説明

飲食物搬送用収容体

【課題】収容ハウジングを触ることなく食品を載せた皿を収容ハウジング内への収納乃至収容ハウジング内からの取り出しが簡単に行なえる飲食物搬送用収容体を提供する。
【解決手段】飲食物搬送装置の搬送路に載せて用いる飲食物搬送用収容体であって、飲食物が盛られた皿を収容するための収容室と前記収容室の出入口とを備えたボックス状の収容ハウジングと、前記出入口を開閉する扉と、前記扉と連動して、前記収容室内への皿の収容時、前記皿の当接により作動して前記扉を閉鎖させる連動手段とが備えられ、前記収容ハウジングの側壁には、前記出入口側から前記皿の収容方向に直線状に延びて、前記皿の周縁部を前記収容ハウジング外に突出させるためのガイド孔が設けられ、また前記連動手段は、前記収容室内への前記皿の収容に伴う前記皿の当接により揺動する揺動体と、この揺動体と前記扉とを弾性的に連動連結する連動部材とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店内の各座席に飲食物を搬送するための搬送路が備えられた飲食物搬送装置に用いる飲食物搬送用収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転寿司と称される飲食店では、店内に多数配置されるテーブルやカウンターに沿って循環移動する搬送路を備えた飲食物搬送装置が設置されている。
【0003】
以上の飲食店では、調理人が、厨房室内にてシャリ玉上に寿司のネタを載せて握り、出来上がった寿司を皿上に載せた上で飲食物搬送装置の搬送路上に移し替え、客室の各テーブルに順次搬送する一方、顧客は、順次送られてくる複数種類の寿司を好みに応じて搬送路から適宜取り出して食するようにしている。
【0004】
ところで以上の搬送装置により搬送される寿司は、搬送路上を所定の速度で搬送されることから、乾燥し易く、また他の客に誤って触れることも考えられるので、寿司を衛生的に提供することや寿司の乾燥を防止することが課題となっている。
【0005】
そこで従来では、前記した不具合を解消するために、寿司を盛った皿に別途形成したカバー部材を被せた上で、皿を搬送装置の搬送路上に送り込むようにしている。(特許文献1参照)
しかしながら前述の方法では、調理人がカバー部材を直接手に持って、寿司を盛った皿上にそのカバー部材を被せた上で、皿をカバー部材とともに搬送路上に載せ替えねばならないし、また顧客にあっても搬送されてきた皿をカバー部材とともに搬送路から降ろした後、カバー部材を直接手で持って皿から取り外さねばならず、全体として面倒である。
【0006】
しかもカバー部材の取り付け乃至取り外しに際して、調理人や顧客が、その都度、手でカバー部材をつかんで、皿からのカバー部材の取り外しや、皿へのカバー部材の取り付けを行なうので、カバー部材が汚れる不具合があるし、また顧客が皿から取り外したカバー部材がテーブル上に残ると、テーブル上が狭くなる不具合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−299553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みて開発したものであって、目的とするところは、収容ハウジングを触ることなく食品を載せた皿を収容ハウジングに収納乃至収容ハウジングからの取り出しが簡単に行なえる飲食物搬送用収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、店内の各座席に飲食物を搬送するための搬送路が備えられた飲食物搬送装置の前記搬送路に載せて用いる飲食物搬送用収容体であって、
飲食物が盛られた皿を収容するための収容室と前記収容室の出入口とを備えたボックス状の収容ハウジングと、前記出入口を開閉する扉と、前記扉と連動して、前記収容室内への皿の収容時、前記皿の当接により作動して前記扉を閉鎖させる連動手段とが備えられ、前記収容ハウジングの側壁には、前記出入口側から前記皿の収容方向に直線状に延びて、前記皿の周縁部を前記収容ハウジング外に突出させるためのガイド孔が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の連動手段が、
前記収容室内への前記皿の収容に伴う前記皿の当接により揺動する揺動体と、この揺動体と前記扉とを弾性的に連動連結する連動部材とから成り、
