説明

駆動装置

【課題】駆動負荷が軽減でき且つ、ユニットサイズの小型化に寄与する駆動装置を提供する。
【解決手段】SMAアクチュエータを用いた駆動装置100の構造において、固定部材4は、拡大機構部材2の周辺に周辺規制領域S1〜S3を隔てて設けられ、変位出力部2bは、軸部材13との間において、方向AR2における変位出力部2bの動きを規制する変位出力部規制領域SA1,SA2を有し、変位出力部規制領域SA1,SA2における方向AR2の間隔Δd1,Δd2は、周辺規制領域S1〜S3における方向AR2における最小間隔Δb1,Δb2よりも短く設定されることで、拡大機構部材2と固定部材4との接触を確実に防止することができるため、摺動摩擦が発生しにくく、駆動負荷の軽減に繋がる。また、周辺規制領域S1〜S3を可能な限り小さくすることができるため、ユニットサイズの小型化に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金アクチュエータを用いて小型の機械要素を駆動する駆動装置に関し、特に、撮像光学系を構成するレンズユニットを光軸方向に移動するのに好適な駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ付き携帯電話機等に搭載される撮像素子の画素数が増大する等、高画質化が飛躍的に進んでおり、これに伴い、画像撮影という基本機能に加えて、フォーカス機能やズーム機能等を付加することが求められている。
【0003】
これらの機能を付加するには、レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動装置が必要であり、最近では、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMAと称する)アクチュエータを用いたレンズ駆動装置の適用が種々検討されている。この装置は、SMAを通電加熱する等して収縮力を発生させ、該収縮力をレンズ駆動力として利用するもので、小型化、軽量化が容易で、且つ、比較的大きな駆動力を得ることができるという利点がある。
【0004】
SMAアクチュエータを適用したレンズ駆動機構および駆動装置としては、例えば、特許文献1が開示する構成では、レバー部材がレンズユニットの一部分をその側方から包囲するアーム部分を有し、当該アーム部分の両端(先端)に変位出力部を備えるものであって、移動力の入力による変位入力部の変位量よりも変位出力部の光軸方向への変位量が大きくなるように構成されている。
【0005】
また、特許文献2が開示する駆動装置の構成では、固定部の一角にレバー部材の駆動支点部を設け、該一角と対向する第二の角に、被駆動体の本体部からガイド胴部を突設し、このガイド胴部を摺動自在に支持すると共に、該ガイド胴部を付勢するバイアスバネを備える駆動ガイド部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−37059号公報
【特許文献2】国際公開第2011/065296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のような駆動装置の構成では、被駆動体を駆動する際に、意図しない方向に変動した場合、変位出力部に相当するレバー部材(アーム部分)が固定部材などの他の部材と接触することで、摺動摩擦が発生し、駆動負荷に繋がるという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、SMAアクチュエータを用いた駆動装置の構造において、摺動摩擦の防止により駆動負荷が軽減できるとともに、ユニットサイズの小型化に寄与する駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、貫通孔部を有する固定部材と、前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される被駆動体と、前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、を備え、前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、平面視して前記駆動支点部と前記軸線を挟んで対向する所定の位置に前記軸線に沿って設けられる軸部材を有し、該軸部材の軸方向に沿って前記被駆動体を移動させることができるガイド機構部をさらに備え、前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して前記所定の対向位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部とからなる変位出力部とを有し、前記固定部材は、前記拡大機構部材の周辺に周辺規制領域を隔てて設けられ、前記拡大機構部材の前記変位出力部は、前記軸部材との間において、所定の規制方向における前記変位出力部の動きを規制する変位出力部規制領域を有し、前記変位出力部規制領域における前記所定の規制方向の間隔は、前記周辺規制領域における前記所定の規制方向における最小間隔よりも短く設定されることを特徴とする、駆動装置である。