説明

飼料摂取を増進させる蛋白質産物及びその製造方法

【課題】 本発明の主な目的は、飼料摂取を増進させる蛋白質産物及びその製造方法を提供することにより、血漿蛋白質の代わりに植物蛋白質を原料として、高い消化率と高い飼料摂取量の産品を製造することである。
【解決手段】 本発明は、生化学産物の製造方法を提供する。前記製造方法は、外表面を有する基質本体を複数設ける工程と、前記外表面のそれぞれに飼料摂取増進剤を付着させ、中間体を形成する工程と、基質と中間体を混合し、生化学産物を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料摂取を増進させる蛋白質産物及びその製造方法に関し、特に、液態の飼料摂取増進剤によって製造された蛋白質産物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の飼料は、飼料摂取量を高めるために、通常、血漿蛋白質を添加する必要がある。血漿蛋白質は、動物の血液から得って、ウイルスなどの病原体を有するため、飼料を食べる動物を感染させる恐れがある。特に、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が発生したことにより、多くの地域で血漿蛋白質による飼料摂取増進剤の使用が禁止されている。さらに、血漿蛋白質は腐敗し易く、その新鮮さを保持することは容易ではない。飼料摂取量を向上させるための産品(例えば血漿蛋白質)が飼料に添加されていない場合、飼育する動物の食物摂取量に影響を与えて、動物の成長にも影響を受ける。特に子豚や離乳子豚の場合、その食料を一般的な飼料として軽率に変更すると、子豚が食料を拒否する可能性がある。従って、市場における飼料摂取増進剤には、例えば乳酸発酵溶液がある。従来の方法では、液態の飼料摂取増進剤と飼料粉末と直接混合するが、その混合物には、水分を少なくして凝塊を形成する状態を引き起こし、混合物を再び粉末に乾燥する必要がある。前記混合の過程で水が混合物に直接添加され、混合終了の後に混合物を再び粉末に乾燥する場合は、作業負荷が増大し、エネルギーが無駄になり、乾燥温度が高すぎて味が変化し、更に飼料摂取を増進させる効果が達成できない。また、このような液態の飼料摂取増進剤の蛋白質含有量と消化率は、血漿蛋白質ほど良いものではない。混合飼料粉末の消化率は低すぎると、動物の摂取量を増進させるが、飼料利用性が低すぎる結果を引き起こす。
【0003】
従って、本発明は、このような従来の課題を解決するため、実験と研究を重ねた結果を通じて得られたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、飼料摂取を増進させる蛋白質産物及びその製造方法を提供することにより、血漿蛋白質の代わりに植物蛋白質を原料として、高い消化率と高い飼料摂取量の産品を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、大豆細胞を100μm以下に粉砕し、その細胞壁を破裂する。これにより、消化率を90%以上に高め、後の加水分解工程の反応性も高める。又、消化率を95%以上に高めるために、大豆蛋白質は、蛋白質分解酵素によりペプチドに分解される。その後、前記ペプチドを高消化性の蛋白質粉末に乾燥する。更に、高消化性の蛋白質粉末を基質とし、液態の飼料摂取増進剤(例えばカルピス株式会社によって製造されるPF-S)を、低温の噴霧乾燥により、前記高消化の蛋白質粉末に包む。前記細胞壁を破裂する方法は、研磨、セルロース分解酵素による加水分解、凍結または高速ナイフ衝突が含まれる。前記蛋白質分解酵素は、ナットウキナーゼや他の枯草菌の発酵から生成されており、加水分解の後、ペプチドの分子量が70KD以下である。前記低温の噴霧乾燥には、温度が60℃以下に設定される。
【0006】
上述の目的を達成するために、生化学産物の製造方法を提供する。本発明の生化学産物の製造方法は、外表面を有する基質本体を複数設ける工程と、前記外表面のそれぞれに飼料摂取増進剤を付着させ、中間体を形成する工程と、基質と中間体を混合し、生化学産物を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記工程の本発明に係る生化学産物の製造方法において、前記飼料摂取増進剤は、液態であり、0.1〜0.3%の最終濃度を有し、乳酸発酵液、椎茸エキス、ブタン酸及びトリプトファンからなる群から選ばれる一つで構成されており、前記外表面に飼料摂取増進剤を付着させる工程は、60℃より低い操作温度を有する。
【0008】
上記工程の本発明に係る生化学産物の製造方法において、前記付着工程は、被覆、散布、均一付着及び不均一付着からなる群から選ばれる一つを含み、前記外表面に飼料摂取増進剤を付着させる工程は、噴霧乾燥、バッチ噴霧攪拌及びトンネル噴霧攪拌からなる群から選ばれる一つを含む。
【0009】