前記揺動体の揺動により前記連動部材を介して扉を閉鎖方向に揺動させるとともに、前記扉に所定値以上の付加が加わった時には、前記連動部材の弾性変形により前記揺動体のみを揺動させるようにしていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の飲食物搬送用収容体において、扉の開放時、前記扉を開放位置に付勢させるための付勢手段が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、収容室への収容により、皿4に盛られた寿司Fが不用意に乾燥するのを抑制することが出来るし、また客が誤って寿司Fに触れるようなことも防ぐことが出来るのは勿論のこと、皿の出し入れに際して、皿の周縁部を盛って皿を収容室に収容するか、若しくは収容室から突出している皿の周縁部を手で持って皿を出入口側に引き出すだけで、簡単に皿の出し入れが行なえ、しかも皿4の出し入れに際しては、収容ハウジング6に直接手を触れる必要がないので、収容ハウジング6が不用意に汚れるようなことも防止出来る。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、皿を収容室に収容する途中において、閉鎖方向に揺動する扉が皿の周縁に当接した場合でも、連動部材の弾性変形により揺動体の揺動が許容されるので、例えば皿の収容途中においても皿が扉と揺動体との間に挟み込まれて収容室内に収容出来なくなるような事態を招くことがなく、皿を収容室に円滑に収容することが出来る。
【0014】
また請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、扉の開放時、付勢手段により扉を開放位置に付勢させて、扉を確実且つ安定的に開いておくことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる飲食物搬送用収容体の側面図。
【図2】同、一部を切り欠いて示す平面図。
【図3】図1におけるA−A線拡大断面図。
【図4】図1におけるB−B線拡大断面図。
【図5】図1におけるC−C線拡大断面図。
【図6】図1におけるD−D線拡大断面図。
【図7】皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図。
【図8】皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図。
【図9】皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図。
【図10】皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図。
【図11】皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図。
【図12】皿を収容室に収容した状態を示す飲食物搬送用収容体の側面図。
【図13】皿を収容室に収容した状態を示す飲食物搬送用収容体の平面図。
【図14】図13におけるE−E線断面図。
【図15】飲食物搬送装置が備えられた店舗内を平面的に表した説明図。
【図16】搬送路上に飲食物搬送用収容体が置かれた状態を示す飲食物搬送装置の要 部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
まず図1は飲食物搬送用収容体の側面図、図2は飲食物搬送用収容体の一部を切り欠いて示す平面図、図7〜図11は皿の収容過程を示す飲食物搬送用収容体の作動説明図、図12は皿を収容室に収容した状態を示す飲食物搬送用収容体の側面図、図13は皿を収容室に収容した状態を示す飲食物搬送用収容体の平面図である。
【0018】
また図15は、 客室S2に設置するカウンターテーブル1a及び複数の脚付きテーブル1bと、厨房室S1の前面乃至各テーブル1a・1bに沿って配置した仕切りハウジング2と、この仕切りハウジング2上に周回状に設けられて、厨房室S1内で本発明にかかる飲食物搬送用収容体5を介して寿司Fが盛り合された容器としての皿4を各テーブル1a・1bに循環搬送するための搬送路3を設けた寿司店舗内を平面的に表したものである。
【0019】
仕切りハウジング2は、図16に示すように、所定間隔開けて相対向する側壁21・22と、これら両側壁21・22の上端及び下端を結ぶ上壁23及び底壁(図示せず)とから断面ボックス状に形成されたものであって、厨房室S1の前面に沿って配設されて厨房室S1と客室S2とを区画する第1ハウジング部2aと、第1ハウジング部2aの長手方向両端から屈曲して客室S2内に平行に延びる第2、第3ハウジング部2b・2cとから成り、第2、第3ハウジング部2b・2cにおける側壁21・22の外側方には、前記したカウンターテーブル1aと脚付きテーブル1bが配置されている。