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の駆動装置であって、前記リング状形態部は、平面視幅方向の第1の長さと、前記軸線に沿う方向の厚み方向の第2の長さとを有し、前記リンク状形態部は、前記第2の長さが前記第1の長さより長くなる形状で構成されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記所定の規制方向は、前記軸線と直交する面内で且つ前記駆動支点部と前記変位出力部の前記当接部とを結ぶ直線に垂直な方向であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、前記被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、前記ガイド胴部と前記軸部材とは一体化されて構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、前記被駆動体がレンズユニットであり、前記軸線が光軸であり、前記形状記憶合金アクチュエータが形状記憶合金ワイヤであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、変位出力部規制領域における所定の規制方向の間隔は、周辺規制領域における所定の規制方向における最小間隔よりも短く設定される。これにより、拡大機構部材の所定の規制方向への移動が、拡大機構部材の周辺部分と固定部材とが接触する前段階で規制されるため、拡大機構部材の所定の規制方向への動きを規制し、かつ拡大機構部材と固定部材との接触を確実に防止することができる。
【0015】
また、拡大機構部材の変位出力部における当接部では、拡大機構部材と被駆動体とが駆動方向(軸線方向)で相対的に移動量が一番小さくなる。したがって、相対移動量が最も小さい箇所での規制となるため、摺動摩擦が発生しにくく、駆動負荷の軽減に繋がる。
【0016】
一方、部品精度に依存せず、拡大機構部材と固定部材との間におけるクリアランス(周辺規制領域)を可能な限り小さくすることができるため、ユニットサイズの小型化に寄与する。
【0017】
請求項2の発明によれば、拡大機構部材は平面視してリング状形態となるリンク状形態部を含み、前記リング状形態部は、平面視幅方向の第1の長さと、軸線に沿う方向の厚み方向の第2の長さとを有し、前記リンク状形態部は、前記第2の長さが前記第1の長さより長くなる形状で構成されることにより、軸線に直交する方向に変形容易で、軸線に沿う方向には変形困難な構成をとることが可能となる。このため、拡大機構部材が、被駆動体を安定して支持でき、且つ、所定の規制方向に対して過拘束とならないような構成が可能となる。その結果、被駆動体を軸線方向にスムーズに、また安定して変位させることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、所定の規制方向は、軸線と直交する面内で且つ駆動支点部と変位出力部の当接部とを結ぶ直線に垂直な方向、すなわち、意図しない変動が最も大きくなると想定される方向である。したがって、拡大機構部材の上記方向への移動を規制することにより、拡大機構部材の上記方向への動きを規制し、かつ拡大機構部材と固定部材との接触を最も効果的に防止することができる。また、前記相対移動量が最も小さい箇所での規制となるため、摺動摩擦が発生しにくく、駆動負荷の軽減に繋がる。
【0019】
