2仕切板32が前述のように配置されることにより、当該第1仕切板31及び第2仕切板32のそれぞれの縁部が筒状本体37と交差する仮想線によって上記外周面42が切り取られている。これにより、上記筒状本体37に上記V字状の窪み43が形成されている。この窪み43が形成されることによる作用効果は、後述される。なお、上記外周面42が切り取られることなく、上記窪み43が形成されていなくてもよい。
【0059】
この飲用容器30は、上記第1の実施形態に係る飲用容器10と同様に、典型的には図1が示すように、筒状本体37の上端が上向きとなるようにテーブル上に載置される。また、使用者は、筒状本体37の上端が上向きとなるように、この飲用容器30を手で把持する。そして、この状態で、第1仕切板31は、筒状本体37の底板として機能し、上記上側収容室33が区画される。もっとも、筒状本体37の下端が上向きとなるようにテーブル上に載置されることも可能であり、使用者は、筒状本体37の下端が上向きとなるように、この飲用容器30を手で把持することもできる。この場合は、上記第1仕切板31及び第2仕切板32が筒状本体37の底板として機能し、上記下側収容室34が区画される。
【0060】
図5ないし図7の状態では、上記上端開口部38を通じて上側収容室33に飲料が注がれる。上記第1仕切板31が傾斜しているから、上側収容室33は、前述のようなくさび状空間を形成している。したがって、使用者が飲用容器30を手に持って上記所定位置35に口を付けることにより、使用者は、飲用容器30をわずかに傾けるだけで、上記飲料を少しずつ溢さずに口に運ぶことができる。
【0061】
また、図8及び図9の状態では、上記第2仕切板32が傾斜しているから、下側収容室34は、前述のようなくさび状空間を形成している。この下側収容室34は、すり鉢状を呈しているから、この下側収容室34は、内容物としてゼリー状のものを収容するのに便利である。そして、使用者が飲用容器30を手に持って上記所定位置36又は所定位置44に口を付けることにより、使用者は、飲用容器30をわずかに傾けるだけで、上記内容物を少しずつ溢さずに口に運ぶことができる。
【0062】
その結果、仮に使用者が手や首に障害を持っている場合であっても、手や首を大きく動かすことなく簡単且つ確実に飲料を飲むことができる。また、使用者が介護者であるときは、介護が非常に簡単になるという利点がある。
【0063】
本実施形態では、筒状本体37の外周面42に上記V字状の窪み43形成されているので、使用者が飲用容器30を把持する際に親指を上記窪み43に進入させることができる。これにより、使用者は、飲用容器30をきわめて容易にに持つことができる。
【0064】
図10は、本実施形態の第1の変形例に係る飲用容器50の斜視図である。図11は、飲用容器50の外観斜視図であって、図10とは異なる方向から観た斜視図である。
【0065】
本変形例に係る飲用容器50が上記飲用容器30と異なるところは、筒状本体37の所定部位に凹部51、52が設けられている点である。なお、その他の構成については上記飲用容器30と同様である。
【0066】
この凹部51、52は、同図が示すように筒状本体37の外周面42であって、第1仕切板31と第2仕切板32とが交差する部位を中心として、当該部位の周囲に形成されている。凹部51は円形を呈し、その深さは1mm〜10mm程度に設定される。
【0067】
使用者が筒状本体37を把持したときは、親指が窪み43に進入し、第1仕切板31と第2仕切板32とが交差する線に沿って配置され、且つ人差し指、中指等が筒状本体37の外周面42に沿わされるが、上記凹部51、52が設けられることにより、親指と人差し指との間の部位が上記凹部51に沿って配置されることになる。これにより、使用者にとって飲用容器50の握り心地が向上する。
【0068】
図12は、本実施形態の第2の変形例に係る飲用容器60の斜視図である。図13は、飲用容器60の外観斜視図であって、図12とは異なる方向から観た斜視図である。図14は、図12におけるXIV−矢視図である。さらに、図15は、図12において上下が反転された状態の飲用容器60の外観斜視図であり、図16は、図15とは異なる方向から観た斜視図である。
【0069】
本変形例に係る飲用容器60が上記飲用容器30と異なるところは、筒状本体37の外周面42に一対の平面61、62が形成されている点である。なお、その他の構成については上記飲用容器30と同様である。
【0070】
これらの図が示すように、平面61、62は、筒状本体37の下端部に設けられており、互いに向かい合わせの状態となっている。各平面61、62は、筒状本体37の径方向外方に向かって漸次接近するように配置されており、このため、筒状部材37の下端部は、径方向外方に向かって漸次先鋭する形状となっている。
【0071】
図15及び図16が示すように、筒状本体37の下端部が上方に配置され、下側収容室34が使用される場合、上記平面61、62が設けられることにより、筒状本体37の下端部に飲み口63が形成される。これにより、使用者は、特に内容物がゼリー状の食品等である場合に、より一層簡単に内容物を口に運ぶことができる。なお、本変形例では、筒状本体37の下端部に上記平面61、62が設けられているが、これら平面61、62が筒状本体37の上端部に設けられていてもよいことは勿論である。
