説明

駆動ベルトのリングコンポーネントの製造方法

連続可変トランスミッションのための駆動ベルト(3)において使用するための金属のリング(32)を製造する方法であって、環状の金属のフープ(14)の周方向長さを増大しながら該フープの厚さを減少させ、塑性変形によってリング(32)を形成する工程と、リング(32)の材料を硬化させるために該リング(32)を熱処理する工程とを含む方法において、圧延の工程が完了した後に、製造する方法の1つ又は複数の残りの工程のために、リング(32)の温度が600℃よりも低く保たれる、すなわち、リングの塑性変形によって生じたリング(32)の材料の冷間加工効果が前記熱処理の前に除去されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端の、薄い、可撓性の金属のための製造方法に関し、このバンドは、一般的に、自動車において用いられる公知の連続可変トランスミッション又はCVTの2つの調節可能なプーリの間の動力伝達のための駆動ベルトに設けられている。少なくとも駆動ベルトにおける適用に関して、このようなバンドはリングコンポーネントとも呼ばれる。さらに、本発明は前記方法によって得られる製品に関する。
【0002】
プッシュベルトとして知られる駆動ベルトの特定のタイプにおいて、多数のこのようなリングが、少なくとも1つの、しかしながら通常は2つの、積層された、すなわち半径方向で相互に嵌合されたセットとして組み込まれている。さらに、公知のプッシュベルトは、1つ又は複数のこのようなバンドセットに摺動可能に取り付けられた多数の横断金属エレメントを有している。プッシュベルト用途において、従来のリングはマルエージング鋼から形成されており、このタイプの鋼は、特に、材料を溶接及び塑性変形させるための比較的有利な可能性を有すると共に、少なくとも適切な熱処理の後、大きな引張強さという特性と、摩耗及び曲げ及び/又は引張応力疲労に対する優れた耐性という特性を備える。
【0003】
公知のリングは、優れた引張強さ、降伏強さ、曲げ強さと、金属疲労に対する高い耐性とを得るために硬さの高いコア材料が設けられており、このリングコアは、リング材料の、実質的により硬い、ひいてはより耐摩耗性の外面層に収容されている。この外面層は、リング内部の応力を制限し、リングに十分な弾性を与えて長手方向の曲げ及び疲労破壊に対する耐性を許容するために、最大の厚さが与えられている。もちろん、特にこの最後の特徴は、リングをプッシュベルトとして適用する場合に極めて重要である。なぜならば、リングは、耐用寿命の間に、多数の荷重及び曲げサイクルに曝されるからである。
【0004】
前記の所望の材料特性を得るために、公知の製造法は少なくとも以下の工程を有する。ベース材料のプレートから開始して、このプレートは円筒状に曲げられ、その後、突き合わされたプレート端部が溶接されて管を形成し、この管がその後焼きなましされ、材料構造を均質化しかつ内部応力を除去する。この後、管は、多数の環状のフープに切断され、これらのフープは所望の厚さに、すなわち最終製品に対する要求に応じて圧延される。圧延の後、薄くて可撓性のフープは、リングと呼ばれる。
【0005】
リングは、さらなる焼きなましステップ、すなわち前の冷間圧延工程の加工硬化若しくはひずみ硬化及び延性減少硬化を排除するためのリング焼きなまし工程、が行われる。その後、各リングを2つ以上の回転するローラの周囲に取り付けて前記ローラを離反させることによって、リングは、所望の円周長さに、すなわち最終製品に対する要求に応じて、較正され、これにより、リングは伸長される。このリング較正工程中に、欧州特許出願公開第1273824号明細書に記載されているように、リングには、特に所望の内部応力分配が生じる。較正の後、リングは、時効又はバルク析出硬化及び窒化又は表面硬化の熱処理が行われる。最後に、積層されたリングのセットは、このように処理された多数のリングを半径方向で重ねることによって、すなわち嵌合することによって形成される。
【0006】