請求項4の発明によれば、被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、該ガイド胴部と軸部材とは一体化されて構成されているため、同一材料で一体的に形成することが可能となる。また、軸部材をその上下に設けた軸受で摺動自在に支持するため、限られた空間の中で軸受間隔を長くすることができ、被駆動体の傾き精度を確保できる。そのために、軸線方向に移動する際に軸振れせず、被駆動体を安定して移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成要素を示した概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成要素を示した概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る駆動装置の要部構成を示した一断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動装置の要部構成を示した一断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
【0022】
<1.駆動装置の概要および全体構成>
<1−1.基本構成>
図1および図2は、この発明の実施の形態に係るSMAアクチュエータを用いて被駆動体を駆動する駆動機構を使用して構成した駆動装置100のうち、構成要素を概略的に示す図である。このうち、図1は、被駆動体1から見た駆動装置100の平面図を示す。また、図2(a)は、図1のI−I線で切断した駆動装置100の断面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線で囲まれた領域R1の拡大図を示す。
【0023】
図1および図2(a)で示されるように、本実施形態に係る駆動装置100は、被駆動体1(例えば、撮像レンズを備えるレンズユニット)をその軸線(例えば光軸)AX方向に移動する駆動装置であって、貫通孔部4aを有する固定部材4と、固定部材4に装着する支持部材を介して貫通孔部4a内をその軸線AX方向に往復移動自在に支持される被駆動体1と、この被駆動体1を移動するための駆動力を付与する形状記憶合金アクチュエータ(SMAアクチュエータ)3と、該SMAアクチュエータ3から駆動力を受けて被駆動体1を移動させる拡大機構部材2と、を備えた構成とされている。また、駆動装置100は、被駆動体1をSMAアクチュエータ3の収縮による駆動力に抗する方向に付勢するバイアスバネ7を備えている。
【0024】
固定部材4は、当該駆動機構が採用される部材(例えば、携帯電話機の撮像素子基板等)に固定されるものであり、例えば駆動装置の底辺を構成する不動の部材であり、全体が樹脂材料等により構成されている。なお、本実施形態では、固定部材4の形状は平面視四角形とし、第一角部C1、第二角部C2、第三角部C3、及び、第四角部C4の角部を有している(図1参照)。
【0025】
そこで、拡大機構部材2の駆動支点部4bを第一角部C1に設け、この第一角部C1と対角線状に位置する第二角部C2にバイアスバネ7を備えるガイド機構部10を設けた構成としている。また、形状記憶合金アクチュエータ3を通電可能に保持する支持部として通電支持部30Aを第三角部C3に設け、通電支持部30Bを第四角部C4に設けた構成としている。
【0026】
第二角部C2に配設されるガイド機構部10は、被駆動体1の本体部14から半径方向に突設されるガイド胴部12が有する軸部材13を摺動自在に支持すると共に、バイアスバネ7を介して、拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に被駆動体1を付勢する機能を有する。そのために、固定部材4の貫通孔部4aに変位自在に装着している被駆動体1の円形の本体部14に他の部材が緩衝しない構成となる。
【0027】
拡大機構部材2は、第一角部C1に設けられ且つSMAアクチュエータ3が係合する変位入力部2aと、第二角部C2に被駆動体1を当接により変位可能に設けられる当接部22bと該当接部22bと変位入力部2aとを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部21bとからなる変位出力部2bとを有して、図1のI−I線で切断した断面においては、側面視L字型の形状をしている(図2(a)参照)。拡大機構部材2は、移動力F1の入力による変位入力部2aの変位量よりも変位出力部2bの軸線AX方向への変位量が大きくなるように構成されている。すなわち、被駆動体1は、当接部22bからの出力によって、変位入力部2aへの移動力F1の入力よりも大きな変位量でもって、軸線AX方向に移動される。
【0028】
また、図2(b)で示されるように、拡大機構部材2の駆動支点部4bは、各々が図2(b)の紙面を貫く方向に伸びる第1線4b1および第2線4b2から構成される。このため、第1線4b1および第2線4b2の2線が、拡大機構部材2を支持し、拡大機構部材2の移動方向を本来要求される方向に制限することができる。
【0029】
