説明

飲食品容器用密封蓋、飲食品容器および飲食品包装体

【課題】容器を傾けて内の飲食品、例えば飲料を飲むさいに飲料が容器外に染み出して手や衣服等を汚すおそれがないようにする飲食品容器用密封蓋を提供する。
【解決手段】飲食品容器用密封蓋は、蓋(3)全体におけるエンボス加工部(26)の範囲が、蓋(3)を前後に2分する帯状のものであり、その前後両側の2つの平坦部(27)において、前側のものは、容器本体(2)のフランジ(1)上面への融着予定部(28)のうち、蓋連通口開放予定部(29)に対応する部分(30)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒ、紅茶、スープ等のホット飲料に代表される各種の飲食品を収納する飲食品容器に用いられる飲食品容器用密封蓋、飲食品容器および飲食品包装体に関する。
【0002】
なお、この明細書において、蓋の前とは、蓋連通口開放予定部のある側をいい、後とはその反対側をいうものとする。また、飲食品容器において、前とは、飲み口のある側をいい、後とはその反対側をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
口部にフランジを有するコップ状容器本体と、容器本体のフランジ上面に融着せられた蓋と、容器本体の上端に取り付けられかつ頂壁に設けられている開口部に揺動自在に配された蓋連通口形成部材および周壁下端に容器本体の上端に被せ止めるための垂直断面逆L形裾部を有し、頂部に飲み口を有する短筒状キャップとよりなる飲食品容器は、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0004】
ところで、容器本体に飲食品、例えば飲料を充填し、これを蓋で密封する場合、多数積重ねられた蓋を一枚ずつ機械で飲料の充填された容器本体に供給する必要がある。このさい、蓋が平坦面であると相互に付着して下にある蓋から剥がしにくくなるおそれがあるため、蓋全体に目的は異なるが下記特許文献3に開示されているようなエンボス加工を施し、蓋どうしが相互に付着することなく、蓋を一枚ずつ機械で取り易いようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲食品容器の密封蓋を開封して内容物である飲食品、例えば飲料を飲むさいは、キャップにある蓋連通口形成部材で蓋に連通口をあけ、飲食品容器を傾けてキャップの飲み口より蓋の連通口を通して流れ出る容器本体内の飲料を通常数回に分けて飲む。ところで、蓋全体にはエンボス加工が施されているため、キャップの垂直断面逆L形裾部の水平部とその下の蓋のエンボス加工部における凹凸部のうちの凹部との間に隙間が存在する。飲むさいに、飲食品容器を飲み口のある方向すなわち蓋の連通口のある前側方向に傾けるが、最初1,2回飲んださいに前記隙間に飲料が流入して存在することになり、飲食品容器を元の水平状態に戻すと、この飲料がそこに残る。その後再び飲料を飲むために飲食品容器を前側に傾けると、前記隙間に残った飲料が飲食品容器外に染み出し、手や衣服等を汚すおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、飲食品容器を傾けて内の飲食品、例えば飲料を飲むさいに飲料が容器外に染み出して手や衣服等を汚すことのないようにする飲食品容器用密封蓋および飲食品容器を提供することにある。また、本発明はこのような飲食品容器を利用した飲食品包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明による飲食品容器用密封蓋は、口部にフランジを有するコップ状容器本体と、容器本体の上端に取り付けられかつ頂壁に設けられている開口部に揺動自在に配された蓋連通口形成部材および周壁下端に容器本体の上端に被せ止めるための垂直断面逆L形裾部を有する短筒状キャップを備えた飲食品容器において、下面に熱封緘材層を有しかつ容器本体のフランジ上面に融着せられるアルミニウム箔製の蓋であって、蓋全体がエンボス加工部とエンボス加工の施されていない平坦部の2つの部分よりなり、エンボス加工部の範囲は、複数の蓋を重ねたさいに相互に付着し難くし得る大きさであり、この範囲以外が平坦部であり、かつ平坦部は容器本体のフランジ上面への融着予定部のうち蓋連通口開放予定部に対応する部分を含んでいるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の飲食品容器用密封蓋において、エンボス加工部の範囲が、蓋を前後に2分する帯状のものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1記載の飲食品容器用密封蓋において、エンボス加工部の範囲が、蓋の後部を含む欠円形のものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1記載の飲食品容器用密封蓋において、平坦部の範囲が、容器本体のフランジ上面への融着予定部を含む環状のものである。