上記工程の本発明に係る生化学産物の製造方法において、前記複数の基質本体と基質は、乳酸菌、大豆粉、発酵性豆粉、コーンミール、加水分解蛋白質、ペプチド、生きている細菌胞子、酵母菌、抗生物質及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる一つを含む。
【0010】
上記工程の本発明に係る生化学産物の製造方法において、前記加水分解蛋白質は、豆類、藻類、穀物、単細胞植物及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる一つを含み、前記加水分解蛋白質は、蛋白分解酵素によって加水分解され、前記蛋白分解酵素は、枯草菌又は納豆菌である微生物によって発酵される。
【0011】
上述の目的を達成するために、生化学産物の製造方法を提供する。本発明の生化学産物の製造方法は、外表面を有する基質本体を複数設ける工程と、前記外表面のそれぞれに飼料摂取増進剤を付着させ、生化学産物を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
上述の目的を達成するために、生化学産物を提出する。本発明の生化学産物は、外表面を有する複数の基質本体と、前記外表面のそれぞれに付着される飼料摂取増進剤と、を含むことを特徴とする生化学産物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、高い消化率と高い飼料摂取量がある産品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る噴霧乾燥方法を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバッチ噴霧攪拌方法を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトンネル噴霧攪拌方法を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る生化学産物の構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下のように、本発明を実施例に基づいて詳述するが、あくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されており、さらに特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【0016】
植物原料、例えば豆科植物、藻類、穀物または単細胞植物は、その消化率を90%以上に高めるために、研磨、セルロース分解酵素による加水分解、凍結または高速ナイフ衝突などの細胞壁の除去方法によって処理される。又、消化率を95%以上に高めるために、植物原料の蛋白質は、蛋白質分解酵素によってペプチドに分解される。本発明の蛋白質分解酵素は、ナットウキナーゼや他の枯草菌の発酵から生成されており、加水分解の後、ペプチドの分子量が70KD以下である。加水分解蛋白質を基質とし、或いは、さらに乳酸菌、大豆粉、発酵性豆粉、コーンミール、加水分解蛋白質、ペプチド、生きている細菌胞子、酵母菌又は抗生物質と混合する。その後、液態の飼料摂取増進剤は、前記噴霧乾燥により、前記基質に被覆する。前記液態の飼料摂取増進剤は、好ましくは、乳酸発酵液、椎茸エキス、ブタン酸又はトリプトファンであり、最も好ましくは、エチレンブタン酸であり、前記噴霧乾燥の温度は、液態の飼料摂取増進剤の味わいと香りを破壊することを避けるために、60℃以下に設定される必要がある。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る噴霧乾燥方法を示す図である。図1によると、基質10は、上側の飼料注入口12を介して噴霧乾燥機15に運び入れる。その後、熱風及び飼料摂取増進剤11は、噴霧乾燥機15のチャンバー側壁に注入される。基質10は前記チャンバー内に浮遊させる時、飼料摂取増進剤11は、60℃よりも低い低温熱風により、急速に噴霧状にして基質10に被覆する。最後に、被覆された蛋白質産物は、噴霧乾燥機15の下側にある飼料出口13を介して運び出す。
【0018】
低温熱風を使用する目的は乾燥である。基質10は、もともと粉末状であり、水分含有量が10%以下なので、液態の飼料摂取増進剤が被覆された後、水分含有量が10%以上を超える。従って、保存と運送の便利性のために、低温熱風によって、水分含有量を10%以下に減少させる。又、乾燥効率を高めるために、別の低温熱風口をさらに設置することができる。実際には、低温熱風口と飼料摂取増進剤の出口とは異なるものである。このような方法は、連続生産のためである。基質10は連続的に注入口12から供給されると、被覆された蛋白質産物は、飼料出口13を介して運び出す。
【0019】
本発明に係る別の実施方法は、図2に示すようなバッチ噴霧攪拌方法である。基質10は、プロペラ14によって連続的に攪拌されると共に、飼料摂取増進剤11は、上側からの低温熱風により、急速に噴霧状にして基質10を被覆する。