SMAアクチュエータ3は、拡大機構部材2に対して移動力F1を付与するもので、例えばNi−Ti合金等の形状記憶合金(SMA)ワイヤ(線状体)からなる線状アクチュエータである。このSMAアクチュエータ3は、低温で弾性係数が低い状態(マルテンサイト相)において所定の張力を与えられることで伸長し、この伸長状態において熱が与えられると相変態して弾性係数が高い状態(オーステナイト相;母相)に移行し、伸長状態から元の長さに戻る(形状回復する)という性質を有している。当実施形態では、SMAアクチュエータ3を通電加熱することで、上述の相変態を行わせる構成が採用されている。すなわち、SMAアクチュエータ3は所定の抵抗値を有する導体であることから、当該SMAアクチュエータ3自身に通電することでジュール熱を発生させ、該ジュール熱に基づく自己発熱によりマルテンサイト相からオーステナイト相へ変態させる構成とされている。このため、SMAアクチュエータ3の両端には、通電加熱用の第1電極30A及び第2電極30Bが固着されている。これら電極30A,30Bは固定部材4に設けられる所定の電極固定部に固定されている。
【0030】
SMAアクチュエータ3は、図1に示すように、拡大機構部材2の延設部分に対して「く」字状に折り返すように架け渡されている。かかる構成により、SMAアクチュエータ3が電極30A,30Bを介して通電加熱され、作動(収縮)すると、レバー部材2に対して移動力F1が付与され、この移動力F1により拡大機構部材2が揺動することとなる。
【0031】
バイアスバネ7は、平面視円形の被駆動体1に収納する構成部品のサイズをできるだけ大きくし被駆動体1を安定して移動させることを可能とするために、被駆動体1の本体部14ではなく、本体部14から突設されるガイド胴部12を付勢する位置に設けられている。このように、本実施形態に係る駆動装置100は、平面視円形の被駆動体1の本体部14から突出して離れた位置にバイアスバネ7を装着するガイド機構部10を備えた構成とされている。なお、バイアスバネ7は、例えば、軸部材13の外周部に装着し易く所定の付勢力が得やすい圧縮コイルバネを好適に用いることができる。
【0032】
ガイド機構部10を構成する一部材であるガイド体11は、被駆動体1の一部であるガイド胴部12と軸部材13とを備えている。軸部材13は、軸線AXである光軸方向に延設されており、固定部材4の上端部および下端部のそれぞれに設けられるガイドスリーブ部4cにより摺動自在に支持されている。また、ガイド胴部12の上面と固定部材4との間に、軸部材13を囲むようにバイアスバネ7が装着され、バイアスバネ7は軸部材13に嵌装されている。なお、ガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されているため、被駆動体1の動きとともに軸部材13も同時に動くことになる。
【0033】
このように、ガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されているため、同一材料で一体的に形成することが可能となる。また、軸部材13をその上下に設けたガイドスリーブ部4c(軸受)で摺動自在に支持するため、限られた空間の中で軸受間隔を長くすることができ、被駆動体1の傾き精度を確保できる。そのために、軸線AX方向に移動する際に軸振れせず、被駆動体1を安定して移動させることができる。
【0034】
上記したように、本実施形態に係る駆動装置100の基本構成は、貫通孔部4aを有する固定部材4と、当該貫通孔の軸線AXに沿う方向に往復移動自在に駆動される被駆動体1と、被駆動体1を駆動する拡大機構部材2と、拡大機構部材2を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータ3と、を備えている。そして、固定部材4は一角部(第一角部C1)に拡大機構部材2との駆動支点部4aを有し、被駆動体1は、本体部14と、平面視して第一角部C1と軸線AXを挟んで対向する所定の対向位置(第二角部C2)に該本体部14から突設して形成されるガイド胴部12と、ガイド胴部12と一体化された軸部材13を有している。ガイド機構部10は、該軸部材13を上下させることによりガイド体11を摺動自在に支持するとともに、ガイド体11を拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に付勢するバイアスバネ7をさらに有する。拡大機構部材2は、第一角部C1に設けられ且つ形状記憶合金アクチュエータ3が係合する変位入力部2aと、平面視して第二角部C2に被駆動体1を当接により変位可能に設けられる当接部22bと該当接部22bと該変位入力部2aとを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部21bとからなる変位出力部2bとを有する。
