説明

養液栽培装置

【課題】養液栽培の栽培槽がいくら長くなっても、培養液の条件及びそれに伴う栽培条件の均一性を保つことができ、加えて、栽培床を栽培槽の液面上に浮かせて移動させる方式の養液栽培であっても、作物の根が酸素不足状態になるのを確実に防止することができる養液栽培装置の提供を課題とする。
【解決手段】作物栽培用の培養液を流すための栽培槽10と該栽培槽10に配置される複数の栽培床20とを少なくとも備え、該栽培床20を前記栽培槽10の長手方向に移動させることで、その移動終端位置で成長した作物を収穫するようにした養液栽培装置であって、前記培養液の流れ方向を、前記栽培床20の移動方向である栽培槽10の長手方向に対して短手方向になるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液栽培装置に関し、より詳しくは、栽培槽に作物栽培用の培養液を流し、培養液中の栄養を根から与えることで作物を生育させるようにした養液栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培槽内に培養液を循環させて行う養液栽培に用いる養液栽培装置において、栽培槽内に培養液を供給する場合、栽培槽の一端に給液口を配置し、他端に排液口を配置する方法が一般に採られているが、栽培規模が大きくなるにつれ、栽培槽の長さが一方向に非常に長くなる傾向がある。
一方、葉菜などの短期間で生育する作物を養液栽培する場合等においては、全長の長い栽培槽と、発砲スチロール等の軽量材で構成した栽培床パネルとを用い、作物を定植した栽培床パネルを、長い栽培槽に浮かせながら一端側から他端側へと移動させながら、その最終位置で収穫を行うようにする栽培方法がある(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の水耕栽培方法並びに装置に示すような栽培方法や装置においては、浮床移動式であるので、作業の省力化を図ることができると共に、栽培作業用の通路等を省略して栽培槽を多く設置できる等のメリットがある。
しかしながら栽培槽が長くなると、給液口から排液口までの距離が長くなり、それに伴って、栽培槽の長手方向における培養液の温度、溶存酸素濃度、肥料濃度等に大きな相違が生じるため、大きな生育差が生じる問題があった。
また上記栽培条件の不均一の問題をなくすため、栽培槽内への給液量を多くしたり、栽培槽内に温調機器を設置したりする方法等もとられているが、設備費、ランニング費が多くかかるだけで、抜本的な解決方法とは言えなかった。
更に栽培床浮遊式の養液栽培の場合、栽培床が培養液面に接面しているため、作物の根が全て培養液中に浸漬状態となることから、根が空気中から酸素を吸収することができず、酸素不足による発育不良を生じやすいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における養液栽培の問題点を解決し、養液栽培の栽培槽がいくら長くなっても、培養液の条件及びそれに伴う栽培条件の均一性を保つことができ、加えて、栽培床を栽培槽の液面上に浮かせて移動させる方式の養液栽培であっても、作物の根が酸素不足状態になるのを確実に防止することができる養液栽培装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の養液栽培装置は、作物栽培用の培養液を流すための栽培槽と該栽培槽に配置される複数の栽培床とを少なくとも備え、該栽培床を前記栽培槽の長手方向に移動させることで、その移動終端位置で成長した作物を収穫するようにした養液栽培装置であって、前記培養液の流れ方向を、前記栽培床の移動方向である栽培槽の長手方向に対して短手方向になるように構成したことを第1の特徴としている。
また本発明の養液栽培装置は、上記第1の特徴に加えて、栽培床は、その床下面と栽培槽内を流れる培養液の通常栽培水位との間に空隙が生じるようにその配置を構成すると共に、栽培床の移動時には、前記通常栽培水位よりも高く設定された移動時用水位を選択することで、前記栽培床を培養液面上に移動可能に浮かせるように構成したことを第2の特徴としている。
また本発明の養液栽培装置は、上記第1又は第2の特徴に加えて、栽培槽の長手方向に沿う両側の内壁からレール状に突出し、培養液の水位が通常栽培水位にあるときに前記栽培床の下面両辺部を下から支持して載せる、床受レールを備えたことを第3の特徴としている。