請求項5の発明による飲食品容器は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の飲食品容器用密封蓋を用いたものである。
請求項6の発明による飲食品包装体は、請求項5記載の飲食品容器に飲食品を充填密封してなる飲食品包装体である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明による飲食品容器用密封蓋は、口部にフランジを有するコップ状容器本体と、容器本体の上端に取り付けられかつ頂壁に設けられている開口部に揺動自在に配された蓋連通口形成部材および周壁下端に容器本体の上端に被せ止めるための垂直断面逆L形裾部を有する短筒状キャップよりなる飲食品容器において、下面に熱封緘材層を有しかつ容器本体のフランジ上面に融着せられるアルミニウム箔製の蓋であって、蓋全体がエンボス加工部とエンボス加工の施されていない平坦部の2つの部分よりなり、エンボス加工部の範囲は、複数の蓋を重ねたさいに相互に付着し難くし得る大きさであるから、容器本体に飲食品、例えば飲料を充填し、これを蓋で密封する場合、多数積重ねられた蓋を一枚ずつ機械で円滑に飲料の充填された容器本体に供給することができる。そして、このエンボス加工部の範囲以外が平坦部であり、かつこの平坦部は容器本体のフランジ上面への融着予定部のうち蓋連通口開放予定部に対応する部分を含んでいるものであるから、容器本体を蓋で密封しかつキャップを被せた場合、キャップの垂直断面逆L形裾部の水平部と蓋連通口に対応する蓋の容器本体のフランジに対する融着部分との間には飲料が流入する隙間の生じることがなく、ひいては飲料の残存も生じないから、飲料が容器外に染み出し、手や衣服等を汚すというおそれは全くない。
また請求項6の飲食品包装体は、請求項5記載の飲食品容器を用いたものであるため、容器本体を蓋で密封しかつキャップを被せた場合、キャップの垂直断面逆L形裾部の水平部と蓋連通口に対応する蓋の容器本体のフランジに対する融着部分との間に飲食品、例えば飲料が流入する隙間の生じることがなく、ひいては飲料の残存も生じないから、飲料が容器外に染み出し、手や衣服等を汚すというおそれは全くない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】飲料容器の上半部の斜視図である。
【図2】図1のII−II線にそう断面図である。
【図3】本発明の実施形態1を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV 線にそう断面図である。
【図5】本発明の実施形態2を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態3を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は、口部にフランジ(1)を有するコップ状容器本体(2)と、下面に熱封緘材層を有しかつ容器本体(2)のフランジ(1)上面に融着せられたアルミニウム箔製の蓋(3)と容器本体(2)の上端に取り付けられかつ頂壁(4)に設けられている開口部(5)に揺動自在に配された蓋連通口形成部材(6)および周壁(7)下端に容器本体(2)の上端に被せ止めるための垂直断面逆L形裾部(8)を有する短筒状キャップ(9)とを備えたホット飲料容器を示す。
【0014】
容器本体(2)は、ポリプロピレンまたはポリエチレンのような合成樹脂で形成せられているが、アルミニウム箔芯層とその内面に形成せられた未延伸ポリプロピレン被覆層とその外面に形成せられた未延伸ポリプロピレン被覆層よりなる積層シートを冷間多段深絞り成形することにより形成せられたものでもよい。
【0015】
キャップ(9)はポリプロピレン製である。開口部(5)はキャップ(9)の頂壁(4)の前側にあり、これに続いて径方向に頂壁(4)の後端に至るまで凹陥部(10)が形成せられている。開口部(5)の両側には、凹陥部(10)の両側壁(11)と面一でかつ周壁(7) と連なる垂下壁(12)が設けられている。凹陥部(10)の底壁(13)の前端に立上がり部(14)が設けられ、立上がり部(14)の上端に蓋連通口形成部材(6)がこれと一体にかつ頂壁(4)の上面より僅か下方位置に水平状に設けられている。蓋連通口形成部材(6)において、立上がり部(14)より前側が蓋開封部(15)であり、同後側が操作レバー(16)となっている。立上がり部(14)の高さの中程が水平一文字に薄肉状となされ、ここを揺動支点として図2の鎖線で示すように蓋開封部(15)と操作レバー(16)がシーソー状に揺動し得るようになっている。蓋開封部(15)と操作レバー(16)の下面は横断面凹弧状に窪まされており、蓋開封部(15)の先端は特に下前向きに曲げられるとともに、同先端から両側にかけて尖った刃状に形成せられている。蓋開封部(15)には、ほぼその全体にわたる大きさの長方形の飲料流出窓(17)があけられている。操作レバー(16)の上面には、ほぼその全体に長方形の指掛け用窪み(18)が形成せられている。また、操作レバー(16)の後部両側面には、蓋連通口形成部材(6)を常態において水平に維持するために、凹陥部(10)の両側壁(11)に設けられた垂直突条(19)に嵌まる垂直溝(20)が形成せられている。垂直突条(19)と垂直溝(20)の幅と形状は、蓋連通口形成部材(6)の揺動を阻害しないようなものとなされている。
【0016】
キャップ(9)の裾部(8)の水平壁(21)下面に垂直断面斜め下内向きの蓋押さえ環状垂下突条(22)が設けられており、蓋(3)にキャップ(9)の開口部(5)との連通口が形成せられた後、容器本体(2)とキャップ(9)との隙間から飲料が漏れ出るのを阻止する。蓋(3)に連通口が形成せられると、キャップ(9)の周壁(7)の前縁部分と開口部(5)の両側垂下壁(12)で囲まれる部分が飲み口となる。
【0017】
容器本体(2)のフランジ(1)の上面に融着せられる蓋(3)のアルミニウム箔(23)下面の熱封緘材層(24)としては、ポリプロピレンフィルムが用いられているが、ポリエチレンフィルムを用いてもよい。アルミニウム箔(23)の上面に設けられている保護合成樹脂層(25)としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられている(図4参照)。また、蓋(3)は落とし蓋であるが、全体が平らなものでもよい。
【0018】
容器本体(2)内の飲料を飲むさいは、同図2の鎖線で示すように、蓋連通口形成部材(6)の後側の操作レバー(16)を持ち上げて同前側の蓋開封部(15)を蓋(3)に向かって降下させ、蓋(3)の前部を平面からみてコ字形に切り開き、キャップ(9)の開口部(5)に連通する連通口を得る。そして、飲み口に口をつけ、キャップ(9)付き容器本体(2)を斜めに持ち上げれば、容器本体(2)内の飲料は、蓋(3)の連通口を経てキャップ(9)の開口部(5)から流出する。
【0019】
つぎに、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、いずれも蓋(3)全体がエンボス加工部とエンボス加工の施されていない平坦部の2つの部分よりなり、かつエンボス加工部の範囲は、複数の蓋(3)を重ねたさいに相互に付着し難くし得る大きさのものである。
〔実施形態1〕
【0020】
この実施形態のものは、図3に示すもので、蓋(3)全体におけるエンボス加工部(26)の範囲が、蓋(3)を前後に2分する帯状のものであり、その前後両側の2つの平坦部(27)において、前側のものは、容器本体(2)のフランジ(1)上面への融着予定部(28)のうち、蓋連通口開放予定部(29)に対応する部分(30)を含んでいる。
【0021】
蓋(3)に上記帯状のエンボス加工部(26)を形成するには、ロールの中央にエンボスを有するエンボス加工用ロールを使用し、シート状蓋材の幅の中央にエンボス加工を長さ方向に施した後、これより所要数の蓋(3)を打ち抜き金型で打ち抜き成形する。
〔実施形態2〕
【0022】
この実施形態のものは、図5に示すもので、蓋(3)全体におけるエンボス加工部(31)の範囲が、蓋(3)の後部を含む欠円形のものであり、これ以外の欠円形部分の範囲が平坦部(32)である。この平坦部(32)は、容器本体(2)のフランジ(1)上面への融着予定部(28)のうち、蓋連通口開放予定部(29)に対応する部分(30)を含んでいる。
【0023】