【0035】
<1−2.駆動装置の駆動における前提事情>
ところで、一般的に、従来の駆動装置では、被駆動体を駆動する際に、意図しない方向に変動した場合、変位出力部に相当するレバー部材(アーム部分)が固定部材などの他の部材と接触することで、摺動摩擦が発生し、駆動負荷に繋がるという問題が生じていた。
【0036】
上記の本実施形態に係る駆動装置100の場合で具体的に説明すると、図1で示されるように、拡大機構部材2の駆動支点部4bとガイド機構部10とが、平面視四角形の固定部材4の対角線状に位置する角部に対向して配設される構成をとるため、ガイド機構部10は駆動支点部4bから最遠の位置に存在し、被駆動体1を駆動する際に、拡大機構部材2ひいては被駆動体1が、意図しない方向(例えば、図1の方向AR)の変動によりふらつきが生じる。とりわけ、軸線AXと直交する面内で且つ駆動支点部4bと変位出力部2bの当接部22bとを結ぶ直線に垂直な方向(後述する図3の方向AR2)においてはふらつきが最も大きくなる。この変動の結果、変位出力部2bが固定部材4と接触することで、摺動摩擦が発生し、更には、駆動負荷に繋がるという課題が生じる。
【0037】
このような背景の下、本発明では、被駆動体1を駆動する際に、拡大機構部材2と固定部材4との接触を確実に防止することにより、摺動摩擦を防止し、駆動負荷を軽減できるとともに、ユニットサイズの小型化をも実現する。
【0038】
以上の基本構成に加え、実施形態の特徴部となる具体的構成を以下に説明する。
【0039】
<2.実施形態の具体的構成>
上述したように、駆動装置100の構成では、駆動支点部4bからの距離が最も遠くなる位置にガイド機構部10が設けられることから、被駆動体1を駆動する際に、拡大機構部材2がガイド機構部10で最も大きく振れることが予想される。そこで、駆動装置100では、以下のような構成を採用する。
【0040】
図3および図4は、本発明の実施形態に係る駆動装置100の要部構成を示した一断面図である。このうち、図3は、駆動装置100が動作していない状態を示し、図4は、駆動装置100が動作している状態を示している。なお、図3(b)および図4(b)は、図3(a)および図4(a)の囲まれた領域A1,A2の拡大図としてそれぞれ示す。
【0041】
図3で示されるように、駆動装置100の固定部材4は、拡大機構部材2の周辺に周辺規制領域S1,S2,S3を隔てて設けられ、拡大機構部材2の変位出力部2b(当接部22b近傍)は、軸部材13との間において、所定の規制方向における変位出力部2bの動きを規制する変位出力部規制領域SA1,SA2を有する。
【0042】
また、変位出力部規制領域SA1,SA2における方向AR2(所定の規制方向)の間隔は、周辺規制領域S1,S2,S3における方向AR2における最小間隔よりも短く設定される。拡大機構部材2と固定部材4との間隔を、周辺規制領域S1,S2,S3において、Δa,Δb,Δcとしてそれぞれ示し、拡大機構部材2と軸部材13との方向AR2における間隔を、変位出力部規制領域SA1,SA2において、Δd1,Δd2としてそれぞれ示す(図3参照)。この際、方向AR2における最小間隔はΔb(図3における上方がΔb1、下方がΔb2)となる。この場合、{Δb1>Δd2}及び{Δb2>Δd1}の規制方向制約関係が成り立つ。
【0043】
ここで、方向AR2とは、被駆動体1を駆動する駆動方向(軸線AX方向)に対して意図しない方向であり、拡大機構部材2と固定部材4との接触が最も懸念される方向である。
【0044】
続いて、駆動装置100が動作して拡大機構部材2が方向AR2に振れた場合における要部構成の変動を説明する。ここで、変動後における拡大機構部材2と固定部材4との間隔は、周辺規制領域S1,S2,S3において、Δa’,Δb’,Δc’としてそれぞれ示し、拡大機構部材2と軸部材13との間隔を、変位出力部規制領域SA1,SA2において、Δd1’,Δd2’としてそれぞれ示す(図4参照)。
【0045】
図4で示されるように、拡大機構部材2が方向AR2の上方向MV(図4(b)参照)に振れると、軸部材13と接触することで、変位出力部規制領域SA2が実質的になくなり(Δd2’=0)、逆に、変位出力部規制領域SA1が拡がる(Δd1<Δd1’)。この結果、下部側(第三角部C3側)における周辺規制領域S1,S2,S3はそれぞれ狭まる(Δa>Δa’, Δb>Δb’, Δc>Δc’)ものの、前述のように{Δb2>Δd1}の規制方向制約関係があるため、拡大機構部材2と固定部材4とが接触することはない(Δa’>0, Δb’>0, Δc’>0)。これは、周辺規制領域S1,S2,S3の方向AR2の最小間隔(Δb1,Δb2)が、変位出力部規制領域SA1,SA2の間隔より長い(Δd2<Δb1,Δd1<Δb2)という関係が成り立つためである。
【0046】
このように、変位出力部規制領域SA1,SA2における方向AR2の間隔(Δd1,Δd2)は、周辺規制領域S1,S2,S3における方向AR2における最小間隔(Δb1,Δb2)よりも短く設定されることにより拡大機構部材2の方向AR2への移動が、拡大機構部材2の周辺部分と固定部材4とが接触する前段階で規制されるため、拡大機構部材2の方向AR2への動きを規制し、かつ拡大機構部材2と固定部材4との接触を確実に防止することができる。
【0047】
また、拡大機構部材2の変位出力部2bにおける当接部22bでは、拡大機構部材2と被駆動体1とが駆動方向(軸線AX方向)で相対的に移動量が一番小さくなる。すなわち、被駆動体1は軸線AX方向に直進運動するのに対し、拡大機構部材2の意図しない変動は回転運動することから、駆動支点部4bから最遠に位置する当接部22bにおいては、この回転運動が最も大きくなるため、相対移動量としては最小となる。したがって、相対移動量が最も小さい箇所での規制となるため、摺動摩擦が発生しにくく、駆動負荷の軽減に繋がる。
【0048】
一方、部品精度に依存せず、拡大機構部材2と固定部材4との間におけるクリアランス(周辺規制領域S1,S2,S3)を、上記規制方向制約関係を満足させながら可能な限り小さくすることができるため、ユニットサイズの小型化に寄与する。
【0049】
また、本実施形態では、所定の規制方向として、上記の通り、最も振れ幅が大きくなる、軸線AXと直交する面内で且つ駆動支点部4bと変位出力部2bの当接部22bとを結ぶ直線に垂直な方向AR2に設定している。
【0050】
拡大機構部材2の方向AR2への移動を規制することにより、拡大機構部材の方向AR2への動きを規制し、かつ拡大機構部材2と固定部材4との接触を最も効果的に防止することができるからである。したがって、上記の通り、拡大機構部材2と被駆動体1との駆動方向における相対移動量が最小箇所における規制となるため、摺動摩擦が発生しにくく、駆動負荷の軽減に繋がる。
【0051】
さらに、本実施形態において、リング状形態部21bは、平面視幅方向の第1の長さL1(図1参照)と、軸線AXに沿う方向の厚み方向の第2の長さL2(図2(a)参照)とを有し、リンク状形態部21bは、第2の長さL2が第1の長さL1より長くなる形状で構成される。
【0052】
これにより、拡大機構部材2が、軸線AXに直交する方向に変形容易で、軸線AXに沿う方向には変形困難な構成をとることが可能となる。このため、拡大機構部材2が、被駆動体2を安定して支持でき、且つ、方向AR2に対して過拘束とならないような構成が可能となる。その結果、被駆動体1を軸線AX方向にスムーズに、また安定して変位させることが可能となる。
【0053】
以上のような本実施形態に係る駆動装置100に対して、被駆動体1をレンズユニットとし、軸線AX方向を光軸方向とし、SMAアクチュエータ3をSMAワイヤとすると、レンズユニットに装着するレンズをスムーズに変位させることが可能な駆動装置を得ることができる。
【0054】
<3.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0055】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、被駆動体1と拡大機構部材2とを貫通孔部4aの外周部に沿って円形状に形成されたが、これに限られず、多角形状の被駆動体1と拡大機構部材2とを備えてもよい。
【0056】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、固定部材4の平面視の形状を四角形としたが、円形でも多角形でもよく、固定部材4に設ける駆動支点部4bと変位入力部2aの設置位置(一角)に軸線AXを挟んで対向する位置(第二の位置)にバイアスバネ7を備えるガイド機構部10を設ける構成であればよい。