プッシュベルトのリングコンポーネントのための上記製造法の複数の変化態様が従来提案されており、時には実用に供されているが、その基本的な工程、すなわちフープ形成、フープからリングへの圧延、リング焼きなまし、リング較正、及びリング硬化の基本的な工程は、常に製造法にとって必須のままであり、したがって、プッシュベルト製造において汎用されている。しかしながら、普及した技術知識及び判決にもかかわらず本出願人によって行われた、広範囲なコンポーネント試験を含む最近の研究は、驚くべきことに、加工硬化された後に時効及び窒化されたリング材料の疲労強度と、加工硬化の後、すなわち時効及び窒化される前に焼きなましされた加工リング材料の疲労強度との間にはほとんど違いがないことを示した。この観察の結果、出願人はプッシュベルトリングコンポーネント製造法におけるリング焼きなまし工程の必須の実施は技術的先入観に基づくものであるとの認識を得た。したがって、製造法全体からリング焼きなまし工程を省略し、これにより、有利には少なくとも製造法の複雑さを軽減することが本発明において提案される。
【0007】
上記の変更された製造法は、フープからリングへの圧延のために使用される装置におけるリング較正の工程を行うことによって、公知の製造法をさらに単純化することができる。このような圧延装置は、欧州特許出願公開第1569764号明細書に詳細に記載されており、いわゆる2つのベアリングローラを有することが知られており、これらのベアリングローラの周囲に環状のフープが引っ張られた状態で掛け渡され、この状態は、前記ローラの少なくとも一方を他方のローラから半径方向に離反させることによって実現及び維持される。圧延の間、少なくとも一方のベアリングローラは、引っ張られたフープを回転させるように回転駆動させられ、少なくとも1つのいわゆる圧延ローラがフープに対して押し付けられ、フープの塑性変形を行い、特にフープの半径方向又は厚さ寸法から、フープの軸方向又は幅寸法又は接線方向又は周方向長さ寸法への材料の流動を行う。本発明によれば、潜在的に、リング較正工程をリング製造方法全体から省略することができるが、リング較正工程を、フープからリングへの圧延の工程が完了した後に圧延装置において行うこともできる。後者の改良は、リングを回転させ続けながら、しかしながら圧延リングがリングに顕著な(押圧)力を加えることなく、圧延装置のベアリングローラをさらに一層離反させることによって実現される。
【0008】
本発明による圧延装置の、上で考慮された二重利用のために、少なくとも一方のベアリングローラに円筒樽形形状、すなわち少なくとも僅かに凸状に湾曲した円筒面を提供することが好ましい。
【0009】
出願人は、現時点で考えられる製造法によって得られた最終製品リングの結果的な機械的特性に対する、複数の関連する方法及び製造パラメータの影響も研究した。まず、リング材料の延性及び疲労強度の損失を制限するために、厚さの減少を制限すること、すなわちフープからリングへの圧延の間における(冷間)加工硬化の程度を制限することが好ましい。マルエージング鋼が、主に、現在の製造法において50%よりも著しく大きい冷間加工比、すなわち厚さ減少を許容する場合、この冷間加工比は、好適には50%以下に制限されるべきであり、より好適には20%〜40%の範囲の値を有する。
【0010】
さらに、リング材料の前の(冷間)加工硬化が、その後の窒化工程の効果を著しく高めることが分かった。明らかに、リング表面におけるアンモニアガスの解離及び/又はリングの鋼結晶格子への窒素原子の吸収及び内方拡散が、これによって触媒作用を受ける。つまり、本発明は、窒化熱処理のために必要とされる処理時間を好適には短縮し、窒化温度を低下させ、又はアンモニア濃度を低下させる。
【0011】
択一的に、向上した窒化の観察された現象は、欧州特許出願公開第1815160号明細書に記載されたいわゆるリングセット窒化、すなわち、積層されたリングのセットを製造するための方法に著しく適したものにする。この方法では、このようなセットは、時効及び窒化工程の前に(予め)組み立てられるので、時効及び窒化工程は、個々のリングではなく、積層されたリングのセット全体において行われる。このようなリングセット窒化は、少なくとも前記積層されたセットの中央に配置されたリングに対してリング窒化の減じられた効果を有することが、欧州特許第1815160号明細書から知られている。