【0020】
搬送路3は、各ハウジング部2a・2b・2cの上壁23に設けた凹所31と、この凹所31の幅方向両側に設けられた案内壁32に案内されながら凹所31内をモータ駆動により循環移動する無端状のフラットチエンコンベア33が備えられている。
【0021】
以上の構成からなる搬送装置10にあっては、例えば厨房室S1において寿司Fを盛った皿4が厨房室S1の前面を移動するフラットチエンコンベア33上に順次載せられて、このフラットチエンコンベア33を介して客室S2内の各テーブル1a・1bに循環搬送され、各テーブルの客が、好みの寿司が収容された後記構造の飲食物収容体皿4をフラットチエンコンベア33から適宜取り出して食事をするようにしている。
【0022】
なお皿4は、既知の通り、平面視円形の皿板41と、この皿板41の下面から一体に突設する円筒状の高台42から構成されている。
【0023】
本発明にかかる飲食物搬送用収容体は、前述の搬送路3を構成するフラットチエンコンベア33に載せて用いるものであり、次にこの飲食物搬送用収容体を詳説する。
【0024】
図において符号5で示す飲食物搬送用収容体は、基本的には、
飲食物が盛られた皿4を収容するための収容室60を備えた収容ハウジング6と、
収容ハウジング6の出入口65を開閉する扉7と、
収容室60内への皿4の収容に伴って扉7を閉鎖させるための連動手段8から構成されている。
【0025】
収容ハウジング6は、平面視略長方形の底板部61と、この底板部61の正面側を除いた左右及び背面側の3方を囲む側板部62a・62b・62cと、底板部61と所定間隔開けて対向する天板部63が備えられ、これら底板部61と側板部62a・62b・62cと天板部63により、皿4の収容室60が収容ハウジング6内に画成されている。
【0026】
以上の収容ハウジング6は、透明の合成樹脂材料から形成されて、ハウジン外から収容室60内が見えるようにしている。
【0027】
そして左右の側板部62a・62bには、図1にも示すように、一端が側板部62a・62bにおける前記出入口65側端縁から背面側に向かって直線状に延びるスリット状の ガイド孔64が開設されている。
【0028】
このガイド孔64の幅Wは、皿板41の周縁部が自由に挿通可能なように皿板41の厚さよりもわずかに広く形成されている。
【0029】
出入口65を開閉する扉7は、底板部61の前端縁に支持軸70を介して揺動可能に支持されている。
【0030】
具体的には、収容ハウジング6における底板部61の前端左右には円筒状の第1枢支筒部66が設けられ、また扉7の下端中央には円筒状の第2枢支筒部71が設けられている。
【0031】
そして支持軸70は第1枢支筒部66及び第2枢支筒部71にそれぞれ回転自由に挿通され、扉7は、底板部61に対して回転可能に取り付けられた支持軸70に対して回転自由に支持されて、収容ハウジング6に対して出入口65が開かれる展開位置と出入口65が閉じられる閉鎖位置との間で揺動可能となっている。
【0032】
連動手段8は、支持軸70の長さ方向一端部に設けられた杆状の揺動体81と、扉7を支持軸70に対して弾性的に連動連結させるための連動部材を構成するトーション式のコイルスプリング82から構成されている。
【0033】
揺動体81は、図1及び図2に示すように、支持軸70の長さ方向一端に一体形成され、支持軸70の軸方向に対して略90度屈曲する方向に直線状に延びて、その遊端部は湾曲している。
【0034】
コイルスプリング82は、図5に示すように、支持軸70に遊挿され、その長さ方向一端部に設けた第1係止脚82aは、支持軸70に設けた貫通孔70aに嵌合されるとともに、長さ方向他端部に設けた第2係止脚82bは、扉7に係止されており、従って支持軸70の回転に伴い、扉7はコイルスプリング82を介して揺動する。
【0035】
また以上の実施形態では、扉7を開放位置に付勢させるための付勢手段としてコイル状としたトーション式のリターンスプリング85が備えられている。
【0036】
このリターンスプリング85は、図6に示すように、支持軸70に遊挿されるとともに、その長さ方向一端部に設けられた第1係止脚85aは収容ハウジング6の底板部61に係止され、長さ方向他端部に設けられた第2係止脚85bは扉7に係止されており、このリターンスプリング85のバネ反力により、扉7は出入口65を開く方向に揺動するように付勢されている。
【0037】
従って、扉7は開いた時点でリターンスプリング85の作用により開放状態が維持される。
【0038】
なおリターンスプリング85のバネ反力は、コイルスプリング82のばね反力よりも小さく設定されている。
【0039】
