説明

駆動モジュール組立体およびカメラモジュール

【課題】駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定でき、寸法不良や動作不良、撮像品質不良等の製造不良の発生を防止できる駆動モジュール組立体およびこの駆動モジュール組立体を備えたカメラモジュールを提供する。
【解決手段】駆動モジュール2には、中心軸Oを挟んで対向する少なくとも1対の第1係合部87bが形成され、アダプタ部材30の縁面29には、第1係合部87bと対応する位置に第2係合部25が形成され、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを当接させつつ、第1係合部87bと第2係合部25とが係合されることにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30とが固定されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動モジュール組立体およびカメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラ機能付き携帯電話などの小型の電子機器において、撮像レンズユニットなどの被駆動体を駆動するために、形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用して駆動を行う駆動モジュールが種々提案されている。
【0003】
この種の駆動モジュールとしては、例えば特許文献1に示されているように、レンズが取り付けられる被駆動体と、被駆動体を一定方向に沿って移動自在に収容する筒状の支持体と、支持体の一方側の筒端部に配置された板部材(モジュール板部材)と、一定方向に沿う付勢力を被駆動体に付与するバネ部材と、を備えている。
支持体の筒外周部には、形状記憶合金ワイヤが張架されており、この形状記憶合金ワイヤに対して電流を流すことによりジュール熱を発生させる。そして、この発熱によって形状記憶合金ワイヤを収縮させ、バネ部材の付勢力に抗してレンズユニットを吊り上げて支持体の軸線方向に移動させている。
【0004】
ところで、駆動モジュールは、電子機器の製造者に納品された後、制御基板に取り付けられ、駆動モジュールが取り付けられた制御基板ごと電子機器へ搭載される。駆動モジュールが取り付けられる制御基板には、レンズにより集光された光を結像する撮像素子や電力を供給するための配線等が設けられている。ここで、レンズや撮像素子の仕様は、駆動モジュールが搭載される電子機器により異なっている。このレンズや撮像素子の仕様違いに対応するため、一般に、駆動モジュールと制御基板との間にはアダプタ部材が設けられている。
【0005】
図14は、従来技術にかかる駆動モジュール2およびアダプタ部材30からなる駆動モジュール組立体1の分解斜視図である。
なお、駆動モジュール組立体1の中心軸Oに沿う方向をZ方向とし、駆動モジュール組立体1の制御基板32への取り付け側(図14における下側)を−Z側とし、反対側(図14における上側)を+Z側とする。また、中心軸Oと直交する方向をR方向とし、中心軸O側を−R側とし、駆動モジュール2の外側を+R側としている。
【0006】
図14に示すように、駆動モジュール組立体1は、駆動モジュール2と、駆動モジュール2の−Z側に配置されるアダプタ部材30とを備えている。また、駆動モジュール2は、被駆動体4および支持体5の外方を覆うカバー11を備えている。
アダプタ部材30は、所定の厚みを有した箱状の部材であり、不図示の撮像素子に対応した位置に所定の形状の開口が形成されている。
駆動モジュール2とアダプタ部材30とは、駆動モジュール2の−Z側の面に形成されたモジュール側基準面90と、アダプタ部材30の+Z側の面に形成されたアダプタ側基準面27とが当接することで相対位置が決定されるようになっている。
【0007】
また、アダプタ部材30のZ方向の厚さを変更することで、駆動モジュール2側のレンズ(不図示)と制御基板32の撮像素子との離間距離を変更でき、レンズの仕様違いによる焦点位置の違いに対応可能となっている。また、アダプタ部材30の開口形状を変更することで光の照射範囲を変更でき、撮像素子の仕様違いに対応可能となっている。
このように、駆動モジュール2と制御基板32との間に、撮像素子やレンズに対応したアダプタ部材30を設けることで、撮像素子やレンズの仕様違いに対応している。
【0008】
一般に、駆動モジュール2とアダプタ部材30との固定には、接着剤が用いられる。具体的には、カバー11の−Z側端面11cと、アダプタ部材30の+Z側面との間に接着材を流し込み、接着剤を硬化させることにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを接着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−128708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した接着剤によるアダプタ部材30と駆動モジュール2との固定では、以下のような問題がある。
駆動モジュール2の+R側から接着材を流し込んだ後、接着剤が硬化するまでの間は、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対位置を治具等により固定する必要がある。したがって、接着剤のみで駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定する場合には、工程が煩雑となるおそれがある。
【0011】
また、駆動モジュール2とアダプタ部材30との間に流し込まれた接着剤は、硬化前にカバー11の+R側および−R側にはみ出るおそれがある。
カバー11の+R側にはみ出た接着剤が硬化すると、駆動モジュール組立体1の外表面の段差となり、駆動モジュール組立体1の寸法不良が発生するおそれがある。
カバー11の−R側にはみ出た接着剤がアダプタ部材30の+Z側面に広がってモジュール側基準面90とアダプタ側基準面27との間に浸入すると、駆動モジュール2とアダプタ部材30とが相対的に傾斜した状態で固定されるおそれがある。これにより、焦点位置のズレが生じ、撮像品質不良が発生するおそれがある。また、カバー11の−R側にはみ出た接着剤が被駆動体4と支持体5との間に浸入すると、支持体5に対する被駆動体4の円滑な移動が阻害され、駆動モジュール2の動作不良の原因となるおそれがある。特に、接着剤が紫外線硬化型の場合には、カバー11の−R側にはみ出た接着剤が硬化できず、被駆動体4の内部深くに浸入するおそれがある。
【0012】
そこで本発明は、駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定でき、寸法不良や動作不良、撮像品質不良等の製造不良の発生を防止できる駆動モジュール組立体およびこの駆動モジュール組立体を備えたカメラモジュールの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の駆動モジュール組立体は、筒状の支持体と、前記支持体の内側において前記支持体の軸方向に沿って往復移動可能に配置された被駆動体と、を備えた駆動モジュールと、前記駆動モジュールの前記軸方向における一方側に、前記支持体の中心軸と同軸上に配置されたアダプタ部材と、を備えた駆動モジュール組立体であって、前記駆動モジュールの前記一方側の面には、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材との前記軸方向における相対位置を決定するモジュール側基準面が形成され、前記アダプタ部材の前記軸方向における他方側の面には、前記モジュール側基準面と当接することにより、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材との前記軸方向における相対位置を決定するアダプタ側基準面が形成され、前記駆動モジュールには、前記中心軸を挟んで対向する少なくとも1対の第1係合部が形成され、前記アダプタ部材には、前記アダプタ側基準面とは異なる部分に、前記第1係合部と対応する位置に第2係合部が形成され、前記モジュール側基準面と前記アダプタ側基準面とを当接させつつ、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されることにより、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材とが固定されていることを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、第1係合部と第2係合部とを係合するだけで駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定できる。
また、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを当接させつつ第1係合部と第2係合部と係合することで、駆動モジュールとアダプタ部材との相対位置が決定された状態で駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できるので、駆動モジュール組立体の撮像品質不良を防止できる。