【0012】
発明の基本的原理を図面を参照して例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リングコンポーネントを有する駆動ベルトが設けられた公知の連続可変トランスミッションの例を概略的に示す図である。
【図2】ベルトの一部を示す斜視図である。
【図3】駆動ベルトのリングコンポーネントの公知の製造法の、本発明に関連する部分を象徴的に示す図である。
【図4】2つのタイプの試験片に対して行われた疲労強度試験の実験結果を示す図である。
【図5】本発明による駆動ベルトリングコンポーネントの製造法の一部を象徴的に示す図である。
【0014】
図1は、エンジンと駆動輪との間において自動車の駆動ラインにおいて一般的に用いられる公知の連続可変トランスミッション若しくはCVTの中央部分を示している。トランスミッションは2つのプーリ1,2を有しており、各プーリには2つの円錐形のプーリディスク4,5が設けられており、これらのプーリディスクの間にほぼV字形のプーリ溝が形成されており、そのうち一方のディスク4は、ディスクが配置された個々のプーリ軸6,7に沿って軸方向に可動である。一方のプーリ1,2から他方のプーリ2,1へ回転運動ω及び付随するトルクTを伝達するために、プーリ1,2の周囲に駆動ベルト3が巻き掛けられている。
【0015】
トランスミッションは、概して、前記少なくとも一方のディスク4に、それぞれ他方のプーリディスク5に向かって軸方向の締付力Faxを加える作動手段も有しており、これにより、ベルトが両ディスクの間に締め付けられる。また、トランスミッションの速度比がこれによって決定され、この速度比は以下では、被動プーリ2の回転速度と駆動プーリ1の回転速度との比として定義される。
【0016】
公知の駆動ベルト3の例の一部がより詳細な図2に示されており、このベルト3は無端引張り手段31を有している。引張り手段31は、部分的にしか示されておらず、この実施例では、薄くて平坦な、すなわち帯状の、可撓性の金属リング32の2つのセットから成る。さらに、ベルト3は、引張り手段31と接触しておりかつ引張り手段31によって保持されている多数の板状の横断エレメント33を有している。エレメント33は、入力トルクTinがいわゆる駆動プーリ1に加えられ、ディスク4,5とベルト3との摩擦により駆動プーリ1の回転が同様の回転する駆動ベルト3を介していわゆる被動プーリ2に伝達される時に、前記締付力Faxを受け取る。
【0017】
CVTにおける作動中、ベルト3、特にベルトのリングコンポーネント32は、周期的に変化する引張応力及び曲げ応力、すなわち疲労荷重を受ける。通常、リングコンポーネント32の疲労に対する耐性又は疲労強度は、このように、リングコンポーネントによって伝達される与えられたトルクTにおける駆動ベルト3の耐用寿命を決定する。したがって、最小限の材料コスト及び処理コストの組合せで所要のリング疲労強度を実現することが、駆動ベルト製造法の開発における従来の一般的な目標であった。
【0018】
図3は、駆動ベルト製造の初期以来実用化されている、駆動ベルトリングコンポーネント32のための公知の製造法の本発明の関連する部分を示しており、ここでは、別々の工程がローマ数字で示されている。第1の工程Iにおいて、通常0.4mm〜0.5mmの範囲の厚さを有するベース材料の薄いシート又はプレート11が円筒形に曲げられ、突き合わされたプレート端部12が第2の工程IIにおいて溶接され、これにより、開放した中空の円筒若しくは管13を形成する。方法の第3の工程IIIにおいて、管13は焼きなましされる。その後、第4の工程IVにおいて、管13は多数の環状のフープ14に切断され、これらのフープはその後、第5の工程Vにおいて圧延され、伸長されながら厚さが0.250mm未満、通常は約185μmに減じられる。圧延の後、フープ14は通常、リング32と呼ばれる。
【0019】