蓋(3)に上記欠円形のエンボス加工部(31)を形成するには、ロールの片側にエンボスを有するエンボス加工用ロールを使用し、シート状蓋材の幅の片側にエンボス加工を長さ方向に施した後、これより所要数の蓋(3)を打ち抜き金型で打ち抜き成形する。
〔実施形態3〕
【0024】
この実施形態のものは、図6に示すもので、蓋(3)全体における平坦部(33)の範囲が、容器本体(2)のフランジ(1)上面への融着予定部(28)を含む融着予定部(28)より幅の広い環状のものであり、これ以外の円形部分が、エンボス加工部(34)である。前記平坦部(33)は、容器本体(2)のフランジ(1)上面への融着予定部(28)のうち、蓋連通口開放予定部(29)に対応する部分(30)を含んでいる。
【0025】
蓋(3)に上記円形のエンボス加工部(34)を形成するには、エンボス加工部(34)に相当するエンボス範囲を有しその周囲が環状の平坦部である打ち抜き金型を用い、蓋材を打ち抜いたさいにエンボス加工部(34)と平坦部(33)を同時に得る。
【0026】
以上説明した蓋(3)を用いれば、本発明の飲食品包装体を得ることが可能である。すなわち、図2において、あらかじめ容器本体(2)の内部に飲食品(図示せず)を充填し、本発明の蓋(3)を被冠し、蓋(3)とフランジ(1)とを融着して密封し、さらに短筒状キャップ(9)をかぶせれば、本発明の飲食品包装体を得ることができる。
【0027】
なお以上の実施形態においては、飲食品としてホット飲料を例示して説明しているが、本発明における飲食品の範囲はこれに限られるものではなく、常温で流通されるものや冷蔵で流通されるものも包含される。また飲食品の形態としては流動性を有する形態であることが好ましく、液状、半流動状、固液混合状などの各種の形態を例示することができる。
【符号の説明】
【0028】
(1) フランジ
(2) コップ状容器本体
(3) 蓋
(4) キャップの頂壁
(5) キャップの開口部
(6) 蓋連通口形成部材
(7) キャップの周壁
(8) キャップの周壁下端の垂直断面逆L形裾部
(9) キャップ
(23) 蓋のアルミニウム箔
(24) 蓋の熱封緘材層
(26) (31) (34) エンボス加工部
(27) (32) (33) 平坦部
(28) フランジ上面への融着予定部
(29) 蓋連通口開放予定部
(30) フランジ上面への融着予定部のうち、蓋連通口開放予定部に対応する部分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2007−112501号公報
【特許文献2】特開2007−246130号公報
【特許文献3】特公昭55−9347号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部にフランジを有するコップ状容器本体と、容器本体の上端に取り付けられかつ頂壁に設けられている開口部に揺動自在に配された蓋連通口形成部材および周壁下端に容器本体の上端に被せ止めるための垂直断面逆L形裾部を有する短筒状キャップを備えた飲食品容器において、下面に熱封緘材層を有しかつ容器本体のフランジ上面に融着せられるアルミニウム箔製の蓋であって、蓋全体がエンボス加工部とエンボス加工の施されていない平坦部の2つの部分よりなり、エンボス加工部の範囲は、複数の蓋を重ねたさいに相互に付着し難くし得る大きさであり、この範囲以外が平坦部であり、かつ平坦部は容器本体のフランジ上面への融着予定部のうち蓋連通口開放予定部に対応する部分を含んでいる飲食品容器用密封蓋。
【請求項2】
エンボス加工部の範囲が、蓋を前後に2分する帯状のものである請求項1記載の飲食品容器用密封蓋。
【請求項3】
エンボス加工部の範囲が、蓋の後部を含む欠円形のものである請求項1記載の飲食品容器用密封蓋。
【請求項4】
平坦部の範囲が、容器本体のフランジ上面への融着予定部を含む環状のものである請求項1記載の飲食品容器用密封蓋。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の飲食品容器用密封蓋を用いた飲食品容器。
【請求項6】
請求項5記載の飲食品容器に飲食品を充填密封してなる飲食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168090(P2010−168090A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14053(P2009−14053)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】