また本発明の養液栽培装置は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、栽培槽内へ培養液を供給する給液口を、栽培槽の長手方向に沿う一側に一定間隔で複数配置すると共に、栽培槽内から培養液を排出する排液口を前記栽培槽の長手方向に沿う他側に一定間隔で複数配置したことを第4の特徴としている。
また本発明の養液栽培装置は、上記第2〜第4の何れかの特徴に加えて、通常栽培水位は排液口を開放する構成によって得ると共に、移動時用水位は、排液口の一部乃至全部を閉止し、且つ増液した培養液を栽培槽内に設けたオーバフロー口から排液する構成によって得るようにしたことを第5の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の養液栽培装置によれば、作物栽培用の培養液を流すための栽培槽と該栽培槽に配置される複数の栽培床とを少なくとも備え、該栽培床を前記栽培槽の長手方向に移動させることで、その移動終端位置で成長した作物を収穫するようにした養液栽培装置であって、前記培養液の流れ方向を、前記栽培床の移動方向である栽培槽の長手方向に対して短手方向になるように構成したので、
栽培床については、従来と同様に、作物の生育が進むにつれて、栽培槽内を長手方向に、移動終端位置へ向けて移動させることができる。よって作業者は栽培槽の終端位置で移動してきた栽培床から収穫をすればよいので、作業の省力化を図ることができると共に、栽培作業用の通路等を設ける代わりに栽培槽を多く設置できる。
加えて、培養液は、栽培槽をその長手方向に長く流れるのではなく、略短手方向に流れるので、給液された全ての培養液が栽培槽内で長時間滞留することなく、即ち、滞留している間に培養液の濃度や温度や溶存酸素量が大きく変化してしまうのを防止して、給液時の培養液の性状を栽培槽の全域で十分に保持し、且つ全域で均質な状態で作物に作用することができる。よって、作物を均質且つ良質に生育させることができる。
【0008】
請求項2に記載の養液栽培装置によれば、上記請求項1の構成による作用効果に加えて、栽培床は、その床下面と栽培槽内を流れる培養液の通常栽培水位との間に空隙が生じるようにその配置を構成すると共に、栽培床の移動時には、前記通常栽培水位よりも高く設定された移動時用水位を選択することで、前記栽培床を培養液面上に移動可能に浮かせるように構成したので、
通常栽培水位においては、栽培床の床下面が培養液面上に空隙を介して位置することから、栽培床の下面から下方へ伸び出た根は常に空気にさらされる状態を得ることができる。よって根を酸素不足による不全から確実に保護することができる。
しかも栽培床の移動時には、移動時用水位を選択することで、その時期だけ培養液の液面を上昇させ、栽培床を培養液面上に浮かせて移動可能とさせることができる。よって、例えば新たに定植を済ませた栽培床を栽培槽に追加したい場合には、その際に前記移動用水位を選択して水位上昇させ、追加位置に既存する1つの栽培床を長手方向に向けて押し動かすことで、残る栽培床を次々と伝播させて、ごく容易に移動させることができる。作業者は栽培槽の終端位置で収穫ができ、作業の省力化、栽培作業用通路の省略化を図ることができる。
【0009】
請求項3に記載の養液栽培装置によれば、上記請求項1又は2の構成による作用効果に加えて、栽培槽の長手方向に沿う両側の内壁からレール状に突出し、培養液の水位が通常栽培水位にあるときに前記栽培床の下面両辺部を下から支持して載せる、床受レールを備えたので、
水位の低い通常栽培水位においては、栽培床はその下面両辺部で栽培槽の床受レール上に載置される状態となる。同時に、培養液の液面との間に空隙をもって載置されることなる。これによって栽培床は栽培槽に安定した状態に配置され、栽培槽の下面から下方に延びた根が一部空気にさらされながら培養液に浸かって、安定して栄養と酸素の吸収を行うことができる。
また加えて、栽培槽の長手方向に沿う両側の内壁からレール状に突出する床受レールの上に載置されることで、栽培槽内の培養液面に光が差し込むのを前記床受レールと栽培床との接面により防止することができる。これによって、培養液中に藻などが生えたりする問題もなくすことができる。
