説明

餅状きりたんぽ

【課題】米粉による餅状きりたんぽを提供すること。
【解決手段】澱粉質が所要にα化された一定量の練物原料が、竹輪状焼成品及び/又は該練物原料が串に取り付けられた焼成品であるきりたんぽにおいて、
前記練物原料が米粉から成り、厚肉一層又は薄肉多層の焼成品とされる。
このほか、前記練物原料に増粘材及び/又は酵母菌が添加されたものや、該練物原料が微粉砕粒度の米粉と、粗粉砕粒度の米粉とが混練されたものである。
さらに、前記練物原料を取り付ける串2は練物原料との粘着面(串本体2aの外周)に螺旋溝2aaや可食性フィルム2ab等の剥離手段が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は郷土料理品として知られている、きりたんぽに関連するものである。
ここにいうきりたんぽとは、米飯を串に巻き付けてたんぽ状とし、その外周壁を焼いた後、串を抜いた円筒中空部のある形態の食品をいうものとする。調理には輪切りして提供している。
【背景技術】
【0002】
従来から提案されているきりたんぽの製造技術は、炊いた米飯を練り潰して手作業で串に巻き付けて焼成したり、特許第2926488号(特許文献1)や特許第4210278号(特許文献2)で提案されているように、ホッパーに投入した米飯を練物供給部で練り混ぜ、押し出される練物原料を一定量ずつ自動的に串に巻き付けて適度に焼成していた。
きりたんぽは、野菜、きのこ、鶏肉等の具と共に鍋料理に使用される。きりたんぽは外周壁が焼結して固くなり、中空部内周壁は串のため火気が入らないので柔らかい特徴がある。そのために鍋料理では形崩れが遅く中空部から具汁が浸透して噛み崩し易い郷土料理の食品となっている。
【0003】
一方、米粉から麺を製造する技術も種々に提案されている。その原料粉としては白米は勿論のこと、玄米や発芽玄米の米粉から、該米粉に雑穀粉を添加したものなどその種類も多様であり、その米麺化には、米が有する澱粉質のα化(糊化)に加えて、増粘材の添加等による粘稠技術の確立と、うどんやそうめんなどの製造に使用する製麺機の技術の進歩によるところが大きい。
【0004】
このような状況に鑑みて、米粒の蒸練による澱粉質のα化よりも、米粉粒の蒸練による澱粉質のα化度は効率的であり、また、米粉を水で練り蒸煮した練物を練物供給部より練物原料として絞り出し、一定量串に巻き付けて餅状のきりたんぽを成形した方が省力的経済的である。しかも、焼成したものは従来と同様に鍋物に使用できるほか、焼成前の生乾燥品は輪切りして干餅としたり、おしるこ用のレトルト食品に転用されるなどその用途も広い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2926488号
【特許文献2】特許第4210278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の米飯によるきりたんぽの製造技術と、米粉による米麺の製造技術とに鑑みて、米粉による餅状きりたんぽの提供をその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の餅状きりたんぽは、米粉粒子を蒸練することで澱粉質のα化度を効率化するとともに、きりたんぽ自体の密度を高めて餅状化し、そのままで食して噛み切りにやや抵抗感があるがちぎり易い性状の食品とするため、米粉粒を温水で練り、それを蒸煮し、それを太い串に巻き付け、その外周壁を焼きつけてから串を抜いたきりたんぽにおいて、
前記練物原料が米粉から成り、中空状の焼成品とされて成る。
請求項2記載した発明は、請求項1に記載した餅状きりたんぽにおいて、前記練物原料に増粘材が添加されて成る。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2記載の前記練物原料に酵母菌が添加されて成る。
使用する酵母菌の一例は、特開2001−178449に示される酵母(発見地秋田県白神山地・発明者小玉健吉氏に因んで秋田白神こだま酵母という。)で、混和することで発酵し、2時間内に練物原料が多気孔化する。そこで60℃、5分間の加熱により発酵を止め多気孔性の練物原料とする。
【0008】
ここで、本発明の餅状きりたんぽの特性を解り易くするために、従来のきりたんぽと餅との比較を表1に示す。