【0020】
本発明に係るもう一つの実施方法は、図3に示すようなトンネル噴霧攪拌方法である。基質10は、右側の飼料注入口12を介して運び入れる、プロペラ14によって連続的に攪拌されると共に、飼料摂取増進剤11は、上側からの低温熱風により、急速に噴霧状にして基質10に被覆する。最後に、被覆された蛋白質産物は、左側の飼料出口13を介して運び出す。このような方法は、連続生産のためのものである。基質10は連続的に右側の注入口12から供給されると、被覆された蛋白質産物は、左側の飼料出口13を介して運び出す。
【0021】
図4(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係る生化学産物の構造を示す図である。図4(a)には、基質10は、飼料摂取増進剤11の薄層で被覆されている。図4(b)と図4(c)のような他の実施形態には、飼料摂取増進剤11は、噴霧乾燥の過程で小さな粒子になり、基質10に均一又は不均一に付着している。
【0022】
飼料摂取増進剤11は、噴霧乾燥、バッチ噴霧攪拌又はトンネル噴霧攪拌によって基質10に被覆された後、被覆された蛋白質産物には、飼料摂取増進剤11の濃度が10〜20%の範囲にある。被覆された蛋白質産物は、更に他の基質と混合して、飼料摂取増進剤11の濃度が0.1〜0.3%の範囲にある完全な飼料を形成することができる。
【0023】
以上の説明によると、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、多様な変更及び修正が可能であることが理解できる。従って、本発明の技術的な範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限らず、特許請求の範囲によって定めなければならない。
【符号の説明】
【0024】
10基質
11飼料摂取増進剤
12飼料注入口
13飼料出口
14プロペラ
15噴霧乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を有する基質本体を複数設ける工程と、
前記外表面のそれぞれに飼料摂取増進剤を付着させ、中間体を形成する工程と、
基質と中間体を混合し、生化学産物を形成する工程と、
を含むことを特徴とする生化学産物の製造方法。
【請求項2】
前記飼料摂取増進剤は液態であり、0.1〜0.3%の最終濃度を有し、乳酸発酵液、椎茸エキス、ブタン酸及びトリプトファンからなる群から選ばれる一つで構成されており、
前記外表面に飼料摂取増進剤を付着させる工程は、60℃より低い操作温度を有すること特徴とする請求項1に記載の生化学産物の製造方法。
【請求項3】
前記付着工程は、被覆、散布、均一付着及び不均一付着からなる群から選ばれる一つを含み、
前記外表面に飼料摂取増進剤を付着させる工程は、噴霧乾燥、バッチ噴霧攪拌及びトンネル噴霧攪拌からなる群から選ばれる一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の生化学産物の製造方法。
【請求項4】
前記複数の基質本体および基質は、乳酸菌、大豆粉、発酵性豆粉、コーンミール、加水分解蛋白質、ペプチド、生きている細菌胞子、酵母菌、抗生物質及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる一つを含むこと特徴とする請求項1に記載の生化学産物の製造方法。
【請求項5】
前記加水分解蛋白質は、豆類、藻類、穀物、単細胞植物及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる一つを含み、
前記加水分解蛋白質は、蛋白分解酵素によって加水分解され、
前記蛋白分解酵素は、枯草菌又は納豆菌である微生物によって発酵させることを特徴とする請求項1に記載の生化学産物の製造方法。
【請求項6】
外表面を有する基質本体を複数設ける工程と、
前記外表面のそれぞれに飼料摂取増進剤を付着させ、生化学産物を形成する工程と、を含むことを特徴とする生化学産物の製造方法。
【請求項7】
外表面を有する複数の基質本体と、
前記外表面のそれぞれに付着される飼料摂取増進剤と、
を含むことを特徴とする生化学産物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205585(P2012−205585A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284066(P2011−284066)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(511314751)源富生物科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】