【0010】
請求項4に記載の養液栽培装置によれば、上記請求項1〜3の何れかの構成による作用効果に加えて、栽培槽内へ培養液を供給する給液口を、栽培槽の長手方向に沿う一側に一定間隔で複数配置すると共に、栽培槽内から培養液を排出する排液口を前記栽培槽の長手方向に沿う他側に一定間隔で複数配置したので、
培養液は、栽培槽の長手方向に沿う一側に一定間隔で配置された各給液口から栽培槽内に流入され、主として近くの各排液口から栽培槽外へ流出することになる。これによって、培養液を、栽培槽の長手方向の各地点において、実質的に短手方向に確実に流すことができ、且つ各地点での液質差異の少ない均質な流れを得ることができる。
【0011】
請求項5に記載の養液栽培装置によれば、上記請求項2〜4の何れかの構成による作用効果に加えて、通常栽培水位は排液口を開放する構成によって得ると共に、移動時用水位は、排液口の一部乃至全部を閉止し、且つ増液した培養液を栽培槽内に設けたオーバフロー口から排液する構成によって得るようにしたので、
通常の栽培時には、排液口を開放することで簡単に且つ安定して通常栽培水位にすることができる。よって安定した栽培を行うことができる。
また栽培床を移動させる場合は、排液口を閉じて、オーバフロー口から排液することにより、培養液の水位を容易に移動用水位まで上昇させることができる。これによって、必要なときに、確実に且つ容易に栽培槽を液面に浮かせた状態で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る養液栽培装置で、(A)は栽培床を配置していない状態を示す全体概略平面図、(B)は栽培床を栽培槽へ配置する仕方を説明する平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る養液栽培装置の断面構成図で、培養液の水位が通常栽培水位にある状態を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る養液栽培装置の断面構成図で、培養液の水位が移動時用水位にある状態を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る養液栽培装置の床受レールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係る養液栽培装置を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0014】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る養液栽培装置は、栽培槽10と該栽培槽10に配置される栽培床20とを有し、その他に栽培槽10を設置する基礎フレーム30、給液管40、排液管50等を有する。
【0015】
前記栽培槽10は、作物栽培用の培養液を流すための槽で、本発明に係る実施形態では一方向に長く延長された槽からなる。
栽培槽10の上に軽量の栽培床20を複数、配置することで、その栽培槽20に定植された作物の根が栽培槽10内を流れる培養液まで伸びて、培養液から栄養を吸収し、生育できるようになっている。
栽培槽10に配置された各栽培床20は、そこに定植された作物の生育と共に、栽培槽10を一端側から他端側へと長手方向に移動され、その移動終端において収穫される。
【0016】
栽培槽10は、基礎フレーム30の上に設置される槽で、一方向を長手方向として長く延長された状態に構成された両側壁11、12と、前壁13、後壁14、及び底壁15とで構成されている。構成材はプラスチックとするが、金属製、その他の材料を用いることができる。
栽培槽10の長手方向の両側壁11、12のうちの一側の側壁11の内側に沿って、一定間隔で複数の給液口41、41・・・を配置している。この給液口41の取り付けピッチは、例えば50cm〜5mの範囲とすることができる。この給液口41の数、及び各給液口41間の間隔は栽培槽10の長さ、栽培作物の種類、培養液の種類、その他の条件に応じて自由に変更することができる。
給液管40を栽培槽10の外から栽培槽10の内に導くと共に、前記一側の側壁11の内側に沿って長手方向に延長して設け、その途中に複数の給液口41を配置している。