また、本発明によれば、接着剤を用いることなく駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できる。したがって、駆動モジュールの外表面への接着剤の付着による寸法不良や、モジュール側基準面とアダプタ側基準面との間への接着剤の浸入による撮像品質不良、被駆動体と支持体との間への接着剤の浸入による動作不良等の製造不良が防止できる。
【0015】
また、前記アダプタ部材の前記他方側の面は、前記アダプタ側基準面よりも前記一方側に配置された縁面を有し、前記縁面には、前記第2係合部が形成されていることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、アダプタ側基準面の周囲においてアダプタ側基準面よりも一方側に配置された縁面に第2係合部が形成されているので、第1係合部と第2係合部とを係合する際に、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを確実に当接させることができる。これにより、駆動モジュールとアダプタ部材との相対位置が精度よく決定された状態で駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。
【0017】
また、前記駆動モジュールは、前記支持体に固定され前記支持体の前記一方側を覆うモジュール板部材を備え、前記モジュール側基準面は、前記モジュール板部材の前記一方側の面に形成され、前記第1係合部は、前記モジュール板部材における前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設されていることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、駆動モジュールの構成部品であるモジュール板部材に、モジュール側基準面および第1係合部を形成するので、モジュール側基準面および第1係合部の相対位置精度を良好に確保して形成できる。また、アダプタ部材に、アダプタ側基準面および第2係合部を形成するので、アダプタ側基準面および第2係合部の相対位置精度を良好に確保して形成できる。したがって、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを当接させた状態で、第1係合部と第2係合部とを確実に係合させることができる。
【0019】
また、前記第1係合部は、前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設された立壁に設けられ、前記立壁の先端と前記縁面との間隙には、接着剤が充填されていることを特徴としている。
【0020】
本発明によれば、立壁の先端と縁面との間隙に接着剤を充填することで、駆動モジュールとアダプタ部材とを強固に固定できる。さらに、第1係合部と第2係合部とが係合しているので、接着剤が硬化するまでの間、駆動モジュールとアダプタ部材とを治具で固定しなくてもよい。したがって、駆動モジュールとアダプタ部材とを簡単に接着剤で固定できる。
また、アダプタ部材の他方側の面は、アダプタ側基準面と、アダプタ側基準面よりも一方側に形成された縁面とにより階段状に形成されているので、立壁の先端と縁面との間隙に充填された接着剤が、モジュール側基準面とアダプタ側基準面との間に浸入するのを抑制できる。これにより、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを確実に当接させて相対位置を決定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。また、被駆動体と支持体との間に接着剤が浸入するのを抑制できるので、駆動モジュールの動作不良を防止できる。
【0021】
また、前記第1係合部は、前記支持体の前記一方側の面から前記軸方向に沿って立設された固定ピンとされ、前記第2係合部は、前記固定ピンが挿通される挿通孔とされ、前記固定ピンの先端部には、前記挿通孔の径よりも拡径するように外方に張り出すとともに前記挿通孔の開口周縁部に係合して、前記固定ピンが前記挿通孔内から抜けることを規制する張出部が形成されていることを特徴としている。
【0022】
本発明によれば、固定ピンの先端部および挿通孔の少なくともいずれか一方を弾性変形させることにより、固定ピンが挿通孔に挿通された後、張出部が挿通孔の開口周縁部に係合する。これにより、第1係合部と第2係合部とを係合し、駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定できる。特に、挿通孔に固定ピンを係合させるだけの簡便な方法で駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できるので、駆動モジュール組立体の組立作業の効率化を図ることができる。
また、いったん第1係合部と第2係合部とを係合した後であっても、固定ピンの先端部および挿通孔の少なくともいずれか一方を弾性変形させることにより、第1係合部と第2係合部との係合を解除できる。これにより、例えば駆動モジュール組立体の製造過程において、駆動モジュール組立体を構成する部品に不具合等が生じたり、組立不良が生じたりした場合であっても、第1係合部と第2係合部との係合を解除して、駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に分解できる。したがって、駆動モジュールとアダプタ部材とを分解し、速やかに対処できるうえ、廃棄部品の低減を図り易い。
【0023】
また、前記アダプタ部材の前記他方側の面は、前記アダプタ側基準面よりも前記一方側に配置された中間面と、前記中間面よりもさらに前記一方側に配置された縁面と、を有し、前記中間面には、前記第2係合部が形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、アダプタ側基準面の周囲においてアダプタ側基準面よりも一方側に配置された中間面に第2係合部が形成されているので、第1係合部と第2係合部とを係合する際に、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを確実に当接させることができる。これにより、駆動モジュールとアダプタ部材との相対位置が精度よく決定された状態で駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。
【0025】
また、前記駆動モジュールは、前記支持体に固定され前記支持体の前記一方側を覆うモジュール板部材を備え、前記モジュール側基準面は、前記モジュール板部材の前記一方側の面に形成され、前記モジュール板部材は、前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設された立壁を備え、前記立壁の先端と前記縁面との間隙には、接着剤が充填されていることを特徴としている。
【0026】
本発明によれば、立壁の先端と縁面との間隙に接着剤を充填することで、駆動モジュールとアダプタ部材とを強固に固定できる。さらに、第1係合部と第2係合部とが係合しているので、接着剤が硬化するまでの間、駆動モジュールとアダプタ部材とを治具で固定しなくてもよい。したがって、駆動モジュールとアダプタ部材とを簡単に接着剤で固定できる。
また、アダプタ部材の他方側の面は、アダプタ側基準面と、アダプタ側基準面よりも一方側に形成された中間面と縁面とにより階段状に形成されているので、立壁の先端と縁面との間隙に充填された接着剤が、モジュール側基準面とアダプタ側基準面との間に浸入するのを抑制できる。これにより、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを確実に当接させて相対位置を決定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。また、被駆動体と支持体との間に接着剤が浸入するのを抑制できるので、駆動モジュールの動作不良を防止できる。
【0027】
また、前記固定ピンには、先端部を該固定ピンの周方向に複数に分割するスリットが形成され、分割された前記各先端部には、前記張出部がそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0028】
本発明によれば、固定ピンの先端部にスリットを形成することで、周方向に分割された先端部が径方向に容易に弾性変形できる。これにより、固定ピンの先端部を径方向の内側に弾性変形させて、張出部と挿通孔とを係合および解除できるので、駆動モジュールとアダプタ部材とを簡単に組立および分解できる。したがって、組立作業がさらに容易になるうえ、駆動モジュールとアダプタ部材との固定がより確実になる。
【0029】
また、前記挿通孔は、第1挿通孔と、該第1挿通孔よりも拡径した第2挿通孔と、を有する段付き孔とされ、前記固定ピンの前記張出部は、前記第2挿通孔内に収容された状態で前記第1挿通孔の開口周縁部に係合されていることを特徴としている。
【0030】
