説明

駆動装置

【課題】被駆動体に収納する構成部品のサイズを従来より大きくすることが可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】SMAアクチュエータを用いた駆動装置100の構成では、拡大機構部材2の変位出力部におけるリング形態部21bは、平面視して被駆動体1の領域に含まれる。すなわち、拡大機構部材2の変位出力部2bにおけるリング形態部21bと被駆動体1とを軸線AXに沿う方向に縦に配置する構成をとり、拡大機構部材2の平面視形成領域分、従来の構成よりも被駆動体1をより外側にまで配置することができる。このため、従来と同じサイズの固定部材を用いても、そのスペースを有効利用して本体部内に装着するレンズユニットLUにおける撮像レンズLSの口径を従来よりも大きくすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金アクチュエータを用いて小型の機械要素を駆動する駆動装置に関し、特に、撮像光学系を構成するレンズユニットを光軸方向に移動するのに好適な駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ付き携帯電話機等に搭載される撮像素子の画素数が増大する等、高画質化が飛躍的に進んでおり、これに伴い、画像撮影という基本機能に加えて、フォーカス機能やズーム機能等を付加することが求められている。
【0003】
これらの機能を付加するには、レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動装置が必要であり、最近では、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMAと称する)アクチュエータを用いたレンズ駆動装置の適用が種々検討されている。この装置は、SMAを通電加熱する等して収縮力を発生させ、該収縮力をレンズ駆動力として利用するもので、小型化、軽量化が容易で、且つ、比較的大きな駆動力を得ることができるという利点がある。
【0004】
SMAアクチュエータを適用したレンズ駆動機構および駆動装置としては、例えば、特許文献1が開示する構成では、レバー部材がレンズユニットの一部分をその側方から包囲するアーム部分を有し、当該アーム部分の両端(先端)に変位出力部を備えるものであって、移動力の入力による変位入力部の変位量よりも変位出力部の光軸方向への変位量が大きくなるよう構成されている。
【0005】
また、特許文献2が開示する駆動装置の構成では、固定部の一角にレバー部材の駆動支点部を設け、該一角と対向する第二の角に、被駆動体の本体部からガイド胴部を突設し、このガイド胴部を摺動自在に支持すると共に、該ガイド胴部を付勢するバイアスバネを備える駆動ガイド部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−37059号公報
【特許文献2】国際公開第2011/065296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では撮像装置の小型化、特に低背化と、小型化に反するレンズの大口径化が求められている。そのため限られた大きさの中で、収納するレンズの口径は可能な限り大きいほうが好ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のような駆動装置の構成では、被駆動部材の外側周囲にレバー部材が配置されているため、被駆動部材とレバー部材との両者の厚みを考慮して、被駆動部材内部のレンズ枠に収納する撮像レンズの口径が決定されていた。このため、スペースに限りがあり、撮像レンズの口径が制限される構成となって、好ましくない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、SMAアクチュエータを用いた駆動装置の構造において、被駆動体に収納する構成部品のサイズを従来と比較して大きくすることが可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、貫通孔部を有する固定部材と、前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される所定の構成部品を収納可能な被駆動体と、前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、を備え、前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、平面視して前記駆動支点部と前記軸線を挟んで対向する所定の位置に前記軸線に沿って設けられる軸部材を有し、該軸部材の軸方向に沿って前記被駆動体を移動させることができるガイド機構部をさらに備え、前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して前記所定の対向位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部とからなる変位出力部とを有し、前記拡大機構部材の前記変位出力部における前記リング形態部は、平面視して前記被駆動体の領域に含まれることを特徴とする、駆動装置である。