次いで、リング32は、600℃よりも著しく高い温度、例えば約800℃でのリング材料の回収及び再結晶化によって、前の圧延工程(すなわち第5の工程V)の加工硬化効果を除去するためのさらなる又はリング焼きなまし工程VIが行われる。その後、第7の工程VIIにおいて、リング32は較正される。すなわち、リング32は、2つの回転するローラの周囲に取り付けられ、前記ローラを互いに離反させることによって所定の円周長さまで伸長させられる。この第7の工程VIIにおいて、内部応力分配もリング32に提供される。その後、リング32は、2つの別個の工程、すなわち、時効若しくはバルク析出硬化の第8の工程VIIIと、窒化若しくは表面硬化の第9の工程IXとにおいて、熱処理される。特に、このような両熱処理は、通常、リング時効のための窒素及び僅かな、例えば約5体積%の水素と、リング窒化のための窒素及びアンモニアとから成る、制御されたガス雰囲気を含む工業用オーブン若しくは炉においてリング32を加熱することを含む。両熱処理は、通常、400℃〜500℃の範囲の温度で行われ、リング32のためのベース材料(マルエージング鋼合金組成)と、リング32のための所望の機械的特性とに応じて、それぞれ約45〜120分間継続することができる。この後者に関しては、通常、520HV1.0以上のコア硬さ値、875HV0.1以上の表面硬さ値、及び20〜40μmの、択一的に窒素拡散ゾーンとも呼ばれる窒化された表面層の厚さが目標とされる。
【0020】
最後に、このように処理されたリング32の積層されたセット31は、図3にさらに、最後に示された第10の工程Xにおいて示されているように、多数のリング32を半径方向に積層する、すなわち嵌合することによって形成される。もちろん、積層されたセット31のリング32は、そのために適切に寸法決めされなければならず、例えば、リング31を互いに嵌合させることができるように、周方向長さが僅かに異なっていなければならない。このために、積層されたセット31のリング32は、通常、リング32のストックから目的に応じて選択される。
【0021】
図4は、本発明の基礎となる多数の疲労試験のうちの選択の結果を示すグラフを示している。関連試験は、2つの異なるタイプの試験片に対して行われた。疲労試験はそれ自体公知であり、最小値σMINと最大値σMAXとの間を周期的に、特に正弦波状に変化する引張応力に試験片を、破壊するまで曝すことに関する。この疲労試験は、試験において加えられる前記最小応力及び最大応力の応力比(すなわちσMIN/σMAX)及び応力振幅(すなわち[σMAX−σMIN]/2)によって特徴付けられかつ規定される。破壊までの応力サイクルの数は、試験片の疲労強度を表し、この数は、図4に前記応力振幅に対する対数目盛においてプロットされている。このような疲労試験の測定結果における典型的な固有の拡散のため、各試験は、対応試験片と、同じ応力比及び応力振幅試験設定とを用いて通常は複数回反復され、この場合も複数回反復された。つまり、図4のグラフにおけるそれぞれの点は、上記方法によって得られた疲労試験結果を表すのに対し、前記応力比は、行われた全ての試験の間一定に保たれる。図4における1つのタイプの試験片から得られたプロットされた試験結果を通じた直線近似(linear fit)は、一般的に知られるウェーラー曲線(の一部)を表す。
【0022】
図4において、前記2つの異なるタイプの試験片A及びBから得られた試験結果は、それぞれ、×印及び黒点によって示されている。本発明の関連において、前記2つのタイプの試験片A及びBは単に、試験片の材料が、圧延工程(例えば上記工程V)等の同じ冷間塑性変形を受けた後で、かつ窒化及び時効の前記熱処理を受ける前に、焼きなましされた、つまりタイプAであるか、焼きなましされていない、つまりタイプBであるかだけを特徴とする。2つのタイプの試験片A及びBの基本材料組成は同じであり、自動車CVT用途のために市販されている、本明細書で例示されている駆動ベルト3において現在用いられているマルエージング合金組成と対応する。
【0023】