本発明によれば、固定ピンの張出部を第2挿通孔内に収容することで、アダプタ部材から固定ピンの張出部が突出するのを防止できる。したがって、駆動モジュール組立体を基板等の他部品に装着する際に、固定ピンの張出部が他部品と干渉するのを防止できる。
【0031】
また、本発明のカメラモジュールは、上述した駆動モジュール組立体を備えたことを特徴としている。
【0032】
本発明によれば、駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定できる駆動モジュール組立体を備えることで、製造コストが低い安価なカメラモジュールとすることができる。また、寸法不良や動作不良、撮像品質不良等の製造不良のない駆動モジュール組立体を備えることで、高品質なカメラモジュールとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、第1係合部と第2係合部と係合するだけで駆動モジュールとアダプタ部材とを容易に固定できる。
また、モジュール側基準面とアダプタ側基準面とを当接させつつ第1係合部と第2係合部と係合することで、駆動モジュールとアダプタ部材との相対位置が決定された状態で駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できるので、駆動モジュール組立体の撮像品質不良を防止できる。
また、本発明によれば、接着剤を用いることなく駆動モジュールとアダプタ部材とを固定できる。したがって、駆動モジュールの外表面への接着剤の付着による寸法不良や、モジュール側基準面とアダプタ側基準面との間への接着剤の浸入による撮像品質不良、被駆動体と支持体との間への接着剤の浸入による動作不良等の製造不良が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の駆動モジュール組立体を制御基板に取り付けて構成されるカメラモジュールの外観斜視図である。
【図2】第1実施形態の駆動モジュール組立体の分解斜視図である。
【図3】第1実施形態の駆動モジュールの外観斜視図である。
【図4】第1実施形態の駆動モジュールの分解斜視図である。
【図5】図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図6】モジュール板部材の斜視図である。
【図7】図1におけるB−B線に沿った断面図である。
【図8】第1実施形態のアダプタ部材の斜視図である。
【図9】第2実施形態の駆動モジュールの外観斜視図である。
【図10】第2実施形態の駆動モジュールの分解斜視図である。
【図11】図9におけるC−C線に沿った断面図である。
【図12】第2実施形態のアダプタ部材の斜視図である。
【図13】カメラ付き携帯電話の説明図である。
【図14】従来技術にかかる駆動モジュールおよびアダプタ部材からなる駆動モジュール組立体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態の駆動モジュール組立体)
以下、第1実施形態の駆動モジュール組立体について、図面を参照して説明する。本実施形態では、カメラのレンズユニットを有する駆動モジュールを例にして説明する。また、レンズユニットを駆動するアクチュエータの一例として、形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0036】
図1は、第1実施形態の駆動モジュール組立体1を制御基板32に取り付けて構成されるカメラモジュールの外観斜視図である。
なお、以下の説明では、モジュール枠5(支持体、図2参照)の中心軸を駆動モジュール組立体1の中心軸Oとしている。また、中心軸Oに沿う方向をZ方向とし、駆動モジュール組立体1の制御基板32への取り付け側(図1における下側)を−Z側とし、反対側(図1における上側)を+Z側としている。また、中心軸Oと直交する方向をR方向とし、中心軸O側を−R側とし、駆動モジュール2の外側を+R側としている。
【0037】
図1に示すように、駆動モジュール組立体1は、駆動モジュール2と、駆動モジュール2の−Z側に配置されるアダプタ部材30とを備え、全体として箱型に構成されている。駆動モジュール組立体1は、組立完成後、駆動モジュール2に制御信号や電力を供給する制御基板32上に固定されてプリント配線39と電気的に接続され、カメラモジュールを構成する。なお、このカメラモジュールを搭載した電子機器については後述する。
【0038】
(駆動モジュール)
図2は、第1実施形態の駆動モジュール組立体1の分解斜視図である。
図3は、−Z側から見たときの第1実施形態の駆動モジュール2の外観斜視図である。
図4は、第1実施形態の駆動モジュール2の分解斜視図である。なお、図4では、見易さのため、カバー11およびコイルバネ42(図2参照)を省略して図示している。
図5は、図1におけるA−A線に沿った断面図である。
なお、図2および図3では、見易さのため、レンズユニット12(図5参照)を省略して図示している。
【0039】
図2に示すように、駆動モジュール2は、レンズ50(図5参照)が装着されたレンズユニット12(図5参照)を保持する筒状のレンズ枠4(被駆動体)と、レンズ枠4を−R側に収容する筒状のモジュール枠5と、モジュール枠5に対してレンズ枠4をZ方向に沿って移動可能に弾性保持するため、レンズ枠4およびモジュール枠5の+Z側の端面に接続された上板バネ6および−Z側の端面に接続された下板バネ7と、モジュール枠5を覆うカバー11と、を備えている。
【0040】
図2に示すように、駆動モジュール2は、レンズ枠4をZ方向に沿って移動させる駆動手段を備えている。駆動手段として、レンズ枠4を−Z側に付勢するコイルバネ42と、コイルバネ42の付勢力に抗してレンズ枠4を+Z方向に移動させるアクチュエータを備えている。アクチュエータとして、SMAワイヤ10と、SMAワイヤ10をモジュール枠5に固定するワイヤ保持部材15(15a,15b)と、レンズ枠4および下板バネ7の−Z方向への移動を規制するモジュール板部材8と、ワイヤ保持部材15a,15bを介してSMAワイヤ10に給電する後述の給電部材9とを備えている。
【0041】
図5に示すように、レンズ枠4はモジュール枠5の−R側に挿入されている。また、上板バネ6および下板バネ7は、レンズ枠4およびモジュール枠5の+Z側および−Z側に配設されていると共に、レンズ枠4とモジュール枠5とを+Z側および−Z側から挟持した状態で、カシメにより固定されている。そして、−Z側からモジュール板部材8と給電部材9とがこの順に積層され、モジュール枠5の−Z側から例えばカシメによりそれぞれ共にモジュール枠5に固定されている。
【0042】
続いて、駆動モジュール2の各構成部品について説明する。
(支持体)
図2に示すように、モジュール枠5(支持体)は、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂等により形成された筒状の部材である。モジュール枠5は、Z方向平面視の外形が全体として略矩形状に形成されていると共に、中央部にはZ方向平面視が略円形状の収容部5aが中心軸Oに対して同軸に形成されている。そして、この収容部5a内に、後述するレンズ枠4が収容される。
【0043】
図4に示すように、モジュール枠5の+Z側および−Z側の四隅には、中心軸Oに直交する+Z側端面5bおよび−Z側端面5cが形成されている。そして、+Z側端面5bには、+Z側に向けて+Z側固定ピン14aが4本立設され、−Z側端面5cには−Z側に向けて−Z側固定ピン14bが4本立設されている。+Z側固定ピン14aは後述する上板バネ6を保持し、−Z側固定ピン14bは後述する下板バネ7、中間部材80、モジュール板部材8および給電部材9をそれぞれ保持している。
【0044】
モジュール枠5の+Z側端面5bにおける一方の対角線の両端部には、+Z側に向かって位置決めピン14cが2本立設されている。位置決めピン14cは、上板バネ6の位置決め孔6gに挿入され、上板バネ6の位置決めを行っている。
同様にモジュール枠5の−Z側端面5cにおける一方の対角線の両端部には、−Z側に向かって位置決めピン14dが2本立設されている。位置決めピン14dは、下板バネ7、中間部材80、モジュール板部材8および給電部材9の位置決め孔に挿入され、これらの位置決めを行っている。
【0045】
図2に示すように、モジュール枠5の一隅の下部には切欠き5dが形成されている。この切欠き5dは、レンズ枠4をモジュール枠5内に−Z側から挿入して収容した際、レンズ枠4のガイド突起4dを貫通させ、ガイド突起4dの先端鍵部4eをモジュール枠5の+R側に突出させると共に、レンズ枠4の位置決めを行っている。
【0046】
(被駆動体)
図4に示すように、本実施形態のレンズ枠4(被駆動体)は、全体として筒状に形成されており、その中央には中心軸Oに沿って貫通する筒状の収容部4fが形成されている。図5に示すように、収容部4fの内周面には雌ネジが形成されている。この収容部4fには、上記雌ねじに螺合する雄ネジが外周部に形成された鏡筒と、鏡筒の内側に保持された適宜のレンズ又はレンズ群と、を有するレンズユニット12が固定されている。
【0047】