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の駆動装置であって、前記形状記憶合金アクチュエータとして線状のアクチュエータが設けられ、前記アクチュエータが平面視して「く」字状に屈曲する状態で前記変位入力部に架け渡されるとともに、前記アクチュエータの少なくとも一部は、前記被駆動体と平面視重複する位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記拡大機構部材の前記変位出力部は、前記軸線に沿う方向において前記被駆動体とは異なる高さに形成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、前記被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、前記ガイド胴部と前記軸部材とは一体化されて構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の何れかに記載の駆動装置であって、前記所定の構成部品が撮像レンズであり、前記軸線が前記撮像レンズの光軸であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、貫通孔部を有する固定部材と、前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される所定の構成部品を収納可能な被駆動体と、前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、を備え、前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して所定の位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結する変位連結部とを有し、前記固定部材は平面視矩形状を呈し、前記被駆動体は平面視略円状を呈し、前記固定部材の前記一角部を一方の頂点とした平面視第1及び第2の辺部分それぞれと、前記被駆動体とが最も接近する第1及び第2の最接近点を含む第1及び第2の最接近点近傍領域それぞれにおいて、前記軸線方向と直交し前記拡大機構部材が存在する断面には、前記被駆動体が存在しないことを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の駆動装置であって、前記所定の構成部品が撮像レンズを保持するレンズ枠であり、前記軸線が前記撮像レンズの光軸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、拡大機構部材の変位出力部におけるリング形態部は、平面視して被駆動体の領域に含まれる。すなわち、拡大機構部材の変位出力部におけるリング形態部と被駆動体とを軸線に沿う方向に縦に配置する構成をとり、拡大機構部材の平面視形成領域分、従来の構成よりも被駆動体をより外側にまで配置することができる。このため、従来と同じサイズの固定部材を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体に収納する所定の構成部品のサイズをできるだけ大きくすることが可能となる。
【0018】
請求項2の発明によれば、形状記憶合金アクチュエータとして線状のアクチュエータが設けられ、アクチュエータが平面視して「く」字状に屈曲する状態で変位入力部に架け渡されるとともに、アクチュエータの少なくとも一部は、被駆動体と平面視重複する位置に設けることにより、アクチュエータの平面視形成領域分、従来の構成よりも被駆動体をさらに外側にまで配置することができる。このため、従来と同じサイズの固定部材を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体に収納する所定の構成部品のサイズをさらに大きくすることが可能となる。
【0019】
請求項3の発明によれば、拡大機構部材の変位出力部は、軸線に沿う方向において被駆動体とは異なる高さに形成されるため、複雑な構成をとることなく、被駆動体の形成スペースを大きく確保することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、ガイド胴部と軸部材とは一体化されて構成されているため、同一材料で一体的に形成することが可能となる。また、軸部材をその上下に設けた軸受で摺動自在に支持するため、限られた空間の中で軸受間隔を長くすることができ、被駆動体の傾き精度を確保できる。そのために、軸線方向に移動する際に軸振れせず、被駆動体を安定して移動させることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、所定の構成部品が撮像レンズであり、軸線が前記撮像レンズの光軸であることにより、従来と比べてより大口径の撮像レンズを搭載可能なレンズユニットを得ることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、固定部材の一角部を一方の頂点とした平面視第1及び第2の辺部分それぞれと、被駆動体とが最も接近する第1及び第2の最接近点を含む第1及び第2の最接近点近傍領域において、軸線方向と直交し前記拡大機構部材が存在する断面には、前記被駆動体が存在しない。
【0023】