図4から、試験片A及びBの材料構造は著しく異なるが、両タイプの試験片A及びBは同じ疲労強度を示すことが明らかに分かる。例えば、加工硬化された試験片Bのコア硬さは約625HV1.0であったのに対し、焼きなましされた試験片Aのコア硬さは約550HV1.0でしかなかった。したがって、フープからリングへの圧延の後に焼きなましする現在の実用は、実際には技術的な先入観に基づくものであると結論づけられた。したがって、本発明では、製造法全体からリング焼きなましの工程VIを省略し、これにより有利には少なくとも製造法の複雑さを低減することが提案される。このように単純化された製造法の関連する部分が、図5に示されている。
【0024】
図5には、本発明に従ってリング製造法から前記第6の工程VIを排除することが示されており、これにより、リング32の(フープからリングへの)圧延の第5の工程Vの後、即座にリング32を較正する第7の工程VIIが行われる。つまり、圧延(工程V)の間にリング32の塑性変形により生じたリング32の材料の冷間加工効果は、前記熱処理(工程VIII;IX)の前に除去されない。
【0025】
実際、新たな、単純化された製造法は、フープからリングへの圧延(工程V)のために使用される同じ装置においてリング較正(工程VII)の工程を行うことによって、公知の製造法をさらに一層単純化することができる。図5に概略的に示されているように、公知の圧延装置は2つのいわゆるベアリングローラ50及び51を有しており、これらのベアリングローラ50,51の周囲に前記環状のフープ14が実際の圧延の前に巻き掛けられ、前記ローラ50の少なくとも一方が他方のローラ51から半径方向に離反させられることによって引っ張られた状態にされる。実際の圧延の間、少なくとも一方のベアリングローラ50,51は、引っ張られたフープ14を回転させるように回転駆動され、少なくとも1つの別の、いわゆる圧延ローラ52がフープに対して押し付けられ、これにより、フープの塑性変形を生じさせ、特にフープ14の半径方向寸法若しくは厚さ寸法からフープの軸方向寸法若しくは幅及び接線方向長さ若しくは周方向長さ寸法への材料の流動を生じさせる。その後、すなわちフープからリングへの圧延の工程Vが完了した後、すなわち所望の厚さのリング32が得られた後、リング32は、リング32を回転させながら、しかしながら前記圧延ローラ52がリングに著しい(押圧)力を加えることなく、圧延装置の前記ベアリングローラ50,51をさらに離反させることによって較正される。
【0026】
本発明によれば、圧延装置及び圧延工程(工程V)の処理条件、例えばフープ14に加えられる力が設定されることによって、圧延されたリングが、特にリング32の最終的に実現された周方向長さに関して、駆動ベルトにおける使用のための所要の特性を有するならば、リング較正の工程VIIが完全に省略されてもよい。本発明によるリング製造法全体のこの後者の態様は図6に示されている。
【0027】
さらに、図6において、前記プレート11ではなくストリップセクション10の形式のベース材料の使用を必要とする製造法全体の別の単純化が示されており、前記ストリップセクション10は通常はこのようなストリップ材料のコイルから切断されている。このようなストリップセクション10には既に、プレート状材料を均一な円筒形状に曲げるために最小限必要とされる公知のプレート状材料の厚さと比較して制限された厚さ、例えば0.25mm〜0.35mmの範囲の厚さが設けられている。この態様においては、フープからリングへの圧延工程(工程V)における冷間加工比、すなわち厚さ減少を有利には制限することができる。図6に示されているように、ストリップセクション10は第1の工程Iaにおいて環状に曲げられ、第2の工程IIaにおいて、突き合わせたストリップ端部9が結合、例えば溶接され、これにより環状のフープ14が直接に形成される。その後、フープ14は、方法の第3の工程IIIにおいて焼きなましされた後、工程Vにおいて、厚さを減じるように圧延される。このように、有利には前記冷間加工比を制限することができるだけでなく、発明のこの特定の実施形態において、製造法全体から別の工程、すなわちチューブ13を環状のフープ14に切断する工程(工程IV)が省略されてよい。
【0028】