図4に示すように、レンズ枠4の+R側面には、周方向に略90度の間隔をおいて、+R側に突出する突出部4cが中心軸Oに沿うように延設されている。レンズ枠4の+Z側端面4aおよび−Z側端面4b上における、各突出部4cの+Z側端部および−Z側端部には、中心軸Oに沿うようにそれぞれ+Z側および−Z側に突出する+Z側固定ピン13aおよび−Z側固定ピン13bが、それぞれ4本ずつ設けられている。このうち、+Z側固定ピン13aは上板バネ6を保持し、−Z側固定ピン13bは下板バネ7を保持するためのものである。なお、レンズ枠4は、モジュール枠5と同様に、熱カシメ又は超音波カシメが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)や液晶ポリマー(LCP)樹脂等により一体成形されている。
【0048】
また、レンズ枠4の外壁面には、+R側に突出するようにガイド突起4dが設けられている。このガイド突起4dは、隣接する突出部4cの中間(突出部4cから周方向に45度ずれた位置)であって、モジュール枠5の切欠き5dに対応した位置に設けられている。
Z方向から見たときのガイド突起4dの外形は、モジュール枠5の切欠き5dの溝幅よりも小さくなるように形成されている。これにより、ガイド突起4dがZ方向に移動可能となる。また、ガイド突起4dには、その先端鍵部4eに後述するSMAワイヤ10が係止される(図2参照)。そして、SMAワイヤ10が収縮すると、ガイド突起4dが+Z側に持ち上げられて、レンズ枠4がZ方向に沿うように移動可能となっている。
【0049】
(駆動手段)
図2に示すように、モジュール枠5の切欠き5dに隣接する2つの側面には、ワイヤ保持部材15(15a,15b)が固定されている。
具体的に説明すると、モジュール枠5の切欠き5dに隣接する側面には、基準ピン34(34a,34b)および回り止めピン35(35a,35b)が並んで形成されている。基準ピン34は、正面視において円形状に形成されている。回り止めピン35は、正面視において+Z側および−Z側の略円弧状に形成された円弧部と、両円弧部の端部を接続した直線部とにより形成されている。
【0050】
図4に示すように、ワイヤ保持部材15は金属板等により形成されている。ワイヤ保持部材15には、モジュール枠5の基準ピン34と嵌合する基準孔36(36a,36b)および回り止めピン35と嵌合する回り止め孔37(37a,37b)が形成されている。基準孔36は基準ピン34に対応した形状に形成され、回り止め孔37は回り止めピン35に対応した形状に形成されている。基準孔36に基準ピン34が挿入されることで、ワイヤ保持部材15の位置決めができる。また、回り止め孔37に回り止めピン35が挿入されることで、SMAワイヤ10が収縮した際に回り止めピン35を中心としてワイヤ保持部材15が回転してずれるのを防止している。なお、ワイヤ保持部材15は、基準ピン34および回り止めピン35の先端を熱カシメにより変形させることにより保持されている。
【0051】
ワイヤ保持部材15の+Z側には、SMAワイヤ10を保持するワイヤ保持部15cが形成されており、ワイヤ保持部15cを鍵状にカシメることでSMAワイヤ10の端部を保持している。また、ワイヤ保持部材15の−Z側には、後述する給電部材9(図4参照)に接続される端子部15dがZ方向に沿って延設されており、例えば溶接等により給電部材9に接続される。
【0052】
図2に示すように、SMAワイヤ10は、中間部がガイド突起4dの先端鍵部4eに係止された状態で、両端部がワイヤ保持部材15a,15bを介して中心軸Oを挟んで対向するようにモジュール枠5に固定されている。SMAワイヤ10は、給電部材9を介して電流が供給されることで発生するジュール熱により収縮させられ、発生した張力をガイド突起4dに及ぼすことにより、レンズ枠4を中心軸Oに沿って+Z側に駆動させる役割を担っている。
【0053】
(板バネ部材)
図4に示すように、モジュール枠5及びモジュール枠5内に挿入されたレンズ枠4の+Z側には上板バネ6が積層され、−Z側には下板バネ7が積層されている。なお、上板バネ6および下板バネ7は同一形状であるため、以下では、上板バネ6について説明を行い、下板バネ7の説明は省略する。
上板バネ6は、例えば、ステンレス鋼板等の金属板からなる。上板バネ6は、Z方向平面視の外形が、モジュール枠5の+Z側端部と同様の略矩形状に形成されている。上板バネ6の中央部には、中心軸Oと同軸でレンズ枠4の収容部4fより若干大きな略円形状の開口6cが形成されている。これにより上板バネ6は、全体としてリング状に形成されている。
【0054】
上板バネ6の隅部近傍には、モジュール枠5の隅部近傍に形成された+Z側固定ピン14aの配置位置に対応して貫通孔6bが形成されている。また、上板バネ6の一方の対角線の両端部には、モジュール枠5の1対の位置決めピン14cが挿入される1対の位置決め孔6gが形成されている。これにより上板バネ6は、中心軸Oに直交する平面内において、モジュール枠5に対して位置決めされる。
【0055】
また、開口6cの+R側には、リング部6fが形成され、中心軸Oを挟んで互いに対角方向に対向する貫通孔6aの近傍位置から、周方向に略半円弧状に延びる4つのスリット6dがそれぞれ、略四分円弧ずつR方向に2本並んだ状態に形成されている。そして、上板バネ6の外側の矩形状枠体から略四分円弧状に延ばされた4本のバネ部6eが、それぞれR方向において2本並んだスリット6dの間であって、周方向において隣接する貫通孔6aの間に形成されている。
【0056】
(中間部材)
図4に示すように、中間部材80は、ステンレス鋼板等の金属板からなる略リング状の部材であり、下板バネ7と後述するモジュール板部材8との間に配設されている。中間部材80は、下板バネ7の厚さよりも厚く形成されている。また、中間部材80の硬度は、モジュール板部材8の硬度よりも下板バネ7の硬度に近くなるように形成されている。本実施形態では、モジュール板部材8が樹脂材料で形成されているのに対して、中間部材80および下板バネ7はともにステンレス等の金属材料で形成されている。すなわち中間部材80の硬度は、下板バネ7の硬度と同じであり、モジュール板部材8の硬度より高くなっている。なお各部材の硬度は、日本工業規格(JIS)G0202に規定されたロックウエル硬さで定義することができる。
【0057】
中間部材80は、リング部81と、リング部81の外周から半径方向外側に張り出した複数の張出部とを備えている。張出部には、モジュール枠5の−Z側固定ピン14bが挿入される貫通孔84と、モジュール枠5の位置決めピン14dが挿入される位置決め孔85とが設けられている。これにより、上板バネ6および下板バネ7と同様に、モジュール枠5に対する中間部材80のR方向および周方向の位置決めを行うことができる。
【0058】
中間部材80のリング部81の内径は、下板バネ7の開口7cの内径と同等に形成されている。また中間部材80のリング部81の外径は、下板バネ7のバネ部7eの外径よりも大きく形成されている。これにより、駆動モジュール2に−Z側の衝撃力が作用し、下板バネ7のバネ部7eが−Z側に変位したとき、バネ部7eを中間部材80に衝突させることができる。したがって、バネ部7eがモジュール板部材8に直接衝突するのを防止でき、モジュール板部材8の損傷を防止できる。
【0059】
(モジュール板部材)
図6は、モジュール板部材8の斜視図である。
図6に示すように、モジュール板部材8は樹脂等からなる平板状の部材であり、下板バネ7および中間部材80を介してモジュール枠5の−Z側を覆うように配置される(図4参照)。
図6に示すように、モジュール板部材8は、Z方向平面視の外形が、モジュール枠5の−Z側端部と同様の略矩形状に形成されている。また、モジュール板部材8の中心軸Oの周辺には、レンズユニット12(図5参照)を出し入れ可能な大きさの開口部88が形成されている。
【0060】
モジュール板部材8の四隅には、モジュール枠5の−Z側固定ピン14b(図4参照)が挿入される貫通孔8cと、レンズ枠4の−Z側固定ピン13b(図4参照)との干渉を回避する凹部8bとが形成されている。
また、略矩形状のモジュール板部材8における一方の対角線の両端部には、モジュール枠5の1対の位置決めピン14d(図4参照)が挿入される1対の位置決め孔8dが形成されている。
モジュール板部材8とモジュール枠5との固定は、−Z側固定ピン14bの先端を熱カシメすることで行われる。なお、下板バネ7および中間部材80は、モジュール板部材8とモジュール枠5とにより挟持されて保持される。
【0061】
モジュール板部材8の+Z側面には、下板バネ当接面8aと、下板バネ当接面8aよりも−R側において−Z側に凹んだ陥没部89とが形成されている。
下板バネ当接面8aには、下板バネ7(図4参照)がバネ部7e(図4参照)よりも+R側の矩形状枠体を当接させた状態で配置される。また、陥没部89内には、中間部材80(図4参照)が配置される。
ここで、陥没部89の深さは、中間部材80の厚さと略同一かそれ以上の深さに形成されている。これにより、中間部材80は下板バネ7の−Z側であってモジュール板部材8の内部に配置される。そして、開口7cおよびバネ部7eが−Z側に移動した場合であっても中間部材80に衝突することで、開口7cおよびバネ部7eがモジュール板部材8に直接衝突するのを防止し、モジュール板部材8の損傷を防止している。
【0062】
図7は、図1におけるB−B線に沿った断面図である。
図7に示すように、モジュール板部材8の−Z側面には、開口部88の+R側にモジュール側基準面90が形成されている。モジュール側基準面90は、−Z側に突出した平坦面であり、中心軸Oと直交するように形成されている。モジュール側基準面90は、後述するアダプタ部材30のアダプタ側基準面27と当接されることで、駆動モジュール2とアダプタ部材30とのZ方向における相対位置を決定している。
【0063】
図6に示すように、モジュール板部材8のモジュール側基準面90の周辺からZ方向に沿って立壁87が立設されている。立壁87は、R方向から見て、モジュール板部材8のR方向に面する側面の長手方向に沿って長辺を有し、Z方向に沿って短辺を有する略長方形状に形成されている。立壁87は、モジュール側基準面90の+R側において、モジュール板部材8の前記側面の長手方向における略中央から、−Z側に向かって立設されている。立壁87は、中心軸Oを挟んで対向するように2対配置されており、合計4個立設されている。なお、図3に示すように、4個の立壁87うちの1個は後述する給電部材9の1対の端子部9cの+R側を覆うように配置されている。
【0064】
図5に示すように、立壁87は、立壁87の先端87aがモジュール側基準面90よりも−Z側に配置されるように形成されている。さらに、立壁87は、モジュール側基準面90と後述するアダプタ側基準面27とを当接させたときに、立壁87の先端87aがアダプタ部材30の縁面29よりも+Z側に配置されるように形成されている。このように立壁87を形成することで、駆動モジュール2の−Z側にアダプタ部材30が配置されたとき、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを当接させて、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対位置を決定できる。また、このように立壁87を形成することで、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを当接させたときに、立壁87の先端87aと縁面29との間隙を形成できる。
【0065】
立壁87の−R側面には、立壁87の長手方向の略中央に、前記長手方向に所定の幅を有する第1係合部87bが形成されている。第1係合部87bは、−Z側の先端87aから+Z側に向かってR方向の厚さが漸次広くなるように、−R側に突出されて形成されている。なお、1対の端子部9cを覆う立壁87(図3参照)に形成される第1係合部87bは、1対の端子部9cの間に配置される。したがって、1対の端子部9cを覆う立壁87に形成される第1係合部87bの前記長手方向における幅は、1対の端子部9cの離間距離よりも狭く形成されている。これにより、第1係合部87bは、1対の端子部9cと干渉することなく、後述する第2係合部25(図8参照)と係合される。
【0066】
(カバー)
図2に示すように、カバー11は、樹脂等からなる筒状の部材であり、上述したモジュール枠5の+R側を覆うように形成されている。
カバー11の+Z側面11eにおける中央部には、中心軸Oと同軸の略円形状をした開口11aが設けられている。開口11aは、レンズユニット12(図5参照)が出し入れ可能な大きさに形成されている。
【0067】
カバー11の+R側壁部11dは、+Z側面11eの縁部から−Z側に向かって延設されている。+R側壁部11dの−Z側端面11cには、上述した立壁87に対応した位置に、+Z側に切り欠かれた切り欠き部11bが形成されている。切り欠き部11bの切り欠き範囲は、立壁87の外形よりも大きく形成されており、カバー11がモジュール枠5の+R側を覆って装着された時に、立壁87とカバー11とが干渉するのを防止している。なお、カバー11は、切り欠き部11bの−Z側端面と立壁87の+Z側端面との間に接着材を充填して接着することにより取り付けられる。
【0068】
(給電部材)
図4に示すように、給電部材9は、銅等の金属からなる平板部材であり、1対の電極9A,9Bから構成されている。
電極9A,9Bは、いずれも、モジュール板部材8の外形に沿う略L字状の配線部9aと、配線部9aの端部から−Z側に突出する端子部9cと、を備えている。各配線部9aには、ワイヤ保持部材15a,15bの端子部15dがそれぞれ電気的に接続される。配線部9aと端子部15dとの電気的接続方法としては、半田付けや導電性接着剤による接着等を採用することができる。
【0069】
それぞれの配線部9aには、モジュール枠5の−Z側固定ピン14bに対応した位置に、貫通孔9bが形成されている。貫通孔9bに−Z側固定ピン14bを挿通し、−Z側固定ピン14bの先端を熱カシメすることにより、下板バネ7およびモジュール板部材8とともに給電部材9がモジュール枠5に固定されるようになっている。端子部9cは、図3に示すように、モジュール板部材8の立壁87の−R側において、立壁87に沿って配置され、駆動モジュール2の−Z側から突設される。
【0070】
(アダプタ部材)
図8は、第1実施形態のアダプタ部材30の斜視図である。
図8に示すように、アダプタ部材30は、Z方向平面視で略矩形状をした、Z方向に所定の厚みを有する中空の箱状部材である。アダプタ部材30のZ方向平面視の外形は、カバー11のZ方向平面視の外形と略同一に形成されている。なお、アダプタ部材30のZ方向の厚みは、レンズ50(図5参照)や制御基板32(図1参照)に設けられた不図示の撮像素子の仕様に対応した所定の厚みに形成される。
アダプタ部材30における中心軸Oの周辺には、開口部24が形成されている。開口部24は、Z方向平面視で略円形状に形成されている。なお、開口部24の形状は略円形状に限られることはなく、撮像素子の仕様に対応した所定の形状に形成される。
アダプタ部材30のR方向に面する側面のうち、端子部9cが配置される一側面26には、−R側に凹んだ凹部26aが形成されている。凹部26aを設けることで、端子部9cとアダプタ部材30との干渉を防止している。
【0071】
アダプタ部材30の+Z側面には、開口部24の周辺に形成されたアダプタ側基準面27と、アダプタ側基準面27の+R側においてアダプタ側基準面27よりも−Z側に形成された中間面28と、中間面28の+R側において中間面28よりも−Z側に配置された縁面29と、を有している。すなわち、アダプタ部材30の+Z側面は、中間面28とアダプタ側基準面27とにより、2段の段差が形成されている。
【0072】
図7に示すように、アダプタ側基準面27は、開口部24の+R側において+Z側に突出した平坦面であり、中心軸Oと直交するように形成されている。アダプタ側基準面27は、前述のモジュール側基準面90と対応する領域に形成されており、モジュール側基準面90と当接されることで、駆動モジュール2とアダプタ部材30とのZ方向における相対位置を決定している。
【0073】
中間面28は、アダプタ側基準面27よりも−Z側に形成され、縁面29よりも+Z側に形成されることにより、アダプタ側基準面27と縁面29との間に段差を形成している。中間面28により段差を形成することで、中心軸Oを含む側面断面の断面積を増加させ、アダプタ部材30の剛性を確保している。また、後述するように、立壁87の先端87aとアダプタ部材30の縁面29との間隙に接着剤を充填した際、縁面29よりも−R側への接着剤の浸入を抑制している。
また、中間面28における四隅のうち、中心軸Oを挟んだ一対の隅部には、Z方向に沿った位置決め孔30aが形成されている。位置決め孔30aには、モジュール枠5に形成された位置決めピン14d(図3参照)が挿入されて、駆動モジュール2とアダプタ部材30とのR方向における相対位置を決定している。
【0074】
縁面29は、中間面28の+R側においてアダプタ部材30の外縁に沿うように、中間面28よりも−Z側に形成されている。縁面29は、アダプタ側基準面27と同様の平坦面であり、中心軸Oと直交するように形成されている。
ここで、Z方向における縁面29とアダプタ側基準面27との離間距離は、Z方向におけるモジュール側基準面90と立壁87の先端87aとの離間距離よりも大きく形成されている。これにより、アダプタ側基準面27とモジュール側基準面90とを当接させてアダプタ部材30を駆動モジュール2の−Z側に配置したとき、縁面29と立壁87の先端87aとの間隙が形成される。そして、後述するように、この間隙に接着剤を充填し、縁面29と立壁87の先端87aとを接着固定している。
さらに、カバー11の−Z側端面11cを、モジュール側基準面90よりも−Z側となるように形成し、縁面29とカバー11の−Z側端面11cとの間隙に接着剤を充填することで、アダプタ部材30と強固に固定している。
【0075】
また、縁面29における立壁87の第1係合部87bに対応した位置には、縁面29から+Z側に向かって第2係合部25が立設されている。第2係合部25は、第1係合部87bと同様に、中心軸Oを挟んで対向するように合計4個立設されている。
第2係合部25は、+Z側の先端から−Z側に向かってR方向の厚さが漸次広くなるように、+R側に突出されて形成されている。そして、後述するように、立壁87の第1係合部87bと第2係合部25とが係合されることで駆動モジュール2とアダプタ部材30とが固定され、駆動モジュール組立体1が形成される。
【0076】
(作用)
続いて、駆動モジュール組立体1の作用について説明する。
上述した駆動モジュール2の−Z側にアダプタ部材30を装着することで、駆動モジュール組立体1(図1参照)が形成される。
具体的には、図5に示すように、駆動モジュール2のモジュール側基準面90と、アダプタ部材30のアダプタ側基準面27とを対向させつつ、第1係合部87bと第2係合部25の位置を合わせて、駆動モジュール2とアダプタ部材30を近接させる。すると、図7に示すようにアダプタ側基準面27とモジュール側基準面90とが当接されるとともに、図5に示すように第1係合部87bと第2係合部25とが係合される。
アダプタ側基準面27とモジュール側基準面90とが当接されることで、駆動モジュール2とアダプタ部材30とのZ方向における相対位置が決定される。また、第1係合部87bと第2係合部25とが係合されることで、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対移動が規制され、駆動モジュール2の−Z側にアダプタ部材30が固定される。
【0077】
また、前述のとおり、駆動モジュール2の−Z側にアダプタ部材30が固定されたときに、立壁87の先端87aとアダプタ部材30の縁面29との間隙が形成される。
本実施形態では、図5に示すように、この間隙に+R側から接着剤86を充填し、立壁87の先端87aとアダプタ部材30の縁面29とを接着している。これにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30とは、第1係合部87bと第2係合部25との係合に加えて、接着剤86により強固に固定される。
ここで、図7に示すように、縁面29よりも−R側には、中間面28とアダプタ側基準面27とにより、+Z側に突出した2段の段差が形成されている。この2段の段差により、立壁87の先端87aと縁面29との間隙に接着剤86を充填しても、その間隙内に接着剤が保持されやすくなり、縁面29よりも−R側への接着剤の浸入が抑制される。したがって、アダプタ側基準面27とモジュール側基準面90との間への接着剤86の浸入や、レンズ枠4とモジュール枠5との間への接着剤の浸入が防止される。
【0078】
(第1実施形態の効果)
本実施形態によれば、第1係合部87bと第2係合部25とを係合するだけで駆動モジュール2とアダプタ部材30とを容易に固定できる。
また、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを当接させつつ、第1係合部87bと第2係合部25と係合することで、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対位置が決定された状態で駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できるので、駆動モジュール組立体1の撮像品質不良を防止できる。
また、本発明によれば、接着剤を用いることなく駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できる。したがって、駆動モジュール2の外表面への接着剤の付着による寸法不良や、レンズ枠4とモジュール枠5との間への接着剤の浸入による動作不良、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27との間への接着剤の浸入に起因する撮像品質不良等の製造不良が防止できる。
【0079】
また、本実施形態によれば、アダプタ側基準面27の周囲においてアダプタ側基準面27よりも−Z側に配置された縁面29に第2係合部25が形成されているので、第1係合部87bと第2係合部25とを係合する際に、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを確実に当接させることができる。これにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対位置が精度よく決定された状態で駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。
【0080】
また、本実施形態によれば、駆動モジュール2の構成部品であるモジュール板部材8に、モジュール側基準面90および第1係合部87bを形成するので、モジュール側基準面90および第1係合部87bの相対位置精度を良好に確保して形成できる。また、アダプタ部材30に、アダプタ側基準面27および第2係合部25を形成するので、アダプタ側基準面27および第2係合部25の相対位置精度を良好に確保して形成できる。したがって、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを当接させた状態で、第1係合部87bと第2係合部25とを確実に係合させることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、立壁87の先端87aと縁面29との間隙に接着剤86を充填することで、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを強固に固定できる。さらに、第1係合部87bと第2係合部25とが係合しているので、接着剤86が硬化するまでの間、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを治具で固定しなくてもよい。したがって、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを簡単に接着剤で固定できる。
また、アダプタ部材30の+Z側面は、アダプタ側基準面27と、アダプタ側基準面27よりも−Z側に形成された縁面29とにより階段状に形成されているので、立壁87の先端87aと縁面29との間隙に充填された接着剤が、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27との間に浸入するのを抑制できる。したがって、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを確実に当接させて相対位置を決定できるので、焦点位置のズレを確実に抑制し、撮像品質不良をさらに防止できる。また、レンズ枠4とモジュール枠5との間に接着剤86が浸入するのを抑制できるので、駆動モジュール2の動作不良を防止できる。
【0082】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の駆動モジュール2の外観斜視図である。
図10は、第2実施形態の駆動モジュール2の分解斜視図である。
第1実施形態の駆動モジュール2は、モジュール板部材8の立壁87に第1係合部87bが形成され、アダプタ部材30の縁面29に第2係合部25が形成されていた(図5参照)。
これに対して、第2実施形態の駆動モジュール2は、モジュール枠5(請求項の「支持体」に相当。)に第1係合部60として固定ピン61が形成され、アダプタ部材30の中間面28に第2係合部70として第1挿通孔71および第2挿通孔73からなる段付き孔の挿通孔75が形成されている点で、第1実施形態とは異なっている(図9および図10参照)。なお、第1実施形態と同様の構成部分については説明を省略する。
【0083】
(第1係合部、固定ピン)
図9に示すように、駆動モジュール2には、中心軸Oを挟んで対向する1対の第1係合部60,60が形成されている。本実施形態の第1係合部60は、Z方向に沿って−Z側に立設された固定ピン61である。固定ピン61は、図10に示すように、モジュール枠5の−Z側端面5cにおける一方の対角線上の1対の隅部から、−Z側に向かって立設されている。
固定ピン61は、略棒状に形成されており、−Z側の先端部62と、先端部62よりも+Z側の本体部65とを備えている。
【0084】
図9に示すように、固定ピン61の先端部62は、固定ピン61の本体部65よりも大径に形成されており、後述する挿通孔75(図11参照)のうち第1挿通孔71(図11参照)よりも拡径するように外方に張り出している。また、固定ピン61の先端部62には、固定ピン61の径方向に沿って配置され、所定の幅を有する1本のスリット63が形成されている。これにより、固定ピン61の先端部62はスリット63により分割され、スリット63を挟んで2個の張出部62a,62bが形成されている。これにより、2個の張出部62a,62bは、固定ピン61の径方向に容易に弾性変形可能となっている。
【0085】
図11は、図9におけるC−C線に沿った断面図である。なお、図11では、見易さのため、レンズユニット12(図5参照)を省略して図示している。