このため、固定部材、被駆動体間で最もスペースに余裕がない最接近点近傍領域において、従来の構成よりも被駆動体をより外側にまで、すなわち、平面視して固定部材の第1及び第2の辺付近にまで配置することができる。その結果、従来と同じサイズの固定部材を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体に収納する所定の構成部品のサイズをできるだけ大きくすることが可能となる。
【0024】
請求項7の発明によれば、所定の構成部品が撮像レンズを保持するレンズ枠であり、軸線が前記撮像レンズの光軸であることにより、従来と比べてより大口径の撮像レンズを搭載可能なレンズユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成要素を示した概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成要素を示した概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る駆動装置の主要部を示した構成概略図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例に係る駆動装置の主要部を示した断面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る駆動装置の主要部を示した断面図である。
【図6】従来の駆動装置の主要部を示した構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
【0027】
<1.駆動装置の概要および全体構成>
<1−1.基本構成>
図1および図2は、この発明の実施の形態に係るSMAアクチュエータを用いて被駆動体を駆動する駆動機構を使用して構成した駆動装置100のうち、構成要素を概略的に示す図である。このうち、図1は、被駆動体1から見た駆動装置100の平面図を示し、図2は、図1のI−I線で切断した駆動装置100の断面図である。
【0028】
図1および図2で示されるように、本実施形態に係る駆動装置100は、被駆動体1(例えば、所定の構成部品である撮像レンズを備えるレンズユニット)をその軸線(例えば光軸)AX方向に移動する駆動装置であって、貫通孔部4aを有する固定部材4と、固定部材4に装着する支持部材を介して貫通孔部4a内をその軸線AX方向に往復移動自在に支持される被駆動体1と、この被駆動体1を移動するための駆動力を付与する形状記憶合金アクチュエータ(SMAアクチュエータ)3と、該SMAアクチュエータ3から駆動力を受けて被駆動体1を移動させる拡大機構部材2と、を備えた構成とされている。また、駆動装置100は、被駆動体1をSMAアクチュエータ3の収縮による駆動力に抗する方向に付勢するバイアスバネ7を備えている。
【0029】
被駆動体1は、撮像レンズユニットLU(所定の構成部品)を固定状態で収納可能な本体部14と本体部14から突設されるガイド胴部12とを備えている。
【0030】
固定部材4は、当該駆動機構が採用される部材(例えば、携帯電話機の撮像素子基板等)に固定されるものであり、例えば駆動装置の底辺を構成する不動の部材であり、全体が樹脂材料等により構成されている。なお、本実施形態では、固定部材4の形状は平面視四角形とし、第一角部C1、第二角部C2、第三角部C3、及び、第四角部C4の角部を有している(図1参照)。
【0031】
そこで、拡大機構部材2の駆動支点部4bを第一角部C1に設け、この第一角部C1と対角線状に位置する第二角部C2にバイアスバネ7を備えるガイド機構部10を設けた構成としている。また、形状記憶合金アクチュエータ3を通電可能に保持する支持部として通電支持部30Aを第三角部C3に設け、通電支持部30Bを第四角部C4に設けた構成としている。
【0032】
第二角部C2に配設されるガイド機構部10は、被駆動体1の本体部14から半径方向に突設されるガイド胴部12と一体化形成されている軸部材13を摺動自在に支持すると共に、バイアスバネ7を介して、拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に被駆動体1を付勢する機能を有する。そのために、固定部材4の貫通孔部4aに変位自在に装着している被駆動体1の円形の本体部14に他の部材が緩衝しない構成となる。
【0033】
拡大機構部材2は、第一角部C1に設けられ且つSMAアクチュエータ3が係合する変位入力部2aと、第二角部C2に被駆動体1を当接により変位可能に設けられる当接部22bと該当接部22bと変位入力部2aとを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部21bとからなる変位出力部2bとを有して、図1のI−I線で切断した断面においては、側面視L字型の形状をしている(図2参照)。拡大機構部材2は、移動力F1の入力による変位入力部2aの変位量よりも変位出力部2bの軸線AX方向への変位量が大きくなるように構成されている。すなわち、被駆動体1は、当接部22bからの出力によって、変位入力部2aへの移動力F1の入力よりも大きな変位量でもって、軸線AX方向に移動される。
【0034】
SMAアクチュエータ3は、拡大機構部材2に対して移動力F1を付与するもので、例えばNi−Ti合金等の形状記憶合金(SMA)ワイヤ(線状体)からなる線状アクチュエータである。このSMAアクチュエータ3は、低温で弾性係数が低い状態(マルテンサイト相)において所定の張力を与えられることで伸長し、この伸長状態において熱が与えられると相変態して弾性係数が高い状態(オーステナイト相;母相)に移行し、伸長状態から元の長さに戻る(形状回復する)という性質を有している。当実施形態では、SMAアクチュエータ3を通電加熱することで、上述の相変態を行わせる構成が採用されている。すなわち、SMAアクチュエータ3は所定の抵抗値を有する導体であることから、当該SMAアクチュエータ3自身に通電することでジュール熱を発生させ、該ジュール熱に基づく自己発熱によりマルテンサイト相からオーステナイト相へ変態させる構成とされている。このため、SMAアクチュエータ3の両端には、通電加熱用の第1電極30A及び第2電極30Bが固着されている。これら電極30A,30Bは固定部材4に設けられる所定の電極固定部に固定されている。
【0035】
SMAアクチュエータ3は、図1に示すように、拡大機構部材2の延設部分23に対して「く」字状に折り返すように架け渡されている。かかる構成により、SMAアクチュエータ3が電極30A,30Bを介して通電加熱され、作動(収縮)すると、レバー部材2に対して移動力F1が付与され、この移動力F1により拡大機構部材2が揺動することとなる。
【0036】
バイアスバネ7は、平面視円形の被駆動体1に収納する構成部品のサイズをできるだけ大きくし被駆動体1を安定して移動させることを可能とするために、被駆動体1の本体部14ではなく、本体部14から突設されるガイド胴部12を付勢する位置に設けられている。このように、本実施形態に係る駆動装置100は、平面視円形の被駆動体1の本体部14から突出して離れた位置にバイアスバネ7を装着するガイド機構部10を備えた構成とされている。なお、バイアスバネ7は、例えば、軸部材13の外周部に装着し易く所定の付勢力が得やすい圧縮コイルバネを好適に用いることができる。
【0037】
ガイド機構部10を構成する一部材であるガイド体11は、被駆動体1の一部であるガイド胴部12と軸部材13とを備えている。軸部材13は、軸線AXである光軸方向に延設されており、固定部材4の上端部および下端部のそれぞれに設けられるガイドスリーブ部4cにより摺動自在に支持されている。また、ガイド胴部12の上面と固定部材4との間に、軸部材13を囲むようにバイアスバネ7が装着され、バイアスバネ7は軸部材13に嵌装されている。なお、ガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されているため、被駆動体1の動きとともに軸部材13も同時に動くことになる。
【0038】
このように、ガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されているため、同一材料で一体的に形成することが可能となる。また、軸部材13をその上下に設けたガイドスリーブ部4c(軸受)で摺動自在に支持ため、限られた空間の中で軸受間隔を長くすることができ、被駆動体1の傾き精度を確保できる。そのために、軸線AX方向に移動する際に軸振れせず、被駆動体1を安定して移動させることができる。
【0039】
上記したように、本実施形態に係る駆動装置100の基本構成は、貫通孔部4aを有する固定部材4と、当該貫通孔の軸線AXに沿う方向に往復移動自在に駆動される被駆動体1と、被駆動体1を駆動する拡大機構部材2と、拡大機構部材2を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータ3と、を備えている。そして、固定部材4は一角部(第一角部C1)に拡大機構部材2との駆動支点部4aを有し、被駆動体1は、本体部14と、平面視して第一角部C1と軸線AXを挟んで対向する所定の対向位置(第二角部C2)に該本体部14から突設して形成されるガイド胴部12と、ガイド胴部12と一体化された軸部材13を有している。ガイド機構部10は、該軸部材13を上下させることによりガイド体11を摺動自在に支持するとともに、ガイド体11を拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に付勢するバイアスバネ7をさらに有する。拡大機構部材2は、第一角部C1に設けられ且つ形状記憶合金アクチュエータ3が係合する変位入力部2aと、平面視して第二角部C2に被駆動体1を当接により変位可能に設けられる当接部22bと該当接部22bと該変位入力部2aとを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部21bとからなる変位出力部2bとを有する。
【0040】
<1−2.駆動装置の構造における前提事情>
ところで、この実施形態における駆動装置100の具体的構成を説明する準備として、従来の駆動装置の構造の前提事情を説明する。図6は、従来の駆動装置の主要部を示した構成概略図である。図6(a)は、従来の駆動装置において、軸線(光軸)方向に沿う方向に切断した断面図であり、図1の駆動装置100のII−II線で切断した断面図に対応している。図6(b)は、図6(a)のA−A線で切断した断面のレンズ開口面から見た平面図である。
【0041】
図6(a)および図6(b)で示されるように、一体化形成された撮像レンズLS及びレンズ枠15からなるレンズユニットLUの周囲に、被駆動体1が配置され、拡大機構部材2は、さらにその被駆動体1の外側を囲むように配置されている。このように、被駆動体1の外側周囲に拡大機構部材2が配置されているため、被駆動体1の軸線AXに直交する長さL1と、拡大機構部材2の軸線AXに直交する長さL2との両者を考慮して、撮像レンズLSの口径が決定される。このため、より大口径の撮像レンズLSを搭載することができないという問題が生じていた。
【0042】
このような背景の下、本発明では、被駆動体1と拡大機構部材2との配置を変更し、被駆動体1の口径D0をより大きく配置することにより、被駆動体1に収納する構成部品のサイズを従来より大きくすることが可能な駆動装置を実現する。
【0043】
以下では、実施形態の具体的構成を説明する。
【0044】
<2.実施形態の具体的構成>
図3は、本発明の実施形態に係る駆動装置100の主要部を示した構成概略図である。図3(a)は、図1の駆動装置100のII−II線で切断した断面を模式的に示した説明図であり、図6(a)の断面図に対応している。図3(b)は、図3(a)のB−B線で切断した断面のレンズ開口面から見た平面図であり、図3(c)は、図3(a)のC−C線で切断した断面のレンズ開口面から見た平面図である。
【0045】
図3(a)で示されるように、円筒状のレンズユニットLU(撮像レンズLS+レンズ枠15)が被駆動体1に保持されている。詳細には、レンズ枠15の外周面と被駆動体1の内周面とがネジ結合されて固定されている。レンズ枠15と被駆動体1との固定はネジ結合に限らず他の構成、例えば、嵌合接着でも構わない。
【0046】
レンズ枠15の周囲には、被駆動体1と拡大機構部材2とが軸線AX方向に対して重ねて配置されている。すなわち、拡大機構部材2は、軸線AXに沿う方向において被駆動体1とは異なる高さに形成される。これにより、図3(b)および図3(c)で示されるように、拡大機構部材2の変位出力部2bにおけるリング形態部21bは、平面視して被駆動体1の領域に含まれ、合致する。
【0047】
このように、拡大機構部材2の変位出力部2bにおけるリング形態部21bは、軸線AXに沿う方向において被駆動体1とは異なる高さに形成されるため、被駆動体1の形成スペースをより大きく確保することができる。すなわち、拡大機構部材2の変位出力部2bにおけるリング形態部21bと被駆動体1とを軸線AXに沿う方向に縦に配置する構成をとり、拡大機構部材2の平面視形成領域分、被駆動体1をより外側にまで配置することができる。つまり、被駆動体1の口径D1は、図6の従来の被駆動体1の口径D0よりも、拡大機構部材2の軸線AXに直交する長さL2分(図6参照)を考慮する必要がない分、より外側にまで配置することができる(図3参照)。このため、従来と同じサイズの固定部材4を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体1に収納するレンズユニットLU等の構成部品のサイズをできるだけ大きくすることが可能となる。
【0048】
続いて、駆動装置100における形状記憶合金アクチュエータ3について、図1に戻り説明する。上記したように、形状記憶合金アクチュエータ3として線状のアクチュエータが設けられ、アクチュエータ3が平面視して「く」字状に屈曲する状態で拡大機構部材2の変位入力部2aに架け渡される。この特徴とともに、図1で示されるように、アクチュエータ3の第三角部C3、第四角部C4の近傍領域を除く大部分の領域は、被駆動体1と平面視重複する位置に設けられる。
【0049】
このため、図3に示すように、被駆動体1の平面視外側にアクチュエータ3が形成される、図6で示した従来の構成と比べた場合、拡大機構部材2に加え、さらにアクチュエータ3の平面視形成領域分、被駆動体1をさらに外側にまで配置することができる。このため、従来と同じサイズの固定部材4を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体1の本体部14に収納する構成部品のサイズ(撮像レンズLSのレンズ径)をさらに大きくすることが可能となる。
【0050】
以上のような本実施形態に係る駆動装置100に対して、被駆動体1が収納する所定の構成部品をレンズユニットLUとし、軸線AX方向を光軸方向とし、SMAアクチュエータ3をSMAワイヤとすると、従来と比べて、より大口径の撮像レンズLSを搭載可能なレンズユニットLUを得ることができる。
【0051】
<3.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0052】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、拡大機構部材2の変位出力部2bと被駆動体1とを軸線AXに沿う方向に縦に配置する構成をとる際、図2で示されるように、バイアスバネ7が収縮する方向をプラスとすれば、被駆動体1を変位出力部2bよりプラス側に配置されていた。つまり、拡大機構部材2の変位出力部2bは、軸線AXに沿う方向において被駆動体1とは異なる高さに形成されていたが、これに限られず、図4のような構成であってもよい。
【0053】
すなわち、図4で示されるように、被駆動体1は、リング形態部21bよりマイナス側に配置され、ガイド機構部10において、当接部22bよりプラス側で配置される構成である。つまり、図3の概略構成図において、被駆動体1とリング形態部21bとの位置関係が図2で示した構成とは逆の構成をとっても良い。
【0054】
なお、図4の構成では、拡大機構部材2のリング形態部21bと当接部22bとの被駆動体1に対する位置関係が逆になるため、両者を交差させるための余分なスペースが必要となるが、図1のガイド機構部10の形成領域(第二角部C2近傍領域)において両者が交差することにより、実現可能であり、上記余分なスペースは本体部14の形成領域の妨げにならないため、図2の構成と同様の効果を維持することが可能となる。
【0055】
したがって、図6で示した変形例においても拡大機構部材2の変位出力部2bにおけるリング形態部21bと被駆動体1とは、図2で示した構成と同様、軸線AXに沿う方向に縦に配置する構成をとり、拡大機構部材2の平面視形成領域分、被駆動体1をより外側にまで配置することができる。
【0056】
なお、図2の構成は、図4の構成と比較して、拡大機構部材2の変位出力部2bのリング形態部21bと当接部22bとを含む全体が、軸線AXに沿う方向において被駆動体1とは異なる高さに形成されるため、複雑な構成をとることなく、被駆動体の形成スペースを大きく確保することができる。
【0057】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、被駆動体1と拡大機構部材2とを貫通孔部4aの外周部に沿って円形状に形成されたが、これに限られず、多角形状の被駆動体1と拡大機構部材2とを備えてもよい。
【0058】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、固定部材4の平面視の形状を四角形としたが、円形でも多角形でもよく、固定部材4に設ける駆動支点部4bと変位入力部2aの設置位置(一角)に軸線AXを挟んで対向する位置(第二の位置)にバイアスバネ7を備えるガイド機構部10を設ける構成であればよい。
【0059】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、ガイド機構部10のガイド体11において、被駆動体1の一部に相当するガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されていたが、ガイド胴部12と軸部材13とを分離して構成されても良い。具体的には、軸部材13は、固定部材4と一体化されて構成され、被駆動体1が動いても、ガイド胴部12のみが動き、軸部材13は固定されているため、不動の状態であってもよい。
【0060】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、バイアスバネ7は、本体部14から突設されるガイド胴部12を付勢する位置に設けられていたが、この位置に限られず、拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に被駆動体1を付勢する機能を発揮できる位置であればよい。
【0061】
※ 本実施形態では、拡大機構部材2の変位出力部2bは、リング形態部21bと当接部22bとから構成されていたが、これに限られない。例えば、図5(図3(a)のC−C線で切断した平面図)で示される変形例のように、拡大機構部材2’の変位出力部2b’は、平面視略半円状の変位連結部21b’とその先端に設けられた当接部22b’とから構成されてもよい。
【0062】
すなわち、変形例は、本実施形態と同様に固定部材4は平面視矩形状を呈し、被駆動体1は平面視円状を呈する場合、固定部材4の一角部C1を一方の頂点とした平面視第1及び第2の辺S1,S2の部分(固定部材4の側面部に相当)それぞれと、被駆動体1とが最も接近する第1及び第2の最接近点P1,P2を含む第1及び第2の最接近点近傍領域R1,R2それぞれにおいて(図3(b),図5参照)、軸線AX方向と直交し拡大機構部材2が存在する断面には、被駆動体1が存在しないという特徴を有する。ここで、図5の断面では、第1及び第2の最接近点近傍領域R1,R2に拡大機構部材2が存在する場合を示している。なお、第1及び第2の最接近点近傍領域R1,R2の大きさは設計段階で適宜設定することができる。
【0063】
このため、固定部材4、被駆動体1間で最もスペースに余裕がない最接近点近傍領域R1,R2において、従来の構成よりも被駆動体1をより外側にまで、すなわち、平面視して固定部材4の第1及び第2の辺S1,S2付近にまで配置することができる。その結果、従来と同じサイズの固定部材4を用いても、そのスペースを有効利用して被駆動体1に収納する所定の構成部品のサイズをできるだけ大きくすることが可能となる。
【0064】
なお、変形例の上記特徴は、図3(b)及び図3(c)から明らかなように、本実施形態にも備わっている。
【0065】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、軸部材13とガイドスリーブ4cとを用いて被駆動部材1を軸線AX方向に変位可能に支持しているが、この構成に限らず、例えば特開2009-37059のように、平行板バネによって被駆動体1を軸線AX方向に変位可能に支持した構成において、第1及び第2の最接近点近傍領域R1、R2それぞれにおいて、軸線AX方向と直交し拡大機構部材2が存在する断面に、被駆動体1が存在しない構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 被駆動体
2,2’ 拡大機構部材
2a 変位入力部
2b,2b’ 変位出力部
3 形状記憶合金ワイヤ(SMAアクチュエータ)
4 固定部材
4a 貫通部
4b 駆動支点部
4c ガイドスリーブ部
7 バイアスバネ
10 ガイド機構部
11 ガイド体
12 ガイド胴部
13 軸部材
14 本体部
15 レンズ枠
21b リング形態部
21b’変位連結部
22b,22b’当接部
100 駆動装置
AX 光軸(軸線)
S1 第1の辺
S2 第2の辺
R1 第1の最接近点近傍領域
R2 第2の最接近点近傍領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔部を有する固定部材と、
前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される所定の構成部品を収納可能な被駆動体と、
前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、
前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、
を備え、
前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、
平面視して前記駆動支点部と前記軸線を挟んで対向する所定の位置に前記軸線に沿って設けられる軸部材を有し、該軸部材の軸方向に沿って前記被駆動体を移動させることができるガイド機構部をさらに備え、
前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して前記所定の対向位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部とからなる変位出力部とを有し、
前記拡大機構部材の前記変位出力部における前記リング形態部は、平面視して前記被駆動体の領域に含まれることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記形状記憶合金アクチュエータとして線状のアクチュエータが設けられ、前記アクチュエータが平面視して「く」字状に屈曲する状態で前記変位入力部に架け渡されるとともに、
前記アクチュエータの少なくとも一部は、前記被駆動体と平面視重複する位置に設けられることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記拡大機構部材の前記変位出力部は、前記軸線に沿う方向において前記被駆動体とは異なる高さに形成されることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、
前記被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、前記ガイド胴部と前記軸部材とは一体化されて構成されていることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の駆動装置であって、
前記所定の構成部品が撮像レンズであり、
前記軸線が前記撮像レンズの光軸であることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項6】
貫通孔部を有する固定部材と、
前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される所定の構成部品を収納可能な被駆動体と、
前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、
前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、
を備え、
前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、
前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して所定の位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結する変位連結部とを有し、
前記固定部材は平面視矩形状を呈し、
前記被駆動体は平面視略円状を呈し、
前記固定部材の前記一角部を一方の頂点とした平面視第1及び第2の辺部分それぞれと、前記被駆動体とが最も接近する第1及び第2の最接近点を含む第1及び第2の最接近点近傍領域それぞれにおいて、
前記軸線方向と直交し前記拡大機構部材が存在する断面には、前記被駆動体が存在しないことを特徴とする、
駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置であって、
前記所定の構成部品が撮像レンズを保持するレンズ枠であり、
前記軸線が前記撮像レンズの光軸であることを特徴とする、
駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97346(P2013−97346A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242986(P2011−242986)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】