説明

養毛・育毛料

【課題】優れた養毛・育毛効果を有し、かつ良好な使用感を呈する養毛・育毛料を得る。
【解決手段】(A)フラバノノール類、(B)ユーカリエキス及び(C)メントールを含有する養毛・育毛料。フラバノノール類としてはトランス-3,4'-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノンが好ましい。各成分の好ましい含有量は(A)フラバノノール類0.001〜1重量%、(B)ユーカリエキス0.0001〜0.5重量%(固形分として)及び(C)メントール0.001〜10重量%である養毛・育毛料とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラバノノール類を含有し、優れた養毛・育毛効果を有し、かつ良好な使用感を有する養毛・育毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
養毛・育毛を目的とした医薬品または薬用化粧料には、育毛効果を有する合成物質又は天然の動植物抽出エキス等の薬効成分が広く使用されている。例えば、特許文献1には、育毛効果に優れ、かつ安全性・安定性を備えたフラバノノール誘導体を含む養毛料が記載されており、実際フラバノノール類として、トランス-3,4’-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノンを有効成分として配合した育毛剤が販売されている。また、特許文献2には、ユーカリ抽出物とともに、血行促進剤や毛包賦活剤を配合した育毛剤が記載されている。さらに特許文献3には、Eucalyptus属植物の抽出物が毛母細胞の活動を活性化させることが記載されている。
【0003】
一方、育毛剤は頭皮に長時間の連続使用が必要であることから、頭皮に及ぼす使用感、例えばフケ・かゆみ、薄毛や壮年の人の悩みである頭皮のつっぱり感を軽減すること、また育毛剤使用時の爽快感を与えること等は製品に求められる重要な要素である。そこで、人に対してさらに満足出来る養毛・育毛効果を呈し、かつ良好な使用感を示す養毛・育毛料が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−26812号公報
【特許文献2】特開2001−2532号公報
【特許文献3】特開2000−154118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた養毛・育毛作用を有し、かつ良好な使用感を呈する養毛・育毛料に関するものである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、フラバノノール類、ユーカリエキス及びメントールを併用することにより、優れた養毛・育毛効果を呈し、かつ頭皮に柔軟効果、保湿効果等を与え、薄毛の人や壮年の人の悩みである頭皮のつっぱり感といった頭皮の不快感が改善された良好な使用感を有する養毛・育毛料を得た。
【0007】
すなわち本発明は、(A)フラバノノール類、(B)ユーカリエキス及び(C)メントールを含有する養毛・育毛料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の養毛・育毛料は、優れた養毛・育毛作用を呈し、かつ良好な使用感を有するため、毎日連続して快適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
成分(A)のフラバノノール類としては、特許文献1記載の天然フラバノノール類及び特開平8−157464号公報又は特開平8−157334号公報記載の合成フラバノノール類のいずれも使用することができる。これらのうち、特にトランス-3,4'-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノンが好ましい。
【0010】
これらフラバノノール類は2種以上を用いることもでき、養毛・育毛料中におけるフラバノノール類の含有量は、育毛効果及び健康な頭皮への改善効果の面から0.001〜2重量%が好ましく、0.001〜1重量%がより好ましく、さらには0.01〜0.8重量%が好ましい。
【0011】
本発明のユーカリエキスは、ユーカリの葉や枝などから極性溶媒で抽出して得られるエキス(抽出物)を言う。かかるユーカリエキスは市販品をそのまま用いることができ、また、特許文献3記載の方法で製造したものを使用することもできる。
ユーカリエキスの原料としては、例えばフトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)が挙げられる。ユーカリ属植物は,世界各地の温暖な地域に分布する常緑高木の広葉樹であり,近年は,パルプ用材とすることを目的としてオーストラリア、ニュージーランド等で積極的に植林されている樹種である。パルプ用材や薬用として用いられる他に、公園樹、庭園樹、建築材、器具材等の広い用途をもつ。
このユーカリ属植物の枝や葉等は、そのままあるいは乾燥粉砕して溶媒による抽出に用いることができる。
【0012】
抽出用の溶媒としては、極性溶媒が好ましく、低級アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。低級アルコール類は、炭素数1〜6の炭化水素基を有するアルコール類であり、具体的にはメタノール、エタノール及びプロパノールなどが挙げられる。また、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等;ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等;エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒として用いても良い。