最後に、図3には、時効の工程VIII及び窒化の工程IXが引き続き個々のリング32に対して行われるように示されているが、このような工程は本発明に関連して全く必要ではない。実際、本発明に従ってリング製造法全体からリング焼きなましの工程VIを省略することに加えて、時効及び窒化の前記工程VIII,IXは同様に、又は好適には、同時に行われてよい及び/又は図6に示されたようにリング32の予め組み立てられた積層されたセット31に対して行われてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続可変トランスミッションのための駆動ベルト(3)において使用するための金属のリング(32)を製造する方法であって、
環状の金属のフープ(14)の周方向長さを増大しながら該フープの厚さを減少させ、塑性変形によってリング(32)を形成する工程と、
リング(32)の材料を硬化させるために該リング(32)を熱処理する工程とを含む方法において、
圧延の工程が完了した後に、製造する方法の1つ又は複数の残りの工程のために、リング(32)の温度が600℃よりも低く保たれることを特徴とする、連続可変トランスミッションのための駆動ベルト(3)において使用するための金属のリング(32)を製造する方法。
【請求項2】
連続可変トランスミッションのための駆動ベルト(3)において使用するための金属のリング(32)を製造する方法であって、
環状の金属のフープ(14)の周方向長さを増大しながら該フープの厚さを減少させ、塑性変形によってリング(32)を形成する工程と、
リング(32)の材料を硬化させるために該リング(32)を熱処理する工程とを含む方法において、
圧延工程と硬化工程との間に、リング(32)の材料が再結晶化されないことを特徴とする、連続可変トランスミッションのための駆動ベルト(3)において使用するための金属のリング(32)を製造する方法。
【請求項3】
環状のフープ(14)の厚さ減少が、50%以下であり、好適には20〜40%の範囲の値を有する、請求項1又は2記載の製造する方法。
【請求項4】
リング(32)を熱処理する工程の前に、多数のリング(32)が互いに半径方向に嵌合されてリング(32)の積層されたセット(31)を形成し、該セットがその後全体として熱処理される、請求項1から3までのいずれか1項記載の製造する方法。
【請求項5】
リング(32)に所望の厚さ及び所望の周方向長さを提供するために圧延装置が使用される、請求項1から4までのいずれか1項記載の製造する方法。
【請求項6】
リング(32)を熱処理する工程において、リング(32)が、400〜500℃の範囲の温度のアンモニアを含む制御されたガス雰囲気中に、45分未満だけ配置される、請求項1から5までのいずれか1項記載の製造する方法。
【請求項7】
フープ(14)の厚さを減じる工程の前に、フープ(14)が、まずストリップセクション(10)を環状に曲げ、次いで突き合わせたストリップ端部(9)を結合することによって形成される、請求項1から6までのいずれか1項記載の製造する方法。
【請求項8】
ストリップセクション(10)が、0.25〜0.35mmの範囲の厚さを有する、請求項7記載の製造する方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の製造する方法に従って少なくとも1つのリングコンポーネント(32)が製造された、多数の横断金属エレメント(40)を備えた少なくとも1つの金属のリング又は金属のリング(32)の積層されたセット(31)を有する駆動ベルト(1)。
【請求項10】
600HV1.0より大きい、好適には約625HV1.0のコア硬さ値を有する少なくとも1つの平坦で薄い金属のリング(32)を有する駆動ベルト(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518672(P2011−518672A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506579(P2011−506579)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055166
【国際公開番号】WO2009/132689
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany