説明

駆動信号生成回路、及び駆動信号生成方法

【課題】駆動信号の波形形状の改善を図る。
【解決手段】駆動信号生成回路は、電流増幅回路と、チャージポンプ回路とを備える。チャージポンプ回路は、電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、コンデンサーの他端の電圧を調整する調整部とを有する。調整部は、NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成されており、容量性負荷の充電時に原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、NチャンネルのFETをオンにして、電流増幅回路の高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にし、容量性負荷の放電時に、PチャンネルのFETをオンにして、電流増幅回路の低圧側電源電圧端子の電圧を原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、容量性負荷の放電時に、PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動信号生成回路、及び駆動信号生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを噴射して画像を印刷するインクジェットプリンターでは、圧電素子(例えばピエゾ素子)を用いてインクを噴射するものが知られている。圧電素子は、電気的にはコンデンサーのような容量性負荷となる。圧電素子はノズル毎に設けられており、各ノズルの圧電素子を動作させるためには十分な電流を供給する必要がある。このため、原駆動信号を電流増幅回路で増幅し、増幅された駆動信号をヘッドに供給している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−272907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電流増幅回路では、電流増幅回路の高圧側電源電圧端子が電源に接続され、低圧側電源電圧端子が接地されている。このような電流増幅回路で原駆動信号の電流増幅を行う場合、充電用トランジスタにおける消費電力は、高圧側電源電圧と駆動信号との電圧差に電流を乗じた量になり、放電用トランジスタにおける消費電力は、低圧側電源電圧と駆動信号との電圧差に電流を乗じた量になるため、各トランジスタにおける消費電力は大きくなる。
【0005】
そこで、本発明は、消費電力を低減する構成を提供することを目的とする。加えて、本発明では、消費電力を低減するためにチャージポンプ回路を採用した構成において駆動信号の波形形状の改善を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、原駆動信号が入力され、前記原駆動信号の電圧変化に応じて容量性負荷を充放電する電流増幅回路と、前記電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され前記電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、前記コンデンサーの前記他端の電圧を調整する調整部とを有するチャージポンプ回路であって、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも高い電圧を印加し、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも低い電圧を印加するチャージポンプ回路と、を備えた駆動信号生成回路であって、前記調整部は、NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成されており、前記容量性負荷の充電時に前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、前記NチャンネルのFETをオンにして、充電された前記コンデンサーの前記他端の電圧を上げて、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にし、前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETをオンにして、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子の電圧を前記原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることを特徴とする駆動信号生成回路である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の全体構成のブロック図である。
【図2】図2Aは、プリンター1の全体構成の概略図である。また、図2Bは、プリンター1の全体構成の横断面図である。
【図3】駆動信号COMの説明図である。
【図4】第1参考例の駆動信号生成回路の構成の説明図である。
【図5】第1参考例の駆動信号生成回路の動作の説明図である。
【図6】第2参考例の駆動信号生成回路の構成の説明図である。
【図7】第2参考例の原駆動信号OCOM、制御信号及び各ポイントでの電圧の時間変化の説明図である。
【図8】本実施形態の概略説明図である。
【図9】本実施形態の駆動信号生成回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
原駆動信号が入力され、前記原駆動信号の電圧変化に応じて容量性負荷を充放電する電流増幅回路と、前記電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され前記電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、前記コンデンサーの前記他端の電圧を調整する調整部とを有するチャージポンプ回路であって、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも高い電圧を印加し、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも低い電圧を印加するチャージポンプ回路と、を備えた駆動信号生成回路であって、前記調整部は、NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成されており、前記容量性負荷の充電時に前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、前記NチャンネルのFETをオンにして、充電された前記コンデンサーの前記他端の電圧を上げて、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にし、前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETをオンにして、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子の電圧を前記原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることを特徴とする駆動信号生成回路が明らかとなる。
このような駆動信号生成回路によれば、駆動信号の波形形状を改善することができる。
【0011】
かかる駆動信号生成回路であって、前記原駆動信号が最低電圧になる前に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、駆動信号の最低電圧をより低くすることができる。
【0012】
かかる駆動信号生成回路であって、前記容量性負荷の放電時の電荷を蓄積する蓄電素子を更に備えることが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、容量性負荷から放出された電荷を回生することができる。
【0013】
かかる駆動信号生成回路であって、前記蓄電素子へ電荷を回生させた後に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、蓄電素子に十分な回生を行うことができる。
【0014】
かかる駆動信号生成回路であって、前記容量性負荷の充電時に前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になる前に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることをやめることが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、NチャンネルのFETとPチャンネルのFETとが、同時オンとなることを防止できる。
【0015】
かかる駆動信号生成回路であって、前記PチャンネルのFETのゲート電圧を生成するゲート電圧生成回路を備えることが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、PチャンネルのFETの動作を制御することができる。
【0016】
かかる駆動信号生成回路であって、前記ゲート電圧生成回路は、負電圧を発生する負電圧発生部と、PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くしないときには、前記原駆動信号に応じて変化する制御信号をPチャンネルのFETのゲートに印加させ、PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くするときには、前記負電圧発生部で発生した負電圧と前記制御信号の電圧との分圧を前記PチャンネルのFETのゲートに印加させる切替部と、を有することが望ましい。
このような駆動信号生成回路によれば、PチャンネルのFETのゲートに適宜のタイミングで負電圧を印加することができる。
【0017】
また、原駆動信号が入力され、前記原駆動信号の電圧変化に応じて容量性負荷を充放電する電流増幅回路と、前記電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され前記電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成され、前記コンデンサーの前記他端の電圧を調整する調整部とを有し、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも高い電圧を印加し、記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも低い電圧を印加するチャージポンプ回路と、を備えた駆動信号生成回路による駆動信号生成方法であって、
前記容量性負荷の充電時に、前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、前記NチャンネルのFETをオンにして、充電された前記コンデンサーの前記他端の電圧を上げて、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にすることと、前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETをオンにして、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子の電圧を前記原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、且つ、前記容量性負荷の放電時の所定のタイミングで、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることと、を有することを特徴とする駆動信号生成方法が明らかとなる。
このような駆動信号生成方法によれば、駆動信号の波形形状を改善することができる。
【0018】
以下の実施形態では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0019】
===プリンターの構成===
<インクジェットプリンターの構成について>
図1は、プリンター1の全体構成のブロック図である。また、図2Aは、プリンター1の全体構成の概略図である。また、図2Bは、プリンター1の全体構成の横断面図である。以下、プリンターの基本的な構成について説明する。
【0020】
プリンター1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0021】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22(PFモータとも言う)と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する。給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0022】
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター32(CRモーターとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター32によって駆動される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
【0023】
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。ヘッド41の各ノズルにはピエゾ素子が設けられており、ピエゾ素子が駆動信号COM(後述)で駆動されることによって、ノズルからインクが噴射する。
【0024】
検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー52、紙検出センサー53、光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダー51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダー52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の紙の先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、紙の有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ31によって移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、紙の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0025】
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニットである。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、駆動信号生成回路65を有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0026】
また、駆動信号生成回路65は、ヘッドユニット40のピエゾ素子を駆動させるための駆動信号COMを生成する。駆動信号生成回路65で生成された駆動信号COMは、フレキシブルケーブル71を介してヘッドユニット40のヘッド41に伝送される。
なお、駆動信号生成回路65の詳細については後述する。
【0027】
図3は駆動信号COMの説明図である。駆動信号生成回路65で生成された駆動信号COMはピエゾ素子に印加される。駆動信号COMの電圧の上昇している期間にピエゾ素子が充電される。また、駆動信号COMの電圧が下降している期間にピエゾ素子が放電される。図は、媒体上の1画素にドットを形成する期間の駆動信号COMを示している。媒体に印刷を行う際には、各画素にドットを形成するごとに、図の駆動信号COMが繰り返し生成される。そして、この駆動信号COMの変化に応じてピエゾ素子の充電と放電が行なわれる。このように駆動信号COMによってピエゾ素子が充放電され、ピエゾ素子が駆動信号COMの電圧変化に応じて変位することによってインクチャンバーが膨張・収縮し、対応するノズルからインクが吐出される。
【0028】
<印刷手順について>
コントローラー60は、コンピューター110から印刷命令及び印刷データを受信すると、印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の処理を行う。
【0029】
まず、コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき用紙Sを搬送ローラー23の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター22を駆動させることによって搬送ローラー23を回転させる。搬送ローラー23が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。
【0030】
用紙Sがヘッドユニット40の下部まで搬送されると、コントローラー60は、印刷命令に基づいてキャリッジモーター32を回転させる。このキャリッジモーター32の回転に応じて、キャリッジ31が移動方向に移動する。また、キャリッジ31が移動することによって、キャリッジ31に設けられたヘッドユニット40も同時に移動方向に移動する。そして、コントローラー60は、ヘッドユニット40が移動方向に移動している間に駆動信号生成回路65に駆動信号COMを生成させる。そして、駆動信号COMによってピエゾ素子を駆動させることに基づいて、ヘッド41から断続的にインク滴を噴射させる。このインク滴が、用紙Sにインク滴が着弾することによって、移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。なお、移動するヘッド41からインクを噴射することによるドット形成動作のことをパスという。
【0031】
また、コントローラー60は、ヘッドユニット40が往復移動する合間に搬送モーター22を駆動させる。搬送モーター22は、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、搬送モーター22は、この駆動力を用いて搬送ローラー23を回転させる。搬送ローラー23が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。つまり、用紙Sの搬送量は、搬送ローラー23の回転量に応じて定まることになる。このように、パスと搬送動作を交互に繰り返して行い、用紙Sの各画素にドットを形成していく。こうして用紙Sに画像が印刷される。
【0032】
そして、最後に、コントローラー60は、搬送ローラー23と同期して回転する排紙ローラー25によって印刷が終了した用紙Sを排紙する。
【0033】
===駆動信号生成回路について===
<第1参考例>
図4は第1参考例の駆動信号生成回路65の構成の説明図である。なお、ピエゾ素子は容量性負荷として機能するので、図ではピエゾ素子がコンデンサー(C1)として記載されている。また、プリンター1には、各ノズルに対してそれぞれピエゾ素子が設けられているが、図中ではピエゾ素子を示すコンデンサーを1個で省略記載している。
第1参考例の駆動信号生成回路65は、D/Aコンバータ(以下DACともいう)651と電流増幅回路652を有している。
【0034】
DAC651には、CPU62から駆動信号データ(デジタルデータ)が入力される。DAC651はこのデジタルデータをアナログ信号に変換し、駆動信号データに応じた原駆動信号OCOMを出力する。なお、原駆動信号OCOMの電圧変化は、図3の駆動信号COMとほぼ同じである。
【0035】
電流増幅回路652は、多数のピエゾ素子が支障なく動作できるように、十分な電流を供給するための回路である。電流増幅回路652は、入力される原駆動信号OCOMの電圧変化に応じてピエゾ素子C1を充放電するための駆動信号COMを出力する。電流増幅回路652は、充電側トランジスタQ1と放電側トランジスタQ2を有する。充電側トランジスタQ1はNPN型のトランジスタであり、放電側トランジスタQ2はPNP型のトランジスタである。すなわち、電流増幅回路652は、相補的に2個のトランジスタを接続したプッシュプル増幅回路である。
【0036】
充電側トランジスタQ1(NPN型トランジスタ)のベースにはDAC651からの原駆動信号OCOMが入力される。また、充電側トランジスタQ1のコレクタは42V電源と接続されており、充電側トランジスタQ1のエミッタは放電側トランジスタQ2のエミッタと接続されているとともに、ピエゾ素子C1への駆動信号COMの出力信号線に接続されている。
【0037】
放電側トランジスタQ2(PNP型トランジスタ)のベースにはDAC651からの原駆動信号OCOMが入力される。また、放電側トランジスタQ2のコレクタはグランド(GND)と接続されており、放電側トランジスタQ2のエミッタは、充電側トランジスタQ1のエミッタと接続されている。
【0038】
次に第1参考例の駆動信号生成回路65の動作について説明する。図5は、第1参考例の駆動信号生成回路65の動作の説明図である。
【0039】
(充電時)
ピエゾ素子C1の充電時には、DAC651からの原駆動信号OCOMの電圧が徐々に高くなる。これにより、充電側トランジスタQ1がオンとなって、図に示すように電流I1が流れてピエゾ素子C1が充電される。このときの、充電側トランジスタQ1の発熱量(消費電力)は、充電側トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間の電圧と電流I1との積で表される。つまり、図5の左側斜線部(右上がり線のハッチング部分)と電流I1の積になる。
【0040】
(ホールド時)
ホールド時には、原駆動信号OCOMの電圧が変化しない。これにより、充電側トランジスタQ1と放電側トランジスタQ2は共にオフとなる。よって、電流が流れず駆動信号COMは同じ電圧を維持する。
【0041】
(放電時)
ピエゾ素子C1の放電時には、DAC651からの原駆動信号OCOMの電圧が徐々に低くなる。これにより、放電側トランジスタQ2がオンとなって、図に示すように電流I2が流れてピエゾ素子が放電される。このときの、放電側トランジスタQ2の発熱量は、放電側トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間の電圧と電流I2との積で表される。つまり、図5の右側斜線部(右下がり線のハッチング部分)と電流I2の積になる。
【0042】
<第2参考例>
第1参考例では、斜線部の面積(コレクタ−エミッタ間の電圧差)が大きく、発熱量が大きい。これに対し、第2参考例では、コレクタ−エミッタ間の電圧差を小さくし、発熱量を低減させている。
また、第1参考例では、ピエゾ素子に充電された電荷が全てグランドに放電されてしまう。これに対し、第2参考例では、ピエゾ素子に充電された電荷の一部を放電時に回生している。
【0043】
図6は、第2参考例の駆動信号生成回路65の構成の説明図である。第2参考例の駆動信号生成回路65は、DAC651、電流増幅回路652、チャージポンプ回路66、回生用のコンデンサーC3、及び、21V電源V1を有している。電流増幅回路652の高圧側電源電圧端子は、チャージポンプ回路66の高圧側出力端子と接続している(A点)。また、電流増幅回路652の低圧側電源電圧端子は、チャージポンプ回路66の低圧側出力端子と接続している(B点)。チャージポンプ回路66の充電用端子は、21V電源V1とコンデンサーC3と接続している(C点)。チャージポンプ回路66の放電用端子は、GNDと接続している(D点)。
【0044】
DAC651は、第1参考例と同様の構成である。但し、第2参考例のDAC651は、原駆動信号OCOMだけでなく、制御信号も出力する。なお、制御信号については後述する。
【0045】
電流増幅回路652は、第1参考例と同様の構成である。但し、第2参考例では、充電側トランジスタQ1のコレクタの接続先は、42V電源ではなく、後述するチャージポンプ回路66のコンデンサーC2の高圧側端子である。また、放電側トランジスタQ2の接続先は、グランド(GND)ではなく、チャージポンプ回路66のコンデンサーC2の低圧側端子である。
【0046】
チャージポンプ回路66は、コンデンサーC2、電圧調整部661、ダイオードD1及びダイオードD2を有している。チャージポンプ回路66は、電流増幅回路652の高圧側電源電圧端子に原駆動信号OCOMよりも高い電圧を印加するとともに(A点)、電流増幅回路652の低圧側電源電圧端子に原駆動信号OCOMよりも低い電圧を印加する(B点)。
【0047】
コンデンサーC2は、チャージポンプ用のコンデンサーであり、コンデンサーC1(全てのピエゾ素子の容量の合計)よりも容量が大きい。コンデンサーC2の高圧側端子は、充電側トランジスタQ1のコレクタと接続され、コンデンサーC2の低圧側端子は、放電側トランジスタQ2のコレクタと接続されている。
【0048】
電圧調整部661は、図中B点(コンデンサーC2の低圧側端子、すなわち、放電側トランジスタQ2のコレクタ)の電圧を調整する。電圧調整部661は、DAC651からの制御信号により動作が制御される。
【0049】
第2参考例の電圧調整部661は、相補的に接続されたNチャンネル型FET(Q3)と、Pチャンネル型FET(Q4)によるソースフォロア構成である。この構成により、電圧調整部661の出力電圧(B点電圧)が、入力電圧(制御信号の電圧)と同じになるように制御される。
【0050】
Nチャンネル型FET(以下、N型FETともいう)Q3のゲートには、DAC651からの制御信号が印加される。また、N型FETQ3のドレインは電源V1(21V)に接続されており、N型FETQ3のソースは、Pチャンネル型FET(Q4)のソースと接続されている。
【0051】
Pチャンネル型FET(以下、P型FETともいう)Q4のゲートにはDAC651からの制御信号が印加される。P型FETQ4のドレインはグランド(GND)に接続されており、P型FETQ4のソースは、N型FETQ3のソースと接続されている。また、N型FETQ3のソース及びP型FETQ4のソースは、電流増幅回路652の放電側トランジスタQ2のコレクタと、コンデンサーC2の低圧側端子に接続されている。
【0052】
B点の電圧が制御信号の電圧よりも低くなる場合にはN型FETQ3がオンし、B点の電圧が制御信号の電圧よりも高くなる場合にはP型FETQ4がオンする。こうして、電圧調整部661は、制御信号と同じ電圧になるようにB点の電圧を調整する。
【0053】
ダイオードD1は逆流防止用のダイオードであり、ダイオードD1のカソード側は電流増幅回路652の充電側トランジスタQ1のコレクタ及びコンデンサーC2の高圧側端子と接続されており、アノード側は電源V1及びN型FETQ3のドレインと接続されている。
【0054】
ダイオードD2は、回生用のダイオードであり、放電側トランジスタQ2からコンデンサーC3へ電流が流れることを許容するためのものである。ダイオードD1のカソード側は、コンデンサーC3の高圧側端子と接続されており、アノード側は放電側トランジスタQ2のコレクタと接続されている。
【0055】
コンデンサーC3(蓄積素子に相当する)は、回生される電荷を蓄積するためのものである。ピエゾ素子C1の放電時に放電側トランジスタQ2から放出された電荷がダイオードD2を介してコンデンサーC3に回生される。このコンデンサーC3の容量は、コンデンサーC1(全てのピエゾ素子の容量の合計)及びコンデンサーC2の容量よりも大きい。コンデンサーC3の低圧側端子はグランドに接続されており、高圧側端子は電源V1、ダイオードD1のアノード側、ダイオードD2のカソード側に接続されている。
【0056】
電源V1は、21Vの電源である。つまり、第2参考例の電源電圧は、第1参考例での電源電圧(42V)よりも低い電圧である。
【0057】
次に第2参考例の駆動信号生成回路65の動作について説明する。
図7は、第2参考例の原駆動信号OCOM(駆動信号COM)、制御信号及び各ポイントでの電圧の時間変化の説明図である。
まず、時刻T0では、原駆動信号OCOMに変化がなく、充電側トランジスタQ1、放電側トランジスタQ2は共にオフである。A点電圧(コンデンサーC2の高圧側端子、電流増幅回路652の充電側トランジスタQ1のコレクタ)は電源V1により21Vになる。また、このとき制御信号はGND電圧であり、これにより、B点電圧(コンデンサーC2の低圧側端子)は、GND電圧になる。よって、コンデンサーC2が21Vで充電される。
【0058】
時刻T1〜T2では、DAC651からの原駆動信号OCOMの電位が徐々に高くなる。原駆動信号OCOMが高くなることによって、電流増幅回路652の充電側トランジスタQ1がオンとなり、ピエゾ素子C1が充電される。このときの充電側トランジスタQ1のコレクタ電圧は21Vなので、充電側トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間の電圧差は、21V−駆動信号COMの電圧(図のT1〜T2のハッチング部分)となる。これは第1参考例の場合よりも小さい。すなわち、充電側トランジスタQ1の発熱が第1参考例よりも小さくなる。
また、このとき、制御信号はGND電圧である。つまり、図のB点の電圧がGND電圧になっている。
【0059】
時刻T2〜T3では、制御信号の電圧が、原駆動信号OCOMの電圧変化と同じ傾きで、徐々に高くなる。制御信号の電圧が高くなることによって、電圧調整部661のN型FETQ3がオンになる。N型FETQ3がオンすることにより、電源V1(21V)からB点に電流が流れ、B点電圧が制御信号と同じ電圧になる。また、時刻T2直前でコンデンサーC2が21Vで充電されているため、A点電圧が制御信号の電圧+21Vになる(図7参照)。また、原駆動信号OCOMが高くなることによって、電流増幅回路652の充電側トランジスタQ1がオンとなり、ピエゾ素子C1が充電される。このときの充電側トランジスタQ1のコレクタ電圧は「制御信号+21V」なので、充電側トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間の電圧差は、「制御信号+21V−駆動信号COMの電圧」となる(図のT2〜T3のハッチング部分)。これは第1参考例の場合よりも小さい。すなわち、充電側トランジスタQ1の発熱が第1参考例よりも小さくなる。
【0060】
時刻T3〜T4(ホールド時)では、原駆動信号OCOMが一定になる。これにより充電側トランジスタQ1が(及び放電側トランジスタQ2も)オフとなり、ピエゾ素子C1には電流が流れず、駆動信号COMは同じ電圧を維持する。また、このとき、制御信号も一定になる。これにより、N型FETQ3及びP型FETQ4はともにオフになる。
【0061】
時刻T4〜T5では、DAC651からの原駆動信号OCOMの電圧が徐々に低くなる。これにより、電流増幅回路652の放電側トランジスタQ2がオンとなり、ピエゾ素子C1が放電される。また、このとき、制御信号が原駆動信号OCOMの電圧と同じ傾きで徐々に低くなる。これにより、P型FETQ4がオンし、B点電圧を制御信号と同じにする。つまり、B点の電圧が原駆動信号OCOMの電圧と同じ傾きで低くなる。また、コンデンサー2は21Vで充電されているので、A点の電圧もB点の電圧が低くなるのと同じ傾きで低くなる。なお、このときの放電側トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間の電圧差は、「駆動信号COMの電圧−B点電圧」となる(図のT4〜T5のハッチング部分)。これは第1参考例の場合よりも小さい。すなわち、放電側トランジスタQ2の発熱が第1参考例よりも小さくなる。
【0062】
なお、放電側トランジスタQ2から放出される電荷は、P型FETQ4を介してGNDに放出されるが、駆動信号が21Vまでは、電荷の一部がダイオードD2を介してコンデンサーC3に移動する(回生)。
【0063】
時刻T5〜T6においても、放電側トランジスタQ2がオンとなり、ピエゾ素子C1が放電される。なお、ここでは、B点の電圧がGND電圧になっているので、放電側トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間の電圧差は、駆動信号COMの電圧−GND(T5〜T6のハッチング部分)である。
以下、同じ動作を繰り返す。
【0064】
<本実施形態>
上記の第2参考例では、説明の簡略化のため、N型FETQ3、P型FETQ4のゲートに印加される制御信号がGND電圧のとき、B点電圧もGND電圧として説明した。但し、実際には、閾値電圧(Vth)があるため、制御信号がGND電圧であっても、B点電圧はGND電圧にはならず、例えば約3Vになる。この結果、以下の2つの問題が生じる。
第1に、B点電圧が3V以下にならないため、駆動信号COMの最低電圧を3V以下にすることができなくなる。
第2に、チャージポンプ用のコンデンサーC2の充電時に低圧側端子が約3Vになるため、コンデンサーC2の充電電圧が低くなる。この結果、A点電圧を42V(=電源電圧×2)まで上げることができず、39V(=電源電圧×2−Vth)までしか上げられない。このため、駆動信号COMの最高電圧を39V以上にすることができなくなる。
そこで、本実施形態では駆動信号COMの波形形状の改善を図っている。
【0065】
図8は、本実施形態の概略説明図である。
本実施形態では、P型FETQ4のゲートにマイナス電位を印加することによって、B点電圧をGND電圧にして、上記の問題を解消している。なお、DAC651は、マイナス電位を出力できないため、本実施形態では、マイナス電位を生成するためのマイナス電圧発生部(負電圧発生部に相当する)が設けられている。
図8に示すように、N型FETQ9のドレインにはマイナス電圧発生部の出力のマイナス電圧が印加されている。また、N型FETQ9のソースは、抵抗R6を介してP型FETQ4のゲートと接続されている。なお、N型FETQ9は切替部に相当する。
N型FETQ9がオフの場合、制御信号が抵抗R1を介してP型FETQ4のゲートに印加される。
一方、N型FETQ9がオンの場合、制御信号の電圧と、マイナス電圧発生部からのマイナス電圧とが、抵抗R1と抵抗R6によって分圧されてP型FETQ4のゲートに印加される。
【0066】
図9は、本実施形態の駆動信号生成回路65の説明図である。
本実施形態の駆動信号生成回路65は、第2参考例と同様に、DAC651、電流増幅回路652、チャージポンプ回路66、回生用のコンデンサーC3、及び、21V電源V1を有すると共に、更にマイナス電位生成回路67を有する。本実施形態と第2参考例とを比較すると、マイナス電位生成回路67がある点や、電圧調整部661に入力される信号などが異なっている。そこで、第2参考例とは異なる点について説明する。
【0067】
マイナス電位生成回路67(ゲート電圧生成回路に相当する)は、N型FETQ6、P型FETQ7、N型FETQ8、N型FETQ9、コンデンサーC4、ダイオードD5、抵抗R4、R5、R6を有している。なお、N型FETQ6、P型FETQ7、N型FETQ8、コンデンサーC4、ダイオードD5、抵抗R4、R5はマイナス電圧発生部を構成している。
【0068】
N型FETQ6とP型FETQ7は、相補的に接続されたソースフォロア構成である。
N型FETQ6のゲートは、P型FETQ7のゲート及びN型FETQ8のドレインと接続されている。また、N型FETQ6のドレインは、電源V1と接続され、N型FETQ6のソースは、P型FETQ7のソース及びコンデンサーC4の高圧側端子(図中上側の端子)と接続されている。
P型FETQ7のゲートは、N型FETQ6のゲート及びN型FETQ8のドレインと接続されている。また、P型FETQ7のソースは、N型FETQ6のソース及びコンデンサーC4の低圧側端子(図中上側の端子)と接続され、P型FETQ7のドレインはグランド(GND)と接続されている。
コンデンサーC4の高圧側端子は、N型FETQ6のソース及びP型FETQ7のソースと接続され、コンデンサーC4の低圧側端子は、N型FETQ9のソースと接続されている。
【0069】
ダイオードD5は、逆流防止用のダイオードであり、アノード側はコンデンサーC4の低圧側端子と接続され、カソード側はP型FETQ7のドレインと接続されている。
抵抗R4の一端はN型FETQ6のゲートと接続され、他端はN型FETQ6のドレインと接続されている。
抵抗R5の一端はN型FETQ8のゲートと接続され、他端はN型FETQ8のソースと接続されている。
抵抗R6の一端はN型FETQ9のドレインと接続され、他端はP型FETQ4のゲートと接続されている。
【0070】
N型FETQ8のソースはグランド(GND)と接続され、N型FETQ8のドレインは、N型FETQ6のゲート及びP型FETQ7のゲートと接続されている。また、N型FETQ8のゲートには、CPU62からHレベル(例えば3V)又はLレベル(例えば0V)の電圧が印加される。
N型FETQ9のゲートは、N型FETQ8のゲートと接続されている。つまり、N型FETQ9のゲートにも、CPU62からHレベル(例えば3V)又はLレベル(例えば0V)の電圧が印加される。また、N型FETQ9のソースは、コンデンサーC4の低圧側端子と接続され、N型FETQ9のドレインは、抵抗R6を介してP型FETQ4のゲートと接続されている。
【0071】
次にマイナス電位生成回路67の動作について説明する。
CPU62によって、N型FETQ8のゲート電圧が制御される(オン/オフが制御される)。N型FETQ8のオン/オフのタイミングについては後述する。
【0072】
N型FETQ8がオフのとき(CPU62からN型FETQ8のゲートに0Vが印加されたとき)、N型FETQ6のゲート及びP型FETQ7のゲートには電源V1から21Vが印加される。よって、N型FETQ6及びP型FETQ7のソース電圧が21Vになる(N型FETQ6がオン、P型FETQ7がオフ)。つまり、コンデンサーC4が21Vで充電され、コンデンサーC4の高圧側端子(図中上側端子)が21V、低圧側端子(図中下側端子)がGND電圧になる。なお、このときN型FETQ9のゲートにも0Vが印加され、N型FETQ9のソースがGND電圧になる。よってN型FETQ9はオフとなる。
【0073】
一方、N型FETQ8がオンのとき(CPU62からN型FETQ8のゲートに3Vが印加されたとき)、N型FETQ6のゲート及びP型FETQ7のゲートにGND電圧が印加される。よって、N型FETQ6及びP型FETQ7のソース電圧がGND電圧になる(N型FETQ6がオフ、P型FETQ7がオン)。これにより、コンデンサーC4の高圧側端子(図中上側端子)がGND電圧、低圧側端子(図中下側端子)が−21Vになる。このとき、N型FETQ9のゲートにも3Vが印加されるので、N型FETQ9のゲート-ソース間電圧(VGS)が約−24Vになり、N型FETQ9がオンする。よって、P型FETQ4のゲートに、制御信号の電圧と、マイナス電位生成回路67からの−21Vの分圧が印加される。これによりP形FETQ4がオンとなり、B点電圧がGND電圧になる。
【0074】
次に、P形FETQ4のゲートにマイナス電位を印加するタイミング(言い換えると、CPU62からN型FETQ8のゲートに3Vを印加するタイミング)について説明する。
【0075】
まず、ピエゾ素子C1の放電時のコンデンサーC3への電荷の回生の終了後であることが望ましい。これは、コンデンサーC3への回生終了前にP形FETQ4のゲートにマイナス電位を印加すると、P形FETQ4からGNDに放出される電荷が増えるため、コンデンサーC3への十分な回生ができないからである。なお、本実施形態の場合、前述したように、ピエゾ素子C1の放電時に、コンデンサーC3に電荷が回生されるのは、駆動信号COMの電圧が21Vになる時刻Taまでである。よって、図7において、時刻Taよりも後であることが望ましい。
【0076】
次に、ピエゾ素子C1の放電時に、駆動信号COMが最低電圧になる前であることが望ましい。より詳しくは、駆動信号COMの電位が、3V(P形FETQ4のVth)に達する前であることが望ましい。これは、3V以下の駆動信号COMを生成する際に、放電側トランジスタQ2のコレクタ電圧を3V以下にする必要があるためである。よって、図7において、時刻T6よりも前であることが望ましい。
なお、P形FETQ4のゲートに印加したマイナス電位を解除するタイミングは、遅くとも次の駆動信号COMの生成時にN型FETQ3をオンにする前(図7の時刻T2の前)である。
このため、本実施形態では、時刻Taの後から時刻T6までの間、P形FETQ4のゲートにマイナス電圧を印加するようにしている。すなわち、CPU62は、時刻Taの後から時刻T6までの期間にN型FETQ8(N型FETQ9)のゲートに3Vを印加し、それ以外の期間は0Vを印加する。
【0077】
以上説明した本実施形態の駆動信号生成回路65は、電流増幅回路652と、チャージポンプ回路66とを備えている。
【0078】
電流増幅回路652は、原駆動信号OCOMが入力され、原駆動信号OCOMとほぼ同じ電圧変化の駆動信号COMを出力することによって、容量性負荷であるピエゾ素子C1を充放電する。
【0079】
チャージポンプ回路66のコンデンサーC2は、電流増幅回路652の高圧側電源電圧端子(充電側トランジスタQ1のコレクタ)に高圧側端子が接続され、電流増幅回路652の低圧側電源電圧端子(放電側トランジスタQ2のコレクタ)に低圧側端子が接続されている。また、チャージポンプ回路66の電圧調整部661は、N型FETQ3とP型FETQ4とのソースフォロアで構成されており、コンデンサーC2の低圧側端子の電圧(B点電圧)を調整する。そして、チャージポンプ回路66は、電流増幅回路652の高圧側電源電圧端子に原駆動信号OCOMよりも高い電圧を印加するとともに(A点)、電流増幅回路652の低圧側電源電圧端子に原駆動信号OCOMよりも低い電圧を印加する(B点)。
このような構成の駆動信号生成回路65において、本実施形態では、ピエゾ素子C1の充電時に原駆動信号OCOMが21Vよりも高い電圧になるときに、N型FETQ3をオンにして、21Vに充電されたコンデンサーC2の低圧側端子の電圧を上げて、電流増幅回路652の高圧側電源電圧端子の電圧を21Vよりも高い電圧にしている。
【0080】
また、ピエゾ素子C1の放電時に、P型FETQ4をオンにして、電流増幅回路652の低圧側電源電圧端子の電圧を原駆動信号OCOMの電圧よりも低い電圧にしている。
さらに、ピエゾ素子C1の放電時に、マイナス電位生成回路67で生成されるマイナス電圧によって、P型FETQ4のゲート電圧を、P型FETQ4のドレイン電圧よりも低い電圧になるようにしている。これにより、ピエゾ素子C1の放電時にコンデンサーC2の低圧側端子(B点)をGND電圧にすることができ、駆動信号COMの最低電圧を3V以下にすることができる。
【0081】
また、コンデンサーC2の低圧側端子(B点)をGND電圧にできるため、コンデンサーC2を電源電圧(21V)と同じ電圧に充電できる。この結果、A点電圧を42V(=電源電圧×2)まで上げることができ、駆動信号COMの最高電圧を高くすることができる。
このように、本実施形態では駆動信号COMの波形形状の改善を図ることができる。
【0082】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0083】
<プリンターについて>
前述の実施形態のプリンターは、ヘッドが移動方向に移動するドット形成動作(パス)と、用紙を搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であった。しかし、プリンターの種類は、これに限られるものではない。例えば、ヘッドを固定して、ヘッドと対向させて用紙を搬送させながらヘッドからインクを吐出させて印刷を行うプリンター(いわゆるラインプリンター)であっても良い。
【0084】
<液体噴射装置について>
前述の実施形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェットプリンターが説明されている。但し、液体噴射装置はインクジェットプリンターに限られるものではなく、インク以外の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような液状体も含む)や液体以外の流体(流体として噴射できる固体、例えば粉体)を噴射する流体噴射装置にも適用可能である。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる液状の色剤や電極材などを噴射する噴射装置や、バイオチップ製造に用いられる液状の生体有機物を噴射する噴射装置に、前述の実施形態を適用しても良い。
【0085】
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンターの実施形態だったので、インクをノズルから噴射しているが、このインクは水性でも良いし、油性でも良い。また、ノズルから噴射する流体は、インクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから噴射しても良い。
【0086】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを吐出していた。しかし、駆動される素子が容量性負荷の機能があれば、ピエゾ素子に限られず、他の圧電素子でも良い。
【0087】
<DACについて>
前述の実施形態では、原駆動信号OCOMや制御信号を、DAC(D/Aコンバーター)を用いて生成したが、これに限られない。デジタルデータからアナログ信号に変換することなく、直接アナログ信号として原駆動信号OCOMや制御信号を出力しても良い。
【0088】
<マイナス電位生成回路について>
マイナス電位生成回路67は、ピエゾ素子C1の放電時の所定のタイミングで、P型FETQ4のゲート電圧がB点の電圧(P型FETQ4のドレイン電圧)よりも低くなるようにできればよく、本実施形態の構成には限られない。
例えば、原駆動信号OCOM(駆動信号COM)の波形をマイナス側に所定量オフセットさせるような構成にしてもよい。そして、前述の実施形態と同じ期間に、オフセットした信号をP型FETQ4のゲートに印加するようにしてもよい。
【0089】
<コンデンサーC3について>
本実施形態では、コンデンサーC3によって、ピエゾ素子C1の放電時の電荷を回生していたが、コンデンサーC3を用いなくてもよい(回生しなくてもよい)。また、この場合、ピエゾ素子C1の放電時に、駆動信号COMが21V以上においてP型FETQ4のゲートにマイナス電位生成回路67の出力を印加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 プリンター、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送モーター(PFモーター)、
23 搬送ローラー、24 プラテン、25 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
32 キャリッジモーター(CRモーター)、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、42 データ受信部、43 駆動信号生成部、