【0013】
好ましいユーカリエキスは、ユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)の葉の極性溶媒抽出物である。市販品としては、ファルコレックス ユーカリB(一丸ファルコス)、ユーカリエキスTH(長谷川香料)、ユーカリ抽出液BGF(丸善製薬)等がある。これらはいずれも固形分を0.1〜2重量%程度、ブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)及び/又はエタノールを40〜90重量%程度含み、残余水のものである。
【0014】
ユーカリエキスの含有量は組成物中に,固形分に換算して好ましくは0.0001〜0.5重量%、より好ましくは0.0005〜0.1重量%、さらに好ましくは0.001〜0.05重量%である。
【0015】
成分(C)のメントール、特にl−メントールは、天然からの精製品、合成品のいずれも用いることができ、またペパーミント油等のメントールを多量に含む精油を用いてもよい。その含有量は、育毛効果及び健康な頭皮への改善効果のため0.001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜2重量%である。
【0016】
また、成分(A)〜(C)以外にも、毛包賦活剤その他の薬効成分を併用することができる。これら他の成分を併用することで養毛・育毛効果を増大させ、また使用感や効果感等を向上させることができる。
【0017】
毛包賦活剤としては、N-アセチル-L-メチオニン、パントテン酸及びその誘導体タマサキツヅラフジ、アデノシン及びその誘導体、アスパラギン酸カリウム、感光色素301、ペンタデカン酸グリセリド、6-ベンジアルアミノプリン、モノニトログアヤコールナトリウム、酵母エキス、ニンニク成分、真珠蛋白抽出液、タイソウエキス、プラセンタエキス、ローヤルゼリー等が挙げられる。これらの毛包賦活剤は、本発明の成分(A)フラバノノール類と併用することによりフラバノノール類の育毛効果及び健康な頭皮への改善効果を向上させることができる。
【0018】
その他の薬効成分としては、血行促進剤、抗菌剤、抗炎症剤、保湿剤、角質溶解剤、抗脂漏剤、局所刺激剤、抗男性ホルモン剤、カリウムチャンネルオープナー、抗酸化剤等が挙げられる。
【0019】
血行促進剤としては、二酸化炭素、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、アセチルコリン、センブリエキス、ニンジンエキス、イチョウエキス、塩化カルプロニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、γ―オリザノール、サークレチン、ビタミンE及びその誘導体、ニコランジル、ピナシジル、フタリド類、キナエキス、トウヒエキス等が挙げられる。このうち、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、センブリエキス、ニンジンエキス、ビタミンE及びその誘導体、塩化カルフ゜ロニウムが好ましい。
【0020】
抗菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、オクトピロックス、感光色素101、感光色素201、クロルヘキシジン、サリチル酸、ジンクピリチオン、ソルビン酸カリウム、ヒノキチオール、フェノール等が挙げられる。このうち、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、オクトピロックス、ジンクピリチオン、ヒノキチオールが好ましい。
【0021】
抗炎症剤としては、甘草エキス、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、脂溶性グリチルレチン酸類、アズレン、グアイアズレン、ジフェンヒドラミン等の抗ヒスタミン剤、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、オウゴンエキス、カミツレエキス、クマザサエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、桃葉エキス、セイヨウノコギリソウエキス、キキョウエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス等が挙げられる。このうち、甘草エキス、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アズレン、グアイアズレン、オウゴンエキス、カミツレエキス、クマザサエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、桃葉エキス、セイヨウノコギリソウエキスが好ましい。
【0022】