【0057】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、ガイド機構部10のガイド体11において、被駆動体1の一部に相当するガイド胴部12と軸部材13とは一体化されて構成されていたが、ガイド胴部12と軸部材13とを分離して構成されても良い。具体的には、軸部材13は、固定部材4と一体化されて構成され、被駆動体1が動いても、ガイド胴部12のみが動き、軸部材13は固定されているため、不動の状態であってもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、変位出力部2bの動きを規制する所定の規制方向として、方向AR2を採用したが、他の方向を採用しても良い。理想的には、軸線AXと直交する面内における全方向において、変位出力部規制領域SA1,SA2の間隔が、周辺規制領域S1,S2,S3の最小間隔よりも短くなる規制方向制約関係を満足させることが望ましい。
【0059】
※ 本実施形態に係る駆動装置100では、バイアスバネ7は、本体部14から突設されるガイド胴部12を付勢する位置に設けられていたが、この位置に限られず、拡大機構部材2が発揮する駆動力に抗する方向に被駆動体1を付勢する機能を発揮できる位置であればよい。
【符号の説明】
【0060】
1 被駆動体
2 拡大機構部材
2a 変位入力部
2b 変位出力部
3 形状記憶合金ワイヤ(SMAアクチュエータ)
4 固定部材
4a 貫通部
4b 駆動支点部
4c ガイドスリーブ部
7 バイアスバネ
10 ガイド機構部
11 ガイド体
12 ガイド胴部
13 軸部材
14 本体部
21b リング形態部
22b 当接部
100 駆動装置
AX 光軸(軸線)
S1,S2,S3 周辺規制領域
SA1,SA2 変位出力部規制領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔部を有する固定部材と、
前記貫通孔の軸線に沿う方向に往復移動自在に駆動される被駆動体と、
前記被駆動体を駆動する拡大機構部材と、
前記拡大機構部材を移動させる駆動力を発生する形状記憶合金アクチュエータと、
を備え、
前記固定部材は一角部に前記拡大機構部材との駆動支点部を有し、
平面視して前記駆動支点部と前記軸線を挟んで対向する所定の位置に前記軸線に沿って設けられる軸部材を有し、該軸部材の軸方向に沿って前記被駆動体を移動させることができるガイド機構部をさらに備え、
前記拡大機構部材は、前記一角部に設けられ且つ前記形状記憶合金アクチュエータが係合する変位入力部と、平面視して前記所定の対向位置に前記被駆動体を当接により変位可能に設けられる当接部と該当接部と前記変位入力部とを連結し平面視してリング状形態となるリング形態部とからなる変位出力部とを有し、
前記固定部材は、前記拡大機構部材の周辺に周辺規制領域を隔てて設けられ、
前記拡大機構部材の前記変位出力部は、前記軸部材との間において、所定の規制方向における前記変位出力部の動きを規制する変位出力部規制領域を有し、
前記変位出力部規制領域における前記所定の規制方向の間隔は、前記周辺規制領域における前記所定の規制方向における最小間隔よりも短く設定されることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記リング状形態部は、平面視幅方向の第1の長さと、前記軸線に沿う方向の厚み方向の第2の長さとを有し、前記リンク状形態部は、前記第2の長さが前記第1の長さより長くなる形状で構成されることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記所定の規制方向は、前記軸線と直交する面内で且つ前記駆動支点部と前記変位出力部の前記当接部とを結ぶ直線に垂直な方向であることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、
前記被駆動体は本体部と該本体部から突設されるガイド胴部とを有し、前記ガイド胴部と前記軸部材とは一体化されて構成されていることを特徴とする、
駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかに記載の駆動装置であって、
前記被駆動体がレンズユニットであり、
前記軸線が光軸であり、
前記形状記憶合金アクチュエータが形状記憶合金ワイヤであることを特徴とする、
駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−97357(P2013−97357A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243262(P2011−243262)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】