【0072】
図17は、本実施形態の第3の変形例に係る飲用容器70の斜視図である。図18は、飲用容器70の外観斜視図であって、図17とは異なる方向から観た斜視図である。
【0073】
本変形例に係る飲用容器70が上記飲用容器30と異なるところは、上記第2の変形例と同様に、筒状本体37の外周面42に一対の平面61、62が形成されている点、及び上記第1の変形例で開示されたように、筒状本体37の所定部位に凹部51、52が設けられている点である。なお、その他の構成については上記飲用容器30と同様である。この変形例に係る飲用容器70では、使用者が飲用容器70を持ちやすく、しかも、内容物がゼリー状の食品等である場合であっても、きわめて簡単に内容物を口に運ぶことができる。
【0074】
本実施形態に係る飲用容器30、50、60、70では、筒状本体37は円筒状に形成されているが、筒状本体37は、筒状に形成されていれば、他の形状であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10・・・飲用容器
11・・・仕切板
12・・・所定位置
13・・・筒状本体
14・・・把手
15・・・上側開口部
16・・・下側開口部
17・・・肉厚部
19・・・中心軸
20・・・上側収容室
21・・・下側収容室
22・・・所定位置
25・・・飲用容器
30・・・飲用容器
31・・・第1仕切板
32・・・第2仕切板
33・・・上側収容室
34・・・下側収容室
35・・・所定位置
36・・・所定位置
37・・・筒状本体
38・・・上端開口部
39・・・下端開口部
40・・・中心軸
41・・・交差する部位
42・・・外周面
43・・・窪み
44・・・所定位置
50・・・飲用容器
51・・・凹部
52・・・凹部
60・・・飲用容器
61・・・平面
62・・・平面
63・・・飲み口
70・・・飲用容器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端及び下端にそれぞれ上端開口部及び下端開口部が設けられた筒状本体と、
当該筒状本体の内部に上記上端開口部を有する上側収容室及び上記下端開口部を有する下側収容室を区画するように配置された仕切板とを備え、
当該仕切板は、上記上側収容室及び下側収容室がくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜している飲用容器。
【請求項2】
上記上側収容室及び下側収容室は、上記仕切板を基準に対称に形成されている請求項1に記載の飲用容器。
【請求項3】
上記筒状本体に把手が設けられている請求項1又は2に記載の飲用容器。
【請求項4】
上端及び下端にそれぞれ上端開口部及び下端開口部が設けられた筒状本体と、
当該筒状本体の内部に上記上端開口部を有する上側収容室を区画するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜して配置された第1仕切板と、
当該第1仕切板と協働して上記筒状本体の内部に上記下端開口部を有する下側収容室を区画するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜し且つ上記第1仕切板と交差して配置された第2仕切板とを備え、
上記第1仕切板は、上記上側収容室が上記上端から上記下端に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜しており、
上記第2仕切板は、上記下側収容室が上記下端から上記第1仕切板と交差する部位に向かって漸次先鋭するくさび状空間を形成するように上記筒状本体の中心軸に対して傾斜している飲用容器。
【請求項5】
上記第1仕切板及び第2仕切板により、上記筒状本体の外周面にV字状の窪みが区画形成されている請求項4に記載の飲用容器。
【請求項6】
上記第2仕切板は、上記第1仕切板の中央と交差している請求項4又は5に記載の飲用容器。
【請求項7】
上記筒状本体の外周面であって上記上端部又は下端部の少なくともいずれか一方の外周面を形成する部位は、径方向に漸次先鋭する一対の平面を備えている請求項4から6のいずれかに記載の飲用容器。
【請求項8】
上記筒状本体の外周面に、上記第1仕切板と第2仕切板とが交差する部位を中心とする凹部が形成されている請求項5から7のいずれかに記載の飲用容器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−95489(P2013−95489A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240544(P2011−240544)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【特許番号】特許第4959853号(P4959853)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(311014118)
【出願人】(311014107)
【Fターム(参考)】