保湿剤としては、オトギリソウエキス、オーツ麦エキス、桔梗エキス、可溶性コラーゲン、グリセリン、コンドロイチン硫酸、チューベロースポリサッカライド、プロピレングリコール、冬虫夏草エキス、延命草エキス、オオムギエキス、オレンジエキス、ブドウエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、ジオウエキス、デュークエキス、マイカイ花エキス、ボタンピエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。このうち、オトギリソウエキス、オーツ麦エキス、グリセリン、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、延命草エキス、オオムギエキス、ブドウエキス、プロピレングリコール、桔梗エキス、ヨクイニンエキスが好ましい。
【0023】
角質溶解剤としてはアスピリン等が挙げられる。
【0024】
抗脂漏剤としては、イオウ、レシチン、カシュウエキス、チオキソロン等が挙げられる。
【0025】
局所刺激剤としては、カンファー、トウガラシチンキ、ノニル酸ワニリルアミド、ショウキョウチンキ、オランダガラシ、カンタリスチンキ、サンショウエキス、ハッカ油、ワサビ大根エキス等が挙げられる。このうち、カンファー、トウガラシチンキが好ましい。
【0026】
抗男性ホルモン剤としては、サイプロテロンアセテート、11α-ハイドロキシプロゲステロン、フルタマイド、3-デオキシアデノシン、酢酸クロルマジノン、エチニルエストラジオール、スピロノラクトン、エピテステロン、フィナステライド、アロエ、サンショウ、チョウジエキス、クアチャララーテエキス、オタネニンジン等が挙げられる。
【0027】
カリウムチャンネルオープナーとしては、ミノキシジル、クロマカリム、ジアゾキシド及びその誘導体、ピナシジル等が挙げられる。
【0028】
抗酸化剤としては、紅茶エキス、茶エキス、エイジツエキス、黄杞エキス、ビタミンC及びその誘導体、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0029】
これら薬効成分は、全組成中に合計で0.001〜20重量%配合するのが好ましく、0.01〜8重量%配合するのがより好ましい。
【0030】
本発明の養毛・育毛料には、さらに有機酸又はリン酸、硫酸、塩酸、二酸化炭素等の無機酸を配合することにより液性を弱酸性とすることができ、これにより、育毛効果及び健康な頭皮への改善効果を高めることができる。
【0031】
本発明の養毛・育毛料は、その剤形は毛髪及び頭皮に、効果的に塗布される剤形が好ましく、通常は、液剤を主体とし、ローションやヘアトニックが代表的なものであり、噴射剤と共にエアゾール剤として使用できる。また、クリームやシ゛ェル、シャンフ゜ー、リンス、ヘアフォーム剤、ヘアスフ゜レー剤等の剤形で使用することもできる。使用の簡便さからエアゾール剤とすることが好ましい。
【0032】
エアゾール剤に使用する噴射剤としては、炭酸ガス、LPG、DME、窒素ガス、イソペンタン等を1種または2種以上組み合わせて用いることができ、特に、使用感の面から炭酸ガスを含有させることが好ましい。また、炭酸ガスは、頭皮中の毛細血管の血行を促進する効果を有し、本発明品の育毛促進効果をさらに増加させることができる。
【0033】
炭酸ガスは、これが溶解している溶液のpHが酸性の場合にはCO2分子として存在し、血管拡張作用を示す。従って、炭酸ガスを含有した本発明の養毛・育毛料の液性はpH7以下、特にpH4.5〜6.5に調整するのが好ましい。尚、炭酸ガスは養毛・育毛料中に溶け込むと酸性度が高くなるが、必要に応じて最終pHが上記範囲内になる様に調節すれば良い。このpH調整剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等の有機酸またはこれらの塩、或いはリン酸またはその塩が好適に使用される。
【0034】
本発明のエアゾール剤の製造方法は、例えば、炭酸ガスを除く他の成分を耐圧容器に入れ、これに高圧炭酸ガスを封入する方法、耐圧容器に炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩を含ませた炭酸ガスを発生する成分を入れ、これに適当なpH調整剤を加えて炭酸ガスを発生させ、直ちに密封する方法、或いはドライアイスペレットを容器内に入れて密封する方法等が採用されるが、特に高圧炭酸ガスを封入する方法が好ましい。
【0035】
本発明のエアゾール剤は、炭酸ガスの一部が養毛・育毛料中に溶解して存在し、また、一部は容器中に気体として存在する。特に、炭酸ガスが養毛・育毛料中に溶けて配合されていることが重要であり、この含有量は炭酸ガス濃度が60ppm以上であることが好ましい。炭酸ガスの含有量の調節は、炭酸ガスの注入(圧入)によって行うことができ、一般に容器内圧力が35℃の温度で1.2〜10kg/cm2(ゲージ圧)になるようにするのが好ましく、特に4.5〜10kg/cm2(ゲージ圧)になるようにするのが好ましい。
【0036】
また、本発明品には、上記成分のほかに、通常の化粧品等で使用される油性成分、ポリマー、ゲル化剤、界面活性剤、香料、着色剤等を添加配合することができる。
【実施例】
【0037】
実施例1、比較例1〜6及び対照
表1に示す組成の養毛・育毛料を常法により調製し、その育毛促進効果について評価した。即ち、生後49日齢のC3H/HeNCrjマウス(1群20頭)の背部毛を電気バリカン及び電気カミソリを用いて皮膚を傷つけない様に2×4平方センチにわたり剃毛した。ついで、翌日より、調製した養毛・育毛料を1日1回(20μl)塗布した。塗布後、マウス背部を撮影し、画像解析装置を用いて再生毛面積比(再生面積/剃毛面積)を測定した。
【0038】
なお、実施例においてユーカリエキスとしては、丸善製薬のユーカリ抽出液BGF(固形分0.2重量%)を使用した。
【0039】
【表1】