この表1に示すように、本発明の餅状きりたんぽは、従来のきりたんぽと餅との中間的な特性を呈し、鍋料理にはスープの浸透も適度で煮崩れし難く、また前記したように新米、古米別(特に古米)の素材臭もなく、食べ易い固さで最適な食品であり、今後飯米のきりたんぽに代わって需要が期待されることは明らかである。このほか、米粉としてはうるち米粉のほか、うるち米粉にもち米粉を添加したものなども対象とされることは勿論である。なお、米粉の粒子と捏ね合わせ時の水分量(お湯の量)、蒸練工程での加熱温度と時間等については米粉の種類或いは雑穀粉(ソバ粉も含む)との混合度合いによって種々選択されるものである。
表1に示す従来のきりたんぽと本発明餅状きりたんぽとの性状の差異は、従来のきりたんぽは米を蒸煮して飯米としそれを練るに対し、餅状きりたんぽは米粉を水で練合しそれを蒸すという技術相違によるものである。
【0009】
【表1】

【発明の効果】
【0010】
本発明の餅状きりたんぽは、米粉による練物原料のα化度が米飯粒のα化度より高く、鍋物の食材として煮崩れし難く、その上、米飯であれば新米、古米別、或いは品種別などの品質が嗅覚、味覚に直接影響を与えるものであるが、米粉の場合には前記の品質の影響は殆ど感じられないものであり、しかも、米粉の練物であるから軟らかな層(餅生地)中に空気が緻密に取り込まれるため、鍋物に供されると空気とスープが入れ代わり、該スープが餅生地にしっとりと馴染み、米飯素材の従来のきりたんぽのように、だぶだぶのスープの絡みに比して格段の食感を呈するものであり、粒度の異なる米粉の練物原料で焼成されたものは噛み切り良好となって食べ易いものとなる。また、剥離手段が配設された串は、餅状きりたんぽから抜け易いため、変形させたり形崩れさせたりすることがない。さらに、米粉による練物原料の絞り出しによって、厚肉や薄肉による成形形態や短尺幅の螺旋巻き付けによる成形などの成形技術の多様化も創出される。このほか、焼成前の生乾燥品は、干餅やおしるこ用のレトルト食品など多用途に転用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の餅状きりたんぽAの斜視図。
【図2】本発明の餅状きりたんぽBの斜視図。
【図3】本発明の餅状きりたんぽCの斜視図。
【図4】本発明の餅状きりたんぽDの成形状態の部分説明図。
【図5】本発明の餅状きりたんぽA乃至Cの用途例の斜視図。
【図6】同上用途例の説明図。
【図7】本発明の餅状きりたんぽA乃至Cに使用される串の斜視図。
【図8】同上串の他の実施態様の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
竹輪状焼成品が所定厚肉一層又は所定薄肉多層の長尺幅の練物原料からなるものや、円筒状に絞り出し成形されるもの、所定厚肉、短尺幅の練物原料の螺旋状の巻き付けによって成形されたものであり、また、表面(周面)が一様のものから、波形のものまで選択される。さらに、練物原料を巻き付ける串の剥離手段は螺旋状に刻設される螺旋溝や可食性フィルム或いはミスト状に噴射された水被膜などである。
米粉は白米粉は勿論のこと、玄米粉や発芽玄米粉或いはうるち米粉やもち米粉、これらの混合米粉であり、しかも、微粉砕粒度(25ミクロン〜45ミクロン)の米粉から該米粉と粗粉砕粒度(70ミクロン)の米粉との混合されたものも対象とされる。前記の表面形状に関する波形は、受け形によって造形されるものから、短尺幅の練物原料の螺旋状の巻き付けによって必然的に発現する段差部の突き合わせによって造形される。
【実施例】
【0013】
本発明の餅状きりたんぽAを実施例により説明すると、米粉を90℃の湯水で混練し蒸練機にかけ澱粉質が所要にα化(α化度25〜35%)された練物原料は、ホッパー(図外)で撹拌熟成され(このとき、アルギン酸などの増粘材及び/又は酵母菌が添加されることもある。)、図外の押圧成形機(エクストルーダー)に充填されて、所要厚肉、長尺幅に圧延された餅生地1として絞り出され(図1)、図外のきりたんぽ成形機において供給される串2(後述)にその一定量が巻き付けられ、図外の焼成部で焼成される。
【0014】
図2に示した餅状きりたんぽBは、前記の練物原料が押圧成形機から所要薄肉、長尺幅に圧延された餅生地1が絞り出され、それが串2に所要分多層に巻き付けられて成形され、図外の焼成部で焼成される。