給液管40及び給液口41の栽培槽10内における高さ位置は、後述する通常栽培水位L及び移動時用水位Lよりも下の位置とし、何れにしても栽培床20の配置位置よりも下に隠れるように配置している。
給水管40を栽培槽10内の栽培床20の下に隠れるように配置することで、給水管40内を流れる培養液の温度が外界の日光やその他の状況により容易に変動するのを抑制することができる。
【0017】
前記通常栽培水位Lは、作物の栽培を行う通常時の水位であり、実質的には、栽培槽10の水位を移動時用水位Lとするとき以外の全ての栽培期間が、この通常栽培水位Lとされる。
前記移動時用水位Lは、栽培床20を栽培槽10上を長手方向に移動させる時だけに、一時的に用いる水位である。この移動時用水位Lは、栽培期間中において、間欠的に採用される。
【0018】
栽培槽10の長手方向の両側壁11、12のうちの他側の側壁12、即ち前記一側の側壁11の反対側に沿って、一定の間隔で複数の排液口51、51・・・を配置している。この排液口51の取り付けピッチは、例えば給液口41の場合と同様に、50cm〜5mの範囲することができる。この排液口51の位置は、前記給液口41の丁度向かいにある必要は必ずしもない。本実施形態では、各排液口51の位置は各給液口41の位置から半ピッチ程度ずれた位置に設けている。勿論、排液口51の数、及び各排液口51間の間隔は、栽培槽10の長さ、栽培作物の種類、培養液の種類、その他の条件に応じて自由に変更することができ、給液口41の数と同じにする必要もない。
各給液口41から栽培槽10内に流入した培養液は、給液口41とは反対側である他側の側壁12の排液口51のうち、主として給液口41に近い排液口51に向かって流れて、その排液口51から流出、即ち栽培槽10外に排出される。
よって、栽培槽10の長手方向の各給液口41から栽培槽10内に流入した培養液は、栽培槽10の長手方向に対する略短手方向に、それぞれ短い流長をもって流れ、近くの排液口51に入って排出されることになる。このため、給液された全ての培養液が栽培槽内で長時間滞留するのを防止し、培養液の濃度、温度、溶存酸素量、或いは水位等が、栽培槽10内の長手方向に大きく変化するのを防止できる。その結果、栽培槽10の全域で、均質で且つ新鮮な培養液を作物に供給することができる。よって、作物をいつも均質且つ良質に生育させることができる。
【0019】
なお、上記において「短手方向」とは、栽培槽10の長手方向に対して、端的には直角方向を言うが、斜め方向も含むものとする。ここで、斜め方向としては前記直角方向に対して左右45度の範囲内が好ましいが、直角方向に対して左右60度の範囲内でも可能である。栽培槽10の長手方向が短手方向に対して十分に長い場合を考えると、長手方向に丁度直角な方向に培養液が流れる場合でなくとも、その直角方向に対して45度の範囲内で流れる場合には、実際に培養液の流れる距離は長手方向と比べて十分に短くなる。更に栽培槽10が長手方向に非常に長く、それに比べて短手方向に十分短いような場合は、直角方向に対して例え60度の範囲内で流れる場合であっても、やはり実際に培養液の流れる距離は長手方向と比べて十分に短くなる。よって、このように培養液が長手方向に対して斜め方向に流れる場合も、実質的に培養液が短手方向に流れていると言える。
【0020】
前記各排液口51の栽培槽10内での高さ位置は、前記通常栽培水位Lと一致する。即ち、各排液口51の高さをもって、通常栽培水位Lを定める。
各排液口51は、栽培槽10の底壁15から栽培槽10外に導出され、栽培槽10の下を通る排液管50にそれぞれ接続される。
排液管50には排液バルブ52が設けられ、該排液バルブ52が閉止されることで、各排液口51からの排液が停止される。また排液バルブ52が開放されることで、排液口51からの排液が行われ、栽培槽10内の培養液の水位が通常栽培水位Lに調整される。勿論、排液バルブ52による排液口51の閉止は、複数の排液口51の一部とすることもできる。これは排液口51の一部の閉止により水位が移動時用水位Lまで上昇すればよいことによる。
【0021】
排液管50の前記排液バルブ52より下流位置にオーバフロー管60が接続され、オーバフロー口61が栽培槽10内に開口している。
オーバフロー口61の栽培槽10内での高さ位置は、前記移動時用水位Lと一致する。即ち、オーバフロー口61の高さをもって、移動時用水位Lを定めている。