(再生毛面積比)
塗布後、20日目の再生毛面積比の結果(平均値)を表1にあわせて示す。表1から明らかなように、トランス-3,4'-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノンと、ユーカリエキス及びメントールとを併用した本発明品は、比較例及び対照と比べ、マウス育毛効果が著しく大きいことが認められた。また、本発明の育毛料を塗布したマウスは、全て健康で、皮膚にも全く影響が認められなかった。
【0040】
(使用感)
表1に示した実施例1及び比較例1〜6の養毛・育毛料について、抜け毛意識を有し、緒方の分類で軽度〜中程度の男性型脱毛を呈する被験者各10名を対象に3ヶ月間使用試験を行った。
【0041】
評価項目は、育毛効果(増毛感、脱毛減少感)、頭皮の清潔感(フケ・かゆみの抑制効果)、頭皮の柔軟化・保湿効果(頭皮のつっぱり感の抑制)、及び爽快感の4項目であり、「効果がある」と判定した人数を合わせて表1に示す。本発明品である実施例1は、比較例や対照品に対し、育毛効果及び頭皮の感触の改善が認められ、使用感に優れていた。また、本発明品を塗布した被験者の頭皮への刺激等の影響は全く認められなかった。
【0042】
実施例2
表2の組成の養毛・育毛料(ローション)を製造した。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3
表3の組成の原液100に対し、炭酸ガスを2重量%充填したエアゾール型養毛・育毛料を製造した。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例4
表4の組成の養毛・育毛料(ジェル)を製造した。
【0047】
【表4】

【0048】
実施例5
表5の組成の養毛・育毛料(シャンプー)を製造した。
【0049】
【表5】

【0050】
実施例6
表6の組成の養毛・育毛料(ローション)を製造した。
【0051】
【表6】

【0052】
実施例2〜6で得られた養毛・育毛料は、いずれも優れた養毛・育毛効果又は脱毛防止効果を示すのみならず、使用感も良好であり、しかも長期にわたりの安全性の高いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フラバノノール類、(B)ユーカリエキス及び(C)メントールを含有する養毛・育毛料。
【請求項2】
メントールの含有量が0.001〜10重量%である請求項1記載の養毛・育毛料。
【請求項3】
さらに、薬効成分(成分A〜Cを除く)を含有する請求項1又は2記載の養毛・育毛料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の養毛・育毛料と炭酸ガスを含有するエアゾール型養毛・育毛料。

【公開番号】特開2006−143640(P2006−143640A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335212(P2004−335212)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】