図11に示すように、固定ピン61には、下板バネ7の位置決め孔7f、中間部材80の位置決め孔85、モジュール板部材8の位置決め孔8d、後述のアダプタ部材30の第1挿通孔71、第2挿通孔73の順に挿通される。固定ピン61の本体部65の直径は、下板バネ7の位置決め孔7f、中間部材80の位置決め孔85およびモジュール板部材8の位置決め孔8d、およびアダプタ部材30の第1挿通孔71の直径と略同一に形成されている。固定ピン61の本体部65は、下板バネ7、中間部材80、モジュール板部材8およびアダプタ部材30の各部材の位置決めを行っている。
【0086】
(第2係合部)
図12は、第2実施形態のアダプタ部材30の斜視図である。
図12に示すように、アダプタ部材30の中間面28における四隅のうち、中心軸Oを挟んだ一対の隅部には、Z方向に沿って中間面28を貫通する挿通孔75が形成されている。図11に示すように、挿通孔75は、+Z側に配置される第1挿通孔71と、第1挿通孔71の−Z側に配置され、第1挿通孔71よりも大径の第2挿通孔73と、により段付き孔に形成されている。
第1挿通孔71の直径は、固定ピン61の先端部62の直径よりも小さく、かつ固定ピン61の本体部65の直径と略同一となるように形成される。
第2挿通孔73の直径は、Z方向から見て、固定ピン61の先端部62(すなわち張出部62a,62b)の直径よりも大きくなるように形成されている。また、第2挿通孔73の深さは、固定ピン61の先端部62のZ方向の長さよりも深くなるように形成されている。これにより、固定ピン61の張出部62a,62bは、第2挿通孔73に収容可能となっている。
【0087】
駆動モジュール2とアダプタ部材30とは、+Z側から−Z側に向かって固定ピン61が挿通孔75に挿通されて、固定ピン61の張出部62a,62bと、第1挿通孔71の−Z側の開口周縁部とが互いに係合することで固定される。具体的には、第1挿通孔71に固定ピン61を挿通すると、固定ピン61の張出部62a,62bが、固定ピン61の径方向内側に弾性変形しながら第1挿通孔71内を通過する。その後、固定ピン61の張出部62a,62bが第1挿通孔71を通過して−Z側の第2挿通孔73に到達したとき、弾性復元力により固定ピン61の張出部62a,62bが径方向外側に広がる。これにより、第1挿通孔71の−Z側の開口周縁部と、固定ピン61の張出部62a,62bの+Z側面62cとが係合して、Z方向の移動が規制される。また、固定ピン61の本体部65の直径は、第1挿通孔71の直径と略同一に形成されているので、第1挿通孔71内に固定ピン61の本体部65が配置されて、駆動モジュール2とアダプタ部材30とのR方向における相対位置が規制される。すなわち、駆動モジュール2とアダプタ部材30とは、Z方向およびR方向における相対位置が規制された状態で、第1係合部60と第2係合部70とにより固定される。
【0088】
(第2実施形態の効果)
本実施形態によれば、第1係合部60である固定ピン61の先端部62を弾性変形させることにより、固定ピン61が第1挿通孔71に挿通された後、張出部62a,62bが第1挿通孔71の開口周縁部に係合する。これにより、第1係合部60と第2係合部70とを係合し、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを容易に固定できる。特に、挿通孔75に固定ピン61を係合させるだけの簡便な方法で駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できるので、駆動モジュール組立体1の組立作業の効率化を図ることができる。
また、いったん第1係合部60と第2係合部70とを係合した後であっても、固定ピン61の先端部62を弾性変形させることにより、第1係合部60と第2係合部70との係合を解除できる。これにより、駆動モジュール組立体1を構成する部品に不具合等が生じたり、組立不良が生じたりした場合であっても、第1係合部60と第2係合部70との係合を解除して、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを容易に分解できる。したがって、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを容易に分解できる。したがって、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを分解し、速やかに対処できるうえ、廃棄部品の低減を図り易い。
【0089】
また、本実施形態によれば、アダプタ側基準面27の周囲においてアダプタ側基準面27よりも−Z側に配置された中間面28に第2係合部70が形成されているので、第1係合部60と第2係合部70とを係合する際に、モジュール側基準面90とアダプタ側基準面27とを確実に当接させることができる。これにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30との相対位置が精度よく決定された状態で駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できるので、焦点位置のズレを抑制し、撮像品質不良を確実に防止できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、固定ピン61の先端部62にスリット63を形成することで、固定ピン61の周方向に分割された張出部62a,62bが径方向に容易に弾性変形できる。これにより、固定ピン61の張出部62a,62bを径方向の内側に弾性変形させて固定ピン61と挿通孔75とを係合および解除できるので、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを簡単に組立および分解できる。したがって、組立作業がさらに容易になるうえ、駆動モジュール2とアダプタ部材30との固定がより確実になる。
【0091】
また、本実施形態によれば、固定ピン61の張出部62a,62bを第2挿通孔73内に収容することで、アダプタ部材30から固定ピン61の張出部62a,62bが突出するのを防止できる。したがって、駆動モジュール組立体1を制御基板32等の他部品に装着する際に、固定ピン61の張出部62a,62bが他部品と干渉するのを防止できる。
【0092】
(カメラモジュール)
次に、各実施形態に係る駆動モジュール組立体1を備えたカメラモジュールの一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、カメラモジュールを備えたカメラ付き携帯電話を例に挙げて説明する。
【0093】
図13は、カメラ付き携帯電話20の説明図である。なお、図13(a)は、カメラ付き携帯電話20の表側の外観斜視図である。図13(b)は、カメラ付き携帯電話20の裏側の外観斜視図である。図13(c)は、図13(b)のF−F線に沿った断面図である。図13(a)に示すように、本実施形態のカメラ付き携帯電話20は、受話部22aと、送話部22bと、操作部22cと、液晶表示部22dと、アンテナ部22eと、不図示の制御回路部等の周知の携帯電話の電子部と、を電話カバー22内外に備えている。
【0094】
図13(b)に示すように、液晶表示部22dが設けられた側の裏面側の電話カバー22には、外光を透過させる窓22Aが設けられている。
そして、図13(c)に示すように、駆動モジュール2のカバー11の開口11aが、電話カバー22の窓22Aを臨み、この窓22Aの法線方向に中心軸Oが沿うように駆動モジュール組立体1が設置されている。なお駆動モジュール組立体1は、制御基板32に機械的及び電気的に接続されている。制御基板32は、不図示の制御回路部に接続され、駆動モジュール2に電力を供給できるようになっている。
【0095】
このように構成されているので、窓22Aを透過した光を駆動モジュール2のレンズユニット12(図5参照)で集光し、撮像素子40上に結像することができる。そして、駆動モジュール2に制御回路部から適宜の電力を供給することで、レンズユニット12を中心軸Oに沿って駆動し、焦点位置調整を行って、撮影を行うことができる。
【0096】
(効果)
本実施形態のカメラ付き携帯電話20によれば、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを容易に固定できる駆動モジュール組立体1を備えることで、製造コストが低い安価なカメラ付き携帯電話20とすることができる。また、寸法不良や動作不良、撮像品質不良等の製造不良のない駆動モジュール組立体1を備えることで、高品質なカメラ付き携帯電話20とすることができる。
【0097】
なお、この発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、各実施形態では、SMAワイヤ10を利用してレンズ枠4を中心軸Oに沿って駆動させる構成としたが、この場合に限られず、VCM(ボイスコイルモータ)や圧電アクチュエータ等をアクチュエータとして利用することでレンズ枠4を駆動させても構わない。
【0098】
各実施形態では、モジュール枠5を、全体として略矩形状の部材として説明したが、略矩形状には限定されず、多角形状であってもよい。
【0099】
各実施形態では、駆動モジュール組立体1を備えたカメラモジュールの一実施形態として、カメラ付き携帯電話20の例で説明したが、カメラモジュールの適用はカメラ付き携帯電話20に限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラ等の光学機器に用いてもよい。