【0015】
図3に示した餅状きりたんぽCは、前記した練物原料が押圧成形機から所要厚肉、短尺幅に圧延された餅生地1として絞り出され、それが串2に所要分螺旋状(串が回転しつつ軸心方向に移転する。)に巻き付けられて成形され、焼成部で焼成される。
【0016】
図4に示した餅状きりたんぽDは、練物原料が押圧成形機のリング状の絞り出し口5aを有するノズル6から所要肉厚で餅生地1として絞り出され、串2に案内されて所要長さにカッター7で切断され、焼成部で焼成される。
【0017】
このようにして成る餅状きりたんぽA乃至Dは、適度の長さに切断(米飯のきりたんぽの切断長さに比して短尺)されて鍋料理に供されるが、餅状であるため煮崩れし難く、スープのにごりも少なくすこぶる美味しいものとなる。
本発明に使用される練物原料としての米粉は、白米粉は勿論のこと、玄米粉や発芽玄米粉、或いはうるち米粉やもち米粉、これらの混合米粉であり、微粉砕粒度(25ミクロン〜45ミクロン)の米粉から該米粉と粗粉砕粒度(70ミクロン)の米粉との混合されたものも対象とされる。
【0018】
図5に示したものは、前記の餅状きりたんぽA乃至Dの焼成前の生乾燥成形品3を輪切りして干餅に転用する一例であり、図6に示したものは、輪切りしたものを十字状に切断してレトルトパウチで提供されるおしるこ用の餅片4を示したものである。
【0019】
餅状きりたんぽA乃至Dの成形に用いる串2について説明すると、図7に示したものは、所要大径の串本体2aと、小径の柄部2b(一部切断して部分長を省略)と、柄部2bの径より大径でその端部に一体の引掛け部2c(串2の引き抜きに使用される。)とから成り、串本体2aには剥離手段としての所要幅、所要深さの螺旋溝2aaが刻設され、餅生地1(練物原料)の粘着面の削減と、焼成時の餅生地1からの蒸発水分の該螺旋溝2aaへの滞留とによって串2を引き抜き易く(剥離し易く)したものである。
図8に示した串2は前記構成と同様であるが、串本体2aの外周に剥離手段として可食性フィルム2abを巻回したもので、この場合には可食性フィルム2abは餅状きりたんぽA乃至Cの内周面にその外面が粘着し、串2と可食性フィルム2abの内面は粘着しないから餅状きりたんぽA乃至Dから串2は簡単に引き抜かれる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の餅状きりたんぽは、米粉による練物原料から成形、焼成されるものであるため、米自体の品質や性状による食味が出ない上、玄米や発芽玄米など健康にとって有益とされるものが食べ易い練物原料として供給されるから、健康食品としても消費され得るものであり、食料自給率の向上にも寄与することから、農業経営の活性化にも資する。
【符号の説明】
【0021】
1:餅生地
2:串
2a:串本体
2aa:螺旋溝
2ab:可食性フィルム
2b:柄部
2c:引掛け部
3:生乾燥成形品
4:餅片
5:口金
5a:絞り出し口
6:ノズル
7:カッター
A乃至D:餅状きりたんぽ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質が所要にα化された一定量の練物原料が、竹輪状焼成品及び/又は該練物原料が串に巻き付けられた焼成品であるきりたんぽにおいて、
前記練物原料が米粉から成る餅状きりたんぽ。
【請求項2】
前記練物原料に増粘材が添加されて成る請求項1記載の餅状きりたんぽ。
【請求項3】
前記練物原料に酵母菌が添加されて成る請求項1又は2記載の餅状きりたんぽ。
【請求項4】
前記練物原料が、微粉砕粒度の米粉と、粗粉砕粒度の米粉とが混練されたものである請求項1、2又は3記載の餅状きりたんぽ。
【請求項5】
前記串は、練物原料との粘着面に剥離手段が配設されて成る請求項1、2、3又は4記載の餅状きりたんぽ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−55736(P2011−55736A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206718(P2009−206718)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(506195745)
【Fターム(参考)】