次に以上の構成からなる飲食物搬送用収容体5の使用例を説明する。
【0040】
先ず厨房室S1で寿司Fを皿4の皿板41上に盛った上で、皿板41の周縁部を 手で持って、搬送路3上に置かれた飲食物搬送用収容体5の収容室60内に皿4を収容するのであるが、この時、皿板の周縁部をガイド孔64に通して、手で持った皿板41の周縁部分は収容ハウジング6の外に出るようにする。
【0041】
従って皿板41の周縁部を手で持った状態で皿4を収容室60内に納めること可能である。
【0042】
そして皿4を収容室60内に収容して行くに伴い、図7及び図8に示すように、皿板41の周縁が揺動体81に当接して、この揺動体81を倒れる方向(図7において矢印X方向)に揺動させるのであって、この揺動体81の揺動に伴い、扉7もコイルスプリング85を介して閉鎖方向(図7において矢印Y方向)に揺動し始める。
【0043】
ところで扉7の揺動途中で扉7が図9〜図11に示すように皿板41に当接した場合でも、コイルスプリング85が撓んで揺動体81の揺動が許容されるので、例えば皿4の収容途中で皿4が扉7と揺動体81との間に挟み込まれて収容室90内に収容出来なくなるような事態を招くことがない。
【0044】
そして皿4が収容ハウジング6の収容室60内に収容された時には、揺動体81が倒れて、扉7が収容ハウジング6の出入口を閉鎖するのであって、この時点で揺動体81は図12にも示すように皿板41の下面で受け止められているので、収容ハウジング6の出入口65は扉7により閉じられた状態が維持される。
【0045】
一方、客室S2にいる顧客は収容ハウジング6の外側方に突出している皿板41の縁部分を手に持って皿4を出入口65方向に引き出すのであって、これに伴い、皿板41の外周縁が扉7の内側面に当接し、これにより、扉7が押されて開く。
【0046】
そして皿4が取り出された状態では、扉7はリターンスプリング85の作用により開いた状態に維持されて不用意に閉じることがない。
【0047】
斯くして寿司Fの搬送に際して以上の飲食物搬送用収容体5を用いることにより、皿4に盛られた寿司Fが不用意に乾燥するのを抑制することが出来るし、また客が誤って寿司Fに触れるようなことも防ぐことが出来る。
【0048】
しかも皿4の出し入れに際しては、収容ハウジング6に直接手を触れる必要がないので、収容ハウジング6が不用意に汚れるようなことも防止出来る。
【符号の説明】
【0049】
10 搬送装置
3 搬送路
33 フラットチエンコンベア
4 皿
41 皿板
5 飲食物搬送用収容体
6 収容ハウジング
60 収容室
65 出入口
7 扉
8 連動手段
81 揺動体
82 コイルスプリング(連動部材)
85 リターンスプリング(付勢手段)
F 寿司

【特許請求の範囲】
【請求項1】
店内の各座席に飲食物を搬送するための搬送路が備えられた飲食物搬送装置の前記搬送路に載せて用いる飲食物搬送用収容体であって、
飲食物が盛られた皿を収容するための収容室と前記収容室の出入口とを備えたボックス状の収容ハウジングと、前記出入口を開閉する扉と、前記扉と連動して、前記収容室内への皿の収容時、前記皿の当接により作動して前記扉を閉鎖させる連動手段とが備えられ、前記収容ハウジングの側壁には、前記出入口側から前記皿の収容方向に直線状に延びて、前記皿の周縁部を前記収容ハウジング外に突出させるためのガイド孔が設けられていることを特徴とする飲食物搬送用収容体。
【請求項2】
連動手段が収容室内への皿の収容に伴う前記皿の当接により揺動する揺動体と、この揺動体と扉とを弾性的に連動連結する連動部材とから成り、揺動体の揺動により連動部材を介して前記扉を閉鎖方向に揺動させるとともに、前記扉に所定値以上の付加が加わった時には、前記連動部材の弾性変形により前記揺動体のみを揺動させるようにしていることを特徴とする請求項2記載の飲食物搬送用収容体。
【請求項3】
扉の開放時に前記扉を開放位置に付勢させるための付勢手段が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の飲食物搬送用収容体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−20040(P2012−20040A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161533(P2010−161533)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(396011174)株式会社くらコーポレーション (17)
【Fターム(参考)】