オーバフロー口61は、本実施形態では栽培槽10の前壁13の近傍に設けている。勿論、オーバフロー口61は、複数個を栽培槽10に分散させて設けてもよい。但し、栽培床20が移動する際に、栽培床20の床下面21等が邪魔とならない位置に設ける必要がある。
【0022】
前記栽培床20は、栽培槽10の上縁の開口付近に配置される。この栽培床20は、通常時においては、載置状態とされる。しかしながら栽培床20の移動時には、培養液面に浮かせる。このため、培養液に浮くことができるような材質のもので構成する。本実施形態では発砲スチロール製としている。
栽培床20は、その幅が栽培槽10の両側壁11、12間寸法より少し短くなるように構成し、一方、長手方向の寸法は、1栽培床20当たりの栽培作物の数、或いはその他の条件に応じて適当な寸法とすることができる。全体としては矩形状になるようなパネルに構成している。また厚みは、栽培作物の種類に応じて、栽培するのに適した寸法にすることができる。
【0023】
栽培床20は、普段、即ち通常栽培水位Lでの栽培が行われているときは、栽培槽10に載置された状態とされる。そして載置された状態において栽培床20の床下面21と前記通常栽培水位Lとの間に空隙Sが生じるように構成される。
栽培床20の載置は、栽培槽20に備えられた床受レール70によって、栽培床20の下面21の両縁部が下から支持されることにより行われる。
前記床受レール70は、その床受部71が栽培槽10の長手方向に沿う両側壁11、12の内壁から水平に突出するように構成される。これにより各栽培床20の床下面21の両縁部が前記床受レール70の床受部71上に接面して載り、水平状態に保持される。
栽培床20の床下面21の両縁部が床受レール70の床受部71上に載置された状態では、栽培床20が栽培槽10の蓋の役割を果たし、光が栽培槽10と栽培床20との間から内部に入るのが防止される。
【0024】
前記床受レール70は、図4に示すような断面をもつ長いレール上の部材で、前記床受部71の他に取付部72を備えている。取付部72は弾力性を備えるようにしており、この取付部72を栽培槽10の両側壁11、12の上端に対して被せるように嵌め合わせることで、床受レール70の取り付けがなされる。床受レール70が栽培槽10に取り付けられた状態において、床受部71に位置が通常栽培水位Lより少し上の位置となり、両者間に空隙Sが構成される。
【0025】
図1(B)を参照して、栽培床20は栽培槽10の長手方向に並べられて配置される。栽培槽10から外れた位置(作物を栽培床20に定植する位置)において作物の定植を終えた栽培床20aは、栽培床20の栽培槽10への移設初期位置(本実施形態では栽培槽10の先頭位置)において、栽培槽10に移される。この移設初期位置において栽培槽10に移設、配置された栽培床20bは、以後、作物の生育に合わせて栽培槽10の長手方向に、移動終端位置へ向けて移動される。移動終端位置(本実施形態では栽培槽10の後端位置)まで移動された栽培床20cでは、作物が成長して収穫に適した状態となっているので、時期を見計らって栽培床20を栽培槽10から取り外し、作物の収穫を行う。
栽培槽20の移動は、例えば栽培槽10の移動終端位置で収穫済みの栽培床20cを栽培槽10から取り外した時点で、栽培槽20の水位を移動時用水位Lに上げ、栽培槽10内に配置された全ての栽培床20を培養液に浮かした状態とし、これによって各栽培床20を、前記栽培槽10から取り除いた栽培床20の分だけ移動させることにより行う。
栽培槽10内に配置される各栽培床20が長手方向の移動終端位置へ向けて移動されると、栽培槽10の先頭位置にある栽培床20移設初期位置が空くので、その空いた移設初期位置に新たな栽培床20bを移設することができる。
このようにして、収穫が終わった栽培床20を移動終端位置で除くと、新たな栽培床20を移設初期位置に移設することで、栽培槽10上に隙間なく栽培床20を配置しながら、栽培槽10の長手方向に栽培床20を移動させてゆくことで、連続的な収穫を得ることができる。
なお、図1(B)において、固定パネル80を栽培槽10のオーバフロー口61のある部分の上に配置して、オーバフロー口61が栽培床20で塞がれることがないようにしている。
【0026】