【0100】
各実施形態では、対向する第1係合部87bおよび第2係合部25をそれぞれ2対形成したが、第1係合部87bおよび第2係合部25は、少なくともそれぞれ1対形成されていればよい。ただし、より確実に駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0101】
第1実施形態では、立壁87の先端87aと縁面29との間隙に接着剤86を充填し、第1係合部87bおよび第2係合部25に加えて、接着剤86により駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定したが、立壁87の先端87aと縁面29との間隙に接着剤86をせずに第1係合部87bおよび第2係合部25の係合のみで駆動モジュール2とアダプタ部材30とを固定してもよい。ただし、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを強固に固定できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0102】
各実施形態では、立壁87の先端87aとアダプタ部材30の縁面29との間隙に+R側から接着剤86を充填していた。しかし、例えば、予めアダプタ部材30の縁面29に接着剤86を塗布してから、駆動モジュール2を組み付けることにより、立壁87の先端87aとアダプタ部材30の縁面29とを接着剤86で接着しても良い。
【0103】
各実施形態では、Z方向においてアダプタ側基準面27と縁面29との間に中間面28を設け、アダプタ部材30の+Z側面に2段の段差を形成していたが、必ずしも中間面28を設ける必要はなく、アダプタ側基準面27と縁面29とによりアダプタ部材30の+Z側面に1段の段差を形成してもよい。ただし、アダプタ部材30の強度を確保できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0104】
第2実施形態では、第1係合部60である固定ピン61の先端部62を弾性変形させることにより、固定ピン61と第2係合部70である挿通孔75とを係合させていた。これに対して、例えば、第2係合部70である挿通孔75の外側に、径方向に沿ったスリットを形成するなどして、挿通孔75の径方向外側を弾性変形させることにより第1係合部60である固定ピン61と第2係合部70である第1挿通孔71とを係合させてもよい。また、第1係合部60である固定ピン61の先端部62および第2係合部70である挿通孔75の両方を弾性変形させることにより、固定ピン61と挿通孔75とを係合させてもよい。
【0105】
第2実施形態では、第2係合部70は、第1挿通孔71と第2挿通孔73とにより段付きの挿通孔75に形成されていたが、第1挿通孔71のみであってもよい。ただし、第2挿通孔73を設けることで、固定ピン61の張出部62a,62bを第2挿通孔73内に収容でき、他部品との干渉を防止できる点で、本実施形態に優位性がある。
また、第2実施形態において、固定ピン61の張出部62a,62bを熱溶着するなどして、固定ピン61の張出部62a,62bをさらに拡径してもよい。これにより、駆動モジュール2とアダプタ部材30とを強固に固定できる。
【符号の説明】
【0106】
1・・・駆動モジュール組立体 2・・・駆動モジュール 4・・・レンズ枠(被駆動体) 5・・・モジュール枠(支持体) 8・・・モジュール板部材 20・・・カメラ付き携帯電話(カメラモジュール) 25,70・・・第2係合部 27・・・アダプタ側基準面 29・・・縁面 30・・・アダプタ部材 60,87b,・・・第1係合部 61・・・固定ピン 62・・・先端部 62a・・・張出部 62b・・・張出部 63・・・スリット 71・・・第1挿通孔 73・・・第2挿通孔 75・・・挿通孔 86・・・接着剤 87・・・立壁 87a・・・先端 90・・・モジュール側基準面 O・・・中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の支持体と、前記支持体の内側において前記支持体の軸方向に沿って往復移動可能に配置された被駆動体と、を備えた駆動モジュールと、
前記駆動モジュールの前記軸方向における一方側に、前記支持体の中心軸と同軸上に配置されたアダプタ部材と、
を備えた駆動モジュール組立体であって、
前記駆動モジュールの前記一方側の面には、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材との前記軸方向における相対位置を決定するモジュール側基準面が形成され、
前記アダプタ部材の前記軸方向における他方側の面には、前記モジュール側基準面と当接することにより、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材との前記軸方向における相対位置を決定するアダプタ側基準面が形成され、
前記駆動モジュールには、前記中心軸を挟んで対向する少なくとも1対の第1係合部が形成され、
前記アダプタ部材には、前記アダプタ側基準面とは異なる部分に、前記第1係合部と対応する位置に第2係合部が形成され、
前記モジュール側基準面と前記アダプタ側基準面とを当接させつつ、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合されることにより、前記駆動モジュールと前記アダプタ部材とが固定されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記アダプタ部材の前記他方側の面は、前記アダプタ側基準面よりも前記一方側に配置された縁面を有し、
前記縁面には、前記第2係合部が形成されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記駆動モジュールは、前記支持体に固定され前記支持体の前記一方側を覆うモジュール板部材を備え、
前記モジュール側基準面は、前記モジュール板部材の前記一方側の面に形成され、
前記第1係合部は、前記モジュール板部材における前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記第1係合部は、前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設された立壁に設けられ、
前記立壁の先端と前記縁面との間隙には、接着剤が充填されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項5】
請求項1に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記第1係合部は、前記支持体の前記一方側の面から前記軸方向に沿って立設された固定ピンとされ、
前記第2係合部は、前記固定ピンが挿通される挿通孔とされ、
前記固定ピンの先端部には、前記挿通孔の径よりも拡径するように外方に張り出すとともに前記挿通孔の開口周縁部に係合して、前記固定ピンが前記挿通孔内から抜けることを規制する張出部が形成されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記アダプタ部材の前記他方側の面は、
前記アダプタ側基準面よりも前記一方側に配置された中間面と、
前記中間面よりもさらに前記一方側に配置された縁面と、
を有し、
前記中間面には、前記第2係合部が形成されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記駆動モジュールは、前記支持体に固定され前記支持体の前記一方側を覆うモジュール板部材を備え、
前記モジュール側基準面は、前記モジュール板部材の前記一方側の面に形成され、
前記モジュール板部材は、前記モジュール側基準面の周辺から前記軸方向に沿って立設された立壁を備え、
前記立壁の先端と前記縁面との間隙には、接着剤が充填されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記固定ピンには、先端部を該固定ピンの周方向に複数に分割するスリットが形成され、
分割された前記各先端部には、前記張出部がそれぞれ形成されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の駆動モジュール組立体であって、
前記挿通孔は、第1挿通孔と、該第1挿通孔よりも拡径した第2挿通孔と、を有する段付き孔とされ、
前記固定ピンの前記張出部は、前記第2挿通孔内に収容された状態で前記第1挿通孔の開口周縁部に係合されていることを特徴とする駆動モジュール組立体。
【請求項10】
請求項1に記載の駆動モジュール組立体を備えたことを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−20237(P2013−20237A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128154(P2012−128154)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】