50 センサー群、51 リニア式エンコーダー、52 ロータリー式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路、
65 駆動信号生成部、651 DAC、652 電流増幅回路、
66 チャージポンプ回路、67 マイナス電位生成回路、
Q1 充電用トランジスタ、Q2 放電用トランジスタ、
Q3 N型FET、Q4 P型FET、Q6 N型FET、
Q7 P型FET、Q8 N型FET、Q9 N型FET、
C1 ピエゾ素子、C2〜C4 コンデンサー、V1 21V電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原駆動信号が入力され、前記原駆動信号の電圧変化に応じて容量性負荷を充放電する電流増幅回路と、
前記電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され前記電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、前記コンデンサーの前記他端の電圧を調整する調整部とを有するチャージポンプ回路であって、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも高い電圧を印加し、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも低い電圧を印加するチャージポンプ回路と、
を備えた駆動信号生成回路であって、
前記調整部は、
NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成されており、
前記容量性負荷の充電時に前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、前記NチャンネルのFETをオンにして、充電された前記コンデンサーの前記他端の電圧を上げて、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にし、
前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETをオンにして、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子の電圧を前記原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、
前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くする
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動信号生成回路であって、
前記原駆動信号が最低電圧になる前に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くする
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動信号生成回路であって、
前記容量性負荷の放電時の電荷を蓄積する蓄電素子を更に備える
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動信号生成回路であって、
前記蓄電素子へ電荷を回生させた後に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くする
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の駆動信号生成回路であって、
前記容量性負荷の充電時に前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になる前に、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることをやめる
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の駆動信号生成回路であって、
前記PチャンネルのFETのゲート電圧を生成するゲート電圧生成回路を備える
ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動信号生成回路であって、
前記ゲート電圧生成回路は、
負電圧を発生する負電圧発生部と、
PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くしないときには、前記原駆動信号に応じて変化する制御信号をPチャンネルのFETのゲートに印加させ、PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くするときには、前記負電圧発生部で発生した負電圧と前記制御信号の電圧との分圧を前記PチャンネルのFETのゲートに印加させる切替部と、
を有する、ことを特徴とする駆動信号生成回路。
【請求項8】
原駆動信号が入力され、前記原駆動信号の電圧変化に応じて容量性負荷を充放電する電流増幅回路と、
前記電流増幅回路の高圧側電源電圧端子に一端が接続され前記電流増幅回路の低圧側電源電圧端子に他端が接続されたコンデンサーと、NチャンネルのFET及びPチャンネルのFETのソースフォロアで構成され、前記コンデンサーの前記他端の電圧を調整する調整部とを有し、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも高い電圧を印加し、記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子に前記原駆動信号よりも低い電圧を印加するチャージポンプ回路と、
を備えた駆動信号生成回路による駆動信号生成方法であって、
前記容量性負荷の充電時に、前記原駆動信号が所定電圧よりも高い電圧になるときに、前記NチャンネルのFETをオンにして、充電された前記コンデンサーの前記他端の電圧を上げて、前記電流増幅回路の前記高圧側電源電圧端子の電圧を前記所定電圧よりも高い電圧にすることと、
前記容量性負荷の放電時に、前記PチャンネルのFETをオンにして、前記電流増幅回路の前記低圧側電源電圧端子の電圧を前記原駆動信号の電圧よりも低い電圧にし、且つ、前記容量性負荷の放電時の所定のタイミングで、前記PチャンネルのFETのゲート電圧をドレイン電圧よりも低くすることと、
を有することを特徴とする駆動信号生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−253772(P2010−253772A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105506(P2009−105506)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】