図2は、栽培槽10が通常栽培水位Lにある状態を示す。この状態は、排液バルブ52を開放することで得ることができる。栽培槽10上に載置された栽培床20の作物はこの状態で育成される。この通常栽培水位Lでは各給液口41から供給された培養液が栽培槽10の長手方向ではなく短手方向に短い距離を流れて、近くの排液口51から排出される。また通常栽培水位Lでは、栽培床20が床受レール70上に載置された状態となって保持される共に、栽培床20の床下面21が液面よりも上方位置となり、その間に空隙Sが存在する。
図3は、栽培槽10が移動時用水位Lにある状態を示す。この状態は、排液バルブ52を閉止して排液口51からの排液を停止し、水位をオーバフロー口61の位置まで上げることで得ることができる。この移動時用水位Lは、栽培床20を移動させるときに用いられる。従って、この移動時用水位Lが選択される時期は、全栽培期間中において間欠的に選択され、各移動時用水位L選択時の時間は短く、また全体としての移動時用水位選択時間も全栽培期間に比べてごく僅かな時間と言える。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は養液栽培を行う装置として産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 栽培槽
11 側壁
12 側壁
13 前壁
14 後壁
15 底壁
20 栽培床
20a 栽培床
20b 栽培床
20c 栽培床
21 床下面
30 基礎フレーム
40 給液管
41 給液口
50 排液管
51 排液口
52 排液バルブ
60 オーバフロー管
61 オーバフロー口
70 床受レール
71 床受部
72 取付部
80 固定パネル
通常栽培水位
移動時用水位
S 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物栽培用の培養液を流すための栽培槽と該栽培槽に配置される複数の栽培床とを少なくとも備え、該栽培床を前記栽培槽の長手方向に移動させることで、その移動終端位置で成長した作物を収穫するようにした養液栽培装置であって、前記培養液の流れ方向を、前記栽培床の移動方向である栽培槽の長手方向に対して短手方向になるように構成したことを特徴とする養液栽培装置。
【請求項2】
栽培床は、その床下面と栽培槽内を流れる培養液の通常栽培水位との間に空隙が生じるようにその配置を構成すると共に、栽培床の移動時には、前記通常栽培水位よりも高く設定された移動時用水位を選択することで、前記栽培床を培養液面上に移動可能に浮かせるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の養液栽培装置。
【請求項3】
栽培槽の長手方向に沿う両側の内壁からレール状に突出し、培養液の水位が通常栽培水位にあるときに前記栽培床の下面両辺部を下から支持して載せる、床受レールを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の養液栽培装置。
【請求項4】
栽培槽内へ培養液を供給する給液口を、栽培槽の長手方向に沿う一側に一定間隔で複数配置すると共に、栽培槽内から培養液を排出する排液口を前記栽培槽の長手方向に沿う他側に一定間隔で複数配置したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の養液栽培装置。
【請求項5】
通常栽培水位は排液口を開放する構成によって得ると共に、移動時用水位は、排液口の一部乃至全部を閉止し、且つ増液した培養液を栽培槽内に設けたオーバフロー口から排液する構成によって得るようにしたことを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の養液栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−254737(P2011−254737A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130789(P2010−130789)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000162515)協和株式会社 (7)
【Fターム(参考)】